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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】シールド掘進工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20231206BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E21D11/00 B
E21D9/06 302Z
E21D9/06 301Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020062137
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161664
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村中 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】土居 武
(72)【発明者】
【氏名】安竹 馨
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-074318(JP,A)
【文献】特開2000-274192(JP,A)
【文献】特開2006-138176(JP,A)
【文献】特開昭58-017999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進工法において、スキンプレートの後端部分に軸方向に間隔をおいて取り付けられる複数のテールシール部材の間隔部分に、充填されるようにして注入されたテールシーラー材を、周方向に間隔をおいて複数の洗浄水供給排出孔が設けられた所定のセグメントリングの部分で、当該所定のセグメントリングに前記テールシーラー材が充填されるようにして注入された間隔部分が配置されている状態で、洗浄水を、前記洗浄水供給排出孔を介して前記テールシーラー材が充填されるようにして注入された間隔部分に供給し、排出することによって、前記間隔部分を洗浄した後に、前記所定のセグメントリングを通過した前記間隔部分にテールシーラー材を注入し直して、引き続き掘進作業を行なうようになっており、
前記テールシール部材は、前記スキンプレートの後端部分に軸方向に間隔をおいて少なくとも3体取り付けられており、洗浄される前記間隔部分が、軸方向に少なくとも2箇所に形成されており、
一か所の前記間隔部分を洗浄している間、他の前記間隔部分に前記テールシーラー材が充填されている状態として、前記テールシール部材と前記テールシーラー材とによるシール機能を保持しつつ、前方側の前記間隔部分から洗浄してゆくシールド掘進工法。
【請求項2】
周方向に間隔をおいて複数の前記洗浄水供給排出孔が設けられた前記所定のセグメントリングは、軸方向に連設する複数のセグメントリングのうちの、外径が縮径していない非縮径セグメントリングの軸方向の後端部に連設される、厚さが小さくなっていることで外径が縮径している縮径セグメントリングである請求項1記載のシールド掘進工法。
【請求項3】
複数の前記洗浄水供給排出孔が設けられた前記所定の縮径セグメントリングは、シールドトンネルの直線部分を構成している前記非縮径セグメントリングの軸方向の後端部に連設される、シールドトンネルの曲線部分の先端部に配置された変曲点部分の縮径セグメントリングである請求項2記載のシールド掘進工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進工法に関し、特に、シールド掘進機による掘進をスムーズに行えるようにするシールド掘進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、シールド掘進機の先端の切端面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターにより地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方にセグメントによるトンネル覆工体(セグメントリング)を組み立てながら、発進立坑から到達立坑に向けて、地中にトンネルを形成してゆく工法であり、都市部や平野部における主要なトンネル工事のための工法として広く採用されている。
【0003】
シールド工法に用いるシールド掘進機は、スキンプレートと呼ばれる金属製の外殻体の前部に切羽面を切削する回転カッターや、隔壁、カッター駆動装置、排土機構等を備えると共に、スキンプレートの後部に、シールドジャッキ、エレクター装置等を備えており、エレクター装置を用いてセグメントによるセグメントリングを組み立て、組み立てたセグメントリングによるトンネル覆工体から反力をとりつつ、シールドジャッキによってスキンプレートと共に回転カッターを押し出すことで、切羽面を切削しながらトンネルを掘進して行くようになっている。
