(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】発電素子
(51)【国際特許分類】
H10N 15/00 20230101AFI20231206BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H10N15/00
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2020100161
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】吉田 学史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 久生
(72)【発明者】
【氏名】木村 重哉
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236058(JP,A)
【文献】特表2007-517482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0229013(US,A1)
【文献】特開2019-149493(JP,A)
【文献】特開2020-013886(JP,A)
【文献】特開2018-195790(JP,A)
【文献】国際公開第2016/182080(WO,A1)
【文献】特開2007-281140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 15/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層と、
第2導電層と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられ、極性を有する第1半導体を含む第1部材と、
を備え、
前記第1導電層は、熱源から熱が加わるエミッタであり、
前記第2導電層は、前記エミッタからの熱電子を捕獲するコレクタであり、
前記第2導電層と前記第1部材との間に空隙があり、
前記第1部材の前記空隙の側の第1面は、前記第1半導体の表面であり、電子放出面であり、
前記第1半導体は、Al
x1
Ga
1-x1
N(0≦x1≦1)を含み、
前記第1半導体の<000-1>方向は、前記第1導電層から前記第2導電層への第1方向に対して傾斜し、
前記第1部材は、前記第1方向に対して垂直な平面に沿って広がり、
前記第1方向と前記第1半導体の<000-1>方向との間の角度は、4°以上32°以下である、発電素子。
【請求項2】
前記第1半導体は、n形である、請求項
1に記載の発電素子。
【請求項3】
前記第1面は、前記第1半導体の(000-1)面に沿う第1領域を含む、請求項1
または2に記載の発電素子。
【請求項4】
前記第1面は、第2領域をさらに含み、
前記第1領域から前記第2領域への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第2領域は、前記第1領域と交差した、請求項
3に記載の発電素子。
【請求項5】
前記第1領域と前記第2領域との間の角度は、90°である請求項
4に記載の発電素子。
【請求項6】
前記第1領域の電子放出効率は、前記第2領域の電子放出効率よりも高い、請求項
4または
5に記載の発電素子。
【請求項7】
第1導電層と、
第2導電層と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられ、極性を有する第1半導体を含む第1部材と、
を備え、
前記第1導電層は、熱源から熱が加わるエミッタであり、
前記第2導電層は、前記エミッタからの熱電子を捕獲するコレクタであり、
前記第2導電層と前記第1部材との間に空隙があり、
前記第1部材の前記空隙の側の第1面は、前記第1半導体の表面であり、電子放出面であり、
前記第1半導体の<000-1>方向は、前記第1導電層から前記第2導電層への第1方向に対して傾斜し、
前記第1方向と前記第1半導体の<000-1>方向との間の角度は、4°以上32°以下であり、
前記第1面は、前記第1半導体の(000-1)面に沿う第1領域を含み、
前記第1面は、第2領域をさらに含み、
前記第1領域から前記第2領域への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第2領域は、前記第1領域と交差し、
前記第1領域と前記第2領域との間の角度は、90°であり、
前記第1領域の電子放出効率は、前記第2領域の電子放出効率よりも高い、発電素子。
【請求項8】
前記第1部材は、前記第1面と前記第1導電層との間の第2面を含み、
前記第2面は、第3領域と第4領域とを含み、
前記第3領域から前記第4領域への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第4領域は、前記第3領域と交差した、請求項
3~
7のいずれか1つに記載の発電素子。
【請求項9】
前記第1導電層と前記第1部材との間に設けられた第1基板をさらに備えた、請求項
3~
8のいずれか1つに記載の発電素子。
【請求項10】
前記第1基板は、n形SiCを含む、請求項
9に記載の発電素子。
【請求項11】
