(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】形態改質された異相プロピレン共重合体およびその製品
(51)【国際特許分類】
C08F 255/02 20060101AFI20231206BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08F255/02
C08F8/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020032966
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2020-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】201921014794
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】518386656
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INDIAN OIL CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッチヤス,ヴィマル カッカラッカル
(72)【発明者】
【氏名】セスラマリンガム,サランヤ
(72)【発明者】
【氏名】シヴァ,ナレシュ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジャティンダー ダリワル
(72)【発明者】
【氏名】ゴエル,ヴィシャール
(72)【発明者】
【氏名】チャクラワル,プラブフ ナライン
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,アビラーシャ
(72)【発明者】
【氏名】シャシカント
(72)【発明者】
【氏名】カプール,グルプリート シン
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール,サンカラ スリ ヴェンカタ
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】海老原 えい子
【審判官】大畑 通隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6310140(US,B1)
【文献】特開2013-189626(JP,A)
【文献】特開2003-321553(JP,A)
【文献】特開平4-25519(JP,A)
【文献】特表2012-533648(JP,A)
【文献】特許第3272358(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F255/02
C08F8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形態改質異相ポリマーを調製する方法であって、
(i)多官能性添加剤と過酸化物とを
予混合し、有機溶媒
を加えて形態改質剤組成物を得て、形態改質剤組成物を異相ポリマーと混合して予混合組成物を得るステップ
を含み、
有機溶媒は形態改質異相ポリマー1kgあたり0.5~60ml加えられ、多官能性添加剤と過酸化物との予混合が、10~35℃の範囲の温度、または、有機溶媒、過酸化物若しくは多官能性添加剤の沸点より低い温度で行われ、
(ii)予混合組成物を
160~300℃の範囲の温度で押出成形して
、形態改質異相ポリマーを得るステッ
プを含み、
形態改質異相ポリマーは、ASTM規格D256に従ったノーブレーク衝撃強度が室温で500J/m~700J/mであり、ASTM D1238に従った高メルトフローインデックスが230℃で3~150g/10分であり、ASTM規格D790に従った平衡曲げ弾性率が23℃で700~1400MPaであり、
多官能性添加剤は不飽和有機ビニル化合物であり、
有機溶媒はアセトン、ジクロロメタン(DCM)、パラフィン油、およびエタノールからなる群から選択され、
異相ポリマーは2つの異なる相を有し、
第1相がプロピレンポリマー相であり、第2相がエチレンポリマー相であり、
プロピレンポリマー相がホモポリプロピレンと、プロピレンとエチレンの共重合体と、必要に応じてC4~C10アルファオレフィンとを含み、プロピレンポリマー相中のプロピレン含有量が90~95重量%であり、
エチレンポリマー相がホモポリエチレンと、エチレンとC3~C10アルファオレフィンの共重合体とを含み、エチレンポリマー相中のエチレン含有量が20~50重量%であり、
異相ポリマーが、粉体形態または造粒物形態から選択される形態で使用され、
異相ポリマーの粉体形態が、インパクト共重合体ポリプロピレン粉体であり、異相ポリマーの造粒物形態が、インパクト共重合体ポリプロピレン押出造粒物であることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の方法であって、予混合組成物が
、二軸スクリュー押出機で押出成形されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項
1に記載の方法であって
、不飽和有機ビニル化合物
が、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラートおよびブタンジオールジアクリラートからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項
1に記載の方法であって、多官能性添加剤の添加量が
形態改質異相ポリマーの1000~7500ppmであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項
1に記載の方法であって、過酸化物が過酸化アルキルおよびペルオキシエステルからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項
1に記載の方法であって、過酸化物の添加量が
形態改質異相ポリマーの25~2000ppmであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項
1に記載の方法であって、
多官能性添加剤と過酸化物との予混合を2分~30分間行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項
1に記載の方法であって、ステップ(i)が
さらに、酸化防止剤、酸捕捉剤、および核剤添加剤パッケージを添加する
