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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20231206BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231206BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L29/78 619A
H01L29/78 618B
G02F1/1368
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020508096
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 IB2019051968
(87)【国際公開番号】W WO2019180539
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018056918
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 安孝
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144266(JP,A)
【文献】特開2018-006728(JP,A)
【文献】特開平03-159250(JP,A)
【文献】特開2011-198579(JP,A)
【文献】特開平04-177765(JP,A)
【文献】特開2011-077515(JP,A)
【文献】特開2008-270637(JP,A)
【文献】特開2004-247414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の導電層を形成し、
前記基板及び前記第1の導電層を覆う第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層上に半導体層を形成し、
前記半導体層上に第2の絶縁膜を形成し、
前記第2の絶縁膜上に金属酸化物膜を形成し、
前記金属酸化物膜上に第2の導電膜を形成し、
前記第2の絶縁膜の一部、前記金属酸化物膜の一部及び前記第2の導電膜の一部をエッチングして、第2の絶縁層、金属酸化物層及び第2の導電層を形成し、
前記第1の絶縁層の上面、前記半導体層の上面及び側面、前記第2の絶縁層の側面、前記金属酸化物層の側面及び前記第2の導電層の上面及び側面を覆う第3の絶縁層を形成し、
前記第3の絶縁層の一部をエッチングして、前記半導体層に達する第1の開口部及び第2の開口部を形成し、
前記第1の開口部において前記半導体層に接する第3の導電層と、前記第2の開口部において前記半導体層に接する第4の導電層と、を形成し、
前記金属酸化物層は、インジウム及びガリウムを含み、
前記半導体層は、インジウム及びガリウムを含み、
前記金属酸化物層におけるガリウムの含有割合は、前記半導体層におけるガリウムの含有割合より高く、
前記半導体層におけるインジウムの含有割合は、前記金属酸化物層におけるインジウムの含有割合より高く、
前記第3の絶縁層は、原料ガスとして少なくともシリコン源、酸素源及び不純物元素源を用いたCVD法で形成され、
前記不純物元素源は、PH及びBの少なくとも一方であり、
前記第3の絶縁層形成時、前記第3の絶縁層の膜厚方向において、不純物濃度の最小値に対する最大値の比は1.0以上10.0以下である、半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記半導体層は、インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む、半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置に関する。本発明の一態様は、表示装置に関する。本発明の一態様は、半導体装置、または表示装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置、入出力装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法、を一例として挙げることができる。半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。
【背景技術】
【0003】
トランジスタに適用可能な半導体材料として、金属酸化物を用いた酸化物半導体が注目されている。例えば、特許文献1では、複数の酸化物半導体層を積層し、当該複数の酸化物半導体層の中で、チャネルとなる酸化物半導体層がインジウム及びガリウムを含み、且つインジウムの割合をガリウムの割合よりも大きくすることで、電界効果移動度(単に移動度、またはμFEという場合がある)を高めた半導体装置が開示されている。
【0004】
半導体層に用いることのできる金属酸化物は、スパッタリング法などを用いて形成できるため、大型の表示装置を構成するトランジスタの半導体層に用いることができる。また、多結晶シリコンや非晶質シリコンを用いたトランジスタの生産設備の一部を改良して利用することが可能なため、設備投資を抑えられる。また、金属酸化物を用いたトランジスタは、非晶質シリコンを用いた場合に比べて高い電界効果移動度を有するため、駆動回路を設けた高性能の表示装置を実現できる。
【0005】
また、特許文献2には、ソース領域およびドレイン領域に、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、インジウム、チタン、シリコン、ゲルマニウム、スズ、および鉛からなる群のうちの少なくとも一種をドーパントとして含む低抵抗領域を有する酸化物半導体膜が適用された薄膜トランジスタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-7399号公報
