(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電磁誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H05B6/12 331
(21)【出願番号】P 2020101586
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宇留野 純平
(72)【発明者】
【氏名】庄司 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】浅永 綾太
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-026906(JP,A)
【文献】特開平07-274534(JP,A)
【文献】特開2011-018027(JP,A)
【文献】特開平10-048265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱コイルを用いて被加熱物を誘導加熱する電磁誘導加熱装置であって、
直流電圧を供給する直流電源と、
前記直流電圧を高周波の交流電圧に変換して前記加熱コイルに供給するインバータ回路と、
該インバータ回路を制御する制御回路と、
前記加熱コイルと共振コンデンサを直列接続した共振回路と、
前記共振コンデンサに流れる電流を分流する共振コンデンサ電流分流回路と、
該共振コンデンサ電流分流回路の出力を整流して増幅する整流増幅回路と、
該整流増幅回路の出力を平均化する平均化回路と、
を備え
、
前記インバータ回路は、複数のスイッチング素子を備え、
前記制御回路は、各スイッチング素子の導通期間をPWM制御することで前記加熱コイルに供給する交流電圧を制御することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記共振コンデンサ電流分流回路は、コンデンサと抵抗の直列回路で構成され、
前記抵抗に発生する電圧を前記共振コンデンサ電流分流回路の出力とすることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記平均化回路は、
第一コンデンサと第一抵抗の並列回路と、
前記第一抵抗の両端に接続した、第二抵抗と第二コンデンサの直列回路と、で構成され、
前記第二コンデンサの両端電圧を前記平均化回路の出力とすることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電磁誘導加熱装置において、
前記整流増幅回路は、
前記共振コンデンサ電流分流回路の出力端子に第一入力抵抗を介して第一オペアンプの反転入力端子を接続し、
前記第一オペアンプの反転入力端子と出力端子間に、第一ダイオード、および、第一帰還抵抗と第二ダイオードの直列回路を接続し、
前記第一オペアンプの出力端子と第二オペアンプの反転入力端子間に、前記第二ダイオードと第二入力抵抗の直列回路を接続し、
前記共振コンデンサ電流分流回路の出力端子に第三入力抵抗を介して前記第二オペアンプの反転入力端子を接続し、
前記第二オペアンプの反転入力端子と出力端子間に第二帰還抵抗を接続し、
前記第一オペアンプ及び前記第二オペアンプの非反転入力端子を接地した、
全波整流回路であることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項5】
加熱コイルを用いて被加熱物を誘導加熱する電磁誘導加熱装置であって、
直流電圧を供給する直流電源と、
前記直流電圧を高周波の交流電圧に変換して前記加熱コイルに供給するインバータ回路と、
該インバータ回路を制御する制御回路と、
前記加熱コイルと共振コンデンサを直列接続した共振回路と、
前記共振コンデンサに流れる電流を分流する共振コンデンサ電流分流回路と、
該共振コンデンサ電流分流回路の出力を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力を平均化する平均化回路と、
を備え
、
前記インバータ回路は、複数のスイッチング素子を備え、
前記制御回路は、各スイッチング素子の導通期間をPWM制御することで前記加熱コイルに供給する交流電圧を制御することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱コイル電流を検出する電流検出回路を備えた電磁誘導加熱装置(IHクッキングヒータ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火を使わずに鍋などの被加熱物を加熱するインバータ方式の電磁誘導加熱装置(IHクッキングヒータ)が広く用いられるようになってきている。IHクッキングヒータは、加熱コイルに高周波電流を流し、コイルに近接して配置された鉄やステンレスなどの材質で作られた鍋に渦電流を発生させ、鍋自体の電気抵抗により発熱させるものである。このように、IHクッキングヒータは、火を使わずに調理でき、安全性や調理環境の快適性が高いため、ガスレンジに代わって普及が急速に高まっている。
【0003】
