IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エー・アンド・デイの特許一覧

<>
  • 特許-自動血圧測定装置 図1
  • 特許-自動血圧測定装置 図2
  • 特許-自動血圧測定装置 図3
  • 特許-自動血圧測定装置 図4
  • 特許-自動血圧測定装置 図5
  • 特許-自動血圧測定装置 図6
  • 特許-自動血圧測定装置 図7
  • 特許-自動血圧測定装置 図8
  • 特許-自動血圧測定装置 図9
  • 特許-自動血圧測定装置 図10
  • 特許-自動血圧測定装置 図11
  • 特許-自動血圧測定装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】自動血圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A61B5/022 400A
A61B5/022 100A
A61B5/022 300A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020085543
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178069
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003100
【氏名又は名称】弁理士法人池田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸留 昇平
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 直嵩
(72)【発明者】
【氏名】古越 雅貴
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-183814(JP,A)
【文献】特開2012-071059(JP,A)
【文献】特開昭59-108535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の被圧迫部位に巻き付けられ、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した上流側膨張袋、中間膨張袋、および下流側膨張袋を少なくとも有する圧迫帯を、備える自動血圧測定装置であって、
前記圧迫帯による前記被圧迫部位に対する圧迫圧力値を変化させる過程で、前記上流側膨張袋、前記中間膨張袋、および前記下流側膨張袋内の圧力値に含まれる上流側圧力振動波、中間圧力振動波、および下流側圧力振動波をそれぞれ抽出する圧力振動波抽出部と、
前記上流側圧力振動波および前記中間圧力振動波の間の上中時間差情報と前記上流側圧力振動波および前記下流側圧力振動波の間の上下時間差情報との時間差情報比を算出する時間差情報比算出部と、
前記圧迫圧力値が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、前記時間差情報比の変化に基づいて、前記生体の最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部とを、含む
ことを特徴とする自動血圧測定装置。
【請求項2】
前記時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記中間圧力振動波の時間差測定基準点との間の上中時間差を前記上中時間差情報として算出し、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点との間の上下時間差を前記上下時間差情報として算出する
ことを特徴とする請求項1の自動血圧測定装置。
【請求項3】
前記時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記上流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記中間圧力振動波の時間差測定基準点として前記中間圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記下流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出する
ことを特徴とする請求項2の自動血圧測定装置。
【請求項4】
前記時間差情報比算出部は、前記上下時間差と前記上中時間差の比の値を、前記時間差情報比として算出し、
前記血圧値決定部は、前記時間差情報比が予め設定された安定区間判定範囲内となったときの前記圧迫圧力値に基づいて、前記生体の最高血圧値を決定する
ことを特徴とする請求項2または3の自動血圧測定装置。
【請求項5】
前記血圧値決定部は、前記時間差情報比が前記予め設定された安定区間判定範囲を超えたときの前記圧迫圧力値に基づいて、前記生体の最低血圧値を決定する
ことを特徴とする請求項4の自動血圧測定装置。
【請求項6】
前記時間差情報比算出部は、
前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記中間圧力振動波の時間差測定基準点との上中圧力振動波伝播時間と前記上中圧力振動波伝播時間当たりの前記上流側膨張袋から前記中間膨張袋までの圧力振動波伝播距離とから求めた上中圧力振動波伝播速度を、前記上中時間差情報として算出し、
前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点との上下圧力振動波伝播時間と前記上下圧力振動波伝播時間当たりの前記上流側膨張袋から前記下流側膨張袋までの圧力振動波伝播距離とから求めた上下圧力振動波伝播速度を、前記上下時間差情報として算出する
ことを特徴とする請求項1の自動血圧測定装置。
【請求項7】
前記時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記上流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記中間圧力振動波の時間差測定基準点として前記中間圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記下流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出する
ことを特徴とする請求項6の自動血圧測定装置。
【請求項8】
前記時間差情報比算出部は、前記上中圧力振動波伝播速度と前記上下圧力振動波伝播速度との間の圧力振動波伝播速度比を、前記時間差情報比として算出し、
前記血圧値決定部は、前記圧力振動波伝播速度比の値が予め設定された安定区間判定範囲内となったときの前記圧迫圧力値を、前記生体の最高血圧値を決定する
ことを特徴とする請求項6または7の自動血圧測定装置。
【請求項9】
前記血圧値決定部は、前記圧力振動波伝播速度比の値が前記予め設定された安定区間判定範囲を超えたときの前記圧迫圧力値に基づいて、前記生体の最低血圧値を決定する
ことを特徴とする請求項8の自動血圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕、足首のような生体の肢体である被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備えた自動血圧測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、その圧迫帯の圧迫圧力を変化させる過程でその圧迫帯内の圧力振動波である脈波を逐次抽出し、その脈波の変化に基づいて生体の血圧値を決定する自動血圧測定装置において、幅方向に連ねられて生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を有する複数の膨張袋を有する圧迫帯を用いるものが知られている。例えば、特許文献1に記載されたものがそれである。特許文献1では、上記幅方向に連ねられた独立した気室である複数の膨張袋は、上流側膨張袋、中間膨張袋、及び下流側膨張袋と称されている。
