(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】映像処理装置、テレビ受信機、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/431 20110101AFI20231206BHJP
H04N 21/435 20110101ALI20231206BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20231206BHJP
H04H 40/18 20080101ALI20231206BHJP
H04H 60/72 20080101ALI20231206BHJP
H04H 20/20 20080101ALI20231206BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20231206BHJP
H04N 5/20 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H04N21/431
H04N21/435
H04N5/66 A
H04H40/18
H04H60/72
H04H20/20
H04B1/16 C
H04N5/20
(21)【出願番号】P 2020047754
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(72)【発明者】
【氏名】下田 裕紀
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163536(JP,A)
【文献】特開2008-252661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04N 5/66 - 5/74
H04H 20/91 - 40/27
H04H 40/90 - 60/98
H04H 20/00 - 20/46
H04B 1/16
H04N 5/14 - 5/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信部が受信したテレビ放送における番組の映像方式を判定する判定部と、
前記番組が表示部に表示されるときの輝度レベルを増加させるゲイン補正処理を行う補正部と、を備え、
前記映像方式は、
第1解像度である第1映像方式と、
前記第1解像度よりも低い第2解像度である変換前映像を、解像度及びダイナミックレンジを拡大変換した第2映像方式と、を含み、
前記判定部は、前記番組がサイマル放送により配信されたサイマル番組である場合、前記番組が前記第2映像方式であると判定し、
前記補正部は、前記判定部が、前記番組が前記第2映像方式であると判定した場合、前記
ゲイン補正処理を実行する、
映像処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記テレビ放送である第1テレビ放送の第1電子番組表と、前記第1テレビ放送とは異なる第2テレビ放送の第2電子番組表と、の比較結果に基づいて、前記番組が前記サイマル番組であるか否かを判定する、
請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1電子番組表における前記番組に対応する番組欄の記載が、前記第2電子番組表に含まれている場合、前記番組が前記サイマル番組であると判定する、
請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記第1電子番組表は、前記第1テレビ放送に含まれ、
前記第2電子番組表は、前記第2テレビ放送に含まれている、
請求項2又は3に記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記変換前映像において、基準白に対応する信号レベルが第1レベルであり、
前記第2映像方式において、前記基準白に対応する信号レベルが前記第1レベルよりも低い第2レベルであり、
前記補正部は、前記
ゲイン補正処理において、前記第2レベルに対する前記第1レベルの割合の値を補正係数として、ガンマカーブの値に乗算する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の映像処理装置。
【請求項6】
前記変換前映像のダイナミックレンジは、SDRであり、
前記第2映像方式は、HLG方式であり、
前記第1レベルは、100%であり、
前記第2レベルは、75%である、
請求項5に記載の映像処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の映像処理装置と、
前記受信部と、
前記表示部と、を備える、
テレビ受信機。
【請求項8】
コンピュータシステムに、判定処理と、ゲイン補正処理と、を実行させるためのプログラムであって、
前記判定処理では、受信部が受信したテレビ放送における番組の映像方式を判定し、
