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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】冷却庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 19/02 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
F25D19/02 Z
F25D19/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020119263
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022016015
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-01-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特願2020-119262を援用
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓真
(72)【発明者】
【氏名】大林 奨
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-247158(JP,A)
【文献】特開2014-40930(JP,A)
【文献】特開2015-224075(JP,A)
【文献】特開2007-255794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮機器(2A)および蒸発機器(2B)を含む冷却ユニット(2)が、冷却庫本体の左右の一側に設けた機器室(3)に対して、内部後方の運転位置と、機器室(3)から前方へ引き出されるメンテナンス位置との間で、前後方向に出し入れ操作可能に設けられている冷却庫であって、
蒸発機器(2B)は、蒸発器(20)および循環ファン(22)と、これら両者(20・22)を収容する断熱ケース(16)とを備えており、
断熱ケース(16)は、凝縮機器(2A)に設けた支持構造(23)で横移動可能に支持されて、断熱ケース(16)が冷却室(1)と機器室(3)を区分する断熱壁(26)に設けた固定接続体(27)に接続された状態と、断熱ケース(16)が固定接続体(27)から分離する状態とに横移動でき、
固定接続体(27)に接続された断熱ケース(16)は、機器室(3)の上部に設けた抑え枠(44)で横移動不能に受止められており、
抑え枠(44)は、断熱ケース(16)の上面に設けた段部(30)を横移動不能に受止める規制枠部(47)と、抑え枠(44)の前後に形成される逆L字状の掛止爪(45・48)とを備えており、
機器室(3)の上内面の前端および後端には枠支持体(49a・49b)が固定されており、各枠支持体(49a・49b)には左右方向に伸びるスリット状の係合溝(50)が形成されており、
メンテナンス後の冷却ユニット(2)を機器室(3)の運転位置に収容した状態において、抑え枠(44)の後側の掛止爪(48)を後側の枠支持体(49b)の係合溝(50)に掛止して、掛止爪(48)と係合溝(50)との係合部を支点部(O)とし、かつ、規制枠部(47)の後部に設けた作用点部(P)を断熱ケース(16)に形成された段部(30)に接当させた状態で、抑え枠(44)を段部(30)に向かって横揺動操作することにより、抑え枠(44)のてこ作用で断熱ケース(16)を横移動操作して固定接続体(27)に接続することができるように構成されていることを特徴とする冷却庫。
【請求項2】
抑え枠(44)は、上向きに開口する断面コ字状の規制枠部(47)を備えており、
断熱ケース(16)の段部(30)を受止める側の規制枠部(47)の側壁および底壁が切り欠かれて、後側の掛止爪(48)から前方へ離れた前記側壁の後部に作用点部(P)が形成されている請求項1に記載の冷却庫。
【請求項3】
固定接続体(27)と対向する断熱ケース(16)の側面に、ケース側接続部(32)が突出形成されており、
固定接続体(27)にケース側接続部(32)と嵌係合する接続凹部(28)が形成されており
