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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20231206BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K3/46 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020021480
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021129355
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】諏訪林 明
(72)【発明者】
【氏名】光山 明宏
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-201216(JP,A)
【文献】特開2002-051512(JP,A)
【文献】特開2004-040887(JP,A)
【文献】実開昭49-077401(JP,U)
【文献】特開2017-184520(JP,A)
【文献】特開2015-006030(JP,A)
【文献】特開2010-057261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインシュレータを有するステータを備える回転電機であって、前記複数のインシュレータは第1インシュレータと第2インシュレータとを含む回転電機と、
前記第1インシュレータ及び前記第2インシュレータに巻き付けられたコイルに冷媒液を供給する冷媒液供給部と、を有し、
前記第1インシュレータと前記第2インシュレータは、周方向に隣接配置され、
前記第1インシュレータの第1内径側プレート部は、第1本体部と、前記第1本体部よりも内径側に位置する内径部と、を有し、
前記第1インシュレータの前記第1内径側プレート部における前記内径部の外周面は、前記第2インシュレータの第2内径側プレート部の内周面と対向配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記内径部における前記第2インシュレータの前記第2内径側プレート部の前記内周面と対向する部分の径方向厚さは、前記第1本体部の径方向厚さよりも小さいことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置であって、
前記第1インシュレータの前記第1内径側プレート部の前記外周面は、前記第2インシュレータの前記第2内径側プレート部の前記内周面に対して斜めになるように対向配置されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか一項に記載の装置であって、
前記複数のインシュレータの形状が同一形状となるように設計されていることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド自動車や電機自動車に適用可能な回転電機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-41454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機ではステータのコイルが発熱体となる。ステータを冷却するには、ステータに冷媒液(例えば、オイル等)を噴出してステータを直接的に冷却する方式が考えられ、この方式によれば、ステータを効率よく冷却することができる。
【0005】
しかしながらこの場合であっても、噴出した冷媒液によるステータの冷却には改善の余地があり、ステータの冷却効率をさらに高めることが望まれる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、噴出した冷媒液によりステータを直接的に冷却する方式を用いる場合におけるステータの冷却効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の装置は、複数のインシュレータを有するステータを備える回転電機であって、前記複数のインシュレータは第1インシュレータと第2インシュレータとを含む回転電機と、前記第1インシュレータ及び前記第2インシュレータに巻付けられたコイルに冷媒液を供給する冷媒液供給部と、を有する。前記第1インシュレータと前記第2インシュレータは、周方向に隣接配置される。前記第1インシュレータの第1内径側プレート部は、第1本体部と、前記第1本体部よりも内径側に位置する内径部と、を有する。前記第1インシュレータの前記第1内径側プレート部における前記内径部の外周面は、前記第2インシュレータの第2内径側プレート部の内周面と対向配置されている。
【発明の効果】
【0008】
この態様によれば、第1内径側プレート部と第2内径側プレート部とにより、第1インシュレータと第2インシュレータとの間にラビリンス構造の隙間が形成される。このため、当該隙間を冷媒液が流れにくくなり、第1インシュレータと第2インシュレータとの間に冷媒液が滞留し易くなる。結果、噴出した冷媒液によりステータを直接的に冷却する方式を用いる場合におけるステータの冷却効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る装置を備えたハイブリッド車両の概略構成図である。
