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特許7397734測距システム、測距方法及び測距プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】測距システム、測距方法及び測距プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/00 20060101AFI20231206BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231206BHJP
   G01B 11/245 20060101ALI20231206BHJP
   G06T 7/593 20170101ALI20231206BHJP
【FI】
G01C3/00 120
G01C3/06 110V
G01C3/06 140
G01B11/245 H
G06T7/593
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020060635
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162305
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 大輔
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/101798(WO,A1)
【文献】特表2019-500613(JP,A)
【文献】特開2010-286302(JP,A)
【文献】特開2020-41950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00-3/32
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる位置から対象物を撮像する、複数の撮像部を備える測距システムであって、
前記複数の撮像部のうち、第1の撮像部により撮像された第1画像、前記複数の撮像部のうち、第2の撮像部により撮像された第2画像、及び前記複数の撮像部のうち、第3の撮像部により撮像された第3画像を取得する取得部と、
前記第1画像と前記第2画像とを含む第1のステレオ画像を較正するとともに、前記第1のステレオ画像の較正に用いられたパラメータを用いて、前記第1画像と前記第3画像とを含む第2のステレオ画像を較正する較正部と、
較正された前記第1のステレオ画像と、較正された前記第2のステレオ画像と、に基づいて、前記対象物までの距離を示す3次元情報を生成する生成部と、を備える測距システム。
【請求項2】
前記較正された前記第1のステレオ画像を用いて、第1の視差情報を算出するとともに、前記較正された前記第2のステレオ画像を用いて、第2の視差情報を算出する算出部をさらに備え、
前記生成部は、算出された前記第1の視差情報及び前記第2の視差情報を用いて、前記3次元情報を生成する、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記第1の視差情報の信頼度及び前記第2の視差情報の信頼度をそれぞれ算出し、
前記生成部は、生成された前記第1の視差情報の信頼度及び前記第2の視差情報の信頼度に基づいて、前記3次元情報を生成する、
請求項2に記載の測距システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記第1の視差情報の信頼度及び前記第2の視差情報の信頼度との差分又は比率が、所定の閾値以上である場合に、前記第1の視差情報及び前記第2の視差情報のうち、前記信頼度が高い方の視差情報を用いて、前記3次元情報を生成する、請求項3に記載の測距システム。
【請求項5】
前記生成部は、前記第1の視差情報の信頼度及び前記第2の視差情報の信頼度との差分又は比率が、所定の閾値未満である場合に、前記第1の視差情報及び前記第2の視差情報をそれぞれ重み付けして、前記3次元情報を生成する、請求項3又は4に記載の測距システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記第1の視差情報の信頼度及び前記第2の視差情報の信頼度をそれぞれ画素単位で算出し、
前記生成部は、前記画素単位における前記対象物までの距離を示す前記3次元情報を生成する、
請求項3乃至5のいずれか1つに記載の測距システム。
【請求項7】
前記算出部は、前記第1画像に含まれる特徴情報と、前記第2画像に含まれる特徴情報及び前記第3画像に含まれる特徴情報のうち少なくともいずれかを用いて、較正処理に使われる前記パラメータとして平行化パラメータを算出する、請求項2乃至6のいずれか1つに記載の測距システム。
【請求項8】
前記第1画像、前記第2画像及び前記第3画像のうちいずれかの選択を受け付ける選択部をさらに備え、
前記較正部は、選択された前記いずれかの画像を含む2組のステレオ画像を前記第1のステレオ画像及び前記第2のステレオ画像として決定する、
請求項2乃至7のいずれか1つに記載の測距システム。
【請求項9】
前記算出部が、複数の前記パラメータを算出し、
前記選択部が、算出された複数の前記パラメータのうち、較正に用いられる前記パラメータの選択をさらに受け付ける、請求項8に記載の測距システム。
【請求項10】
それぞれ異なる位置から対象物を撮像した第1画像、第2画像及び第3画像を取得し、
前記第1画像と前記第2画像とを含む第1のステレオ画像を較正するとともに、前記第1のステレオ画像の較正に用いられたパラメータを用いて、前記第1画像と前記第3画像とを含む第2のステレオ画像を較正し、
較正された前記第1のステレオ画像と、較正された前記第2のステレオ画像と、に基づいて、前記対象物までの距離を示す3次元情報を生成する、
コンピュータが実行する測距方法。
【請求項11】
それぞれ異なる位置から対象物を撮像した第1画像、第2画像及び第3画像を取得し、
前記第1画像と前記第2画像とを含む第1のステレオ画像を較正するとともに、前記第1のステレオ画像の較正に用いられたパラメータを用いて、前記第1画像と前記第3画像とを含む第2のステレオ画像を較正し、