【0003】
特許文献1の実施例1に記載された自動血圧測定装置では、圧迫帯による圧迫圧力が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、下流側膨張袋からの脈波の振幅と下流側膨張袋よりも上流側に位置する膨張袋からの脈波との振幅比に基づいて、最高血圧値を決定する最高血圧値決定アルゴリズムが用いられている。また、圧迫帯による圧迫圧力が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、下流側膨張袋から得られる脈波とその下流側膨張袋よりも上流側に位置する膨張袋から得られる脈波との間の、位相差関連情報(時間差、脈波伝播速度)の変化に基づいて最低血圧値を決定する最低血圧値決定アルゴリズムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-071059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧迫帯による圧迫圧力が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、下流側膨張袋から得られる脈波とその下流側膨張袋よりも上流側に位置する膨張袋から得られる脈波との間の振幅比、およびそれら脈波間の位相差関連情報(時間差、脈波伝播速度)は、圧迫圧力の下降に伴う最高血圧値付近或いは最低血圧値付近において、それぞれ安定的に認識できる明確な変化現象とは言い難いものであった。このため、上記特許文献1に記載された自動血圧測定装置では、上記一対の脈波間の位相差関連情報に基づいて最高血圧値或いは最低血圧値を正確に決定することができない場合があった。
【0006】
本発明の目的とするところは、上流側膨張袋、中間膨張袋、及び下流側膨張袋からそれぞれ得られる圧力振動波間の位相差に関連する変数すなわち位相差関連情報を用いて、生体の最高血圧値を正確に決定できる自動血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、以上の事情を背景として、幅方向に連ねられて独立して生体をそれぞれ圧迫できる上流側膨張袋、中間膨張袋、及び下流側膨張袋を有する3連カフを用いて、各膨張袋から独立に得られる圧力振動波を比較検討するうち、圧迫帯による圧迫圧力が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、上流側膨張袋及び中間膨張袋からそれぞれ得られる圧力振動波の位相差Δtiは、最高血圧値付近においてそれほど変化しない一方で、上流側膨張袋及び下流側膨張袋からそれぞれ得られる圧力振動波の位相差Δtdは、最高血圧値付近において増加するという現象を発見した。そして、位相差Δtdと位相差Δtiの比の値である時間差比RΔt(=Δtd/Δti)の変化を観察すると、圧迫帯による圧迫圧力が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、時間差比RΔtが略一定の値を示す安定区間RSが存在し、最高血圧値SP付近において安定区間RSが開始し、最低血圧値DP付近において安定区間RSが終了するという事実を見出した。本発明はかかる知見に基づいて為されたものである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a)生体の被圧迫部位に巻き付けられ、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した上流側膨張袋、中間膨張袋、および下流側膨張袋を少なくとも有する圧迫帯を、備える自動血圧測定装置であって、(b)前記圧迫帯による前記被圧迫部位に対する圧迫圧力値を変化させる過程で、前記上流側膨張袋、前記中間膨張袋、および前記下流側膨張袋内の圧力値に含まれる上流側圧力振動波、中間圧力振動波、および下流側圧力振動波をそれぞれ抽出する圧力振動波抽出部と、(c)前記上流側圧力振動波および前記中間圧力振動波の間の上中時間差情報と前記上流側圧力振動波および前記下流側圧力振動波の間の上下時間差情報との時間差情報比を算出する時間差情報比算出部と、(d)前記圧迫圧力値が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、前記時間差情報比の変化に基づいて、前記生体の最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を含むことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動血圧測定装置によれば、時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波および前記中間圧力振動波の間の上中時間差情報と前記上流側圧力振動波および前記下流側圧力振動波の間の上下時間差情報との時間差情報比を算出し、前記血圧値決定部は、前記圧迫圧力値が最高血圧値よりも高い値から下降させられる過程で、前記時間差情報比の変化に基づいて、前記生体の最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方を決定する。上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波間の上下時間差情報と上流側圧力振動波及び中間圧力振動波間の上中時間差情報との間の時間差情報比は、圧迫圧力値の変化に伴う最高血圧値および最低血圧値付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方を正確に決定することができる。
【0010】
ここで、好適には、前記時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記中間圧力振動波の時間差測定基準点との間の上中時間差を前記上中時間差情報として算出し、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点との間の上下時間差を前記上下時間差情報として算出する。上流側圧力振動波及び中間圧力振動波間の上中時間差と上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波間の上下時間差との比の値は、圧迫圧力値の変化過程において最高血圧値および最低血圧値付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方を正確に決定することができる。
【0011】
また、好適には、前記時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記上流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記中間圧力振動波の時間差測定基準点として前記中間圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記下流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出する。このため、上流側圧力振動波、中間圧力振動波、及び下流側圧力振動波の最大傾斜点すなわち変曲点が、時間差測定基準点として用いられるので、ノイズの存在下においても、最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方の決定精度が高められる。
【0012】
また、好適には、前記時間差情報比算出部は、前記上下時間差と前記上中時間差の比の値(=上下時間差/上中時間差)を、前記時間差情報比として算出し、前記血圧値決定部は、前記時間差情報比が予め設定された安定区間判定範囲内となったときの前記圧迫圧力値に基づいて、前記生体の最高血圧値を決定する。上流側圧力振動波及び下流側脈圧力振動波間の上下時間差と上流側圧力振動波及び中間脈圧力振動波間の上中時間差との間の時間差比は、圧迫圧力値の変化に伴う最高血圧値付近において明確に安定区間判定範囲内であるときに認識できるので、最高血圧値を正確に決定することができる。
