(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電波強度測定装置
(51)【国際特許分類】
H04B 17/318 20150101AFI20231206BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231206BHJP
H04B 17/23 20150101ALI20231206BHJP
【FI】
H04B17/318
H02J13/00 301A
H04B17/23
(21)【出願番号】P 2020061616
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】白井 良和
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-013182(JP,A)
【文献】特開2019-030088(JP,A)
【文献】特開2017-195774(JP,A)
【文献】特開2019-154135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0081382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定家屋の電力情報を出力する電力情報送信デバイスが設置された第1の位置の近傍に配置され、当該電力情報送信デバイスが発信する電波の特定周波数帯及び電波強度と同等の周波数帯及び電波強度の電波を発信する送信装置と、
前記送信装置から発信される電波を受信可能であり、受信した電波の状態
が予め定めた電波強度か否かを判定して報知する表示部を備えた受信装置と、
を備え、
前記受信装置は、少なくとも、前記特定家屋の分散型電源が設置されるか又は設置予定の第2の位置の近傍に配置された場合に前記送信装置から発信される電波を受信可能である、
電波強度測定装置。
【請求項2】
特定家屋の電力情報を出力するスマートメータが設置された第1の位置の近傍に配置され、当該スマートメータが発信するBルート周波数帯及び電波強度と同等の周波数帯及び電波強度の電波を発信する送信装置と、
前記送信装置から発信される電波を受信可能であり、受信した電波の状態
が予め定めた電波強度か否かを判定して報知する表示部を備えた受信装置と、
を備え、
前記受信装置は、少なくとも、前記特定家屋の分散型電源が設置されるか又は設置予定の第2の位置の近傍に配置された場合に前記送信装置から発信される電波を受信可能である、
電波強度測定装置。
【請求項3】
前記受信装置を、前記送信装置からの電波を中継して、分散型電源へ再送信可能な中継器に見立て、
前記受信装置を、前記特定家屋の内部の複数位置に配置した状態で、前記送信装置による電波の送信及び前記受信装置による電波の受信を実行する、請求項1又は請求項2記載の電波強度測定装置。
【請求項4】
前記分散型電源が、
ガスを用いて発電する発電部と、発電時に発生する熱を利用して温水を生成する温水生成部と、が設けられた燃料電池コージェネレーションシステムである、請求項1~請求項3の何れか1項記載の電波強度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源設備の運転制御に必要になる電流、電力、電力量をはじめとする電力情報等を無線通信で取得する場合の電波強度を測定するための電波強度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(既存設備)
【0003】
商用電源に加え、太陽光発電や蓄電池、或いはガスエンジンや燃料電池を用いて発電し、かつ排熱を利用するコージェネレーションシステム等の所謂分散型電源が設置された家屋において、過電流や逆潮流等の監視は重要である。例えば、コージェネレーションシステム等の分散型電源は、クランプ型電流センサ等を家屋の分電盤等へ取り付け、家屋の壁を貫通する配線工事を経て、コージェネレーションシステム等の分散型電源の制御系に接続することで、過電流や逆潮流等の監視を行うことが一般的であった。
【0004】
ところで、スマートメータから家屋の電力使用状況のデータを直接取得すること、或いは、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)等のホームコントローラから家屋の電力使用状況のデータを間接的に取得することができれば、クランプ型電流センサを分電盤等へ取り付ける作業及び家屋の壁を貫通する配線工事を省略することができるが、実現には至っていない。
【0005】
