(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
E01C 19/28 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E01C19/28
(21)【出願番号】P 2020094799
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】切田 勝之
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-167004(JP,A)
【文献】特開2020-051144(JP,A)
【文献】特開2006-232221(JP,A)
【文献】特開2005-297724(JP,A)
【文献】実開昭60-151724(JP,U)
【文献】実開昭53-057438(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を締め固めるローラと、
機体の骨格を形成するフレームと、
前記フレームの内部に設けられ、液体を貯留するタンクと、を備える転圧機械において、
前記タンクを前記フレームに保持する保持部材を有し、
前記フレームは、
機体左右方向に延びる第1板部と、
機体左右方向側方から視て前記第1板部に対し第1角度傾き、機体左右方向に延びる第2板部と、を含み、
前記タンクは、
前記第1板部に沿って摺動可能に当接してなる第1壁部と、
前記第2板部に沿って摺動可能に当接してなる第2壁部と、
機体左右方向側方から視て前記第2板部に対し第2角度傾き、かつ、前記第1板部に対し第3角度傾き、機体左右方向に延びる第3壁部と、を含み、
前記第1角度、前記第2角度及び前記第3角度の総和は、180°であり、
前記保持部材のうち少なくともひとつである第1保持部材は、前記第3壁部に沿って摺動可能に当接しつつ前記フレームに固定されることを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記フレームは、前記タンクの機体左右方向外側に位置し機体前後方向及び上下方向に延びる立板部材を含み、
前記保持部材のうち少なくともひとつである第2保持部材は、前記タンクまたは前記立板部材のいずれか一方に固定され、前記立板部材または前記タンクのいずれか他方に摺動可能に当接してなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項3】
前記第2保持部材は、前記タンクに締結部材によって固定され、機体左右方向外側の端部が前記立板部材の機体左右方向内側の面に当接してなる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の転圧機械。
【請求項4】
前記第2板部は、機体左右方向内側の端部が前記タンクの機体左右方向中央より外側に位置し、
前記保持部材の少なくともひとつである第3保持部材は、前記タンクに固定され、前記第2板部の前記端部に当接してなる、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の転圧機械。
【請求項5】
前記フレームにおける前記タンクより前記ローラから離間した位置に配設されるサブタンクを備え、
前記サブタンクは、前記フレームに固定されてなる、
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に係り、特にタンクの取付構造を最適化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、道路舗装工事においては、アスファルトを施工する前に地面の平面度を均等にするために転圧機械が用いられる。特に、初期の転圧作業においては、鉄輪を振動させながら地面を締め固める所謂土工用振動ローラが用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような土工用振動ローラにおいては、鉄輪の振動により機体のフレームが撓むことが考えられる。また、機体のフレームが撓むことにより、フレームの内側に設けられる機器、特に燃料タンクが変形する虞がある。
【0005】