図2】回転電機の断面図である。
図3】回転電機の要部を軸方向に沿って見た図である。
図4】インシュレータを単体で示す図である。
図5】第1インシュレータ及び第2インシュレータの要部を示す図である。
図6】第1変形例を示す図である。
図7】第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る装置としての動力伝達装置10を備えたハイブリッド車両(以下、単に「車両」という。)100について説明する。
【0011】
図1は、車両100の概略構成図である。図1に示すように、車両100は、エンジン1と、エンジン1と駆動輪5とを結ぶ動力伝達経路に設けられた動力伝達装置10と、を備える。
【0012】
本実施形態では、動力伝達装置10は変速機であって、バリエータ20と、前後進切換え機構30と、回転電機40と、を備える。
【0013】
回転電機40は、動力伝達経路におけるバリエータ20とエンジン1との間に設けられる。
【0014】
回転電機40は、ハウジング41と、ハウジング41のエンジン1側の開口部に設けられた固定部材としてのカバー42と、ハウジング41の内周に設けられたステータ43と、回転軸44と、回転軸44の外周に設けられたロータ80と、ロータ80と入力軸11とを断接するクラッチ48と、を備える。ロータ80は、ロータフレーム81と、ロータフレーム81の外周に設けられたコア82と、を備える。
【0015】
回転電機40は、カバー42を動力伝達装置10のケース12にボルト(図示せず)で締結して動力伝達装置10に固定される。
【0016】
入力軸11は、ベアリング50を介してカバー42に回転自在に支持されており、エンジン1の出力回転が入力される。また、回転軸44は、ベアリング51を介してハウジング41に回転自在に支持される。
【0017】
クラッチ48は、ノーマルオープンの油圧式クラッチである。クラッチ48は、油圧コントロールバルブユニット(図示せず)によって調圧された油圧により、締結・解放が制御される。クラッチ48は湿式多板式クラッチであるが、他のクラッチを用いてもよい。
【0018】
クラッチ48が締結されると、入力軸11とロータ80とが直結する。すなわち、入力軸11と回転軸44とが直結して同速回転する。
【0019】
回転電機40は、バッテリ(図示せず)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することができる。また、回転電機40は、ロータ80が駆動輪5から回転エネルギを受ける場合には発電機として機能し、バッテリを充電することができる。
【0020】
バリエータ20は、V溝が整列するよう配設されたプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3と、プーリ2、3のV溝に掛け渡されたベルト4と、を有する。
【0021】
プライマリプーリ2と同軸にエンジン1が配置され、エンジン1とプライマリプーリ2との間に、エンジン1の側から順に、回転電機40、前後進切換え機構30が設けられている。
【0022】
前後進切換え機構30は、ダブルピニオン遊星歯車組30aを主たる構成要素とし、そのサンギヤは回転電機40の回転軸44に結合され、キャリアはバリエータ20のプライマリプーリ2に結合される。前後進切換え機構30は、さらに、ダブルピニオン遊星歯車組30aのサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ30b、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ30cを備える。そして、前進クラッチ30bの締結時には、回転軸44からの入力回転がそのままの回転方向でプライマリプーリ2に伝達され、後進ブレーキ30cの締結時には、回転軸44からの入力回転が逆転されてプライマリプーリ2へと伝達される。
【0023】
前進クラッチ30bは、車両100の走行モードとして前進走行モードが選択された場合に油圧コントロールバルブユニットからクラッチ圧が供給されることで締結される。後進ブレーキ30cは、車両100の走行モードとして後進走行モードが選択された場合に油圧コントロールバルブユニットからブレーキ圧が供給されることで締結される。
【0024】
プライマリプーリ2の回転は、ベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転は、出力軸8、歯車組9及びディファレンシャルギヤ装置15を経て駆動輪5へと伝達される。
【0025】
上記の動力伝達中にプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間の変速比を変更可能にするために、プライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3のV溝を形成する円錐板のうち一方を固定円錐板2a、3aとし、他方を軸線方向へ変位可能な可動円錐板2b、3bとしている。
【0026】
