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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ノック判定装置及びノック制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20231206BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F02D45/00 368A
G01H17/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020030931
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134710
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】土屋 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 雅徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 攻
(72)【発明者】
【氏名】西垣 和浩
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】徳毛 正吾
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 和寛
(72)【発明者】
【氏名】福原 光浩
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-034888(JP,A)
【文献】特開2005-307753(JP,A)
【文献】特開2006-336604(JP,A)
【文献】特開平08-004580(JP,A)
【文献】特開平05-215055(JP,A)
【文献】特開平11-182288(JP,A)
【文献】特開2011-214400(JP,A)
【文献】特開2006-307663(JP,A)
【文献】特開2020-045828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(90)の各燃焼サイクル内における所定期間(G)に発生する振動を検出する検出部(29)を有し、検出された前記振動における所定周波数帯成分の振動波形(W)に基づいて、ノックの有無についての判定を行うノック判定装置(95)において、
前記振動波形に含まれている所定の各一連の振動の波形を個別波形(Wo)として、
前記振動波形に複数の前記個別波形が含まれている場合に、そのうちの複数の各前記個別波形について当該個別波形の特徴(Ps,Pm,Pe)を抽出する特徴抽出部(33)と、
前記特徴抽出部により特徴が抽出された前記個別波形について、当該特徴がノック波形の特徴か否かの特徴判定を行い、いずれかの前記個別波形の特徴が前記ノック波形の特徴と判定されることを条件にノック有と判定するノック判定部(34)と、
前記ノック判定部によりノック有と判定されていない状態において、前記特徴判定が行われた前記個別波形の数としての特徴判定数が、2以上であり且つ前記特徴抽出部及び前記ノック判定部の処理速度の関係から前記特徴判定を実行できる限界の回数である所定の強制閾値(Nt)に達したことを条件に、ノック有と強制的に判定する強制判定部(35)と、
を有し、
前記振動波形において、振動強度が所定の途絶判定強度(Yt)を下回っている時間が所定の途絶判定時間(Xt)以上継続していると判定される区間を、途絶区間(I)として、
前記個別波形は、時系列方向に並ぶ2つの前記途絶区間どうしの間の区間の波形であり、
前記所定期間内における時間と振動強度とを示す各点を検出点(P)として、
前記特徴抽出部は、複数の前記検出点の中から、前記個別波形の特徴として、開始点(Ps)と最大点(Pm)と終了点(Pe)とを抽出するものであり、
前記最大点は、前記個別波形において振動強度が最大となる前記検出点であり、前記開始点は、前記最大点から時系列方向に遡って最初に前記途絶区間に至る直前の前記検出点であり、前記終了点は、前記最大点から時系列方向に下って最初に前記途絶区間に至る直前の前記検出点であり、
前記ノック判定部は、前記開始点から前記最大点までの時間である増加時間(Ts)が所定の増加時間閾値(Xs)よりも小さく、且つ前記最大点から前記終了点までの時間である減衰時間(Te)が所定の減衰時間閾値(Xe)よりも大きいことを条件に、前記個別波形をノック波形と判定する、又は前記最大点における振動強度である最大強度(V)を前記増加時間で割った増加率(V/Ts)が所定の増加率閾値(Zs)よりも大きく、且つ前記最大強度を前記減衰時間で割った減衰率(V/Te)が所定の減衰率閾値(Ze)よりも小さいことを条件に前記個別波形をノック波形と判定する、ノック判定装置。
【請求項2】
内燃機関(90)の各燃焼サイクル内における所定期間(G)に発生する振動を検出する検出部(29)を有し、検出された前記振動における所定周波数帯成分の振動波形(W)に基づいて、ノックの有無についての判定を行うノック判定装置(95)において、
前記振動波形に含まれている所定の各一連の振動の波形を個別波形(Wo)として、