【0013】
また、好適には、前記血圧値決定部は、前記時間差情報比が前記予め設定された安定区間判定範囲を超えたときの前記圧迫圧力値に基づいて、前記生体の最低血圧値を決定する。これにより、最低血圧値を正確に決定することができる。
【0014】
また、好適には、前記時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記中間圧力振動波の時間差測定基準点との上中圧力振動波伝播時間(=上中時間差)と前記上中圧力振動波伝播時間当たりの前記上流側膨張袋から中間膨張袋までの圧力振動波伝播距離とから求めた上中圧力振動波伝播速度を、前記上中時間差情報として算出し、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点と前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点との上下圧力振動波伝播時間(=上下時間差)と前記上下圧力振動波伝播時間当たりの前記上流側膨張袋から下流側膨張袋までの圧力振動波伝播距離とから求めた上下圧力振動波伝播速度を、前記上下時間差情報として算出する。上流側圧力振動波及び中間圧力振動波間の上中圧力振動波伝播速度と上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波間の上下圧力振動波伝播速度との間の圧力振動波伝播速度比は、圧迫圧力値の変化過程において最高血圧値および最低血圧値付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方を正確に決定することができる。
【0015】
また、好適には、前記時間差情報比算出部は、前記上流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記上流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記中間圧力振動波の時間差測定基準点として前記中間圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出し、前記下流側圧力振動波の時間差測定基準点として前記下流側圧力振動波の一次微分波形の頂点を算出する。このため、上流側圧力振動波、中間圧力振動波、および、下流側圧力振動波の最大傾斜点すなわち変曲点が、時間差測定基準点として用いられるので、ノイズの存在下においても、最高血圧値および最低血圧値の少なくとも一方の決定精度が高められる。
【0016】
また、好適には、前記時間差情報比算出部は、前記上中圧力振動波伝播速度と前記上下圧力振動波伝播速度との間の圧力振動波伝播速度比(=上中圧力振動波伝播速度/上下圧力振動波伝播速度)を、前記時間差情報比として算出し、前記血圧値決定部は、前記圧力振動波伝播速度比の値が予め設定された安定区間判定範囲以内となったときの前記圧迫圧力値に基づいて、前記生体の最高血圧値を決定する。上流側圧力振動波及び中間圧力振動波間の上中圧力振動波伝播速度と上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波間の上下圧力振動波伝播速度との間の伝播速度比は、圧迫圧力値の変化過程において最高血圧値付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値を正確に決定することができる。
【0017】
また、好適には、前記血圧値決定部は、前記圧力振動波伝播速度比の値が前記予め設定された安定区間判定範囲を超えたときの前記圧迫圧力値に基づいて、前記生体の最低血圧値を決定する。これにより、最低血圧値を正確に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例である自動血圧測定装置の構成を説明するブロック図である。
図2図1の圧迫帯を外周面の一部を切り欠いて示す図である。
図3図2の圧迫帯内に備えられた上流側膨張袋、中間膨張袋、及び下流側膨張袋を示す平面図である。
図4図3のIV-IV視断面図であって、上流側膨張袋、中間膨張袋、及び下流側膨張袋を幅方向に切断して示した図である。
図5図1の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
図6図5のカフ圧制御部による圧迫圧制御作動の要部を説明するタイムチャートである。
図7図5のカフ圧制御部により圧迫圧力値がそれぞれ徐速降圧させられる過程の所定の圧迫圧力値において、図5の圧力振動波抽出部により、上流側膨張袋、中間膨張袋、及び下流側膨張袋からそれぞれ抽出された圧力振動波の波形を例示する図である。
図8図5の時間差情報比算出部による圧力振動波間の時間差の算出方法を、図7の圧力振動波の一次微分波形を用いて説明する図である。
図9図5の時間差情報比算出部において算出された、上流側圧力振動波及び中間圧力振動波の間の上中時間差及び時間差と上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波の間の上下時間差との、圧迫圧力値に対する変化を示すグラフである。
図10図5の時間差情報比算出部において算出された、上中時間差と上下時間差の比の値の、圧迫圧力値に対する変化を示すグラフである。
図11図5の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートを示す図である。
図12】本発明の他の実施例のフローチャートを示す図であって、図11に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0020】
図1は、被圧迫部位である生体14の肢体例えば上腕16に巻き付けられた上腕用の圧迫帯12を備えた本発明の一例の自動血圧測定装置10を示している。この自動血圧測定装置10は、上腕16内の動脈18を止血するのに十分な値まで昇圧させた圧迫帯12の圧迫圧力を降圧させる過程において、動脈18の容積変化に応答して発生する圧迫帯12内の圧迫圧力の圧力振動波を逐次抽出し、その圧力振動波から得られる情報に基づいて生体14の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPを測定するものである。
【0021】
図2は圧迫帯12を外周側面不織布20aの一部を切り欠いて示す図である。図2に示すように、圧迫帯12は、PVC等の合成樹脂により裏面が相互にラミネートされた合成樹脂繊維製の外周側面不織布20a及び内周側不織布20bから成る帯状外袋20と、その帯状外袋20内において幅方向に順次収容され、例えば軟質ポリ塩化ビニールシートなどの可撓性シートから構成されて独立して上腕16を圧迫可能な上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26と、を備える。この圧迫帯12は、外周側面不織布20aの端部に取り付けられた面ファスナ28aに内周側不織布20bの端部に取り付けられた起毛パイル28bが着脱可能に接着されることによって、上腕16に着脱可能に装着されるようになっている。
【0022】
上流側膨張袋22、中間膨張袋24及び下流側膨張袋26は、長手状の圧迫帯12の幅方向に連ねられて上腕16を各々圧迫する独立した気室をそれぞれ有するとともに、管接続用コネクタ32、34及び36を外周面側に備えている。それら管接続用コネクタ32、34及び36は、外周側面不織布20aを通して圧迫帯12の外周面に露出されている。
【0023】