抑え枠(44)を段部(30)に向かって横揺動操作するときの断熱ケース(16)の移動量が、固定接続体(27)の接続凹部(28)の凹み深さと同じ、或いはこれより大きく設定されている請求項1又は2に記載の冷却庫。
【請求項4】
抑え枠(44)に設けた前後の掛止爪(45・48)の縦爪壁(45a・48a)の前後間隔(L2)が、前後の枠支持体(49a・49b)に形成した係合溝(50)の前後間隔(L1)より小さく設定されており、
後側の掛止爪(48)の横爪壁(48b)の前後長さ(B2)が、前側の掛止爪(45)の横爪壁(45b)の前後長さ(B1)より大きく設定されており、
断熱ケース(16)を抑え枠(44)で横移動不能に受止めた状態において、後側の掛止爪(48)の縦爪壁(48a)と後側の枠支持体(49b)との間に、抑え枠(44)の後方へのスライド移動を許すスライド隙間(S)が確保されている請求項1から3のいずれかひとつに記載の冷却庫。
【請求項5】
抑え枠(44)が、前端に前側の掛止爪(45)が形成される断面コ字状の前枠部(46)と、前枠部(46)の後部に連続して段落ち状に形成される断面コ字状の規制枠部(47)と、規制枠部(47)の後端に形成される後側の掛止爪(48)とを一体に備えており、
前側の掛止爪(45)の縦爪壁(45a)にねじ体(52)をねじ込むためのねじ穴(51)が形成されており、
機器室(3)の前開口に、上部にねじ体(52)用の通口(53)が形成された機器室パネル(5)が着脱可能に装着されており、
機器室(3)の前開口に装着した機器室パネル(5)が、前側の掛止爪(45)の縦爪壁(45a)を締結する固定壁を兼ねている請求項1から4のいずれかひとつに記載の冷却庫。
【請求項6】
断熱ケース(16)を固定接続体(27)に接続した状態において、ケース側接続部(32)が接続凹部(28)に内嵌係合して、ケース側接続部(32)の基端周縁壁が、接続凹部(28)の開口周縁壁に密着接合している請求項3から5のいずれかひとつに記載の冷却庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器室に収容した冷却ユニットを機器室の外へ引き出して、凝縮機器や蒸発機器のメンテナンスを行うことができる冷蔵庫や冷凍庫などの冷却庫に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却庫は、本出願人の提案に係る特許文献1の冷蔵庫に開示されている。特許文献1の冷蔵庫は、冷蔵庫本体の一側の機器室に、前後スライド自在なユニットベースが設けられ、ユニットベース上に設けた凝縮ユニット(凝縮機器)および蒸発ユニット(蒸発機器)を機器室に対して出し入れできるようになっている。機器室と冷蔵室とは断熱壁で仕切られており、蒸発ユニットの断熱ケースに設けた接続部を、断熱壁に固定した接続枠(固定接続体)に内嵌することにより、機器室側に配置した断熱ケースと冷蔵室を連通させている。断熱ケースの接続部が接続枠から分離するのを防ぐために、機器室の側壁に固定した取付枠と断熱ケースの上下2個所を押付具で締結している。この押付具を取外した状態で、断熱ケースを接続枠から遠ざかる向きに横移動させて接続部を接続枠から分離すると、冷却ユニットを機器室の外へ引出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-247158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凝縮機器や蒸発機器のメンテナンス作業が終了した後は、冷却ユニットを機器室の運転位置に収容したのち、断熱ケースを横移動させて接続部を接続枠に接続する必要がある。しかし、冷却ユニットを運転位置へ戻した状態における、機器室の側壁と断熱ケースの対向隙間が小さいため、断熱ケースを接続枠に向かって横移動させるのが難しく、断熱ケースの再接続に多くの手間が掛かってしまう。
【0005】
