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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】建物の水浸入防止構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20231206BHJP
   E04B 1/684 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04B1/684 G
E04B1/684 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020021125
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021127570
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢司
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-001131(JP,U)
【文献】実開昭60-033203(JP,U)
【文献】特開2010-209646(JP,A)
【文献】特開平08-074340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建物ユニット間の継目において、隙間を埋める位置に水膨張材が設けられたことを特徴とする、建物の水浸入防止構造であって、
前記水膨張材が、前記隣接する建物ユニットの主柱間及び外壁パネルと主柱との間に挟着された、建物の水浸入防止構造。
【請求項2】
建物ユニットと基礎との間の継目において、隙間を埋める位置に水膨張材が設けられたことを特徴とする、建物の水浸入防止構造であって、
前記水膨張材が、外壁パネルの下枠下面部から床梁下面部に亘って貼り付けられた、建物の水浸入防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水時の外壁パネル間、建物ユニット間及び基礎周辺における継目からの建物内への水浸入防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場で製作された複数の建物ユニットを縦、横に積み重ねて構築するユニット建物が知られている。この建物ユニットは、一般に、角部に配置された柱間に天井梁と床梁を架け渡してラーメン構造体を構築し、その柱間に配置した複数の間柱に複数の外壁パネルが取り付けられた構造となっている。
【0003】
したがって、隣接して配置された建物ユニット間には継目が発生することになる。すなわち、建物ユニットを縦、横に積み重ねた場合、横方向に隣接する建物ユニット間には縦目地が発生し、建物ユニットの下縁又は上縁には横目地が発生する。また、同一建物ユニットに取り付けられた複数の外壁パネル間にも継目が発生することになる。
【0004】
従来、このような継目における防水処理には防水シートやガスケットなどが用いられていた(特許文献1、2など参照)が、降雨時の雨水浸入防止を目的としたものであり、洪水時の水圧に耐え得る防水性は備えていない。一方、台風や集中豪雨による水害は、気候変動等によって年々増加しており、洪水時の水圧に耐え得る防水性を備えた建物の需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-292791号公報
【文献】特開平6-306963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は洪水時の水圧に耐え得る建物の水浸入防止構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の建物の水浸入防止構造は、隣接する外壁パネル間、隣接する建物ユニット間及び建物ユニットと基礎との間のいずれか1箇所の継目において、隙間を埋める位置に水膨張材が設けられたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記隣接する外壁パネル間の継目において、前記水膨張材が、外壁パネルと間柱との間に挟着された構造とすることができる。