これら可動円錐板2b、3bは、油圧コントロールバルブユニットからプライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧を供給することにより固定円錐板2a、3aに向けて付勢され、これによりベルト4を円錐板に摩擦係合させてプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間での動力伝達を行う。
【0027】
変速に際しては、目標変速比に対応させて発生させたプライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧間の差圧により両プーリ2、3のV溝の幅を変化させ、プーリ2、3に対するベルト4の巻き掛け円弧径を連続的に変化させることで目標変速比を実現する。
【0028】
回転電機40と前後進切換え機構30との間には、回転電機40の周方向に沿って弧状に延伸するオイル供給部材としてのパイプ53と、前後進切換え機構30の回転電機40側を覆い、パイプ53を介して回転電機40と軸方向に対向する中間カバー31と、が設けられる。
【0029】
パイプ53は、中間カバー31の内部に設けられた油路と接続されており、中間カバー31を介して供給された油を回転電機40側に形成された複数の孔53aから回転電機40のステータ43に向けて噴出させるようになっている。
【0030】
中間カバー31には、ブッシュ54を介してスプロケット55が回転自在に支持されている。スプロケット55は、接続部材56を介して回転電機40の回転軸44と接続されており、スプロケット55はさらに、オイルポンプ6の入力軸6aに設けられたスプロケット6bとチェーン57で連結されている。これにより、回転電機40が回転すると、オイルポンプ6が駆動されて油圧コントロールバルブユニットに油が供給される。
【0031】
ブッシュ54及びスプロケット55は、径方向においてパイプ53とオーバーラップする位置に設けられる。「径方向にオーバーラップする」とは、径方向から見たときに少なくとも一部が重なるように配置されることを意味する。また、チェーン57は、弧状のパイプ53の一端と他端との間、すなわち、パイプ53の切欠き部を通るように配置される。これにより、動力伝達装置10の軸方向のサイズを抑制することができる。
【0032】
車両100は以上のように構成され、運転モードとして、バッテリから供給される電力によって回転電機40を駆動して回転電機40のみの駆動力によって走行するEVモードと、エンジン1のみの駆動力によって走行するエンジン走行モードと、エンジン1の駆動力と回転電機40の駆動力とによって走行するHEVモードと、を有する。
【0033】
EVモードでは、車両100は、クラッチ48を解放し、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方を締結した状態で、バッテリからの電力によって回転電機40のみを駆動して走行する。
【0034】
エンジン走行モードでは、車両100は、クラッチ48と、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方と、を締結した状態で、エンジン1のみを駆動して走行する。
【0035】
HEVモードでは、車両100は、クラッチ48と、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方と、を締結した状態で、エンジン1と回転電機40とを駆動して走行する。
【0036】
続いて、図2を参照しながら、回転電機40の構成について詳しく説明する。図2は、回転電機40の断面図である。
【0037】
図2に示すように、ハウジング41は、外周側に設けられた筒状部41aと、内周側に設けられてハウジング41の内側に向かって延びる筒状部41bと、を有する。筒状部41aの内周には、ステータ43が固定される。筒状部41bは、ベアリング51を介して回転軸44を回転自在に支持する。
【0038】
ステータ43は、ステータコア431とインシュレータ432とステータコイル433とを有して構成される。ステータコア431は薄板の電磁鋼板を多数積層して構成される。インシュレータ432は例えば樹脂製であり、ステータコア431に設けられステータコア431とステータコイル433とを絶縁する。ステータコイル433はインシュレータ432に巻き付けられる。
【0039】
ハウジング41におけるパイプ53と対向する面には、周方向に沿って長穴状の開口部41cが形成されている。これにより、矢印で示すように、パイプ53の孔53aから噴出した油が、開口部41cを通ってステータコイル433に直接吹き付けられる。
【0040】
結果、発熱するステータコイル433が効率よく冷却されるので、ステータ43を効率よく冷却でき、これにより回転電機40を効率よく冷却することができる。油は冷媒液に相当し、パイプ53は冷媒液供給部に相当する。なお、開口部41cの形状及び数は適宜設定可能である。
【0041】
カバー42は、外周側が動力伝達装置10のケース12に固定される。また、カバー42は、内周側に設けられてハウジング41側に向かって延びる筒状部42aを有する。
筒状部42aは、ベアリング50を介して入力軸11を回転自在に支持する。
【0042】
筒状部42aと入力軸11との間には、外部への油の漏出を防止するためのシール部材59が設けられる。