本発明の目的は、断熱ケースを簡便に横移動させて固定接続体に再接続することができ、従って、メンテナンス後の冷却ユニットの組付け作業をより少ない手間で短時間に行うことができるようにした冷却庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、凝縮機器2Aおよび蒸発機器2Bを含む冷却ユニット2が、冷却庫本体の一側に設けた機器室3に対して、内部後方の運転位置と、機器室3から前方へ引き出されるメンテナンス位置との間で、前後方向に出し入れ操作可能に設けられている冷却庫を対象とする。蒸発機器2Bは、蒸発器20および循環ファン22と、これら両者20・22を収容する断熱ケース16とを備えている。断熱ケース16は、凝縮機器2Aに設けた支持構造23で横移動可能に支持されて、断熱ケース16が冷却室1と機器室3を区分する断熱壁26に設けた固定接続体27に接続された状態と、断熱ケース16が固定接続体27から分離する状態とに横移動できる。固定接続体27に接続された断熱ケース16は、機器室3の上部に設けた抑え枠44で横移動不能に受止められている。抑え枠44は、断熱ケース16の上面に設けた段部30を横移動不能に受止める規制枠部47と、抑え枠44の前後に形成される逆L字状の掛止爪45・48を備えている。機器室3の上内面の前端および後端には枠支持体49a・49bが固定されており、各枠支持体49a・49bには左右方向に伸びるスリット状の係合溝50が形成されている。メンテナンス後の冷却ユニット2を機器室3の運転位置に収容した状態において、抑え枠44の後側の掛止爪48を後側の枠支持体49bの係合溝50に掛止して、掛止爪48と係合溝50との係合部を支点部Oとし、かつ、規制枠部47の後部に設けた作用点部Pを断熱ケース16に形成された段部30に接当させた状態で、抑え枠44を段部30に向かって横揺動操作することにより、抑え枠44のてこ作用で断熱ケース16を横移動操作して固定接続体27に接続することができるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
抑え枠44は、上向きに開口する断面コ字状の規制枠部47を備えている。断熱ケース16の段部30を受止める側の規制枠部47の側壁および底壁が切り欠かれて、後側の掛止爪48から前方へ離れた側壁の後部に作用点部Pが形成されている。
【0008】
固定接続体27と対向する断熱ケース16の側面に、ケース側接続部32が突出形成されている。固定接続体27にケース側接続部32と嵌係合する接続凹部28が形成されている。抑え枠44を段部30に向かって横揺動操作するときの、断熱ケース16の移動量が、固定接続体27の接続凹部28の凹み深さと同じか、これより大きく設定されている。
【0009】
抑え枠44に設けた前後の掛止爪45・48の縦爪壁45a・48aの前後間隔L2は、前後の枠支持体49a・49bに形成した係合溝50・50の前後間隔L1より小さく設定されている。後側の掛止爪48の横爪壁48bの前後長さB2は、前側の掛止爪45の横爪壁45bの前後長さB1より大きく設定されている。断熱ケース16を抑え枠44で横移動不能に受止めた状態において、後側の掛止爪48の縦爪壁48aと後側の枠支持体49bとの間に、抑え枠44の後方へのスライド移動を許すスライド隙間(S)が確保されている。
【0010】
抑え枠44が、前端に前側の掛止爪45が形成される断面コ字状の前枠部46と、前枠部46の後部に連続して段落ち状に形成される断面コ字状の規制枠部47と、規制枠部47の後端に形成される後側の掛止爪48とを一体に備えている。前側の掛止爪45の縦爪壁45aにねじ体52をねじ込むためのねじ穴51が形成されている。機器室3の前開口に、上部にねじ体52用の通口53が形成された機器室パネル5が着脱可能に装着されている。機器室3の前開口に装着した機器室パネル5が、前側の掛止爪45の縦爪壁45aを締結する固定壁を兼ねている。
【0011】
断熱ケース16を固定接続体27に接続した状態において、ケース側接続部32が接続凹部28に内嵌係合して、ケース側接続部32の基端周縁壁が、接続凹部28の開口周縁壁に密着接合している。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、冷却ユニット2を機器室3に出し入れできる冷却庫において、蒸発器20および循環ファン22を収容する断熱ケース16を、凝縮機器2Aに設けた支持構造23で横移動可能に支持して、断熱ケース16を断熱壁26の固定接続体27に接続し、あるいは固定接続体27から分離できるようにした。また、固定接続体27に接続された断熱ケース16を、機器室3の上部に設けた抑え枠44で横移動不能に受止めて、断熱ケース16が固定接続体27から分離するのを規制できるようにした。さらに、メンテナンス後の冷却ユニット2を機器室3の運転位置に収容した状態において、抑え枠44のてこ作用で断熱ケース16を横移動操作して、固定接続体27に再接続できるようにした。こうした冷却庫によれば、機器室3の前開口の側から抑え枠44を操作して、抑え枠44のてこ作用で断熱ケース16を簡便に、しかも確実に横移動させて、固定接続体27に再接続することができる。したがって、メンテナンス後の冷却ユニット2の再組付け作業をより少ない手間と時間で行うことができる。