前記振動波形に複数の前記個別波形が含まれている場合に、そのうちの複数の各前記個別波形について当該個別波形の特徴(Ps,Pm,Pe)を抽出する特徴抽出部(33)と、
前記特徴抽出部により特徴が抽出された前記個別波形について、当該特徴がノック波形の特徴か否かの特徴判定を行い、いずれかの前記個別波形の特徴が前記ノック波形の特徴と判定されることを条件にノック有と判定するノック判定部(34)と、
前記ノック判定部によりノック有と判定されていない状態において、前記特徴判定が行われた前記個別波形の数としての特徴判定数が、2以上であり且つ前記特徴抽出部及び前記ノック判定部の処理速度の関係から前記特徴判定を実行できる限界の回数である所定の強制閾値(Nt)に達したことを条件に、ノック無と強制的に判定する強制判定部(35)と、
を有し、
前記振動波形において、振動強度が所定の途絶判定強度(Yt)を下回っている時間が所定の途絶判定時間(Xt)以上継続していると判定される区間を、途絶区間(I)として、
前記個別波形は、時系列方向に並ぶ2つの前記途絶区間どうしの間の区間の波形であり、
前記所定期間内における時間と振動強度とを示す各点を検出点(P)として、
前記特徴抽出部は、複数の前記検出点の中から、前記個別波形の特徴として、開始点(Ps)と最大点(Pm)と終了点(Pe)とを抽出するものであり、
前記最大点は、前記個別波形において振動強度が最大となる前記検出点であり、前記開始点は、前記最大点から時系列方向に遡って最初に前記途絶区間に至る直前の前記検出点であり、前記終了点は、前記最大点から時系列方向に下って最初に前記途絶区間に至る直前の前記検出点であり、
前記ノック判定部は、前記開始点から前記最大点までの時間である増加時間(Ts)が所定の増加時間閾値(Xs)よりも小さく、且つ前記最大点から前記終了点までの時間である減衰時間(Te)が所定の減衰時間閾値(Xe)よりも大きいことを条件に、前記個別波形をノック波形と判定する、又は前記最大点における振動強度である最大強度(V)を前記増加時間で割った増加率(V/Ts)が所定の増加率閾値(Zs)よりも大きく、且つ前記最大強度を前記減衰時間で割った減衰率(V/Te)が所定の減衰率閾値(Ze)よりも小さいことを条件に前記個別波形をノック波形と判定する、ノック判定装置。
【請求項3】
前記特徴抽出部は、前記振動波形に複数の前記個別波形が含まれている場合に、振動強度の最大値が大きい前記個別波形から順に前記個別波形の特徴を抽出する、請求項1又は2に記載のノック判定装置。
【請求項4】
前記特徴抽出部は、前記所定期間内における所定の対象区間内で振動強度が最大となる点を一の前記個別波形の前記最大点として抽出すると共に、当該一の個別波形の前記開始点及び前記終了点を抽出する抽出作業を行い、その後、当該一の個別波形の前記開始点から前記終了点までの区間(EX)を前記対象区間から除外して、再び前記抽出作業を行う一連の作業としての連続抽出作業を、前記対象区間が前記所定期間の全区間である状態から開始することにより、振動強度の最大値が大きい前記個別波形から順に前記個別波形の特徴を抽出する、請求項1~3のいずれか1項に記載のノック判定装置。
【請求項5】
前記振動における所定周波数帯成分は、所定の下限周波数以上かつ所定の上限周波数以下の振動であり、
前記途絶判定時間は、前記下限周波数の逆数以上の長さの時間である、請求項1~4のいずれか1項に記載のノック判定装置。
【請求項6】
前記途絶判定時間は、前記上限周波数の逆数の2倍以下の長さの時間である、請求項に記載のノック判定装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のノック判定装置(95)と、前記ノック有と判定された際に前記ノックを抑える制御を行うノック制御部(36)とを有するノック制御装置(96)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関におけるノックの有無についての判定を行うノック判定装置、及びその判定の結果に基づきノックを抑える制御を行うノック制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノック判定装置の中には、検出部とノック判定部とを有するものがある。検出部は、内燃機関の各燃焼サイクル内の所定期間に、内燃機関に発生する振動を検出する。ノック判定部は、その検出された振動における所定周波数帯成分の振動波形の特徴が、ノック波形の特徴か否かに基づいてノック判定を行う。そして、そのようなノック判定装置を示す文献としては、次の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-336604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のノック判定装置では、所定期間内に複数のノイズが発生した場合、それら複数のノイズによる振動波形の全体一纏めの特徴が、ノック波形の特徴か否かに基づいてノック判定を行うことになる。そのため、複数のノイズによる振動波形であるにも関わらず、その振動波形の特徴を一のノック波形の特徴と誤判定してしまうおそれがある。また、所定期間内にノイズとノックとの双方が発生した場合、それらノイズとノックとの双方による振動波形の全体一纏めの特徴が、ノック波形の特徴か否かに基づいてノック判定を行うことになる。