前記第1部材と前記第2導電層との間に設けられ、前記第1部材から離れ、極性を有する第2半導体を含む第2部材をさらに備えた、請求項1~1
0のいずれか1つに記載の発電素子。
【請求項12】
前記第2半導体は、Al
x2
Ga
1-x2
N(0≦x2≦1)を含む、請求項1
1に記載の発電素子。
【請求項13】
前記第2部材は、
第3面と、
前記第3面と前記第2導電層との間の第4面と、
を含み、
前記第3面は、前記第2半導体の(000-1)面に沿う第5領域を含む、請求項1
1または1
2に記載の発電素子。
【請求項14】
前記第2半導体の<000-1>方向は、前記第1方向に沿った、請求項1
1~1
3のいずれか1つに記載の発電素子。
【請求項15】
前記第1方向と前記第2半導体の<000-1>方向との間の角度は、0°以上4°未満である、請求項1
1~1
4のいずれか1つに記載の発電素子。
【請求項16】
前記第2半導体の<000-1>方向は、前記第1方向に対して傾斜した、請求項1
1~1
3のいずれか1つに記載の発電素子。
【請求項17】
前記第1方向と前記第2半導体の<000-1>方向との間の角度は、4°以上32°以下である、請求項1
1~1
3のいずれか1つに記載の発電素子。
【請求項18】
前記第3面は、第6領域をさらに含み、
前記第5領域から前記第6領域への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第6領域は、前記第5領域と交差した、請求項1
3に記載の発電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、熱源からの熱が加わるエミッタ電極と、エミッタ電極からの熱電子を捕獲するコレクタ電極と、を有する発電素子がある。発電素子において、効率の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、効率を向上できる発電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、発電素子は、第1導電層と、第2導電層と、第1部材と、含む。第1部材は、前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられ、極性を有する第1半導体を含む。前記第2導電層と前記第1部材との間に空隙がある。前記第1半導体の<000-1>方向は、前記第1導電層から前記第2導電層への第1方向に対して傾斜する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1(a)~
図1(c)は、第1実施形態に係る発電素子を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、発電素子の特性を例示するグラフ図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、発電素子の特性を例示する模式図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、第2実施形態に係る発電素子を例示する模式図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、第3実施形態に係る発電モジュール及び発電装置を示す模式図的断面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る発電装置及び発電システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1(a)~
図1(c)は、第1実施形態に係る発電素子を例示する模式図である。
図1(a)は、斜視図である。
図1(b)は、断面図である。
図1(a)に示すように、第1実施形態に係る発電素子110(電子放出素子)は、第1導電層E1、第2導電層E2、及び第1部材11を含む。この例では、発電素子110は、第2部材12をさらに含む。
【0009】
第1部材11は、第1導電層E1と第2導電層E2との間に設けられる。第2部材12は、第1部材11と第2導電層E2との間に設けられる。第2部材12は、第1部材11から離れる。
【0010】
第2導電層E2と第1部材11との間に、空隙20が設けられる。この例では、第1部材11と第2部材12との間に、空隙20が設けられる。1つの例において、空隙20は、減圧状態である。例えば、容器70が設けられる。容器70の内部に、第1部材11及び第2部材12が設けられる。容器70の内部が減圧状態とされる。これにより、空隙20が、減圧状態となる。
【0011】
第1部材11は、極性を有する第1半導体s1を含む。第2部材12は、極性を有する第2半導体s2を含む。
【0012】
第1半導体s1及び第2半導体s2は、例えば、n形半導体である。n形不純物は、例えばSi、Ge、Te及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である。第1半導体s1及び第2半導体s2は、例えば窒化物半導体の結晶(分極結晶)である。第1半導体s1は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1≦1)を含んでも良い。組成比x1は、例えば0.75以上1.0以下である。第2半導体s2は、Alx2