したがって、燃料タンクが歪むことを抑制するべく、燃料タンクの剛性を高めることが考えられるが、剛性を高めるためには、燃料タンクを構成する壁部材の板厚を大きくする等の対応が必要となり、機体質量の増加や燃料タンクを製造するうえでの単価が高くなるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タンクをフレームに支持しつつ、フレームが撓むことによるタンクの変形を抑制することができる転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械は、地面を締め固めるローラと、機体の骨格を形成するフレームと、前記フレームの内部に設けられ、液体を貯留するタンクと、を備える転圧機械において、前記タンクを前記フレームに保持する保持部材を有し、前記フレームは、機体左右方向に延びる第1板部と、機体左右方向側方から視て前記第1板部に対し第1角度傾き、機体左右方向に延びる第2板部と、を含み、前記タンクは、前記第1板部に沿って摺動可能に当接してなる第1壁部と、前記第2板部に沿って摺動可能に当接してなる第2壁部と、機体左右方向側方から視て前記第2板部に対し第2角度傾き、かつ、前記第1板部に対し第3角度傾き、機体左右方向に延びる第3壁部と、を含み、前記第1角度、前記第2角度及び前記第3角度の総和は、180°であり、前記保持部材のうち少なくともひとつである第1保持部材は、前記第3壁部に沿って摺動可能に当接しつつ前記フレームに固定されることを特徴とする。
【0008】
これにより、タンクの第1壁部、第2壁部及び第3壁部が、機体左右方向側方から視て相対的に第1角度、第2角度及び第3角度をなすよう傾斜して機体左右方向に延びる第1板部、第2板部及び第1保持部材とそれぞれ当接することで、タンクがフレームに対して相対的に機体上下方向及び前後方向に移動することを規制するように支持することが可能とされる。また、タンクは、第1壁部、第2壁部及び第3壁部が第1板部、第2板部及び第1保持部材に摺動可能に当接することで、機体の振動等によってフレームが撓む場合であっても、第1壁部、第2壁部及び第3壁部が第1板部、第2板部及び第1保持部材と摺動してタンクが歪むことを抑制することが可能とされる。
【0009】
その他の態様として、前記フレームは、前記タンクの機体左右方向外側に位置し機体前後方向及び上下方向に延びる立板部材を含み、前記保持部材のうち少なくともひとつである第2保持部材は、前記タンクまたは前記立板部材のいずれか一方に固定され、前記立板部材または前記タンクのいずれか他方に摺動可能に当接してなるのが好ましい。
【0010】
これにより、タンクまたはタンクの機体左右方向外側に位置し機体前後方向及び上下方向に延びる立板部材のいずれか一方に固定されいずれか他方に摺動可能に当接してなるよう第2保持部材を設けることで、タンクが機体左右方向に移動することを規制しつつ、フレームが撓むことによってタンクが歪むことを抑制することが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記第2保持部材は、前記タンクに締結部材によって固定され、機体左右方向外側の端部が前記立板部材の機体左右方向内側の面に当接してなるのが好ましい。
【0012】
これにより、タンクに第2保持部材を固定する、すなわち、第2保持部材を固定するための被締結部等の構造をフレームと比較して小型なタンクに設けることで、第2保持部材を固定するために必要な設計変更の規模を低減することができる。また、第2保持部材を締結部材によって固定することで、第2保持部材の着脱を容易にし、整備等のためにタンクを取り外すことを容易にすることができる可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記第2板部は、機体左右方向内側の端部が前記タンクの機体左右方向中央より外側に位置し、前記保持部材の少なくともひとつである第3保持部材は、前記タンクに固定され、前記第2板部の前記端部に当接してなるのが好ましい。
【0014】
これにより、タンクに第3保持部材を固定しつつ、タンクの機体左右方向中央より外側に位置する第2板部の機体左右方向内側の端部に第3保持部材を当接させることで、タンクの第2壁部を第2板部と摺動可能に当接させつつ、タンクが機体左右方向に移動することを規制することやフレームが撓むことによってタンクが歪むことを抑制することが可能とされる。
【0015】
その他の態様として、前記フレームにおける前記タンクより前記ローラから離間した位置に配設されるサブタンクを備え、前記サブタンクは、前記フレームに固定されてなるのが好ましい。
【0016】