較正された前記第1のステレオ画像と、較正された前記第2のステレオ画像とに基づいて、前記対象物までの距離を示す3次元情報を生成する、
コンピュータにより実行される測距プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距システム、測距方法及び測距プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオカメラ等により異なる位置から撮像された複数の画像の視差を用いて、撮像された対象物までの距離を測定する技術が知られている。この場合において、測定される距離の精度は、例えば、ステレオカメラなどのステレオセットを構成する2つのレンズの距離である基線長と、対象物との距離とに左右される。
【0003】
例えば、基線長に対して対象物までの測定距離が遠い場合、左右の視差の変化が、距離の測定結果に大きな影響を与えるため、正確な距離をすることが難しい。一方、基線長に対して対象物までの測定距離が近い場合、左右の視差の変化が大きくとも、距離の測定結果に与える影響が小さいため、視差に基づいて測定される距離に誤差が生じやすくなる。
【0004】
そこで、基線長の異なる複数のステレオセットにより撮像された画像を用いて、対象物までの測定距離に適したステレオセットを選択して距離を測定する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-203238号公報
【文献】国際公開2015/125744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記技術において、それぞれのステレオセットから得られた視差情報を統合して距離を測定することは容易ではない。
【0007】
一つの側面では、高い精度で対象物までの距離を測定できる測距システム、測距方法及び測距プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様において、測距システムは、それぞれ異なる位置から対象物を撮像する、複数の撮像部と、取得部と、較正部と、生成部とを備える。取得部は、前記複数の撮像部のうち、第1の撮像部により撮像された第1画像、前記複数の撮像部のうち、第2の撮像部により撮像された第2画像、及び前記複数の撮像部のうち、第3の撮像部により撮像された第3画像を取得する。較正部は、前記第1画像と前記第2画像とを含む第1のステレオ画像を較正するとともに、前記第1のステレオ画像の較正に用いられたパラメータを用いて、前記第1画像と前記第3画像とを含む第2のステレオ画像を較正する。生成部は、較正された前記第1のステレオ画像と、較正された前記第2のステレオ画像とに基づいて、前記対象物までの距離を示す3次元情報を生成する。
【発明の効果】
【0009】
一つの態様によれば、高い精度で対象物までの距離を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ステレオカメラを用いた測距処理の一例を示す図である。
図2図2は、ステレオカメラを用いた測距処理における誤差の一例を示す図である。
図3図3は、ステレオカメラを用いた測距処理における視差と対象物までの距離との関係の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態における測距システムの一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態におけるステレオセットにより撮像される画像の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態における平行化後の撮像画像の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態における測距処理の途中経過の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態におけるステレオカメラを用いた測距処理における視差と対象物までの距離との関係の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態における測距処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る測距システム、測距方法及び測距プログラムについて図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0012】
図1は、ステレオカメラを用いた測距処理の一例を示す図である。図1に示すように、ステレオカメラは、左イメージセンサIL1に投影される画像を撮像するレンズ2Lと、右イメージセンサIR1に投影される画像を撮像するレンズ2Rとを用いて、対象物T1を撮像する。この場合において、左イメージセンサIL1において対象物T1が表示される画素(ピクセル)の位置(-n1)と、右イメージセンサIR1において対象物T1が表示される画素の位置(n2)とに差(視差)が生じる。例えば、左画像L1において、対象物T1は、イメージセンサの中心から左にn1ピクセルずれた位置(-n1)に表示される。一方、右イメージセンサIR1において、対象物T1は、イメージセンサの中心から右にn2ピクセルずれた位置に表示される。なお、図1に示すように、ピクセルは所定のイメージャーピクセルピッチuを有する。
【0013】
左イメージセンサIL1と右イメージセンサIR1との視差dは、対象物T1までの距離Z、レンズ2L及び2Rの焦点距離f、及びレンズ2Lとレンズ2Rとの距離である基線(ベースライン)の長さ(基線長)bにより変わる。これにより、対象物T1までの距離は、以下に示す式(1)により算出される。
Z = f×b / (u×d) 式(1)
【0014】
ステレオカメラにおいては、対象物の撮像をピクセル(画素)単位で取得することが一般的である。これにより、ステレオカメラの個別のカメラで撮像された画像には、イメージャーピクセルピッチuの幅に応じた誤差が生じる場合がある。
【0015】