Ga1-x2
N(0≦x2≦1)を含んでも良い。組成比x2は、例えば0.75以上1.0以下である。第1半導体s1及び第2半導体s2は、n形のAlN、または、n形のGaNを含んでも良い。
【0013】
第1部材11は、第1面11aと、第2面11bと、を含む。第1面11aは、第2導電層E2側(及び第2部材12側)の面である。第2面11bは、第1面11aの反対側の面である。第2面11bは、第1面11aと第1導電層E1との間にある。例えば、第1面11aは、第2部材12に対向する。第1面11aは、例えば電子放出面である。
【0014】
第2部材12は、第3面12cと、第4面12dと、を含む。第3面12cは、第1導電層E1側(及び第1部材11側)の面である。第4面12dは、第3面12cの反対側の面である。第4面12dは、第3面12cと第2導電層E2との間にある。例えば、第3面12cは、第1部材11に対向する。
【0015】
第1導電層E1から第2導電層E2への方向をZ軸方向(第1方向)とする。巨視的に見て、Z軸方向は、第1面11aと垂直な方向である。例えば、Z軸方向は、第1部材11と、第2導電層E2(または第2部材12)と、を最短で結ぶ方向に対応する。Z軸方向は、積層方向に対応する。
【0016】
Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。第1部材11及び第2部材12は、X-Y平面に沿って広がる膜状である。巨視的に見て、第1面11a及び第3面12cは、X―Y平面に沿う(例えば平行である)。
【0017】
第1半導体s1の<000-1>方向は、Z軸方向(第1方向)に対して傾斜している。「<000-1>」の表記において、「-」は、「バー」に対応する。例えば、<000-1>方向は、<0001>方向に対して逆である。<000-1>方向は、例えば、-c方向である。
【0018】
第1部材11は、第1導電層E1と電気的に接続される。第2部材12は、第2導電層E2と電気的に接続される。
【0019】
図1(a)に示すように、例えば、第1端子71及び第2端子72が設けられる。第1端子71は、第1導電層E1と電気的に接続される。第2端子72は、第2導電層E2と電気的に接続される。第1端子71と第2端子72との間に、負荷30が電気的に接続可能である。
【0020】
例えば、第1導電層E1(及び第1部材11)の温度を第1温度T1とする。第2導電層E2(及び第2部材12)の温度を第2温度T2とする。例えば、第1部材11の温度(第1温度T1)が、第2部材12の温度(第2温度T2)よりも高くされる。例えば、熱源などに第1導電層E1(及び第1部材11)が接続される。これにより、第1温度T1が第2温度T2よりも高くなる。これにより、第1部材11から電子51が放出される。電子51は、例えば、熱電子である。電子51は、第2部材12に向かって進行する。電子51は、第2部材12に到達する。
【0021】
第2部材12に到達した電子51は、第2導電層E2及び第2端子72を介して、負荷30に流れる。電子51の流れが電流に対応する。
【0022】
このように、発電素子110においては、第1導電層E1(及び第1部材11)と第2導電層E2(及び第2部材12)との間における温度の差を電流に変換できる。
【0023】
第1導電層E1(及び第1部材11)は、例えば、エミッタである。第2導電層E2(及び第2部材12)は、例えば、コレクタである。
【0024】
<000-1>方向がZ軸方向に対して平行な場合は、第1部材11の表面(第1面11a)は、X-Y平面に平行な(000-1)面だけになる。この場合、第1部材11の表面は、平坦である。これに対して、<000-1>方向がZ軸方向に対して傾斜すると、第1部材11の表面には、(000-1)面と、他の面と、が存在し、
図1(b)に例示したように微視的な凹凸(
図1(b)参照)が存在する。この凹凸により、<000-1>方向がZ軸方向に対して傾斜する場合の第1部材11の表面積は、<000-1>方向がZ軸方向に対して平行な場合の第1部材11の表面積よりも大きくなる。<000-1>方向をZ軸方向に対して傾斜させることで、電子放出面の面積を増大させることができる。電子放出特性が向上し、発電素子の効率を向上できる。
【0025】
第1半導体s1の結晶において、<000-1>方向は、電子の放出効率が高い方向である。例えば、<000-1>方向に対して垂直な(000-1)面からの電子の放出効率は、他の結晶面からの電子の放出効率よりも高い。<000-1>方向をZ軸方向に対して傾斜させると、電子の放出効率が高い(000-1)面の、第1部材11の表面における割合が減少し、他の結晶面の、第1部材11の表面における割合が増加する。このため、電子の放出の効率が高い(000-1)の面積と、第1部材11における凹凸に基づく表面積と、の観点で、傾斜の角度において適切な範囲が存在する。適切な範囲の例については、後述する。
【0026】
図1(c)に示すように、Z軸方向と第1半導体s1の<000-1>方向(矢印A1)との間の角度θ1は、例えば4°以上32°以下である。角度θ1は、例えば4°を超えても良い。角度θ1は、例えば8°を超えても良い。
【0027】