これにより、フレームにおけるタンクよりローラから離間した位置、すなわちローラが駆動することによる振動が、タンクが配設される位置と比較して伝達しにくい位置に配設されるサブタンクをフレームに固定することで、フレームのうち、タンク周辺の部分と比較して撓みにくい部分に配設されるサブタンクを簡単に機体に取り付けることが可能とされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の転圧機械によれば、タンクの第1壁部、第2壁部及び第3壁部が、機体左右方向側方から視て相対的に第1角度、第2角度及び第3角度をなすよう傾斜して機体左右方向に延びる第1板部、第2板部及び第1保持部材とそれぞれ摺動可能に当接するようにしたので、タンクがフレームに対して相対的に機体上下方向及び前後方向に移動することを規制するように支持しつつ、機体の振動等によってフレームが撓む場合であっても、第1壁部、第2壁部及び第3壁部が第1板部、第2板部及び第1保持部材と摺動してタンクが歪むことを抑制することができる。
【0018】
これにより、タンクをフレームに支持しつつ、フレームが撓むことによるタンクの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】後フレームの車輪支持部の前方斜視図である。
【
図5】第1タンク51の底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cの相対的な傾角を説明する説明図である。
【
図6】第1保持部材及び第2保持部材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、転圧機械の機体1の概略構成図が示されている。機体1は、例えば前輪(ローラ)3が鉄輪であり、ゴム製の後輪5を駆動して機体1を前後進しつつ、前輪3に設けられた図示しない偏心ウエイトによって前輪3を振動させて、アスファルトを施工する前の地面を締固めることが可能な所謂土工用振動ローラである。この機体1には、駆動装置10、燃料タンクユニット16及び運転室18が搭載されている。
【0021】
駆動装置10は、エンジン12及び冷却装置14を備えて構成される。エンジン12は、燃料タンクユニット16から供給される燃料(液体)9を燃焼して駆動力を発生させる内燃機関であり、後述する後フレーム23の機体前後方向後部に設けられるエンジンルーム7の中央より前側に搭載される。即ち、駆動装置10は、エンジン12を稼動させることで発生する駆動力を利用して後輪5を駆動し、機体1を前後進させることが可能である。なお、燃料タンクユニット16の詳細な構成については後述する。
【0022】
冷却装置14は、エンジン12より機体1の前後方向後方に設けられた所謂熱交換器である。詳しくは、エンジン12が稼動することで発生する熱により、エンジン12内に設けられる図示しないウォータージャケットを流通する冷却水が温められ、冷却装置14に高温な冷却水が流通する。この高温な冷却水は、冷却装置14によって冷却され、エンジン12に流通する。これにより、エンジン12は、内部の温度が過剰に上昇することを抑制されている。運転室18は、機体1を操縦するオペレータが搭乗する建屋である。この運転室18は、後述する後フレーム23におけるエンジンルーム7の機体前後方向前方に配設されている。
【0023】
これら機器を搭載するべく、機体1は、前フレーム21及び後フレーム(フレーム)23を備えている。前フレーム21は、機体前後方向前方に延びる、左右一対のフレーム部材である。この前フレーム21は、前輪3の左右外側に配設され、前輪3を回動可能に支持している。後フレーム23は、前端に前フレーム21が回動装置25を介して取り付けられるフレーム部材である。これにより、回動装置25を稼働させることで、前フレーム21と後フレーム23との機体上下方向上方から視た相対角度を調整し、機体1の進行方向を調整することができる。
【0024】
図2を参照すると、後フレーム23の後方斜視図が示されている。後フレーム23は、機体前後方向に延びる骨格部材(立板部材)27が左右一対に形成されている。この骨格部材27には、下端板部(第1板部)30、車輪支持部31、傾斜部33、傾斜平板部材34、グリル部材35及び上端板部材37が設けられている。下端板部30は、骨格部材27の下端を機体左右方向内側に向かって折り曲げるようにして形成した平板部である。この下端板部30は、機体前後方向に延びて形成されている。
【0025】
