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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/06 20060101AFI20231206BHJP
   B21D 39/20 20060101ALI20231206BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20231206BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B21D39/06 B
B21D39/20 E
B21D53/88 E
B60R19/24 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020069868
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021164946
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】前田 康裕
(72)【発明者】
【氏名】橋村 徹
(72)【発明者】
【氏名】山川 大貴
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-147309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056783(WO,A1)
【文献】特開昭51-133170(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168841(WO,A1)
【文献】特開平04-089144(JP,A)
【文献】特開2018-111115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/06
B21D 39/20
B21D 53/88
B60R 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1穴部が設けられた第1部分、及び前記第1穴部に対向する第2穴部が設けられた第2部分を有する第1部材と、中空状の第2部材と、前記第1部材の前記第2部分に沿った形状を有する金型と、弾性部材とを準備し、
前記金型内に前記第1部材を配置し、
前記第1部材の前記第1穴部に前記第2部材を挿入し、
前記第2部材の内部に前記弾性部材を挿入し、
前記第2部材の軸方向の一端が前記第1部材の前記第1部分と前記第2部分との間に位置した状態で、前記前記弾性部材を軸方向に圧縮して内側から外側に向けて膨張させ、それによって前記第1部材の前記第1穴部に挿通された部分を拡大変形させて前記第1部分にかしめ接合する
ことを含み、
前記金型は、前記金型から前記弾性部材に前記第2穴部を通して圧縮力を付加するための支持面を備え、
前記支持面は、前記弾性部材の軸方向に垂直であり、
前記第2穴部の開口面積は前記第1穴部の開口面積よりも小さい、構造体の接合方法。
【請求項2】
前記金型は、
金型本体と、
前記金型本体から突出し、前記支持面を有する支持部材と
を備え、
前記支持部材は、前記金型内に前記第1部材を配置するときに、前記第2穴部に挿通される、請求項1に記載の構造体の接合方法。
【請求項3】
前記弾性部材と前記支持面との間に配置され、前記弾性部材と一体に形成された中子部材を準備し、
前記第2部材の内部に前記弾性部材を挿入する前に、中子部材を挿入する
ことを更に含み、
前記中子部材は、前記支持面側の端部に向かって徐々に細くなるように形成されている、請求項1又は2に記載の構造体の接合方法。
【請求項4】
前記第1部材は、バンパービームであり、
前記第2部材は、バンパーステイである、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バンパービームと、バンパーステイとをゴムを使用してかしめ接合する方法が開示されている。具体的には、バンパーステイの軸線方向に対して傾斜して延びた前方傾斜壁と押子との間にゴムが配置される。次に、プレス装置によって駆動された押子がバンパーステイの軸線方向に圧縮力を付加し、ゴムを軸線から外側に向けて弾性変形させる。これにより、バンパーステイを拡大変形させてバンパーステイをバンパービームにかしめ接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6573517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴムが圧縮される際、押子は、バンパーステイの軸線方向の圧縮力をゴムに対して作用させる。一方で、前方傾斜壁は、前方傾斜壁が延びる方向に対して直交する方向、つまり、軸線方向に対して斜め向きの圧縮力をゴムに対して作用させる。これにより、ゴムそれ自体の軸線方向に適切に圧縮されず、ゴムが意図せず変形する可能性がある。このゴムの意図しない変形により、バンパーステイに意図しない変形が生じる恐れがある。