【0043】
入力軸11と回転軸44との間には、軸方向の荷重を受けるニードルベアリング60と径方向の荷重を受けるニードルベアリング61と、が設けられる。
【0044】
入力軸11における前後進切換え機構30側の端部には、クラッチハブ62が溶接で固定される。クラッチハブ62は、外周側に設けられてエンジン1側に向かって延びる筒状部62aを有する。筒状部62aの外周には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にクラッチ48の複数のドライブプレート48aが取り付けられる。
【0045】
回転軸44の外周には、ロータフレーム81が溶接で固定される。ロータフレーム81は、外周側に設けられた筒状部81aを有する。筒状部81aの外周には、コア82が固定される。
【0046】
筒状部81aの内周には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にクラッチ48の複数のドリブンプレート48bが取り付けられる。リテーナプレート63は、ピストンアーム64とは反対側の端部に配置されたドリブンプレート48bと、筒状部81aの内周の溝に固定されたリング65との間に介装される。リテーナプレート63は、軸方向の厚みがドリブンプレート48bより厚く、ドライブプレート48a及びドリブンプレート48bの倒れを防止する。
【0047】
油圧コントロールバルブユニットからピストン油室66に締結圧が供給されると、ピストン67がリターンスプリング68を圧縮しながらエンジン1側に向けて移動する。クラッチ48は、ニードルベアリング69及びピストンアーム64を介してピストン67から伝達される押圧力によって締結状態となる。ニードルベアリング69は、ピストン67がピストンアーム64の回転に伴って連れ回ることを抑制している。
【0048】
図3は、回転電機40の要部を軸方向に沿って見た図である。図4は、インシュレータ432を単体で示す図である。図3では、ステータ43の軸心を通る水平線よりも上方の部分における回転電機40の要部を示す。
【0049】
図3に示すように、インシュレータ432は周方向に複数設けられる。ステータコア431にはリング状の部分から径方向内側に延びる複数の凸部が設けられており、インシュレータ432はステータコア431の凸部に装着される。
【0050】
図4に示すように、インシュレータ432はコの字状の立体形状を有し、コの字状に開口した部分をステータコア431の凸部に軸方向から装着することで、ステータコア431に装着される。インシュレータ432は、ステータコア431の凸部に圧入されることにより固定される。ステータコイル433は、ステータコア431に装着された状態のインシュレータ432に巻き付けられる。
【0051】
図3に示すように、複数のインシュレータ432は第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bを含む。第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bは、ステータ43の軸心を通る水平線よりも上方に配置されている。第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bは、複数のインシュレータ432のうち周方向に隣接配置された2つのインシュレータを構成する。
【0052】
本実施形態では動力伝達装置10が、複数のインシュレータ432を有するステータ43を備える回転電機40であって、複数のインシュレータ432は第1インシュレータ432Aと第2インシュレータ432Bとを含む回転電機40と、第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bに巻き付けられたステータコイル433に油を供給するパイプ53とを有し、第1インシュレータ432Aと第2インシュレータ432Bが周方向に隣接配置された構成とされる。
【0053】
図4を用いてインシュレータ432についてさらに説明すると、インシュレータ432は、巻き付け部432aと内径側プレート部432bと外径側プレート部432cとを有する。巻き付け部432aにはステータコイル433が巻き付けられる。巻き付け部432aの径方向両端には内径側プレート部432bと外径側プレート部432cとが設けられる。内径側プレート部432bは外径側プレート部432cよりも回転電機40における内径側に位置する。
【0054】
内径側プレート部432bと外径側プレート部432cとは、巻き付け部432aよりも周囲に張り出した形状を有する。内径側プレート部432bと外径側プレート部432cとは、インシュレータ432がコの字状に開口した側でも巻き付け部432aよりも張り出した形状とされる。
【0055】
外径側プレート部432cは、回転電機40の周方向に隣接するインシュレータ432間で外径側プレート部432c同士を係合させる係合部を有した構成とされる。このような係合部は例えば、外径側プレート部432cの周方向一端部に設けられ軸方向に延伸する溝部と、周方向他端部に設けられ当該溝部に嵌る形状を有する挿入部とにより構成することができる。
【0056】
ところで、本実施形態では前述したようにステータ43に油を噴出してステータ43を直接的に冷却する方式が採用されており、これによりステータ43を効率よく冷却している。