そのため、ノイズとノックとの双方による振動波形であるにも関わらず、その振動波形の特徴を、一のノイズ波形の特徴と誤判定してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数のノイズによる振動波形の特徴を、一のノック波形の特徴と誤判定したり、ノイズとノックとの双方による振動波形の特徴を、一のノイズ波形の特徴と誤判定したりするのを抑制して、ノック判定の精度を向上させることを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のノック判定装置は、内燃機関の各燃焼サイクル内における所定期間に発生する振動を検出する検出部を有する。そして、検出された前記振動における所定周波数帯成分の振動波形に基づいて、ノックの有無についての判定を行う。
【0007】
以下では、前記振動波形に含まれている所定の各一連の振動の波形を個別波形とする。ノック判定装置は、特徴抽出部とノック判定部と強制判定部とを有する。前記特徴抽出部は、前記振動波形に複数の前記個別波形が含まれている場合に、そのうちの複数の各前記個別波形について当該個別波形の特徴を抽出する。
【0008】
前記ノック判定部は、前記特徴抽出部により特徴が抽出された前記個別波形について、当該特徴がノック波形の特徴か否かの特徴判定を行い、いずれかの前記個別波形の特徴が前記ノック波形の特徴と判定されることを条件にノック有と判定する。前記強制判定部は、前記ノック判定部によりノック有と判定されていない状態において、前記特徴判定が行われた前記個別波形の数である特徴判定数が、2以上である所定の強制閾値に達したことを条件に、ノックの有無をいずれかに強制的に判定する。
【0009】
本発明によれば、特徴抽出部は、振動波形に複数の個別波形が含まれている場合に、そのうちの複数の各個別波形から特徴を抽出する。そして、ノック判定部は、いずれかの個別波形の特徴がノック波形の特徴と判定されることを条件にノック有と判定する。そのため、振動波形の全体一纏めの特徴がノック波形の特徴か否かに基づいてノック判定を行う場合に比べて、複数のノイズによる振動波形を一のノック波形と誤判定したり、ノイズとノックとの双方による振動波形を一のノイズ波形と誤判定したりするのを抑制できる。そのため、ノック判定の精度を向上させることができる。
【0010】
さらに、次の効果も得られる。振動波形に数多くの個別波形が含まれている場合には、特徴抽出部やノック判定部の処理速度によっては、それら全ての個別波形について特徴判定を行うことができない場合がある。その点、強制判定部は、ノック判定部によりノック有と判定されていない状態において、特徴判定数が所定の強制閾値に達したことを条件に、ノックの有無をいずれかに強制的に判定する。そのため、振動波形に上記の強制閾値以上の個別波形が含まれており、特徴抽出部やノック判定部の処理速度によっては、それら全ての個別波形について特徴判定を行うことができない場合においても、対応可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のノック判定装置及びその周辺を示す概略図
図2】ノック判定装置及びその周辺を示すブロック図
図3】複数の個別波形を含む振動波形の例を示すグラフ
図4図3の一部を拡大したグラフ
図5】特徴が抽出された個別波形の例を示すブラフ
図6】ノック判定装置による制御を示すフローチャート
図7図6の一部の詳細を示すフローチャート
図8】複数のノイズによる振動波形を示すグラフ
図9】ノイズとノックとの双方による振動波形を示すグラフ
図10】第2実施形態において、特徴が抽出された個別波形の例を示すブラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0013】
[第1実施形態]
まずは、本実施形態の概要について説明する。図1に示すように、ノック判定装置95は、内燃機関90に対して設置されている。ノック判定装置95は、検出部29を有する。検出部29は、内燃機関90の各燃焼サイクル内における所定期間であるゲート期間Gに発生する振動を検出する。
【0014】
図3は、検出部29により検出された振動における所定周波数帯成分の振動波形Wを示している。ノック判定装置95は、この振動波形Wに基づいて、ノックの有無についての判定を行う。上記の所定周波数帯成分は、所定の下限周波数(例えば13kHz)以上かつ所定の上限周波数(例えば15kHz)以下の振動である。
【0015】
以下では、振動波形Wに含まれている所定の各一連の振動の波形を「個別波形Wo」とする。また以下では、振動波形Wにおいて、振動強度が所定の途絶判定強度Ytを下回っている時間が所定の途絶判定時間Xt以上継続していると判定される区間を、「途絶区間I」とする。
【0016】
個別波形Woは、時系列方向に並ぶ2つの途絶区間Iどうしの間の区間の波形である。途絶判定時間Xtは、上記の下限周波数(例えば13kHz)の逆数(この場合、略77μs)以上、かつ上記の上限周波数(例えば15kHz)の逆数(この場合、略67μs)の2倍(この場合、略133μs)以下の長さの時間(例えば90μs)である。
【0017】