なお、スマートメータの情報取得は、Aルート、Bルート、Cルートの通信経路を有している。
【0006】
Aルートは、スマートメータと電力会社とを結ぶ通信経路であり、Bルートは、スマートメータとHEMS等を結ぶ通信経路であり、Cルートは、Aルートを介して電力会社が取得したデータを第三者(小売電気事業者等)へ提供するための通信経路である。
【0007】
スマートメータに関する参考として、特許文献1には、分岐電路の使用電力データとスマートメータからの電力量データの双方を管理する機器を収容しても大型化を防止できる分電盤を提供することが記載されている。
【0008】
より詳しくは、特許文献1には、主幹ブレーカと、主幹バーに接続された複数の分岐ブレーカと、個々の分岐ブレーカに流れる電流を計測する電流センサユニットと、分岐ブレーカに隣接する部位に設置されて、電流センサユニットが計測した分岐電流情報を受けて分岐電路毎の使用電力を演算して出力する電力情報出力部を備えた電力情報送信ユニットとを有し、電力情報送信ユニットは主幹バー接続部を有して、接続された主幹バーを介して主幹ブレーカの一次側に設置されているスマートメータとG3-PLC(Power Line Communication:電力線搬送通信)或いはWi-SUN(Wireless Smart Utility Network)無線通信の何れかでBルート通信を実施し、通信により入手した電力量データに加えて、電流センサユニットから入手した分岐電路の使用電力データを外部に出力する。
【0009】
なお、特許文献1に記載される従来技術として、分電盤に設けた電力情報送信ユニットが、スマートメータとG3-PLC或いはWi-SUN無線通信の何れかでBルート通信を実施しているが、電力情報送信ユニットと分散型電源との関係については記載されていない。
【0010】
また、家屋における無線通信の改善に関する先行技術として、特許文献2には、スマートメータ用の電波、Wi-Fi信号用の電波、又はBluetooth(登録商標)等の電波の送受信が困難又は不可能な通信難所から、電波の送受信が容易な通信良所まで通る通信ケーブルと、前記通信ケーブルの両端にそれぞれ接続され、前記電波を送受信可能なアンテナと、を備え、前記通信ケーブルは、スマートメータが設置された屋外と、HEMSが設置された部屋とを連通して前記屋外から前記部屋まで通る屋内無線システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-075895号公報
【文献】特開2019-009698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、コージェネレーションシステム等の分散型電源の制御系が、スマートメータからBルートを介して直接電力情報を取得すること、或いはスマートメータからBルートを介してHEMSへ、さらにHEMSから特定小電力無線等を介して間接的に電力情報を取得することを想定した場合、無線通信による様々な課題が発生し得る。
【0013】
例えば、集合住宅等の玄関或いは開放廊下近傍にスマートメータが設置され、家屋の空間を挟んだバルコニー側にコージェネレーションシステム(制御系を含む)等の分散型電源が設置された場合、家屋を構成する壁や家具(電気製品、木製製品等に関わらず)等が、スマートメータとコージェネレーションシステム等の分散型電源の制御系との間の通信の電波強度を弱め、通信が失敗する原因となることがある。
【0014】
また、例えば、戸建住宅においても、屋内の空間を挟んで互いに平行となる一対の壁のそれぞれに、スマートメータとコージェネレーションシステム(制御系を含む)とが設置された場合でも、通信時の最短距離が家屋を通過する経路となり、集合住宅と同様に、家屋を構成する壁や家具(電気製品、木製製品に関わらず)等が、スマートメータとコージェネレーションシステム等の分散型電源の制御系との間の通信の電波強度を弱め、通信が失敗する原因となることがある。
【0015】
さらに、コージェネレーションシステム等の分散型電源の設置にあたり、スマートメータ又はHEMSからの電波を受信、或いはスマートメータ又はHEMSへ電波を送信できるよう、電波強度の測定等を行って、最適な設置場所を把握し、通信不良を回避する必要があるが、スマートメータ又はHEMSと通信(Wi-SUN、G3PLC、特定小電力無線等)を行うためには、手続き(ID(識別符号)、PW(パスワード)の入手等)が必要になり、また現状では手続きに最大2週間程度を有することから、迅速な対応が困難になることがある。
【0016】