図2は、ステレオカメラを用いた測距処理における誤差の一例を示す図である。図2において、物体T0は、左カメラにより撮像された左画像L1のピクセルLPに投影される。また、物体T0は、右カメラにより撮像された右画像R1のピクセルRPに投影される。この場合において、ピクセルLP及びピクセルRPは、それぞれイメージャーピクセルピッチuの幅に応じた誤差dZが生じることがある。かかる誤差は、距離を測定する場合の誤差の原因となる。
【0016】
図3は、ステレオカメラを用いた測距処理における視差と対象物までの距離との関係の一例を示す図である。図3に示すグラフは、縦軸に対象物までの距離を示し、横軸にステレオカメラにおける視差を示す。例えば、図3のVR1に示すように、対象物までの距離がVR2に示す距離と比べて遠い場合においては、視差が小さくなる。また、対象物までの距離がVR2に示す距離と比べて遠い場合においては、左右の視差の変化が、距離の測定結果に大きな影響を与える。
【0017】
このように、例えば、対象物までの距離が、図3のVR2に示すような距離の変化と視差の変化との関係が適切な距離から離れている場合は、イメージャーピクセルピッチuの幅に応じた誤差dZが大きくなるため、1ピクセル当たりの距離測定の精度が粗くなる。例えば、サブピクセルオーダーで距離を測定する技術も知られているが、1ピクセル当たりの距離測定の精度が粗くなる結果、サブピクセルオーダーにおいても誤差が生じやすくなる。
【0018】
一方、対象物までの距離が近過ぎる場合においても、誤差が大きくなる場合がある。例えば、図3のVR3に示すように、VR2に示す距離と比べて対象物までの距離が近い場合においては、左右の視差の変化が大きくとも、距離の測定結果に与える影響が小さい。このため、視差から測定される距離に、誤差が生じやすくなる。すなわち、ステレオカメラにおいては、例えば、図3のVR2に示すような距離の変化と視差の変化との関係が適切な距離から、対象物までの距離が遠過ぎても近過ぎても、左右の視差から測定される距離の精度が粗くなる。
【0019】
そこで、実施形態における測距システム1は、相互に基線長が異なるステレオカメラである複数のステレオセットを用いて、対象物までの距離を測定するための複数の視差を算出する。図4は、実施形態における測距システムの一例を示すブロック図である。図4に示すように、測距システム1は、測距装置10と、撮像装置20とを備える。測距装置10と、撮像装置20とは、例えば、有線又は無線のネットワーク等を通じて、通信可能に接続されている。
【0020】
撮像装置20は、ステレオカメラ等の被写体を撮像する装置である。本実施形態において、撮像装置20は、第1撮像部21と、第2撮像部22と、第3撮像部23とを備える。第1撮像部21、第2撮像部22、及び第3撮像部23は、測距装置10の制御に応じて、同時に撮像を行う。撮像装置20は、撮像された画像を、ネットワーク等を通じて、測距装置10に出力する。なお、以下において、第1撮像部21、第2撮像部22、及び第3撮像部23を区別せずに表現する場合に、単に「撮像部2」と表記する場合がある。
【0021】
第1撮像部21、第2撮像部22、及び第3撮像部23は、それぞれ異なる位置に設けられる。例えば、左端に設けられる第1撮像部21、中間に設けられる第2撮像部22、及び右端に設けられる第3撮像部23が、相互に異なる基線長だけ離間して設けられる。なお、第1撮像部21、第2撮像部22、及び第3撮像部23は、例えば、各撮像部2の光軸が互いに平行になるように設けられるが、これに限られない。例えば、各撮像部2の光軸が互いに交差するように、第1撮像部21、第2撮像部22、及び第3撮像部23が設けられてもよい。また、撮像装置20に含まれる撮像部2の数は3に限られず、後に説明するように4以上の撮像部2が含まれていてもよい。
【0022】
撮像装置20に含まれる撮像部2のうちのいずれか2つの組み合わせは、後に説明する較正部152により、ステレオセットとして決定される。この場合において、撮像部2のうちのいずれか1つは、2つのステレオセットに共通して含まれる基準撮像部となる。基準撮像部は、各ステレオセットにより撮像される画像に共通する画像(以下において「(ステレオセットの)基準画像」と表記する場合がある)を撮像する。
【0023】
図5は、実施形態におけるステレオセットにより撮像される画像の一例を示す図である。本実施形態において、例えば、第1撮像部21と第2撮像部22との組み合わせは、第1ステレオセットSS1を構成する。また、第1撮像部21と第3撮像部23との組み合わせは、第2ステレオセットSS2を構成する。なお、以下において、第1ステレオセットSS1及び第2ステレオセットSS2を区別せずに表現する場合に、単に「ステレオセットSS」と表記する場合がある。
【0024】
この場合において、基準撮像部となる第1撮像部21は、第1ステレオセットSS1及び第2ステレオセットSS2の基準画像となる第1画像BL1(以下において「基準画像BL1」と表記する場合がある)を撮像する。また、第2撮像部22は、第2画像RL2を撮像し、第3撮像部23は、第3画像RR1を撮像する。
【0025】
また、上述したように、本実施形態においては、第1ステレオセットSS1の基線長と、第2ステレオセットSS2の基線長とは相互に異なる。例えば、図5に示すように、第1ステレオセットSS1における第1撮像部21と第2撮像部22との基線長b1は、第2ステレオセットSS2における第1撮像部21と第3撮像部23との基線長b2よりも短い。
【0026】
図5に示すように、基準画像BL1には、対象物T1と対象物T2とが含まれる。撮像部2から対象物T1までの距離は、撮像部2から対象物T2までの距離よりも近い。また、対象物T1は、第1ステレオセットSS1に対応する第2画像RL1に含まれ、対象物T2は、第2ステレオセットSS2に対応する第3画像RR1に含まれる。なお、図5には図示されていないが、第2画像RL1に対象物T2がさらに含まれ、第3画像RR1に対象物T1がさらに含まれていてもよい。
【0027】