【0013】
断熱ケース16の段部30を受止める側の規制枠部47の側壁および底壁を切り欠いて、側壁の後部に作用点部Pを形成するようにした。これによれば、側壁を利用して作用点部Pを形成できるのでコストの削減に寄与できる。また、後側の掛止爪48から前方へ離れた位置に作用点部Pを形成するので、抑え枠44の力点部Fに加えた操作力を増幅して作用点部Pに伝えることができる。因みに、段部30を受止める側の側壁が後側の掛止爪48の近傍位置まで形成されている場合には、例えば突起などの別部品を側壁に設けて作用点部Pを形成する必要があり、抑え枠44の構造が複雑化しコストが嵩む。
【0014】
固定接続体27と対向する断熱ケース16の側面にケース側接続部32を突出形成し、固定接続体27にケース側接続部32と嵌係合する接続凹部28を形成すると、断熱壁26に対して断熱ケース16を容易に位置決めできる。そのうえで、抑え枠44を段部30に向かって横揺動操作するときの、断熱ケース16の移動量が、固定接続体27の接続凹部28の凹み深さと同じか、これよりわずかに大きくなるようにする。これによれば、抑え枠44を段部30に向かって一度だけ横揺動操作するだけで、ケース側接続部32を接続凹部28に過不足なく容易に嵌め込むことができる。
【0015】
抑え枠44に設けた前後の掛止爪45・48の縦爪壁45a・48aの前後間隔L2を、前後の枠支持体49a・49bに形成した係合溝50の前後間隔L1より小さく設定し、また、後側の掛止爪48の横爪壁48bの前後長さB2を、前側の掛止爪45の横爪壁45bの前後長さB1より大きく設定する。これによれば、断熱ケース16を抑え枠44で横移動不能に受止めた状態において、後側の掛止爪48の縦爪壁48aと後側の枠支持体49bとの間に、抑え枠44の後方へのスライド移動を許すスライド隙間(S)を確保できる。したがって、抑え枠44を機器室3の前開口の側から、所定の手順に従って前後にスライド操作するだけで、抑え枠44を前後の枠支持体49a・49bに対して簡便に着脱することができる。
【0016】
前側の掛止爪45が形成される断面コ字状の前枠部46と、前枠部46の後部に連続して段落ち状に形成される断面コ字状の規制枠部47と、規制枠部47の後端の掛止爪48で抑え枠44を構成し、前側の掛止爪45の縦爪壁45aにねじ体52用のねじ穴51を形成するようにする。また、機器室3の前開口に、その上部にねじ体52用の通口53が形成された機器室パネル5が着脱可能に装着し、機器室3の前開口に装着した機器室パネル5が、前側の掛止爪45の縦爪壁45aを締結する固定壁を兼ねるように構成する。これによれば、掛止爪45の縦爪壁45aを利用して、抑え枠44を前後移動不能に固定でき、また、機器室3の前面を閉塞する機器室パネル5を固定壁として利用できるので、抑え枠44を前後移動不能に固定する構造が別途設けられている場合に比べて、抑え枠44の固定構造を簡素化してコストの削減に寄与できる。
【0017】
断熱ケース16を固定接続体27に接続した状態において、ケース側接続部32が接続凹部28に内嵌係合して、ケース側接続部32の基端周縁壁が、接続凹部28の開口周縁壁に密着接合していると、断熱ケース16と固定接続体27を気密度が高い状態で接続して、両者16・27の接続部分から、冷気が漏れ出るのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)~(c)は、本発明の実施例に係る冷却庫における、抑え枠のてこ作用を示す動作説明図である。
図2】冷却庫の正面図である。
図3】冷却庫の機器室の内部を示す縦断側面図である。
図4】冷却庫の蒸発機器を示す縦断正面図である。
図5】断熱ケースを固定接続体から取外した状態の側面図である。