IHクッキングヒータでは、ガラス製のトッププレートの下側に加熱コイルが配置され、加熱コイルには高周波電流を供給するインバータが接続されている。加熱コイルには約40Arms、約20k~100kHzの高周波電流が流れる。従来、加熱コイルの電流検出にはカレントトランスやシャント抵抗を用いた方法が採用されていた。
【0004】
しかしながら、カレントトランスには、コアに一次巻線及び二次巻線を備えた方式のものや、貫通型コアに二次巻線を設けた方式のものがあるが、どちらの方式も部品サイズが大きく、高コストになる問題がある。また、シャント抵抗は大電流が抵抗に流れるためシャント抵抗にジュール損失が発生し温度が上昇する問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1に示す電磁調理器では、共振コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出回路と、この電圧検出回路からの出力を微分する微分回路と、この微分回路からの出力を整流し加熱コイルに流れる電流のピーク値に追随する電流情報を出力する包絡線検出回路を備えることで、上記した問題を解決しつつ、加熱コイル電流を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インバータをPWM制御(Pulse Width Modulation制御)した場合、加熱コイルに流れる交流電流は正負でピーク値が異なる。特許文献1は、同文献の
図6、
図7等から読み取れることができるように、微分回路の出力電圧を半波整流する構成であると共に、ピーク値を検出する構成であるため、特許文献1では、インバータをPWM制御する場合には、加熱コイルに流れる実効電流を正確に検出できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するもので、インバータがPWM制御される誘導加熱装置において、共振コンデンサに流れる電流を分流して抵抗に発生する電圧を検出し、その検出値を整流し平均化することで、加熱コイルに流れる実効電流を正確に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電磁誘導加熱装置は、加熱コイルを用いて被加熱物を誘導加熱する電磁誘導加熱装置であって、直流電圧を供給する直流電源と、前記直流電圧を高周波の交流電圧に変換して前記加熱コイルに供給するインバータ回路と、該インバータ回路を制御する制御回路と、前記加熱コイルと共振コンデンサを直列接続した共振回路と、前記共振コンデンサに流れる電流を分流する共振コンデンサ電流分流回路と、該共振コンデンサ電流分流回路の出力を整流して増幅する整流増幅回路と、該整流増幅回路の出力を平均化する平均化回路と、を備え、前記インバータ回路は、複数のスイッチング素子を備え、前記制御回路は、各スイッチング素子の導通期間をPWM制御することで前記加熱コイルに供給する高周波の交流電圧を制御する電磁誘導加熱装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電磁誘導加熱装置によれば、インバータがPWM制御される場合、共振コンデンサに流れる電流を分流して抵抗で発生する電圧を検出し、その検出値を整流して平均化することで、加熱コイルに流れる実効電流を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例1の電磁誘導加熱装置のインバータ回路構成図。
【
図3】各被加熱物の抵抗値と鉄に対する抵抗値比率を示す図。
【
図4】実施例1の電磁誘導加熱装置のインバータ動作波形。
【
図5】実施例1の電磁誘導加熱装置の入力電力の周波数特性。
【
図6】実施例1の電磁誘導加熱装置の入力電力のDuty特性。
【
図8】実施例1の電磁誘導加熱装置の電流検出回路の動作波形。
【
図9】実施例1の電磁誘導加熱装置の電流検出回路と加熱コイル電流の関係を示したグラフ。
【
図11】実施例2の電磁誘導加熱装置の電流検出回路の動作波形。
【
図12】実施例2の電磁誘導加熱装置の電流検出回路と加熱コイル電流の関係を示したグラフ。
【
図14】実施例3の電磁誘導加熱装置の電流検出回路の動作波形。
【
図16】実施例4の電磁誘導加熱装置の電流検出回路の動作波形。
【
図17】実施例4の電流検出回路の回路図の変形例。
【
図18】実施例4の電磁誘導加熱装置の電流検出回路の変形例の動作波形。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いながら本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず、
図1~
図9を用いて、本発明の実施例1の電磁誘導加熱装置を説明する。
【0014】
図1は、実施例1の電磁誘導加熱装置のブロック図である。ここに示す電磁誘導加熱装置は、トッププレート上に載置した鍋などの被加熱物を3つ同時に加熱できる加熱装置であり、商用電源1からの交流電圧を変換して直流電圧を出力する電源回路10と、入力電流検出器11と、入力電流検出回路12と、3つのインバータ100(100a、100b、100c)と、ドライブ回路21と、整流増幅回路50と、平均化回路51と、制御回路60と、入力電力設定部61と、を備えている。そして、各インバータの加熱コイル31により、被加熱物を誘導加熱することができる。なお、各インバータの構成は同等であるので、以下では、第一のインバータ100aを代表して説明する。