【0009】
また、前記隣接する建物ユニット間の継目において、前記水膨張材が、前記隣接する建物ユニットの主柱間及び外壁パネルと主柱との間に挟着された構造とすることができる。
【0010】
また、前記建物ユニットと基礎との間の継目において、前記水膨張材が、外壁パネルの下枠下面部から床梁下面部に亘って貼り付けられた構造とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の建物の水浸入防止構造は、建物の前記継目における隙間を埋める位置に水膨張材を設けることによって、前記水膨張材が吸水して膨張すると前記隙間を塞ぎ、水圧がかかっても建物内部への水の浸入を防ぐことができる。また、前記水膨張材は乾燥すると吸水前の体積に戻るため、通常時は建物の換気経路を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】建物ユニットの構成を説明する斜視図である。
図2】外壁パネルの構成を建物内部側から見た裏面図であって、(a)は2本の間柱間に取り付けられる外壁パネルを示す図、(b)は一側縁が主柱に当接する外壁パネルを示す図である。
図3】外壁パネル間における水浸入防止構造の実施形態を説明する断面図であって、(a)は吸水前の状態を示す図、(b)は吸水後の状態を示す図である。
図4】外壁パネル間における水浸入防止構造の構築方法を説明する断面図であって、(a)は水膨張材を間柱に貼付ける工程を示す図、(b)は外壁パネルを間柱に取り付ける工程を示す図、(c)は水膨張材が外壁パネルと間柱との間に挟着された状態を示す図である。
図5】建物ユニット間における水浸入防止構造の実施形態を示す断面図であって、(a)は吸水前の状態を示す図、(b)は吸水後の状態を示す図である。
図6】建物ユニット間における水浸入防止構造の構築方法を示す断面図であって、(a)は水膨張材を主柱に貼付ける工程を示す図、(b)は外壁パネルを主柱に取り付ける工程を示す図、(c)は水膨張材が挟着された状態を示す図である。
図7】基礎周辺における水浸入防止構造の実施形態を示す断面図であって、(a)は吸水前の状態を示す図、(b)は吸水後の状態を示す図である。
図8】基礎周辺における水浸入防止構造の構築方法を示す断面図であって、(a)は水膨張材の一端を下枠下面部に貼付ける工程を示す図、(b)は水膨張材の他端を床梁下面部に貼付ける工程を示す図、(c)は建物ユニットを基礎に据え付ける工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、建物ユニット1の概略構成を説明するための斜視図である。
【0015】
この建物ユニット1は、横方向及び上下方向に複数連結させることでユニット建物(図示せず)を構成するものである。
【0016】
まず、構成から説明すると、この建物ユニット1は、四隅に配置される4本の主柱2,・・・と、その上端間に横架される天井梁31,・・・と、その下端間に横架される床梁32,・・・とから構成されるラーメン構造体11を主たる構造部材としている。
【0017】
そして、図1の前面側の主柱2,2間には複数の間柱4,・・・が所定の間隔で配置されている。この間柱4は、上端が天井梁31に連結されるとともに、下端が床梁32に連結される。
【0018】
ここで、主柱2は角型鋼管、間柱4、天井梁31及び床梁32は断面視コ字形のC型鋼材によって形成されている。
【0019】
図1の前面側に配置される外壁パネル51,51Aを建物ユニット1の内側から見た裏面図を図2に示す。図2(a)は2本の間柱4,4間に取り付けられる外壁パネル51を示す図、図2(b)は一側縁が主柱2に当接する外壁パネル51Aを示す図である。
【0020】
この外壁パネル51,51Aは、石膏ボードや硬質木片セメント板によって構成される面材52と、その縁部を囲繞するように配置されるフレーム53とから主に構成される。
【0021】
図2(a)に示すように、外壁パネル51のフレーム53は、2本の縦枠53a,53aと、その縦枠53a,53aの上端間を繋ぐ上枠53bと、下端間を繋ぐ下枠53cと、その上枠53bと下枠53cとの間に上下方向に間隔を置いて複数配置される中間枠53d,・・・と、から主に構成される。
【0022】
