(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H02K9/19 A
(21)【出願番号】P 2020021618
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】諏訪林 明
(72)【発明者】
【氏名】小坂 昌広
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/137862(WO,A1)
【文献】特開2013-005531(JP,A)
【文献】特開平04-351444(JP,A)
【文献】特開2005-117790(JP,A)
【文献】特開2003-324901(JP,A)
【文献】特開2018-117479(JP,A)
【文献】特開2019-126237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機のステータを収容するハウジングと、
前記ハウジング外に設けられ、冷媒液供給口を有する冷媒液供給部材と、を有し、
前記ハウジングの上部には、前記冷媒液供給口から噴出された冷媒液を導入する導入口が設けられ、
前記ハウジングの下部には、冷媒液溜りを形成する冷媒液貯留部が設けられて
おり、
前記冷媒液供給部材は、弧状パイプから構成され、
前記弧状パイプの内周側から前記弧状パイプの切欠きを経由して前記弧状パイプの外周側へ延びるチェーンと、前記弧状パイプの内周側に設けられ前記チェーンを駆動するチェーンスプロケットとを有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記ハウジングの下部には、冷媒液を排出する排出口が設けられ、
前記排出口の下端は、前記ステータのコイルと軸方向にオーバーラップすることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記弧状パイプと前記チェーンスプロケットとの間に前記チェーンスプロケットを囲う隔壁部を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記隔壁部は、前記ハウジングから軸方向に突出するハウジング突出部を含んで構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項3に記載の装置であって、
前記ハウジングと対向する対向部材を有し、
前記隔壁部は、前記対向部材から軸方向に突出する対向部材突出部を含んで構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項3に記載の装置であって、
前記ハウジングと対向する対向部材を有し、
前記隔壁部は、前記ハウジングから軸方向に突出するハウジング突出部と、前記対向部材から軸方向に突出する対向部材突出部と、を含んで構成されており、
前記ハウジング突出部と前記対向部材突出部とは径方向にオーバーラップする、
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項に記載の装置であって、
前記ハウジングは、前記チェーンと対向する凹部を有する、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷媒流路管が回転電機の軸方向外側端面の略全周に亘って設けられ、回転電機の軸方向外側端面の略全面に冷媒が噴射される回転電機の冷却構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機の全周に亘って油を供給する場合、ノズル(冷媒液供給口)の数が多くなる。ノズルの数が多くなると、ノズル一つ一つの噴射力が低下する傾向がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、回転電機を冷却するにあたり、冷媒液供給口の数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の装置は、回転電機と、前記回転電機のステータを収容するハウジングと、前記ハウジング外に設けられ、冷媒液供給口を有する冷媒液供給部材と、を有する。前記ハウジングの上部には前記冷媒液供給口から噴出された冷媒液を導入する導入口が設けられ、前記ハウジングの下部には冷媒液溜りを形成する冷媒液貯留部が設けられている。前記冷媒液供給部材は、弧状パイプから構成され、当該装置は、前記弧状パイプの内周側から前記弧状パイプの切欠きを経由して前記弧状パイプの外周側へ延びるチェーンと、前記弧状パイプの内周側に設けられ前記チェーンを駆動するチェーンスプロケットとを有する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、少なくともハウジング下部側はハウジング上部から流れ落ちた冷媒液で冷却を行うことができるので、ハウジング下部側の冷媒液供給口を省略でき、これにより冷媒液供給口の数を減少させることができる。従って上記態様によれば、少なくとも1つ以上の冷媒液供給口を設けるにあたって、冷媒液供給口の数を減少させることが可能となる。結果、冷媒液供給口の数を例えば必要最小限まで等、極力減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る装置を備えたハイブリッド車両の概略構成図である。