図3は圧迫帯12内に備えられた上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び、下流側膨張袋26を示す平面図であり、図4図3のIV-IV視断面図である。上流側膨張袋22、中間膨張袋24及び下流側膨張袋26は、それらにより圧迫された動脈18の容積変化に応答して発生する圧力振動波を検出するためのものであり、それぞれ長手状を成している。上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26は、中間膨張袋24の両側に隣接した状態で配置されている。また、中間膨張袋24は、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の間に挟まれた状態で圧迫帯12の幅方向の中央部に配置されている。なお、圧迫帯12が上腕16に巻き付けられた状態においては、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26は上腕16の長手方向に所定間隔を隔てて位置させられ、また、中間膨張袋24は上腕16の長手方向において連なるように上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の間に配置させられる。
【0024】
中間膨張袋24は所謂マチ構造の側縁部を両側に備えている。すなわち、中間膨張袋24の上腕16の長手方向すなわち圧迫帯12の幅方向における両端部には、互いに接近するほど深くなるように互いに接近する方向に折れ込まれた可撓性シートから成る一対の折込溝24f、24gがそれぞれ形成されている。そして、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の中間膨張袋24に隣接する側の端部22a及び26aが一対の折込溝24f、24g内にそれぞれ差し入れられて配置されるようになっている。これにより、中間膨張袋24の端部24aと上流側膨張袋22の端部22aとが相互に重ねられ、且つ、中間膨張袋24の端部24bと下流側膨張袋26の端部26aとが相互に重ねられた構造すなわちオーバラップ構造となるので、上流側膨張袋22、中間膨張袋24及び下流側膨張袋26が等圧で上腕16を圧迫したときにそれらの境界付近においても均等な圧力分布が得られる。
【0025】
上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26も、マチ構造の側縁部を中間膨張袋24とは反対側の端部22b及び26bに備えている。すなわち、上流側膨張袋22の中間膨張袋24とは反対側の端部22bには、互いに接近するほど深くなるように互いに接近する方向に折れ込まれた可撓性シートから成る折込溝22fが形成されている。また、下流側膨張袋26の中間膨張袋24とは反対側の端部26bには、互いに接近するほど深くなるように互いに接近する方向に折れ込まれた可撓性シートから成る折込溝26gが形成されている。圧迫帯12の幅方向に飛び出ないように、折込溝22fを構成するシートは、上流側膨張袋22内に配置された貫通穴を備える接続シート38を介してその反対側部分すなわち中間膨張袋24側の部分に接続されている。同様に、折込溝26gを構成するシートは、下流側膨張袋26内に配置された貫通穴を備える接続シート40を介してその反対側部分すなわち中間膨張袋24側の部分に接続されている。
【0026】
これにより、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の端部22b及び26bにおいても上腕16の動脈18に対する圧迫圧力が他の部分と同様に得られるので、圧迫帯12の幅方向の有効圧迫幅がその幅寸法と同等になる。圧迫帯12の幅方向は12cm程度であり、その幅方向に3つの上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26が配置された構造であるから、それぞれが実質的に4cm程度の幅寸法とならざるを得ない。このような狭い幅寸法であっても圧迫機能を十分に発生させるために、中間膨張袋24の両端部24a及び24bと上流側膨張袋22の端部22a及び下流側膨張袋26の端部26aとが相互に重ねられたオーバラップ構造とされるとともに、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の中間膨張袋24とは反対側の端部22b及び26bが所謂マチ構造の側縁部とされている。
【0027】
上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の中間膨張袋24側の端部22a及び26aと、それが差し入れられている一対の折込溝24f、24gの内壁面すなわち相対向する溝側面との間には、圧迫帯12の長手方向の曲げ剛性よりもその圧迫帯12の幅方向の曲げ剛性が高い剛性の異方性を有する長手状の遮蔽部材42n、42mがそれぞれ介在させられている。遮蔽部材42nは、上流側膨張袋22と中間膨張袋24との重なり寸法と同様の長さ寸法を備えている。同様に、遮蔽部材42mは、下流側膨張袋26と中間膨張袋24との重なり寸法と同様の長さ寸法を備えている。
【0028】
図3及び図4に示すように、上流側膨張袋22の端部22aとそれが差し入れられている折込溝24fとの間の隙間のうちの外周側の隙間、及び、下流側膨張袋26の端部26aとそれが差し入れられている折込溝24gとの間の隙間のうちの外周側の隙間には、長手状の遮蔽部材42n、42mがそれぞれ介在させられている。本実施例では、内周側の隙間に比較して外周側の隙間の方が遮蔽効果が大きいので長手状の遮蔽部材42n、42mは外周側の隙間に設けられているが、外周側の隙間と内周側の隙間との両方に設けられていてもよい。
【0029】
遮蔽部材42n、42mは、上腕16の長手方向(すなわち圧迫帯12の幅方向)に平行な樹脂製の複数本の可撓性中空管44が互いに平行な状態で、上腕16の周方向(すなわち圧迫帯12の長手方向)に連ねて配列されるとともに、それら可撓性中空管44が型成形或いは接着により直接に或いは粘着テープなどの可撓性シート等の他の部材を介して間接的に相互に連結されることにより構成されている。遮蔽部材42nは、上流側膨張袋22の中間膨張袋24側の端部22aの外周側の複数箇所に設けられた複数の掛止シート46に掛け止められている。同様に、遮蔽部材42mは、下流側膨張袋26の中間膨張袋24側の端部26aの外周側の複数箇所に設けられた複数の掛止シート46に掛け止められている。
【0030】
図1に戻って、自動血圧測定装置10においては、空気ポンプ50、急速排気弁52、及び、排気制御弁54が主配管56にそれぞれ接続されている。その主配管56からは、上流側膨張袋22に接続された第1分岐管58、中間膨張袋24に接続された第2分岐管62、及び、下流側膨張袋26に接続された第3分岐管64がそれぞれ分岐させられている。第1分岐管58は、空気ポンプ50と上流側膨張袋22との間を直接開閉するための第1開閉弁E1を備えている。第2分岐管62は、空気ポンプ50と中間膨張袋24との間を直接開閉するための第2開閉弁E2を備えている。第3分岐管64は、空気ポンプ50と下流側膨張袋26との間を直接開閉するための第3開閉弁E3を備えている。
【0031】
第1分岐管58には、上流側膨張袋22内の圧力値を検出するための第1圧力センサT1が接続され、第2分岐管62には、中間膨張袋24内の圧力値を検出するための第2圧力センサT2が接続され、第3分岐管64には、下流側膨張袋26内の圧力値を検出するための第3圧力センサT3が接続され、主配管56には、圧迫帯12の圧迫圧力値PCを検出するための第4圧力センサT4が接続されている。電子制御装置70には、第1圧力センサT1から上流側膨張袋22内の圧力値すなわち上流側膨張袋22の圧迫圧力値PC1を示す出力信号が供給され、第2圧力センサT2から中間膨張袋24内の圧力値すなわち中間膨張袋24の圧迫圧力値PC2を示す出力信号が供給され、第3圧力センサT3から下流側膨張袋26内の圧力値すなわち下流側膨張袋26の圧迫圧力値PC3を示す出力信号が供給され、第4圧力センサT4から圧迫帯12の圧迫圧力値PCを示す出力信号が供給される。
【0032】