図6】冷却ユニットをメンテナンス位置へ取り出した状態を示す分解側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例)図1ないし図6は本発明の冷却庫をコールドテーブル型の冷蔵庫に適用した実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2に示すように、冷蔵庫は四角箱状に構成されて、その内部の右半側に冷蔵室(冷却室)1が区画され、冷蔵室1の左に冷却ユニット2を収容する機器室3が設けられている。冷蔵室1は断熱壁で囲まれており、前面の開口が揺動開閉するドア4で塞がれている。同様に、機器室3の前開口は着脱可能な機器室パネル5で塞がれている。機器室パネル5の上部には、冷却ユニット2の運転状態を制御する制御パネル6が配置されており、同パネル5の下部には、機器室3の内部に冷却風を取り入れるためのルーバー構造7が開口されている。冷蔵室1の底面には排水トラップ8と排水ホース9が設けられており、冷蔵室1内のドレン水と機器室3内のドレン水は、排水トラップ8で受止めたのち排水ホース9で排水路に放出される。
【0020】
図3において、冷却ユニット2は凝縮機器2Aと蒸発機器2Bで構成されており、両機器2A・2Bは一体化されてユニットベース10上に設けられている。ユニットベース10は、機器室3の底壁の左右に固定したガイド枠で出し入れ可能に案内支持されているので、冷却ユニット2は、機器室3内に収容される内部後方側の運転位置と、図6に示すように機器室3から前方側へ引き出されたメンテナンス位置との間で、前後方向に出し入れできる。
【0021】
凝縮機器2Aは、ユニットベース10に固定される圧縮機13、凝縮器14および送風ファン15などで構成されている。また、蒸発機器2Bは、四角箱状の断熱ケース16と、断熱ケース16の内部を入口室17と出口室18に区分する区分パネル19と、入口室17に収容される蒸発器20および除霜用ヒーター21と、区分パネル19の通風口に装着される循環ファン22を備えている。断熱ケース16は、後述する凝縮機器2Aを構成する送風ファン15の風洞壁56の上壁に設けた支持構造23で支持されている。
【0022】
図4に示すように、冷蔵室1と機器室3を区分する断熱壁26には、断熱ケース16を気密状に接合するための固定接続体27が固定されている。固定接続体27は、発泡断熱材を四角枠状に成型して構成されており、その内部に接続凹部28が形成されている。断熱ケース16は、それぞれプラスチック成型品からなる外ケース16aおよび内ケース16bの間に発泡断熱材16cを充填して構成されている。断熱ケース16には、外ケース16aの上壁に後述する抑え枠44で受止められる、垂直壁からなる段部30、および段落面31が形成されている。また、固定接続体27と対向する断熱ケース16の側面には四角枠状のケース側接続部32が突出形成されており、出口室18に臨むケース側接続部32の上部内面が冷気の吹出口33になっている。
【0023】
冷却ユニット2およびユニットベース10が、機器室3内の運転位置に収容された状態(図3の状態)では、断熱ケース16のケース側接続部32が固定接続体27の接続凹部28に内嵌して、吹出口33が断熱壁26の冷蔵室1側に設けたルーバー口34と正対している。循環ファン22に吸込まれた冷蔵室1内の冷気は、断熱壁26に沿って形成された冷気通路35を介して入口室17へ流入し、蒸発器20を通過する間に冷却されたのち、吹出口33からルーバー口34を介して冷蔵室1内へ放出される。断熱ケース16の前面には、制御箱36が固定されている(図3参照)。
【0024】
図3に示すように、蒸発器20の下方には、内ケース16bと一体のドレンパン38が配置されている。このドレンパン38と先に説明した排水トラップ8との間に、蒸発器20からドレンパン38に流下したドレン水を排出する排水構造が設けられている。排水構造は、ドレンパン38から導出される内ドレンホース39と、機器室3の底壁から庫外へ導出されて排水トラップ8に接続される外ドレンホース40と、内ドレンホース39の導出端に接続される排水ソケット41と、外ドレンホース40が接続される排水受42とを備えている。排水ソケット41はユニットベース10に固定されており、冷却ユニット2が機器室3の前部に引き出されるとき、排水ソケット41はユニットベース10に同行して移動する。