前記ゲイン補正処理では、前記番組が表示部に表示されるときの輝度レベルを増加させ、
前記映像方式は、
第1解像度である第1映像方式と、
前記第1解像度よりも低い第2解像度である変換前映像を、解像度及びダイナミックレンジを拡大変換した第2映像方式と、を含み、
前記判定処理では、前記番組がサイマル放送により配信されたサイマル番組である場合、前記番組が前記第2映像方式であると判定し、
前記ゲイン補正処理は、前記判定処理で、前記番組が前記第2映像方式であると判定された場合に実行される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像処理装置、テレビ受信機、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送局におけるスタジオ番組制作や番組送出において、HDR(High Dynamic Range)映像を扱う場合の標準的な運用ガイドラインを規定するために、「ARIB TR-B43:高ダイナミックレンジ映像を用いた番組制作の運用ガイドライン」(非特許文献1)が策定されている。ARIB TR-B43には、SDR(Standard Dynamic Range)信号をHLG(Hybrid Log-Gamma)信号にマッピングする場合は、100%のSDR信号を75%HLG信号レベルに割り当てることが規定されている(ARIB TR-B43 第2章 2.3「SDR信号からHLG信号へのマッピングにおける基準レベル」の項を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「高ダイナミックレンジ映像を用いた番組制作の運用ガイドライン」、一般社団法人電波産業会、ARIB TR-B43 1.2版、2019年07月30日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載された規定に基づいてSDR映像から変換されたHDR映像の75%の輝度レベルは、変換前のSDR映像の100%の輝度レベルが割り当てられている。したがって、変換されたHDR映像を表示する場合、変換前のSDR映像よりも、暗く表示される場合がある。例えば、SDR映像とHDR映像のそれぞれの100%の輝度レベルを同じ明るさで表示する表示装置に、変換されたHDR映像を表示させると、変化前のSDR映像を表示させる場合よりも、画像が暗く表示されるおそれがある。
【0005】
上述した課題に鑑み、本開示の主な目的は、番組が暗く表示されることを抑制することができる映像処理装置、テレビ受信機、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る映像処理装置は、判定部と、補正部と、を備える。前記判定部は、受信部が受信したテレビ放送における番組の映像方式を判定する。前記補正部は、前記番組が表示部に表示されるときの輝度レベルを増加させるゲイン補正処理を行う。前記映像方式は、第1解像度である第1映像方式と、前記第1解像度よりも低い第2解像度である変換前映像を、解像度及びダイナミックレンジを拡大変換した第2映像方式と、を含む。前記判定部は、前記番組がサイマル放送により配信されたサイマル番組である場合、前記番組が前記第2映像方式であると判定する。前記補正部は、前記判定部が、前記番組が前記第2映像方式であると判定した場合、前記ゲイン補正処理を実行する。
【0007】
本開示の一態様に係るテレビ受信機は、前記映像処理装置と、前記受信部と、前記表示部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、判定処理と、ゲイン補正処理と、を実行させる。前記判定処理では、受信部が受信したテレビ放送における番組の映像方式を判定する。前記ゲイン補正処理では、前記番組が表示部に表示されるときの輝度レベルを増加させる。前記映像方式は、第1解像度である第1映像方式と、前記第1解像度よりも低い第2解像度である変換前映像を、解像度及びダイナミックレンジを拡大変換した第2映像方式と、を含む。前記判定処理では、前記番組がサイマル放送により配信されたサイマル番組である場合、前記番組が前記第2映像方式であると判定する。前記ゲイン補正処理は、前記判定処理で、前記番組が前記第2映像方式であると判定された場合に実行される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る映像処理装置を含むテレビ受信機のブロック図である。
【
図2】
図2は、第1電子番組表の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第2電子番組表の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、同上の映像処理装置及びテレビ受信機の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(実施形態1)
