(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】集音補助器及び集音方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20231206BHJP
G05B 19/05 20060101ALI20231206BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20231206BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20231206BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G05B19/05 N
G05B23/02 301T
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2020028330
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】西塚 善仁
(72)【発明者】
【氏名】黒田 由美子
(72)【発明者】
【氏名】平手 利昌
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0029761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01J 1/00- 1/60
11/00
G01M 13/00-13/045
99/00
G05B 19/04-19/05
23/00-23/02
A61B 7/00- 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像方向の画像を撮像する撮像部、前記撮像部による撮像画像を表示する表示部、及び、対象機器の周辺の音を集音する集音口を備えた携帯端末に取付可能に構成され、
前記携帯端末に取付可能に係合される係合部と、
前記集音口まで通孔し前記対象機器の周辺の音を集音する連通孔と、
前記携帯端末が前記係合部に位置決めされると前記連通孔を通じて集音される集音指向性を強くする箇所の目安として前記表示部による表示画面に映されながら当該表示画面の一部領域
を指し示し、指し示す領域と特定の対象機器とが重なるように配置することができる指示具と、
を備える集音補助器。
【請求項2】
前記係合部は、前記撮像部による撮像方向に向けて延設する延設部を備え、
前記延設部は、前記携帯端末の前記集音口を覆うと共に、
前記連通孔は、前記集音口から前記撮像部の撮像方向に向けて連通する請求項1記載の集音補助器。
【請求項3】
前記集音口を備えた集音母具とは別体に設けられ、当該集音母具に取付可能に構成され前記集音口から撮像方向に向けて設けられた前記連通孔が広角に成形された広角集音アダプタを備える請求項2記載の集音補助器。
【請求項4】
前記集音口から撮像方向に向けて開口が広角に成形された広角集音部材を備える請求項2記載の集音補助器。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の集音補助器を用い、
前記表示部の前記表示画面の一部領域を指示する前記指示具を前記特定の対象機器に合わせて集音する集音方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、集音補助器及び集音方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、産業用の電動機の騒音は電動機本体又は当該電動機本体に関連した箇所から生じる。騒音源は、例えば電動機の回転軸、回転軸に接続されたギアボックス、ギアボックスに接続されたポンプに生じる機械音、電動機を駆動する時に電動機の巻線コイル等に生じる電磁音等による。出願人は、電動機又は前述した電動機に関連した箇所に生じた音を記録し、記録した音情報に基づいて異常を診断する装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-95152号公報
【文献】特表2016-540240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業用の電動機は、運転時間の経過に伴い経時劣化する。例えば、電動機の回転子を支える軸受は回転子の回転により劣化する。軸受の劣化が進むと異常振動を生じ異常音を発生させる。メンテナンス作業者は、電動機を定期的に点検している。このため、例えばこの定期的点検中に電動機の周辺に生じた音を測定し、この測定した音情報を時系列的に照合することで、経時劣化による異常音を生じているか否かを判断できる。