【0057】
しかしながらこの場合であっても、噴出した油がステータ43からすぐに流れ落ちてしまうと、噴出した油はステータ43から十分に熱を奪う前に冷却に利用されなくなってしまう。
【0058】
このため本実施形態では、ステータ43の冷却効率をさらに高めるために、動力伝達装置10において、第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bが次に説明するように構成される。
【0059】
図5は、第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bの要部を示す図である。第1内径側プレート部432bAは、第1インシュレータ432Aの内径側プレート部432bを示す。第2内径側プレート部432bBは、第2インシュレータ432Bの内径側プレート部432bを示す。
【0060】
内径側プレート部432bは、本体部Bと突出部Pとを有する。本体部Bは、巻き付け部432aに接続する。第1本体部BAは第1インシュレータ432Aの本体部Bを示し、第2本体部BBは第2インシュレータ432Bの本体部Bを示す。
【0061】
突出部Pは本体部Bから回転電機40における周方向に突出する。突出部Pは回転電機40における周方向一端側で本体部Bから突出する突出部P1と、回転電機40における周方向他端側で本体部Bから突出する突出部P2とを含む。突出部P1は突出部P2よりも回転電機40における径方向内側に設けられる。第1突出部P1Aは、第1インシュレータ432Aの突出部P1を示し、第2突出部P2Bは第2インシュレータ432Bの突出部P2を示す。第1突出部P1Aは第2突出部P2Bと径方向にオーバーラップする。
【0062】
このように構成された動力伝達装置10では、第1内径側プレート部432bAの外周面S1が、第2内径側プレート部432bBの内周面S2と対向配置される。外周面S1は回転電機40における外周側を向く表面であり、内周面S2は回転電機40における内周側を向く表面である。
【0063】
このような構成によれば、第1インシュレータ432Aと第2インシュレータ432Bとの間にラビリンス構造の隙間Cが形成される。このため、隙間Cを油が流れにくくなり、第1インシュレータ432Aと第2インシュレータ432Bとの間に油が滞留し易くなる。結果、噴出した油によりステータ43を直接的に冷却する方式を用いる場合におけるステータ43の冷却効率を高めることが可能になる(請求項1に対応する効果)。
【0064】
本実施形態では、外周面S1は内周面S2に対して斜めになるように対向配置される。このような構成によれば、外周面S1及び内周面S2の対向面同士を斜めに配置することで、対向面同士を平行配置とした場合と比較してラビリンス構造の隙間Cの入口又は出口側の幅を絞ることができる。このため、ラビリンス構造の隙間Cを通過する油の流れを規制することができ、第1インシュレータ432Aと第2インシュレータ432Bとの間に油がより滞留しやすくなるので、冷却効率が高まる(請求項2に対応する効果)。
【0065】
本実施形態では、第1内径側プレート部432bAは、第1本体部BAと第1本体部BAから周方向に突出する第1突出部P1Aとを有し、第2内径側プレート部432bBは、第2本体部BBと第2本体部BBから周方向に突出する第2突出部P2Bとを有する。そして、第1突出部P1Aの外周面S1が、第2突出部P2Bの内周面S2と対向配置される。
【0066】
このような構成によれば、各本体部Bから周方向に突出する第1突出部P1A及び第2突出部P2Bを径方向にオーバーラップさせるので、内径側のスペースを確保し易い構造とすることができる(請求項4に対応する効果)。
【0067】
本実施形態では、第1突出部P1Aの径方向厚さは第1本体部BAの径方向厚さよりも小さく、第2突出部P2Bの径方向厚さは第2本体部BBの径方向厚さよりも小さい。
【0068】
このような構成によれば、内径側プレート部432bの径方向厚さを抑制しつつラビリンス構造の隙間Cを形成できるので、内径側のスペースを確保し易い構造とすることができる(請求項6に対応する効果)。
【0069】
隙間Cのラビリング構造は少なくとも一箇所で屈曲し、パイプ53から噴出されステータ43に衝突して飛散する油の内径側への移動を抑制する構造になる。また、冷却効率に対しては重力により内径側に移動しようとする油の影響が大きい。
【0070】
このことから本実施形態では、第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bは、ステータ43の軸心を通る水平線よりも上方に配置されている。
【0071】
このような構成によれば、重力により内径側に移動しようとする油をラビリンス構造の隙間Cにより効果的に滞留させることができるので、冷却効率の向上効果が高い(請求項7に対応する効果)。
【0072】
複数のインシュレータ432間で形状が異なると、インシュレータ432の組付けのときに確認作業が増えて煩雑となる。
【0073】
本実施形態では、複数のインシュレータ432の形状は同一形状となるように設計されている。
【0074】