手順を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形態改質された異相ポリマーに関する。特に、本発明は、開始剤および反応器外(ex-reactor)のポリプロピレン共重合体上の多官能性化合物/添加剤の存在下で異相プロピレンポリマーの形態を改質する方法に関する。より具体的には、室温でのノッチ付アイゾット試験に従って定められるノーブレーク(no-break)の耐衝撃性を備えた、より高いメルトフローインデックスを有する形態改質異相ポリマー/異相プロピレン共重合体を得る方法を説明する。
【背景技術】
【0002】
製品開発における最近の傾向の1つは、3つ以上の分散相を含むポリプロピレン(PP)システムである。そのような混合の設計コンセプトは、一方の長所が他方の短所を補うような方法で副成分を選択することである。変形メカニズムの温度依存性により、ポリプロピレンの強靭化に最適な粒子サイズは温度の上昇とともに小さくなるので、分散相サイズの二様性は、広い温度範囲にわたって強靭性を確保するための有望なアプローチとなり得る。
【0003】
製品開発は、単にPPホモポリマーを、エチレン-プロピレン(EPR)やエチレン-プロピレン-ジエンエラストマー(EPDM)などの外部で生産されたエラストマーと、種々の分量で溶融混合することから開始し、0℃までのPPの臨界ガラス転移温度(Tg)を克服し、徐々に独自の科学技術に発展した。多段重合プロセスにおいて制御された粒子形態するとともに、高度な触媒(チーグラー-ナッタ触媒(ZN)、メタロセン触媒、幾何拘束触媒など)を使用することにより、異相(インパクト)プロピレン共重合体の製造が可能となった。結晶性PPマトリックスと分散非晶性EPエラストマー相とともに、これらの多相PP共重合体を利用することは、もはや技術分野や自動車分野に限定されることなく、パイプ材料や幅広い高度なパッケージソリューションをも含む。「ブロック共重合体」は、スフェリポル(Spheripol)法やボルスター(Borstar(登録商標))PP法のようなバルク/気相の組み合わせなどの、マルチリアクター気相プラントで製造される。結晶性PPマトリックス(最初の1~2反応器で生成)と、耐衝撃性および耐低温性を規定するEPRおよびPE(1つ以上の後述の反応器で生成)の埋め込み粒子とを組み合わせたグレードは、後に異相共重合体またはインパクト共重合体と呼ばれるようになった。反応器インパクト共重合体には、結晶性PPマトリックスとアモルファスEPRに加えて、PPとPEの両方の結晶化可能セグメントと、さらにはC3と共重合した均一な中密度PEとを有する結晶性共重合体が発見され得る。この複雑な構造の解明は、クロス分別と、分子構造をこれらの材料の性能に相関させるさまざまな技術とを組み合わせることにより、進歩している。このことは、マトリックスと分散相間の相挙動および界面接着に大きく影響する。
【0004】
分散ドメインのサイズ、形状、内部構造および空間パッキングは、機械的性能だけでなく、表面の外観、透明性、移動性などの特性にも影響を与える重要なパラメーターである。この「相形態」は、構成要素のレオロジー、マトリックスと分散相間の互換性および処理条件の複雑な結果である。EPR組成のバリエーションは、3つすべてに影響することが示されている。
【0005】
単にPPインパクト共重合体のEPR重量分率を増大させることは、粒子間距離を減少させ、かつ、エネルギー吸収能力を増大させることによって靭性を向上させるための一般的なアプローチである。実際に、EPR濃度の関数として、段階的に脆性から強靭への遷移が観察される。
【0006】
ポストリアクターの改質:歴史的に、PPは、例えばEPR、EPDM、またはポリスチレン-ブロック-ポリ(エチレン-コ-but-1-ene)-ブロック-ポリスチレン(SEBS)などのさまざまな衝撃改質剤と混合されて、衝撃挙動を改善したり、概してこれらの材料の特性プロファイルのバランスをとってきた。新しい方法と触媒の開発により、これらの材料をその場(in-situ)で調製することが可能になり、その結果として得られたシステムは構造が非常に複雑であり、構造と特性の関係を確立するために高度な分析が必要とする。
【0007】
構成要素の適合性が高いほど、室温での衝撃高度が高くなる。
【0008】
さらに可能なことは、例えば、過酸化物によって開始されるラジカル反応において、反応器グレードの化学的改質や分解である。ラジカル反応中の温度および助剤(co-agents)の存在によっては、グラフトPP、分岐PP、または分解(ビスブロークン)PPが得られる。過酸化物によって引き起こされる分解またはビスブレーキングは、PPの流動特性を高めるためにしばしば用いられる。
【0009】
PPホモポリマーがベース材料として使用される場合、カップリング剤の存在下でラジカル修飾と再結合とを組み合わせることにより、長鎖分岐を伴う高溶融強度PPとなる。インパクト共重合体がベース材料である場合、同じ方法で反応性改質共重合体が得られる。フリーラジカル開始剤とジエンのような助剤を添加することにより、PPにグラフトしたエチレン-プロピレンが形成される。これにより、PPマトリックスおよびEPR粒子間のインターフェースを強化し、粒子が凝集する傾向を減少させる。これらの材料は、改良された形態と大幅に高められた衝撃強度を示す。
【0010】
WO2012049690A1は、高溶融強度プロピレンポリマーの調製方法について述べている。この調製方法は、有機過酸化物10~50ppm、および、例えば安定剤、酸中和剤、抗酸化剤または潤滑剤のような添加剤0.2~20w/w%の存在下で、ベースとなるプロピレンポリマーと、多官能性アクリラートモノマー0.1~1w/w%とを混合するステップを含む。
【0011】
US20130059958A1は、開始前のステップを含む多官能性モノマー(PFMs)の溶融グラフト化によるプロピレンポリマーの改質方法を取り扱うものである。この方法によって、ポリマーマトリックス上のPFMsの完全な吸収を促進し、かつ、フリーラジカル開始剤を使用せずに、反応押出成形の前にグラフト化を開始することにより、分岐をプロピレンポリマーマトリックスに導入することができる
【0012】
US20070004864A1は、ポリプロピレン組成物およびその組成物を調製する方法に係るものである。当該方法は、アイソタクチックポリプロピレン、少なくとも1種類の耐衝撃性改質ポリマー、単官能性モノマーである、少なくとも1種類の一次助剤、多官能性モノマー、オリゴマーまたはポリマーである、少なくとも1種類の二次助剤、およびラジカル開始剤を混合し、押出し成形するステップを含む。この組成物は押出機で調製することができる。
【0013】