図3を参照すると、後フレーム23の車輪支持部31の前方斜視図が示されている。車輪支持部31は、燃料タンクユニット16の機体前後方向前方であってエンジン12の下方に形成されており、後輪5の駆動軸5aを回動可能に支持することが可能である(
図1参照)。この車輪支持部31は、骨格部材27から機体左右方向外側及び内側に向かって延びる略コの字状の矩形平板部であり、上壁41、前壁43及び後壁(第2板部)45を有している。
【0026】
上壁41は、車輪支持部31の上端を形成する平板部であり、機体前後方向に対し水平となるよう延びてなる。前壁43は、車輪支持部31の前端を形成する平板部であり、上壁41から下方前側に向かって延びるよう傾いてなる。後壁45は、車輪支持部31の後端を形成する平板部であり、上壁41から下方
後側に向かって延びるよう傾いてなる。具体的には、後壁45は、機体上下方向に対して第2角度θ2(例えば110°)となるよう傾いてなる(後述する
図4参照)。この後壁45は、機体左右方向内側の端部45aが燃料タンクユニット16の後述する第1タンク51の機体左右方向中央より外側に位置する。
【0027】
図1に戻り、傾斜部33は、機体1の後端が下方に位置するように例えば30°傾斜した際、地面に対して水平となるよう骨格部材27の後部に形成されている。
図2によると、傾斜平板部材34は、傾斜部33から車両左右方向内側に向かって延びる平板部材である。すなわち、傾斜平板部材34は、左右一対に形成される骨格部材27の傾斜部33に亘って延びて形成されている。グリル部材35は、骨格部材27の後端に例えば溶接された平板部材であり、機体上下方向及び左右方向に延びて形成されている。上端板部材37は、骨格部材27の上端から車両左右方向外側に延びて形成される平板部材である。
【0028】
このように後フレーム23を形成することで、後フレーム23の内部には、エンジンルーム7が形成されている。また、上端板部材37が形成されることで、上端板部材37より上側については、骨格部材27より車両左右方向外側であって上端板部材37の外側端部より内側にまでエンジンルーム7を拡張するように形成することができる。
【0029】
図1によると、燃料タンクユニット16は、第1タンク(タンク)51、第2タンク(サブタンク)53、連通配管55及び給油配管57を有している。第1タンク51は、駆動装置10の下方に位置する主たる燃料タンクであり、左右一対に配設される骨格部材27に対し微小距離(例えば10mm程度)空隙を有している。この第1タンク51は、機体左右方向に延びてなる、底端板(第1壁部)61、前端傾斜板63、上端傾斜板64、後端垂直板65及び後端傾斜板67を有している。
【0030】
図4を参照すると、
図2中のI-I断面の断面図が示されている。底端板61は、第1タンク51の底部を形成する平板部材である。前端傾斜板63は、第1タンク51の前端を形成する平板部材である。この前端傾斜板63には、前端を形成する前端垂直部63a及び底端板61に対して第1角度θ1傾斜し前端垂直部63aの下端から底端板61の前端に向かって延びる前端傾斜部(第2壁部)63bが形成されている。
【0031】
上端傾斜板64は、前端傾斜板63の前端垂直部63aの上端から機体前後方向後方に向かって延びる平板部材である。後端垂直板65は、底端板61の機体前後方向後端から上方に垂直に延びる平板部材である。
【0032】
後端傾斜板67は、後端垂直部67a、後端水平部67b及び後端傾斜部(第3壁部)67cを含んでいる。後端垂直部67aは、上端傾斜板64の後端から垂直下方に延びる平板部である。後端水平部67bは、後端垂直板65の上端から機体前後方向前方に延びる平板部である。後端傾斜部67cは、後端垂直部67aの下端から後端水平部67bの前端に向かって延びる平板部である。この後端傾斜部67cは、後端垂直部67aに対し所定角度(例えば45°)傾斜してなる。
【0033】
図5を参照すると、第1タンク51の底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cの相対的な傾角を説明する説明図が示されている。後端傾斜部67cは、前端傾斜部63bに対し第2角度θ2(例えば25°)傾いてなり、かつ、底端板61に対し第3角度θ3(例えば45°)傾いてなる。
【0034】