【0015】
インバータ100aは、インバータ回路20と、共振回路30と、共振コンデンサ電流分流回路40によって構成されている。インバータ回路20は、電源回路10の正電極p点と負電極n点との間に接続されており、電源回路10から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して共振回路30に印加する。共振回路30は、加熱コイル31と共振コンデンサCrの直列回路であり、加熱コイル31にはインバータ回路20から高周波電力が供給される。共振コンデンサ電流分流回路40は、共振コンデンサCrに流れる電流を分流する。
【0016】
各インバータの共振コンデンサ電流分流回路40の出力値は、整流増幅回路50と平均化回路51を経て、制御回路60に送られる。入力電力設定部61は、使用者が入力電力(火力)を設定するインターフェースであり、設定された火力に応じた信号を制御回路60に送る。制御回路60では、整流増幅回路50からの演算結果と入力電力設定部61からの信号に応じた駆動信号を生成する。ドライブ回路21は制御回路60からの駆動信号に基づいて、各インバータのインバータ回路20を制御するドライブ信号波形を生成する。
【0017】
次に、インバータ100aの動作を説明する。一般に、IHクッキングヒータでは、共振型インバータを用いる。共振型インバータは、インバータ回路20の駆動周波数fs > 共振回路30の共振周波数frに設定し、共振負荷の特性を誘導性にすることで、共振回路30に流れる電流がインバータ回路20の出力電圧に対し遅れ位相になるように制御するインバータである。これにより、インバータ回路20での損失増加を抑制している。すなわち、
図1では、共振回路30に流れる共振電流I
Lが、インバータ回路20と共振回路30の接続点である出力端子t点の電圧に対して遅れ位相になるように制御することでインバータ回路20の損失を抑制することができる。
【0018】
しかしながら、インバータ回路20の駆動周波数fsを固定した状態で、インバータ回路20の導通期間を変化させ電力制御(PWM制御)を行うと、インバータ回路20の導通期間に共振電流ILの極性が反転し、共振電流ILがインバータ回路20の出力電圧より進み位相になる進相モードへ移行する場合もある。進相モードはインバータ回路20の損失増加を招くので、共振型のインバータでは避けなければならないモードである。
【0019】
図2は実施例1の電磁誘導加熱装置のより具体的な回路構成である。これは電源回路10を全波整流パッシブフィルタ型とし、インバータ回路20にハーブブリッジ回路構成を採用した、電磁誘導加熱装置の回路図である。
【0020】
図2において、電源回路10は、商用電源1からの交流電圧を直流電圧に変換してインバータ100aに供給するものであり、交流電圧を整流するダイオードブリッジ13と、インダクタ14と、フィルタコンデンサCfで構成される。そして、フィルタコンデンサCfの正電極p点と負電極n点との間に、インバータ100aのインバータ回路20が接続される。
【0021】
インバータ100aのインバータ回路20は、パワー半導体スイッチング素子であるIGBT(以下、スイッチング素子SW(SW1、SW2)と称する。)が直列に接続されて構成される。各スイッチング素子SWにはそれぞれダイオードD(D1、D2)が逆方向に並列接続されており、スイッチング素子SWのコレクタ端子にダイオードDのカソード端子、エミッタ端子にアノード端子が接続されている。以下では、スイッチング素子SW1とダイオードD1で構成される回路を上アームと称し、スイッチング素子SW2とダイオードD2で構成される回路を下アームと称する。また、スイッチング素子SW1、SW2にはそれぞれ並列にスナバコンデンサCs(Cs1、Cs2)が接続されている。スナバコンデンサCs1、Cs2は、スイッチング素子SW1またはスイッチング素子SW2のターンオフ時の遮断電流によって充電あるいは放電される。スナバコンデンサCs1、Cs2の容量は、スイッチング素子SW1、SW2のコレクタとエミッタ間の出力容量より十分に大きいため、ターンオフ時に両スイッチング素子SWに印加される電圧の変化は低減され、ターンオフ損失は抑制される。
【0022】
スイッチング素子SW1、SW2の接続点である出力端子t点と電源回路10の正電極p点および負電極n点には共振回路30が接続されている。この共振回路30は、加熱コイル31と共振コンデンサCr1、Cr2で構成される。ここで、出力端子t点から加熱コイル31に向かって流れる方向を共振電流ILの正方向とする。共振コンデンサ電流分流回路40は、共振回路30に流れる共振電流ILを分流する。
【0023】
また、入力電流検出器11は、商用電源1から入力される電流を検出する。入力電流検出回路12は入力電流検出器11の出力信号レベルを制御回路60の入力レベルに適した信号に変換する。
【0024】
制御回路60は、入力電流検出回路12で検出した入力電流と、共振コンデンサ電流分流回路40と整流増幅回路50を介して平均化回路51で検出した共振電流I
Lの関係から、被加熱物の材質や状態を判断し、加熱動作の開始又は停止を行う。被加熱物の判別は、磁性体と非磁性体とに区別する。区別する方法としては、加熱前に低電力(300W程度)で通電を行う。そのときの共振電流I