【0004】
また、組み立てられたセグメントリングの外周面と、これを覆う後端部分のスキンプレートの内周面との間には、テールクリアランスと呼ばれる隙間が保持されるようになっており、これによって、シールド掘削機を前進させる際に、セグメントリングを残置したまま、セグメントリングの外周面に沿って、スキンプレートをスムーズに前方に移動させることが可能になると共に、曲線部分を施工する際には、保持された隙間を利用して、セグメントリングによるトンネル覆工体に対して、スキンプレートを徐々に折れ曲がった方向に前進させることが可能になる。さらに、テールクリアランスを介して、周囲の地盤から土砂や地下水がシールド掘進機の内部に流入しないように、テールクリアランスには、例えば可撓性を有するリング状の材料からなるテールシール部材が、セグメントリングによるトンネル覆工体及びスキンプレートの軸方向に間隔をおいて、複数取り付けられており、また複数取り付けられたテールシール部材の間隔部分には、例えばテールシールグリス材等のテールシーラー材が充填されるようにして注入されている。これによって、セグメントリングの外周面に沿った、テールシール部材のスムーズな摺動を可能にすると共に、テールシーラー材とテールシール部材とが一体となってテールクリアランスによる隙間を埋めることで、周囲の地盤から地下水や土砂がスキンプレートの内側に流入するのを防止する、強固な止水機能を発揮できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-118239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、テールシール部材の間隔部分に注入されたテールシーラー材は、トンネルの掘進が進行すると、それ自身が流動性を失って劣化したり、後方のセグメントリングと地山との間の隙間に裏込め材として充填されるグラウト材の中のセメント分が、混入することにより当該テールシーラー材を変質させることで固くなることによって、シールド掘進機によるスムーズな掘進が阻害される場合がある。
【0007】
特に、例えばシールドトンネルの曲線部分では、設置したセグメントリングとシールド掘進機のスキンプレートとが干渉し合わないように、セグメントリングを構成するセグメントとして、厚さが小さく外周形状が縮径したものが用いられており、したがってシールドトンネルの曲線部分を構成する厚さが小さくなっている縮径セグメントリングの外周面と、これよりも厚さが大きなシールドトンネルの直線部分を構成する非縮径セグメントリングの外周面との間には、段差が生じることになる。このため、曲線部分から直線部分に移行するシールドトンネルの変曲点部分のおいては、テールシール部材は、外周形状が縮径した縮径セグメントリングの外周面に対して比較的急傾斜で立った状態で接触している状態(図3(a)参照)から、非縮径セグメントリングの外周面に乗り上げて、比較的緩い傾斜で寝た状態で接触している状態(図3(e)参照)に変化することで、隣接するテールシール部材の間の間隔部分の容積が減少することになり、これによって間隔部分での圧力が高くなることにより、一層、シールド掘進機によるスムーズな掘進が阻害され易くなる。
【0008】
本発明は、隣接するテールシール部材の間の間隔部分に注入されたテールシーラー材が、トンネルの掘進が進行することで劣化したり、変質して固くなったりした場合でも、シールド掘進機によるスムーズな掘進が阻害されないようにしながら施工することのできるシールド掘進工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シールド掘進工法において、スキンプレートの後端部分に軸方向に間隔をおいて取り付けられる複数のテールシール部材の間隔部分に、充填されるようにして注入されたテールシーラー材を、周方向に間隔をおいて複数の洗浄水供給排出孔が設けられた所定のセグメントリングの部分で、当該所定のセグメントリングに前記テールシーラー材が充填されるようにして注入された間隔部分が配置されている状態で、洗浄水を、前記洗浄水供給排出孔を介して前記テールシーラー材が充填されるようにして注入された間隔部分に供給し、排出することによって、前記間隔部分を洗浄した後に、前記所定のセグメントリングを通過した前記間隔部分にテールシーラー材を注入し直して、引き続き掘進作業を行なうようになっており、前記テールシール部材は、前記スキンプレートの後端部分に軸方向に間隔をおいて少なくとも3体取り付けられており、洗浄される前記間隔部分が、軸方向に少なくとも2箇