(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】立ち座り支援装置及び歩行器
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20231206BHJP
A61H 3/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61H1/02 N
A61H3/04
(21)【出願番号】P 2020158019
(22)【出願日】2020-09-22
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520257337
【氏名又は名称】株式会社IKS
(73)【特許権者】
【識別番号】510127620
【氏名又は名称】池原工業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】大島 徹
(72)【発明者】
【氏名】小柳 健一
(72)【発明者】
【氏名】村林 知明
(72)【発明者】
【氏名】池原 康次
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 等
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0073743(KR,A)
【文献】国際公開第2017/134815(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/017803(WO,A1)
【文献】特開2013-143987(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042703(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/122752(WO,A1)
【文献】特開2017-136681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の上肢を支持する支持フレームと、
前記支持フレームを前後傾斜可能に、且つ昇降可能に支持するアクチュエータと、
起立支援において前記アクチュエータに前傾支援動作、伸展支援動作及び自律支援動作を続いて行わせる制御手段を備え、
前記起立支援における自律支援動作は、使用者の起立時における重心を前方へ崩れた状態から後方へ導くことにより、自力で自分自身の姿勢を維持させるきっかけを与えるべく、伸展支援動作が完了した時点から、前記アクチュエータにより前記支持フレームを後傾に導く動作であることを特徴とする立ち座り支援装置。
【請求項2】
使用者の上肢を支持する支持フレームと、
前記支持フレームを前後傾斜可能に、且つ昇降可能に支持するアクチュエータと、
着座支援において前記アクチュエータに前傾支援動作、屈曲支援動作及び自律支援動作を続いて行わせる制御手段を備え、
前記着座支援における自律支援動作は、使用者の着座時における重心を前方へ崩れた状態から後方へ導くことにより、自力で自分自身の姿勢を維持させるきっかけを与えるべく、屈曲支援動作が完了した時点から、前記アクチュエータにより前記支持フレームを後傾に導く動作であることを特徴とする立ち座り支援装置。
【請求項3】
使用者の上肢を支持する支持フレームと、
前記支持フレームを前後傾斜可能に、且つ昇降可能に支持するアクチュエータと、
起立支援において前記アクチュエータに前傾支援動作、伸展支援動作及び自律支援動作を続いて行わせ、着座支援において前記アクチュエータに前傾支援動作、屈曲支援動作及び自律支援動作を続いて行わせる制御手段を備え、
前記自律支援動作は、使用者の重心を前方へ崩れた状態から後方へ導くことにより、自力で自分自身の姿勢を維持させるきっかけを与えるべく、伸展支援動作又は屈曲支援動作が完了した時点から、前記アクチュエータにより前記支持フレームを後傾に導く動作であることを特徴とする立ち座り支援装置。
【請求項4】
前記アクチュエータとして、
前記制御手段の制御により前記支持フレームの前部を昇降させる前昇降アクチュエータと、
前記制御手段の制御により前記支持フレームの後部を昇降させる後昇降アクチュエータを備えることを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の立ち座り支援装置。
【請求項5】
前記アクチュエータとして、
前記制御手段の制御により前記支持フレームを前後に進退させる進退アクチュエータと、
前記制御手段の制御により前記進退アクチュエータの前部を昇降させる前昇降アクチュエータと、