この外壁パネル51は、図1に示すように、左右の側縁を隣り合う間柱4,4にそれぞれ固定することにより、建物ユニット1に取り付けられる。すなわち、間柱4には、それぞれ2枚の別体の外壁パネル51,51の側縁が、縦枠53a,53aを介して固定される。
【0023】
また、図2(b)に示すように、外壁パネル51Aのフレーム53は、2本の縦枠53a,53aと、その縦枠53a,53aの上端間を繋ぐ上枠53bと、下端間を繋ぐ下枠53cと、縦枠53a,53a間の左右対称の位置に配置される2本の中間枠53e,53eと、から主に構成される。ここで、中間枠53eは、図5図6に示すように、主柱2(角型鋼管22)から突き出た取付金具21と接合し得る位置に配置される。
【0024】
図1に示すように、一側縁が主柱2に当接する外壁パネル51Aは、当該一側縁が主柱2に固定されるとともに、他方の側縁は間柱4に固定される。
【0025】
すなわち、外壁パネル51Aの一側縁を主柱2に当接させる。そして、図5に示すように、主柱2から耳状に取付金具21を間柱4方向に突出させておき、この取付金具21に外壁パネル51Aを取り付ける。この取付金具21は、上下方向に間隔を置いて複数設けられており、外壁パネル51Aに取り付けられた2本の中間枠53e,53eのうち、主柱2に近い側の中間枠53eを介して、外壁パネル51Aと取付金具21,・・・とが接合されている。
【0026】
また、外壁パネル51Aのもう一方の側縁は、図2(a)に示す外壁パネル51の側縁と同様に、縦枠53aを介して間柱4に固定されている。
【0027】
なお、図2に示す外壁パネル51,51Aの構成は一例であり、中間枠53d,53eの本数、配置等は適宜変更することが可能である。
【0028】
このようにして、建物ユニット1の外側に露出される側面に複数の外壁パネル51,51A,・・・を取り付けることで、外壁5が形成されている。
【0029】
このため、隣接する外壁パネル51,51の側縁間及び隣接する外壁パネル51,51Aの側縁間には縦目地が形成される。また、横方向に隣接する建物ユニット1,1間にも、外壁5,5の側縁間に縦目地が形成される。また、上下方向に隣接する建物ユニット1,1間には、外壁5の下縁と外壁5の上縁との間に横目地が形成される。さらに、1階に設置される建物ユニット1の下縁にも、基礎(図示せず)との間に横目地が形成される。ここでは、これらの縦目地及び横目地を合わせて継目という。
【0030】
本実施形態に係る水浸入防止構造は、洪水時にこの継目からの建物内への浸水を防止するためのものであり、継目の隙間を埋める位置に水膨張材が設けられたことを特徴としている。
【0031】
この「水膨張材」としては、従来継目に用いられている防水性、気密性等に優れた発泡樹脂をベースとし、ポリアクリル酸系等の吸水性樹脂を含むものを用いることができる。ここで、水膨張材に含まれる発泡樹脂と吸水性樹脂との合計に占める吸水性樹脂の比率は、30~90%(w/w)とすることができる。
【0032】
水膨張材の形状は特に限定されず、埋めようとする隙間の形状に合わせて、例えばシート状、スポンジ状又は柱状とすることができる。
【0033】
また、水膨張材は吸水すると膨らむが、乾燥すると吸水前の体積に戻る性質を備えている。そのため、洪水時には膨張して継目の隙間を埋めることで建物内への浸水を防ぐが、乾燥すると元の体積まで縮んで換気経路を塞ぐことはない。水膨張材の膨張率は20倍以上とすることができる。
【0034】
次に、隣接する外壁パネル51,51間の継目における水浸入防止構造の実施形態について、図3を参照しながら説明する。
【0035】
図3(a)は乾燥時、図3(b)は吸水時における、外壁パネル51,51間の縦目地周辺部分の断面図である。図3(a)に示すように、外壁パネル51の縦枠53aと、間柱4としてのC型鋼材41と、の間に、水膨張材としての発泡材スポンジシート61が挟着されている。
【0036】
すなわち、C型鋼材41には、発泡材スポンジシート61を挟むようにして、それぞれ2枚の別体の外壁パネル51,51の側縁が、縦枠53a,53aを介して接合されている。ここで、外壁パネル51,51の側縁間には一定の隙間があけられており、その間に外側から防水性のガスケット63が圧入されている。
【0037】