所に形成されており、一か所の前記間隔部分を洗浄している間、他の前記間隔部分に前記テールシーラー材が充填されている状態として、前記テールシール部材と前記テールシーラー材とによるシール機能を保持しつつ、前方側の前記間隔部分から洗浄してゆくシールド掘進工法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明のシールド掘進工法は、周方向に間隔をおいて複数の前記洗浄水供給排出孔が設けられた前記所定のセグメントリングが、軸方向に連設する複数のセグメントリングのうちの、外径が縮径していない非縮径セグメントリングの軸方向の後端部に連設される、厚さが小さくなっていることで外径が縮径している縮径セグメントリングであることが好ましい。
【0011】
また、本発明のシールド掘進工法は、複数の前記洗浄水供給排出孔が設けられた前記所定の縮径セグメントリングは、シールドトンネルの直線部分を構成している前記非縮径セグメントリングの軸方向の後端部に連設される、シールドトンネルの曲線部分の先端部に配置された変曲点部分の縮径セグメントリングであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシールド掘進工法によれば、隣接するテールシール部材の間の間隔部分に注入されたテールシーラー材が、トンネルの掘進が進行することで劣化したり、変質して固くなったりした場合でも、シールド掘進機によるスムーズな掘進が阻害されないようにしながら施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進工法が実施されるシールド掘進機の構成を説明する略示断面図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進工法を用いて施工されるシールドトンネルの急曲線部分の説明図である。
図3】(a)~(e)は、本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進工法の説明図である。
図4】(a)及び(b)は、本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進工法を実施するための縮径セグメントリングに設けられた洗浄水供給排出孔の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進工法は、図1に示すように、シールド掘進機11として例えば泥土圧式のシールド掘進機を用いたシールド工法において、シールド掘進機11の外殻体を構成するスキンプレート12の後部内側で、セグメント13a,13bを組み立てて形成されたトンネル覆工体であるセグメントリング14a,14bの外周面と、スキンプレート12の内周面との間に保持されるテールクリアランス20を介して、周囲の地盤から土砂や地下水がシールド掘進機11の内部に流入しないようにするために設けられた、複数のテールシール部材15や、これらのテールシール部材15の間隔部分15aに注入されたテールシーラー材16によって、シールド掘進機11によるスムーズな掘進が阻害されないようにしながら施工できるようにするための掘進工法として採用されたものである。
【0016】
また、本実施形態のシールド掘進工法は、特に図2に示すような、急曲線部分50aを含むシールドトンネル50においては、急曲線部分50aのセグメントリング14bとして、スキンプレート12との干渉を避けることができるように、外径が縮径していて且つトンネル軸方向Xの幅が小さくなっている縮径セグメント13bを組み立てたものが用いられていることから、急曲線部分50aから直線部分50bに接続する変曲点部分50cで、急曲線部分50aの縮径セグメントリング14bの外周面と、直線部分50bの外径が縮径していない非縮径セグメントリング14aの外周面との間には、段差部50dが生じることになる(図3(a)~(e)参照)。シールド掘進機11の掘進に伴って、この段差部50dをスキンプレート12の後部内側に取り付けられた複数のテールシール部材15が乗り上がる際に、これらの複数のテールシール部材15の間隔部分15aの容積が小さくなることで、間隔部分15aに注入されたテールシーラー材16が加圧されて、シールド掘進機11によるスムーズな掘進がさらに阻害され易くなる。このようなことから、本実施形態では、後述のシールド掘進工法を採用することによって、このような変曲点部分50cにおいて、複数のテールシール部材15や、これらのテールシール部材15の間隔部分15aに注入されたテールシーラー材16によって、シールド掘進機11によるスムーズな掘進が阻害されないようにすることを可能にしている。
【0017】