【0005】
本発明は、構造体において意図しない変形を抑制できる構造体の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1穴部が設けられた第1部分、及び前記第1穴部に対向する第2穴部が設けられた第2部分を有する第1部材と、中空状の第2部材と、前記第1部材の前記第2部分に沿った形状を有する金型と、弾性部材とを準備し、前記金型内に前記第1部材を配置し、前記第1部材の前記第1穴部に前記第2部材を挿入し、前記第2部材の内部に前記弾性部材を挿入し、前記第2部材の軸方向の一端が前記第1部材の前記第1部分と前記第2部分との間に位置した状態で、前記前記弾性部材を軸方向に圧縮して内側から外側に向けて膨張させ、それによって前記第1部材の前記第1穴部に挿通された部分を拡大変形させて前記第1部分にかしめ接合することを含み、前記金型は、前記金型から前記弾性部材に前記第2穴部を通して圧縮力を付加するための支持面を備え、前記支持面は、前記弾性部材の軸方向に垂直である、構造体の接合方法を提供する。
【0007】
垂直とは、厳密な意味での垂直に限定されない。つまり、支持面は、第2部材の軸線方向に対して厳密に垂直になっている必要はない。垂直とは、厳密な垂直と、構造体の変形が許容される範囲内において厳密な垂直から若干ずれた形態とを含む。
【0008】
この接合方法によれば、金型に設けられた支持面が、弾性部材の軸方向に対して垂直であるので、弾性部材の圧縮時において、弾性部材は、軸方向に沿った向きの圧縮力を支持面から受ける。このため、第1部材の形状に関わらず、弾性部材に軸方向と異なる方向の力が作用することが抑制されるので、弾性部材が意図せず変形することが抑制される。その結果、第1部材と第2部材とが接合された構造体に意図しない変形が生じることを抑制できる。
【0009】
前記金型は、金型本体と、前記金型本体から突出し、前記支持面を有する支持部材とを備えてもよく、前記支持部材は、前記金型内に前記第1部材を配置するときに、前記第2穴部に挿通されてもよい。
【0010】
この接合方法によれば、金型に第1部材を配置するときに、第1部材の第2穴部に、金型の支持部材が挿入されることで、第1部材の金型に対する位置決めを容易にできる。
【0011】
前記弾性部材と前記支持面との間に配置され、前記弾性部材と一体に形成された中子部材を準備し、前記第2部材の内部に前記弾性部材を挿入する前に、中子部材を挿入することを更に含んでもよく、前記中子部材は、前記支持面側の端部に向かって徐々に細くなるように形成されている。
【0012】
この接合方法によれば、中子部材が支持面側の端部に向かって徐々に細くなるように形成されているので、中子部材及び弾性部材を第2部材の内部に挿入しやすい。
【0013】
前記第1部材は、バンパービームであり、前記第2部材は、バンパーステイであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造体の接合方法において、構造体の意図しない変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るバンパーリインフォースメントのかしめ接合前の断面図。
図2図1のII-II線に沿った断面図。
図3】第1実施形態に係るバンパーリインフォースメントのかしめ接合中の断面図。
図4】第1実施形態に係るバンパーリインフォースメントのかしめ接合後の断面図。
図5】第1実施形態の変形例に係るバンパーリインフォースメントのかしめ接合前の断面図。
図6】本発明の第2実施形態に係るバンパーリインフォースメントのかしめ接合前の断面図。
図7】第2実施形態に係るバンパーリインフォースメントのかしめ接合中の断面図。
図8】第2実施形態に係るバンパーリインフォースメントのかしめ接合後の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態は、バンパーリインフォースメント1の接合方法に関する。図1及び図2を参照して、本実施形態の接合方法に使用される各構成部品の構造について説明する。図1は、本実施形態のバンパーリインフォースメント1のかしめ接合前の断面図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
【0018】
本実施形態のバンパーリインフォースメント1は、車両の車体構造(図示せず)の前方に取り付けられ、衝撃から車両を保護するためのものである。本実施形態のバンパーリインフォースメント1は、本発明に係る構造体の一例である。
【0019】