また、C型鋼材41と縦枠53aとは、上下方向に間隔を置いて複数個所で、リベット7,・・・によって接合されている。このリベット7はワンサイドリベットであり、C型鋼材41側から打ち込むだけで縦枠53aとC型鋼材41とを接合することができる。
【0038】
発泡材スポンジシート61は、吸水性樹脂を含む水膨張材を、厚さ4mm程度で柔軟性のあるシート状としたものであり、幅及び長さはC型鋼材41と略同一である。
【0039】
この発泡材スポンジシート61は、外壁パネル51の縦枠53aとC型鋼材41との間に挟着され、圧縮されている。そして、吸水性樹脂を含んでいるため吸水すると、25mm程度の厚さにまで膨張し、図3(b)に示すように、外壁パネル51,51間の隙間を塞ぐことにより、洪水時も建物内への浸水を防ぐことができる。
【0040】
また、発泡材スポンジシート61は、吸水しても乾燥すれば再び元の体積まで縮んで、図3(a)の状態に戻るため、換気経路を塞ぐことはない。
【0041】
次に、図3に示した水浸入防止構造の構築方法について、図4を参照しながら説明する。
【0042】
まず、図4(a)に示すように、発泡材スポンジシート61は片面に粘着層611が形成されており、C型鋼材41の外壁パネル51を取り付ける面に、発泡材スポンジシート61を貼り付ける。
【0043】
そして、図4(b)、図4(c)に示すように、発泡材スポンジシート61を挟むようにして、C型鋼材41に、それぞれ2枚の別体の外壁パネル51,51の縦枠53a,53aを接合させることにより、発泡材スポンジシート61が圧縮される。このとき、外壁パネル51,51の側縁間に一定の隙間があくようにする。
【0044】
また、C型鋼材41と縦枠53aとの接合は、リベット7を用いて、上下方向に間隔を置いて複数個所で行う。このリベット7はワンサイドリベットであり、C型鋼材41側から打ち込むだけで、縦枠53aとC型鋼材41とを接合することができる。なお、上記工程は工場内で実施するが、建築現場でも実施可能である。
【0045】
次に、横方向に隣接する建物ユニット1,1間の継目における水浸入防止構造の実施形態について、図5を参照しながら説明する。
【0046】
図5(a)は乾燥時、図5(b)は吸水時における、建物ユニット1,1間の縦目地周辺部分の断面図である。
【0047】
図5(a)に示すように、外壁パネル51Aと、主柱2としての角型鋼管22と、の間に、水膨張材としての発泡材スポンジシート61が挟着されている。また、隣接する建物ユニット1,1の角型鋼管22,22の間に、水膨張材としての発泡材柱状スポンジ62が挟着されている。ここで、外壁パネル51A,51Aの側縁間には一定の隙間があけられており、その間に外側から防水性のガスケット63が圧入されている。
【0048】
すなわち、図1に示すように、外壁パネル51Aの一側縁が主柱2(角型鋼管22)に当接されている。そして、角型鋼管22の間柱4方向に、上下に間隔を置いて耳状に複数設けられている取付金具21,・・・には、発泡材スポンジシート61を挟むようにして、外壁パネル51Aが接合されている。
【0049】
図2(b)に示すように、外壁パネル51Aには、縦枠53a,53aに平行して2本の中間枠53e,53eが取り付けられており、そのうち主柱2に近い側の中間枠53eを介して、外壁パネル51Aと取付金具21とが接合されている。
【0050】
また、取付金具21,・・・と中間枠53eとは、上下方向に間隔を置いて複数個所で、リベット7,・・・によって接合されている。このリベット7はワンサイドリベットであり、取付金具21側から打ち込むだけで中間枠53eと取付金具21とを接合することができる。
【0051】
発泡材スポンジシート61は、吸水性樹脂を含む水膨張材を、厚さ4mm程度で柔軟性のあるシート状としたものであり、長さは角型鋼管22と略同一、幅は角型鋼管22と取付金具21を合わせた幅と略同一である。
【0052】
この発泡材スポンジシート61は、外壁パネル51Aと角型鋼管22との間に挟着され、圧縮されている。そして、吸水性樹脂を含んでいるため吸水すると、25mm程度の厚さにまで膨張し、図5(b)に示すように、建物ユニット1,1間の隙間を塞ぐことにより、洪水時も建物内への浸水を防ぐことができる。
【0053】