ノック判定装置95は、図2に示すように、特徴抽出部33とノック判定部34と強制判定部35とを有する。特徴抽出部33は、図3に示すように、振動波形Wに複数の個別波形Woが含まれている場合に、振動強度の最大値が大きい個別波形Woから順に個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peを抽出する。
【0018】
図4は、図3の一部を拡大したグラフである。以下では、ゲート期間G内における時間と振動強度とを示す各点を「検出点P」とする。特徴抽出部33は、複数の検出点Pの中から、個別波形Woの特徴として、開始点Psと最大点Pmと終了点Peとを抽出する。最大点Pmは、個別波形Woにおいて振動強度が最大となる検出点(P250)である。開始点Psは、最大点Pmから時系列方向に遡って最初に途絶区間Iに至る直前の検出点(P237)である。終了点Peは、最大点Pmから時系列方向に下って最初に途絶区間Iに至る直前の検出点(P257)である。
【0019】
詳しくは、特徴抽出部33は、ゲート期間G内における所定の対象区間内において振動強度が最大となる点を、一の個別波形Woの最大点Pmとして抽出すると共に、当該一の個別波形Woの開始点Ps及び終了点Peを抽出する抽出作業を行う。その後、当該一の個別波形の開始点Psから終了点Peまでの区間を除外区間EXとして、上記の対象区間から除外して、再び上記の抽出作業を行う。それら一連の作業を、以下では「連続抽出作業」という。特徴抽出部33は、その連続抽出作業を、上記の対象区間が、図3に示すゲート期間Gの全区間である状態から開始することにより、振動強度の最大値が大きい個別波形Woから順に、個別波形Woの特徴を抽出する。
【0020】
ノック判定部34は、図5に示すように、特徴抽出部33により特徴Ps,Pm,Peが抽出された個別波形Woについて、当該特徴Ps,Pm,Peがノック波形の特徴か否かの特徴判定を行い、いずれかの個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peがノック波形の特徴と判定されることを条件にノック有と判定する。詳しくは、ノック判定部34は、少なくとも、開始点Psから最大点Pmまでの時間である増加時間Tsと、最大点Pmから終了点Peまでの時間である減衰時間Teとを用いて、ノック判定を行う。
【0021】
強制判定部35は、ノック判定部34によりノック有と判定されていない状態において、特徴判定が行われた個別波形Woの数としての特徴判定数が、2以上である所定の強制閾値Ntに達したことを条件に、ノック有と強制的に判定する。
【0022】
図1に示すように、ノック制御装置96は、以上に示したノック判定装置95とノック制御部36とを有する。ノック制御部36は、ノック有と判定された際に、ノックを抑える制御を行う。
【0023】
次に、以上に示した本実施形態の概要を補足する形で、本実施形態の詳細について説明する。
【0024】
図1は、内燃機関90を示す断面図である。内燃機関90は、エンジンブロック11、ピストン12、吸気バルブ13、排気バルブ14等を有する。内燃機関90に対しては、電子スロットル41、インジェクタ42、点火コイル43及びそれらを制御するECU30等が設置されている。
【0025】
ECU30は、運転者からの速度要求を、アクセルセンサ21を介して入力する。その入力に基づいて、空気量や燃料噴射量や点火タイミング等を制御する。具体的には、電子スロットル41を制御することにより空気量を制御し、インジェクタ42を制御することにより燃料噴射量を制御し、点火コイル43を制御することにより点火タイミングを制御する。検出部29は、エンジンブロック11に設置されており、内燃機関90に発生する振動を検出する。
【0026】
図2は、ECU30を示すブロック図である。ECU30は、デジタル変換部31と、バンドパスフィルタ32と、特徴抽出部33と、ノック判定部34と、強制判定部35と、ノック制御部36とを有する。そして、検出部29とデジタル変換部31とバンドパスフィルタ32と特徴抽出部33とノック判定部34と強制判定部35とが、ノック判定装置95を構成している。
【0027】
検出部29は、ゲート期間Gにおいて内燃機関90に発生した振動をアナログ信号で検出する。デジタル変換部31は、そのアナログ信号をデジタル変換する。バンドパスフィルタ32は、上記の下限周波数(例えば13kHz)以上、且つ上記の上限周波数(例えば15kHz)以下の振動を抽出することにより、上記の所定周波数帯(この場合、13~15kHz)の振動を抽出する。すなわち、上記の振動波形Wを抽出する。
【0028】
その振動波形Wから、特徴抽出部33が上記のとおり個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peを抽出する。その特徴Ps,Pm,Peから、ノック判定部34が上記のとおり特徴判定を行う。その特徴判定の回数である特徴判定数から、強制判定部35が上記のとおり強制判定を行う。それらの詳細については後述する。
【0029】
ノック制御部36は、ノック判定部34又は強制判定部35によりノック有と判定されない限りは、ECU30が内燃機関90を通常の点火タイミングで制御することを許容する通常制御を行う。他方、ノック判定部34又は強制判定部35によりノック有と判定された際には、ノック制御部36は、点火タイミングを通常制御の場合に比べて遅らせるノック抑制制御を行う。
【0030】