電子制御装置70は、CPU72、RAM74、ROM76、表示器78、及び図示しないI/Oポートなどを含む所謂マイクロコンピュータである。この電子制御装置70は、CPU72がRAM74の記憶機能を利用しつつ予めROM76に記憶されたプログラムにしたがって入力信号を処理し、血圧測定開始操作釦80の操作に応答して、電動式の空気ポンプ50、急速排気弁52、排気制御弁54、第1開閉弁E1、第2開閉弁E2、及び第3開閉弁E3をそれぞれ制御することにより、自動血圧測定制御を実行し、測定結果を表示器78に表示させる。
【0033】
図5は、電子制御装置70に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図5において、電子制御装置70は、カフ圧制御部82、圧力振動波抽出部84、時間差情報比算出部86、最高血圧値決定部88、最低血圧値決定部90等を、機能的に備えている。図6は、カフ圧制御部82による圧迫帯12の圧迫圧制御作動の要部を説明するタイムチャートである。図7は、圧力振動波抽出部84により、上流側膨張袋22、中間膨張袋24及び下流側膨張袋26からそれぞれ抽出された圧力振動波の波形を例示する図であり、図8は、図7の圧力振動波の一次微分波形を示す図である。
【0034】
カフ圧制御部82は、図5に示す血圧測定開始操作釦80の操作に応答して、急速排気弁52及び排気制御弁54を閉じ、第1開閉弁E1、第2開閉弁E2、及び第3開閉弁E3を開き、空気ポンプ50を作動させることにより、生体14の最高血圧値よりも充分に高い圧、例えば180mmHgに予め設定された昇圧目標圧力値PCMとなるまで圧迫帯12の生体14に対する圧迫圧力値PCを急速昇圧させる。
【0035】
次いで、カフ圧制御部82は、排気制御弁54を所定の周期で所定期間繰り返し開くことで、圧迫帯12の圧迫圧力値PCが生体14の最低血圧値よりも充分に低い圧、例えば30mmHgに予め設定された測定終了圧力値PCEに到達するまでの間で複数のステップ圧P1、P2、P3、・・・Pxが順次形成されるように、予め設定された降圧速度で圧迫帯12の圧迫圧力値PCをステップ状に徐速降圧させる。
【0036】
カフ圧制御部82は、圧迫帯12の圧迫圧力値PCが測定終了圧力値PCEよりも小さくなったときに、急速排気弁52を用いて上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26内の圧力をそれぞれ大気圧まで排圧する。図6は、このように制御された圧迫帯12の生体14に対する圧迫圧力値PCの変化を示している。
【0037】
圧力振動波抽出部84は、圧迫帯12の圧迫圧力値PCが上記徐速降圧中の各ステップ圧P1、P2、P3、・・・Pxに維持された状態において、第1圧力センサT1、第2圧力センサT2及び第3圧力センサT3からの出力信号に基づき上流側膨張袋22、中間膨張袋24及び下流側膨張袋26の各圧迫圧力値PC1、PC2及びPC3に含まれる、生体14の心拍に同期して発生する圧力振動波を示す圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3を逐次抽出し、記憶させる。
【0038】
具体的には、第1圧力センサT1、第2圧力センサT2、及び第3圧力センサT3からの出力信号に対して、例えば数Hz~数十Hzの間の周波数成分を有する信号を弁別するバンドパスフィルタ処理をそれぞれ行なうことにより、圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3を抽出する。これら圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3は、RAM74等の所定の記憶領域に逐次記憶される。
【0039】
圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3は、例えば図7に示されるものであり、それぞれ上流側圧力振動波、中間圧力振動波、及び下流側圧力振動波を表している。ここで、上記の圧力振動波とは、圧迫圧力値PCを示す出力信号からバンドパスフィルタ処理により抽出された交流成分である。圧迫圧力値PC2が生体14の最高血圧値SBPよりも高い状態では、動脈18内の血流が阻止されていて、下流側膨張袋26まで血流が到達しないので、脈波信号とは言い難い。この状態では、上流側膨張袋22からの圧力の干渉(クロストーク)により中間膨張袋24及び下流側膨張袋26の圧迫圧力値PC2及びPC3に圧力振動波が発生すると推定される。しかし、圧迫圧力値PC2が生体14の最高血圧値SBPよりも低い状態では動脈18内の血流が流通させられるので、その状態で抽出された圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3は、上流側脈波、中間脈波、及び下流側脈波をそれぞれ表わすものとなる。
【0040】
時間差情報比算出部86は、圧力振動波信号SM1が表す上流側圧力振動波及び圧力振動波信号SM2が表す中間圧力振動波の間の上中時間差情報である上中時間差Δtiと、圧力振動波信号SM1が表す上流側圧力振動波及び圧力振動波信号SM3が表す下流側圧力振動波の間の上下時間差情報である上下時間差Δtdを、図9に示すように、所定の圧迫圧力値PC毎にすなわち上記徐速降圧中のステップ圧P1、P2、P3、・・・Px毎にそれぞれ算出する。上中時間差Δtiは上流側圧力振動波及び中間圧力振動波の間の位相差或いは圧力振動波伝播時間でもある。また、上下時間差Δtdは、上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波の間の位相差或いは圧力振動波伝播時間でもある。
【0041】
時間差情報比算出部86は、例えば、圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3のそれぞれの一次微分波形の頂点(最上点)k1、k2及びk3を時間差測定基準点として定め、圧力振動波信号SM1の一次微分波形の頂点k1と圧力振動波信号SM2の一次微分波形の頂点k2との間の時間間隔を算出することで上中時間差Δtiとし、圧力振動波信号SM1の一次微分波形の頂点k1と圧力振動波信号SM3の一次微分波形の頂点k3との間の時間間隔を算出することで上下時間差Δtdとする。図8には、圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3の一次微分波形と、それらのピーク間時間である上中時間差Δti及び上下時間差Δtdとが示されている。上記圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3の一次微分波形の頂点k1、k2及びk3は、圧力振動波信号SM1、SM2、及びSM3の最大傾斜点すなわち変曲点を示している。
【0042】
そして、時間差情報比算出部86は、上下時間差Δtd及び上中時間差Δtiから、例えば上下時間差Δtdと上中時間差Δtiの比の値である時間差比RΔt(=Δtd/Δti)を時間差情報比として算出する。図10は、このようにして算出された時間差比RΔtを、圧迫圧力値PCを示す軸上において所定の圧迫圧力値毎に、たとえばステップ圧P1、P2、P3、・・・Px毎に示している。
【0043】
図9及び図10には、聴診法にて測定した最高血圧値SP及び最低血圧値DPが示されている。時間差比RΔtは、図10に示す圧迫圧力値PCが降圧される過程で、不安定な状態から最高血圧値SP付近となると急上昇して、時間差比RΔtがたとえば「2」付近で変化が少ない安定区間RSへ移行し、最低血圧値DP付近となると安定区間RSにおける値から再び急上昇して不安定となるという、特性を有している。ここで、安定区間RSとは、時間差比RΔtの値の変動幅がたとえば±5%以内、たとえば時間差比RΔtが「2」付近であれば、「2±0.1」の範囲内である状態を示している。
【0044】