そして、本実施形態のシールド掘進工法は、図3(a)~(e)に示すように、スキンプレートの後端部分に軸方向(トンネル軸方向)Xに間隔をおいて取り付けられる複数のテールシール部材15の間隔部分15aに注入されたテールシーラー材16を、周方向に間隔をおいて複数の洗浄水供給排出孔17(図4参照)が設けられた所定のセグメントリング14a,14bの部分で、当該所定のセグメントリング14a,14bにテールシーラー材16が注入された間隔部分15aが配置されている状態で、洗浄水を、洗浄水供給排出孔17を介してテールシーラー材16が注入された間隔部分15aに供給し、排出することによって、間隔部分15aを洗浄した後に、所定のセグメントリング14a,14bを通過した間隔部分15aにテールシーラー材16’(図3(d),(e)参照)を注入し直して、引き続き掘進作業を行なうようになっている。
【0018】
また、本実施形態では、周方向に間隔をおいて複数の洗浄水供給排出孔17が設けられた所定のセグメントリング14a,14bは、軸方向Xに連設する複数のセグメントリング14a,14bのうちの、例えば外径が縮径していない非縮径セグメントリング14aの軸方向Xの後端部に連設される、厚さが小さくなっていることで外径が縮径している縮径セグメントリング14bとなっている。
【0019】
さらに、本実施形態では、複数の洗浄水供給排出孔17が設けられた所定の縮径セグメントリング14bは、シールドトンネル50の直線部分50b(図2参照)を構成している非縮径セグメントリング14aの軸方向Xの後端部に連設される、シールドトンネル50の曲線部分(急曲線部分)50aの先端部に配置された変曲点部分50cの縮径セグメントリング14bとなっている(図3(a)~(e)参照)。
【0020】
本実施形態では、シールド掘進機11は、例えば泥土圧式のシールド掘進機となっており、図1に示すように、肉厚が例えば28~50mm程度(本実施形態では50mm)の金属製プレートからなる、円筒形状の外殻体であるスキンプレート12の先端部に、回転カッター30を備えると共に、スキンプレート12の内側には、隔壁31によって仕切られた泥土圧室32、カッター駆動装置33、スクリューコンベアによる排土機構34、シールドジャッキ35、セグメント組立用のエレクター装置36等を備えている。そして、シールド掘進機11は、エレクター装置36を用いて、セグメント13a、13bによりトンネル覆工体となるセグメントリング14a,14bを組み立て、組み立てられたセグメントリング14a,14bから反力をとりつつ、シールドジャッキ35によってスキンプレート12と共に回転カッター30を前方に押し出すことで、切羽面を切削すると共に、切削した土砂を泥土として排土機構34を介して排出しながら、トンネルを掘進して行くようになっている。
【0021】
また、本実施形態では、シールド掘進機11を前進させる際に、組み立てられたセグメントリング14a,14bを残置したまま、セグメントリング14a,14bの外周面に沿って、スキンプレート12がスムーズにトンネルの軸方向Xの前方に移動できるようにすると共に、急曲線部分50aを施工する際にも対応できるように、組み立てられたセグメントリング14a,14bの外周面と、これを覆うスキンプレート12の後部の内周面との間には、テールクリアランス20と呼ばれる隙間が保持されている。
【0022】
さらに、本実施形態では、シールドトンネル50のトンネル覆工体となるセグメントリング14a,14bは、公知の複数のセグメント13a、13bを周方向にリング状に連設して組み立てることによって形成することができる。シールドトンネル50の直線部分50bの非縮径セグメントリング14aを構成するセグメント13aは、シールドトンネル50のトンネル軸方向Xの幅が例えば100cm程度、厚さが125cm程度の大きさの、鋼製や鉄筋コンクリート製のセグメントとなっており、直線部分50bの縮径セグメントリング14bを構成するセグメント13bは、シールドトンネル50のトンネル軸方向Xの幅が例えば30cm程度、厚さが100cm程度の大きさの、非縮径セグメントリング14aを形成するセグメント13aよりも厚さが小さくなった、鋼製や鉄筋コンクリート製のセグメントとなっている。これらのセグメント13a,13bは、同様の曲率半径で弧状に湾曲しており、同様の内径の内周面形状を備えるように組み立てられることで、組み立てられた非縮径セグメントリング14aの外周面と、縮径セグメントリング14bの外周面との間には、これらの接続部分において、上述のように、例えば25cm程度の高さの段差部50dが生じることになる(図3(a)~(e)参照)。
【0023】