【0005】
しかし、例えば、集音部の設置環境が点検の度にずれてしまうと、電動機の周辺音を再現性良く取得できない。また、集音部の集音指向性がある一方向に強い場合などには、集音部の集音指向性の強い方向を、測定対象音源に毎回向けつつ集音しなければ、再現性良く取得できない。また、携帯端末を用いて集音する音響収集器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、特許文献2記載の音響収集器を騒音を集音する機器として適用しても、どの対象機器を目標として集音しているか把握できず、特定の対象機器の騒音を再現性良く取得できない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定の対象機器に生じる騒音を再現性良く取得できるようにした集音補助器、及び、集音補助器を用いた集音方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の一態様の集音補助器は、所定の撮像方向の画像を撮像する撮像部、前記撮像部による撮像画像を表示する表示部、及び、周辺の音を集音する集音口を備えた携帯端末に取付可能に構成され、携帯端末に取付可能に係合される係合部と、集音口まで通孔し前記対象機器の周辺の音を集音する連通孔と、携帯端末が係合部に位置決めされると連通孔を通じて集音される集音指向性を強くする箇所の目安として表示部による表示画面に映されながら当該表示画面の一部領域を指し示し、指し示す領域と特定の対象機器とが重なるように配置することができる指示具と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る騒音診断装置を模式的に示す電気的構成図
【
図2】第1実施形態に係る表示部の表示態様の説明図
【
図3】第1実施形態に係る集音補助器の設置例を模式的に示す側面図
【
図4】第1実施形態に係る携帯端末の集音孔の態様を示す下面図
【
図5】第1実施形態に係る集音補助器の設置例を模式的に示す背面図
【
図6】第1実施形態に係る特定の対象機器を撮像して表示画面に表示した画像と音響信号波形の例
【
図7】第1実施形態に係る処理の流れを概略的に説明するフローチャート
【
図8】第2実施形態に係る集音補助器の設置例を模式的に示す側面図
【
図9】第3実施形態に係る集音補助器の設置例を模式的に示す側面図
【
図10】第4実施形態に係る集音補助器の使用例を模式的に示す説明図のその1
【
図11】第4実施形態に係る集音補助器の使用例を模式的に示す説明図のその2
【
図12】第5実施形態に係る集音補助器の設置態様を模式的に示す背面図のその1
【
図13】第5実施形態に係る集音補助器の設置態様を模式的に示す背面図のその2
【
図14】第5実施形態に係る集音補助器の設置態様を模式的に示す側面図
【
図15】第6実施形態に係る集音補助器の設置態様を模式的に示す背面図
【
図16】第6実施形態に係る集音補助器の設置態様を模式的に示す側面図
【
図17】第7実施形態に係る集音補助器及び指示具の設置態様を模式的に示す背面図
【
図18】第7実施形態に係る集音補助器及び指示具の設置態様を模式的に示す側面図
【
図19】第7実施形態に係る表示部の表示態様の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、集音補助器及び集音方法に係る幾つかの実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明において、同様の箇所には同様の符号(例えば、十及び一の位を同一符号)を付して説明を省略する。
【0010】
まず電気的な構成ブロックを説明する。
図1に示す騒音診断装置1は、電動機2又は電動機2に関連した箇所、例えば、軸受2a、ギアボックス2b、ポンプ2cなどの対象機器20から生じる騒音を診断する診断装置、診断システムを構成する。騒音診断装置1は、携帯端末3を使用して構成される。騒音は、例えば電動機2の回転軸の軸受2a、回転軸に接続されたギアボックス2b、ギアボックス2bに接続されたポンプ2cに生じる機械音や、電動機2の駆動時に電磁的に生じる電磁音による。
【0011】
携帯端末3は、例えばスマートフォン、タブレット又はノートパソコンなどにより構成され、対象機器20を使用する作業者により携帯して操作される。