図1(b)では、分かりやすさのため、第1部材11(第1面11a、第2面11b)の形状が拡大されて例示されている。
図1(b)に示すように、第1面11aは、第1領域r1を含む。第1領域r1は、第1半導体s1の(000-1)面に沿う。
【0028】
第1領域r1は、例えば(000-1)面である。第1領域r1は、例えば、IV族面(例えばN面)である。第1領域r1は、例えば、IV族極性(例えばN極性)である。
【0029】
第1領域r1は、X-Y平面に対して傾斜している。すなわち、第1半導体s1の<000-1>方向がZ軸方向に対して傾斜している。
【0030】
この例では、第1面11aは、第2領域r2をさらに含む。第2領域r2は、第1領域r1とX-Y平面において並ぶ。例えば、第1領域r1から第2領域r2への方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する第2方向(例えばX軸方向またはY軸方向)に沿う。
【0031】
第2領域r2は、第1領域r1と交差している。例えば、第2領域r2は、第1半導体s1のa面またはm面でも良い。例えば、第1領域r1は、極性面(N極性面)で良く、第2領域r2は、非極性面で良い。このように、この例では第1領域r1に加えて第2領域r2が設けられる。これにより、第1面11aの全体の面積が大きくなり、発電素子の効率を向上させることができる。
【0032】
隣り合う第1領域r1と第2領域r2との間には、段差が設けられる。段差の高さh1(Z軸方向に沿った長さ)は、例えば、0.2nm以上250nmである。この例では、複数の第1領域r1と複数の第2領域r2とが設けられる。例えば、第1領域r1及び第2領域r2は、X軸方向において交互に並ぶ。これにより、第1面11aに複数の段差(微視的な凹凸)が設けられている。
【0033】
第1領域r1の面積は、第2領域r2の面積よりも大きい。例えば、第1領域r1の面積は、第2領域r2の面積の1.7倍以上402倍以下である。例えば、第1領域r1と第2領域r2との間の角度θpは、90°である。
【0034】
図1(b)に示すように、第2面11bにも、微視的な凹凸が設けられている。例えば、第2面11bは、第3領域r3と第4領域r4とを含む。第3領域r3から第4領域r4への方向は第2方向(X軸方向またはY軸方向)に沿う。第4領域r4は、第3領域r3と交差している。例えば、第3領域r3は、第1領域r1と平行である。例えば、第4領域r4は、第2領域r
2と平行である。
【0035】
この例では、第2部材12において、第2半導体s2の<000-1>方向は、Z軸方向に沿う(例えば平行)。
図1(c)に示すように、例えば、Z軸方向と、第2半導体s2の<000-1>方向(矢印A2)との間の角度は、0°以上4°未満である。
【0036】
この例では、第2部材12の第3面12cまたは第4面12dには、第1部材11のような微視的な凹凸は設けられない。例えば、第3面12cは、第1面11aよりも平坦である。第3面12c(第5領域r5)は、第2半導体s2の(000-1)面に沿う。第3面12c(第5領域r5)は、例えば(000-1)面である。第5領域r5は、例えば、IV族面(例えばN面)である。第5領域r5は、例えば、IV族極性(例えばN極性)である。
【0037】
図1(b)に示すように、この例では、発電素子110は、第1基板41と第2基板42とを含む。
第1基板41は、第1導電層E1と第1部材11との間に設けられる。第1基板41は、第1導電層E1及び第1部材11と接する。
第2基板42は、第2導電層E2と第2部材12との間に設けられる。第2基板42は、第2導電層E2及び第2部材12と接する。
第1基板41及び第2基板42は、例えば、n形SiC基板である。第1基板41及び第2基板42は、シリコン基板でも良い。
【0038】
第1基板41の第1部材11と接する面(第1基板面41a)には、第2面11bに対応した凹凸がある。第1基板面41aは、第3領域r3と接する第1基板領域rs1と、第4領域r4と接する第2基板領域rs2と、を含む。第1基板領域rs1と第2基板領域rs2との間に段差が設けられている。
【0039】
第1基板41は、例えば、「オフセット基板」でも良い。オフセット基板上に有機金属気相法(MOCVD)などにより、窒化物半導体を成長させる。これにより、第1部材11を形成しても良い。これにより、製造が容易となる。
【0040】
図2は、発電素子の特性を例示するグラフ図である。
図2の横軸は、発電素子のエミッタ温度Te1である。
図2の縦軸は、エミッタから放出される電子による電流密度Jt1である。
図2中の特性d1は、極性面((000-1)面)における電流密度を示し、特性d2は、非極性面における電流密度を示す。極性面は、例えば第1領域r1に対応し、非極性面は、例えば第2領域r2に対応する。
【0041】
例えば、エミッタ温度Te1が800Kのときに、非極性面における電流密度は、4.1A/cm2である。一方、エミッタ温度Te1が800Kのときに、極性面における電流密度は、14.1A/cm2である。このように、極性面における電流密度は、非極性面における電流密度よりも高い。第1領域r1における電子の放出効率は、第2領域r2における電子の放出効率よりも高い。
【0042】