以下、本実施形態に係る映像処理装置1、テレビ受信機10、及びプログラムについて、
図1~
図4を参照して説明する。
【0012】
本実施形態のテレビ受信機10は、受信したテレビ放送の番組を表示するように構成されている。テレビ受信機10は、映像処理装置1と、受信部2と、表示部3と、スピーカ4と、を備えている。
【0013】
表示部3は、例えば液晶ディスプレイである。表示部3は、映像処理装置1から出力された映像制御信号に基づいて、番組の映像を表示する。
【0014】
スピーカ4は、映像処理装置1から出力された音声制御信号に基づいて、番組の音声を出力する。
【0015】
受信部2は、放送事業者によって配信されたテレビ放送の番組を受信するように構成されている。受信部2は、第1チューナー21及び第2チューナー22を備えている。第1チューナー21及び第2チューナー22は、無線又は有線により、テレビ放送を受信する。テレビ放送の受信に無線を利用する場合、第1チューナー21及び第2チューナー22のアンテナ入力端子には、例えば、アンテナケーブルを介して無線アンテナが接続される。テレビ放送の受信に有線を利用する場合、第1チューナー21及び第2チューナー22のアンテナ入力端子には、例えば、アンテナケーブルを介して、有線通信(例えば光ファイバーを用いた光通信)の終端装置が接続される。
【0016】
テレビ放送には、地上波放送(地上デジタルテレビ放送)と衛星放送とがある。衛星放送には、BS(Broadcasting Satellites)放送、CS(Communication Satellites)放送、新4K8K衛星放送、等がある。第1チューナー21及び第2チューナー22は、地上波放送と衛星放送との一方のみに対応している場合がある。また、第1チューナー21及び第2チューナー22は、衛星放送のうち、BS/CS放送と4K8K衛星放送との一方のみに対応している場合がある。本実施形態では、第1チューナー21は、新4K8K衛星放送に対応しており、新4K8K衛星放送(第1テレビ放送)を受信する。第2チューナー22は、BS/CS放送に対応しており、BS/CS放送(第2テレビ放送)を受信する。なお、受信部2は、地上波放送に対応した地上デジタルチューナーを含む、複数のチューナーを備えていてもよい。
【0017】
ここで、新4K8K衛星放送で配信される、解像度が4K(3840×2160、第1解像度)の番組(以降、4K番組ともいう)には、映像方式が、ピュア4K方式(第1映像方式)である番組と、変換HLG(Hybrid Log-Gamma)方式(第2映像方式)である番組とが混在している。
【0018】
映像方式がピュア4K方式である映像(以降、ピュア4K映像ともいう)は、4Kカメラ等の設備を用いて生成された映像であって、生成された時点で解像度が4Kである。また、ピュア4K映像には、ダイナミックレンジがHLG方式のHDR(High Dynamic Range、第1範囲)である映像(HDRピュア4K映像ともいう)と、ダイナミックレンジがHDRよりも狭いSDR(Standard Dynamic Range、第2範囲)である映像(SDRピュア4K映像ともいう)とが混在している。
【0019】
一方、映像方式が変換HLG方式である映像(以降、変換HLG映像ともいう)は、解像度が4Kよりも低い2K(1920×1080、第2解像度)である2K映像(変換前映像)を、ダイナミックレンジ及び解像度を拡大変換(アップコンバート)した映像である。2K映像は、解像度が2K、ダイナミックレンジがSDRであるのに対し、変換HLG映像は、解像度が4K、ダイナミックレンジがHLG方式のHDRである。
【0020】
「ARIB TR-B43(1.2版):高ダイナミックレンジ映像を用いた番組制作の運用ガイドライン」において、「SDR信号をHLG信号にマッピングする場合は、100%のSDR信号を75%HLG信号レベルに割り当てる。」と規定されている。つまり、2K映像(SDR信号)の信号レベル100%が、HLG映像(HLG信号)の信号レベル75%に相当する。例えば、2K映像では、基準白に対応する信号レベルが100%(第1レベル)であるのに対して、変換HLG映像では、基準白に対応する信号レベルが100%よりも低い75%(第2レベル)である。基準白とは、所定の運用条件下において照明された輝度率100%の均等拡散反射面を撮像した際の信号レベルである。また、「%HLG」とは、HLGシステムの光-電気伝達関数(OETF:Optical Electro Transfer Function)により[0:1]に正規化された映像信号レベルの百分率表記である。
【0021】
BS/CS放送で配される番組は、解像度が2Kである。以降、BS/CS放送で配信される番組を2K番組ともいう。2K番組の映像は、上述した2K映像である。
【0022】