図1に戻り、第2タンク53は、駆動装置10の後方に位置する副燃料タンクである。この第2タンク53は、後フレーム23の後端に例えばボルトによって固定されている。連通配管55は、可撓性を有する配管部材であり、第2タンク53の前端下部と第1タンク51の後端垂直板65とを燃料を流通可能に接続している。給油配管57は、第2タンク53の上端に設けられ、機体1の外部から第2タンク53に燃料を流通可能に設けられている。
【0035】
したがって、燃料タンクユニット16は、給油配管57を介して第2タンク53に供給された燃料を、連通配管55を介して第1タンク51に供給することができ、機体1が傾斜した際に第1タンク51から第2タンク53に燃料を流通させることができる。
【0036】
図6を参照すると、第1保持部材71及び第2保持部材72の拡大図が示されている。またさらに、
図7を参照すると、第3保持部材73の拡大図が示されている。第1タンク51は、第1保持部材(保持部材)71、第2保持部材(保持部材)72及び第3保持部材(保持部材)73によって後フレーム23における車輪支持部31の後側に保持されている。
【0037】
図6によると、第1保持部材71は、平板部材を折り曲げて形成した金属製の部材であり、第1当接部71a、第1固定部71b及び第1長穴71cが形成されている。第1当接部71aは、第1保持部材71の第1タンク51側に形成される平板部であり、後端傾斜板67の後端傾斜部67cに面接触(当接)することが可能である。第1固定部71bは、第1保持部材71の骨格部材27側に形成される平板部であり、骨格部材27の後端傾斜部67c近傍に形成される第1取付部27aに面接触(当接)することが可能である。第1長穴71cは、後端傾斜部67cに対し垂直に延びてなるよう、第1固定部71bに形成される長穴である。
【0038】
したがって、第1保持部材71は、第1当接部71aを後端傾斜板67の後端傾斜部67cに摺動可能に面接触させつつ、第1長穴71cにボルト75を挿入して第1取付部27aに螺合し、第1固定部71bを第1取付部27aに固定することで、後端傾斜部67cを保持するようにして第1保持部材71を骨格部材27に固定することができる。また、第1長穴71cを形成することで、ボルト75を挿入して第1取付部27aに螺合する際に第1当接部71aを後端傾斜板67の後端傾斜部67cに的確に面接触させることができる。
【0039】
図4によると、第1タンク51は、底端板61が下端板部30によって保持されることで、下端板部30に対する垂直方向、すなわち機体上下方向下方(第1方向)への移動が規制される一方、底端板61が下端板部30と機体前後方向に摺動可能に面接触(当接)してなる。
【0040】
また、前端傾斜板63の前端傾斜部63bが車輪支持部31の後壁45によって保持されることで、後壁45に対する垂直方向のうち機体前後方向前側(第2方向)への移動が規制される一方、前端傾斜部63bが後壁45と摺動可能に面接触(当接)してなる。そして、第1保持部材71は、第1タンク51における後端傾斜板67の後端傾斜部67cを保持することで、第1タンク51が第1保持部材71の第1当接部71aに対する垂直方向のうち機体前後方向後側(第3方向)へ移動することを規制することができる。
【0041】
ここで、第1タンク51の底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cの相対的な傾角は、第1角度θ1、第2角度θ2及び第3角度θ3であるため(
図5参照)、下端板部30、車輪支持部31の後壁45及び第1保持部材71もまた第1角度θ1、第2角度θ2及び第3角度θ3をなすように傾斜してなる。また、第1タンク51の底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cが機体前後方向及び上下方向に延びる方向に仮想線を延ばすと、三角形Tが形成される、換言すると、第1角度θ1、第2角度θ2及び第3角度θ3の総和は180°となる。
【0042】
したがって、第1方向、第2方向及び第3方向は、それぞれ異なる方向であって三角形Tの内側から外側に向かう方向となるので、第1タンク51は、下端板部30、車輪支持部31の後壁45及び第1保持部材71により、第1方向、第2方向及び第3方向についての移動が規制される。これにより、下端板部30、車輪支持部31の後壁45及び第1保持部材71は、第1タンク51が機体上下方向及び前後方向に移動することを規制することができる。
【0043】