図3(a)は、バンドパスフィルタ32により抽出された振動波形Wの例を示すグラフである。グラフの横軸は時間を示し、グラフの縦軸は振動強度を示している。ゲート期間Gは、内燃機関90にノックが発生した際にそのノックによる振動が発生する期間であり、具体的には、例えば、膨張行程内における所定の60クランクアングルの期間である。
【0031】
以下では、振動強度が最も大きい個別波形Woを「第1個別波形Wo1」とし、次に振動強度の最大値が大きい個別波形Woを「第2個別波形Wo2」とする。
【0032】
特徴抽出部33は、まず、対象区間をゲート期間Gの全区間として、その対象区間内で振動強度が最も大きい検出点Pを、第1個別波形Wo1の最大点Pmとして抽出する。次に、その第1個別波形Wo1の開始点Psと終了点Peとを抽出する。次に、その第1個別波形Wo1の開始点Psから終了点Peまでの区間を除外区間EX(EX1)として、対象区間から除外する。次に、その除外区間EX(EX1)を除外した対象区間内で振動強度が最も大きい検出点Pを、第2個別波形Wo2の最大点Pmとして抽出する。次に、第2個別波形Wo2の開始点Psと終了点Peとを抽出する。次に、その第2個別波形Wo2の開始点Psから終了点Peまでの区間を除外区間EX(EX2)として、対象区間から除外する。以上の繰り返しで、振動強度の最大値が大きい個別波形Woから順に、当該個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peを抽出する。
【0033】
図4は、図3の一部を拡大したグラフである。バンドパスフィルタ32により抽出された所定周波数帯成分(13~15kHz)の振動からは、例えば10~20μs等の所定間隔毎に振動強度が検出される。それらの検出点P(P229~P259等)を時系列順に繋いだ曲線が振動波形Wである。
【0034】
特徴抽出部33は、上記のとおり、まず最大点Pmを抽出する。次に、最大点Pm(P250)から時系列方向に遡って、検出点Pが途絶判定強度Ytを所定回数(例えば8回)以上、最初に連続して下回る直前の検出点(P237)を開始点Psとして抽出する。ここでの所定回数(例えば8回)は、途絶判定時間Xtに相当する回数である。次に、最大点Pm(P250)から時系列方向に下って、検出点Pが途絶判定強度Ytを所定回数(例えば8回)以上、最初に連続して下回る直前の検出点(P257)を終了点Peとして抽出する。
【0035】
図5は、特徴抽出部33により3点Ps,Pm,Peが抽出された個別波形Woの例を示すグラフである。3点Ps,Pm,Peは、個別波形Woの一次的特徴に相当し、増加時間Ts及び減衰時間Teは、個別波形Woの二次的特徴に相当する。
【0036】
ノック判定部34は、個別波形Woの特徴判定において、図5(a)に示すように、その個別波形Woの増加時間Tsが所定の増加時間閾値Xsよりも小さく、且つその個別波形Woの減衰時間Teが所定の減衰時間閾値Xeよりも大きいことを条件に、その個別波形Woをノック波形と判定する。他方、ノック判定部34は、個別波形Woの特徴判定において、図5(b)に示すように、その個別波形Woの増加時間Tsが増加時間閾値Xsよりも大きい場合や、図5(c)に示すように、個別波形Woの減衰時間Teが減衰時間閾値Xeよりも小さい場合は、その個別波形Woをノック波形ではないと判定する。
【0037】
強制判定部35は、上記のとおり、特徴判定数が強制閾値Ntに達したことを条件に、強制的にノック有と判定する。その強制閾値Ntは、例えば2であっても、3であっても、4であっても、5であっても、6以上であってもよい。具体的には、強制閾値Ntは、特徴抽出部33やノック判定部34の処理速度の関係上、ノック判定装置95が特徴判定を実行できる限界の回数であることが好ましい。この強制閾値Ntは、固定数であってもよいし、例えば、内燃機関90の回転速度に応じて変化する変数、すなわち、回転速度が大きくなるほど小さくなる変数であってもよい。回転速度が大きくなるほど、内燃機関90の1回転当たりの時間が短くなり、ノック判定装置95が特徴判定を実行できる限界の回数が減るからである。
【0038】
図6は、ノック判定装置95による制御を示すフローチャートである。このフローの初期状態においては、「対象区間」はゲート期間Gの「全区間」であり、「最大点Pm」「開始点Ps」「終了点Pe」はいずれも「未抽出」であり、「特徴判定数」は「0」である。
【0039】
この図6のフローでは、まず、特徴抽出部33が、対象区間内における振動強度の最大値である最大強度が途絶判定強度Ytよりも大きいか否かを判定する(S331)。途絶判定強度Ytよりも小さいと判定した場合(S331:NO)、ノック判定部34は、ノック無と判定する(S343)。他方、S331で、最大強度が途絶判定強度Ytよりも大きいと判定した場合(S331:YES)、特徴抽出部33は、その最大強度の点を最大点Pmとして抽出する(S332)。次に、特徴抽出部33は、開始点Ps及び終了点Peを抽出する(S333,S334)。それらの詳細については、後述する。
【0040】
次に、ノック判定部34が、それら開始点Psと最大点Pmと終了点Peとからなる、個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peが、ノック波形の特徴か否かを判定する(S341)。つまり、特徴判定を行う。ノック波形の特徴であると判定した場合(S341:YES)、ノック有と判定する(S342)。