図4に戻って、測距装置10は、撮像画像に基づいて被写体までの距離を測定する装置である。測距装置10は、パーソナルコンピュータ、サーバ又はタブレットコンピュータ等の情報処理装置である。測距装置10は、通信部11と、入力部12と、表示部13と、記憶部14と、制御部15とを備える。
【0028】
通信部11は、ネットワークを通じた撮像装置20等の外部装置とのデータ入出力の通信を制御する。例えば、通信部11は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現され、撮像装置20から出力される画像のデータを受信する。
【0029】
入力部12は、制御部15に接続され、測距システム1の利用者(不図示)から受け付けた入力操作を電気信号に変換して制御部15に出力する。例えば、入力部12は、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等である。また、入力部12は、外部の入力装置を測距装置10に接続するためのインターフェース等であってもよい。
【0030】
表示部13は、制御部15に接続され、制御部15から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。表示部13は、例えば、後に説明する図7に示すような測距処理の途中経過や、処理結果が出力される。例えば、表示部13は、液晶モニタ、CRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル又は有機EL(Electro Luminescence)等によって実現される。また、表示部13は、外部の表示装置に測距装置10を接続するためのインターフェース等であってもよい。
【0031】
記憶部14は、例えば、RAM(Random Access Memory)又は磁気記憶装置等の記憶装置により実現される。記憶部14には、制御部15により実行される各種のプログラムが記憶されている。また、記憶部14には、制御部15により各種のプログラムが実行される際に用いられる各種のデータが一時的に記憶される。例えば、記憶部14は、撮像装置20から取得された、各撮像部2により撮像された第1画像BL1、第2画像RL2、第3画像RR1等のデータを記憶する。また、記憶部14は、制御部15による距離測定処理の途中経過を記憶する。
【0032】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより実現される。制御部15は、測距システム1全体を制御する。制御部15は、記憶部14に記憶された各種のプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを実行することで、各種の処理を実行する。プログラムは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。例えば、制御部15は、測距プログラムを実行することで、測距処理を実行する。
【0033】
図4に示すように、測距処理を実行する制御部15を機能的に表すと、例えば、制御部15は、取得部151と、較正部152と、算出部153と、生成部154とを有することとなる。
【0034】
取得部151は、例えば、通信部11を通じて、撮像装置20から第1画像BL1、第2画像RL2、第3画像RR1等の画像を取得する。取得部151は、取得された画像を記憶部14に格納する。
【0035】
較正部152は、取得された第1画像BL1、第2画像RL2、第3画像RR1等の画像に対して、ステレオ画像の較正(キャリブレーション)処理を行う。なお、本実施形態において、「ステレオ画像の較正」とは、例えば、ステレオセットに含まれる複数の撮像部により撮像されたそれぞれの画像における対応する部位の検出や視差の算出を容易にするために、各画像に幾何変換を加える等の調整を施すことを示す。ステレオ画像の較正処理は、例えば、回転行列や並進行列等のパラメータを用いた、公知の平行化処理である。なお、本実施形態においては、各撮像部2の個別のレンズの歪みや、輝度の正規化等については、それぞれ既に較正済みであるものとする。
【0036】
較正部152は、まず、共通する基準撮像部を含み、かつ互いに基線長が異なる複数のステレオセットを決定する。較正部152は、例えば、上で述べたように、第1撮像部21を基準撮像部とする。較正部152は、第1撮像部21と第2撮像部22とを含む第1ステレオセットSS1を決定する。較正部152は、第1撮像部21と第3撮像部23とを含む第2ステレオセットSS2を決定する。
【0037】
次に、較正部152は、各撮像部2から取得された、各ステレオセットに対応する画像を、記憶部14から抽出する。例えば、較正部152は、各ステレオセットに共通して対応する基準画像となる第1画像BL1と、第1ステレオセットSS1に対応する第2画像RL1と、第2ステレオセットSS2に対応する第3画像RR1とを抽出する。なお、以下において、第1画像BL1を「Left Image」、第2画像RL1を「Right Image」、第3画像RR1を「Right-Right Image」と表記する場合がある。
【0038】
較正部152は、まず、第1ステレオセットSS1に対応するステレオ画像の較正処理として、第1画像BL1と第2画像RL1とを平行化する。較正部152は、例えば、第1画像BL1と第2画像RL1との間の特徴点の点対応を計算する等の公知の方法により、平行化パラメータを算出する。そして、較正部152は、算出された平行化パラメータを用いて、第1画像BL1と第2画像RL1とを変換することにより、第1画像BL1と第2画像RL1とを平行化する。なお、特徴情報を容易に特定できるようにするため、ステレオ画像の較正には、例えば公知のキャリブレーションボード等を撮像した画像を用いてもよい。
【0039】
次に、較正部152は、第2ステレオセットSS2に対応するステレオ画像の較正処理として、第1画像BL1と第3画像RR1とを平行化する。その際、較正部152は、例えば、第1ステレオセットSS1に対応するステレオ画像の較正処理の際に用いた平行化パラメータを、第1画像BL1と第3画像RR1との平行化にも用いる。なお、以下において、第1ステレオセットSS1に対応するステレオ画像を「第1ステレオ画像SI1」と表記する場合がある。また、第2ステレオセットSS2に対応するステレオ画像を、「第2ステレオ画像SI2」と表記する場合がある。なお、「第1ステレオ画像SI1」は第1のステレオ画像の一例であり、「第2ステレオ画像SI2」は第2のステレオ画像の一例である。