ここで、1つの放送事業者が異なるテレビ放送で同じ内容の番組を配信することをサイマル放送という。例えば、サイマル放送では、新4K8K衛星放送とBS/CS放送とで、同じ内容の番組が配信される。以降の説明では、サイマル放送で配信される番組をサイマル番組ともいう。新4K8K衛星放送において、映像方式が変換HLG方式の番組の映像(変換HLG映像)は、BS/CS放送の2K番組の映像(2K映像)をアップコンバートした映像である。つまり、新4K8K衛星放送において、映像方式が変換HLG方式の番組は、BS/CS放送で配信される番組(2K番組)と同じ内容であるサイマル番組である。
【0023】
テレビ放送には、複数の周波数帯域(チャンネル)が割り当てられている。複数の放送事業者の各々は、自身に割り当てられたチャンネルを利用して番組の配信を行う。つまり、テレビ放送には、複数の番組が含まれている。第1チューナー21及び第2チューナー22は、複数のチャンネルのうち選択されたいずれか1つのチャンネルに基づいて、テレビ放送に対して信号処理(例えば、信号抽出、信号増幅、復号化等)を行うことにより、選択されたチャンネルに対応するデータを映像処理装置1に出力する。
【0024】
受信部2から映像処理装置1に出力されるデータには、選択されたチャンネルに対応する番組の映像信号、音声信号等が含まれている。映像信号の信号レベルは、画素ごとの輝度レベル、及び色情報などを示している。映像処理装置1は、受信部2が備える複数のチューナー(第1チューナー21、第2チューナー22)のうち、選択されたいずれか1つのチューナーからの映像信号に基づいて、表示部3に番組(映像)を表示させる。本実施形態では、第1チューナー21が選択され、表示部3に4K番組を表示させるとする。なお、映像処理装置1の詳細な構成については後述する。本開示において、「受信部2が受信したテレビ放送における番組」とは、テレビ放送に含まれる複数の番組のうち、表示部3に表示させるために選択されたチャンネルに対応する番組である。以降の説明では、「受信部2が受信したテレビ放送における番組」を「表示番組」という場合がある。
【0025】
また、テレビ放送には、番組情報が付加されている。番組情報は、例えばSI(Service Information)である。番組情報は、所定期間(例えば8日間)における各番組に対応した情報である。番組情報には、例えば、番組名(タイトル、及びサブタイトル)、放送日時、番組内容、番組属性等を示す情報が含まれている。番組内容とは、例えば、番組の説明、ジャンル(例えば、映画、スポーツ、アニメ、ニュースなど)、出演者等を示す情報である。番組属性とは、例えば、番組の解像度、アスペクト比、フレームレート、音声モード、映像方式、字幕の有無等を示す情報である。また、番組情報には、番組の放送事業者を示す事業者情報が含まれている。
【0026】
受信部2から映像処理装置1に出力されるデータには、選択されたチャンネルに対応する放送事業者の番組情報が含まれている。この番組情報は、例えば不揮発性のメモリに記憶される。
【0027】
映像処理装置1は、受信部2からのデータに基づいて、表示部3を制御することによりに映像(番組)を表示させる。映像処理装置1は、分離部11、表示制御部12、音声制御部13、番組表生成部14、判定部15、及び補正部16を備えている。映像処理装置1は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータで構成されている。つまり、映像処理装置1は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、分離部11、表示制御部12、音声制御部13、番組表生成部14、判定部15、及び補正部16として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。例えば、分離部11、表示制御部12、音声制御部13、番組表生成部14、判定部15、及び補正部16は、複数のマイクロコンピュータで実現されていてもよい。
【0028】
分離部11は、受信部2の出力データから、映像データ、音声データ、及び番組情報を分離する。分離処理部は、映像データ、音声データ、及び番組情報を、それぞれ表示制御部12、音声制御部13、及び番組表生成部14に出力する。
【0029】
表示制御部12は、映像データに基づいて生成した表示制御信号を表示部3に出力することにより、番組の映像を表示部3に表示させる。ここで、本実施形態の映像データには、輝度データ(Y)と、色差データ(Cb,Cr)とが含まれている。表示制御部12は、映像データに含まれる輝度データに対して、ガンマカーブを用いて補正(ガンマ補正)することにより表示制御信号を生成する。具体的には、表示制御部12は、映像データのダイナミックレンジがHLG方式のHDRである場合、HLGガンマカーブを用いてガンマ補正を行う。また、表示制御部12は、映像データのダイナミックレンジがSDRである場合、SDRガンマカーブを用いてガンマ補正を行う。なお、映像データは、RGBの色データを含む構成であってもよく、この場合でもRGBの色データから輝度データの算出が可能である。