本発明は、家屋で使用されるエネルギーを管理する制御装置間で無線通信によって情報を送受信する場合に、無線通信の手続きが確立していない状況において、電波強度を測定し無線通信の電波障害の発生の予測をすることで、制御装置の最適な設置位置関係を提供することができる電波強度測定装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る電波強度測定装置は、特定家屋の電力情報を出力する電力情報送信デバイスが設置された第1の位置の近傍に配置され、当該電力情報送信デバイスが発信する電波の特定周波数帯及び電波強度と同等の周波数帯及び電波強度の電波を発信する送信装置と、前記特定家屋の分散型電源が設置されるか又は設置予定の第2の位置の近傍に配置され、前記送信装置から発信される電波を受信可能であり、受信した電波の状態を、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で、予め定めた電波強度か否かを判定して報知する表示部を備えた受信装置と、を有している。
【0018】
本発明によれば、送信装置は、特定家屋の電力情報を出力する電力情報送信デバイスが設置された第1の位置の近傍に配置され、当該電力情報送信デバイスが発信する電波の特定周波数帯及び電波強度と同等の周波数帯及び電波強度の電波を発信する。
【0019】
一方、受信装置は、特定家屋の分散型電源が設置されるか又は設置予定の第2の位置の近傍に配置され、前記送信装置から発信される電波を受信可能である。受信装置は、受信した電波の状態を、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で、予め定めた電波強度か否かを判定して報知する表示部を備えており、検査者は、視覚を通じて電波強度を認識することができる。
【0020】
本発明に係る電波強度測定装置は、特定家屋の電力情報を出力するスマートメータが設置された第1の位置の近傍に配置され、当該スマートメータが発信するBルート周波数帯及び電波強度と同等の周波数帯及び電波強度の電波を発信する送信装置と、前記特定家屋の分散型電源が設置されるか又は設置予定の第2の位置の近傍に配置され、前記送信装置から発信される電波を受信可能であり、受信した電波の状態を、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で、予め定めた電波強度か否かを判定して報知する表示部を備えた受信装置と、を有している。
【0021】
本発明によれば、送信装置は、特定家屋の電力情報を出力するスマートメータが設置された第1の位置の近傍に配置され、当該スマートメータが発信するBルート周波数帯及び電波強度と同等の周波数帯及び電波強度の電波を発信する。
【0022】
一方、受信装置は、特定家屋の分散型電源が設置されるか又は設置予定の第2の位置の近傍に配置され、前記送信装置から発信される電波を受信可能である。受信装置は、受信した電波の状態を、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で、予め定めた電波強度か否かを判定して報知する表示部を備えており、検査者は、視覚を通じて電波強度を認識することができる。
【0023】
本発明において、前記受信装置を、前記送信装置からの電波を中継して、分散型電源へ再送信可能な中継器に見立て、前記受信装置を、前記特定家屋の内部の複数位置に配置した状態で、前記送信装置による電波の送信及び前記受信装置による電波の受信を実行することを特徴としている。
【0024】
中継器を設置する場合に、最適な設置位置を、視覚を通じて認識することができる。
【0025】
本発明において、前記分散型電源が、ガスを用いて発電する発電部と、発電時に発生する熱を利用して温水を生成する温水生成部と、が設けられた燃料電池コージェネレーションシステムであることを特徴としている。
【0026】
燃料電池コージェネレーションシステムの設置の際、最適な設置位置を確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、家屋で使用されるエネルギーを管理する制御装置間で無線通信によって情報を送受信する場合に、無線通信の手続きが確立していない状況において、電波強度を測定し無線通信の電波障害の発生の予測をすることで、制御装置の最適な設置位置関係を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施の形態に係るコージェネレーション装置及び当該コージェネレーション装置が設置された家屋の概略図である。
【
図2】コージェネレーション装置のコントローラの制御ブロック図である。
【