【0012】
携帯端末3は、処理部4、記憶部5、表示部6、操作部7、撮像部8、集音部9、及び通信部(図示せず)を備える。通信部は、例えば外部のネットワークを通じて制御装置と通信接続可能になっているものであり、有線LANなどの有線通信、無線LAN、WiFi(登録商標)などの無線通信部、ブルートゥース(登録商標)などによる近距離無線通信部などによる。記憶部5には、処理部4により処理されるアプリケーションプログラムが記憶されている。処理部4を含む各機能部4~9等が実行する処理のうち一部又は全部は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが記憶部5に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0013】
また記憶部5には、撮像部8にて撮像されたデータ及び集音部9にて集音されたデータが記憶される。また記憶部5には、処理部4による処理後のデータも記憶される。また、記憶部5には、対象機器20に関するパラメータ(例えば、軸受2aにおいては軸受パス周波数、ギアボックス2bにおいては噛合い周波数、ポンプ2cにおいては羽切り周波数など)が保存される。
【0014】
図2に例示したように、携帯端末3は、正面側に表示部6の表示画面6aを備える。表示部6は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0015】
撮像部8は、静止画又は動画などの画像を撮像可能な内蔵カメラを用いて構成される。
図3に例示したように、撮像部8は、携帯端末3の背面側の一部にカメラレンズ8aを設置しており、携帯端末3の背面側を撮像方向とするように構成される。表示部6は、撮像部8による撮像画像を表示画面6aにリアルタイムに表示可能になっている。
【0016】
例えば、
図3に例示したカメラレンズ8aは、携帯端末3の背面上部の一部に設置されている。携帯端末3には、内蔵のカメラレンズ8aとは別体で外付けのカメラレンズ(図示せず)を装着しても良い。撮像部8は、カメラレンズ8aを通じて撮像された画像信号を処理部4に出力する。作業者は、携帯端末3の筐体位置や角度を操作することで、撮像部8による撮像方向を変更できる。作業者が、携帯端末3の筐体の位置や角度を操作することで、撮像部8により撮像方向が変更されると、表示部6の表示画面6aもこの撮像領域に合わせて変更される。
【0017】
図4に例示したように、集音部9は、周辺の音を集音する集音口9aを外観上少なくとも一つ以上備えると共に、当該集音口9aの内側にマイクロフォン(図示せず)を備える。集音部9は、マイクロフォンにより取得される音響信号を処理部4に出力する。集音部9は、マイクロフォン及び集音口9aにより所定の集音指向性を備えるように設置されている。
【0018】
例えば、作業者が、携帯端末3を所持して電話として用いた場合、集音部9の集音指向性が作業者の発話方向に強くなるように調整されている。したがって、ユーザは、携帯端末3の筐体の位置や角度を操作することで、集音部9による集音方向や集音指向性を強くする方向を変更できる。
【0019】
図1に例示した操作部7は、押圧操作を受け付ける押しボタン7a(
図2、
図6参照)やタッチパネルにより構成される。タッチパネルは表示部6の表示画面6a上に重ね合わせて構成される。表示部6は、作業者により表示画面6aに手指やペンなどを接触されることにより各種操作を行うことができる。操作部7が作業者により操作入力されたとき、表示部6がこの操作入力情報に基づいて表示画面6aに表示させる表示情報を変化させる。
【0020】
処理部4は、信号処理部10、画像処理部11、比較部12、及び、診断部13としての機能を備える。信号処理部10は、撮像部8による画像信号を記憶部5に記憶させると共に、集音部9によるアナログ音響信号を受信してデジタル変換して記憶部5に記憶させる。画像処理部11は、記憶部5に記憶された画像信号のデータに所定の画像処理を行い表示部6に表示可能なデータとする。
【0021】
比較部12は、記憶部5に記憶されているデータを予め設定された解析条件を用いて所定の解析方法に基づいて比較する。例えば、比較部12は、集音部9による集音データから高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数スペクトルを算出し、予め設定された所定周波数帯の基準音レベルと、所定周波数帯にて算出された周波数スペクトルのレベルとを比較する。比較部12は、例えば電動機2、軸受2a、ギアボックス2b、ポンプ2cなどの対象機器20に固有に生じる周波数帯の基準音レベルを記憶部5から取得し、算出されたレベルと比較する。
