(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】沸騰水型自然循環炉
(51)【国際特許分類】
G21C 15/02 20060101AFI20231206BHJP
G21C 13/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G21C15/02 S
G21C13/02 200
(21)【出願番号】P 2020101403
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 梢
(72)【発明者】
【氏名】廣川 文仁
(72)【発明者】
【氏名】黒板 翔
(72)【発明者】
【氏名】大竹 重治
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-357688(JP,A)
【文献】特開平07-287090(JP,A)
【文献】特開2001-295316(JP,A)
【文献】特開2007-171090(JP,A)
【文献】特開平08-043573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 11/00 - 13/10
G21C 15/00 - 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心が格納される原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器内に設けられ前記炉心の周囲または上方に設けられる炉内構造物と、
前記原子炉圧力容器内に固定されているブラケットとを備え、
前記炉内構造物は、前記ブラケットに取り付け、
及び、取り外しできるように構成され
、
前記ブラケットは、前記原子炉圧力容器内の冷却材が流れる方向に沿った流線形の形状を有し、さらに、前記ブラケットと前記炉内構造物との取り付け部の当接箇所に近づくに従って厚くなる形状を有している
ことを特徴とする沸騰水型自然循環炉。
【請求項2】
請求項1に記載の沸騰水型自然循環炉において、
前記炉内構造物は、炉心シュラウドまたはチムニである
ことを特徴とする沸騰水型自然循環炉。
【請求項3】
請求項1に記載の沸騰水型自然循環炉において、
前記炉内構造物は、前記ブラケットにボルトが締結されて、取り付けられている
ことを特徴とする沸騰水型自然循環炉。
【請求項4】
請求項1に記載の沸騰水型自然循環炉において、
前記炉内構造物と前記ブラケットとの取り付け部は、前記原子炉圧力容器と前記炉内構造物との前記原子炉圧力容器の半径方向の移動量の差を吸収する嵌め合い構造を有している
ことを特徴とする沸騰水型自然循環炉。
【請求項5】
請求項1に記載の沸騰水型自然循環炉において、
前記炉内構造物と前記ブラケットとの取り付け部は、
前記炉内構造物の鉛直方向の移動を拘束するとともに前記原子炉圧力容器の半径方向の移動を許容する移動拘束許容手段を有するとともに、前記原子炉圧力容器と前記炉内構造物との前記原子炉圧力容器の半径方向の移動量の差を吸収する嵌め合い構造を有している
ことを特徴とする沸騰水型自然循環炉。
【請求項6】
請求項1に記載の沸騰水型自然循環炉において、
前記炉内構造物と前記ブラケットとの取り付部は、前記炉内構造物の前記原子炉圧力容器の半径方向の前記原子炉圧力容器との相対変位を拘束する弾性材を有している
ことを特徴とする沸騰水型自然循環炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型自然循環炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型軽水炉の原子炉圧力容器1の内部構造について、
図8を用いて説明する。
図8は、従来の改良型沸騰水型軽水炉の原子炉圧力容器101の内部構造を示す縦断面図である。
原子炉圧力容器101の内部には円筒状の炉心シュラウド103が設置されている。円筒状の炉心シュラウド103には、炉心102が収納されている。炉心102は、複数の燃料棒で構成されている。
【0003】
原子炉圧力容器101の内下部には、上方に延びる棒状のシュラウドサポート104が複数固定されている。