【0041】
他方、S341で、個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peがノック波形の特徴でないと判定した場合(S341:NO)、強制判定部35が、特徴判定数が強制閾値Nt以上であるか否かを判定する(S351)。強制閾値Nt以上であると判定した場合(S351:YES)、ノック有と判定する(S352)。他方、S351で特徴判定数が強制閾値Nt未満と判定した場合(S351:NO)、強制判定部35が、特徴判定数を1プラスしてから(S353)、特徴抽出部33が、現在の開始点Psから終了点Peまでの区間を、上記の対象区間から除外する(S330)。そして、再びS331に戻る。
【0042】
図7は、上記のS333での開始点Psの抽出の詳細を示すフローチャートである。このフローの初期状態においては、「対象点」は「最大点Pm」であり、「仮開始点」は「未抽出」であり、「途絶時間」は「0」である。
【0043】
S332の後は、まず、現在の対象点よりも時系列方向に1つ前の点を対象点に置き換える(S01)。次に、その対象点の振動強度が途絶判定強度Yt未満であるか否かを判定する(S02)。途絶判定強度以上である場合(S02:NO)、仮開始点及び途絶時間をクリアして(S03)、S01に戻る。他方、S02で、対象点の振動強度が途絶判定強度Ytよりも小さいと判定した場合(S22:YES)、仮開始点を抽出済か否かを判定する(S04)。
【0044】
S04で、仮開始点を未抽出と判定した場合(S04:NO)、現在の対象点よりも時系列方向に1つ後の点を、仮開始点として抽出すると共に(S05)、途絶時間のカウントを所定時間プラスして(S06)、S01に戻る。他方、S04で、仮開始点を抽出済と判定した場合(S04:YES)、途絶時間が、途絶判定時間Xt以上であるか否かを判定する(S07)。途絶時間が途絶判定時間Xt未満であると判定した場合(S07:NO)、途絶時間のカウントを所定時間プラスして(S06)、S01に戻る。他方、S07で、途絶時間が途絶判定時間Xt以上であると判定した場合(S07:YES)、現在の仮開始点を開始点Psとして確定して(S08)、S334に進む。
【0045】
S334の詳細についての説明は、上記のS333についての説明と、「仮開始点」を「仮終了点」に読み替え、「開始点Ps」を「終了点Pe」に読み替え、「1つ前」を「1つ後」に読み替え、「1つ後」を「1つ前」に読み替え、「S332」を「S333」に読み替え、「S333」を「S334」に読み替え、「S334」を「S341」に読み替えて、同様である。
【0046】
図8は、ゲート期間Gにおいて、最初に第1ノイズN1が発生し、次に第2ノイズN2が発生した場合の振動波形を示すグラフである。第1ノイズN1は、振動強度が大きく且つ振動強度の増加及び減衰が急激なノイズである。他方、第2ノイズN2は、振動強度が小さいノイズである。
【0047】
図8(a)は、この振動波形について、比較例のノック判定装置でノック判定を行った場合を示している。この比較例のノック判定装置は、ゲート期間Gの全範囲内において、振動強度が最初に途絶判定強度Yt以上になった点を開始点Psとし、振動強度が最大となった点を最大点Pmとし、振動強度が最後に途絶判定強度Yt以上になった点を終了点Peとする。
【0048】
そのため、この比較例では、最初に発生した第1ノイズN1において、振動強度が最初に途絶判定強度Yt以上になった点が開始点Psとなり、振動強度が最大になった点が最大点Pmとなる。そして、次に発生した第2ノイズN2において、振動強度が最後に途絶判定強度Yt以上になった点が終了点Peとなる。この場合、増加時間Tsが増加時間閾値Xsよりも小さくなり、且つ減衰時間Teが減衰時間閾値Xeよりも大きくなることにより、振動波形はノック波形であると誤判定されてしまう。すなわち、複数のノイズN1,N2による振動波形が、一のノック波形と誤認されてしまい、ノック有と判定されてしまう。
【0049】
その点、本実施形態では、図8(b)に示すように、第1ノイズN1による振動波形と第2ノイズN2による振動波形とが、特徴抽出部33等の機能により、それぞれ別々の個別波形Woとして認識されることになる。そして、第1ノイズN1については、減衰時間Teが減衰時間閾値Xeよりも小さいことで、ノック波形ではないと判定される。また、第2ノイズN2についても、減衰時間Teが減衰時間閾値Xeよりも小さいことで、ノック波形ではないと判定される。そのため、ノック無と判定される。以上のように、本実施形態によれば、比較例と違い、複数のノイズN1,N2による振動波形が一のノック波形と誤判定されるのを回避できる。
【0050】
図9(a)(b)は、ゲート期間Gにおいて、最初にノイズNが発生し、次にノックKが発生した場合の振動波形を示すグラフである。
【0051】
図9(a)は、この振動波形について、上記と同様の比較例のノック判定装置で、ノック判定を行った場合を示している。この比較例では、最初に発生したノイズNにおいて、振動強度が最初に途絶判定強度Yt以上になった点が開始点Psとなる。そして、次に発生したノックKにおいて、振動強度が最大になった点が最大点Pmとなり、最後に途絶判定強度Yt以上になった点が終了点Peとなる。この場合、増加時間Tsは増加時間閾値Xsよりも大きくなってしまう。そのため、振動波形はノック波形ではないと誤判定されてしまう。すなわち、ノイズNとノックKとの双方による振動波形が、一のノイズ波形と誤認されてしまい、ノック無と判定される。