そして、隣接する建物ユニット1,1の角型鋼管22,22間には一定の隙間があけられており、当該隙間には、吸水性樹脂を含む水膨張材からなる発泡材柱状スポンジ62が挟まれている。
【0054】
この発泡材柱状スポンジ62は、水膨張性だけでなく熱膨張性も備えており、火災時は膨張して建物内への火炎の浸入を防止する機能も有する。また、発泡材柱状スポンジ62は断面視略円形の柱状で、直径が15mm程度と建物ユニット1,1間の隙間(10mm程度)よりもやや大きく、長さは角型鋼管22と略同一である。
【0055】
この発泡材柱状スポンジ62は、角型鋼管22,22の間に挟着され、圧縮されている。そして、吸水性樹脂を含んでいるため、吸水すると直径30mm程度にまで膨張し、図5(b)に示すように、建物ユニット1,1間の隙間を塞ぐことにより、洪水時も建物内への水浸入を防ぐことができる。
【0056】
また、上記の発泡材スポンジシート61及び発泡材柱状スポンジ62は、吸水しても乾燥すれば再び元の体積まで縮んで、図5(a)の状態に戻るため、換気経路を塞ぐことはない。
【0057】
次に、図5に示した水浸入防止構造の構築方法について、図6を参照しながら説明する。
【0058】
まず、図6(a)に示すように、発泡材スポンジシート61は片面に粘着層611が形成されており、角型鋼管22及び取付金具21の外壁パネル51Aを取り付ける面に、発泡材スポンジシート61を貼り付ける。
【0059】
そして、図6(b)、図6(c)に示すように、発泡材スポンジシート61を挟むようにして、角型鋼管22及び取付金具21に、外壁パネル51Aを接合させることにより、発泡材スポンジシート61が圧縮される。
【0060】
図2(b)に示すように、外壁パネル51Aには、縦枠53a,53aに平行して2本の中間枠53e,53eが取り付けられており、そのうち主柱2に近い側の中間枠53eを介して、外壁パネル51Aと取付金具21とを接合する。このとき、外壁パネル51Aの一側縁と角型鋼管22の外側面が面一となるように接合する。
【0061】
また、取付金具21,・・・と中間枠53eとは、上下方向に間隔を置いて複数個所で、リベット7,・・・によって接合される。このリベット7はワンサイドリベットであり、取付金具21側から打ち込むだけで中間枠53eと取付金具21とを接合することができる。ここまでの工程は工場で実施するが、建築現場で実施することもできる。
【0062】
次に、このようにして作製した建物ユニット1,・・・を建築現場に輸送して、前後左右に並べて設置する。その際、図6(c)に示すように、発泡材柱状スポンジ62を隣接する角型鋼管22,22間に挟み込んで設置することにより、発泡材柱状スポンジ62が圧縮される。このとき、外壁パネル51A,51Aの側縁間に一定の隙間があくようにする。
【0063】
次に、建物ユニット1と基礎8との間の継目における水浸入防止構造の実施形態について、図7を参照しながら説明する。
【0064】
図7(a)は乾燥時、図7(b)は吸水時における、建物ユニット1と基礎8との間の横目地周辺部分の断面図である。図7(a)に示すように、建物ユニット1が基礎8上に設置され、水膨張材としての発泡材スポンジシート61の下側が、建物ユニット1と基礎8との間に挟着されている。
【0065】
発泡材スポンジシート61は、外壁パネル51の下枠53c下面部から床梁32下面部に亘って貼り付けられている。すなわち、発泡材スポンジシート61の上端は、外壁パネル51の下枠53cの下面部に貼り付けられ、そこから建物ユニット1の下縁を覆うようにして、床梁32の下面部まで続いている。また、発泡材スポンジシート61は、ユニット建物の外周に沿って設けられている。
【0066】
建物ユニット1の下縁は、4本の主柱2,・・・の下端を繋ぐ4本の床梁32,・・・によって主に構成されており、主柱2の下端と2本の床梁32,32との接合部分はジョイントピース321を介して溶接により接合されている。
【0067】
また、外壁パネル51の下縁は、図7に示すように、下枠53c及びスペーサー322を介して、床梁32又はジョイントピース321に取り付けられている。なお、建物ユニット1はアンカーボルト(図示せず)によって基礎8上に固定されている。
【0068】