実施形態においては、第1領域r1及び第2領域r2のように放出効率の異なる面が設けられても良い。これにより、発電素子の効率を向上させることができる。これついて、以下説明する。
【0043】
図3(a)及び
図3(b)は、発電素子の特性を例示する模式図である。
図3(a)の横軸は、角度θo1°を示す。角度θo1は、Z軸方向と第1半導体s1の<000-1>方向との間の角度θ1(
図1(c)参照)に対応する。縦軸は、800Kにおいて放出される熱電子の電流密度Jt2である。
【0044】
図3中の特性dt1は、極性面((000-1)面)における電流密度を示す。特性dt1は、第1領域r1における電流密度に対応する。特性dt2は、非極性面における電流密度を示す。特性dt2は、第2領域r2における電流密度に対応する。特性dt3は、特性dt1と特性dt2との和である。
【0045】
図3(a)に示すように、角度θo1が大きくなると、特性dt1が減少する。一方、角度θo1が大きくなると、特性dt2が増大する。
図3(a)に示すように、特性dts3は、角度θo1が0度以上32度以下の範囲において、ピークを有する。
【0046】
図3(b)は、角度θo1と電子放出面の面積との関係を模式的に例示している。このモデルでは、極性面と非極性面との間の角度は90°である。角度θo1がゼロの場合は、極性面の面積は、長さL1に対応する。このとき、発電素子の電子放出面の面積は長さL1に対応する。一方、極性面を傾斜させた場合(θo1>0の場合)、極性面の面積は、長さL3に対応する。極性面を傾斜させて非極性面を設けた場合、非極性面の面積は、長さL2に対応する。このとき、発電素子の電子放出面の面積は、長さL2と長さL3との和に対応する。
【0047】
例えば長さL1と長さL3との比較からわかるように、角度θo1を大きくすると、極性面の面積は、小さくなる。このため、
図3(a)では、角度θo1が大きくなると、特性dt1が減少する。一方、角度θo1が大きくなると、長さL2は大きくなり、非極性面の面積は大きくなる。このため、
図3(a)では、角度θo1が大きくなると、特性dt2が増大する。
【0048】
図3(a)の特性dt3に示されるように、角度θo1が0°を超え32°以下の範囲においては、角度θo1がゼロの場合に比べて、トータルの電流密度は大きくなる。極性面と非極性面との合計面積が増大することで、トータルの電流密度が増大する。例えば、角度θo1が10°以上20°以下の範囲において、電流密度が極大となる。例えば、角度θ1(
図1(c)参照)を、例えば4°以上32°以下とすることで、発電素子の効率を向上させることができる。角度θ1は、10°以上20°以下でも良い。
【0049】
実施形態において、減圧状態である空隙20(
図1(a)参照)に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくともいずれかが封入されても良い。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、第1部材11の表面に付着し、電子放出効率が向上する。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、例えばCsである。
【0050】
(第2実施形態)
図4(a)及び
図4(b)は、第2実施形態に係る発電素子を例示する模式図である。
図4(a)は、模式的断面図である。第2実施形態に係る発電素子111は、エミッタの第2部材12及び第2基板4
2の構造において、第1実施形態に係る発電素子110の構造と異なる。これ以外について、発電素子111には、第1実施形態と同様の構成を適用できる。
【0051】
第2実施形態においては、第2半導体s2の<000-1>方向は、Z軸方向(第1方向)に対して傾斜している。これにより、例えば、第2半導体s2への電子の取り込みがより効果的に行われる。例えば、
図4(b)に示すように、Z軸方向と第2半導体s2の<000-1>方向(矢印A2)との間の角度θ2は、例えば4°以上32°以下である。角度θ2は、角度θ1と同じでも良い。
【0052】
図4(a)に示すように、第3面12cは、第5領域r5と、を含む。第5領域r5は、第2半導体s2の(000-1)面に沿う。第5領域r5は、例えば(000-1)面である。第5領域r5は、X-Y平面に対して傾斜している。すなわち、第2半導体s2の<000-1>方向がZ軸方向(第1方向)に対して傾斜している。
【0053】
この例では、第3面12cは、第6領域r6をさらに含む。第6領域r6は、第5領域r5とX-Y平面において並ぶ。第5領域r5から第6領域r6への方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する第2方向(X軸方向またはY軸方向)に沿う。第6領域r6は、第5領域r5と交差している。例えば、第6領域r6は、第2半導体s2のa面またはm面でも良い。例えば、第5領域r5は、極性面で良く、第6領域r6は、非極性面で良い。
【0054】
隣り合う第5領域r5と第6領域r6との間には、段差が設けられる。例えば、複数の第5領域r5と複数の第6領域r6とが、X軸方向において交互に並び、第3面12cに複数の段差(微視的な凹凸)が設けられている。第5領域r5は、第1部材11の第1領域r1と対向する。第5領域r5と第1領域r1とは、例えば平行である。