【0040】
図6は、実施形態における平行化後の撮像画像の一例を示す図である。図6に示すように、平行化後の第1ステレオ画像SI1に含まれる第1画像(Left Image)LL2と、平行化後の第2画像(Right Image)RL2とは、対応する特徴点が同一の平行線上に位置するように調整されている。
【0041】
本実施形態において、平行化後の第2ステレオ画像SI2に含まれる第1画像(Left Image)LR2は、第1ステレオ画像SI1の較正処理の際に用いた平行化パラメータにより変換されている。そのため、平行化後の第1ステレオセットSS1に対応する第1画像LL2と、平行化後の第2ステレオセットSS2に対応する第1画像LR2とは同一の画像となる。
【0042】
これにより、後に説明するように、算出部153により算出される第1ステレオセットSS1に対応する視差情報と、第2ステレオセットSS2に対応する視差情報とを、同一の画像である第1画像LL2又は第1画像LR2に重ね合わせることができる。すなわち、同一の画像である第1画像LL2又は第1画像LR2は、それぞれ基準画像として用いることができる。なお、以下において、第1画像LL2を「平行化後の基準画像LL2」と表記し、第1画像LR2を「平行化後の基準画像LR2」と表記する場合がある。
【0043】
算出部153は、平行化された各ステレオセットSSに対応する視差情報及び信頼度を算出する。本実施形態において、ステレオセットSSの信頼度とは、当該ステレオセットSSに対応するステレオ画像を用いて算出された視差が、距離測定において有用であるか否かを示す情報を示す。信頼度は、例えば画素単位で算出される。例えば、特定の画素において、第1ステレオセットSS1の信頼度が低くなるほど、当該画素において第1ステレオセットSS1に対応するステレオ画像SI1の視差を用いて算出された距離情報の精度が粗くなる。
【0044】
算出部153は、例えば、公知のステレオマッチング等により、第1ステレオセットSS1に対応する、平行化後の基準画像LL2と平行化後の第2画像RL2との視差を画素ごとに算出する。同様に、算出部153は、第2ステレオセットSS2に対応する、平行化後の基準画像LR2と平行化後の第3画像RR2との視差を画素ごとに算出する。
【0045】
算出部153は、視差情報を生成するにあたって、撮像画像を所定の部分画像に区切り、部分画像毎に視差情報を生成してもよい。この場合、算出部153は、ブロックマッチングを用いて部分画像に区切ってもよいし、superpixels等の公知の手段を用いて部分画像に区切ってもよい。
【0046】
そして、算出部153は、算出された第1ステレオセットSS1に対応する視差を、平行化後の基準画像LL2に重ね合わせた視差情報LL3を生成する。また、算出部153は、算出された第2ステレオセットSS2に対応する視差を、平行化後の基準画像LR2に重ね合わせた視差情報LR3を生成する。
【0047】
図7は、実施形態における測距処理の途中経過の一例を示す図である。図7に示すように、算出された視差情報LL3及び視差情報LR3は、同一の画像である平行化後の基準画像LL2及びLR2にそれぞれ重ね合される。これにより、視差情報LL3及び視差情報LR3は、画素単位で相互に比較可能である。
【0048】
次に、算出部153は、例えば、公知のLR-Check法等を用いて、第1ステレオセットSS1の信頼度及び第2ステレオセットSS2の信頼度を、画素ごとに算出する。そして、算出部153は、算出された第1ステレオセットSS1の信頼度を、平行化後の基準画像LL2に重ね合わせた信頼度情報LL4を生成する。また、算出部153は、算出された第2ステレオセットSS2の信頼度を、平行化後の基準画像LR2に重ね合わせた信頼度情報LR4を生成する。
【0049】
図7に示すように、算出された信頼度情報LL4及び信頼度情報LR4も、視差情報LL3及び視差情報LR3と同様に、画素単位で相互に比較可能な態様で生成される。図7に示すように、信頼度情報LL4及び信頼度情報LR4は、画素ごとに色分けして示される。各画素の色は、信頼度情報LL4及び信頼度情報LR4の右側に設けられるゲージL4gにより示されるように、各画素における信頼度を表す。
【0050】
図7に示す例において、信頼度情報LL4の領域LLlに含まれる画素の色は、ゲージL4gにおける信頼度「0~」の色に対応する。一方、信頼度情報LL4の領域LLhに含まれる画素の色は、ゲージL4gにおける信頼度「200」前後の色に対応する。すなわち、図7に示す例において、第1ステレオ画像SI1において、領域LLlに含まれる画素における信頼度は、領域LLhに含まれる画素における信頼度よりも低い。
【0051】
以上説明したように、図7に示す例において、領域LLlに含まれる画素は、第1ステレオ画像SI1において、信頼度が低い画素を示す。また、領域LLhに含まれる画素は、第1ステレオ画像SI1において、信頼度が高い画素を示す。同様に、図7に示す例において、領域LRlに含まれる画素は、第2ステレオ画像SI2において、信頼度が低い画素を示す。領域LRhに含まれる画素は、第2ステレオ画像SI2において、信頼度が高い画素を示す。
【0052】
生成部154は、算出された視差情報と信頼度とに基づいて、距離情報を生成する。生成部154は、視差情報LL3及び視差情報LR3の両方を活用して、距離情報を生成する。その際、生成部154は、例えば、視差情報LL3及び視差情報LR3のうち、どちらの視差情報を距離情報の算出に用いるかを、信頼度情報LL4及び信頼度情報LR4を用いて、画素単位で判定してもよい。また、生成部154は、例えば、視差情報LL3と視差情報LR3とを組み合わせて距離情報の算出に用いてもよい。
【0053】