前記制御手段の制御により前記進退アクチュエータの後部を昇降させる後昇降アクチュエータを備えることを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の立ち座り支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の立ち座り支援装置と、当該立ち座り支援装置を支持する歩行ベースを具備することを特徴とする歩行器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の立ち座りを支援する装置に関するものであって、特に、立ち座り時における膝の屈伸の際の負荷の緩和等を目的とした前駆動作への誘導を伴うものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下肢のケガ等によるリハビリテーション中の者や、老化等により下肢の機能が低下した者の立ち座りや歩行を支援する装置が種々紹介されている。
【0003】
例えば、伸縮自在な支柱を前倒れに傾斜して備え、この支柱を内蔵の油圧シリンダで伸縮させることにより、支柱上端の腕掛け部に寄りかかった使用者を立ち座りさせるようにした構成を採るもの(下記特許文献1参照)であり、或いは、伸縮部が縮むとリンク機構の支点が伸縮部の伸長量に応じて移動するものであって、接続部材で連結された第1部材と第2部材との接続角度θが大きくなり、使用者がつかまっている支持フレームが起き上がる構成を採ることによって、立ち座り時の安定性と歩行時におけるコンパクトさを考慮したもの(下記特許文献2参照)等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-102795号公報
【文献】特開2016-93221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献に記載の歩行器の立ち座り支援機構は、いずれも腕掛け部に寄り掛かった使用者の上肢を、力尽くで吊り上げて立ち座りさせる構成を採っているため、下肢の衰えや負傷をかかえる者にとっては、腕掛け部に掴まって身体を引き上げる上肢の負担が大きく、上肢の掴まり力が弱い者にとっては、更に、衰弱や負傷に耐えて踏ん張ろうとする際の心身の負担が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、立ち座りの際に使用者の身体の屈伸に掛かる負荷を軽減できる立ち座り支援装置及び歩行器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明による立ち座り支援装置は、使用者の上肢を支持する支持フレームと、前記支持フレームを前後傾斜可能に、且つ昇降可能に支持するアクチュエータと、起立支援において前記アクチュエータに前傾支援動作及びそれに続く伸展支援動作を行わせる制御手段を備えることを特徴とする。
前記アクチュエータに前記伸展支援動作に続く自律支援動作を行わせる制御手段を備える構成を採ることができる。
【0008】
本発明は、使用者の上肢を支持する支持フレームと、前記支持フレームを前後傾斜可能に、且つ昇降可能に支持するアクチュエータと、着座支援において前記アクチュエータに、前傾支援動作及びそれに続く屈曲支援動作を行わせる制御手段を備える構成を採ることができる。
前記アクチュエータに前記屈曲支援動作に続く自律支援動作を行わせる制御手段を備える構成を採ることができる。
【0009】
上記立ち座り支援装置は、前記アクチュエータとして、前記制御手段の制御により前記支持フレームの前部を昇降させる前昇降アクチュエータと、前記制御手段の制御により前記支持フレームの後部を昇降させる後昇降アクチュエータを備える立ち座り支援装置として構成することができる。
【0010】
上記構成の他、上記立ち座り支援装置は、前記アクチュエータとして、前記制御手段の制御により、前記支持フレームを前後に進退させる進退アクチュエータと、前記制御手段の制御により前記進退アクチュエータの前部を昇降させる前昇降アクチュエータと、前記制御手段の制御により前記進退アクチュエータの後部を昇降させる後昇降アクチュエータを備える構成を採ることができる。