WO2016014122A1は、(a)プロピレンホモポリマーと、プロピレン共重合体と、50重量%までの1種類以上のコモノマーとからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相を含む異相ポリマー組成物に関する。
【0014】
WO2015138300A1は、(a)プロピレンホモポリマーと、プロピレン共重合体と、50重量%までのエチレンやC4-10 α-オレフィンモノマーとからなる群から選択されるプロピレンポリマーとを含むプロピレンポリマー相を含む異相ポリマー組成物に関する。
【0015】
WO2010009825A1は、少なくとも1種類の有機過酸化物と、助剤としての多官能性アクリラートとを過酸化物/助剤の比率が1:0.4~1:5となるように添加するとともに、酸掃去剤を添加するステップを含む、改質ポリプロピレン組成物の製造方法に関する。
【0016】
上記議論を考慮すると、異相インパクト共重合体の課題は、100dg/分よりも高いメルトフローインデックスに加えて、衝撃強度と曲げ弾性率の適切なバランスを維持することであることは明らかである。したがって、本発明において、曲げ弾性率に影響を与えることなく、より高いメルトフローとともに最も高いノーブレーク(no-break)の耐衝撃性を有するPP組成物を得るという課題が解決される。
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、形態改質された異相ポリマーを提供すること、および、多官能性添加剤および有機過酸化物を使用した、異相ポリプロピレン共重合体の形態改質のための新規かつ経済的な方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、ポリプロピレンの異相共重合体の形態改質を提供することであり、その形態改質には、形態改質剤組成物の調製の新規かつ経済的な方法と、反応器押出成形後のプロセスとを含む。本発明の他の目的は、射出成形、薄壁射出成形、配合用途などに有用な形態改質製品を提供することである。
【0018】
したがって、本発明は、異相ポリマーが以下の2つの異なる相を含む、形態改質異相ポリマーを提供するものである。形態改質異相ポリマーは、第1相と第2相を含む。第1相は、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンの共重合体、および必要に応じてC4~C10アルファオレフィンとを含むプロピレンポリマー相であり、プロピレンポリマー相中のプロピレン含有量が90~95重量%である。第2相は、ホモポリエチレンと、エチレンおよびC3~C10アルファオレフィンの共重合体とを含むエチレンポリマー相であり、エチレンポリマー相中のエチレン含有量が20~50重量%である。形態改質異相ポリマーは、ASTM規格D256によるノーブレーク衝撃強度が500J/m~700J/mであり、ASTM D1238による高メルトフローインデックスが3~150g/10分であり、ASTM規格D790による平衡(balanced)曲げ弾性率が700~1400MPaを有する。
【0019】
本発明の特徴の1つとして、形態改質異相ポリマーが、室温で測定するノッチ付きアイゾッド試験によって規定される、ノーブレーク衝撃強度を有する。本発明の他の特徴として、形態改質異相ポリマーは、最大1800MPaまでの平衡曲げ弾性率を有する。
【0020】
本発明の他の特徴として、形態改質異相ポリマーにおけるエチレン含有量が、5~75重量%であり、好ましくは8~20重量%である。
【0021】
本発明の他の特徴として、形態改質異相ポリマーにおけるプロピレン含有量が、90~95重量%である。
【0022】
本発明の特徴の1つとして、C4~C10アルファオレフィンが、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-オクテンおよび1-デセンからなる群から選択されるものである。
【0023】
本発明の他の特徴として、C3~C10アルファオレフィンが、1―プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-オクテンおよび1-デセンからなる群から選択されるものである。
【0024】
本発明のさらに他の特徴として、プロピレンポリマー相中のエチレン濃度が5~50%である。
【0025】
本発明の他の特徴として、形態改質異相ポリマーにおいて、エチレン相またはプロピレン相のいずれかが、不均質ポリマー系の連続相および離散相を構成する。エチレン相とプロピレン相の濃度は、離散相または分散相の濃度によって大きく異なる場合がある。
【0026】
さらに他の実施形態として、エチレンポリマー相を、エチレンプロピレン共重合体またはエチレンオクタンベースのエラストマーで調製することができる。
【0027】
本発明はまた、形態改質異相ポリマーを調製する方法を提供する。当該方法は、(i)有機溶媒中で多官能性添加剤と過酸化物を予混合して形態改質剤組成物を得て、その形態改質剤組成物を異相ポリマーと混合して予混合組成物を得るステップと、(ii)予混合組成物を押出成形し、形態改質異相ポリマーを得るステップとを含む。
【0028】
本発明の特徴の1つとして、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、予混合された組成物が、二軸スクリュー押出機(TSE)で160~300℃の温度で押出成形される。
【0029】
本発明の別の特徴として、形態改質異相ポリマーの調製方法において、多官能性添加剤が不飽和有機ビニル化合物であり、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラートおよびブタンジオールジアクリラートからなる群から選択される。
【0030】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、多官能性添加剤の添加量が1000~7500ppmである。
【0031】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、過酸化物は、アルキル過酸化物およびペルオキシエステルを含む群から選択される。
【0032】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、過酸化物の添加量が25~2000ppmである。
【0033】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、有機溶媒が、アセトン、ジクロロメタン(DCM)、パラフィン油、およびエタノールからなる群から選択される。