図3】生活状況(1日の生活スタイル)に基づく、電力使用量、タンク貯湯量、給湯使用量、ガス使用量の遷移特性図である。
【
図4】(A)は集合住宅におけるスマートメータとコージェネレーション装置との位置関係を示す平面図、(B)は戸建住宅におけるスマートメータとコージェネレーション装置との位置関係を示す平面図である。
【
図5】本実施の形態に係るコージェネレーション装置を設置する前の状態を示す家屋の概略図である。
【
図6】本実施の形態に係る電波強度測定装置の受信装置の正面図であり、(A)は電波強度測定中画面、(B)は中継器最適設置場所検索画面である。
【
図7】変形例に係るコージェネレーション装置及び当該コージェネレーション装置が設置された家屋の概略図(HEMS具備)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本実施の形態に係る分散型電源設備の一例としての、家庭用燃料電池コージェネレーション装置(以下、本実施の形態において、単に「コージェネレーション装置10」という)の概略図が示されている。
【0030】
コージェネレーション装置10は、タンクユニットと燃料電池ユニットとが併設されたシステムである。なお、併設とは、物理的に隣接していることに限定するものではなく、相互に連携しあうことを意味する。すなわち、タンクユニットと燃料電池ユニットとが離れた状態で設置され、配管や電気配線等で連結するようにしてもよい。
【0031】
コージェネレーション装置10は、
図1に示される如く、家屋12の外壁に沿って設置されるものであり、作業者が現場へ出向き、設置作業を実行する。
【0032】
図1は、設置作業が完了し、試運転が完了し、家屋12側の各種設備(電気機器、給湯設備等)と連携して、定常的に運転可能な状態である。
【0033】
(コージェネレーション装置10の構成)
【0034】
コージェネレーション装置10は、図示は省略したが、ホットモジュール、パワーコンディショナ、排熱回収装置、蓄熱タンク、ラジエータ、熱交換器等を備え、それぞれが、コントローラ14によって、給湯関連制御部27及び発電関連制御部29(共に、
図2参照)を介して、相互に連携して制御される。
【0035】
ホットモジュールは、燃料処理装置で水素を取り出し、取り出した水素を燃料電池セルスタックへ供給し、空気中の酸素により直流電力を発生させる。
【0036】
パワーコンディショナは、発電された直流電力を交流電力に変換し、家屋へ供給する。
【0037】
排熱回収装置は、発電によって発生する排熱ガスから熱を回収する。
【0038】
蓄熱タンクは、熱媒を介して回収した熱を高温で貯めることができ、貯められた熱は給湯時に利用される。
【0039】
ラジエータは、熱媒を放熱させる。ラジエータは、必須ではない。
【0040】
熱交換器は、熱媒タンクからの高温熱媒を利用し、水道水を温める。熱交換器は、必須ではない。
【0041】
また、コージェネレーション装置10は、発電電力を、電源線15を介して熱源機16へ送ることも可能である。熱源機16は、コージェネレーション装置10で加熱された温水を、必要に応じて都市ガス(例えば、13A)の燃焼によりさらに加熱して家屋12へ供給する。
【0042】
図2に示される如く、コントローラ14は、CPU18、RAM20、ROM22、I/O24、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス26で構成されたマイクロコンピュータ28を備える。
【0043】
I/O24には、給湯関連制御部27と、発電関連制御部29とが接続され、給湯及び発電に伴う動作がコントローラ14によって制御される。
【0044】
また、I/O24には、大規模記憶装置30が接続されており、コントローラ14で実行される発電及び給湯に関する処理プログラムが記憶されると共に、発電に基づく履歴情報(例えば、本実施の形態では、通信インタバルの調整情報等)が記憶されるようになっている。
【0045】
さらに、I/O24には、リモコン32が接続されている。リモコン32は、コージェネレーション装置10が設置される対象の家屋12の内部に設置され、使用者がコージェネレーション装置10(及び熱源機16)に関して指令を入力する機能やコージェネレーション装置10の状態を表示する機能等を有する。
【0046】
(分散型電源の構成)
【0047】
図1に示される如く、本実施の形態に係る分散型電源では、商用電源34とコージェネレーション装置10の発電電力が、家屋12での電源とされている。
【0048】