【
図5】中間カバーをパイプやチェーンとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る装置としての動力伝達装置10を備えたハイブリッド車両(以下、単に「車両」という。)100について説明する。
【0011】
図1は、車両100の概略構成図である。
図1に示すように、車両100は、エンジン1と、エンジン1と駆動輪5とを結ぶ動力伝達経路に設けられた動力伝達装置10と、を備える。
【0012】
本実施形態では、動力伝達装置10は変速機であって、バリエータ20と、前後進切換え機構30と、回転電機40と、を備える。
【0013】
回転電機40は、動力伝達経路におけるバリエータ20とエンジン1との間に設けられる。
【0014】
回転電機40は、ハウジング41と、ハウジング41のエンジン1側の開口部に設けられた固定部材としてのカバー42と、ハウジング41の内周に設けられたステータ43と、回転軸44と、回転軸44の外周に設けられたロータ80と、ロータ80と入力軸11とを断接するクラッチ48と、を備える。ロータ80は、ロータフレーム81と、ロータフレーム81の外周に設けられたコア82と、を備える。
【0015】
回転電機40は、カバー42を動力伝達装置10のケース12にボルト(図示せず)で締結して動力伝達装置10に固定される。
【0016】
入力軸11は、ベアリング50を介してカバー42に回転自在に支持されており、エンジン1の出力回転が入力される。また、回転軸44は、ベアリング51を介してハウジング41に回転自在に支持される。
【0017】
クラッチ48は、ノーマルオープンの油圧式クラッチである。クラッチ48は、油圧コントロールバルブユニット(図示せず)によって調圧された油圧により、締結・解放が制御される。クラッチ48は湿式多板式クラッチであるが、他のクラッチを用いてもよい。
【0018】
クラッチ48が締結されると、入力軸11とロータ80とが直結する。すなわち、入力軸11と回転軸44とが直結して同速回転する。
【0019】
回転電機40は、バッテリ(図示せず)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することができる。また、回転電機40は、ロータ80が駆動輪5から回転エネルギを受ける場合には発電機として機能し、バッテリを充電することができる。
【0020】
バリエータ20は、V溝が整列するよう配設されたプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3と、プーリ2、3のV溝に掛け渡されたベルト4と、を有する。
【0021】
プライマリプーリ2と同軸にエンジン1が配置され、エンジン1とプライマリプーリ2との間に、エンジン1の側から順に、回転電機40、前後進切換え機構30が設けられている。
【0022】
前後進切換え機構30は、ダブルピニオン遊星歯車組30aを主たる構成要素とし、そのサンギヤは回転電機40の回転軸44に結合され、キャリアはバリエータ20のプライマリプーリ2に結合される。前後進切換え機構30は、さらに、ダブルピニオン遊星歯車組30aのサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ30b、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ30cを備える。そして、前進クラッチ30bの締結時には、回転軸44からの入力回転がそのままの回転方向でプライマリプーリ2に伝達され、後進ブレーキ30cの締結時には、回転軸44からの入力回転が逆転されてプライマリプーリ2へと伝達される。
【0023】
前進クラッチ30bは、車両100の走行モードとして前進走行モードが選択された場合に油圧コントロールバルブユニットからクラッチ圧が供給されることで締結される。後進ブレーキ30cは、車両100の走行モードとして後進走行モードが選択された場合に油圧コントロールバルブユニットからブレーキ圧が供給されることで締結される。
【0024】