【0052】
その点、本実施形態では、図9(b)に示すように、ノイズNによる振動波形とノックKによる振動波形とが、特徴抽出部33等の機能により、それぞれ別々の個別波形Woとして認識されることになる。そして、最初に発生したノイズNについては、減衰時間Teが減衰時間閾値Xeよりも小さいことにより、ノック波形ではないと判定される。しかし、ノックKについては、増加時間Tsが増加時間閾値Xsよりも小さく且つ減衰時間Teが減衰時間閾値Xeよりも大きいことにより、ノック波形であると判定される。そのため、ノック有と判定される。そのため、比較例の場合とは違い、ノイズNとノックKとの双方による振動波形が一のノイズ波形と誤判定されるのを回避できる。
【0053】
本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。特徴抽出部33は、振動波形に複数の個別波形Woが含まれている場合に、そのうちの複数の各個別波形Woから特徴Ps,Pm,Peを抽出する。そして、ノック判定部34は、いずれかの個別波形Woの特徴がノック波形の特徴と判定されることを条件にノック有と判定する。そのため、ゲート期間Gに発生する振動波形Wの全体一纏めの特徴がノック波形の特徴か否かに基づいてノック判定を行う場合(比較例)に比べて、複数のノイズN1,N2による振動波形を一のノック波形と誤判定したり、ノイズNとノックKとの双方による振動波形を一のノイズ波形と誤判定したりするのを抑制できる。そのため、ノック判定の精度を向上させることができる。
【0054】
さらに、次の効果も得られる。振動波形Wに数多くの個別波形Woが含まれている場合には、特徴抽出部33やノック判定部34の処理速度によっては、それら全ての個別波形について特徴判定を行うことができない場合がある。その点、強制判定部35は、ノック判定部34によりノック有と判定されていない状態において、特徴判定数が所定の強制閾値Ntに達したことを条件に、ノック有と強制的に判定する。そのため、振動波形Wに上記の強制閾値Nt以上の個別波形Woが含まれており、特徴抽出部33やノック判定部34の処理速度によっては、それら全ての個別波形Woについて特徴判定を行うことができない場合においても、対応可能になる。
【0055】
また、強制判定部35は、特徴判定数が強制閾値Ntに達したことを条件に、ノック有と判定するため、ノック判定部34によりノック無と判定できなかった場合には、ノック有と判定することなる。それにより、ノック判定部34によりノックの有無を判定できない場合には、ノックの有無をフェイルセーフ側に判定できる。
【0056】
また、次の効果も得られる。ノック波形の振動強度は、ノイズ等による振動強度と比較して一般的に大きくなり易い。その点、特徴抽出部33は、振動強度の最大値が大きい個別波形Woから順に、個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peを抽出する。そのため、効率的に、ノック波形である可能性の高い個別波形Woから順に、特徴判定を行うことができる。
【0057】
また、開始点Psと最大点Pmと終了点Peとの3点Ps,Pm,Peを用いることにより、少ない情報で効率的に個別波形Woの特徴を捉えることができる。そのため、特徴抽出部33やノック判定部34の処理の負担を軽減して、それらの処理を迅速に行うことができる。
【0058】
また、特徴抽出部33は、所定の対象区間内において振動強度が最大となる個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peを抽出する抽出作業を行う。その後、その個別波形Woの開始点Psから終了点Peまでの区間を除外区間EXとして、上記の対象区間から除外してから、再び上記の抽出作業を行う。その一連の連続抽出作業を、上記の対象区間がゲート期間Gの全区間である状態から開始することにより、効率的に、振動強度の最大値が大きい個別波形Woから順に、個別波形Woの特徴Ps,Pm,Peを抽出することができる。
【0059】
また、次の効果も得られる。ノック波形は、減衰波形であるため、増加時間Tsが短く減衰時間Teが長いという特徴を有する。その点、ノック判定部34は、増加時間Tsと減衰時間Teとを用いてノック判定を行う。そのため、効率的にノック判定を行うことができる。
【0060】
また、次の効果も得られる。振動波形Wは、上記の下限周波数(例えば13kHz)以上かつ上記の上限周波数(例えば15kHz)以下の振動の波形である。そのため、上記の下限周波数(例えば13kHz)の逆数(この場合、略77μs)は、振動波形Wに含まれ得る振動の1振動周期の上限(この場合、略77μs)に相当する。そして、途絶判定時間Xtは、その下限周波数の逆数以上の、すなわち、振動波形Wに含まれ得る振動の1振動周期の上限(この場合、略77μs)以上の時間(例えば90μs)である。そのため、振動強度が1振動周期以上の期間、途絶判定強度Ytを下回ったことを精度良く判定でき、個別波形Woが途切れたことを、精度良く判定できる。