図1及び図2を参照すると、本実施形態のバンパーリインフォースメント1は、バンパービーム10と、一対のバンパーステイ20とを備える。また、本実施形態のバンパービーム10は、本発明に係る第1部材の一例である。本実施形態のバンパーステイ20は、本発明に係る第2部材の一例である。
【0020】
図1を参照すると、バンパービーム10は、前壁11と、前方傾斜壁12と、後壁13と、後方傾斜壁14とを備える。
【0021】
図1を参照すると、前壁11は、バンパーリインフォースメント1が車両の車体構造の前方に取り付けられた状態(以下、取り付け状態という)で、水平方向に延びる板状である。前壁11は、取り付け状態において、前方側に配置される。
【0022】
前方傾斜壁12は、前壁11の長手方向の両端部から傾斜して延びた板状である。前方傾斜壁12は、取り付け状態において、前壁11の長手方向の両端部から、長手方向の外側に向かって後方に傾斜して延びている。また、2つの前方傾斜壁12には、円形の小径孔12aがそれぞれ設けられている。本実施形態の小径孔12aは、バンパーステイ20が挿通できないように形成されている。本実施形態の前方傾斜壁12は、本発明に係る第2部分の一例である。本実施形態の小径孔12aは、本発明に係る第2穴部の一例である。
【0023】
後壁13は、取り付け状態において、水平方向に延びる板状である。また、後壁13は、取り付け状態において前壁11から間隔を開けて後方側に配置される。
【0024】
後方傾斜壁14は、後壁13の長手方向の両端部から傾斜した板状である。後方傾斜壁14は、取り付け状態において、後壁13の長手方向の両端部から、長手方向の外側に向かって、後方に傾斜して延びている。また、2つの後方傾斜壁14には、円形の大径孔14aがそれぞれ設けられている。各大径孔14aは、バンパーステイ20の外形と相似形であり、バンパーステイ20が挿通できる程度にバンパーステイ20の外形よりもわずかに大きく形成されている。本実施形態の後方傾斜壁14は、本発明に係る第1部分の一例である。また、本実施形態の大径孔14aは、本発明に係る第1穴部の一例である。
【0025】
前方傾斜壁12の小径孔12aと、後方傾斜壁14の大径孔14aとは、対向して配置されている。また、前方傾斜壁12の小径孔12aと、後方傾斜壁14の大径孔14aとは、同軸状に配置されている。前方傾斜壁12の小径孔12aの径は、後方傾斜壁14の大径孔14aの径よりも小さい。
【0026】
図2を参照すると、バンパービーム10は、前方傾斜壁12の上端と後方傾斜壁14の上端とを接続した上壁15と、前方傾斜壁12の下端と後方傾斜壁14の下端とを接続した下壁16とを備える。また、上壁15は、図示しないが、前壁11(図1に示す)の上端と後壁13(図1に示す)の上端とを接続している。同様に、下壁16は、図示しないが、前壁11の下端と後壁13の下端とを接続している。上壁15及び下壁16は、取り付け状態において、水平方向に延びた板状である。
【0027】
図1及び図2を参照すると、バンパービーム10は、前壁11と、前方傾斜壁12と、後壁13と、後方傾斜壁14と、上壁15と、下壁16とによって画定された空間部17を有する中空状である。本実施形態のバンパービーム10は、高張力鋼からなる。
【0028】
図1及び図2を参照すると、本実施形形態のバンパーステイ20は、取り付け状態において、前後方向に延びる円筒状である。バンパーステイ20は、軸方向の一方側(図1において下側)の端部において、バンパービーム10に接合される。バンパーステイ20の軸方向の一方側の端部は、バンパービーム10の前方傾斜壁12の傾斜に対応して、バンパーステイ20の軸方向に対して傾斜している。また、バンパーステイ20の軸方向の一方側の端部は、バンパーステイ20がバンパービーム10に接合された状態(以下、接合状態という)において、前方傾斜壁12と後方傾斜壁14との間に位置している。言い換えれば、バンパーステイ20の軸方向の一方側の端部は、接合状態において、バンパービーム10の空間部17に位置している。つまり、本実施形態のバンパーステイ20は、バンパービーム10を貫通していない。本実施形態のバンパーステイ20は、アルミウム合金からなる押出材である。
【0029】
本実施形態では、バンパービーム10とバンパーステイ20とのかしめ接合に、金型30と、ゴム40と、中子50、押子60とを用いる。
【0030】
図1を参照すると、金型30は、金型本体31と、金型本体31に取り付けられたピン32を備える。本実施形態のピン32は、本発明に係る支持部材の一例である。
【0031】
金型本体31は、バンパービーム10が嵌合するように構成されている。具体的には、金型本体31は、図2に示すように、バンパービーム10の前壁11及び前方傾斜壁12の形状に沿うように設けられた下型31aと、バンパービーム10の上壁15及び下壁16に沿うように設けられた外枠31bとを備える。金型本体31の下型31aには、ピン32が嵌合可能に構成された嵌合穴31cが設けられている。