血圧決定部に対応する最高血圧値決定部88は、圧迫帯12の圧迫圧力値PCが降圧される過程で、圧迫帯12の圧迫圧力値PCが上記徐速降圧中の各ステップ圧P1、P2、P3、・・・Pxのいずれかに維持された状態において、時間差情報比である時間差比RΔtの変化に基づいて最高血圧値SBPとして決定する。すなわち、最高血圧値決定部88は、圧迫圧力値PCが降圧される過程で所定以上の変化を示したことに基づいて、つまり、圧迫圧力値PCが降圧される過程で、時間差比RΔtが予め設定された安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1内となったときの圧迫圧力値PCに基づいて、最高血圧値SBPを決定する。時間差比RΔtが安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1内となったときの圧迫圧力値PCそのものを最高血圧値SBPとして決定してもよいし、時間差比RΔtが安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1内となったときの圧迫圧力値PCに所定の補正を加えたものを最高血圧値SBPとして決定してもよい。上記安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1は、TRSmin1以上TRSmax1以下の値であって予め実験的に求められた値である。
【0045】
上記安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1は、最高血圧値付近において時間差比RΔtが圧迫圧力値PCの下降に伴って、最高血圧値SBP付近から開始し最低血圧値DBP付近において終了する安定区間RSの予め実験的に定められた下限値TRSmin1および上限値TRSmax1であり、たとえば時間差比RΔtが2付近であれば、TRSmin1が1.9、上限値TRSmax1が2.1に設定される。図10において安定区間RSにおける時間差比RΔtの値は、「2」程度の値であるが、これは図3に示すように、上流側膨張袋22と下流側膨張袋26との間の圧力振動波伝播距離L13が、上流側膨張袋22と中間膨張袋24との間の圧力振動波伝播距離L12の約2倍(=L13/L12)であることに由来している。
【0046】
血圧決定部に対応する最低血圧値決定部90は、例えば、時間差情報比に対応する時間差比RΔtが、たとえば、予め設定された安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1から外れたときの圧迫圧力値PCを、生体14の最低血圧値DBPとして決定する。この判断は、安定区間RSが終了したことを判断するためのものである。
【0047】
図11は、電子制御装置70の制御作動の要部を説明するフローチャートである。血圧測定開始操作釦80が操作されると、カフ圧制御部82に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)S1では、圧迫帯12の圧迫圧力値PCが昇圧される。具体的には、図6に示すように、急速排気弁52が閉状態とされるとともに、空気ポンプ50が作動状態とされてその空気ポンプ50から圧送される圧縮空気により主配管56内及びそれに連通された上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26内の圧力が急速に高められる。そして、圧迫帯12による上腕16の圧迫が開始される。
【0048】
次いで、カフ圧制御部82に対応するS2では、圧迫帯12の圧迫圧力値PCを示す第4圧力センサT4の出力信号に基づいて、その圧迫圧力値PCが予め設定された昇圧目標圧力値PCM(例えば180mmHg)以上であるか否かが判定される。図6の時間t2より前の時点では、上記S2の判定が否定されて図11のS1以下が繰り返し実行される。
【0049】
圧迫圧力値PCが昇圧目標圧力値PCMに到達してS2の判定が肯定されると、カフ圧制御部82に対応するS3では、空気ポンプ50の作動が停止され、圧迫帯12の圧迫圧力値PCが例えば3~5mmHg/sec毎に予め設定されたステップ圧P1、P2、P3、・・・Pxが順次形成されるステップ降圧で徐速排気するように排気制御弁54、第1開閉弁E1、第2開閉弁E2及び第3開閉弁E3が作動させられる。
【0050】
上記ステップ圧P1、P2、P3、・・・Pxを保持する場合には第1開閉弁E1、第2開閉弁E2、及び第3開閉弁E3がそれぞれ閉状態とされる。図6の時間t2は上記徐速排気の開始時点であり、また時間t3~t4の間は圧迫圧力値PCがステップ圧P1に所定時間例えば2拍が発生する間保持されている時間である。
【0051】
次いで、圧力振動波抽出部84に対応するS4では、圧迫圧力値PC1、PC2及びPC3がそれぞれ所定時間保持される間に、第1圧力センサT1、第2圧力センサT2及び第3圧力センサT3からの出力信号に対して数Hz乃至数十Hzの波長帯の信号を弁別するローパスフィルタ処理またはバンドパスフィルタ処理がそれぞれ為されることにより上流側膨張袋22、中間膨張袋24及び下流側膨張袋26からの圧力振動波を示す圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3が抽出されるとともに、第4圧力センサT4からの出力信号に対してローパスフィルタ処理が為されることにより交流成分が除去された圧迫帯12の圧迫圧力値PCが抽出される。そして、それらが互いに関連付けられて記憶される。
【0052】
カフ圧制御部82に対応するS5では、圧迫圧力値PCが予め設定された測定終了圧力値PCE(例えば30mmHg)以下であるか否かが判定される。図6の時間t11より前の時点では、上記S5の判定が否定されてS3以下が繰り返し実行される。
【0053】
圧迫圧力値PCが測定終了圧力値PCEを下回ってS5の判定が肯定されると、カフ圧制御部82に対応するS6では、上流側膨張袋22、中間膨張袋24及び下流側膨張袋26内の圧力がそれぞれ大気圧まで排圧させられるように急速排気弁52が作動させられる。図6の時間t11以降はこの状態を示す。
【0054】
次いで、時間差情報比算出部86に対応するS7では、図8に示すように、圧力振動波信号SM1、SM2及びSM3のそれぞれの一次微分波形の頂点k1、k2及びk3が時間差測定基準点として定められ、圧力振動波信号SM1の一次微分波形の頂点k1と圧力振動波信号SM2の一次微分波形の頂点k2との間の時間間隔が上中時間差Δtiとして算出され、圧力振動波信号SM1の一次微分波形の頂点k1と圧力振動波信号SM3の一次微分波形の頂点k3との間の時間間隔が上下時間差Δtdとして算出される。
【0055】
次いで、時間差情報比算出部86に対応するS8では、上下時間差情報である上下時間差Δtdと、上中時間差情報である上中時間差Δtiとから、例えば上下時間差Δtdと上中時間差Δtiの比の値である時間差比RΔt(=Δtd/Δti)が時間差情報比として算出される。
【0056】
次に、最高血圧値決定部88に対応するS9では、圧迫圧力値PCが降圧される過程で、時間差比RΔtが予め設定された安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1内となったか否かが判定される。このS9の判断が否定される場合はS7以下が繰り替えされるが、肯定された場合は、S10において、時間差比RΔtが予め設定された安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1内となったときの圧迫圧力値PCに基づいて、最高血圧値SBPが決定される。たとえば、時間差比RΔtが予め設定された安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1内となったときの圧迫圧力値PCが最高血圧値SBPとして決定される。
【0057】
そして、最低血圧値決定部90に対応するS11では、時間差情報比に対応する時間差比RΔtが、安定区間上限値TRSmax1を超えたときの圧迫圧力値PCが、生体14の最低血圧値DBPとして決定される。