生成部154は、例えば、画素単位で、信頼度情報LL4における信頼度と、信頼度情報LR4における信頼度との差分を算出する。生成部154は、例えば、信頼度の差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する。なお、所定の閾値は、測距システム1に要求される処理速度や、測距装置10の処理能力に応じて、任意に設定される。なお、信頼度の差分は、以下に示すように、正の値を取る場合もあれば、負の値を取る場合もある。また、生成部154は、信頼度の差分に代えて、信頼度の比率等を算出して、閾値との比較に用いてもよい。信頼度の比率を用いる構成については、後に詳しく説明する。
【0054】
例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLl内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRh内に含まれる画素である場合、生成部154は、信頼度の差分が所定の閾値以上であると判定する。同様に、例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLh内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRl内に含まれる画素である場合も、生成部154は、信頼度の差分が所定の閾値以上であると判定する。
【0055】
一方、例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLl内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRl内に含まれる画素である場合、生成部154は、信頼度の差分が所定の閾値未満であると判定する。同様に、例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLh内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRh内に含まれる画素である場合、生成部154は、信頼度の差分が所定の閾値未満であると判定する。画素単位での信頼度の差分と所定の閾値との比較結果LCの一例を、図7に示す。
【0056】
図7に示すように、比較結果LCは、例えば、基準画像BL1に重畳して表示される。図7に示すように、比較結果LCは、画素ごとに色分けして示される。各画素の色は、比較結果LCの右側に設けられるゲージLCgにより示されるように、各画素における信頼度の比較結果を表す。
【0057】
ゲージLCgにおいて、正の値は、信頼度情報LL4における信頼度、すなわち第1ステレオセットSS1の信頼度が、第2ステレオセットSS2の信頼度よりも高いことを示す。ゲージLCgにおいて、負の値は、信頼度情報LR4における信頼度、すなわち第2ステレオセットSS2の信頼度が、第1ステレオセットSS1の信頼度よりも高いことを示す。
【0058】
この場合において、生成部154は、信頼度と所定の閾値との比較を、例えば、信頼度の絶対値と所定の閾値との比較により実行する。例えば、所定の閾値が「1.1」であるとした場合、生成部154は、信頼度の差分の絶対値が「1.1」以上である場合に、信頼度の差分が所定の閾値以上であると判定する。
【0059】
図7に示す例において、比較結果LCの領域CLに含まれる画素の色は、ゲージLCgにおける信頼度「1.6」前後の色に対応する。すなわち、領域CLに含まれる画素においては、第1ステレオセットSS1の信頼度と第2ステレオセットSS2の信頼度との差分が、所定の閾値以上であることを示す。また、比較結果LCの領域CRに含まれる画素の色は、ゲージLCgにおける信頼度「-1.6」前後の色に対応する。すなわち、領域CRに含まれる画素においては、第2ステレオセットSS1の信頼度と第1ステレオセットSS1の信頼度との差分が、所定の閾値以上であることを示す。
【0060】
さらに、図7に示す例において、比較結果LCの領域C0及び領域CCに含まれる画素の色は、ゲージLCgにおける信頼度「0」前後の色に対応する。すなわち、領域C0及び領域CCに含まれる画素においては、第1ステレオセットSS1の信頼度と、第2ステレオセットSS2の信頼度との差分が所定の閾値よりも小さいことを示す。
【0061】
生成部154は、例えば、信頼度の差分が所定の閾値以上である場合、信頼度が高い方のステレオセットに対応する視差情報を用いて、対象画素の距離情報を算出する。例えば、判定対象となる画素が、比較結果LCにおける領域CRに含まれる場合、生成部154は、対象画素において信頼度が高い方のステレオセットに対応する視差情報LR3を用いて、距離情報を算出する。この場合、生成部154は、第2ステレオセットSS2に対応する、対象画素における視差情報LR3を用いて、距離情報を算出する。なお、「画素が比較結果LCにおける領域CRに含まれる場合」は、例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLl内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRh内に含まれる画素である場合である。
【0062】
一方、例えば、判定対象となる画素が、比較結果LCにおける領域CLに含まれる場合、生成部154は、対象画素において信頼度が高い方のステレオセットに対応する、視差情報LL3を用いて、距離情報を算出する。この場合、生成部154は、第1ステレオセットSS1に対応する、対象画素における視差情報LL3を用いて、距離情報を算出する。なお、「対象画素が比較結果LCにおける領域CLに含まれる場合」は、例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLh内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRl内に含まれる画素であるである。
【0063】