【0030】
音声制御部13は、音声データに基づいて生成した音声制御信号をスピーカ4に出力することにより、番組の音声をスピーカ4から出力させる。
【0031】
番組表生成部14は、番組情報に基づいて、電子番組表(EPG:Electronic Programming Guide)を生成する。
図2、
図3に示すように、番組表生成部14は、チャンネル(放送事業者)ごとに番組を時系列で並べることにより電子番組表を生成する。電子番組表において、各番組に対応する欄(番組欄)には、少なくとも番組名が記載される。番組表生成部14は、テレビ放送ごとに電子番組表を生成する。本実施形態では、番組表生成部14は、新4K8K衛星放送に対応した第1電子番組表(
図2参照)と、BS/CS放送に対応した第2電子番組表(
図3)と、を生成する。番組表生成部14は、第1チューナー21からの番組情報に基づいて第1電子番組表を生成し、第2チューナー22からの番組情報に基づいて第2電子番組表を生成する。
【0032】
図2は、第1電子番組表における第1放送局(第1チャンネル)、第2放送局(第2チャンネル)、及び第3放送局(第3チャンネル)の番組表の一部である。第1放送局において、午後7時から午後8時に番組名「〇〇ドキュメント」、午後8時から午後9時に番組名「〇〇ニュース」、午後9時から午後10時に番組名「〇〇スポーツ」が放送される。第2放送局において、午後7時から午後9時に番組名「××バラエティ」、午後9時から午後10時に番組名「××ニュース」が放送される。第3放送局において、午後7時から午後9時に番組名「△△スポーツ」、午後9時から午後10時に「△△ドラマ」が放送される。
【0033】
図3は、第2電子番組表における第1放送局(第1チャンネル)、第2放送局(第2チャンネル)、及び第3放送局(第3チャンネル)の番組表の一部である。第1放送局において、午後7時から午後9時に番組名「〇〇映画」、午後9時から午後10時に番組名「〇〇ドラマ」が放送される。第2放送局において、午後7時から午後9時に番組名「××バラエティ」、午後9時から午後10時に番組名「××ドキュメント」が放送される。第3放送局において、午後7時から午後8時に番組名「△△ニュース」、午後8時から午後9時に番組名「△△ドキュメント」、午後9時から午後10時に「△△ドラマ」が放送される。
【0034】
図2、及び
図3に示すように、第2放送局は、午後7時から午後9時の時間帯において、新4K8K衛星放送とBS/CS放送とで同じ番組(××バラエティ)を配信している。また、第3放送局は、午後9時から午後10時の時間帯において、新4K8K衛星放送とBS/CS放送とで同じ番組(△△ドラマ)を配信している。つまり、番組名「××バラエティ」及び番組名「△△ドラマ」は、新4K8K衛星放送とBS/CS放送とでサイマル放送されるサイマル番組である。
【0035】
ここで、各放送事業者は、自身に割り当てられたチャンネルを利用して、自身が配信する番組の番組情報を配信する。したがって、番組表生成部14は、選択されたチャンネルに対応する放送事業者の番組情報を取得して、この放送事業者の電子番組表を生成することができる。しかしながら、番組表生成部14は、選択されていないチャンネルに対応する放送事業者の番組情報を取得できず、この放送事業者の電子番組表を生成できないおそれがある。そこで、本実施形態では、テレビ受信機10において表示部3の表示動作をオン/オフする電源操作(リモコンの電源ボタンの操作を含む)が行われた場合に、番組表生成部14は、電子番組表を生成していない放送事業者の番組情報を取得する。具体的には、電源操作において表示部3がオフされた場合、電子番組表が生成されていない放送事業者のチャンネルに順次切り替えられ、番組表生成部14は、各放送事業者の番組情報を取得して、各放送事業者の電子番組表を生成する。なお、受信部2が複数のチューナーを備えており、番組表生成部14は、表示に用いていないチューナーを利用して各放送事業者の電子番組表を生成してもよい。
【0036】
番組表生成部14が生成した第1電子番組表及び第2電子番組表は、例えば不揮発性のメモリに記憶される。また、第1電子番組表及び第2電子番組表は、表示部3に表示され、放送中及び放送予定の番組の検索等に用いられる。なお、
図2及び
図3に示した第1電子番組表、第2電子番組表では、放送事業者及びチャンネル番号の表記が互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。
【0037】