【0034】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、有機溶媒の添加量が0.5~60ml/kgである。
【0035】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーの調製方法において、予混合を10~35℃、または、有機溶媒、過酸化物、もしくは多官能性添加剤の沸点を超えない温度で行う。
【0036】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、予混合を2分~30分間行う。
【0037】
本発明の特徴の1つとして、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、ステップ(i)が、抗酸化剤、酸捕捉剤および核剤添加剤パッケージを添加することを含む。
【0038】
本発明の好ましい特徴の1つとして、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、異相ポリマーが2つの異なる相を有している。異相ポリマーは第1相と第2相とを有する。第1相は、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンの共重合体、および必要に応じてC4~C10アルファオレフィンを含み、プロピレンポリマー相中のプロピレン含有量が90~95重量%である、プロピレンポリマー相である。第2相は、ホモポリエチレン、およびエチレンとC3~C10アルファオレフィンの共重合体を含み、エチレンポリマー相中のエチレン含有量が20~50重量%である、エチレンポリマー相である。
【0039】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、異相ポリマーが(i)ホモポリプロピレンおよび(ii)エチレンとプロピレンの共重合体の、2つの異なる相を有している。異相ポリマーは2段階のプロセスで製造され、ホモポリプロピレンの重合が第1反応器で行われ、エチレンプロピレンゴムの重合が第2反応器で行われる。
【0040】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、重合がチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下で行われる。
【0041】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、エチレンプロピレン共重合体のエチレン含有量が10~80重量%である。
【0042】
本発明のさらに別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、異相ポリマー中のエチレン含有量が8~20%であることである。
【0043】
本発明の別の特徴として、形態改質異相ポリマーの調製方法において、ASTM D5492による異相ポリマーのキシレン含有量が10~30重量%であり、ASTM D1238によるメルトフローインデックス(MFI)が10~100g/10分であり、ASTM規格D790による曲げ弾性率が700~1300MPAであり、ASTM規格D256による室温で測定されるノッチ付きアイゾッド法によって定められる衝撃強度が80~700J/mである。
【0044】
本発明の特徴の1つとして、形態改質異相ポリマーが、高流動性および高衝撃性の特性向上をもたらすことである。
【0045】
本発明の別の特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、予混合された組成物が、二軸スクリュー押出機で160~300℃の温度で押出成形される。好ましい特徴の一つとして、予混合された組成物が、二軸スクリュー押出機で100~280℃で押出成形される。
【0046】
好ましい特徴として、形態改質異相ポリマーの調製方法において、多官能性添加剤が、不飽和有機ビニル化合物であり、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、およびブタンジオールジアクリラートからなる群から選択されるものである。別の特徴として、多官能性添加剤の添加量が1000~7500ppmである。
【0047】
他の好ましい特徴として、形態改質異相ポリマーを調製するための方法において、過酸化物が、過酸化アルキルおよびペルオキシエステルからなる群から選択される。一つの特徴として、過酸化物は、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tertブチルペルオキシベンゾエート、およびルプロックス(Luprox)101、ルプロックス100、トリガノックス(Triganox)101、トリガノックス301などの商品名のラウリルペルオキシドからなる群から選択される。別の特徴として、ペルオキシドの添加量が25~2000ppmである。
【0048】
別の好ましい特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、有機溶媒が、アセトン、ジクロロメタン(DCM)、パラフィン油、およびエタノールを含む群から選択される。本発明のさらに別の特徴として、有機溶媒が0.5~60ml/kg添加される。
【0049】
好ましい特徴として、形態改質異相ポリマーを調製するための方法において、予混合は10~35℃、または、有機溶媒、過酸化物、もしくは多官能性添加剤の沸点を超えない温度で行われる。別の好ましい特徴として、予混合を2~30分間行う。好ましくは、予混合を2~20分間行う。より好ましくは、予混合を5~10分間行う。さらに別の特徴として、予混合を、不活性ガスの存在下または空気の存在下のいずれかで、周囲圧力で行う。
【0050】
別の好ましい特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、ステップ(i)は、抗酸化剤(一次、二次)、酸捕捉剤、および核剤添加剤パッケージを加える手順を含む。別の特徴として、抗酸化剤が一次および二次である。
【0051】