生成部154は、例えば、信頼度情報LL4における信頼度と、信頼度情報LR4における信頼度との差分が所定の閾値未満である場合、第1ステレオ画像SI1の視差情報LL3と、第2ステレオ画像SI2の視差情報LR3とを組み合わせて、距離情報を算出してもよい。信頼度の差分が所定の閾値未満である場合とは、例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLh内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRh内に含まれる画素である場合、すなわち対象画素が比較結果LCにおける領域CCに含まれる場合である。
【0064】
この場合、生成部154は、例えば、第1ステレオ画像SI1の視差情報LL3を、信頼度情報LL4における信頼度で重み付けするとともに、第2ステレオ画像SI2の視差情報LR3を、信頼度情報LR4における信頼度で重み付けしてもよい。そして、生成部154は、重み付けされた第1ステレオ画像SI1の視差情報と、第2ステレオ画像SI2の視差情報とを組み合わせて、比較結果LCにおける領域CCに含まれる対象画素の距離情報を算出する。
【0065】
なお、例えば、信頼度情報LL4における信頼度と、信頼度情報LR4における信頼度との差分が所定の閾値未満である場合であっても、第1ステレオセットSS1の信頼度と、第2ステレオセットSS2の信頼度との両方が低い場合は、精度の高い距離情報が測定できない場合がある。なお、両方の信頼度が低い場合とは、例えば、判定対象となる画素が、信頼度情報LL4における領域LLl内に含まれる画素であり、かつ信頼度情報LR4における領域LRl内に含まれる画素である場合、すなわち対象画素が比較結果LCにおける領域C0に含まれる場合である。
【0066】
このような場合、生成部154は、視差情報LL3と視差情報LR3とを組み合わせて距離情報の算出に用いる代わりに、例えば「距離算出不能」を示す距離情報を出力してもよい。例えば、生成部154は、比較結果LCにおける領域C0に含まれる対象画素に対して、「距離算出不能」を示す距離情報を出力してもよい。
【0067】
そして、生成部154は、比較結果LCに示す各画素について算出又は出力された距離情報を、平行化後の基準画像LL2又はLR2に統合することで、統合された距離情報CDを生成する。
【0068】
このような構成により、測距システム1は、第1ステレオセットSS1に対応するステレオ画像SI1の視差情報と、第2ステレオセットSS2に対応するステレオ画像SI2の視差情報との両方を活用することで、より精度の高い距離情報を測定することができる。
【0069】
図8は、実施形態におけるステレオカメラを用いた測距処理における視差と対象物までの距離との関係の一例を示す図である。図8に示すグラフは、図3と同様に、縦軸に対象物までの距離を示し、横軸に各ステレオセットに対応するステレオ画像における視差を示す。
【0070】
図8において、グラフVS1は、第1ステレオ画像SI1における距離と視差との対応関係を示す。矢印AR1は、第1ステレオ画像SI1を用いて適切な距離測定ができる距離の範囲を示す。同様に、グラフVS2は、第2ステレオ画像SI2における距離と視差との対応関係を示す。矢印AR2は、第2ステレオ画像SI2を用いて適切な距離測定ができる距離の範囲を示す。
【0071】
図8において、矢印AR1に含まれる距離の範囲は、例えば、図7に示す比較結果LCにおける領域CLと略対応関係にある。同様に、矢印AR2に含まれる距離の範囲は、例えば、比較結果LCにおける領域CRと略対応関係にある。すなわち、本実施形態においては、対象物までの距離に応じて、第1ステレオセットSS1に対応するステレオ画像SI1の視差情報と、第2ステレオセットSS2に対応するステレオ画像SI2の視差情報とのうち、より適切な視差情報が距離測定に用いられる。
【0072】
また、図8において、矢印AR3は、矢印AR1が示す距離の範囲と、矢印AR2が示す距離の範囲とに重複して含まれる範囲を示す。矢印AR3に含まれる距離の範囲は、例えば、図7に示す比較結果LCにおける領域CCと略対応関係にある。すなわち、本実施形態において、第1ステレオ画像SI1の視差情報と、第2ステレオ画像SI2の視差情報との両方が距離測定において有用である場合、距離情報は両方の視差情報の組み合わせに基づいて算出される。これにより、本実施形態においては、より高い精度で対象物までの距離を測定できる。
【0073】
なお、図8において、矢印AR0は、矢印AR1が示す距離の範囲にも、矢印AR2が示す距離の範囲にも含まれない範囲を示す。矢印AR0に含まれる距離の範囲は、例えば、図7に示す比較結果LCにおける領域C0と略対応関係にある。
【0074】
図9は、実施形態における測距処理の一例を示すフローチャートである。図9に示すように、まず、取得部151は、撮像装置20により撮像された第1画像、第2画像及び第3画像の各画像を取得する(ステップS101)。次に、較正部152は、複数の撮像部2の組み合わせであるステレオセットとして、第1ステレオセットSS1及び第2ステレオセットSS2を決定する(ステップS102)。
【0075】
次に、較正部152は、第1ステレオセットSS1に対応するステレオ画像SI1を平行化する(ステップS103)。また、較正部152は、第1ステレオ画像SI1を平行化する際に用いたパラメータを用いて、第2ステレオセットSS2に対応する第2ステレオ画像SI2を平行化する(ステップS104)。
【0076】
次に、算出部153は、平行化された第1ステレオ画像SI1及び平行化された第2ステレオ画像SI2のそれぞれについて、画素単位で視差情報を算出する(ステップS105)。また、算出部153は、平行化された第1ステレオ画像SI1及び平行化された第2ステレオ画像SI2のそれぞれについて、画素単位で信頼度を算出する(ステップS106)。
【0077】
次に、生成部154は、第1ステレオ画像SI1及び第2ステレオ画像SI2から、対応する画素を選択する(ステップS111)。そして、生成部154は、第1ステレオセットSS1の信頼度と、第2ステレオセットSS2の信頼度との差分を選択された画素に基づいて算出し、所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS120)。
【0078】