【0058】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、生体14の上腕(被圧迫部位)16に巻き付けられ、圧迫帯12の幅方向に連ねられて上腕16を各々圧迫する独立した上流側膨張袋22、中間膨張袋24、下流側膨張袋26を少なくとも有する圧迫帯12を、備え、圧迫帯12による上腕16に対する圧迫圧力値PCを変化させる過程で、上流側膨張袋22内の圧迫圧(圧迫圧力値PC1)、中間膨張袋24内の圧迫圧(圧迫圧力値PC2)、および下流側膨張袋26内の圧迫圧(圧迫圧力値PC3)に含まれる圧力振動波である圧力振動波信号SM1(上流側圧力振動波)、圧力振動波信号SM2(中間圧力振動波)、および圧力振動波信号SM3(下流側圧力振動波)をそれぞれ抽出する圧力振動波抽出部84と、圧力振動波信号SM1および圧力振動波信号SM2の間の上中時間差情報(上中時間差Δti)と圧力振動波信号SM1および圧力振動波信号SM3の間の上下時間差情報(上下時間差Δtd)との時間差情報比(RΔt)を算出する時間差情報比算出部86と、圧迫帯12による上腕16に対する圧迫圧力値PCが(最高血圧値SBPよりも高い値である)昇圧目標圧力値PCMから下降させられる過程で、時間差情報比(RΔt)が所定以上の変化を示したときの圧迫圧力値PCの変化に基づいて、生体14の最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPを決定する血圧決定部(最高血圧値決定部88および最低血圧値決定部90)と、を含む。これにより、時間差情報比(RΔt)は圧迫圧力値PCの変化に伴う最高血圧値SBP付近および最低血圧値DBP付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPを正確に決定することができる。
【0059】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、時間差情報比算出部86は、圧力振動波信号SM1(上流側圧力振動波)の時間差測定基準点(k1)と圧力振動波信号SM2(中間圧力振動波)の時間差測定基準点(k2)との間の上中時間差Δtiを上中時間差情報として算出し、圧力振動波信号SM1の時間差測定基準点(k1)と圧力振動波信号SM3の時間差測定基準点(k3)との間の上下時間差Δtdを上下時間差情報として算出する。これにより、1対の圧力振動波信号SM1及び圧力振動波信号SM2間の上中時間差Δtiと他の1対の圧力振動波信号SM1及び圧力振動波信号SM3間の上下時間差Δtdの比の値である時間差情報比(RΔt(=Δtd/Δti))は、圧迫圧力値PCの降圧過程において最高血圧値SBP付近および最低血圧値DBP付近および最低血圧値付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPを正確に決定することができる。
【0060】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、時間差情報比算出部86は、圧力振動波信号SM1(上流側圧力振動波)の時間差測定基準点として圧力振動波信号SM1の一次微分波形の頂点k1を、圧力振動波信号SM2(中間圧力振動波)の時間差測定基準点として圧力振動波信号SM2の一次微分波形の頂点k2を、圧力振動波信号SM3(下流側圧力振動波)の時間差測定基準点として圧力振動波信号SM3の一次微分波形の頂点k3を、それぞれ算出する。これにより、圧力振動波信号SM1、圧力振動波信号SM2及び圧力振動波信号SM3の最大傾斜点すなわち変曲点が、時間差測定基準点として用いられるので、ノイズの存在下においても好適に最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPの決定精度が高められる。
【0061】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、時間差情報比算出部86は、上下時間差Δtdと上中時間差Δtiとの間の時間差比RΔtを、時間差情報比として算出し、最高血圧値決定部88は、時間差比RΔtが予め設定された安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1内となったときの圧迫圧力値PCに基づいて、生体14の最高血圧値SBPを決定する。上下時間差Δtdと上中時間差Δtiとの間の時間差比RΔtは、圧迫圧力値PCの変化に伴う最高血圧値SBP付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値SBPを正確に決定することができる。
【0062】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、最低血圧値決定部90は、時間差情報比である時間差比RΔtが安定区間判定範囲TRSmin1~TRSmax1を超えたときの前記圧迫圧力値PCに基づいて、生体14の最低血圧値DBPを決定する。これにより、最低血圧値DBPを正確に決定することができる。
【実施例2】
【0063】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図12は、電子制御装置70の他の作動例を説明するフローチャートである。図12において、S1~S7、S11は図11と共通しており、S8~S11は、S18~S21に置き換えられている。
【0065】
時間差情報比算出部86に対応するS18では、上中圧力振動波伝播時間及び上下圧力振動波伝播時間としてS7において求められた上下時間差Δtd及び上中時間差Δtiと、圧迫帯12の構造から幾何的に定められる、上流側膨張袋22と中間膨張袋24との間の圧力振動波伝播距離L12及び上流側膨張袋22と下流側膨張袋26との間の圧力振動波伝播距離L13から、上流側膨張袋22と中間膨張袋24との間の上中圧力振動波伝播速度PWVi(=L12/Δti)及び上流側膨張袋22と下流側膨張袋26との間の上下圧力振動波伝播速度PWVd(=L13/Δtd)がそれぞれ時間差情報として算出される。次いで、それら上中圧力振動波伝播速度PWViと上下圧力振動波伝播速度PWVdの比の値である圧力振動波伝播速度比Rpwv(=PWVi/PWVd)が時間差情報比として算出される。
【0066】
図3に示すように、圧力振動波伝播距離L12は、例えば圧迫帯12の幅方向において上流側膨張袋22の中心位置と中間膨張袋24の中心位置との間の長さから設定され、圧力振動波伝播距離L13は、例えば圧迫帯12の幅方向において上流側膨張袋22の中心位置と下流側膨張袋26の中心位置との間の長さから設定される。
【0067】
次に、最高血圧値決定部88に対応するS19~S20では、圧迫圧力値PCが降圧される過程で、時間差情報比である圧力振動波伝播速度比Rpwvに基づいて最高血圧値SBPとして決定される。圧力振動波伝播速度比Rpwvについては、圧迫圧力値PCの変化に対して図10と同様に変化し、安定区間RSが形成されている。このため、先ずS19では、圧迫圧力値PCが降圧される過程で、圧力振動波伝播速度比Rpwvが所定以上変化したか否か、すなわち予め設定された安定区間RSの予め設定された判定範囲TRSmin2~TRSmax2内であるか否かが判定される。このS19の判断が否定される場合はS7以下が繰り替えされるが、肯定された場合は、S20において、安定区間判定範囲TRSmin2~TRSmax2内と判定されたときの圧迫圧力値PCが最高血圧値SBPとして決定される。
【0068】
そして、最低血圧値決定部90に対応するS21では、上中圧力振動波伝播速度PWViと上下圧力振動波伝播速度PWVdの比の値である圧力振動波伝播速度比の値がRpwv(=PWVi/PWVd)が、例えば、安定区間上限値TRSmax2を超えたときの圧迫圧力値PCが、生体14の最低血圧値DBPとして決定される。