【0025】
固定接続体27に接続された断熱ケース16を横移動不能に受止め保持するために、機器室3の上部に抑え枠44が設けられている。図5に示すように抑え枠44は、前端に掛止爪45が形成される断面コ字状の前枠部46と、前枠部46の後部に連続して段落ち状に形成される断面コ字状の規制枠部47と、規制枠部47の後端に形成される掛止爪48を一体に備えたプレス成型品からなる金具である。前後の掛止爪45・48は、縦爪壁45a・48aと横爪壁45b・48bとで逆L字状に形成されており、各爪45・48が機器室3の上部(上内面)前後に固定した枠支持体49a・49bの係合溝50・50で支持されて、断熱ケース16を受止め保持する。前側の掛止爪45の縦爪壁45aにはねじ穴51が形成されている。
【0026】
断熱ケース16の段部30を受止める側の規制枠部47の側壁および底壁は切り欠かれて、後側の掛止爪48から前方へ離れた規制枠部47の側壁の後端に作用点部Pが形成されている。断熱ケース16を抑え枠44で横移動不能に受止めた状態においては、段部30が規制枠部47の側壁で受止められて横移動が規制され、段部30に連続する段落面31が規制枠部47の底壁で受止められて上方移動が規制されている。この状態の抑え枠44は、前側の掛止爪45の縦爪壁45aが前側の枠支持体49aの後面で受止められ、同枠支持体49aの前面で受止められた機器室パネル5にビス(ねじ体)52で締結されている。そのために、機器室パネル5の上部にはビス52用の通口53が形成されており、該通口53を介して機器室パネル5の前側からねじ穴51にビス52がねじ込まれている。このように、機器室パネル5は、前側の掛止爪45の縦爪壁45aを締結する固定壁を兼ねている。また、ビス52は機器室パネル5の固定構造を兼ねている。
【0027】
図3に示すように、機器室3の上内面の前端および後端には枠支持体49a・49bが固定されており、各枠支持体49a・49bには左右方向に伸びるスリット状の係合溝50が形成されている。図1に示すように、抑え枠44に設けた前後の掛止爪45・48の縦爪壁45a・48aの前後間隔L2は、前後の枠支持体49a・49bに形成した係合溝50の前後間隔L1より小さく設定されている。また、後側の掛止爪48の横爪壁48bの前後長さB2は、前側の掛止爪45の横爪壁45bの前後長さB1より大きく設定されている。さらに、断熱ケース16を抑え枠44で横移動不能に受止めた状態(図1(c)の状態)において、後側の掛止爪48の縦爪壁48aと後側の枠支持体49bとの間には、抑え枠44の後方へのスライド移動を許すスライド隙間Sが確保されている。スライド隙間Sは、前側の掛止爪45の横爪壁45bの前後長さB1よりわずかに大きく設定されている。こうした抑え枠44によれば、ビス52を取外して前側の掛止爪45を機器室パネル5から分離した状態で、抑え枠44を機器室3の後方へスライド操作することにより、前側の掛止爪45を前側の枠支持体49aの係合溝50から分離でき、こののち抑え枠44を機器室3の左方へ揺動させ、さらに前方へスライド操作することにより、後側の掛止爪48を後側の枠支持体49bの係合溝50から分離して、抑え枠44の全体を機器室3の外へ取出すことができる。
【0028】
図3および図4に示すように蒸発機器2B用の支持構造23は、凝縮器14の周囲を囲む送風ファン15の風洞壁56の上壁に固定される支持枠57と、支持枠57の前面に固定される断面がL字状のブラケット58とを備えている。断熱ケース16の下面前部が支持枠57で支持された状態で、断熱ケース16の前面下部がブラケット58に接合されて、左右一対のビス59でブラケット58に締結固定されている。ブラケット58には、左右横長のビス溝60が形成されているので、ビス59を緩めることで断熱ケース16をビス59ごとビス溝60に沿って横スライドできる。
【0029】