商用電源34は、スマートメータ36に接続されている。スマートメータ36は商用電源34の電流、電力、電力量をはじめとする電力情報等を計測し、計測した情報を、Aルート、Bルート、Cルートの通信経路によって、特定の通信先へ送信することが可能である。
【0049】
すなわち、Aルートは、スマートメータ36と電力会社とを結ぶ通信経路であり、Bルートは、スマートメータ36と家屋12に設置された機器(例えば、HEMSが構築されている場合は、そのコントローラ等)を結ぶ通信経路であり、Cルートは、Aルートを介して電力会社が取得したデータを第三者(小売電気事業者等)へ提供するための通信経路である。
【0050】
スマートメータ36から出力される電源線38は、家屋12の内部に設置された分電盤40へ配線されている。
【0051】
分電盤40は、スマートメータ36側を上流側とすると、上流側から順に、サービスブレーカ42、漏電遮断器46、及び安全ブレーカ48が設置されている。
【0052】
サービスブレーカ42は、契約容量を決定するための遮断器であるが、設置されていない場合もある。
【0053】
漏電遮断器46は、家屋12の内部配線や電気機器の漏電を素早く感知・遮断し、電気事故を未然に防ぐための遮断器である。
【0054】
安全ブレーカ48は、分電盤40から家屋12の各使用場所へ送電するための分岐回路のそれぞれに取り付けられ、電気機器の故障等に伴うショートや一定以上の電力使用を検知した場合に自動的に回路を保護する遮断器である。
【0055】
ここで、コージェネレーション装置10によって発電した発電電力は、分電盤40に設けられた専用の安全ブレーカ48Aを介して、商用電源34と合流し、家屋12の内部の電気機器の電源として用いることができる。
【0056】
なお、図示は省略したが、コージェネレーション装置10には、商用電源34の停電時専用の電源線が設けられ、停電により商用電源34から電力が供給されない状況において、コージェネレーション装置10の発電電力を、家屋12の一部に取り付けられた停電時専用コンセントを介して、供給することができるようになっている。
【0057】
ここで、コージェネレーション装置10のコントローラ14では、時々刻々と変動する家屋12における電力使用量に応じて、発電電力を制御する必要がある。
【0058】
一例として、
図3に、生活状況(1日の生活スタイル)に基づく、電力使用量、タンク貯湯量、給湯使用量、ガス使用量の遷移特性図を示す。この
図3では、一例としてコージェネレーション装置10の定格発電出力が0.7kWであるものとして、家屋12における使用電力が0.7kW以下である場合には発電出力のみで、家屋12における使用電力が0.7kWを超える場合は発電電力と商用電源34により電力供給するように運転する制御を示している。このため、コントローラ14では、スマートメータ36からBルートの通信経路を利用して、商用電源34の電流、電力、電力量をはじめとする電力情報等を取得するようにしている。
【0059】
本実施の形態では、Bルートの通信経路を介してスマートメータ36から電力情報を取得するインタバルとして、30秒に1回を基準としている。当該インタバルであれば、無線通信の各種基準に抵触することなく、時々刻々と変動する家屋12における使用電力におおむね追従し、
図3の電力遷移特性に近似する制御が可能である。
【0060】
ところで、スマートメータ36の位置は固定位置であり、基本的には移動不可である。このため、スマートメータ36との間での無線通信が必須とされるコージェネレーション装置10(のコントローラ14)の設置場所に、無線通信を実行する上での制限が発生する。言い換えれば、コージェネレーション装置10は、スマートメータ36からのBルートの通信経路による通信の電波強度が所定の強度以上を継続し得る最適位置に設置する必要があるが、従来は、コージェネレーション装置10を最適位置に設置するに際し、2つの大きな障害があった。
【0061】
障害の1つは電波強度の確保が困難であること(以下、障害1という)であり、障害の他1つはスマートメータ36との間の無線通信のための手続きが必要であるが、手続きに時間を要することから迅速な対応ができない場合があること(以下、障害2という)である。
【0062】
(障害1)
【0063】
電波強度を弱める要因の1つは、家屋12を構成する壁等の障害物の存在がある。
【0064】
図4(A)は、集合住宅12Aにおけるスマートメータ36とコージェネレーション装置10との位置関係を示す平面図である。
【0065】