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明による立ち座り歩行器は、上記いずれかの立ち座り支援装置と、当該立ち座り支援装置を支持する歩行ベースを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による立ち座り支援装置によれば、起立支援においては前傾支援動作及び伸展支援動作を行わせ、着座支援においては前傾支援動作及び屈曲支援動作を行わせる様に、前昇降アクチュエータ及び後昇降アクチュエータ、更には、進退アクチュエータ等からなるアクチュエータを制御することによって、起立支援又は着座支援の際、前傾支援動作で使用者の重心を僅かに前方へシフトさせる前駆動作に誘導し、身体を伸展又は屈曲させる際に上肢又は下肢が重力に抗する負担を大幅に軽減できる支援が可能となる。
【0013】
更に、前記伸展支援動作又は屈曲支援動作の後に自律支援動作を行わせる様にアクチュエータを制御することによって、立ち座り支援装置によって崩されたバランスを無理なく回復させ、自力で自分自身の姿勢を維持できる姿勢をつくるきっかけを与えることができる。
【0014】
加えて、その様な支援動作は、負担の少ない適切な立ち座り動作の訓練ともなり、使用者が車椅子に頼る生活から早期に離脱するための支援装置として使用者をサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による立ち座り支援装置及び歩行器で行われる(A)起立支援及び(B)着座支援の一態様を示す説明図である。
【
図2】本発明による立ち座り支援装置及び歩行器で行われる(A)起立支援及び(B)着座支援の一態様を示す説明図である。
【
図3】本発明による立ち座り支援装置及び歩行器の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明による立ち座り支援装置及び歩行器の一例を示す側面図である。
【
図5】本発明による立ち座り支援装置及び歩行器の一例を示す背面図である。
【
図6】本発明による立ち座り支援装置及び歩行器の一例を示す平面図である。
【
図7】本発明による立ち座り支援装置及び歩行器で用いられるアクチュエータの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による立ち座り支援装置及び当該立ち座り支援装置を採用した歩行器の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図に示す例は、立ち座り支援装置Aと、それを支持する歩行ベースBを備える歩行器である。
【0017】
前記歩行ベースBは、アルミニウム合金等の高強度で軽量な素材からなる左ベースフレームLBと右ベースフレームRBが平行に配置され、両者の先端部を、同素材からなる前ベースフレームFBで連結したものである。
前記左ベースフレームLB及び右ベースフレームRBは、前方に旋回自在な舵取り輪MWを備え、後方に直進状態に固定された歩行輪SWを備える(
図3参照)。
【0018】
前記歩行ベースBは、左ベースフレームLBと右ベースフレームRBにおける歩行輪SWの直前に、その制動と解除を足で操作できるブレーキBRを備える。
前記ブレーキBRは、上向きに付勢され鉛直方向に進退する棒状の制動脚αと、前記制動脚αに弾性的に干渉し当該制動脚αの支持高を維持するリング状のストッパβを解除レバー付きで備える構成を採るが、ブレーキBRの構成は適宜選択可能である。
【0019】
前記前ベースフレームFBの長さは、使用者の肩幅と胸幅の中間長に設定され、左ベースフレームLB及び右ベースフレームRBの長さは、使用者の前後の重心移動に対しても転倒を回避できる安全な長さに設定されている。
前記前ベースフレームFBは、歩行の邪魔になる場合には、前向き又は上向きにコの字状(
図3参照)又はアーチ状に成形することが望ましい。
【0020】
前記立ち座り支援装置Aは、使用者の左右上肢を支持する一対の支持フレーム1,1と、前記支持フレーム1,1を前後に進退させる一対の進退アクチュエータ4,4と、使用者の左右において前記進退アクチュエータ4,4及び前記支持フレーム1,1を前後傾斜可能に支持し、前記進退アクチュエータ4,4の前部を昇降させる一対の前昇降アクチュエータ2,2及び前記進退アクチュエータ4,4の後部を昇降させる一対の後昇降アクチュエータ3,3と、前記前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3並びに進退アクチュエータ4,4の進退量及び昇降速度を制御する制御手段(図示せず)を備える。
【0021】