【0032】
本実施形態のピン32は、円柱状である。ピン32は、金型本体31の表面から突出するように設けられている。本実施形態のピン32の外形は、バンパービーム10の小径孔12aに挿入できる程度に、バンパービーム10の小径孔12aの外形よりも僅かに小さく形成されている。また、ピン32の軸方向の一方側(図1において上側)の端部は、ピン32の軸方向に対して垂直な支持面30aを有する。
【0033】
本実施形態のゴム40は、円柱状である。ゴム40の外形は、バンパーステイ20に挿入できる程度にバンパーステイ20の内形よりもわずかに小さく形成されている。ゴム40の軸方向の両端は、バンパービーム10の後方傾斜壁14の形状に対応して、ゴム40の軸方向に対して傾斜した平坦面を有する。ゴム40の材質は、例えば、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、CNRゴム(クロロプレンゴム+ニトリルゴム)、又はシリコンゴムのいずれかを用いることが好ましい。また、ゴム40の硬度はショアAで30以上であることが好ましい。本実施形態のゴム40は、本発明に係る弾性部材の一例である。
【0034】
本実施形態の中子50は、略円錐台形状である。中子50は、ゴム40と金型30との間に配置される。本実施形態の中子50の軸方向の一方側(図1において上側、つまりゴム40側)の端部は、ゴム40の端面の形状に対応して、軸方向に対して傾斜した平坦面を有する。中子50の軸方向の他方側(図1において下側、つまり金型30側)の端部は、ピン32の支持面30aの形状に対応して、中子50の軸方向に垂直な押圧面50aを有する。この中子50の押圧面50aの面積は、ピン32の支持面30aの面積よりも大きい。また、中子50は、軸方向の一方側(ゴム40側)から他方側(金型30側)に向かって徐々に細くなるように形成されている。本実施形態の中子50は、本発明に係る中子部材の一例である。
【0035】
本実施形態の押子60は、図示しないプレス装置に取り付けられており、このプレス装置によって駆動されて、ゴム40を圧縮する。押子60は、ゴム40の端面の形状に対応して、ゴム40の軸方向に対して傾斜した押圧面60aを有する。
【0036】
本実施形態では、ゴム40と、中子50、押子60とは、一体に形成されている。
【0037】
(バンパーリインフォースメント1の接合方法)
以下、図1から図4を参照して、本実施形態のバンパーリインフォースメント1の接合方法を説明する。図3は、本実施形態のバンパーリインフォースメント1のかしめ接合中の断面図である。図4は、本実施形態のバンパーリインフォースメント1のかしめ接合後の断面図である。
【0038】
まず、図1及び図2に示すように、前述のような構造を有するバンパービーム10、バンパーステイ20、金型30、ゴム40、中子50、及び押子60を準備する。このとき、金型30の金型本体31の嵌合穴31cにピン32を嵌合させて、ピン32を予め金型本体31に取り付けておく。次いで、金型30内にバンパービーム10を配置する。このとき、バンパービーム10の小径孔12aに、金型30のピン32が挿入されることで、バンパービーム10が金型30に対して位置決めされる。本実施形態では、バンパービーム10が金型30内に配置された状態で、金型30の支持面30aは、バンパービーム10の内部に位置している。
【0039】
その後、バンパービーム10の大径孔14aに、バンパーステイ20を挿入する。このとき、バンパーステイ20は、バンパーステイ20の軸方向の一方側(図1において下側)の端部が前方傾斜壁12と後方傾斜壁14との間に位置するまで、バンパービーム10に挿入される。つまり、バンパーステイ20は、バンパーステイ20の軸方向の一方側の端部が、バンパービーム10の前方傾斜壁12と当接しないように配置される。そして、中子50、ゴム40、及び押子60をバンパーステイ20内に挿入する。このとき、ピン32の支持面30aは、バンパーステイ20の軸方向及びゴム40の軸方向に対して垂直である。
【0040】
中子50、ゴム40、及び押子60のバンパーステイ20内への挿入後、図3に示すように、中子50と押子60とによって、ゴム40を軸方向に圧縮する。ゴム40が軸方向(圧縮方向)に圧縮されると、ゴム40が圧縮方向に対して直交する方向に膨張し、それによりバンパーステイ20が拡大変形する。バンパーステイ20は、この拡大変形により、バンパービーム10の後方傾斜壁14とかしめ接合される。
【0041】