また、番組欄には、番組の番組属性に応じてロゴが記載される場合がある。番組属性には、ロゴに対応した項目(ロゴ項目)が含まれている。例えば、番組属性には、ロゴ項目として、字幕の有無を示す項目が含まれている。番組表生成部14は、番組属性に「字幕あり」という情報を含まれている場合、番組欄に「字」というロゴを表記する。また、番組属性には、ロゴ項目として、映像方式を示す項目が含まれている。番組表生成部14は、番組属性に「映像方式がピュア4Kである」という情報が含まれている場合、番組欄に「4K」というロゴL1(
図2参照)を表記する。
図2に示す例では、第1放送局の番組名「〇〇ドキュメント」、「〇〇ニュース」、「〇〇スポーツ」、第2放送局の番組名「××ニュース」、及び第3放送局の番組名「△△スポーツ」の各々がピュア4Kであり、各番組欄に「4K」というロゴL1が記載されている。また、番組表生成部14は、番組属性に「HDRピュア4K映像である」という情報が含まれている場合、番組欄に「HDR」というロゴL2(
図2参照)を表記する。
図2に示す例では、第1放送局の番組名「〇〇ドキュメント」、「〇〇ニュース」、「〇〇スポーツ」の各々がHDRピュア4Kであり、各番組欄に「HDR」というロゴL2が記載されている。ロゴ項目は、上記以外にもあり、例えば「二ヶ国語放送である」、「5.1chサラウンド放送である」、「再放送である」等という項目があり、該当する場合それぞれに対応したロゴが番組欄に記載される。
【0038】
なお、番組情報がテキストデータ形式で送信され、番組表生成部14は、テキストデータを番組欄に表記してもよい。この場合、ロゴは、例えば区点コードで送信されてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、番組表生成部14は、テレビ放送に含まれる番組情報に基づいて電子番組表を生成しているが、これに限らない。例えば、番組表生成部14は、サーバから取得した番組情報に基づいて電子番組表を生成してもよい。この場合、テレビ受信機10は、インターネット回線に接続可能な通信部(例えば、通信インターフェイス)を備えている。サーバは、各テレビ放送の各放送事業者の番組情報を記憶している。番組表生成部14は、通信部及びインターネット回線を介して、サーバから番組情報を取得して各テレビ放送の電子番組表を生成する。
【0040】
判定部15は、受信部2が受信したテレビ放送における番組(表示番組)の映像方式を判定する判定処理を行う。具体的には、判定部15は、表示番組が新4K8K衛星放送で配信された4K番組である場合に、判定処理を行う。判定処理は、表示番組がサイマル番組であるか否かを判定する番組判定処理を含む。判定部15は、番組判定処理において、新4K8K衛星放送の第1電子番組表と、BS/CS放送の第2電子番組表と、を比較する。判定部15は、第1電子番組表における表示番組の番組欄の記載が、第2電子番組表に含まれている場合、表示番組がサイマル番組であると判定する。例えば、判定部15は、第2電子番組表における、表示番組と同じ放送事業者の、表示番組と同じ時間帯の番組欄(参照番組欄ともいう)を参照する。そして、判定部15は、この参照番組欄に、表示番組と同じ番組名、又は番組内容が記載されている場合、表示番組がサイマル番組であると判定する。ここでいう「同じ記載」とは、厳密に同一記載である場合に限らず、実質的に同じと判断できる程度であればよく、一部の記載が異なっている場合も含む。また、判定部15は、参照番組欄に、表示番組と同じ番組名及び番組内容が記載されていない場合、表示番組がサイマル番組ではないと判定する。なお、本実施形態では、判定部15は、番組判定処理において、表示番組と同じ放送事業者の、表示番組と同じ時間帯の番組欄を参照しているが、表示番組と異なる放送事業者の番組欄をさらに参照してもよいし、表示番組と異なる時間帯の番組欄をさらに参照してもよい。
【0041】
判定部15は、番組判定処理において表示番組がサイマル番組であると判定した場合、表示番組の映像方式が変換HLG方式(第2映像方式)であると判定する。また、判定部15は、番組判定処理において表示番組がサイマル番組でないと判定した場合、表示番組の映像方式がピュア4K方式(第1映像方式)であると判定する。
【0042】
補正部16は、表示番組が表示部3に表示されるときの輝度レベルを増加させるゲイン補正処理を実行する。ゲイン補正処理とは、表示制御部12が映像データに基づいて表示制御信号を生成する際に用いるガンマカーブ(HLGガンマカーブ)のゲインを増加させる処理である。ここでいう「HLGガンマカーブのゲインを増加」とは、HLGガンマカーブに対して1以上の係数(補正係数)を乗算することを意味する。補正部16がゲイン補正処理を実行した場合、表示制御部12は、補正後のHLGガンマカーブを用いて表示制御信号を生成する。これにより、ゲイン補正処理が実行されない場合に比べて、表示番組が表示部3に表示されるときの輝度レベルが増加する。
【0043】
補正部16は、判定部15の判定処理の結果に基づいて、ゲイン補正処理を実行する。補正部16は、表示番組の映像方式が変換HLG方式である、と判定部15が判定した場合、ゲイン補正処理を実行する。補正部16は、表示番組の映像方式がピュア4K方式である、言い換えれば、表示番組の映像方式が変換HLG方式ではない、と判定部15が判定した場合、ゲイン補正処理を実行しない。