【0022】
診断部13は、比較部12による比較結果に基づいて対象機器20の異常の有無を診断する。作業者が、比較部12による比較結果に基づいて劣化診断可能であれば、診断部13の機能は必要に応じて省略しても良い。
【0023】
なお、作業者が操作部7を操作することで、記憶部5に記憶されたアプリケーションプログラムが実行指示される。すると、携帯端末3の画像処理部11は、
図2に例示したように、撮像部8による撮像画像と共に音響信号を表示する領域を表す初期画面を表示部6の表示画面6aに表示させる。表示部6は、撮像部8により撮像された画像を画像表示領域R1に対しリアルタイム表示可能になっていると共に、集音部9により集音された音響信号を音響信号表示領域R2にリアルタイム表示可能になっている。
【0024】
次に、集音補助器30の構造例を説明する。集音補助器30は、劣化診断が行われる際に携帯端末3に取付けられる。集音補助器30は、集音部9の集音信号を増幅させるために補助的に設けられる。
図2、
図3、及び
図5に例示した集音補助器30は、携帯端末3に取付可能に係合される支持部材31を係合部として備える。支持部材31は、その全体が例えば樹脂により構成される。支持部材31は、
図3に例示した側面図上では全体がL字形状となるように成形されている。
【0025】
支持部材31は、L字形状の内側断面が矩形枠状に成形されることで矩形枠内側に連通孔32を備える。支持部材31は、携帯端末3の下部3aに装着可能に構成されると共にL字形状の上端から下端まで延設される縦延設部33と、縦延設部33の下端にて直角に屈曲した屈曲部34と、屈曲部34から所定方向(撮像方向相当)に向けて延設する横延設部35とを備える。
【0026】
連通孔32は、主に横延設部35の延設方向に沿って構成される。集音補助器30は、連通孔32の開口端が撮像部8の撮像方向に向けられることで使用される。また横延設部35は、撮像部8の撮像方向の先端側に位置して指示具36を装着している。指示具36は、棒状部37を主として構成され、棒状部37の上部先端に位置決めマーク38を設けている。位置決めマーク38は、撮像部8の撮像領域や表示部6の表示画面6aに比較して狭い一部領域や当該一部領域の中心部を目標として指示する形状(例えば、矢印形状)に構成される。
【0027】
支持部材31の縦延設部33は、その矩形枠の内側に携帯端末3を保持可能に構成される。支持部材31が携帯端末3に装着されると、支持部材31の連通孔32は集音口9aに連通するように成形されている。連通孔32は、携帯端末3の集音口9aを覆うように構成されている。
【0028】
携帯端末3が、縦延設部33の矩形枠の内側に保持されると、指示具36は、所定の指示方向(本形態では、上方向)を向いて指示可能に構成される。指示具36の棒状部37の長さは、横延設部35の長さや、撮像部8のカメラレンズ8aによる撮像角(
図3の破線参照)に合わせて調整されている。
【0029】
作業者が、対象機器20の劣化診断を実行する際に、携帯端末3に集音補助器30が取付けられると、
図3に示すように、指示具36が三次元空間の一部領域を指し示す。このとき撮像部8が、カメラレンズ8aを通じて指示具36の先端側を撮像することで、撮像部8は、
図2に示したように指示具36の先端側を撮像領域の一部とする。表示部6は、指示具36の先端側を表示画面6aの一部に表示することで、作業者は、指示具36が表示部6による表示画面6aの一部領域を指し示しているように見える。この一部領域は、携帯端末3が縦延設部33の矩形枠の内側に位置決めされたときに、連通孔32からの集音指向性を強くする箇所の目安として示されるように予め調整されている。
【0030】
図3に示した連通孔32は、縦延設部33の矩形枠の内側の開口を通じて携帯端末3の集音口9aまで通孔していると共に、横延設部35の矩形枠の内側開口を通じて撮像方向にも通孔している。このため集音部9が撮像方向の音を集中的に集音でき、集音指向性を高めることができる。
【0031】
また
図2に示したように、支持部材31の縦延設部33の上端の一部には切欠部33aが設けられている。切欠部33aは、携帯端末3が縦延設部33の矩形枠の開口に装着されたときに、当該携帯端末3の操作部7の押しボタン7aの操作を容易にするために設けられている。なお、押しボタン7aが設けられていない携帯端末3を用いて対象機器20の劣化診断を実行する際には、押しボタン7aを操作する必要がないため、支持部材31に切欠部33aを設けなくても良い。