炉心シュラウド103は、シュラウドサポート104により支持され、原子炉圧力容器101と一体構造とされている。
【0004】
上述の沸騰水型軽水炉においては、炉心シュラウド103の下端部はシュラウドサポート104の上端に溶接されている。シュラウドサポート104の下部は原子炉圧力容器101の下鏡部101aに溶接されている。そのため、炉心シュラウド103が経年劣化し、交換を行う場合には、シュラウドサポート104の切断等の大掛かりな作業が必要となっている。
【0005】
この問題を解決するため、炉心シュラウド103の下端とシュラウドサポート104を複数の支持ロッドにより軸方向に固定することで、切断等の大掛かりな作業なしで炉心シュラウド103の交換を可能にする方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の沸騰水型自然循環炉は、炉心が格納される原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内に設けられ前記炉心の周囲または上方に設けられる炉内構造物と、前記原子炉圧力容器内に固定されているブラケットとを備え、前記炉内構造物は、前記ブラケットに取り付け、及び、取り外しできるように構成され、前記ブラケットは、前記原子炉圧力容器内の冷却材が流れる方向に沿った流線形の形状を有し、さらに、前記ブラケットと前記炉内構造物との取り付け部の当接箇所に近づくに従って厚くなる形状を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、沸騰水型軽水炉の炉心シュラウド103は、シュラウドサポート104に溶接され、シュラウドサポート104は原子炉圧力容器101の下鏡部101aに溶接されている。そのため、炉心シュラウド103が経年劣化して交換が必要になった場合に簡単に取り外すことができないという問題がある。
【0008】
この問題を解決するため、炉心シュラウド103の下端とシュラウドサポート104の上端を溶接ではなく、ボルトで締結する方法や、炉心シュラウド103の下端とシュラウドサポート104の上端とが接する部分に凹凸構造を設け嵌め合い構造とし、炉心シュラウド103が取外し可能な構造とする方法が提案されている。
しかし、この方法であっても、シュラウドサポート104は原子炉圧力容器101に溶接されているため、シュラウドサポート104の取替は不可能である。
【0009】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、取替不可能な箇所を削減できる沸騰水型自然循環炉の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の沸騰水型自然循環炉は、炉心が格納される原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内に設けられ前記炉心の周囲または上方に設けられる炉内構造物と、前記原子炉圧力容器内に固定されているブラケットとを備え、前記炉内構造物は、前記ブラケットに取り付け、または、取り外しできるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取替不可能な箇所を削減できる沸騰水型自然循環炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の実施形態1に係る沸騰水型自然循環炉の原子炉圧力容器の内部の構造の縦断面図。
【
図2A】炉心シュラウドの支持構造の部分縦断面図。
【
図2B】本発明の実施形態1の炉心シュラウド支持構造を示した斜視図。
【
図2C】炉心シュラウドの支持構造を成すブラケットとボルトとの斜視図。
【
図3】他例のチムニと炉心シュラウドの支持構造の縦断面図。
【
図4B】チムニの支持構造をチムニの内部側から見た斜視図。
【
図4C】チムニの支持構造を成すブラケットとボルトとの斜視図。
【
図5A】本発明の実施形態2の炉心シュラウドのブラケット部の構造を示した正面図。
【
図5B】実施形態2の炉心シュラウドのブラケット部に使用されるバネ8の斜視図。
【