一つの特徴として、形態改質異相ポリマーを調製する方法において、異相ポリマーが(i)ホモポリプロピレンと、(ii)エチレンとプロピレンの共重合体との2つの異なる相を有している。異相ポリマーは、2段階のプロセスで製造され、ホモポリプロピレンの重合が第1反応器で行われ、エチレンプロピレンゴムの重合が第2反応器で行われる。好ましい特徴として、重合がチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下で行われる。さらに他の特徴として、エチレンプロピレン共重合体のエチレン含有量が10~80重量%である。1つの特徴として、異相ポリマー中のエチレン含有量が8~20%である。他の好ましい特徴として、ASTM D5492による異相ポリマーのキシレン含有量が10~30重量%であり、ASTM D1238によるメルトフローインデックス(MFI)が10~100g/10分であり、ASTM規格D790による曲げ弾性率が700~1300MPAであり、ASTM規格D256による室温で測定されるノッチ付きアイゾッド法によって定められる衝撃強度が80~700J/m(ノーブレーク、すなわち500J/mより大きい)である。
【0052】
本発明はまた、第1相と第2相という2つの異なる相を有する形態改質異相ポリマーを提供する。第1相はプロピレンポリマー相であり、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンの共重合体、および必要に応じてC4~C10アルファオレフィンを含み、プロピレンポリマー相中のプロピレン含有量が90~95重量%である。第2相はエチレンポリマー相であり、ホモポリエチレン、およびエチレンとC3~C10アルファオレフィンの共重合体を含み、エチレンポリマー相中のエチレン含有量が20~50重量%の範囲である。形態改質異相ポリマーは、ASTM規格D256による500J/m~700J/mのノーブレーク衝撃強度、ASTM D1238による3~150g/10分の高メルトフローインデックス、および、ASTM規格D790による700~1400MPaの平衡曲げ弾性率を有する。形態改質異相ポリマーは、有機溶媒中で多官能性添加剤と過酸化物を予混合することにより形態改質剤組成物を得て、形態改質剤組成物を異相ポリマーと混合することにより予混合組成物を得て、予混合組成物を押出成形ことによって得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は様々な変形形態および代替形態が可能であるが、その具体的な実施形態を以下に詳細に説明する。当然理解できることであるが、本発明を、開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲内にあるすべての変形形態、均等形態、および代替形態を包含する。
【0054】
以下の記載は、単に例示的な実施形態に過ぎず、本発明の範囲、適用可能性、または構成を限定することを意図するものではない。むしろ、以下の記載は、本発明の例示的な実施形態を実施するための好適な例示を提供する。記載された実施形態に対する様々な変更は、本発明の範囲から逸脱することなく、記載された構成要素の機能および配置においてなされてもよい。
【0055】
本発明は、多官能性添加剤および有機過酸化物を使用する異相ポリプロピレン共重合体の形態改質のための新規かつ経済的な方法を提供することを意図する。形態改質は、ポリプロピレンのインパクト共重合体のゴム相と、ポリプロピレンのインパクト共重合体のホモポリマーマトリクスとの相互作用の強化を伴う。その結果、反応器後の樹脂のメルトフロー特性が数倍増加するのに伴い、反応器後の改質樹脂の耐衝撃性が数倍にまで強化される。
【0056】
本発明は、ポリプロピレンの異相共重合体の形態改質に関し、形態改質剤組成物の調製の新規かつ経済的な方法および反応器後の押出成形プロセスを伴う。
【0057】
ポリマー:
本発明で述べる異相ポリマーは、2つの異なる相、すなわち、2段階プロセスで製造される、ホモポリプロピレンと、エチレンとプロピレンの共重合体とを有する。ホモポリプロピレンの重合が第一反応器で行われ、第二反応器でエチレンプロピレンゴム重合が行われ、必要に応じて第三反応器でも同様に重合が行われてもよい。この重合プロセスで使用される触媒は、チーグラー-ナッタ触媒またはメタロセン触媒とすることができる。エチレンプロピレン共重合体のエチレンの比率は10~80重量%である。ASTM D5492による、最終的な異相ポリマーにおけるエチレン含有量は8~20%であり、得られたポリマーのキシレン含有量は10~25重量%である。ASTM D1238による、不均一ポリマーのMFIは、3~12g/10分である。ASTM規格D790による、異相ポリマーの曲げ弾性率は700~1300MPAであり、また、ASTM規格D256による、室温で測定されるノッチ付きアイゾッド法により規定される衝撃特性は80~700J/mである。本発明で述べる異相ポリマーは、反応器外における粉体形態または造粒物形態で使用される。
【0058】
方法:
本発明の方法は、2つのステージを含む。ステージ1は、形態改質剤組成物の調製、および、反応性改質添加剤/形態改質剤組成物と異相ポリマーとを混合するステップを含む。ステージ2は、反応押出成形プロセスを含み、ステージ1で得られた最終混合物を150℃~260℃で、二軸押出機で押出成形する。
【0059】
ステージ1
形態改質添加剤/反応性改質添加剤混合物/形態改質剤組成物:
有機溶媒(例えば、アセトン、DCM、パラフィン油、エタノール)において多官能性添加剤と過酸化物の予混合を0~100ml/kg、好ましくは5~40ml/kg、より好ましくは5~20ml/kgの範囲で行う際は、10~35℃、または、有機溶媒、過酸化物、もしくは多官能性添加剤の沸点を超えない温度で行うことが好ましい。予混合は、2分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、特に30分~45分以上行う。予混合は、不活性ガスの存在下または空気の存在下のいずれかで、周囲圧力で行う。
【0060】
このようにして調製された形態改質剤組成物を、異相ポリプロピレンなどのポリオレフィン(ランダム共重合体およびブロック共重合体を含む共重合体)に添加する。上記の方法で得られた形態改質剤組成物を、バッチミキサー/高速ミキサーまたは二軸押出機の液体供給システムにおける、ポリオレフィンの反応器粉体または造粒物に添加する場合、液体の状態で使用してもよい。
【0061】
抗酸化剤、酸掃去剤および核剤添加剤パッケージとともに、インパクト共重合体PP粉体の反応器粉体とPETA(ペンタエリスリトールトリアクリラート)および過酸化物溶液の予混合を、室温でかつ周囲圧力下で、高速ミキサーにおいて平均滞留時間が5分~30分以上、より好ましくは2分間以上行う。
【0062】
抗酸化剤(一次、二次)、酸掃去剤、および核剤添加剤パッケージは、ポリプロピレン反応器粉体と反応性改質添加剤の混合物とともに、高速ミキサーにおいてppmレベル(750、750)、350p、250ppmのそれぞれで混合する際に添加される。一方、インパクト共重合体ポリプロピレン造粒物には、製造方法の押出成形段階で添加される固有のこの添加剤パッケージを含む。