生成部154は、信頼度の差分が所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS120:Yes)、信頼度が高い方のステレオセットSSに対応する視差を用いて、距離を算出する(ステップS121)。一方、生成部154は、信頼度の差分が所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS120:No)、それぞれのステレオセットSSに対応する視差に重み付けをして、重み付き距離を算出する(ステップS122)。
【0079】
そして、生成部154は、平行化後の基準画像LL2に含まれる全ての画素について距離を測定したか否かを判定する(ステップS130)。生成部154は、全ての画素について距離を測定していないと判断した場合(ステップS130:No)、ステップS111に戻って処理を繰り返す。
【0080】
生成部154は、全ての画素について距離を測定したと判断した場合(ステップS130:Yes)、算出された画素ごとの距離を合成して、平行化後の基準画像LL2に重ね合わせた距離情報を生成する(ステップS131)。
【0081】
以上述べたように、実施形態における測距システム1は、それぞれ異なる位置から対象物を撮像する、複数の撮像部21,22,23と、取得部151と、較正部152と、生成部154とを備える。取得部151は、前記複数の撮像装置のうち、第1の撮像部21により撮像された第1画像BL1、第2の撮像部22により撮像された第2画像RL1、及び第3の撮像部23により撮像された第3画像RR1を取得する。較正部152は、前記第1画像と前記第2画像とを含む第1のステレオ画像SI1を較正するとともに、前記第1のステレオ画像SI1の較正に用いられたパラメータを用いて、前記第1画像と前記第3画像とを含む第2のステレオ画像SI2を較正する。生成部154は、較正された前記第1のステレオ画像SI1と、較正された前記第2のステレオ画像SI2とに基づいて、前記対象物までの距離を示す3次元情報を生成する。これにより、高い精度で対象物までの距離を測定できる。
【0082】
なお、上で述べたように、背景技術においては、例えば対象物までの距離Zが30cm未満である場合や、対象物の大きさがφ1.5未満であるような場合は、距離を正確に推測できない場合がある。本実施形態においては、いずれかのステレオセットの基線長を短くすることで、より小さい対象物や近くにある対象物についても、より精度よく距離を測定できる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、測距システム1が、3つの撮像部21、22及び23を有する構成について説明したが、実施形態はこれに限られず、例えば測距システムが4つ以上の撮像部を備えるような構成であってもよい。この場合、測距システムは、同一の基準画像を含む3つ以上のステレオセットを決定することができるので、距離測定の精度をより高めることができる。
【0084】
また、3つの撮像部のうち、左端に設けられる第1撮像部21を基準撮像部とする実施形態について説明したが、これに限られず、第2撮像部22又は第3撮像部23が基準撮像部となってもよい。これにより、3つの撮像部2を用いて、より多くのステレオセットSSの組み合わせを実現できる。
【0085】
また、画素単位でステレオ画像間の信頼度を比較する構成について説明したが、実施の形態はこれに限られない。例えば、より小さなサブピクセルオーダーで信頼度を比較してもよく、画素よりも大きな単位で信頼度を比較してもよい。
【0086】
また、視差情報は、各カメラの性質や周辺の明るさ等にも左右される。そこで、視差情報の信頼度の安定性を向上させるために、比較対象とする画素に近接する画素における信頼度(周辺視差に関する信頼度)を比較対象としてもよい。その際、比較対象とする画素の信頼度と、周辺視差に関する信頼度とのうち、より安定度が高い方を選択するような構成であってもよい。
【0087】
また、上で述べたように、信頼度の差分の代わりに、信頼度の比率に基づいて、距離情報を算出するような構成であってもよい。例えば、図9に示すフローチャートのステップS120において、生成部154は、信頼度の比率が所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0088】
この場合において、生成部154は、信頼度の比率が所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS120:Yes)、信頼度が高い方のステレオセットSSに対応する視差を用いて、距離を算出する(ステップS121)。一方、生成部154は、信頼度の差分が所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS120:No)、それぞれのステレオセットSSに対応する視差に重み付けをして、重み付き距離を算出する(ステップS122)。
【0089】
また、較正部152は、入力部12を介して、測距システム1の利用者から基準撮像部の選択を受け付けてもよい。この場合における入力部12及び較正部152は、選択部の一例である。
【0090】
また、測距装置10と撮像装置20とが別々の装置である構成について説明したが、測距装置10と撮像装置20とは一体に形成されていてもよい。また、一つの撮像装置20が複数の撮像部2を備える測距システム1について説明したが、これに限られず、測距システムが複数の撮像装置20を含むような構成であってもよい。この場合、測距装置10は、複数の撮像装置20により、同一時点において撮像された画像を用いる。
【0091】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 測距システム、 10 測距装置、 11 通信部、 12 入力部、 13 表示部、 14 記憶部、 15 制御部、 151 取得部、 152 較正部、 153 算出部、 154 生成部、 20 撮像装置、 21 第1撮像部、 22 第2撮像部、 23 第3撮像部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9