【0032】
次に、携帯端末3を用いて劣化診断を行う手順を説明する。動作している対象機器20の動作音を用いて劣化診断を行う場合、携帯端末3と対象機器20との距離、又は、角度によって測定音が異なる。このため、例えば、対象機器20の基準音と比較して定期的に劣化診断する場合には、携帯端末3と対象機器20との距離を一定に保ち、さらに対象機器20となす角度を再現性良く保つことが望まれる。
【0033】
作業者が操作部7を操作することで測定を開始し撮像部8により対象機器20を撮像すると、
図6に例示したように、表示部6は対象機器20を表示画面6aに表示する。このとき、撮像部8は指示具36の先端側の位置決めマーク38を撮像しており、表示部6は、撮像部8により撮像された指示具36の指示領域も表示画面6aに表示させる。指示具36は、表示部6の表示画面6aの一部領域を指示している。この一部領域は、連通孔32からの集音指向性を強くする箇所の目安として表示される。
【0034】
このため、
図7に流れを示したように、作業者が、指示具36の先端の位置決めマーク38を特定の対象機器20(
図6中では軸受2a)に合わせて(
図7のS1)、撮像部8により撮像しながら集音部9により集音することで(
図7のS2)、特定の対象機器20である軸受2aから発せられる音を集中的に集音できる。
【0035】
信号処理部10は、集音部9による音響信号を受信してデジタル変換し記憶部5に記憶させる。信号処理部10は集音部9により集音した音の大小やその波形を解析し、画像処理部11が、
図6に例示したように音の波形画像Zを表示画面6aに表示させる。すると、作業者は特定の対象機器20が動作しているときの周辺の音の大小を視覚的に確認しながら、指示具36の先端の位置決めマーク38を、特定の対象機器20(例えば軸受2a)に合わせることができる。また作業者は、特定の対象機器20の軸受2aから発せられる音の波形画像Zを概ねリアルタイムに確認できる。
【0036】
この後、作業者の操作部7の操作により画像及び音の記憶保存の操作指示がなされると、信号処理部10は、撮像部8による画像信号と集音部9による音響信号と記憶部5に記憶させる。なお信号処理部10は、測定開始されたタイミングから継続して記憶部5に画像信号と音響信号とを記憶させるようにしても良い。
【0037】
そして比較部12が、記憶部5に記憶された音響信号の所定周波数帯の基準音レベルと、所定周波数帯にて算出された周波数スペクトルのレベルとを比較する(
図7のS3)。これにより、診断部13は、対象機器20に固有に生じる周波数帯の基準音レベルとの相違を診断できる(
図7のS4)。診断部13は診断結果を記憶部5に記憶させる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る集音補助器30によれば、携帯端末3に取付可能に係合されると共に、携帯端末3の集音口9aまで通孔するように連通孔32を設けている。指示具36が、表示部6による表示画面6aに映されながら当該表示画面6aの一部領域を指し示している。この一部領域は、連通孔32からの集音指向性を強くする箇所の目安として設けられている。このため、特定の対象機器20(例えば、軸受2a)の騒音を再現性良く取得できる。
【0039】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態を示す。
図8に例示したように、集音補助器230は、係合部としての集音母具231と、集音母具231の先端側に取付けられた広角集音アダプタ240と、を備える。集音母具231は、
図8に示す断面ではL字形状に構成され、携帯端末3の下部3aに装着可能に構成されている。
【0040】
集音母具231は、横断面が矩形枠状に構成されると共にL字形状の上端から下端まで延設される縦延設部233と、縦延設部233の下端にて直角に屈曲した屈曲部234と、屈曲部234から所定方向(撮像部8の撮像方向)に向けて延設した横延設部235と、を備える。集音母具231は、縦延設部233から屈曲部234及び横延設部235にかけて連通する連通孔232を内部に備える。連通孔232は、撮像部8の撮像方向に向けて屈曲して連通している。
【0041】