【0063】
この実験で使用される一次および二次抗酸化剤は、テトラキスメチレン[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロコンナメート]メタン(Irganox(登録商標)1010)とトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸(Irganox 168)とを組み合わせたものである。ここで使用される核剤はHPN20Eであり、これらの実験で使用される酸掃去剤はステアリン酸カルシウムである。
【0064】
一次および二次抗酸化剤の添加量は250ppm~1%であり、好ましくは250~5000ppmであり、より好ましくは250~1500ppmである。核剤および酸掃去剤の添加量は250ppm~2%であり、好ましくは250~5000ppmであり、より好ましくは250~1500ppmである。
【0065】
ステージ2-反応押出成形プロセス:
次いで、予混合された混合物を、最大スクリュー回転速度が800rpmであり、スクリューの直径が26mmであり、長さ/直径比が40:1である、Labtech社製の二軸スクリュー押出機で溶融混合した。押出機の速度は100~200rpmに維持し、バレル温度は100~250℃に維持し、供給率は8~20kg/時に維持した。改質されたバッチの押出成形物を、水浴で冷却した後、2~3mmサイズのペレットにペレット化した。
【0066】
本発明により得られた組成物は、特定の形態で、好ましくは最終配合プロセスに添加する際のペレットとして使用することができる。このようにして得られた組成物は、微粉体として使用してもよい。
【0067】
本発明の特徴の1つとして、形態改質異相ポリマーが、ノーブレーク衝撃強度と、平衡曲げ弾性率を有し、100g/10分(これに限定されない)という非常に高いメルトフローインデックスとを有する衝撃強度の改善されたPPを有する。この形態改質異相ポリマーは、従来のチーグラー-ナッタ触媒および従来の方法を使用して製造されるPPを改質することにより開発された。その方法では、衝撃強度が100J/m、MFIが10g/分、曲げ弾性率が中程度に制限される。この改質により、メルトフローインデックスと衝撃強度の両方が同時に改善される。この改質は、高分子産業で使用される従来の押出機で行うことができ、過酸化物などの活性剤や希釈剤などの反応安定剤の存在下で多官能性化合物を添加して行う。
【0068】
上記の形態改質異相ポリマーも、FDAおよびREACH規制に合格した試料である。
【0069】
本発明の他の特徴として、異相ポリオレフィンポリマーは2つの異なる相からなっており、第1相は、プロピレンポリマー相であり、プロピレンとエチレンのホモポリマーおよび共重合体やC4~C10アルファオレフィンのホモポリマーおよび共重合体からなり、エチレン濃度は最大で50%とすることができる。第2相はエチレンポリマー相であり、エチレンとC3~C10アルファオレフィンのホモポリマーおよび共重合体からなる。
【0070】
エチレンポリマー相は、エチレン、または、エチレンおよびC3~C10アルファオレフィンの共重合体のみからなるものであってもよく、それに基づいてエチレン含有量は8~90重量%の間で変化してもよい。
【0071】
ここで、エチレン相またはプロピレン相のいずれかが、不均質ポリマー系の連続的かつ離散的な相を構成する。エチレン相とプロピレン相の濃度は、離散相または分散相の濃度によって大きく異なっていてもよい。
【0072】
プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は80%以上となり得るし、異相組成物中のエチレン含有量は5~75重量%となり得る。同様に、エチレンポリマー相は、エチレンプロピレン共重合体またはエチレンオクタンベースのエラストマーからなっていてもよい。
【0073】
以下の非限定的な例は、本発明について詳細に説明するものである。しかしながら、それらは、いかなる形であれ本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0074】
実施例
ポリマー:
PP1Aは、プロピレンおよびエチレンの共重合体の反応器粉体/異相ポリマーであり、MFR2(230℃)が9~11g/10分、エチレン含有量が14~15%、キシレン可溶量が21~23重量%、曲げ弾性率が800~1000MPa、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度が500J/mより大きいものである。
【0075】
PP1Bは、プロピレンとエチレンの共重合体の押出造粒物であり、MFR2(230℃)が9~11g/10分、エチレン含有量が14~15%、キシレン可溶量が21~23重量%、曲げ弾性率が800~1000MPa、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度が500J/mより大きいものである。
【0076】
PP2Aは、プロピレンとエチレンの共重合体の反応器粉体であり、MFR2(230℃)が7~9g/10分、エチレン含有量が8.5~10.5%、キシレン可溶量が18~20重量%、曲げ弾性率が1000MPa~1200MPa、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度が100~200J/mのものである。
【0077】
PP2Bは、プロピレンとエチレンの共重合体の押出造粒物であり、MFR2(230℃)が7~9g/10分、エチレン含有量が8.5~10.5%、キシレン可溶量が18~20重量%、曲げ弾性率が1000MPa~1200MPa、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度が100~200J/mのものである。
【0078】
PP3Aは、プロピレンとエチレンの共重合体の反応器粉体であり、MFR2(230℃)が9~12g/10分、エチレン含有量が8~10%、キシレン可溶量が16.5~19.5重量%、曲げ弾性率が1000MPa~1200MPa、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度が100~200J/mのものである。
【0079】
PP3Bは、プロピレンとエチレンの共重合体の押出造粒物であり、MFR2(230℃)が9~12g/10分、エチレン含有量が8~10%、キシレン可溶量が16.5~19.5重量%、曲げ弾性率が1000MPa~1200MPa、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度が100~200J/mのものである。