【0069】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、時間差情報比算出部86は、圧力振動波信号SM1(上流側圧力振動波)の時間差測定基準点(k1)と圧力振動波信号SM2(中間圧力振動波)の時間差測定基準点(k2)との上中圧力振動波伝播時間(Δti)とその上中圧力振動波伝播時間(Δti)当たりの上流側膨張袋22から中間膨張袋24までの圧力振動波伝播距離L12とから求めた上中圧力振動波伝播速度PWVi(=L12/Δti)が、上中時間差情報として算出され、圧力振動波信号SM1(上流側圧力振動波)の時間差測定基準点(k1)と圧力振動波信号SM3(下流側圧力振動波)の時間差測定基準点(k3)との上下圧力振動波伝播時間(Δtd)とその上下圧力振動波伝播時間(Δtd)当たりの上流側膨張袋22から下流側膨張袋26までの圧力振動波伝播距離L13とから求めた上下圧力振動波伝播速度PWVd(=L13/Δtd)が、上下時間差情報として算出される。これにより、1対の上流側圧力振動波及び中間圧力振動波間の上中圧力振動波伝播速度PWViと他の1対の上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波間の上下圧力振動波伝播速度PWVdとの間の圧力振動波伝播速度比Rpwv(PWVi/PWVd)は、圧迫圧力値PCの変化に伴う最高血圧値SBP付近および最低血圧値DBP付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPを正確に決定することができる。
【0070】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、時間差情報比算出部86は、圧力振動波信号SM1(上流側圧力振動波)の時間差測定基準点として圧力振動波信号SM1の一次微分波形の頂点k1を、圧力振動波信号SM2(中間圧力振動波)の時間差測定基準点として圧力振動波信号SM2の一次微分波形の頂点k2を、及び、圧力振動波信号SM3(下流側圧力振動波)の時間差測定基準点として圧力振動波信号SM3の一次微分波形の頂点k3を、それぞれ算出する。これにより、上流側圧力振動波、中間圧力振動波及び下流側圧力振動波の最大傾斜点すなわち変曲点が、時間差測定基準点として用いられるので、最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPの決定精度が高められる。
【0071】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、時間差情報比算出部86は、上中圧力振動波伝播速度PWViと上下圧力振動波伝播速度PWVdとの間の圧力振動波伝播速度比Rpwv(PWVi/PWVd)を、時間差情報比として算出し、最高血圧値決定部88は、圧力振動波伝播速度比Rpwvの値が予め設定された安定区間判定範囲TRSmin2~TRSmax2内となったときの圧迫圧力値PCを、生体14の最高血圧値SBPとして決定する。これにより、1対の上流側圧力振動波及び中間圧力振動波間の上中圧力振動波伝播速度PWViと他の1対の上流側圧力振動波及び下流側圧力振動波間の上下圧力振動波伝播速度PWVdとの間の圧力振動波伝播速度比Rpwv(PWVi/PWVd)は、圧迫圧力値PCの変化に伴う最高血圧値SBP付近において明確に変化し安定的に認識できるので、最高血圧値SBPを正確に決定することができる。
【0072】
本実施例の自動血圧測定装置10によれば、最低血圧値決定部90は、上中圧力振動波伝播速度PWViと上下圧力振動波伝播速度PWVdの比の値である圧力振動波伝播速度比Rpwv(=PWVi/PWVd)が、安定区間判定範囲TRSmin2~TRSmax2を超えたときの圧迫圧力値PCに基づいて、生体14の最低血圧値DBPを決定する。これにより、最低血圧値DBPも正確に決定されることができる。
【0073】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0074】
例えば、前述の実施例の自動血圧測定装置10では、血圧決定部として最高血圧値決定部88および最低血圧値決定部90の両方が備えられていたが、それらのうちの一方が備えられ、最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPの一方が決定されるものであってもよい。
【0075】
また、時間差情報比である時間差比RΔt及び圧力振動波伝播速度比Rpwvは、逆数(分母分子が反対)であってもよい。要するに、時間差情報比である時間差比RΔtまたは圧力振動波伝播速度比Rpwvが所定以上の変化を示したときが判定されればよい。
【0076】
また、実施例1及び実施例2において、圧迫帯12による上腕16に対する圧迫圧力値として、上流側膨張袋22内の圧迫圧力値PC1、中間膨張袋24の圧迫圧力値PC2、下流側膨張袋26内の圧迫圧力値PC3、または、それらの平均圧力が用いられてもよい。
【0077】
また、実施例1の図11では、圧迫帯12による上腕16への圧迫が終了したS6の後において、圧力振動波信号SM1、SM2、SM3の抽出、上下時間差Δtdの算出、上中時間差Δtiの算出、時間差比RΔtの算出処理が行なわれていたが、例えばステップ圧P1、P2、P3、・・・Pxが形成されている間にそれらの算出処理がリアルタイムで実行されるものであってもよい。
【0078】
また、実施例1及び実施例2では、圧迫帯12が上腕16を圧迫するものであったが、生体14の一部、例えば手首、下肢を圧迫するものであってもよい。
【0079】
また、実施例1及び実施例2では、圧迫帯12による血圧測定のための圧迫方法として、ステップ降圧が採用されていたが、連続降圧であってもよいし、連続昇圧であってもよい。
【0080】
また、実施例1及び実施例2では、上流側圧力振動波(圧力振動波信号SM1)の時間差測定基準点、中間圧力振動波(圧力振動波信号SM2)の時間差測定基準点、及び下流側圧力振動波(圧力振動波信号SM3)の時間差測定基準点として、一次微分波形のピーク発生時点が用いられていたが、圧力振動波信号SM1、SM2、SM3の立ち上がり点、二次微分波形等の高次微分波形のピーク発生時点、或いは、零クロス発生時点が、時間差測定基準点として用いられてもよい。上記立ち上がり点は、例えば、圧力振動波信号SM1、SM2、SM3の変曲点における接線と、圧力振動波信号SM1、SM2、SM3の立ち上がり始点を通る時間軸に平行な横線との交点である。
【0081】
また、実施例1及び実施例2において、圧迫帯12に備えられる膨張袋は3つに限らず、4つ以上であってもよい。上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26と、それらの間に設けられた中間膨張袋24とが、相対的に存在するものであればよい。
【0082】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
10:自動血圧測定装置
12:圧迫帯
14:生体
16:上腕(被圧迫部位)
22:上流側膨張袋
24:中間膨張袋
26:下流側膨張袋
70:電子制御装置
82:カフ圧制御部
84:圧力振動波抽出部
86:時間差情報比算出部
88:最高血圧値決定部
90:最低血圧値決定部
k1,k2,k3:一次微分波形の頂点(時間差測定基準点)
L12,L13:圧力振動波伝播距離
PC,PC1,PC2,PC3:圧迫圧力値
PWVi:上中圧力振動波伝播速度(上中時間差情報)
PWVd:上下圧力振動波伝播速度(上下時間差情報)
Rpwv:圧力振動波伝播速度比(時間差情報比)
RS:安定区間
SBP:最高血圧値
DBP:最低血圧値
SM1:圧力振動波信号(上流側圧力振動波)
SM2:圧力振動波信号(中間圧力振動波)
SM3:圧力振動波信号(下流側圧力振動波)
TRSmax1:安定区間判定範囲の上限値
TRSmin1:安定区間判定範囲の下限値
TRSmax2:安定区間判定範囲の上限値
TRSmin2:安定区間判定範囲の下限値
Δti:上中時間差(上中圧力振動波伝播時間,上中時間差情報)
Δtd:上下時間差(上下圧力振動波伝播時間,上下時間差情報)
RΔt:時間差比(時間差情報比)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12