図6A】本発明の実施形態2のチムニのブラケット部の構造を示した正面図。
【
図6B】実施形態2のチムニのブラケット部に使用されるバネの斜視図。
【
図7】実施形態2の炉心シュラウド、チムニのブラケット部の構造の他例の正面図
【
図8】従来の改良型沸騰水型軽水炉の原子炉圧力容器内部構造を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態1)
図1Aに、本発明の実施形態1に係る沸騰水型自然循環炉Rの原子炉圧力容器5の内部の構造の縦断面図を示し、
図1Bに、
図1AのI-I断面を示す。
沸騰水型自然循環炉Rは、炉心7、円筒状の炉心シュラウド8、上部格子板9、円筒状のチムニ10、気水分離器11、および蒸気乾燥器12が、原子炉圧力容器5に内蔵されている。
【0014】
原子炉圧力容器5は、下鏡部5aと胴部5bと上鏡部5cとをもつ筒形状に形成されている。
炉心7は、核分裂反応を生じる燃料集合体6が複数装荷されている。炉心7では、核分裂反応による熱で供給される冷却材(水)を蒸気化する。
炉心シュラウド8は、炉心7の外周を円筒状壁で囲っている。炉心シュラウド8は、
図1Bに示す原子炉圧力容器5の内壁面5b1に固定されたブラケット15の雌ねじ15dに螺着されるボルト16(
図2A、
図2C参照)で固定されている。
【0015】
上部格子板9は、燃料集合体6の上部を支持している。
チムニ10は、上部格子板9の上方に立設して水滴を含む蒸気の流路を形成している。
図1Aでは、チムニ10が炉心シュラウド8の上部に溶接にて固定された場合を示している。
気水分離器11は、チムニ10の上端を覆ってチムニ10上に設置されている。気水分離器11は、チムニ10を通った水滴を含む蒸気を蒸気(気相)と水(液相)とに分離する。
【0016】
蒸気乾燥器12は、気水分離器11を下部のスカート部12aで囲う態様で気水分離器11の上方に設置されている。蒸気乾燥器12は、蒸気の流れの下流に設けられるタービンの(図示せず)効率を上げるため、発生する蒸気に含まれる湿分を取り除く。
【0017】
図1Aに示す原子炉圧力容器5には、燃料集合体6に供給する水等の冷却材を供給する給水入口ノズル14が装備されている。また、原子炉圧力容器5には、蒸気乾燥器12で湿分を取り除いた蒸気をタービンに向けて送るための蒸気出口ノズル13が装備されている。
沸騰水型自然循環炉Rは、下記のように機能する。
【0018】
給水入口ノズル14から原子炉圧力容器5に収納される炉心7に冷却材が供給される(
図1の矢印α1、α2)。炉心7での核分裂反応の熱により冷却材が蒸発して気液二相流となって上方に送り出される(
図1の矢印α3)。気液二相流の冷却材は、チムニ10を介して原子炉圧力容器5の上方に導かれる(
図1の矢印α4)。こうして、原子炉圧力容器5の上方に導かれる気相を含む密度の低い冷却材と、給水入口ノズル14からの給水の液相の冷却材の比重差によって、冷却材の自然循環(矢印α1~α4、α1~α4、……)に必要な駆動力が得られる。チムニ10は、冷却材の自然循環を促進させる働きをもつ。
【0019】
<炉心シュラウド8の支持構造>
図2に、本発明の実施形態1の炉心シュラウド8の支持構造を示す。
図2Aに炉心シュラウド8の支持構造の部分縦断面図を示す。
図2Bに炉心シュラウド8の支持構造を炉心シュラウド8の内部側から見た斜視図を示す。
図2Cに、炉心シュラウド8の支持構造を成すブラケット15とボルト16との斜視図を示す。
【0020】
図2Aに示すように、原子炉圧力容器5の胴部5bに、ブラケット15が取り付けられている。
図2Cに示すように、ブラケット15は、下部15aと上部15bとが先端側に行くほど細くなる先細りの形状を有している。つまり、ブラケット15の上部15bは上端部15b1が尖った形状を有している。ブラケット15の下部15aは下端部15a1が尖った形状を有している。このように、ブラケット15は、
図1の矢印α1方向に流れる冷却材の圧力損失が少ないように、
図1の矢印α1方向に沿った流線形の形状を有している。流線形のブラケット15の形状により、冷却材の圧力損失が抑制される。
【0021】
図2A、