広角集音アダプタ240は、基端部241と先端部242に分けて構成される。広角集音アダプタ240の基端部241の外径は同一径に成形され、広角集音アダプタ240の先端部242の外径は最先端に向けて広角に成形される。広角集音アダプタ240は基端部241から先端部242にかけて内部に連通孔243を備える。基端部241の連通孔243の径は比較的小径に成形されており、連通孔243は基端部241と先端部242との間の中間から先端部242の最先端にかけて徐々に大径になるように成形されている。広角集音アダプタ240の基端部241は、集音母具231の横延設部235の先端側の一部を覆いながら集音母具231の一部に装着可能に構成されている。
【0042】
また、広角集音アダプタ240が集音母具231に装着されると、集音母具231の連通孔232と広角集音アダプタ240の連通孔243が連通するように構成されている。このため、携帯端末3に集音母具231が装着されると共に、集音母具231に広角集音アダプタ240が装着されると、全ての連通孔232、243が通じ合うことになる。このため、撮像部8の撮像方向から到来する音を、連通孔243、232を通じて集音口9aに集音可能になる。広角集音アダプタ240は、その先端部242の連通孔243を形成する内面がパラボラ型の放物曲面に構成されていても良い。
【0043】
また、広角集音アダプタ240の先端側に位置して指示具36が装着されている。指示具36は、その先端に位置決めマーク38を備えるもので、第1の実施形態と同様の構成である。
【0044】
携帯端末3が、集音母具231の縦延設部233の矩形枠の内側に係合して保持されると共に、広角集音アダプタ240が集音母具231に装着されると、指示具36は、所定の指示方向(本形態では、上方向)を向いて指示する。指示具36の長さは、横延設部235の長さ、広角集音アダプタ240の各部形状や大きさ、指示具36の大きさ、及び、撮像部8のカメラレンズ8aによる撮像角(
図8の破線部分参照)に合わせて調整されている。
【0045】
これにより、作業者が劣化診断を実行する際に、携帯端末3に集音補助器230が取付けられると、指示具36が特定の三次元空間領域を指し示す。撮像部8が指示具36の先端側を撮像することで、撮像部8は指示具36の先端側の位置決めマーク38を撮像領域の一部とする。表示部6が指示具36の先端側の位置決めマーク38を表示画面6aの一部に表示することで、作業者は、指示具36が表示部6の表示画面6aの一部の特定領域を指し示しているように見える。このため、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0046】
また広角集音アダプタ240の連通孔243は、集音母具231の連通孔232を通じて携帯端末3の集音口9aまで通孔しているため撮像方向に向けて通孔している。このため、集音部9が撮像方向の音を集中的に集音でき、集音指向性を高めることができ、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。また広角集音アダプタ240は、基端部241と先端部242との間の中間から最先端側にかけて徐々に大径になるように成形されているため、より広い範囲の音を集音できる。
【0047】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態を示す。
図9に例示した集音補助器330は、携帯端末3の集音口9aから撮像方向に向けて連通孔332が広角に成形された係合部としての広角集音部材331を備える。具体的には、集音補助器330は、縦延設部333、屈曲部334、横延設部335、及び広角集音部342を備える。集音補助器330は、
図9に示す断面においてL字形状に構成され、携帯端末3の下部3aが縦延設部333に装着可能に構成されている。
【0048】
縦延設部333は、横断面が矩形枠状に構成されると共に上端から下端まで延設されている。また屈曲部334は縦延設部333の下端にて直角に屈曲している。横延設部335は、屈曲部334から所定方向(撮像部8の撮像方向)に向けて延設している。広角集音部342の外形は、基端から所定方向の先端側にかけて徐々に大径になるように成形されている。
【0049】
縦延設部333、屈曲部334、横延設部335、及び広角集音部342は、その内部を連通する連通孔332を備える。連通孔332は、広角集音部342の基端から所定方向の先端側にかけて徐々に大径になるように成形されている。このため、本実施形態の態様においても、第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0050】