この例で用いられる前記前昇降アクチュエータ2及び後昇降アクチュエータ3、並びに進退アクチュエータ4は、雄ねじを備えた直動シャフト10と、前記直動シャフト10を回転自在に支持する軸受け(図示せず)と、前記雄ねじと螺合する雌ねじを備えた直動部材11と、前記直動シャフト10に螺合された直動部材11の姿勢及び軌道を規制するブロックガイド12と、それらを内包して保護する筒状の第一筐体13と、前記直動シャフト10を回転させる駆動手段(モーターや減速機など)14と、当該駆動手段14を内包して保護する第二筐体15を備える(
図7参照)。
上記アクチュエータは、前記駆動手段14の回転力を受けた前記直動シャフト10の雄ねじと、直動部材11の雌ねじとのねじ対偶により、前記第一筐体13に対して直動部材11を進退させる。
【0022】
この例においては、前記第二筐体15は、前記第一筐体13の末端部に一体的に固定され、第二筐体15の内部に固定された駆動手段14の回転力がベルト又は歯車等の連動手段16を介して直動シャフト10の末端部に伝達される。
尚、前記直動シャフト10、直動部材11、ブロックガイド12及び第一筐体13、並びに第二筐体15は、前記歩行ベースBと同様の素材からなる。
【0023】
前記支持フレーム1,1は、使用者が把持するグリップ部5,5と、使用者の前腕部又は腋部を載せる腕台部6,6と、前記グリップ部5及び腕台部6をその配置を維持しつつ支持する支持枠9を備える。
当該支持枠9は、前記進退アクチュエータ4,4がそれぞれ直動部材11として具備する直動ロッドに連結され、前記直動ロッドの進退に伴って前後に移動する。
【0024】
前記グリップ部5,5は、前記支持枠9における前記腕台部6,6の直前に、直立、又は前方へ上向きに傾斜し、若しくは前方内方向へ上向きに傾斜した態様で配置され、使用者が、前記支持フレーム1,1の昇降及び傾斜に伴う前後左右及び上下への重心変動にあっても落下することなく耐えられる構成が与えられている。
【0025】
この例の前記グリップ部5,5は、前記前昇降アクチュエータ2及び後昇降アクチュエータ3、並びに進退アクチュエータ4の操作手段(図示せず)を備え、これらのアクチュエータ2,3,4の始動及び制動を使用者が直接行える様にされている。
操作手段は、積極的な加圧(スロットルボタン等)又は回転(スロットルレバーやスロットルグリップ等)によって始動し、当該加圧又は回転の解除(開放)によって制動となる構成が望ましい。
【0026】
この例の進退アクチュエータ4は、前記第一筐体13の外面に、前記支持枠9を安定した姿勢で進退自在に支持するガイド部(図示せず)を、長手方向に沿って備える他、前記第一筐体13の下面に、前記前昇降アクチュエータ2及び後昇降アクチュエータ3の直動ロッド(直動部材11)の先端にそれぞれ軸支される連結部7を備える(
図4参照)。
【0027】
前記支持フレーム1を構成するグリップ部5及び腕台部6は、進退アクチュエータ4の第一筐体13の内空部に装填された直動部材(直動ロッド)11に前記支持枠9を介して連結され、当該直動シャフト10の回転に従い、前記ガイド部に沿って直線運動を行う。
フレーム構造体としての補強目的、又は使用者の安心感の惹起を目的として、左右直動ロッドの先端部同士を中空フレーム等で連結する構成を採ることもできる。
【0028】
前記前昇降アクチュエータ2は、前記歩行ベースBの左ベースフレームLB及び右ベースフレームRBの前方に直立固定され、前記後昇降アクチュエータ3は、同左ベースフレームLB及び右ベースフレームRBにおける前記前昇降アクチュエータ2の後方(この例では中間部)に、前後揺動ができる様に支持(軸支等)されている。
前記前昇降アクチュエータ2及び後昇降アクチュエータ3の直動部材(直動ロッド)11は、その先端部に、前記進退アクチュエータ4の第一筐体13が具備する連結部7が軸支される軸受け部8を備える。
【0029】
前記立ち座り支援装置Aを具備した歩行器は、前記左ベースフレームLB及び右ベースフレームRBのそれぞれに、前記前後昇降アクチュエータ2,3の下端部を上記の如く固定し、当該前後昇降アクチュエータ2,3の直動ロッドの軸受け部8と、前記支持フレーム1,1の進退アクチュエータ4の連結部7,7とをそれぞれ前後揺動自在に連結することで組み上げられる。
その際、前記前後昇降アクチュエータ2,3及び進退アクチュエータ4は、前記左ベースフレームLB及び右ベースフレームRBからそれぞれ対称的に起立し使用者の左右上腕又は腋部を下支えする左右一対の方形状の枠として形作られると共に、前記進退アクチュエータ4の直動ロッドが歩行器の前後方向へ進退する様に配置される(
図4参照)。
【0030】
前記制御手段は、前記前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3、並びに進退アクチュエータ4,4に対し、起立支援においては前傾支援動作、伸展支援動作及び自律支援動作を促し、着座支援においては、前傾支援動作、屈曲支援動作及び自律支援動作を促す(