一方で、下端板部30、車輪支持部31の後壁45及び第1保持部材71は、いずれも第1タンク51と面接触はしているものの、固定はされていない。ゆえに、骨格部材27が機体1の振動等によって撓むような場合であっても、第1タンク51が撓むことを抑制することができる。
【0044】
第2保持部材72は、機体左右方向及び上下方向に延びる平板部材であり、機体左右方向に延びてなる第2長穴72bが形成されている。ここで、第1タンク51の後端垂直板65の機体左右方向外側には、第2取付部65aが形成されている。
【0045】
したがって、第2保持部材72は、機体左右方向外側の端部である第2端部(端部)72aを骨格部材27に当接させつつ、第2長穴72bにボルト(締結部材)77を挿入して第2取付部65aに螺合し、第2保持部材72を第2取付部65aに固定することで、後端垂直板65を保持するようにして第2保持部材72を第1タンク51に固定することができる。また、第2長穴72bを形成することで、第1長穴71cと同様に、ボルト77を挿入して第2取付部65aに螺合する際に第2保持部材72の第2端部72aを骨格部材27に的確に当接させることができる。
【0046】
図7によると、第3保持部材73は、機体左右方向及び上下方向に延びる平板部材であり、機体左右方向に延びてなる第3長穴73bが形成されている。ここで、第1タンク51の前端傾斜板63の前端傾斜部63bには、第3取付部63cが形成されている。
【0047】
したがって、第3保持部材73は、機体左右方向外側の端部である第3端部73aを骨格部材27に当接させつつ、第3長穴73bにボルト79を挿入して第3取付部63cに螺合し、第3保持部材73を第3取付部63cに固定することで、後端垂直板65を保持するようにして第3保持部材73を第1タンク51に固定することができる。また、第3長穴73bを形成することで、第2長穴72bと同様に、ボルト79を挿入して第3取付部63cに螺合する際に第3保持部材73の第3端部73aを後壁45の端部45aに的確に当接させることができる。
【0048】
このように第2保持部材72及び第3保持部材73によって第1タンク51を保持することで、第1タンク51が機体左右方向に移動することを規制することができる。一方、第2保持部材72及び第3保持部材73は、骨格部材27及び車輪支持部31の後壁45とは面接触はしているものの、固定はされていない。ゆえに、骨格部材27が機体1の振動等によって撓むような場合であっても、第1タンク51が撓むことを抑制することができる。
【0049】
また、第2保持部材72及び第3保持部材73を第1タンク51に固定するため、第2取付部65a及び第3取付部63cは、第1タンク51に形成されている。したがって、第2取付部65a及び第3取付部63cを後フレーム23と比較して小型な第1タンク51に形成したので、第1保持部材71を固定するために必要な設計変更の規模を低減することができる。
【0050】
以上説明したように、本発明に係る転圧機械では、地面を締め固める前輪3と、機体1の骨格を形成する後フレーム23と、後フレーム23の内部に設けられ、燃料9を貯留する第1タンク51と、を備える転圧機械において、第1タンク51を後フレーム23に保持する第1保持部材71、第2保持部材72及び第3保持部材73を有する。
【0051】
また、後フレーム23は、機体左右方向に延びる下端板部30と、機体左右方向側方から視て下端板部30に対し第1角度θ1傾き、機体左右方向に延びる後壁45と、を含み、第1タンク51は、下端板部30と摺動可能に面接触してなる底端板61と、後壁45と摺動可能に面接触してなる前端傾斜部63bと、機体左右方向側方から視て後壁45に対し第2角度θ2傾き、かつ、下端板部30に対し第3角度θ3傾き、機体左右方向に延びる後端傾斜部67cと、を含む。
【0052】
そして、第1角度θ1、第2角度θ2及び第3角度θ3の総和は、180°であり、第1保持部材71は、後端傾斜部67cと摺動可能に面接触しつつ後フレーム23に固定される。
【0053】
従って、第1タンク51の底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cが、機体左右方向側方から視て相対的に第1角度θ1、第2角度θ2及び第3角度θ3をなすよう傾斜して機体左右方向に延びる下端板部30、後壁45及び第1保持部材71と接触することで、第1タンク51が後フレーム23に対して相対的に機体上下方向及び前後方向に移動することを規制するように支持することができる。
【0054】