プライマリプーリ2の回転は、ベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転は、出力軸8、歯車組9及びディファレンシャルギヤ装置15を経て駆動輪5へと伝達される。
【0025】
上記の動力伝達中にプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間の変速比を変更可能にするために、プライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3のV溝を形成する円錐板のうち一方を固定円錐板2a、3aとし、他方を軸線方向へ変位可能な可動円錐板2b、3bとしている。
【0026】
これら可動円錐板2b、3bは、油圧コントロールバルブユニットからプライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧を供給することにより固定円錐板2a、3aに向けて付勢され、これによりベルト4を円錐板に摩擦係合させてプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間での動力伝達を行う。
【0027】
変速に際しては、目標変速比に対応させて発生させたプライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧間の差圧により両プーリ2、3のV溝の幅を変化させ、プーリ2、3に対するベルト4の巻き掛け円弧径を連続的に変化させることで目標変速比を実現する。
【0028】
回転電機40と前後進切換え機構30との間には、回転電機40の周方向に沿って弧状に延伸する冷媒液供給部材としてのパイプ53と、前後進切換え機構30の回転電機40側を覆い、パイプ53を介して回転電機40と軸方向に対向する中間カバー31と、が設けられる。中間カバー31は対向部材に相当し、回転電機40のハウジング41と対向する。
【0029】
パイプ53は、中間カバー31の内部に設けられた油路と接続されており、中間カバー31を介して供給された油を回転電機40側に形成された複数の孔53aから回転電機40のステータ43に向けて噴出させるようになっている。
【0030】
ハウジング41の下部には、オイル溜りを形成するオイル貯留部41dが設けられており、ハウジング41の下部側はハウジング41の上部から流れ落ちた油で冷却される。オイル貯留部41dは例えばクラッチ48の下方に形成され、オイル貯留部41dには例えばコア82の下端よりも高い位置まで油が貯留される。油は冷媒液に相当し、オイル貯留部41dは冷媒液貯留部に相当する。
【0031】
中間カバー31には、ブッシュ54を介してスプロケット55が回転自在に支持されている。スプロケット55は、接続部材56を介して回転電機40の回転軸44と接続されており、スプロケット55はさらに、オイルポンプ6の入力軸6aに設けられたスプロケット6bとチェーン57で連結されている。これにより、回転電機40が回転すると、オイルポンプ6が駆動されて油圧コントロールバルブユニットに油が供給される。
【0032】
ブッシュ54及びスプロケット55は、径方向においてパイプ53とオーバーラップする位置に設けられる。「径方向にオーバーラップする」とは、径方向から見たときに少なくとも一部が重なるように配置されることを意味する。また、チェーン57は後述する
図4、
図5に示されるように、弧状のパイプ53の一端と他端との間、すなわち、パイプ53の切欠きを通るように配置される。これにより、動力伝達装置10の軸方向のサイズを抑制することができる。
【0033】
スプロケット55とパイプ53との間には突出部41eと突出部31aとが設けられる。突出部41eはハウジング41に設けられ、ハウジング41から軸方向に突出する。突出部31aは中間カバー31に設けられ、中間カバー31から軸方向に突出する。突出部41eと突出部31aとは径方向にオーバーラップする。突出部41eと突出部31aとは径方向に互いに当接する。ハウジング41及び中間カバー31の周辺部についてはさらに後述する。
【0034】
車両100は以上のように構成され、運転モードとして、バッテリから供給される電力によって回転電機40を駆動して回転電機40のみの駆動力によって走行するEVモードと、エンジン1のみの駆動力によって走行するエンジン走行モードと、エンジン1の駆動力と回転電機40の駆動力とによって走行するHEVモードと、を有する。
【0035】
EVモードでは、車両100は、クラッチ48を解放し、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方を締結した状態で、バッテリからの電力によって回転電機40のみを駆動して走行する。
【0036】
エンジン走行モードでは、車両100は、クラッチ48と、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方と、を締結した状態で、エンジン1のみを駆動して走行する。