さらにまた、本実施形態では、スキンプレート12の後端部分に取り付けられたテールシール部材15は、好ましくは公知のワイヤブラシシールからなり、スキンプレート12の後端部分の内周面に基端部分15bを固着した状態で、周方向に連続して円環状に取り付けられると共に、スキンプレート12の軸方向Xに間隔をおいて3体取り付けられており、これによってこれらのテールシール部材15の間の間隔部分15aが、軸方向に2箇所に形成されている。公知のワイヤブラシシールからなるテールシール部材15は、例えば後述するテールシーラー材16と同様の材質のシール材が含侵されていることで、シール機能を向上させていることが好ましい。テールシーラー材16は、スキンプレート12とセグメントリング14a,14bの外周面との間のテールクリアランス20の最大の間隔幅よりも、大きな張出し長さで、スキンプレート12の内側面から内方に張り出すようにして設けられている。これによってテールシーラー材16は、内側先端部分をセグメントリング14a,14bの外周面に接触させた状態を保持したまま、スキンプレート12とセグメントリング14a,14bの外周面との間のテールクリアランス20の間隔幅の増減に追随するように変形して、例えば外周形状が縮径した縮径セグメントリング14bの外周面に対して比較的急傾斜で立った状態で接触している状態(図3(a)、(b)参照)から、非縮径セグメントリング14aの外周面に乗り上げて、比較的緩い傾斜で寝かせた状態で接触している状態(図3(e)参照)に、変化できるようになっている。
【0024】
また、本実施形態では、スキンプレート12の後端部分に取り付けられた3体のテールシール部材15の間隔部分15aに注入されるテールシーラー材16は、例えば流動性及び粘性を備えるシール材として公知の、好ましくはテールシールグリスを用いることができる。好ましくはテールシールグリスによるテールシーラー材16は、公知の供給装置を用いて、好ましくはスキンプレート12に沿って設けられた供給路(図示せず)を介して、各々の隣接するテールシール部材15の間の間隔部分15aに、充填するようにして注入されるようになっている。
【0025】
そして、本実施形態のシールド掘進工法では、シールド掘進機11のスキンプレート12の後端部分に取り付けられた3体のテールシール部材15の2箇所の間隔部分15aに、テールシーラー材16が注入された状態で、スキンプレート12の後部において、エレクター装置36を用いてセグメント13a、13bによるセグメントリング14a,14bを組み立て、組み立てたセグメントリング14a,14bによるトンネル覆工体から反力をとりつつ、シールドジャッキ35によってスキンプレート12と共に回転カッター30を前方に押し出すことで、切羽面を切削しながら、図2に示すような、直線部分50b及び急曲線部分50aを含むシールドトンネル50を掘進して行くことができる。
【0026】
シールド掘進機11による掘進が進行して、例えばスキンプレート12のテールシール部材15が取り付けられた後端部分が、シールドトンネル50の急曲線部分50aから直線部分50bに移行する変曲点部分50cにおける、直線部分50bの非縮径セグメントリング14aと接続する急曲線部分50aの終端部の縮径セグメントリング14bと重なる位置まで移動することによって、図3(a)に示すように、テールシーラー材16が注入された間隔部分15aが、終端部の縮径セグメントリング14bに重ねて配置されるようになったら、当該終端部の縮径セグメントリング14bを、周方向に間隔をおいて複数の洗浄水供給排出孔17が設けられた所定のセグメントリングとして、洗浄水供給排出孔17を介して洗浄水を、テールシーラー材16が注入された間隔部分15aに供給すると共に、別の洗浄水供給排出孔17を介して排出することによって、テールシーラー材16を洗い流すことにより間隔部分15aを洗浄する。
【0027】
ここで、終端部の縮径セグメントリング14bの周方向に間隔をおいて複数設けられた洗浄水供給排出孔17は、図4(a)に示すように、シールド掘進機11のスキンプレート12が通過した後に、これの後方に残置される当該縮径セグメントリング14bの外周面と、周囲の地山との間の隙間に裏込材21(図3(a)~(e)参照)を注入するために設けられた裏込め注入孔18aを、そのまま用いることができる。また図4(b)に示すように、裏込め注入孔18aに加えて、洗浄水の供給排出用の供給排出孔18bを別途に形成することにより、洗浄水の供給や排出を、さらにスムーズに行えるようにすることが可能になる。これによって、テールシール部材15の間隔部分15aの洗浄効率を、向上させることが可能になる。
【0028】