また集音補助器30は、縦延設部333、屈曲部334、横延設部335、及び広角集音部342を一体に構成した広角集音部材331により構成されている。このため、第2の実施形態の構造に比較して、携帯端末3への装着時のずれを少なくでき、作業者が、指示具36が指し示す領域を特定の対象機器20(例えば軸受2a)に合わせやすくなる。
【0051】
(第4の実施形態)
図10及び
図11は、第4の実施形態を示す。
図10に使用例を示したように、持ち運び可能な棒状の保持具450に携帯端末3を取り付けると共に、当該携帯端末3に集音補助器30を取り付けて操作可能に構成しても良い。
【0052】
保持具450は、棒状部451を主体に構成される。保持具450は、棒状部451の基端に作業者により把持可能にした把持部452を備えると共に、棒状部451の先端に携帯端末3を挟持する挟持具453を備える。挟持具453は、内部にばね(図示せず)を内蔵して構成され、携帯端末3を幅方向に挟込み挟持可能に構成される。
【0053】
図示していないが、本形態の携帯端末3は、例えばブルートゥース(登録商標)の近距離通信技術を用いた近距離通信部を備える。携帯端末3は、近距離通信部を用いて、作業者により携帯操作可能なリモコン454との間で通信接続可能に構成されている。リモコン454には押し釦スイッチ及び通信機能が搭載されている。作業者によりリモコン454の押し釦スイッチが操作されることで、リモコン454は携帯端末3との間で通信確立すると共に携帯端末3に撮像指示及び集音指示を行う。これにより、携帯端末3は撮像部8によりカメラレンズ8aを通じて対象機器20を撮像できる。この際、集音部9により特定の対象機器20(例えば、軸受2a)から発せられる騒音を集音できる。
【0054】
図10に例示したように、保持具450が、棒状部451の先端に携帯端末3を保持していれば、棒状部451の長さだけ伸ばした位置から対象機器20の画像を撮像したり、当該位置を基準として集音できるようになる。したがって、作業者が表示部6の表示画面6aを視認しながら撮影することで、通常の操作使用では撮像不能又は集音不能な場所も撮像、集音でき、作業者の利便性を向上できる。
【0055】
また
図11に例示したように、三脚460を使用しても良い。三脚460は、棒状部461と、棒状部461の一端に取り付けられた三本の脚462と、棒状部461の他端に取り付けられた挟持具453と、を備える。撮像位置及び集音位置を固定するための三脚460の挟持具453に携帯端末3を取り付けると共に、当該携帯端末3に集音補助器30を取り付けて使用しても良い。これにより、撮像箇所及び集音箇所を固定できるようになり、特定の対象機器20の騒音をより再現性良く取得でき、前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0056】
(第5の実施形態)
図12から
図14は第5の実施形態を示す。
図12から
図14に例示したように、指示具536が指し示す特定の三次元空間領域は、撮像部8のカメラレンズ8aの設置位置に応じて変更可能に構成されていると良い。指示具536は、棒状部537と、棒状部537の先端に取り付けられた位置決めマーク538とを備える。
【0057】
携帯端末3は、当該携帯端末3の機種に応じてカメラレンズ8aの設置位置が様々に異なっていることがある。例えば
図12に例示したように、カメラレンズ8aが携帯端末3の背面右側に設置されていたり、
図13に例示したように、カメラレンズ508aが携帯端末3の背面左側に設置されていることがある。このとき、携帯端末3のカメラレンズ8a、508aの設置位置に応じて、指示具536の先端の位置決めマーク538が指し示す三次元空間を変更可能になっていることが望ましい。すると、表示部6が位置決めマーク538を表示画面6aに表示する空間が極力移動することがなくなり、指示具536が指し示す一部領域を集音部9の集音指向性に合わせて調整できる。なお、
図14に示したように、
図12及び
図13に示した何れの例も側方から観察すると、指示具536の先端の位置決めマーク538が指し示す三次元空間を撮像部8による撮像領域に含ませることができる。
【0058】
本実施形態では、指示具536の長さが前述実施形態の指示具36に比較して長く構成されている。このため、支持部材531の形状が支持部材31と異なっている。