【0037】
HEVモードでは、車両100は、クラッチ48と、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方と、を締結した状態で、エンジン1と回転電機40とを駆動して走行する。
【0038】
続いて、
図2を参照しながら、回転電機40の構成について詳しく説明する。
図2は、回転電機40の断面図である。
【0039】
図2に示すように、ハウジング41は、外周側に設けられた筒状部41aと、内周側に設けられてハウジング41の内側に向かって延びる筒状部41bと、を有する。筒状部41aの内周には、ステータ43が固定される。筒状部41bは、ベアリング51を介して回転軸44を回転自在に支持する。
【0040】
ステータ43は、ステータコア431とインシュレータ432とステータコイル433とを有して構成される。ステータコア431は薄板の電磁鋼板を多数積層して構成される。インシュレータ432は例えば樹脂製であり、ステータコア431に設けられステータコア431とステータコイル433とを絶縁する。ステータコイル433はインシュレータ432のコイル巻き付け部432aに巻き付けられる。
【0041】
図3は、ステータ43の要部を示す図である。
図3では、パイプ53側から軸方向に沿って見たステータ43の要部を示す。インシュレータ432は、回転電機40における周方向に沿って複数設けられる。ステータコア431にはリング状の部分から径方向内側に延びる複数の凸部が設けられており、当該凸部にインシュレータ432が装着される。ステータコイル433は、ステータコア431に装着された状態のインシュレータ432に巻き付けられる。
【0042】
図2に戻り、ハウジング41におけるパイプ53と対向する面には、開口部41cが形成されている。これにより、矢印で示すように、パイプ53の孔53aから噴出した油が、開口部41cを通ってステータコイル433に直接吹き付けられる。
【0043】
結果、発熱するステータコイル433が効率よく冷却されるので、ステータ43を効率よく冷却でき、これにより回転電機40を効率よく冷却することができる。孔53aは冷媒液供給口に相当する。
【0044】
カバー42は、外周側が動力伝達装置10のケース12に固定される。また、カバー42は、内周側に設けられてハウジング41側に向かって延びる筒状部42aを有する。筒状部42aは、ベアリング50を介して入力軸11を回転自在に支持する。
【0045】
筒状部42aと入力軸11との間には、外部への油の漏出を防止するためのシール部材59が設けられる。
【0046】
入力軸11と回転軸44との間には、軸方向の荷重を受けるニードルベアリング60と、径方向の荷重を受けるニードルベアリング61とが設けられる。
【0047】
入力軸11における前後進切換え機構30側の端部には、クラッチハブ62が溶接で固定される。クラッチハブ62は、外周側に設けられてエンジン1側に向かって延びる筒状部62aを有する。筒状部62aの外周には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にクラッチ48の複数のドライブプレート48aが取り付けられる。
【0048】
回転軸44の外周には、ロータフレーム81が溶接で固定される。ロータフレーム81は、外周側に設けられた筒状部81aを有する。筒状部81aの外周には、コア82が固定される。
【0049】
筒状部81aの内周には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にクラッチ48の複数のドリブンプレート48bが取り付けられる。リテーナプレート63は、ピストンアーム64とは反対側の端部に配置されたドリブンプレート48bと、筒状部81aの内周の溝に固定されたリング65との間に介装される。リテーナプレート63は、軸方向の厚みがドリブンプレート48bより厚く、ドライブプレート48a及びドリブンプレート48bの倒れを防止する。
【0050】
油圧コントロールバルブユニットからピストン油室66に締結圧が供給されると、ピストン67がリターンスプリング68を圧縮しながらエンジン1側に向けて移動する。クラッチ48は、ニードルベアリング69及びピストンアーム64を介してピストン67から伝達される押圧力によって締結状態となる。ニードルベアリング69は、ピストン67がピストンアーム64の回転に伴って連れ回ることを抑制している。
【0051】
次に、ハウジング41及びハウジング41と対向する中間カバー31の周辺部について、
図4、
図5を用いてさらに説明する。
【0052】
図4はハウジング41をパイプ53とともに示す図である。