そして、本実施形態では、上述のように、周方向に間隔をおいて複数の洗浄水供給排出孔17が設けられた所定のセグメントリングとして、例えばシールドトンネル50の急曲線部分50aの終端部の縮径セグメントリング14bにおいて、洗浄水によって、隣接するテールシール部材15の間の間隔部分15aを洗浄するようになっているので、これらのテールシール部材15の間の間隔部分15aに注入されたテールシーラー材16が、トンネルの掘進が進行することで劣化したり、変質して固くなったりして、シールド掘進機11によるスムーズな掘進が阻害されやすい状態となっている場合でも、このような状態を改善して、引き続いてシールド掘進機11によるスムーズな掘進が行われるようにすることが可能になる。
【0029】
特に、本実施形態では、シールドトンネル50の急曲線部分50aを構成する縮径セグメントリング14bの外周面と、直線部分50bを構成する非縮径セグメントリング14aの外周面との間には、これらの接続部分において、段差部50dが生じており、このため、急曲線部分50aから直線部分50bに移行するシールドトンネル50の変曲点部分50cでは、テールシール部材15は、外周形状が縮径した縮径セグメントリング14bの外周面に対して比較的急傾斜で立った状態で接触している状態(図3(a)参照)から、非縮径セグメントリング14aの外周面に乗り上げて、比較的緩い傾斜で寝かせた状態で接触している状態(図3(e)参照)に変化することで、隣接するテールシール部材15の間の間隔部分15aの容積が減少することになり、これによって間隔部分15aでの圧力が高くなることにより、一層、シールド掘進機11によるスムーズな掘進が阻害されやすい状態となっているが、上述のように、洗浄水によって、隣接するテールシール部材15の間の間隔部分15aを洗浄することにより、このような状態を改善して、引き続いてシールド掘進機11によるスムーズな掘進が行われるようにすることが可能になる。
【0030】
また、本実施形態では、上述のようにして隣接するテールシール部材15の間の間隔部分15aを洗浄したら、好ましくは洗浄された間隔部分15aが、洗浄水供給排出孔17を介して洗浄水を供給排出した所定の縮径セグメントリング14bを通過した後に、公知の供給装置を用いて、好ましくはスキンプレート12に沿って設けられた供給路(図示せず)を介して、洗浄された間隔部分15aにテールシーラー材16を注入し直して(図3(d)、(e)参照)、引き続き掘進作業を行なうことが可能になる。
【0031】
これらによって、本実施形態のシールド掘進工法によれば、隣接するテールシール部材15の間の間隔部分15aに注入されたテールシーラー材16が、トンネルの掘進が進行することで劣化したり、変質して固くなったりした場合でも、シールド掘進機によるスムーズな掘進が阻害されないように改善しながら、施工することが可能になる。
【0032】
また、本実施形態では、テールシール部材15が、スキンプレート12の後端部分に間隔をおいて少なくとも3体取り付けられていることで、洗浄される間隔部分15aは、軸方向に少なくとも2箇所に形成されるようになっており、一方の間隔部分15aを洗浄している間、他方の間隔部分15aにテールシーラー材16が充填されている状態とすることができるので(図3(b)、(d)参照)、テールシール部材15とテールシーラー材16とによるシール機能を保持したまま、各々の間隔部分15aを洗浄することが可能になる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、隣接するテールシール部材の間の間隔部分を洗浄するための所定のセグメントリングは、シールドトンネルの直線部分を構成している非縮径セグメントリングの軸方向の後端部に連設される、シールドトンネルの曲線部分の先端部に配置された変曲点部分の縮径セグメントリングである必要は必ずしも無い。また、隣接するテールシール部材の間の間隔部分を洗浄するための所定のセグメントリングは、厚さが小さくなっていることで外径が縮径している縮径セグメントリングである必要は必ずしも無く、外径が縮径していない非縮径セグメントリングであって良い。さらに、スキンプレートの後端部分に間隔をおいて取り付けられるテールシール部は、3体である必要は必ずしも無く、4体以上であっても良い。さらにまた、洗浄される間隔部分は、2箇所に形成されている必要は必ずしも無く、3箇所以上に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0034】
11 シールド掘進機
12 スキンプレート
13a 非縮径セグメント
13b 縮径セグメント
14a 非縮径セグメントリング
14b 縮径セグメントリング
15 テールシール部材
15a 間隔部分
15b 基端部分
16,16’ テールシーラー材
17 洗浄水供給排出孔
18a 裏込め注入孔
18b 供給排出孔
20 テールクリアランス
21 裏込材
50 シールドトンネル
50a 急曲線部分
50b 直線部分
50c 変曲点部分
50d 段差部
X スキンプレートの軸方向(トンネル軸方向)
図1
図2
図3
図4