冷却ユニット2を機器室3から前方のメンテナンス位置へ引き出すときには、抑え枠44用のビス52を取外し、さらに機器室パネル5をユニットベース10の前壁から分離して、機器室3の前面を開放する。次に、抑え枠44を先に説明した要領で機器室3の前方へ抜き外す。この状態の蒸発機器2Bは、図4に示すように断熱ケース16のケース側接続部32が固定接続体27の接続凹部28にはめ込まれており、断熱ケース16を固定する一対のビス59はビス溝60の右半側に位置している。次にビス59を緩めたのち、図5に示すように断熱ケース16を左方へスライド操作して、ケース側接続部32を接続凹部28から分離する。以上の作業が終了した状態で、ユニットベース10を機器室3から前方へ引出すことにより、冷却ユニット2の全体を図6に示すように冷蔵庫から分離することができる。
【0030】
引き出された冷却ユニット2のメンテナンスが終了したら、上記の逆の手順に従ってユニットベース10を運転位置へ戻し、断熱ケース16のケース側接続部32を接続凹部28に再接続する。しかし、この状態の断熱ケース16と機器室3の側壁間の隙間D(図5参照)は片腕が入る程度の隙間でしかなく、断熱ケース16を固定接続体27に向かって横移動させるのに多くの手間が掛かってしまう。なお、冷却ユニット2を機器室3の運転位置に収容した状態においては、図1(a)に示すように平面視における断熱ケース16の段部30が枠支持体49bの係合溝50の略中央に位置しており、ケース側接続部32は接続凹部28の開口面と正対している。
【0031】
上記のような作業のしにくさを解消するために、抑え枠44を利用して断熱ケース16を右方へスライド操作し、ケース側接続部32を接続凹部28に再接続できるようにしている。詳しくは図1(a)に示すように、抑え枠44の後側の掛止爪48の横爪壁48bを後側の枠支持体49bの係合溝50に掛止し、抑え枠44を斜めにして規制枠部47の側壁後部の作用点部Pを断熱ケース16の段部30に接当させた状態で、抑え枠44の前部の力点部Fを段部30に接近する向きに横揺動操作する。これにより、後側の掛止爪48の横爪壁48bと後側の係合溝50との係合部を支点部Oとし、断熱ケース16の段部30と規制枠部47との接触部を作用点部Pとする抑え枠44のてこ作用で、断熱ケース16を固定接続体27に向かって横移動させて、ケース側接続部32を接続凹部28に内嵌接続することができる。
【0032】
上記の接続状態では、ケース側接続部32の基端周縁壁が、接続凹部28の開口周縁壁に密着接合しているので、断熱ケース16を固定接続体27に対して気密状に接合することができる。こののち、図1(b)に示すように抑え枠44を段部に沿って前方へスライドさせて、図1(c)に示すように前側の掛止爪45の横爪壁45bを前側の枠支持体49aの係合溝50に掛止し、支持構造23のビス59を外ケース16aにねじ込んで、断熱ケース16を固定する。最後に、機器室パネル5を機器室3の前開口に装着して、図3に示すように前側の掛止爪45の縦爪壁45aと機器室パネル5とを対向させ、これら両者をビス52で締結して抑え枠44を移動不能に固定する。
【0033】
上記のように、断熱ケース16の段部30を抑え枠44のてこ作用で横移動させるときは、図1(a)に示すように、抑え枠44の力点部F側のモーメントアームM1が、抑え枠44の作用点部P側のモーメントアームM2に比べて十分に大きいので、断熱ケース16を軽快に横移動させて固定接続体27に再接続することができる。また、抑え枠44を段部30に向かって横揺動操作するときの、断熱ケース16の移動量は、固定接続体27の接続凹部28の凹み深さと同じか、これよりわずかに大きくするので、抑え枠44を段部30に向かって一度だけ横揺動操作するだけで、ケース側接続部32を接続凹部28の嵌め込むことができる。
【0034】
以上のように構成した冷蔵庫によれば、メンテナンス後の冷却ユニット2を機器室3の運転位置に収容した状態において、抑え枠44のてこ作用で断熱ケース16を横移動操作して、固定接続体27に再接続できる。つまり、機器室3の前開口の側から抑え枠44を操作して、抑え枠44のてこ作用で断熱ケース16を簡便に、しかも確実に横移動させて、固定接続体27に再接続することができる。従って、メンテナンス後の冷却ユニット2の再組付け作業をより少ない手間と時間で行うことができる。
【0035】