また、第1タンク51は、底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cが下端板部30、後壁45及び第1保持部材71に摺動可能に接触してなるので、例えば前輪3が振動して機体1が振動し、後フレーム23が撓む場合であっても、底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cが下端板部30、後壁45及び第1保持部材71と摺動することにより、第1タンク51が後フレーム23と連動して歪むことを抑制することができる。
【0055】
そして、後フレーム23は、第1タンク51の機体左右方向外側に位置し機体前後方向及び上下方向に延びる骨格部材27を含み、第2保持部材72は、第1タンク51または骨格部材27のいずれか一方に固定され、骨格部材27または第1タンク51のいずれか他方に摺動可能に当接してなるので、第1タンク51が機体左右方向に移動することを規制しつつ、後フレーム23が撓むことによって第1タンク51が歪むことを抑制することができる。
【0056】
また、第2保持部材72は、第1タンク51にボルト77によって固定され、機体左右方向外側の第2端部72aが骨格部材27の機体左右方向内側の面に当接してなる。すなわち、第2保持部材72を固定するための第2取付部65aを後フレーム23と比較して小型な第1タンク51に設けることで、第2保持部材72を固定するために必要な設計変更の規模を低減することができる。また、第2保持部材72をボルト77によって固定したので、整備等のために第1タンク51を取り外すことを容易にすることができる。
【0057】
そして、後壁45は、機体左右方向内側の第2端部72aが第1タンク51の機体左右方向中央より外側に位置し、第3保持部材73は、第1タンク51に固定され、後壁45の端部45aに当接してなるので、第1タンク51の前端傾斜部63bを後壁45と摺動可能に面接触させつつ、第1タンク51が機体左右方向に移動することを規制することや後フレーム23が撓むことによって第1タンク51が歪むことを抑制することができる。
【0058】
そして、後フレーム23における第1タンク51より前輪3から離間した位置に配設される第2タンク53を備え、第2タンク53は、後フレーム23に固定されてなる。
【0059】
従って、後フレーム23における第1タンク51より前輪3から離間した位置、すなわち前輪3が駆動することによる振動が、第1タンク51が配設される位置と比較して伝達しにくい位置に配設される第2タンク53を後フレーム23に固定したので、後フレーム23のうち、第1タンク51周辺の部分と比較して撓みにくい部分に配設される第2タンク53を簡単に機体1に取り付けることができる。
【0060】
以上で本発明に係る転圧機械の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0061】
例えば、本実施形態では、本実施形態では、第2保持部材72は、第1タンク51に固定され、骨格部材27の機体左右方向内側の面に摺動可能に面接触するようにしたが、骨格部材27に固定され、第1タンク51の機体左右方向外側の面に摺動可能に面接触するようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、第1保持部材71、第2保持部材72及び第3保持部材73を用いるようにしたが、第1タンク51の機体左右方向における移動を規制する必要がない場合には第1保持部材71のみ用いるようにすればよい。
【0063】
また、本実施形態では、底端板61、前端傾斜部63b及び後端傾斜部67cが下端板部30、後壁45及び第1保持部材71と面接触するように説明したが、摺動時における摩擦抵抗を軽減する等の目的で接触面積を低減するべく、下端板部30から前端傾斜部63bに向かって突出する凸部を形成してもよく、第1タンク51が下端板部30に沿って摺動することができればよい。
【符号の説明】
【0064】
1 機体
3 前輪(ローラ)
9 燃料(液体)
23 後フレーム(フレーム)
27 骨格部材(立板部材)
30 下端板部(第1板部)
45 後壁(第2板部)
45a 端部
51 第1タンク(タンク)
53 第2タンク(サブタンク)
61 底端板(第1壁部)
63b 前端傾斜部(第2壁部)
67c 後端傾斜部(第3壁部)
71 第1保持部材(保持部材)
72 第2保持部材(保持部材)
72a 第2端部(端部)
73 第3保持部材(保持部材)
77 ボルト(締結部材)