図2Bに示すように、炉心シュラウド8の下端部には、ブラケット15の上に設置するための取り付けフランジ8aが外側方に突き出す形状に形成されている。取り付けフランジ8aには、炉心シュラウド8の固定用のボルト16が挿通される挿通孔8bが形成されている。
【0022】
これに対応して、ブラケット15は、中央に炉心シュラウド8の取付けフランジ8aが載置される段部15c(
図2C参照)が原子炉圧力容器5の内方に向けて突き出して形成されている。ブラケット15は、外側面15sが原子炉圧力容器5の胴部5bの内壁面5b1(
図2A参照)に沿った形状に形成されている。一方、下部15aの内壁面15a2(
図2C参照)は、段部15cに近づくに従って厚くなる形状に形成されている。
図2Cに示すように、ブラケット15の段部15cには、炉心シュラウド8の固定用のボルト16が螺着される雌ねじ15dが螺刻されている。
【0023】
<他例のチムニ10と炉心シュラウド8の支持構造>
図3に、他例のチムニ10と炉心シュラウド8の支持構造の縦断面図を示す。
他例のチムニ10と炉心シュラウド8の支持構造は、チムニ10と炉心シュラウド8の両方を、原子炉圧力容器5の胴部5bに取り付け、取り外し可能な構成としている。
【0024】
他例では、炉心シュラウド8とチムニ10とを互いに固定せず、分離した構造としている。そして、炉心シュラウド8とチムニ10とを、互いに独立して原子炉圧力容器5の胴部5bに取り付け、取り外しする構成である。
【0025】
炉心シュラウド8の原子炉圧力容器5の胴部5bへの固定構造は、上述の
図2A~
図2Cと同様である。
【0026】
<チムニ10の支持構造>
【0027】
図4に、本発明の実施形態1のチムニ10の支持構造を示す。
図4Aにチムニ10の支持構造の部分縦断面図を示す。
図4Bにチムニ10の支持構造をチムニ10の内部側から見た斜視図を示す。
図4Cに、チムニ10の支持構造を成すブラケット25とボルト26との斜視図を示す。
【0028】
図4Aに示すように、原子炉圧力容器5の胴部5bに、ブラケット25が取り付けられている。
図4Cに示すように、ブラケット25は、下部25aと上部25bとが先端側に行くほど細くなる先細りの形状を有している。つまり、ブラケット25の下部25aと上部25bとは、それぞれ下端部25a1と上端部25b1とが尖った形状を有している。このように、ブラケット25は、
図1の矢印α1方向に流れる冷却材の圧力損失が低下するように、
図1の矢印α1方向に沿った流線形の形状を有している。
【0029】
図4A、
図4Bに示すように、チムニ10の下端部には、ブラケット25の上に設置するための取り付けフランジ10aが外側方に突き出して形成されている。チムニ10の取り付けフランジ10aには、炉心シュラウド8の固定用のボルト26が挿通される挿通孔10bが形成されている。
【0030】
これに対応して、ブラケット25は、中央にチムニ10の取付けフランジ10aが載置される段部25cが原子炉圧力容器5の内方に向けて突き出して形成されている。つまり、ブラケット25は、外側面25sが原子炉圧力容器5の胴部5bの内壁面5b1に沿って形成される一方、下部25aの内壁面25a2は、段部25cに近づくに従って厚くなる形状に形成されている。
【0031】
図4Cに示すように、ブラケット25の段部25cには、チムニ10の固定用のボルト26が螺着される雌ねじ25dが螺刻されている。
上述したように、炉心シュラウド8は、原子炉圧力容器5のブラケット15に取り付け、取り外し可能なボルト16で取付けられている。これにより、炉心シュラウド8は、原子炉圧力容器5に対して鉛直方向の変位が拘束されている。
チムニ10は、原子炉圧力容器5のブラケット25に取り付け、取り外し可能なボルト26で取付けられている。これにより、チムニ10は、原子炉圧力容器5に対して鉛直方向の変位が拘束されている。
【0032】
さらに、前記したように、炉心シュラウド8を原子炉圧力容器5に支持するブラケット15と、チムニ10を原子炉圧力容器5に支持するブラケット25とは、流線形状を有している。この構成により、原子炉圧力容器5の胴部5bと炉心シュラウド8またはチムニ10のすき間を流れる液相の冷却材の圧力損失が抑制され、冷却材の自然循環に必要な駆動力の低下を抑制できる。