図1又は
図2参照)。
前記起立支援及び着座支援において、左右対称に配置された前記前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3、並びに進退アクチュエータ4,4は、原則として同時に同じ速度で同量進退するものとする。
【0031】
前記前傾支援動作は、使用者の関節に掛かる負担を軽減すべく、例えば、頭頂部、頸部、尾部及び足首を結ぶ線が適度に前傾し且つバランスが前方に崩れた起立又は着座の前駆動作に誘導する動作である。
【0032】
前記前傾支援動作は、例えば、当該前傾支援動作として、前記前昇降アクチュエータ2の支持高を後昇降アクチュエータ3の支持高よりも設定長左右同時に下降させる制御手段、前記後昇降アクチュエータ3の支持高を前昇降アクチュエータ2の支持高よりも設定長左右同時に上昇させる制御手段、又は前記前昇降アクチュエータ2及び後昇降アクチュエータ3を設定長左右同時に下降させる制御手段を備えることによって得ることができ、又は当該前傾支援動作として、前記進退アクチュエータ4を設定長左右同時に前進させる制御手段を備えることによって得ることができる。
【0033】
この例における制御手段は、仮に、自律状態(支援動作が行われていない定常状態)を、左右の進退アクチュエータ4,4の伸展長が0mmであって、起立時及び着座時における左右の前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3の伸展長がそれぞれ1200mm高前後(起立高)及び700mm高前後(着座高)での安定状態とした場合、当該前傾支援動作の際、進退アクチュエータ4,4及び後昇降アクチュエータ3,3を自律状態から稼働させることなく、左右の前昇降アクチュエータ2,2を同時に起立高又は着座高から100mm前後低下させ、若しくは進退アクチュエータ4,4及び前昇降アクチュエータ2,2を自律状態から稼働させることなく、左右の後昇降アクチュエータ3,3を同時に起立高又は着座高から100mm前後上昇させて左右の支持フレーム1,1を前方下向きに10度から20度程度傾斜させる制御、又は前記進退アクチュエータ4,4を自律状態から稼働させることなく左右の前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3を同時に起立高又は着座高から100mm前後下降させる制御等を行う。
この他、前傾支援動作においては、左右の進退アクチュエータ4,4を前方へ数10mmから100mm程度伸展させ、使用者の重心を積極的に前方へ移動させる動作を加えることもできる。
【0034】
<起立支援>
前記伸展支援動作は、前記起立支援において前傾姿勢に誘導された使用者の関節に生じる脱力を利用して、使用者の上腕の支持高を上昇させ、使用者の下肢関節等の上方への伸展を促す動作である(
図1(A)及び
図2(A)後段参照)。
【0035】
その際、制御手段は、前記起立支援の前傾支援動作が完了した時点から、左右の前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3を略同じ速度で伸展させ、左右の後昇降アクチュエータ3,3が使用者の起立時における腋窩高(起立高付近)に至った時点で完了させる制御を行う。
前記前傾支援動作において左右の進退アクチュエータ4,4を伸展させた場合には、当該進退アクチュエータ4,4の稼働を停止させる動作、若しくは当該進退アクチュエータ4,4の伸展長を徐々に減少させる動作を並行して行う制御を加えてもよい。
【0036】
起立支援における前記自律支援動作は、使用者の起立時における重心を前方へ崩れた状態からわずかに後方へ導くことにより、立ち座り支援装置Aの支配・制約などを受けずに、自分自身の姿勢を維持させるきっかけを与える動作である。
【0037】
その際、制御手段は、前記起立支援の伸展支援動作が完了した時点から、左右の前昇降アクチュエータ2,2を後昇降アクチュエータ3,3と同じ高さ又は後昇降アクチュエータ3,3よりも僅かに高い高さに至るまで伸展させる動作、又は左右の後昇降アクチュエータ3,3を前昇降アクチュエータ2,2と同じ高さ又は前昇降アクチュエータ2,2よりも僅かに低い高さに至るまで収縮させる動作を行った上で、左右の前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3を自律状態とする制御を行う。