【0044】
上述したように、変換HLG映像の変換前の映像である2K映像(変換前映像)では、基準白に対応する信号レベルが100%であるのに対して、変換HLG映像では、基準白に対応する信号レベルが75%である。したがって、変換HLG映像の映像データには、輝度レベルが75%より大きい領域が含まれていない。厳密には、2K映像(変換前映像)に、基準白よりも信号レベルが僅かに高いスーパーホワイトが含まれ、変換HLG映像の映像データに輝度レベルが75%よりも大きい値が含まれている場合がある。本実施形態では、2K映像にスーパーホワイトが含まれていないとして説明する。
【0045】
本実施形態では、表示番組の映像方式が変換HLG方式である場合、表示制御部12は、補正後のHLGガンマカーブを用いて表示制御信号を生成する。つまり、表示制御信号には、輝度レベルが75%よりも大きい領域が含まれる可能性がある。これにより、表示番組である変換HLG映像が、ピュア4K映像に比べて暗く表示されることが抑制される。
【0046】
また、ゲイン補正処理に用いる補正係数は、2K映像と変換HLG映像との信号レベル比に基づいて決定される。具体的には、2K映像における基準白に対応する信号レベルが100%(第1レベル)であり、変換HLG映像における基準白に対応する信号レベルが75%(第2レベル)である。補正係数は、第2レベル(75%)に対する第1レベル(100%)の割合の値(=1.25)である。したがって、変換HLG映像の輝度レベルの上限が75%であるのに対して、ゲイン補正処理後である表示制御信号の輝度レベルの上限が100%となる。これにより、変換HLG映像の輝度レベルの上限を、ピュア4K映像の輝度レベルの上限と同等にすることができる。なお、本実施形態では、補正係数を1.25としているが、ゲイン補正処理後である表示制御信号の輝度レベルの上限が100%付近となる値であればよく、1.25に限らず、例えば1.33であってもよい。
【0047】
次に、本実施形態の映像処理装置1、及びテレビ受信機10の動作例について、
図4を参照して説明する。
【0048】
まず、受信部2は、テレビ放送を受信する(S1)。そして、受信部2は、選択されたチャンネルに対応するデータを映像処理装置1に出力する。ここでは、テレビ放送が新4K8K衛星放送(第1テレビ放送)であり、4K番組に対応するチャンネルが選択されているとする。
【0049】
次に、判定部15は、表示番組の映像方式を判定する判定処理を行う。まず、判定部15は、判定処理における番組判定処理を実行する。判定部15は、番組判定処理において、新4K8K衛星放送に対応する第1電子番組表と、BS/CS放送に対応する第2電子番組表とを比較する(S2)。そして、判定部15は、電子番組表の比較結果に基づいて、表示番組がサイマル番組であるか否かを判定する(S3)。具体的には、判定部15は、第1電子番組表における表示番組の番組欄の記載が、第2電子番組表に含まれているか否かを判定することにより、表示番組がサイマル番組であるか否かを判定する。判定部15は、表示番組の番組名、番組内容等が、第2電子番組表に含まれている場合、表示番組がサイマル番組であると判定する。例えば、現在時刻が午後7時台、選択チャンネルが第2チャンネルであって、表示番組が「××バラエティ」であるとする(
図2参照)。この場合、判定部15は、第2電子番組表(
図3参照)における第2放送局の番組欄に番組名「××バラエティ」が記載されているため、表示番組がサイマル番組であると判定する。
【0050】
判定部15は、表示番組がサイマル番組であると判定した場合(S3:Yes)、表示番組の映像方式が変換HLG方式であると判定する。この場合、補正部16は、ゲイン補正処理を実行する(S4)。補正部16は、ゲイン補正処理において、HLGガンマカーブの各値に対して1以上の補正係数を乗算することにより、補正後のHLGガンマカーブを生成する。表示制御部12は、補正後のHLGガンマカーブを用いて表示番組の映像データをガンマ補正することにより表示制御信号を生成する(S5)。そして、表示制御部12は、生成した表示制御信号を表示部3に出力することにより、番組の映像を表示部3に表示する(S6)。
【0051】
また、ステップS3において、例えば、現在時刻が午後9時台、選択チャンネルが第2チャンネルであって、表示番組が「××ドキュメント」であるとする(
図2参照)。この場合、判定部15は、第2電子番組表(
図3参照)における第2放送局の番組欄に表示番組の番組名も番組内容の記載もないため、表示番組がサイマル番組ではないと判定する。
【0052】