Lまたはスイッチング素子SW
1、SW
2の電流値(後述するIc
1、Ic
2)を検出し、検出した電流値により、被加熱物の材質を判別する。電流値が小さい場合には鉄などの磁性体の被加熱物と判別し、電流値が大きい場合は、非磁性ステンレスやアルミニウム、銅といった非磁性体の被加熱物と判別する。
図3に周波数20kHzにおける各被加熱物の抵抗値を示す。ここに示すように、非磁性ステンレスでは鉄の1/3、アルミニウム1/20、銅では約1/25の抵抗値となる。
【0025】
また、制御回路60は、入力電力設定部61からの信号に応じてインバータ回路20のスイッチング素子SW1、SW2の導通期間を、ドライブ回路21を介して設定し入力電力をPWM制御する。材質の検知は、過電流や過電圧の発生を防ぐために低電力かつ短時間で実施する必要がある。
【0026】
ここで、
図2に示すように、インバータ回路20の上アームに流れる電流をIc
1、下アームに流れる電流をIc
2、共振電流をI
Lとする。また、上アームのスイッチング素子SW
1のコレクタ・エミッタ間の電圧をVc
1、下アームのスイッチング素子SW
2のコレクタ・エミッタ間の電圧をVc
2、インバータの電源電圧をVpとする。
【0027】
次に動作を説明する。
図4に本実施例のインバータのモード1から4までの動作波形を示す。なお、何れのモードにおいても、スイッチング素子SW
1、SW
2はデッドタイム期間を設け、相補に駆動するものとする。
【0028】
図4に示すように、加熱コイル31には、正弦波状の共振電流I
Lが流れており、この共振周波数frは、式1に示すように、加熱コイル31のインダクタンス値L、共振コンデンサCr
1および共振コンデンサCr
2の合成値から決定される。
【0029】
【0030】
以下で、モード1~モード4における詳細な動作を説明する。
【0031】
(モード1)
スイッチング素子SW1の電流Ic1の電流が負から増加し0Aとなるタイミングからモード1が始まるものとする。モード1開始時にはスイッチング素子SW1に電流は流れていないが、スイッチング素子SW1はすでにオンしているため、モード1開始直後からスイッチング素子SW1に電流Ic1が流れ始める。このときスイッチング素子SW1の両端電圧(コレクタ端子、エミッタ端子間電圧Vc1)は0Vであるため、スイッチング素子SW1には損失が発生しないZVZCSターンオンとなる。
【0032】
(モード2)
スイッチング素子SW1を遮断しモード2になると、共振電流ILは、電源回路10、スナバコンデンサCs1、加熱コイル31、共振コンデンサCr1の経路と、加熱コイル31、共振コンデンサCr2、スナバコンデンサCs1の経路と、加熱コイル31、共振コンデンサCr1、スナバコンデンサCs2の経路に流れる。このとき、スナバコンデンサCs1は充電され、スナバコンデンサCs2は放電される。これにより、スイッチング素子SW1の両端電圧は緩やかに上昇し、ZVSターンオフとなり、スイッチング損失を小さくできる。
【0033】
スナバコンデンサCs1の電圧Vc1が電源電圧(p-n間電圧)以上になると、スナバコンデンサCs2の電圧Vc2は0Vとなり、ダイオードD2がオンし、共振電流ILが流れ続ける。ダイオードD2に電流が流れている期間にスイッチング素子SW2にオン信号を入力する。
【0034】
(モード3)
スイッチング素子SW2の電流Ic2の電流が負から増加し0Aとなるタイミングからモード3が始まるものとする。モード3開始時にはスイッチング素子SW2に電流は流れていないが、スイッチング素子SW2はすでにオンしているため、モード3開始直後からスイッチング素子SW2に電流Ic2が流れ始める。このときスイッチング素子SW2の両端電圧(コレクタ端子、エミッタ端子間電圧Vc2)は0Vであるため、スイッチング素子SW2には損失が発生しないZVZCSターンオンとなる。
【0035】
(モード4)
スイッチング素子SW2を遮断しモード4になると、共振電流ILは、加熱コイル31、スナバコンデンサCs2、電源回路10、共振コンデンサCr2の経路と、加熱コイル31、スナバコンデンサCs2、共振コンデンサCr1の経路と、加熱コイル31、スナバコンデンサCs1、共振コンデンサCr2の経路に流れる。このとき、スナバコンデンサCs2は充電され、スナバコンデンサCs1は放電される。これにより、スイッチング素子SW2の両端電圧は緩やかに上昇し、ZVSターンオフとなり、スイッチング損失を小さくできる。
【0036】
スナバコンデンサCs2の電圧Vc2が電源電圧(p-n間電圧)以上になると、スナバコンデンサCs1の電圧Vc1は0Vとなり、ダイオードD1がオンし、共振電流ILが流れ続ける。ダイオードD1に電流が流れている期間にスイッチング素子SW1にオン信号を入力する。
【0037】
以上のモード1から4までの動作を繰り返し、加熱コイル31に高周波電流を流すことで、加熱コイル31から磁束を発生させる。この磁束により加熱コイル31の上に配置された鍋に渦電流が流れ、鍋自体が誘導加熱によって発熱する。
【0038】
次に電力制御方法について説明する。
図5に周波数と入力電力の関係を示す。IHクッキングヒータは共振現象を利用して加熱コイルに高周波の大電流を流す。このため入力電力の周波数特性は、共振特性を示す。