このような構成によれば、インシュレータ432の組付けのときに確認作業が減り、組付け性が向上する。また、金型等でインシュレータ432を成形するような場合は金型を複数製造せずに済むのでコストダウンになる(請求項8に対応する効果)。
【0075】
第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bは次のように構成されてもよい。
【0076】
図6は第1変形例を示す図である。第1変形例においても、複数のインシュレータ432の形状は同一形状となるように設計することができる。このことは後述する第2変形例についても同様である。
【0077】
この例では、内径側プレート部432bは突出部Pの代わりに内径部IPを有する。内径部IPは本体部Bよりも内径側に位置し、径方向突出部IP1と周方向突出部IP2とを有する。径方向突出部IP1は内径側プレート部432bから回転電機40における径方向内側に突出し、周方向突出部IP2は径方向突出部IP1から回転電機40における周方向に突出する。内径部IPAは、第1インシュレータ432Aにおける内径部IPを示す。この例において、外周面S1は内径部IPAの外周面を示し、内周面S2は第2内径側プレート部432bBの内周面を示す。外周面S1は内径部IPAの周方向突出部IP2に形成されている。
【0078】
このような第1変形例において、内径部IPAの外周面S1は第2内径側プレート部432bBの内周面S2と対向配置されている。
【0079】
このような構成によれば、外周面S1及び内周面S2の対向面の長さを周方向に長くすることができるので、ラビリンス構造の隙間Cを通過する油の流れの規制効果を高めることができる。したがって、第1インシュレータ432Aと第2インシュレータ432Bとの間に油がより滞留しやすくなるので冷却効率が高まる(請求項3に対応する効果)。
【0080】
この例では、内径部IPAにおける第2内径側プレート部432bBの内周面S2と対向する部分、つまり内径部IPAの周方向突出部IP2の径方向厚さは、第1本体部BAの径方向厚さよりも小さく設定される。
【0081】
このような構成によれば、内径部IPAの周方向突出部IP2の径方向厚さを抑制しつつラビリンス構造の隙間Cを形成するので、内径側のスペースを確保し易い構造とすることができる(請求項5に対応する効果)。
【0082】
第1内径側プレート部432bAの外周面S1は、第2内径側プレート部432bBの内周面S2と次のように対向配置されてもよい。
【0083】
図7は第2変形例を示す図である。第2変形例では、第1内径側プレート部432bAの回転電機40における周方向一端部に凹部が形成され、第2内径側プレート部432bBの回転電機40における周方向他端部(第1内径側プレート部432bAの周方向一端部に対向する端部)に凹部に収容される凸部が形成される。
【0084】
この例では、凹部の回転電機40における径方向内側に位置する面が外周面S1を構成し、凸部の回転電機40における径方向内側に位置する面が内周面S2を構成する。そして、これら外周面S1及び内周面S2が対向配置され、第1内径側プレート部432bA及び第2内径側プレート部432bBにより、ラビリンス構造の隙間Cが形成される。従ってこの場合も、冷却効率を高めることが可能になる(請求項1に対応する効果)。
【0085】
またこの場合には、外周面S1及び内周面S2の対向面同士を斜めに配置することで、対向面同士を平行配置とした場合と比較してラビリンス構造の隙間Cの入口及び出口側の幅を絞ることもできる(請求項2に対応する効果)。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0087】
上記実施形態では、第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bがステータ43の軸心を通る水平線よりも上方に配置されている場合について説明した。しかしながら、第1インシュレータ432A及び第2インシュレータ432Bの配置は必ずしもこれに限られない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、装置を動力伝達装置10として説明した。しかしながら、装置は、回転電機搭載装置(回転電機を搭載した装置)等であってもよく、動力伝達装置10は、回転電機搭載装置として把握することもできる。
【0089】
また、上記実施形態では、動力伝達装置10を変速機として説明した。しかしながら、動力伝達装置10は、減速機、モータ付変速機(回転電機搭載装置でもある)、モータ付減速機(回転電機搭載装置でもある)等であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 動力伝達装置(装置)
40 回転電機
43 ステータ
431 ステータコア
432 インシュレータ
432A 第1インシュレータ
432bA 第1内側プレート部
432B 第2インシュレータ
432bB 第2内側プレート部
433 ステータコイル(コイル)
53 パイプ(冷媒液供給部)
B1 第1本体部
B2 第2本体部
IPA 内径部
P1A 第1突出部
P2B 第2突出部
S1 外周面
S2 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7