図14に例示したように、支持部材531は、縦延設部33と、屈曲部34と、横延設部535とを備える。支持部材531の構造が支持部材31の構造と異なっているため、横延設部535の長さは、横延設部35よりも短く調整されている。横延設部535は、その内部に所定方向に向けて通孔する連通孔532を備える。この連通孔532は、基端部分から所定方向に向けて広角となるように成形されている。このため、所定方向の騒音を広く集音できる。
【0059】
(第6の実施形態)
図15及び
図16は、第6の実施形態を示す。
図15の背面図、及び、
図16の側面図に例示したように、指示具636は、棒状部637と、棒状部637の先端に取り付けられた位置決めマーク638とを備える。
図15及び
図16に例示したように、位置決めマーク638は星形形状に成形されていても良い。位置決めマーク638は、作業者が目標を容易に視認しやすく目立ちやすいマークにすると良い。その他、位置決めマーク638は、断面的には例えば丸形状、四角形状、十字形状、立体的には例えば立方体形状、直方体形状、球形状、星形形状等により構成しても良い。
【0060】
(第7の実施形態)
図17から
図19は、第7の実施形態を示す。
図17の背面図、及び、
図18の側面図に例示したように、指示具736を、集音補助器本体30aと別体に設けても良い。指示具736は、携帯端末3に固定するための固定部材771、当該固定部材771に設けられた棒状部737、及び、棒状部737の先端に設けられた位置決めマーク738を備える。
【0061】
指示具736と集音補助器本体30aとは一組にして構成すると良い。指示具736は、携帯端末3の筐体に対し固定的に位置決め設置されるように構成することが望ましい。すなわち、指示具736の位置決めマーク738が、集音補助器30aを携帯端末3に設置したときに当該集音補助器30aの集音指向性を強くする箇所の目安となる位置を指し示すように構成することが望ましい。
図19に例示したように、携帯端末3は撮像部8により指示具736が撮像されると、指示具736の先端の位置決めマーク738が表示部6の表示画面6aの一部を指し示す。
図19に示した例では、指示具736が表示部6の表示画面6aの上部に映し出される。このような実施形態においても同様の作用効果を奏する。
【0062】
(他の実施形態)
本発明は、前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
【0063】
携帯端末3は、表示部6の表示画面6aに、本来集音すべき位置から予め撮像した撮像画像を透過画像として、枠状のガイドと合わせて表示するようにしても良い。すると、作業者が携帯端末3を操作し、撮像部8の撮像領域及び表示部6の表示画面6aを透過画像に合わせることで、再現性良く集音できる。作業者は、ガイドの大きさに対する対象機器20の画像の大きさを参考にして、携帯端末3を最適位置に設置することができる。例えば、表示画面6aに表示したガイド、透過画像と共に、前述実施形態で説明した指示具36、536、636、736を用いることで特定の対象機器20(例えば軸受2a)に合わせて再現性良く騒音を取得できる。
【0064】
例えば、第1の実施形態において、集音補助器30に対する指示具36の固定方法は、集音補助器30の一部に数か所の取付穴を設け、当該取付穴に差込み固定するとよい。また、ねじなどの締結部材を用いて集音補助器30の一部に指示具36を固定しても良い。 例えば、第6の実施形態では、集音補助器30を複数の部材に分けて構成し、当該複数の部材の間に挟み込んで固定しても良い。このとき、複数の部材の間に指示具536を摺動させるようにして移動自在に構成しても良い。
【0065】
また前述実施形態では、指示具36、536、636、736の棒状部37、537、637、737を、それぞれ直線状に構成した形態を示したが、途中部分で屈曲させて構成しても良いし曲線状に構成しても良い。表示部6の表示画面6aに指示具36の位置決めマーク38を表示できるように設置できれば、棒状部37、537、637、737はどのような形状に構成されていても良い。
【0066】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
図面中、3は携帯端末、6は表示部、8は撮像部、9は集音部、9aは集音口、31は支持部材(係合部)、231は集音母具(係合部)、331は広角集音部材(係合部)、32、232、243、332、532は連通孔、36、536、636、736は指示具を示す。