図3に示すように鉄鍋の抵抗は大きいため共振Qが小さくなり、なだらかな共振特性を示す。一方、アルミや銅といった低抵抗の材質では共振Qが大きくなるため、急峻な共振特性を示す。共振Qが小さい鉄鍋などは、ゆるやかな共振特性を利用して、周波数による電力制御が可能である。
【0039】
また、
図6にスイッチング素子SW
1のDutyと入力電力の関係を示す。共振Qが小さい鉄鍋などではDutyによる電力制御も可能である。一方、アルミなどの急峻な共振特性の場合は、周波数制御やDuty制御では難しく、電源回路10の出力電圧を制御することで電力を制御することができる。
【0040】
次に、
図2と
図7を用いて、共振電流検出回路を構成する、共振コンデンサ電流分流回路40と、整流増幅回路50と、平均化回路51の詳細を説明する。
【0041】
共振コンデンサ電流分流回路40は、
図2に示すように、共振回路30の共振コンデンサCr
1と並列に接続した、コンデンサC
40と抵抗R
40の直列回路で構成される。
【0042】
本実施例の整流増幅回路50は反転増幅回路52であり、
図7に示すように、オペアンプA
52の反転入力端子に、入力抵抗(抵抗R
52a)の一端と帰還抵抗(抵抗R
52b)の一端を接続し、抵抗R
52aの他端を共振コンデンサ電流分流回路40のコンデンサC
40と抵抗R
40の接続点(VR_OUT)に接続し、抵抗R
52bの他端をオペアンプA
52の出力端子に接続し、オペアンプA
52の非反転入力端子を接地した反転増幅回路の構成である。
【0043】
また、平均化回路51は、
図7に示すように、反転増幅回路52(整流増幅回路50)の出力に、コンデンサC
51aと抵抗R
51aの並列回路と、抵抗R
51bとコンデンサC
51bの直列回路を接続した構成である。そして、平均化回路51のコンデンサC
51bの電圧が出力電圧V
outとなる。
【0044】
次に、
図8を用いて、本実施例の電流検出回路を構成する、共振コンデンサ電流分流回路40と、整流増幅回路50(反転増幅回路52)と、平均化回路51の動作について説明する。ここに示す動作波形は、上から順に、(a)上下アームのゲート電圧、(b)共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1、(c)共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUT、(d)整流増幅回路50の出力電圧Va及び平均化回路51の出力電圧V
outである。なお、動作条件は加熱負荷(鍋)がステンレス鍋、インバータの動作周波数が35kHz、上下アームの駆動信号は非対称PWMであり、上アームがDuty0.2、下アームがDuty0.8である。つまり上アームの通電時間が短く、下アームの通電時間が長い状態である。
【0045】
インバータ100aを上記条件で動作すると、共振回路30の共振コンデンサCr1のピーク電流は30A/-23Aとなる。共振コンデンサCr1を1μF、共振コンデンサ電流分流回路40のコンデンサC40を470pF、抵抗R40を150Ωとすると、共振コンデンサCr1とコンデンサC40の容量比(約1/2000)により、共振コンデンサCr1の電流ICr1の約1/2000がコンデンサC40に流れ、抵抗R40に発生する共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTのピークは2.25V/-1.7Vとなる。この出力電圧VR_OUTが整流増幅回路50に入力される。整流増幅回路50(反転増幅回路52)の増幅率Gは抵抗R52aと抵抗R52bから数式2より表される。
【0046】
【0047】
式2より整流増幅回路50(反転増幅回路52)の出力電圧Vaのピーク値は5.1Vとなる。整流増幅回路50(反転増幅回路52)の出力電圧Vaを平均化回路51より一定電圧に変換され平均化回路51の出力電圧Voutは約2Vとなる。加熱コイル31に流れる共振電流ILは共振コンデンサCr1とCr2の合計電流であるため、共振コンデンサCr1とCr2が同じコンデンサ容量であれば、共振電流ILは、共振コンデンサCr1の電流ICr1の2倍の電流になる。つまり、共振電流ILに比例した値の電圧となる。
【0048】
図9に共振電流I
Lと平均化回路51の出力電圧V
outの関係を示す。ここに示すように、材質が異なる鍋においても、共振電流I
Lと出力電圧V
outが略同等の比例関係を示しており、鍋の材質によらず出力電圧V
outから共振電流I
Lを検出することができる。
【0049】
以上のように共振コンデンサCr1に流れる電流を分流し、抵抗で発生する電圧を整流して平均化することで、インバータがPWM制御される誘導加熱装置において、カレントトランスやシャント抵抗を用いることなく、加熱コイルに流れる共振電流を検出することができる。これにより、共振電流検出回路の小型化、低コスト化に貢献することができる。
【実施例2】
【0050】
次に、
図10~
図12を用いて、本発明の実施例2の電磁誘導加熱装置を説明する。なお、前述した実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0051】