図5は中間カバー31をパイプ53やチェーン57とともに示す図である。
図4は、中間カバー31側からハウジング41を見た図となっており、
図5は、ハウジング41側から中間カバー31を見た図となっている。
【0053】
図4に示すように、開口部41cはハウジング41の上部に設けられている。開口部41cは周方向に長穴状の形状を有し、周方向に沿って複数(ここでは3つ)設けられている。開口部41cの形状や数はこれに限られず、異なる形状や数とすることができる。
【0054】
開口部41cはパイプ53の孔53aから噴出された油をハウジング41内に導入する。
図4では孔53aはパイプ53の裏側にあり、
図5に示すように開口している。孔53aはノズルにより構成されてもよい。
図4に示す開口部41cから導入された油は、ハウジング41に収容されたステータ43に供給される。開口部41cは導入口に相当する。
【0055】
パイプ53はハウジング41外に設けられ、一端と他端との間に切欠きを有する。パイプ53は円弧状の弧状パイプとされる。弧状とは上に凸の曲線状であればよく、例えば楕円弧状であってもよい。
【0056】
ハウジング41の下部には連通口41gが設けられている。連通口41gはハウジング41を収容するケース12と結合し、中間カバー31やパイプ53を収容する動力伝達装置10のケース内とオイル貯留部41dとを連通する。
【0057】
連通口41gはオイル貯留部41dから油を排出し、連通口41gの下端によりオイル貯留部41dの液面高さが規定される。破線で示す液面Lは、連通口41gの下端に応じて規定されたオイル貯留部41dの液面であって、ステータコイル433の連通口41g側表面における液面を示す。
【0058】
液面Lからわかるように、連通口41gの下端はステータコイル433と軸方向にオーバーラップするように設けられる。これにより、オイル貯留部41dの液面高さはオイル貯留部41dの油に浸かるステータコイル433の最外周下端よりも内周側に位置するようになる。結果、オイル貯留部41dにおけるステータコイル433と油との接触が確保され、冷却効果が高められる。
【0059】
さらにこの場合、回転電機40のモータ部分のエアギャップ(ステータ43とロータ80との間の隙間により形成されるエアギャップ)に油が浸入することが抑制される。結果、オイル貯留部41dの液面高さがオイル貯留部41dの油に浸かるステータコイル433の最外周下端よりも外周側に位置する場合には、オイル貯留部41dからエアギャップに油が浸入し、ロータ80に対して大きな回転抵抗が生じてしまうところ、本実施形態の場合はこのような事態の発生が抑制される。連通口41gは排出口に相当する。
【0060】
図5に示すように、チェーン57は、パイプ53の内周側からパイプ53の切欠きを経由してパイプ53の外周側に伸びる。パイプ53の内周側にはチェーン57を駆動するスプロケット55が設けられる。スプロケット55はチェーンスプロケットに相当する。
【0061】
図4に示すように、ハウジング41は、チェーン57と対向する凹部41fを有する。凹部41fによりハウジング41とチェーン57との干渉が回避される分、チェーン57及びスプロケット55はハウジング41に近づけて配置されている。
【0062】
図4、
図5に示すように、突出部41eと突出部31aとはともにスプロケット55を囲うように設けられる。突出部41eと突出部31aとはともにパイプ53と同様、弧状に形成されており、一端と他端との間に切欠きを有する。従って、チェーン57は突出部41e及び突出部31aに干渉しない。
【0063】
突出部41eと突出部31aとはともに、パイプ53から噴出された後、パイプ53やハウジング41から流れ落ちてスプロケット55に油が注がることを抑制するカバーとして機能する。突出部41eはハウジング突出部に相当し、突出部31aは対向部材突出部に相当する。突出部41eと突出部31aとはともに、パイプ53とスプロケット55との間でスプロケット55を囲う隔壁部を構成する。
【0064】
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0065】
動力伝達装置10は、回転電機40と、回転電機40のステータ43を収容するハウジング41と、ハウジング41外に設けられ、孔53aを有する冷媒液供給部材としてのパイプ53とを有する。ハウジング41の上部には、孔53aから噴出された油を導入する開口部41cが設けられている。ハウジング41の下部には、オイル溜りを形成するオイル貯留部41dが設けられている。
【0066】