かしめ接合中において、押子60には、図示しないプレス装置から、ゴム40の軸方向のプレス荷重Pが付加される。一方で、中子50には、ピン32の支持面30aから、プレス荷重Pに対応する反力Rが作用する。ピン32の支持面30aがゴム40の軸方向に対して垂直であるため、この反力Rには、主にゴム40の軸方向成分の力が含まれる。プレス荷重Pが押子60を介してゴム40に作用するとともに、支持面30aからの反力Rが中子50を介してゴム40に作用することで、ゴム40には、ゴム40の軸方向の圧縮力が作用する。
【0042】
かしめ接合後、図4に示すように、押子60及び中子50によるゴム40の圧縮を解除する。圧縮が解除されたゴム40は、自身の弾性力により元の形状に復元する。そのため、容易にバンパーステイ20からゴム40を取り除くことができる。
【0043】
本実施形態のバンパーリインフォースメント1の接合方法では、以下の作用効果を奏する。
【0044】
(1) 本実施形態では、ゴム40の圧縮時において、小径孔12aを通して金型30からゴム40に圧縮力が作用する。具体的には、小径孔12aに挿通されたピン32の支持面30aが、ゴム40に対してプレス荷重Pに対応する反力Rを作用させることで、ゴム40には圧縮力が作用する。また、ピン32の支持面30aがゴム40の軸方向に垂直であるため、ゴム40には、軸方向の圧縮力が作用する。これにより、ゴム40に作用する圧縮力がゴム40の軸方向成分以外の方向成分を含むことが抑制されるので、ゴム40の意図しない変形が抑制される。その結果、バンパーリインフォースメント1の意図しない変形を抑制できるので、バンパービーム10とバンパーステイ20とを高精度に嵌合でき、接合強度を向上できる。
【0045】
(2) 仮に、バンパービーム10が、プレス荷重Pに対応する反力をゴム40に作用させる場合、バンパービーム10の形状によって、ゴム40の作用する圧縮力の向きが変化する。例えば、本実施形態のようにゴム40の軸方向に対して傾斜して延びた前方傾斜壁12がプレス荷重Pに対応する反力をゴム40に作用させる場合、その反力は、ゴム40の軸方向に対して傾斜した方向を向く。そのため、ゴム40に意図しない変形が生じて、バンパーリインフォースメント1に意図しない変形が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態では、金型30に設けられた支持面30aがプレス荷重Pに対応する反力をゴム40に作用させるため、バンパービーム10の形状に関わらず、ゴム40に軸方向の圧縮力を作用でき、バンパーリインフォースメント1の意図しない変形を抑制できる。
【0046】
(3) 本実施形態では、ゴム40の等方変形性のため、バンパーステイ20を均等に拡大変形できる。そのため、バンパーステイ20に対する局所的な付加を軽減でき、バンパーステイ20の局所的な変形を防止できる。したがって、その他の接合方法に比べて、バンパービーム10とバンパーステイ20とを高精度に嵌合でき、接合強度を向上できる。
【0047】
(4) 本実施形態では、金型30内にバンパービーム10を配置するときに、バンパービーム10の小径孔12aに、金型30のピン32が挿入されることで、バンパービーム10の金型30に対する位置決めを容易にできる。
【0048】
(5) 本実施形態では、中子50、ゴム40、及び押子60が一体に形成されており、中子50が軸方向の一方側から他方側に向かって徐々に細くなるように形成されているので、中子50、ゴム40、及び押子60をバンパーステイ20に挿入しやすい。
【0049】
(6) 本実施形態では、前方傾斜壁12に設けられた小径孔12aが、後方傾斜壁14に設けられた大径孔14aよりも小さいので、前方傾斜壁12に大径孔14aと同様な大きさの孔を設ける場合と比較して、前方傾斜壁12の強度を確保できる。
【0050】
図5は、第1実施形態の変形例に係る図1と同様の断面図である。図5に示すように、ピン32は、金型本体31と一体に設けられてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態は、金型130にピン32(図1に示す)が設けられていない点を除いて、第1実施形態と同様である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付して示し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図6は、本実施形態に係るバンパーリインフォースメント1の接合前の断面図である。
【0053】
図6を参照すると、金型130の金型本体131は、バンパービーム10の小径孔12aを通して金型130からゴム40に対して圧縮力を付加するための支持面130aを有する。支持面130aは、バンパービーム10の前方傾斜壁12に対向する金型本体131の表面から凹んで設けられている。
【0054】