実施例1との違いは整流増幅回路50の構成が異なる点である。実施例1では、共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTを、整流増幅回路50の一種である反転増幅回路52で半波整流してから、平均化回路51で平均化する構成であったが、実施例2では、出力電圧VR_OUTを、整流増幅回路50の一種である全波整流回路53で全波整流してから、平均化回路51で平均化する構成とした。
【0052】
図10を用いて、本実施例における整流増幅回路50である、全波整流回路53の回路構成について説明する。この全波整流回路53では、共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTは、抵抗R
53aを介してオペアンプA
53aの反転入力端子に接続される。オペアンプA
53aの反転入力端子にはダイオードD
53aのカソード端子が接続され、オペアンプA
53aの出力端子にダイオードD
53aのアノード端子が接続される。また、オペアンプA
53aの反転入力端子には、抵抗R
53bを介してダイオードD
53bのアノード端子が接続され、ダイオードD
53bのカソード端子はオペアンプA
53aの出力端子に接続される。ダイオードD
53bのアノード端子は、抵抗R
53cを介して、オペアンプA
53bの反転入力端子に接続される。オペアンプA
53bの反転入力端子は、抵抗R
53eを介してオペアンプA
53bの出力端子に接続され、出力電圧VR_OUTは、抵抗R
53dを介して、オペアンプA
53bの反転入力端子に接続される。オペアンプA
53a、A
53bの非反転入力端子を接地する。そして、オペアンプA
53bの出力端子には実施例1で説明した平均化回路51が接続される。
【0053】
次に、
図11を用いて、本実施例の電流検出回路の動作について説明する。ここに動作波形は、上から順に、(a)共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1、(b)共振コンデンサ分流回路40の出力電圧VR_OUT、(c)全波整流回路53の中間電圧Vb、(d)全波整流回路53の出力電圧Vc及び平均化回路51出力電圧V
outである。
【0054】
インバータ100aを
図8と同等の条件で動作すると、共振回路30の共振コンデンサCr
1のピーク電流は30A/-23Aとなる。共振コンデンサCr
1を1μF、共振コンデンサ電流分流回路40のコンデンサC
40を1000pF、抵抗R
40を82Ωとすると、共振コンデンサCr
1とコンデンサC
40の容量比(約1/1000)により、共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1の約1/1000がコンデンサC
40に流れ、抵抗R
40に発生する共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTのピークは2.5V/-1.9Vとなる。
【0055】
出力電圧VR_OUTが負電圧になると、ダイオードD53aが導通し、ダイオードD53bがオフ状態となりダイオードD53aとD53bの順方向電圧が相殺されるため、全波整流回路53の中間電圧Vbはゼロボルトになる。一方、出力電圧VR_OUTが正電圧になると、ダイオードD53bが導通するが、ダイオードD53aがオフ状態となるため、ダイオードD53aとD53bの順方向電圧が相殺され、実施例1に記載した反転増幅回路52と同様の動作となり、抵抗R53aと抵抗R53bの関係により、抵抗R53a及びR53bを10kΩとすると、全波整流回路53の中間電圧Vb電圧は、出力電圧VR_OUTを正負反転した-2.5Vとなる。
【0056】
オペアンプA53bは、中間電圧Vbと出力電圧VR_OUTを反転増幅して加算する回路である。また、オペアンプA53bの反転入力端子と非反転入力端子はイマジナリーショートであり、非反転入力端子が接地されているため、非反転入力端子はゼロボルトになる。抵抗R53cを10kΩとし、抵抗R53dとR53eを20kΩとすると、出力電圧VR_OUTが正のピーク電圧時の2.5Vにおいては、抵抗R53dにはIa=-125μA(5V/20kΩ)の電流が流れ、中間電圧Vbは-2.5Vのため抵抗R53cにはIb=250μAの電流が流れる。オペアンプの入力端子は高インピーダンスのため電流は流れ込まず、抵抗R53eにはIaとIbの合計電流であるIcが流れる。したがって、Ic=125μAが流れるため、全波整流回路53の出力電圧Vc=2.5V(125μA×20kΩ)となる。一方、出力電圧VR_OUTが負のピーク電圧時の-1.9Vにおいては、抵抗R53dにはIa=95μA(1.9V/20kΩ)の電流が流れ、Vbは0Vのため抵抗R53cには電流が流れない。したがって、Ic=95μAが流れるため、全波整流回路53の出力電圧Vc=1.9V(95μA×20kΩ)となる。これにより、全波整流回路53の出力電圧Vcは、共振コンデンサCr1の電流ICr1を全波整流した形となる。この全波整流回路53の出力電圧Vcを平均化回路51で平均化することで共振電流ILに比例した電圧を検出することができる。このように全波整流回路53を構成することで共振電流ILの正電流および負電流の電流情報を検出することができるため、高精度に電流を検出することが可能になる。