集合住宅12Aでは、一般的に玄関50側にスマートメータ36が設置されている。一方、集合住宅12Aに、コージェネレーション装置10を設置する場合、バルコニー52側となることがある。このようなスマートメータ36とコージェネレーション装置10との設置関係では、集合住宅12Aの室内の壁54や家具56(電気製品、木製製品等に関わらず)が、スマートメータ36とコージェネレーション装置10のコントローラ14との間の通信の電波強度を弱める原因となることがある。
【0066】
次に、
図4(B)は、戸建住宅12Bにおけるスマートメータ36とコージェネレーション装置10との位置関係を示す平面図である。
【0067】
戸建住宅12Bでは、スマートメータ36は、外壁58に取り付けられ、この外壁58と戸建住宅12Bの内部の空間を挟んで互いに平行となる反対側の外壁60に沿ってコージェネレーション装置10が設置される場合がある。
【0068】
このようなスマートメータ36とコージェネレーション装置10との設置関係では、戸建住宅12Bの外壁58、60や、内壁61、家具63(電気製品、木製製品等に関わらず)が、スマートメータ36とコージェネレーション装置10のコントローラ14との間の通信の電波強度を弱める原因となることがある。
【0069】
(障害2)
【0070】
障害1を解消するためには、コージェネレーション装置10を設置する前に、所定の電波強度を維持することができる最適な位置を把握すればよい。
【0071】
しかしながら、コージェネレーション装置10の設置前にスマートメータ36からBルートの通信経路によって無線通信で情報を受けるためには、所定の手続き(ID(識別符号)、PW(パスワード)の入手等)が必要であり、また現状では手続きに最大2週間程度を有することから、迅速な対応が困難となることがある。
【0072】
そこで、本実施の形態では、
図5に示される如く、コージェネレーション装置10を設置する前の段階で、当該コージェネレーション装置10を設置するための準備機器として、電波強度測定装置66を用い、コージェネレーション装置10の設置前の状態で、電波強度を測定し得る構成とした。
【0073】
図5に示される如く、電波強度測定装置66は、送信装置68と受信装置70とを備えている。
【0074】
送信装置68は、スマートメータ36の近傍に取り付けられ、受信装置70は、コージェネレーション装置10を設置する予定の位置に配置されている。
【0075】
この状態で、送信装置68からBルートと同等の無線周波数帯及び電波強度で電波を送信する。受信装置70は、送信装置68からの電波(すなわち、スマートメータ36のBルートの通信経路に基づく電波の疑似電波)を受信可能である。すなわち、送信装置68と受信装置70との相対位置関係を適宜変更することで、障害1を解消する位置関係を得ることが可能となる。なお、送信装置68では、必要に応じて、通信の電文内容や電文長を調整できるような機能を有してもよい。
【0076】
一方、送信装置68がスマートメータ36の代わりに、疑似的なBルートの通信経路の無線周波数及び電波強度の電波を送信するため、送信装置68がスマートメータ36のBルートの通信の代替機となり、障害2を解消することが可能となる。
【0077】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0078】
図5に示される如く、家屋12には、コージェネレーション装置10が設置前であり、スマートメータ36のBルートの通信経路での電力情報取得のための手続き等も終わっていない。
【0079】
従って、電波強度を考慮することなく、コージェネレーション装置10を設置した後になって、スマートメータ36から無線通信で電力情報を得ることができないという状況に陥る可能性がある。
【0080】
このような事態が生じた場合、従来では、追加工事として、例えば、分電盤40にクランプ型電流センサ(図示省略)を取り付け、家屋12の外壁を貫通させて、コージェネレーション装置10まで配線する必要があった。
【0081】
これに対して、本実施の形態では、コージェネレーション装置10の設置前に、電波強度測定装置66の送信装置68をスマートメータ36の近傍に取り付け、受信装置70をコージェネレーション装置10の設置候補位置に配置して、送信装置68からスマートメータ36のBルートの通信経路に基づく電波の疑似電波を送信するようにした。
【0082】
この疑似電波を受信装置70が受信し得る位置が、コージェネレーション装置10の設置可能場所となる。
【0083】
(検査手順)
【0084】
図6(A)に示される如く、受信装置70はモニタ71が設けられている。モニタ71には、電波強度を段階的(