本実施形態の中子150の軸方向の一方側(図6において上側、つまりゴム40側)の端部は、ゴム40の端面の形状に対応して、軸方向に対して傾斜した平坦面を有する。中子150の軸方向の他方側(図6において下側、つまり金型30側)には、軸方向に延びた円柱状の柱状部151が設けられている。柱状部151の軸方向の他方側の端部は、金型130の支持面130aの形状に対応して、中子150の軸方向に垂直な押圧面150aを有する。柱状部151の外形は、前方傾斜壁12の小径孔12aに挿通できる程度に、小径孔12aの内形よりも僅かに小さく形成されている。
【0055】
(バンパーリインフォースメント1の接合方法)
以下、図6から図8を参照して、本実施形態のバンパーリインフォースメント1の接合方法を説明する。図7は、本実施形態のバンパーリインフォースメント1のかしめ接合中の断面図である。図8は、本実施形態のバンパーリインフォースメント1のかしめ接合後の断面図である。
【0056】
まず、図6に示すように、前述のような構造を有するバンパービーム10、バンパーステイ20、金型130、ゴム40、中子150、及び押子60を準備する。次いで、金型130内にバンパービーム10を配置する。このとき、バンパービーム10の小径孔12aと、金型本体131に設けられた支持面130aとは同軸状に配置されている。また、本実施形態では、支持面130aは、バンパービーム10の外部に位置している。
【0057】
その後、バンパービーム10の大径孔14aに、バンパーステイ20を挿入する。このとき、バンパーステイ20は、バンパーステイ20の軸方向の一方側の端部が前方傾斜壁12と後方傾斜壁14との間に位置するまで、バンパービーム10に挿入される。つまり、バンパーステイ20の軸方向の一方側の端部は、バンパービーム10の前方傾斜壁12と当接していない。そして、中子150、ゴム40、及び押子60をバンパーステイ20内に挿入する。このとき、金型本体131の支持面130aは、バンパーステイ20の軸方向及びゴム40の軸方向に対して垂直に延びている。
【0058】
中子150、ゴム40、及び押子60のバンパーステイ20内への挿入後、図8に示すように、中子150と押子60とによって、ゴム40を軸方向に圧縮する。ゴム40が軸方向(圧縮方向)に圧縮されると、ゴム40が圧縮方向に対して直交する方向に膨張し、それによりバンパーステイ20が拡大変形する。バンパーステイ20は、この拡大変形により、バンパービーム10の後方傾斜壁14とかしめ接合される。
【0059】
かしめ接合中において、押子60には、図示しないプレス装置から、バンパーステイ20の軸方向のプレス荷重Pが付加される。一方で、中子150は、金型本体131の支持面130aに支持されている。これにより、中子150には、金型本体131の支持面130aから、プレス荷重Pに対応する反力Rが作用する。金型本体131の支持面130aがゴム40の軸方向に対して垂直であるため、この反力Rには、主にゴム40の軸方向成分の力が含まれる。プレス荷重Pが押子60を介してゴム40に作用するとともに、支持面130aからの反力Rが中子150を介してゴム40に作用することで、ゴム40には、軸方向の圧縮力が作用する。
【0060】
かしめ接合後、図9に示すように、押子60及び中子150によるゴム40の圧縮を解除する。圧縮が解除されたゴム40は、自身の弾性力により元の形状に復元する。そのため、容易にバンパーステイ20からゴム40を取り除くことができる。
【0061】
第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0062】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0063】
第1実施形態及び第2実施形態では、ゴム、中子、及び押子は一体に設けられていたが、これに限定されず、それぞれ別個に設けられてもよい。
【0064】
第1実施形態及び第2実施形態では、本発明に係る構造体の接合方法の一例として、バンパーリインフォースメントの接合方法を説明したが、これに限定されず、本発明は他の構造体の接合に適用され得る。
【符号の説明】
【0065】
1 バンパーリインフォースメント
10 バンパービーム(第1部材)
11 前壁
12 前方傾斜壁(第2部分)
12a 小径孔(第2穴部)
13 後壁
14 後方傾斜壁(第1部分)
14a 大径孔(第1穴部)
15 上壁
16 下壁
17 空間部
20 バンパーステイ(第2部材)
30 金型
30a 支持面
31 金型本体
31a 下型
31b 外枠
31c 嵌合穴
32 ピン(支持部材)
40 ゴム(弾性部材)
50 中子(中子部材)
50a 押圧面
60 押子
130 金型
130a 支持面
131 金型本体
150 中子(中子部材)
151 柱状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8