【0057】
図12に共振電流I
Lと平均化回路51の出力電圧V
outの関係を示す。ここに示すように、材質が異なる鍋においても、共振電流I
Lと出力電圧V
outが略同等の比例関係を示しており、鍋の材質によらず出力電圧V
outから共振電流I
Lを検出することができる。
【0058】
以上のように共振コンデンサCr1に流れる電流を分流し、抵抗で発生する電圧を整流して平均化することで、インバータがPWM制御される誘導加熱装置において、カレントトランスやシャント抵抗を用いることなく、加熱コイル電流を検出することができる。これにより、共振電流検出回路の小型化、低コスト化に貢献できる。
【実施例3】
【0059】
次に、
図13及び
図14を用いて、本発明の実施例3の電磁誘導加熱装置を説明する。なお、前述した実施例との共通点は重複説明を省略する。本実施例の共振電流検出回路は、実施例2と同様に、共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTを全波整流してから平均化する構成であるが、オペアンプを単電源で駆動できる点で、実施例2と異なる。これにより、本実施例では、負電源回路を設けることなく安価な構成で加熱コイルに流れる共振電流を検出することができる。
【0060】
図13を用いて、本実施例の整流増幅回路50の回路構成ついて説明する。ここに示すように、本実施例の整流増幅回路50は、実施例1の反転増幅回路52と、加算回路54を組み合わせたものである。
【0061】
<反転増幅回路52>
反転増幅回路52は、実施例1と同等の構成である。すなわち、共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTは、抵抗R52aを介してオペアンプA52の反転入力端子に接続され、また、オペアンプA52の反転入力端子は、抵抗R52bを介してオペアンプA52の出力端子に接続される。
【0062】
<加算回路54>
加算回路54には、共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTと、反転増幅回路52の出力電圧Vdが入力される。具体的には、オペアンプA54の非反転入力端子には、反転増幅回路52の出力端子INV_AMPが抵抗R54dを介して接続され、また、共振コンデンサ電流分流回路40の出力端子VR_OUTが抵抗R54cを介して接続される。オペアンプA54の反転入力端子は、抵抗R54bを介して出力端子に接続され、また、抵抗R54aを介してグランドに接続される。オペアンプA54の出力端子には平均化回路51が接続され、オペアンプA54の出力が、本実施例の整流増幅回路50の出力電圧Veとなる。
【0063】
次に、
図14を用いて、本実施例の電流検出回路の動作について説明する。
図14に示す動作波形は、上から順に、(a)共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1、(b)共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUT、(c)反転増幅回路52の出力電圧Vd、(d)加算回路54の出力電圧Ve及び平均化回路51の出力電圧V
outである。
【0064】
インバータ100aを
図8と同等の条件で動作すると、共振回路30の共振コンデンサCr
1のピーク電流は30A/-23Aとなる。共振コンデンサCr
1を1μF、共振コンデンサ電流分流回路40のコンデンサC
40を1000pF、抵抗R
40を82Ωとすると、共振コンデンサCr
1とコンデンサC
40の容量比(約1/1000)により、共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1の約1/1000がコンデンサC
40に流れ、抵抗R
40に発生する共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTのピークは2.5V/-1.9Vとなる。この場合、抵抗R
52aを10kΩ、抵抗R
52bを20kΩとすると、反転増幅回路52の出力電圧Vd(-20k/10k)となり、3.8Vとなる。
【0065】
抵抗R54c及び抵抗R54dを10kΩとすると、オペアンプA54の非反転入力端子には出力端子VR_OUTとINV_AMP間電圧を抵抗R54cとR54dで分圧した値になる。したがって、出力電圧VR_OUTの正のピーク電圧2.5Vにおいては1.25V、負のピーク電圧-1.9Vにおいては0.95Vになる。加算回路54は非反転増幅回路構成であるため、増幅率は式3と表される。
【0066】
【0067】
オペアンプA54の非反転入力端子電圧に上記電圧が印加されると、増幅率は4倍となり、出力電圧VR_OUTの正のピーク電圧においては5V、負のピーク電圧においては3.8Vになる。これにより、共振コンデンサ電流を全波整流した形となる。加算回路54の出力電圧Veを平均化回路51で平均化することで加熱コイル31に流れる共振電流ILに比例した電圧を検出することができる。このように共振コンデンサ電流分流回路40の出力は、非反転増幅回路と反転増幅回路を介して加算されることで、全波整流した形となり、加熱コイル電流の正電流および負電流の電流情報を検出することができるため、高精度に電流を検出することが可能になる。また、負電源を用いることなく構成できるため低コスト化に有利な構成である。