判定部15は、表示番組がサイマル番組ではないと判定した場合(S3:No)、表示番組の映像方式がピュア4K方式であると判定する。この場合、補正部16は、ゲイン補正処理を実行しない。また、表示制御部12は、番組表生成部14が生成した電子番組表を参照する。そして、表示制御部12は、表示番組に対応する番組欄に、「HDR」というロゴL2が含まれているか否かを判定する(S7)。例えば、現在時刻が午後7時台、選択チャンネルが第1チャンネルであって、表示番組が「〇〇ドキュメント」であるとする(
図2参照)。この場合、表示制御部12は、表示番組の番組欄に「HDR」というロゴL2が含まれている、と判定する。つまり、表示制御部12は、表示番組がHDRピュア4Kであると判定する。
【0053】
表示制御部12は、表示番組の番組欄に「HDR」というロゴL2が含まれている場合(S7:Yes)、HLGガンマカーブを用いて表示番組の映像データをガンマ補正することにより表示制御信号を生成する(S8)。この場合のガンマ補正に用いられるHLGガンマカーブは、補正部16によるゲイン補正処理がされていない。表示制御部12は、生成した表示制御信号を表示部3に出力することにより、番組の映像を表示部3に表示する(S6)。
【0054】
また、ステップS3において、例えば、現在時刻が午後9時台、選択チャンネルが第2チャンネルであって、表示番組が「××ニュース」であるとする(
図2参照)。この場合、表示制御部12は、表示番組の番組欄に「HDR」というロゴL2が含まれていない、と判定する。つまり、表示制御部12は、表示番組がSDRピュア4Kであると判定する。
【0055】
表示制御部12は、表示番組の番組欄に「HDR」というロゴL2が含まれていない場合(S7:No)、SDRガンマカーブを用いて表示番組の映像データをガンマ補正することにより表示制御信号を生成する(S9)。表示制御部12は、生成した表示制御信号を表示部3に出力することにより、番組の映像を表示部3に表示する(S6)。
【0056】
このように、本実施形態の映像処理装置1、及びテレビ受信機10では、表示番組の映像方式が変換HLG方式であるか否かを判定する判定処理を行う。そして、表示番組の映像方式が変換HLG方式である場合、HLGガンマカーブの各値を増加させるゲイン補正処理が実行される。これにより、表示番組である変換HLG映像が、ピュア4K映像に比べて暗く表示されることが抑制される。また、表示番組の映像方式がピュア4K方式である場合、ゲイン補正処理が実行されないので、輝度レベルの飽和(いわゆる白あたり)が抑制される。
【0057】
また、判定処理では、電子番組表を参照して、表示番組がサイマル番組であるか否かを判定することによって、表示番組の映像方式を判定しているので、例えば映像を解析する場合に比べて処理負荷の軽減、判定時間の短縮を図ることができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、判定部15は、電子番組表に基づいて、表示番組の映像方式を判定する。電子番組表は、所定期間分の番組表が予め生成される。したがって、番組の表示前であっても、番組の映像方式を予め判定することができる。これにより、例えば、チャンネルの切り替え時、又は番組の切り替わり時に、判定処理を行う必要がなく、用いるガンマカーブを予め決定しておくことができる。
【0059】
また、本実施形態では、判定部15は、第1電子番組表と第2電子番組表とを比較することにより、映像方式を判定しているので、判定処理の処理負荷をより軽減し、判定時間をより短縮することができる。
【0060】
本実施形態の映像処理装置1と同様の機能は、映像処理方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0061】
映像処理方法は、判定処理と、ゲイン補正処理と、を含む。判定処理では、受信部2が受信したテレビ放送における番組の映像方式を判定する。ゲイン補正処理では、番組が表示部3に表示されるときの輝度レベルを増加させる。映像方式は、第1解像度である第1映像方式と、第1解像度よりも低い第2解像度である変換前映像を、解像度及びダイナミックレンジを拡大変換した第2映像方式と、を含む。判定処理では、番組がサイマル放送により配信されたサイマル番組である場合、番組が第2映像方式であると判定する。ゲイン補正処理は、判定処理で、番組が前記第2映像方式であると判定された場合に実行される。
【0062】
プログラムは、コンピュータシステムに映像処理方法を実行させる。
【0063】
なお、本実施形態では、映像処理装置1がテレビ受信機10に適用される場合を例に説明したが、映像処理装置1は、例えば、セットトップボックス、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等のモバイル端末に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 映像処理装置
10 テレビ受信機
15 判定部
16 補正部
2 受信部
3 表示部
L1 ロゴ