発泡材スポンジシート61は、吸水性樹脂を含む水膨張材を、厚さ4mm程度で柔軟性のあるシート状としたものであり、気密性及び断熱性も備えている。
【0069】
この発泡材スポンジシート61は、建物ユニット1と基礎8との間に挟着され、圧縮されている。そして、吸水性樹脂を含んでいるため吸水すると、25mm程度の厚さにまで膨張し、図7(b)に示すように、建物ユニット1と基礎8との間の隙間及び外壁パネル51と建物ユニット1の下縁との間の隙間を塞ぐ。つまり、床梁32下面部と基礎8との間の隙間、及び、面材52と下枠53c下面部と床梁32側面部とによって囲まれた隙間、の両方が、吸水して膨張した発泡材スポンジシート61によって塞がれる。これことにより、洪水時も建物内への水浸入を防ぐことができる。
【0070】
また、発泡材スポンジシート61は、吸水しても乾燥すれば再び元の体積まで縮んで、図7(a)の状態に戻るため、換気経路を塞ぐことはない。
【0071】
次に、図7に示した水浸入防止構造の構築方法について、図8を参照しながら説明する。
【0072】
図8(a)に示すように、発泡材スポンジシート61の一方の端部Aは片面に、もう一方の端部Bは両面に、それぞれ粘着層611が形成されている。まず、外壁パネル51の下枠53cの下面部に、当該端部Aを貼り付ける。
【0073】
その後、外壁パネル51を間柱4,4に取り付ける。このとき、外壁パネル51の下縁は、下枠53c及びスペーサー322を介して、床梁32又はジョイントピース321に取り付けられる。
【0074】
次いで、図8(b)に示すように、建物ユニット1の下縁を発泡材スポンジシート61で覆うようにして、発泡材スポンジシート61の端部Bを床梁32の下面部に貼り付ける。ここまでの工程は工場内で実施するが、建築現場で実施することもできる。
【0075】
このようにして作製した建物ユニット1,・・・を建築現場に輸送して、基礎8上に据え付ける。その際、図8(c)に示すように、発泡材スポンジシート61が建物ユニット1と基礎8との間に挟着され、圧縮される。
【0076】
本実施の形態に係る建物の水浸入防止構造の作用について、以下に説明する。
【0077】
本実施の形態では、隣接する外壁パネル51,51間、隣接する建物ユニット1,1間又は建物ユニット1と基礎8との間の継目における隙間を埋める位置に、発泡材スポンジシート61や発泡材柱状スポンジ62等の水膨張材を設けることによって、これらの水膨張材が吸水して膨張すると前記隙間を塞ぎ、水圧がかかっても建物内部への水の浸入を防ぐことができる。また、前記水膨張材は乾燥すると吸水前の体積に戻るため、通常時は建物の換気経路を妨げることがない。
【0078】
また、前記水膨張材は吸水性樹脂を含有すると共に、高い耐水圧を有するため、洪水時の水圧にも耐えることができる。従来の防水シートや気密スポンジは降雨時の雨水浸入防止を目的としており、洪水時の水圧に耐える防水性は備えていない。
【0079】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0080】
例えば、前記実施の形態では、水平方向に複数の外壁パネルを並列させたときの外壁パネル間に生じる縦目地における水浸入防止構造について説明したが、これに限定されるものではなく、垂直方向に複数の外壁パネルを並列させたときに生じる外壁パネル間の横目地に対しても、本発明を適用することができる。また、工場で製造されるユニット建物に限らず、在来工法で構築される建物にも本発明を適用できる。
【0081】
また、前記実施の形態では、建物ユニットと基礎との間の継目における水浸入防止構造について説明したが、これに限定されるものではなく、2階の建物ユニットの下縁と1階の建物ユニットの上縁との間の継目のように、上下に積み重ねられる建物ユニット間の継目に対しても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 :建物ユニット
22 :角型鋼管22(主柱)
32 :床梁
41 :C型鋼材(間柱)
51,51A:外壁パネル
53 :フレーム
61 :発泡材スポンジシート(水膨張材)
62 :発泡材柱状スポンジ(水膨張材)
8 :基礎
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8