【0033】
図1Bと同様に、原子炉圧力容器5の胴部5bには、複数のブラケット25が設けられている。そして、チムニ10は、複数の取り付けフランジ10aを介して原子炉圧力容器5の胴部5bの複数のブラケット25に固定される。
【0034】
上記構成によれば、原子炉圧力容器5の胴部5bに設けられたブラケット15、25に、炉心シュラウド8、チムニ10をボルト16、26の締結により支持する。これにより、炉心シュラウド8および/またはチムニ10が経年劣化して交換が必要になった場合に、容易に炉心シュラウド8やチムニ10を交換することができる。
【0035】
また、原子炉圧力容器5の胴部5bと炉心シュラウド8やチムニ10のすき間には冷却材が流れる構造になっている。そこで、原子炉圧力容器5の胴部5bにブラケット15やブラケット25を設けると、ブラケット15やブラケット25が冷却材の流れの抵抗となる。そのため、ブラケット15やブラケット25が冷却材の流速に影響を及ぼす可能性がある。
【0036】
特に沸騰水型自然循環炉Rでは、冷却水等の冷却材を強制的に循環させるためのジェットポンプやインターナルポンプが備わっていない。そのため、効率良く冷却水等の冷却材を循環させるためには原子炉圧力容器5と炉心シュラウド8のすき間に発生する冷却材の圧損を低減させる必要がある。このため、実施形態1は、ブラケット15、25の形状を流線形とし、原子炉圧力容器5と炉心シュラウド8やチムニ10のすき間に発生する冷却材の圧損を低減させている。
【0037】
本構成により、炉心シュラウド8やチムニ10が経年劣化し、交換が必要になった場合に、ボルト16、26の取り外し、締結により炉心シュラウド8やチムニ10を交換できる。炉心シュラウド8やチムニ10を交換可能な構成とすることにより、プラントの長期信頼性向上に寄与できる。そのため、従来の沸騰水型軽水炉では取替不可能な箇所であったシュラウドサポートと原子炉圧力容器下鏡の溶接部をなくすことができる。
【0038】
(実施形態2)
図5Aに、本発明の実施形態2の炉心シュラウド8のブラケット(35)部の構造を示した正面図を示し、
図5Bに実施形態2の炉心シュラウド8のブラケット(35)部に使用されるバネ18の斜視図を示す。
【0039】
図6Aに、本発明の実施形態2のチムニ10のブラケット(45)部の構造を示した正面図を示し、
図6Bに実施形態2のチムニ10のブラケット(45)部に使用されるバネ28の斜視図を示す。
実施形態1の原子炉圧力容器5(
図1A)は、例えば低合金鋼で製作されており、炉心シュラウド8およびチムニ10はステンレス鋼で製作されている。
【0040】
沸騰水型自然循環炉Rの運転中、原子炉圧力容器5は高温高圧になる。このため、原子炉圧力容器5、炉心シュラウド8およびチムニ10は熱膨張により径方向に膨張する。低合金鋼の原子炉圧力容器5とステンレス鋼の炉心シュラウド8およびチムニ10は、材質が異なるため、膨張率に差が生じる。さらに、原子炉圧力容器5は内圧により同じく径方向に膨張する。
【0041】
原子炉圧力容器5と炉心シュラウド8およびチムニ10との径方向の移動量の差を吸収するため、実施形態2では、
図5A、
図6Aに示すように、原子炉圧力容器5の胴部5bに取り付けられたシュラウド用ブラケット35の上端35aまたは/および原子炉圧力容器5の胴部5bに取り付けられたチムニ用ブラケット45の上端45aと、炉心シュラウド8の下端8sまたは/およびチムニ10の下端10sをそれぞれ嵌め合い構造としている。
【0042】
具体的には、
図5Aに示すように、シュラウド用ブラケット35の上端35aに凹部35bを設けている。また、炉心シュラウド8の下端8sに、凸部8s1を設けている。シュラウド用ブラケット35の上端35aには、挿通孔35a1が設けられるとともに、炉心シュラウド8の下端8sには、挿通孔8s2が設けられる。
そして、シュラウド用ブラケット35の上端35aの凹部35bに炉心シュラウド8の下端8sの凸部8s1が嵌合される。その後、ピン17がシュラウド用ブラケット35の挿通孔35a1と炉心シュラウド8の挿通孔8s2とに挿通される。これにより、炉心シュラウド8の原子炉圧力容器5に対する鉛直方向(