【実施例4】
【0068】
次に、
図15及び
図16を用いて、本発明の実施例4の電磁誘導加熱装置を説明する。なお、前述した実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0069】
実施例1から実施例3では、オペアンプを内蔵した整流増幅回路50を利用したが、本実施例はオペアンプを用いることなく加熱コイル31に流れる共振電流ILを検出することができる構成である。これにより回路素子数を削減でき、さらに安価な構成で加熱コイル電流を検出することができる。
【0070】
本実施例の共振電流検出回路の回路構成について説明する。本実施例では、
図15に示すように、共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTを、整流回路に相当するダイオードD
15を介して、平均化回路51に接続する。
【0071】
次に、
図16を用いて、本実施例の電流検出回路の動作について説明する。ここに示す動作波形は、上から順に、(a)共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1、(b)共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUT、()ダイオードD
15出力電圧Vh及び平均化回路51出力電圧V
outである。
【0072】
インバータ100aを
図8と同等の条件で動作すると、共振回路30の共振コンデンサCr
1のピーク電流は30A/-23Aとなる。共振コンデンサCr
1を1μF、共振コンデンサ電流分流回路40のコンデンサC
40を1000pF、抵抗R
40を150Ωとすると、共振コンデンサCr
1とコンデンサC
40の容量比(約1/1000)により、共振コンデンサCr
1電流の約1/1000がコンデンサC
40とダイオードD
15を介して抵抗R
51bに流れ、抵抗R
40に発生する共振コンデンサ電流分流回路40のピーク出力電圧は3.0V/-3.6Vとなる。抵抗R
40に発生する負電圧はダイオードD
15により制限され、出力電圧Vhは正電圧のみ出力し、抵抗R
51bとコンデンサC
51bにより一定電圧に変換され、加熱コイル31に流れる共振電流I
Lの実効値に比例した出力電圧V
outを検出することができる。これにより、オペアンプを用いることなく、より安価な構成で加熱コイル31に流れる共振電流I
Lを検出することができる。
【0073】
<変形例>
次に、
図17及び
図18を用いて、実施例4の変形例に係る電磁誘導加熱装置を説明する。本変形例では、
図17に示すように、共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUTに整流回路であるダイオードD
17を並列に接続し、かつ、ダイオードD
17と並列に平均化回路51を接続した構成である。
【0074】
図18を用いて、本実施例の電流検出回路の動作について説明する。ここに示す動作波形は、上から順に、(a)共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1、(b)共振コンデンサ電流分流回路40の出力電圧VR_OUT、平均化回路51の出力電圧V
outである。
【0075】
インバータ100aを
図8と同等の条件で動作すると、共振回路30の共振コンデンサCr
1のピーク電流は30A/-23Aとなる。共振コンデンサCr
1を1μF、共振コンデンサ電流分流回路40のコンデンサC
40を1000pF、抵抗R
40を150Ωとすると、共振コンデンサCr
1とコンデンサC
40の容量比(約1/1000)により、共振コンデンサCr
1の電流I
Cr1の約1/1000がコンデンサC
40に流れ、抵抗R
40に電圧が発生する。しかし、負電流においては、抵抗R
40は負電圧を発生するが、ダイオードD
17によりダイオードD
17の順方向電圧によりクランプされる。したがて、共振コンデンサ電流分流回路40のピーク出力電圧は2.93V/-0.3Vとなる。このように、本変形例の回路構成では、抵抗R
52bとコンデンサC
52bにより一定電圧に変換され、加熱コイル31に流れる共振電流I
Lの実効値に比例した出力電圧V
outを検出することができる。これにより、オペアンプを用いることなく、より安価な構成で加熱コイル31に流れる共振電流I
Lを検出することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 商用電源
5 加熱コイル
10 電源回路
11 入力電流検出器
12 入力電流検出回路
13 ダイオードブリッジ
14 インダクタ
20 インバータ回路
21 ドライブ回路
30 共振回路
40 共振コンデンサ電流分流回路
50 整流増幅回路
51 平均化回路
60 制御回路
61 入力電力設定部
100a、100b、100c インバータ
A オペアンプ
Cf フィルタコンデンサ
Cr 共振コンデンサ
Cs スナバコンデンサ
C コンデンサ
D ダイオード
R 抵抗
SW スイッチング素子