【文献】特開2011-228622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、電気特性の良好な半導体装置を提供することを課題の一とする。または、電気特性の安定した半導体装置を提供することを課題の一とする。または、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0008】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、半導体層と、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、導電層と、を有する半導体装置である。第1の絶縁層は、半導体層の上面の一部に接し、導電層は、第1の絶縁層上に位置し、第2の絶縁層は、半導体層上に位置する。半導体層は、金属酸化物を含み、半導体層は、導電層と重なる第1の領域と、導電層と重ならない第2の領域と、を有し、第2の領域は、第2の絶縁層と接する。第2の絶縁層は、酸素及び第1の元素を含み、第1の元素は、リン、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、またはシリコンのいずれか一以上である。また、第2の絶縁層の膜厚方向において、第1の元素の濃度の最小値に対する最大値の比は1.0以上10.0以下である。
【0010】
また、本発明の一態様は、半導体層と、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、導電層と、を有する半導体装置である。第1の絶縁層は、半導体層の上面及び側面に接し、導電層は、第1の絶縁層上に位置し、第2の絶縁層は、半導体層上に位置する。半導体層は、金属酸化物を含み、半導体層は、導電層と重なる第1の領域と、導電層と重ならない第2の領域と、を有する。第1の絶縁層は、導電層と重なる第3の領域と、導電層と重ならない第4の領域と、を有し、第4の領域は、第2の絶縁層と接する。第2の絶縁層は、酸素及び第1の元素を含み、第1の元素は、リン、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、またはシリコンのいずれか一以上である。また、第2の絶縁層の膜厚方向において、第1の元素の濃度の最小値に対する最大値の比は1.0以上10.0以下である。
【0011】
前述の半導体装置において、第4の領域は、前述の第1の元素を含むことが好ましい。
【0012】
また、前述の半導体装置において、第4の領域は、第3の領域より膜厚が薄いことが好ましい。
【0013】
また、前述の半導体装置において、第2の絶縁層は、第1の元素の濃度が、1×1020atoms/cm以上、1×1022atoms/cm以下である領域を有することが好ましい。
【0014】
また、前述の半導体装置において、第2の絶縁層は、X線光電子分光法分析において、第1の元素と酸素の結合に起因するピークが観測されることが好ましい。
【0015】
また、前述の半導体装置において、第2の領域は、前述の第1の元素を含むことが好ましい。
【0016】
また、前述の半導体装置において、第2の領域は、第1の元素の濃度が、1×1020atoms/cm以上、1×1022atoms/cm以下である領域を有することが好ましい。
【0017】
また、前述の半導体装置において、第2の領域は、X線光電子分光法分析において、第1の元素と酸素の結合に起因するピークが観測されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、電気特性の良好な半導体装置を提供できる。または、電気特性の安定した半導体装置を提供できる。または、信頼性の高い表示装置を提供できる。
【0019】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】トランジスタの構成例。
図2】トランジスタの構成例。
図3】トランジスタの構成例。
図4】トランジスタの構成例。
図5】トランジスタの構成例。
図6】トランジスタの構成例。
図7】トランジスタの構成例。
図8】トランジスタの構成例。
図9】トランジスタの作製方法を説明する図。
図10】トランジスタの作製方法を説明する図。
図11】トランジスタの作製方法を説明する図。
図12】表示装置の上面図。
図13】表示装置の断面図。
図14】表示装置の断面図。
図15】表示装置の断面図。
図16】表示装置のブロック図及び回路図。
図17】表示装置の回路図。
図18】表示モジュールの構成例。
図19】電子機器の構成例。
図20】電子機器の構成例。
図21】電子機器の構成例。
図22】不純物元素の濃度の計算結果。
図23】断面STEM像。
図24】断面STEM像及びEDXスペクトル。
図25】断面STEM像。
図26】断面STEM像及びEDXスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
また、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
【0023】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0024】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0025】
また、本明細書等において、トランジスタが有するソースとドレインの機能は、トランジスタの極性や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0026】
なお、本明細書等において、トランジスタのチャネル長方向とは、ソース領域とドレイン領域間を最短距離で結ぶ直線に平行な方向のうちの1つをいう。すなわち、チャネル長方向は、トランジスタがオン状態のときに半導体層を流れる電流の方向のうちの1つに相当する。また、チャネル幅方向とは、当該チャネル長方向に直交する方向をいう。なお、トランジスタの構造や形状によっては、チャネル長方向及びチャネル幅方向は1つに定まらない場合がある。
【0027】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0028】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」や「絶縁層」という用語は、「導電膜」や「絶縁膜」という用語に相互に交換することが可能な場合がある。
【0029】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い(pチャネル型トランジスタでは、Vthよりも高い)状態をいう。
【0030】
本明細書等において、表示装置の一態様である表示パネルは表示面に画像等を表示(出力)する機能を有するものである。したがって表示パネルは出力装置の一態様である。
【0031】
また、本明細書等では、表示パネルの基板に、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)などのコネクターが取り付けられたもの、または基板にCOG(Chip On Glass)方式等によりICが実装されたものを、表示パネルモジュール、表示モジュール、または単に表示パネルなどと呼ぶ場合がある。