図5Aの上下方向)の変位はピン17により拘束される。
【0043】
そして、シュラウド用ブラケット35の上端35aの凹部35bの径方向寸法s11を、炉心シュラウド8の下端8sの凸部8s1の径方向寸法s12よりも大きくすることで、原子炉圧力容器5と炉心シュラウド8との径方向の移動量の差を吸収している。
さらに、炉心シュラウド8が原子炉圧力容器5の中心から偏心することを抑制するため、シュラウド用ブラケット35の嵌め合いの構造部にバネ18(
図5B参照)を有している。
図5Bに示すように、バネ18は例えばピン17が挿通する挿通孔18aが設けられる板ばねである。
【0044】
ピン17が挿通するバネ18を設けることで、原子炉圧力容器5と、炉心シュラウド8との径方向(横方向)の相対変位を拘束する構造としている。
同様に、
図6Aに示すように、チムニ用ブラケット45の上端45aに凹部45bを設けている。また、チムニ10の下端10sに、凸部10s1を設けている。チムニ用ブラケット45の上端45aには、挿通孔45a1が設けられるとともに、チムニ10の下端10sには、挿通孔10s2が設けられる。
【0045】
そして、チムニ用ブラケット45の上端45aの凹部45bにチムニ10の下端10sの凸部10s1が嵌合される。その後、ピン27がチムニ用ブラケット45の挿通孔45a1とチムニ10の挿通孔10s2とに挿通される。これにより、チムニ10の原子炉圧力容器5に対する鉛直方向(
図6Aの上下方向)の変位はピン27により拘束される。
【0046】
また、チムニ用ブラケット45の上端45aの凹部45bの径方向寸法s21を、チムニ10の下端10sの凸部10s1の径方向寸法s22よりも大きくすることで、原子炉圧力容器5とチムニ10との径方向の移動量の差を吸収している。
さらに、チムニ10が原子炉圧力容器5の中心から偏心することを抑制するため、チムニ用ブラケット45の嵌め合いの構造部にバネ28(
図6B)を有し、原子炉圧力容器5と、チムニ10との径方向(横方向)の相対変位を拘束する構造としている。
【0047】
上記構成によれば、原子炉圧力容器5の胴部5bに取り付けられたシュラウド用ブラケット35の上端35aまたは/および原子炉圧力容器5の胴部5bに取り付けられたチムニ用ブラケット45の上端35aと、炉心シュラウド8の下端8sまたは/およびチムニ10の下端10sが嵌め合いの構造とする。これにより、原子炉圧力容器5と炉心シュラウド8およびチムニ10との径方向の移動量の差を吸収できる。
【0048】
また、シュラウド用ブラケット35の嵌め合いの構造部にバネ18を設けることで、原子炉圧力容器5と、炉心シュラウド8との径方向の中心を同心に近付けられる。同様に、チムニ用ブラケット45の嵌め合いの構造部にバネ28を設けることで、原子炉圧力容器5と、チムニ10との径方向の中心を同心に近付けられる。
【0049】
なお、実施形態2では、弾性材としてバネ18、28を例示したが、弾性力により、バネ18、28と同様な機能を行えれば板バネ以外のコイルスプリング、ばね鋼の蛇腹等の他の弾性材を適用してもよい。
【0050】
図7に、実施形態2の炉心シュラウド8、チムニ10のブラケット部の構造の他例の正面図を示す。
図7に示すように、炉心シュラウド8のブラケット部にバネ18を設けることなく構成してもよい。同様に、チムニ10のブラケット部にバネ28を設けることなく構成してもよい。バネ18、28を設けない場合においても、原子炉圧力容器5と炉心シュラウド8およびチムニ10との径方向の移動量の差を吸収できる。
【0051】
<<その他の実施形態>>
1.実施形態では、様々な構成を説明したが、各構成を適宜組み合わせて構成してもよい。
2.本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
5 原子炉圧力容器
6 燃料集合体
7 炉心
8 炉心シュラウド(炉内構造物)
9 上部格子板
10 チムニ(炉内構造物)
11 気水分離器
12 蒸気乾燥器
13 蒸気出口ノズル
14 給水入口ノズル
15、25 ブラケット
16、26 ボルト
17 ピン(移動拘束許容手段)
18、28 バネ(弾性材)
R 沸騰水型自然循環炉