【0055】
第2部材12及び第2基板42の構造は、第1部材11及び第1基板41を180°反転させた構造でも良い。例えば、第4面12dは、第7領域r7と第8領域r8とを含む。第7領域r7、第8領域r8は、それぞれ、第3領域r3、第4領域r4と同様である。例えば、第2基板42の第2部材12と接する面(第2基板面42a)は、第3基板領域rs3と第4基板領域rs4とを含む。第3基板領域rs3、第4基板領域rs4は、それぞれ、第1基板領域rs1、第2基板領域rs2(
図1(b)参照)と同様である。
【0056】
(第3実施形態)
図5(a)及び
図5(b)は、第3実施形態に係る発電モジュール及び発電装置を示す模
式的断面図である。
図5(a)に示すように、実施形態に係る発電モジュール210においては、第1実施形態に係る発電素子(例えば発電素子110など)を含む。この例では、基板120の上において、複数の発電素子110が並ぶ。
【0057】
図5(b)に示すように、実施形態に係る発電装置310は、上記の発電モジュール210を含む。複数の発電モジュール210が設けられても良い。この例では、基板220の上において、複数の発電モジュール210が並ぶ。
【0058】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る発電装置及び発電システムを示す模式図である。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、実施形態に係る発電装置310(すなわち、実施形態に係る発電素子110など)は、太陽熱発電に応用できる。
【0059】
図6(a)に示すように、例えば、太陽61からの光は、ヘリオスタット62で反射し、発電装置310(発電素子110または発電モジュール210)に入射する。光は、第1導電層E1及び第1部材11の第1温度T1を上昇させる。第1温度T1が第2温度T2よりも高くなる。熱が、電流に変換される。電流が、電線65などにより送電される。
【0060】
図6(b)に示すように、例えば、太陽61からの光は、集光ミラー63で集光され、発電装置310(発電素子110または発電モジュール210)に入射する。光による熱が、電流に変換される。電流が、電線65などにより送電される。
【0061】
例えば、発電システム410は、発電装置310を含む。この例では、複数の発電装置310が設けられる。この例では、発電システム410は、発電装置310と、駆動装置66と、を含む。駆動装置66は、発電装置310を太陽61の動きに追尾させる。追尾により、効率的な発電が実施できる。
【0062】
実施形態に係る発電素子(例えば発電素子110など)を用いることで、高効率の発電が実施できる。
【0063】
実施形態によれば、効率を向上できる発電素子が提供できる。
【0064】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1-x-y-zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0065】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、発電素子に含まれる第1導電層、第2導電層、第1部材、及び2部材などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0067】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0068】
その他、本発明の実施の形態として上述した発電素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての発電素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0069】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
11・・・第1部材、 11a・・・第1面、 11b・・・第2面、 12・・・第2部材、 12c・・・第3面、 12d・・・第4面、 20・・・空隙、 30・・・負荷、 41・・・第1基板、 41a・・・第1基板面、 42・・・第2基板、 42a・・・第2基板面、 51・・・電子、 61…太陽、 62…ヘリオスタット、 63…集光ミラー、 65…電線、 66…駆動装置、 70・・・容器、 71・・・第1端子、 72・・・第2端子、 θ1、θ2・・・角度、 θo1・・・角度、 θp・・・角度、 110、111・・・発電素子、 120、220…基板、 210…発電モジュール、 310…発電装置、 410…発電システム、 A1、A2・・・矢印、 E1・・・第1導電層、 E2・・・第2導電層、 Jt1、Jt2・・・電流密度、 L1、L2、L3・・・長さ、 T1・・・第1温度、 T2・・・第2温度、 Te1・・・エミッタ温度、 d1、d2、dt1、dt2、dt3・・・特性、 h1・・・高さ、 r1~r8・・・第1~第8領域、 rs1~rs4・・・第1~第4基板領域、 s1・・・第1半導体、 s2・・・第2半導体