前記前傾支援動作において左右の進退アクチュエータ4,4を伸展させた場合には、当該進退アクチュエータ4,4の伸展長を徐々に減少させ起立支援前の伸展長(自律状態)に復帰させる動作を並行して行う制御を加えてもよい。
【0038】
<着座支援>
前記屈曲支援動作は、前記着座支援において前傾姿勢に誘導された使用者の関節に生じる脱力を利用して、使用者の上腕の支持高を下降させ、使用者の下肢関節等の下方への屈曲を促す動作である(
図1(B)及び
図2(B)後段参照)。
【0039】
その際、制御手段は、前記着座支援の前傾支援動作が完了した時点から、左右の前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3,3を略同じ速度で収縮させ、左右の後昇降アクチュエータ3,3が使用者の着座時における腋窩高(着座高付近)に至った時点で完了させる制御を行う。
前記前傾支援動作において左右の進退アクチュエータ4,4を伸展させた場合には、当該進退アクチュエータ4,4の稼働を停止させる動作、若しくは当該進退アクチュエータ4,4の伸展長を徐々に減少させる動作を並行して行う制御を加えてもよい。
【0040】
着座支援における前記自律支援動作は、使用者の着座時における重心を前方へ崩れた状態からわずかに後方へ導くことにより、立ち座り支援装置Aの支配・制約などを受けずに、自分自身の姿勢を維持させるきっかけを与える動作である。
【0041】
その際、制御手段は、前記着座支援の屈曲支援動作が完了した時点から、左右の前昇降アクチュエータ2,2を後昇降アクチュエータ3,3と同じ高さ又は後昇降アクチュエータ3,3よりも僅かに高い高さに至るまで伸展させる動作、又は左右の後昇降アクチュエータ3,3を前昇降アクチュエータ2,2と同じ高さ又は前昇降アクチュエータ2,2よりも僅かに低い高さに至るまで収縮させる動作を行った上で、左右の前昇降アクチュエータ2,2及び後昇降アクチュエータ3を自律状態とする制御を行う。
前記前傾支援動作において左右の進退アクチュエータ4,4を伸展させた場合には、当該進退アクチュエータ4,4の伸展長を徐々に減少させ着座支援前の伸展長に復帰させる動作を並行して行う制御を加えてもよい。
【0042】
前記制御手段は、例えば、中央演算処理装置(CPU)、メモリ等の記憶装置を備えており、使用者が入力部(図示せず)に入力した情報に従って、立ち座り支援装置Aの各部を制御する構成を採ることができる。
前記制御手段は、歩行ベースBに制御ボックス(図示せず)として固定され、前昇降アクチュエータ2、後昇降アクチュエータ3、進退アクチュエータ4及びバッテリ等)に接続される。
【0043】
また、前記制御手段は、例えば、使用者にとって最も負担の少ない適切な起立時及び着座時における体勢や動きを反映した前昇降アクチュエータ2、後昇降アクチュエータ3及び進退アクチュエータ4の伸展・収縮及びその速度に関するシーケンスを前記記憶装置に記憶させ、それをグリップ部5に付設された操作手段で再現する様に各アクチュエータを制御する構成や、各アクチュエータのモーターに流れる電流を検出するセンサなど、立ち座り支援装置Aのフレームの主要部分に掛かる負荷を検出し、使用者の関節に掛かる負荷を推定し、前傾支援動作、起立支援動作又は着座支援動作及び自律支援動作の完了時を検出しつつ起立支援又は着座支援を行う様に制御する構成を採ることができる。
【0044】
尚、前記立ち座り支援装置Aは、立ち座りの前駆動作に導く機能を有し、且つ実用性に支障が生じる程大規模とならない限りにおいて、上記構成に限定されるものではなく、例えば、使用者の左右上肢を支持する一対の支持フレーム1,1と、使用者の左右において前記支持フレーム1,1を前後傾斜可能に支持し、前記支持フレーム1,1の前後を個別に昇降させる前昇降アクチュエータ2及び後昇降アクチュエータ3と、前記前昇降アクチュエータ2及び後昇降アクチュエータ3の進退量及び昇降速度を制御する制御手段(図示せず)を備える構成を採用する等、多様な構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0045】
A 立ち座り支援装置,
B 歩行ベース,
LB 左ベースフレーム,RB 右ベースフレーム,FB 前ベースフレーム,
MW 舵取り輪,SW 歩行輪,
BR ブレーキ,
1 支持フレーム,2 前昇降アクチュエータ,3 後昇降アクチュエータ,
4 進退アクチュエータ,
5 グリップ部,6 腕台部,7 連結部,8 軸受け部,9 支持枠,
10 直動シャフト,11 直動部材,12 ブロックガイド,
13 第一筐体,14 駆動手段,15 第二筐体,16 連動手段,