【0061】
また、次の効果も得られる。振動波形Wは、上記の下限周波数(例えば13kHz)以上かつ上記の上限周波数(例えば15kHz)以下の振動の波形である。そのため、上記の上限周波数(例えば15kHz)の逆数の2倍(この場合、略133μs)は、振動波形Wに含まれ得る振動の2振動周期の下限(この場合、略133μs)に相当する。そして、途絶判定時間Xtは、その上限周波数の逆数の2倍以下の、すなわち、振動波形Wに含まれ得る振動の2振動周期の下限(この場合、133μs程度)以下の時間(例えば90μs)である。そのため、振動強度が2振動周期以上、途絶判定強度Ytを下回っているのに個別波形Woが途切れたと判定しないといった事態を、精度良く回避できる。
【0062】
また、ノック制御部36は、ノック判定部34又は強制判定部35によりノック有と判定された際に、ノック抑制制御を行う。そのため、ノック判定の結果を有効活用して、ノック抑制制御を行うことができる。
【0063】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。以下の実施形態においては、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等については、同一の符号を付する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0064】
図10は、特徴抽出部33により3点Ps,Pm,Peが抽出された個別波形Woの例を示すグラフである。以下では、最大点Pmにおける振動強度を「最大強度V」といい、その最大強度Vを増加時間Tsで割ったものを「増加率V/Ts」といい、最大強度Vを減衰時間Teで割ったものを「減衰率V/Ts」という。
【0065】
図10(a)に示すように、ノック判定部34は、個別波形Woの増加率V/Tsが所定の増加率閾値Zsよりも大きく、且つ減衰率V/Teが所定の減衰率閾値Zeよりも小さいことを条件に、その個別波形Woをノック波形と判定する。他方、図10(b)に示すように、個別波形Woの増加率V/Tsが増加率閾値Zsよりも小さい場合や、図10(c)に示すように、減衰率V/Teが減衰率閾値Zeよりも大きい場合は、その個別波形Woをノック波形でないと判定する。
【0066】
本実施形態によれば、増加時間Tsと減衰時間Teとに加えて、最大強度Vも用いてノック判定を行うことにより、より精度よくノック判定を行うことができる。
【0067】
[他の実施形態]
以上の実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。例えば、各実施形態では、プラスマイナスまで考慮した振動の強さを振動強度としているが、その振動の強さの絶対値を振動強度として、各実施形態を実施してもよい。
【0068】
また例えば、各実施形態では、特徴抽出部33は、振動強度が所定の途絶判定強度Ytを下回っている状態が所定の途絶判定時間Xt以上継続していると判定される区間を、途絶区間Iとしている。これに代えて、振動波形Wの極大値が2回以上連続で途絶判定強度Ytを下回っている区間を、途絶区間Iとしてもよい。
【0069】
また例えば、特徴抽出部33は、図6に示すS331において、対象区間内における最大強度が、途絶判定強度Ytよりも大きいか否かを判定しているが、これに代えて、当該最大強度が、途絶判定強度Ytよりも大きい所定の判定強度以上であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0070】
また例えば、各実施形態では、特徴抽出部33は、振動強度の最大値が大きい個別波形Woから順に当該個別波形Woの特徴を抽出しているが、時系列的に先に発生した個別波形Woから順に当該個別波形Woの特徴を抽出するようにしてもよい。
【0071】
また例えば、第1実施形態等では、ノック判定部34は、3点Ps,Pm,Peのみを用いてノック判定を行っているが、追加の点を加えた4点以上を用いてノック判定を行うようにしてもよい。また例えば、第1実施形態では、増加時間閾値Xsや減衰時間閾値Xeは固定であるが、最大強度に基づいて変化するようにしてもよい。
【0072】
また例えば、強制判定部35では、特徴判定数が強制閾値Nt以上であることを条件に、ノック有と判定しているが、当該特徴判定数が強制閾値Nt以上であることを条件に、ノック無と判定するようにしてよい。このような態様は、ノック有をノック無と誤判定する弊害よりも、ノック無をノック有と誤判定する弊害の方が大きい場合や、ノック有であることをより慎重に判定したい場合等に有効である。
【0073】
また、各実施形態等では、ノック制御部36は、ノック判定部34又は強制判定部35によりノック有と1回判定されることを条件にノック抑制制御を行うが、ノック有と複数回判定されることを条件にノック抑制制御を行うようにしてもよい。この場合には、より慎重にノック抑制制御に移行できる。
【符号の説明】
【0074】
29…検出部、33…特徴抽出部、34…ノック判定部、35…強制判定部、90…内燃機関、95…ノック判定装置、G…ゲート期間、Nt…強制閾値、Ps…開始点、Pm…最大点、Pe…終了点、W…振動波形、Wo…個別波形。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10