このような構成によれば、少なくともハウジング41下部側はハウジング41上部から流れ落ちた油で冷却を行うことができるので、ハウジング41下部側の孔53aを省略でき、これにより孔53aの数を減少させることができる。従って、このような構成によれば、少なくとも1つ以上の孔53aを設けるにあたって、孔53aの数を減少させることが可能となる。結果、孔53aの数を例えば必要最小限まで等、極力減少させることが可能となる(請求項1に対応する効果)。
【0067】
本実施形態では、パイプ53は弧状パイプから構成される。動力伝達装置10は、パイプ53の内周側からパイプ53の切欠きを経由してパイプ53の外周側へ延びるチェーン57と、パイプ53の内周側に設けられチェーン57を駆動するスプロケット55とを有する。
【0068】
本実施形態では、ハウジング41の下部には、油を排出する連通口41gが設けられる。連通口41gの下端は、ステータコイル433と軸方向にオーバーラップする。
【0069】
このような構成によれば、オイル貯留部41dの液面高さがオイル貯留部41dの油に浸かるステータコイル433の最外周下端よりも内周側に位置する。このため、ステータコイル433の冷却性確保と回転電機40のモータ部分のエアギャップへの油の浸入の抑制との両立が可能になる(請求項2に対応する効果)。
【0070】
このような構成によれば、パイプ53を全周に設けなくてよいので切欠きを大きくでき、これによりチェーン57をパイプ53の内周側から外周側へ切欠きを経由して延ばすことができる。このため、パイプ53と径方向にオーバーラップするようにスプロケット55を設けることができ、これにより軸方向のサイズを小型化することができる(請求項3に対応する効果)。
【0071】
動力伝達装置10は、パイプ53とスプロケット55との間でスプロケット55を囲う隔壁部として、突出部41e及び突出部31aを有する。
【0072】
このような構成によれば、パイプ53及び/又はハウジング41から流れ落ちる油がスプロケット55に注がれることにより、スプロケット55において油の攪拌抵抗が増加することを抑制できる(請求項4に対応する効果)。
【0073】
本実施形態では、隔壁部はハウジング41から軸方向に突出する突出部41eを含んで構成される。
【0074】
このような構成によれば、動力伝達装置10において既存のハウジング41を利用して隔壁部を構成することにより、部品点数を削減できる(請求項5に対応する効果)。
【0075】
本実施形態では、動力伝達装置10はハウジング41と対向する中間カバー31を有し、隔壁部は中間カバー31から軸方向に突出する突出部31aを含んで構成される。
【0076】
このような構成によれば、動力伝達装置10において既存の中間カバー31を利用して隔壁部を構成することにより、部品点数を削減できる(請求項6に対応する効果)。
【0077】
本実施形態では、動力伝達装置10はハウジング41と対向する中間カバー31を有し、隔壁部は突出部41eと突出部31aとを含んで構成される。突出部41eと突出部31aとは径方向にオーバーラップする。
【0078】
このような構成によれば、動力伝達装置10において既存のハウジング41及び中間カバー31を利用して隔壁部を構成することにより、部品点数を削減できる。また、突出部41e及び突出部31aの2つの突出部を利用してこれらを径方向にオーバーラップさせるので、スプロケット55へ流れ込もうとする油の量をさらに低減することができる(請求項7に対応する効果)。
【0079】
本実施形態では、ハウジング41はチェーン57と対向する凹部41fを有する。
【0080】
このような構成によれば、チェーン57をハウジング41側により近づけることができ、動力伝達装置10の軸方向への短縮化が可能になる(請求項8に対応する効果)。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0082】
例えば上記実施形態では、装置を動力伝達装置10として説明した。しかしながら、装置は回転電機搭載装置(回転電機を搭載した装置)等であってもよく、動力伝達装置10は回転電機搭載装置として把握することもできる。
【0083】
また上記実施形態では、動力伝達装置10を変速機として説明した。しかしながら、動力伝達装置10は、減速機、モータ付変速機(回転電機搭載装置でもある)、モータ付減速機(回転電機搭載装置でもある)等であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 動力伝達装置(装置)
40 回転電機
31 中間カバー
31a 突出部(対向部材突出部)
41 ハウジング
41c 開口部(導入口)
41d オイル貯留部(冷媒液貯留部)
41e 突出部(ハウジング突出部)
43 ステータ
431 ステータコア
432 インシュレータ
433 ステータコイル
53 パイプ(冷媒液供給部材)
53a 孔(冷媒液供給口)
55 スプロケット(チェーンスプロケット)
57 チェーン