断熱ケース16の段部30を受止める側の規制枠部47の側壁および底壁を切り欠いて、側壁の後部に作用点部Pを形成するようにした。これによれば、側壁を利用して作用点部Pを形成できるのでコストの削減に寄与できる。また、後側の掛止爪48から前方へ離れた位置、つまり支点部Oと力点部Fの間に作用点部Pを形成するので、抑え枠44の力点部Fに加えた操作力を増幅して作用点部Pに伝えることができる。因みに、段部30を受止める側の側壁が後側の掛止爪48の近傍位置まで形成されている場合には、例えば突起などの別部品を側壁に設けて作用点部Pを形成する必要があり、抑え枠44の構造が複雑化しコストが嵩む。
【0036】
固定接続体27と対向する断熱ケース16の側面にケース側接続部32を突出形成し、固定接続体27にケース側接続部32と嵌係合する接続凹部28を形成したので、断熱壁26に対して断熱ケース16を容易に位置決めできる。そのうえで、抑え枠44を段部30に向かって横揺動操作するときの、断熱ケース16の移動量が、固定接続体27の接続凹部28の凹み深さと同じか、これよりわずかに大きくなるようにした。これによれば、抑え枠44を段部30に向かって一度だけ横揺動操作するだけで、ケース側接続部32を接続凹部28に過不足なく容易に嵌め込むことができる。
【0037】
前後の掛止爪45・48の前後間隔L2と、前後の係合溝50・50の前後間隔L1が不等式(L1>L2)を満足できるようにし、また、前後の掛止爪45・48の横爪壁45b・48bの前後長さB1・B2が不等式(B2>B1)を満足できるようにした。これによれば、断熱ケース16を抑え枠44で横移動不能に受止めた状態において、後側の掛止爪48の縦爪壁48aと後側の枠支持体49bとの間に、抑え枠44の後方へのスライド移動を許すスライド隙間Sを確保することができるので、抑え枠44を機器室3の前開口の側から、所定の手順に従って前後にスライド操作するだけで、抑え枠44を枠支持体49a・49bに対して簡便に着脱することができる。
【0038】
前側の掛止爪45が形成される断面コ字状の前枠部46と、前枠部46の後部に連続して段落ち状に形成される断面コ字状の規制枠部47と、規制枠部47の後端の掛止爪48で抑え枠44を構成し、前側の掛止爪45の縦爪壁45aにビス52用のねじ穴51を形成するようにした。また、機器室3の前開口に、その上部にビス52用の通口53が形成された機器室パネル5が着脱可能に装着し、機器室3の前開口に装着した機器室パネル5が、前側の掛止爪45の縦爪壁45aを締結する固定壁を兼ねるように構成した。これによれば、掛止爪45の縦爪壁45aを利用して、抑え枠44を前後移動不能に固定でき、また、機器室3の前面を閉塞する機器室パネル5を固定壁として利用できるので、抑え枠44を前後移動不能に固定する構造が別途設けられている場合に比べて、抑え枠44の固定構造を簡素化してコストの削減に寄与できる。
【0039】
断熱ケース16を固定接続体27に接続した状態において、ケース側接続部32が接続凹部28に内嵌係合して、ケース側接続部32の基端周縁壁が、接続凹部28の開口周縁壁に密着接合するように構成したので、断熱ケース16と固定接続体27を気密度が高い状態で接続して、両者の接続部分から、冷気が漏れ出るのを確実に防止できる。
【0040】
上記の実施例では、段部30を受止める側の規制枠部47の側壁および底壁を切り欠いて、側壁の後部が作用点部Pになるようにしたが、その必要はなく、規制枠部47の側壁に段部30に先当りする着脱式或いは可動式の突起を設けて作用点部Pとしてもよい。その場合には、抑え枠44を利用して断熱ケース16を固定接続体27に接続したのち、一旦抑え枠44を機器室3の外へ取出して、突起を側壁から取り外すか、突起を段部30と接当しない姿勢に切換えたのち、抑え枠44を枠支持体49a・49bに再装着して、規制枠部47の側壁全体で段部30を受止めるようにするとよい。本発明の冷却庫は、冷蔵庫以外に冷凍庫や冷凍冷蔵庫にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
2 冷却ユニット
2A 凝縮機器
2B 蒸発機器
3 機器室
10 ユニットベース
16 断熱ケース
20 蒸発器
22 循環ファン
23 支持構造
26 断熱壁
27 固定接続体
28 接続凹部
30 段部
31 段落ち面
32 ケース側接続部
44 抑え枠
45・48 掛止爪
47 規制枠部
49a 前側の枠支持体
49b 後側の枠支持体
50 係合溝
52 ビス(ねじ体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6