【0080】
PP4は、プロピレンとエチレンの共重合体の反応器粉体であり、MFR2(230℃)が3~4g/10分、エチレン含有量が9~10%、キシレン可溶量が15.5~18.5重量%、曲げ弾性率が1000MPa~1200MPa、衝撃強度が150J/mより大きいものである。
【0081】
化学製品の詳細:
実施例で使用される化学製品の詳細は次のとおりである。
●過酸化物1-Luperox 101(2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン)分子量290g/mol,0.877g/ml,およびアッセイ90%。
●過酸化物2-Triganox 301(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペロキソナン)
●使用したMFC1-PETA(ペンタエリスリトールトリアクリラート)は、分子量298.29g/mol、25℃で1.18g/mlおよび反応抑制剤としてモノメチルエーテルハイドロキノン300~400ppmを含む。
●MFC2-PETeA(ペンタエリスリトールテトラアクリラート)
●溶媒1-使用したアセトンの純度は99%、20℃での1mlあたりの重量が0.79~0.792g、不揮発性物質の不純物の上限は0.002%、酸性度0.015%、および水0.4%
●溶媒2-DCM(ジクロロメタン)
●溶媒3-使用したLP(液体パラフィンライト)は、25℃での粘度が25~80mPas、25℃で1mlあたりの重量が0.82~0.88g、水の最大不純物は0.05%
【0082】
実験の詳細:
反応押出成形プロセスのペレット化した組成物を使用してASTM規格に従った機械的試験用の試料を準備した。この準備は、スクリュー直径が40mm、L:D比が20:1、および60トン数の型締力で、L&Tプラスチックマシネリー社の射出成形機により行った。バレル温度は150℃~300℃に保ち、金型温度は60℃に保った。得られた射出成形試料を使用して、ASTM規格に従って、引張、屈曲、および衝撃強度を測定した。
【0083】
配合試料のメルトフローレートは、ASTM D1238に従って、Gottfret社製の自動マルチロードMFI装置で、230℃、2.16kgの荷重で測定した。
【0084】
曲げ弾性率は、ASTM D618規格に従って調整された後、TIRA社(ドイツ)製の万能試験機でASTM D790に従って測定した。
【0085】
バーのノッチ付きアイゾット衝撃強さは、ASTM D618規格に従って調整された後、ASTM D256に従って23℃で測定した。
【0086】
黄色度指数は、分光光度データから計算された数値であって、試験試料の透明または白から黄色への色の変化を表すものである。この試験は、実際の、またはシミュレートされた屋外暴露によって引き起こされる物質の色の変化を評価するために最も一般的に使用される。押出造粒物の黄色度指数は、ASTM E 313-10に従って、Hunterlab社のLabscan XEにより23℃で測定した。
【0087】
実施例1:
以下の例は、様々な反応性形態改質剤組成物を使用したインパクト共重合体ポリプロピレン反応器粉体(PP3A)の反応性改質、および本発明の方法により強化された特性を示したものである。
【0088】
表1:PP3の反応押出成形に使用される種々の混合物を示す。
【0089】
上記のすべての配合の試験試料を調製し、試料の物理的特性について、上記のASTM規格に従って試験を行った。例1および例17は、どちらもプラント由来の純ポリプロピレン(neatPolypropylene)材料であるが、生産ロットが異なるものである。
【0090】
下記の表は、ポリプロピレンPP3Aにおける改質バッチの、230℃、2.16Kg荷重でのメルトフローインデックス(g/10分)、ASTM D256に従った衝撃強度(J/m)、およびASTM D 790に従った曲げ弾性率(MPa)を示す。
【0091】
上記の試験には、MFIが11g/10分、および衝撃強度が約115J/mのPP3A反応器粉体(実験(EXP)1)を用いた。実験1は、過酸化物およびMFCを加えず、反応押出成形プロセスで説明したものと同様の処理条件で、TSEで処理した比較例である。
【0092】
実験2~16では、低濃度、すなわち25~100ppmの過酸化物を、より高濃度である2500~7500ppmのMFCと組み合わせることにより、500J/mを超えるより高い衝撃強度が得られたが、MFIは8~15g/10分に維持された。すなわち、流動特性は変化しなかった。
【0093】
しかし、実験20~29では、濃度100~200ppmの過酸化物と、1000~5000ppmのMFCとを組み合わせることにより、800~1060MPaの曲げ弾性率を維持しながら、16~22の高いMFI、および500J/mを超える衝撃強度が得られた。
【0094】
実施例2:
以下の実施例は、様々な反応性形態改質剤組成物を使用したインパクト共重合体ポリプロピレン押出造粒物(PP3B)の反応性改質、および本発明の方法により強化された特性を示したものである。
【0095】
上記したすべての配合の試験試料を調製し、試料の物理的特性について、上記のASTM規格に従って試験を行った。
【0096】
下記の表は、ポリプロピレンPP3Bにおける改質バッチの、230℃、2.16Kg荷重でのメルトフローインデックス(g/10分)、ASTM D256に従った衝撃強度(J/m)、およびASTM D 790に従った曲げ弾性率(MPa)を示す。
【0097】
上記の試験には、MFIが11g/10分、および衝撃強度が約100J/mのPP3B押出造粒材料を用いた(実験38)。実験38は、過酸化物およびMFCを加えず、反応押出成形プロセスで説明したものと同様の処理条件で、TSEで処理した比較例である。
【0098】
形態改質は、100~200ppmの過酸化物、および2500~7500ppmのMFCを加えて、PP3B(実験38で使用)で行った(実験40、41および76~78参照)。その結果、MFIは18~20g/10分、衝撃強度は500J/mより大きくなり、すなわち、ノーブレークであった。
【0099】
しかし、より低い濃度(すなわち、50ppm)の過酸化物および濃度が5000ppmのMFCを加えた実験39では、ノーブレーク(すなわち、500J/mを超える衝撃強度)、かつ、MFIが低下(すなわち、6.7g/10分)する結果となった。
【0100】
実施例3:
以下の実施例は、様々な反応性形態改質剤組成物を使用したインパクト共重合体ポリプロピレン反応器粉体(PP2A)の反応性改質、および本発明の方法により強化された特性を示したものである。
【0101】
上記のすべての配合の試験試料を調製し、試料の物理的特性について、上記のASTM規格に従って試験を行った。実験42は、ヴァージンポリプロピレン材料である。すなわち、添加物は添加されていない。TSEで押し出しされ、参考として残した。すなわち、PP2A材料である。
【0102】
下記の表は、ポリプロピレンPP2Aにおける改質バッチの、230℃、2.16Kg荷重でのメルトフローインデックス(g/10分)、ASTM D256に従った衝撃強度(J/m)、およびASTM D 790に従った曲げ弾性率(MPa)を示す。
【0103】
MFIが8g/10分、かつ、衝撃強度が300J/mのPP2A反応器粉体(実験42)。実験42は、過酸化物およびMFCを加えず、反応押出成形プロセスで説明したものと同様の処理条件で、TSEで処理した比較例である。
【0104】
MFIが8g/10分、および衝撃強度が300J/mのPP2A反応器粉体(実験42で使用)を用いた結果、200~500ppmの過酸化物を低濃度の2500ppmのMFCと組み合わせて用いて形態改質したときのMFIは15~22となった(実験43~51)。
【0105】
実施例4:
以下の実施例は、様々な反応性形態改質剤組成物を使用したインパクト共重合体ポリプロピレン造粒物(PP2B)の反応性改質、および本発明の方法により強化された特性を示す。
【0106】
上記のすべての配合の試験試料を調製し、試料の物理的特性について、上記のASTM規格に従って試験を行った。
【0107】
下記の表は、ポリプロピレンPP2Bにおける改質バッチの、230℃、2.16Kg荷重でのメルトフローインデックス(g/10分)、ASTM D256に従った衝撃強度(J/m)、およびASTM D 790に従った曲げ弾性率(MPa)を示す。
【0108】
上記試験には、MFIが9g/10分、および衝撃強度が約150J/mのPP2B造粒物を用いた(実験54)。実験54は、過酸化物およびMFCを加えず、反応押出成形プロセスで説明したものと同様の処理条件で、TSEで処理した比較例である。
【0109】
実験(55~56、79~81)では、250~300ppmの過酸化物、および2500~3000ppmのMFCを用いて行った。その結果、MFIが18~22g/10分で、かつ、衝撃強度が500J/mより大きい、すなわちノーブレークの押出造粒物となった。
【0110】
実験(82~84)は、500~1500ppmの過酸化物と、2000~3000ppmのMFCを使って行った。その結果、MFIが27~60g/10分で、衝撃強度が500J/mより大きい、すなわちノーブレークの押出造粒物となった。
【0111】
実施例5:
以下の実施例は、様々な反応性形態改質剤組成物を使用したインパクト共重合体ポリプロピレン反応器粉体(PP1A)の反応性改質、および本発明の方法により強化された特性を示す。
【0112】
上記のすべての配合の試験試料を調製し、試料の物理的特性について、上記のASTM規格に従って試験を行った。
【0113】
下記の表は、ポリプロピレンPP1Aにおける改質バッチの、230℃、2.16Kg荷重でのメルトフローインデックス(g/10分)、ASTM D256に従った衝撃強度(J/m)、およびASTM D790に従った曲げ弾性率(MPa)を示す。
【0114】
上記試験には、MFIが11.5g/10分かつ衝撃強度が630J/m(ノーブレーク)のグレードのPP1A材料を用いた(実験57)。実験57は、過酸化物およびMFCを加えず、反応押出成形プロセスで説明したものと同様の処理条件で、TSEで処理した比較例である。
【0115】
実験65および66では、濃度350ppmの過酸化物、および濃度2500ppmのMFCとともにPP1A材料を用いて行った。その結果、MFIは25~30g/10分となり、ノーブレークであった。
【0116】
実験(59~64)では、より高いMFIとなったが、100~150J/mと低い衝撃強度となった。
【0117】
実施例6:
以下の実施例は、様々な反応性形態改質剤組成物を使用したインパクト共重合体ポリプロピレン押出造粒物(PP1B)の反応性改質、および本発明の方法により強化された特性を示す。
【0118】
上記のすべての配合の試験試料を調製し、試料の物理的特性について、上記のASTM規格に従って試験を行った。
【0119】
下記の表は、ポリプロピレンPP1Bにおける改質バッチの、230℃、2.16Kg荷重でのメルトフローインデックス(g/10分)、ASTM D256に従った衝撃強度(J/m)、およびASTM D790に従った曲げ弾性率(MPa)を示す。
【表12】
【0120】
実験90~92は、MFIや衝撃強度などの、最終的な特性における溶媒量の影響を知るために行ったものである。これら3つの実験(実験90~92)において使用した過酸化物は500ppmであり、MFCは2500ppmである。溶媒は5ml/kg、10ml/kg、15ml/kg(それぞれ実験90、91、92)の範囲で使用した。溶媒量の増加に伴い、MFIが増加し、衝撃特性への影響はわずかであることが観察された。これは、予混合された組成物の混合特性が、溶媒量の増加とともに向上することを示している。実験87~89も同様に、最終的な特性に対する溶媒の影響を知るために行ったものである。過酸化物を500ppm、MFCを3000ppm使用したこの実験でも、同様の相関関係が存在する。ここでも、溶媒量の増加とともにMFIが増加し、衝撃特性への影響はわずかであることが観察された。
【0121】
実験93~97は、より高濃度の過酸化物(1500~2000)ppm、および800~1500ppmの濃度のMFCを用いて行った。その結果、100g/10分という非常に流動性の高い材料となり、かつ、衝撃強度は500J/mより大きい、すなわちノーブレークとなった。
【0122】
実験65~75、85~86は、濃度350~800ppmの過酸化物、および濃度2000~2500ppmのMFCを用いて行った。
【0123】
本発明の利点
以下は、上記に開示された、従来技術に優る本発明の技術的利点である。
●従来の技術で製造された既存のインパクト共重合体ポリプロピレン(ICP)から、耐衝撃性および高流動性を達成する。
●曲げ弾性率に大きな影響を与えることなく、メルトフローインデックス(MFI)および衝撃強度を同時に高めることができる。
●従来の方法で製造されたPPから熱可塑性オレフィン(TPO)を製造するための、経済的に実行可能な代替ソリューション。