図6(A)では、0~10段階)に表示できるゲージ部74を有しており、受信する電波強度によって、ゲージ部74の表示が変化し、段階的に電波強度を表示できる。このため、電波強度の検査者は、視覚を通じて(ゲージ部74の状態を見ることで)、電波強度を把握することができる。なお、モニタ71は、LED等の光源を用いた表示部であってもよい。
【0085】
なお、ゲージ部74には、OKしきい値ライン75が重ねて表示されており、ゲージ部74による電波強度指標値が、このOKしきい値ライン75よりも上(本実施の形態では、レベル6以上)であれば、電波強度は有効と判断される。
【0086】
図6(A)における送信装置68からの電波を受信装置70で受けたとき、電波強度がOKしきい値ライン75を超えない場合の対策として、家屋に中継器を設置する場合がある。この場合、受信装置70は、モニタ71の切り替えによって、
図6(B)に示される如く、中継器最適設置場所候補76を表示させることができる。
【0087】
この中継器最適設置場所候補76を表示させた状態で、検査者が本実施の形態の受信装置70を所持し、家屋を移動すると、家屋を模した座標軸上に電波強度の異なるマーク72が表示される。
【0088】
例えば、
図6(B)では、三角マーク72A→丸マーク72B→星マーク72Cの順に電波強度が高いことを示すこととする。検査者は、このマーク72の配置を見て、中継器の設置場所を決めることができる。
【0089】
(変形例)
【0090】
本実施の形態に係るコージェネレーション装置10のコントローラ14では、家屋12に設置されたスマートメータ36から直接Bルートを介して、電力情報を取得することを前提とした。
【0091】
ここで、
図7に示される如く、変形例に係る家屋12には、HEMS62が構築されている。
【0092】
HEMS62は、家屋12で使用する電気及びガスを、リアルタイムで管理して節約すると共に、二酸化炭素削減等、温暖化対策にも役立つものである。
【0093】
HEMS62に内蔵されたHEMSコントローラ64に、家電製品等を接続し、電気やガスの使用状況をモニタで管理することで、可視化(モニタ表示)を実現し、かつ家電製品を自動制御する。
【0094】
ところで、HEMS62では、管理のもとになるデータを、スマートメータ36から取得する。言い換えれば、HEMS62のHEMSコントローラ64は、スマートメータ36と同等の電力情報を取得している。
【0095】
そこで、変形例では、コージェネレーション装置10のコントローラ14と、HEMS62のHEMSコントローラ64との間で、Wi-SUN HAN、Wi-SUN Enhanced HAN、特定小電力無線、LPWA(Low Power Wide Area)等の通信手段を用いて、通信プロトコルを確立し、HEMS62のHEMSコントローラ64から電力情報を取得することを前提として、電波強度測定装置66の送信装置68を、HEMS62の近傍に配置する。
【0096】
送信装置68から、HEMS62のHEMSコントローラ64と同等の、LPWAの無線周波数帯及び電波強度で電波を送信し、コージェネレーション装置10の設置候補に配置した受信装置70での電波の受信状態で、コージェネレーション装置10の最適配置位置を認識することができる。
【0097】
なお、本実施の形態では、商用電源34とコージェネレーション装置10の組み合わせで分散型電源を実現したが、分散型電源の組み合わせは、商用電源34とコージェネレーション装置10とに限らず、太陽光発電、地熱発電、風力発電、蓄電池等、他の再生可能エネルギーと組み合わせたとき、スマートメータ36等から電力情報を取得して、発電量を制御する構成の全てに、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 コージェネレーション装置
12 家屋
12A 集合住宅
12B 戸建住宅
14 コントローラ
15 電源線
16 熱源機
18 CPU
20 RAM
22 ROM
24 I/O
26 バス
27 給湯関連制御部
28 マイクロコンピュータ
29 発電関連制御部
30 大規模記憶装置
32 リモコン
34 商用電源
36 スマートメータ
38 電源線
40 分電盤
42 サービスブレーカ
46 漏電遮断器
48 安全ブレーカ
48A 安全ブレーカ
50 玄関
52 バルコニー
54 壁
56 家具
58 外壁
60 外壁
61 内壁
62 HEMS
63 家具
64 HEMSコントローラ
66 電波強度測定装置
68 送信装置
70 受信装置
71 モニタ
72 マーク
72A 三角マーク
72B 丸マーク
72C 星マーク
74 ゲージ部
75 OKしきい値ライン
76 中継器最適設置場所候補