【0032】
なお、本明細書等において、表示装置の一態様であるタッチパネルは表示面に画像等を表示する機能と、表示面に指やスタイラスなどの被検知体が触れる、押圧する、または近づくことなどを検出するタッチセンサとしての機能と、を有する。したがってタッチパネルは入出力装置の一態様である。
【0033】
タッチパネルは、例えばタッチセンサ付き表示パネル(または表示装置)、タッチセンサ機能つき表示パネル(または表示装置)とも呼ぶことができる。タッチパネルは、表示パネルとタッチセンサパネルとを有する構成とすることもできる。または、表示パネルの内部または表面にタッチセンサとしての機能を有する構成とすることもできる。
【0034】
また、本明細書等では、タッチパネルの基板に、コネクターやICが実装されたものを、タッチパネルモジュール、表示モジュール、または単にタッチパネルなどと呼ぶ場合がある。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様であるトランジスタ100を有する半導体装置、およびその作製方法について説明する。
【0036】
本発明の一態様は、被形成面上に、チャネルが形成される半導体層と、半導体層上にゲート絶縁層(第1の絶縁層ともいう)と、ゲート絶縁層上にゲート電極として機能する導電層と、を有するトランジスタである。半導体層上にさらに酸素に対するバリア性の高い保護絶縁層(第2の絶縁層ともいう)を有することが好ましい。
【0037】
ゲート絶縁層は、島状に加工された半導体層の上面に接して設けられることが好ましい。また特に、半導体層に金属酸化物を適用した場合、ゲート絶縁層は酸化物を含むことが好ましい。
【0038】
半導体層は、半導体特性を示す金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を含んで構成されることが好ましい。半導体層は、チャネルが形成されうるチャネル形成領域と、ソース領域及びドレイン領域として機能する一対の低抵抗領域を有する。チャネル形成領域は、半導体層におけるゲート電極と重畳する領域である。また一対の低抵抗領域は、チャネル形成領域を挟んで設けられ、チャネル形成領域よりも低抵抗な領域である。低抵抗領域は第2の絶縁層と接し、低抵抗領域が第2の絶縁層で覆われていることが好ましい。
【0039】
第2の絶縁層は、不純物元素を含むことが好ましい。不純物元素としては、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、ヒ素、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、または希ガスなどが挙げられる。なお、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。特に、リン、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム及びシリコンから選ばれる一以上を含むことが好ましい。
【0040】
本明細書等において、不純物元素とは主成分以外の元素を指し、1atomic%以上含まれる元素を主成分とする。
【0041】
特に、第2の絶縁層は、酸素と結合しやすい不純物元素を含むことが好ましい。例えば、ホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム、シリコン等が挙げられる。第2の絶縁層は前述の不純物元素を含むことにより、第2の絶縁層が有する酸素が第2の絶縁層から脱離することが抑制される。
【0042】
低抵抗領域に酸素が供給されると、キャリア密度が低減し、電気抵抗が上昇してしまう場合がある。しかしながら本発明の一態様では、第2の絶縁層が低抵抗領域と接し、第2の絶縁層が低抵抗領域を覆う構造となっている。その結果、第2の絶縁層から低抵抗領域に酸素が供給されることが抑制され、低抵抗領域は電気抵抗が低い状態を維持することができる。また、第2の絶縁層からゲート電極に酸素が供給されることが抑制され、ゲート電極は電気抵抗が低い状態を維持することができる。
【0043】
本発明の一態様では、第2の絶縁層がゲート絶縁層の側面と接し、第2の絶縁層がゲート絶縁層を覆う構造となっている。その結果、ゲート絶縁層から低抵抗領域及びゲート電極に酸素が供給されることが抑制され、低抵抗領域及びゲート電極の電気抵抗が低い状態を維持することができる。また、ゲート絶縁層が有する酸素が第2の絶縁層側へ脱離することが抑制され、ゲート絶縁層から放出される酸素を半導体層のチャネル形成領域に効率良く供給することができる。これにより、半導体層のチャネル形成領域中の酸素欠損を補填することができ、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0044】
このような構成とすることで、酸素欠損が十分に低減され、キャリア密度の極めて低いチャネル形成領域と、電気抵抗の極めて低いソース領域及びドレイン領域と、を兼ね備え、電気特性に優れ、且つ信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0045】
以下では、より具体的な例について、図面を参照して説明する。
【0046】
<構成例1>
図1(A)は、トランジスタ100の上面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す一点鎖線A1-A2における切断面の断面図に相当し、図1(C)は、図1(A)に示す一点鎖線B1-B2における切断面の断面図に相当する。なお、図1(A)において、トランジスタ100の構成要素の一部(ゲート絶縁層等)を省略して図示している。また、一点鎖線A1-A2方向はチャネル長方向、一点鎖線B1-B2方向はチャネル幅方向に相当する。また、トランジスタの上面図については、以降の図面においても図1(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示するものとする。
【0047】
トランジスタ100は、基板102上に設けられ、絶縁層103、半導体層108、絶縁層110、金属酸化物層114、導電層112、絶縁層118等を有する。島状の半導体層108は、絶縁層103上に設けられる。絶縁層110は、半導体層108の一部の上面に接して設けられる。金属酸化物層114及び導電層112は、絶縁層110上にこの順に積層して設けられ、半導体層108と重畳する部分を有する。絶縁層118は、半導体層108の上面の一部及び側面、絶縁層110の側面、金属酸化物層114の側面、ならびに導電層112の上面及び側面を覆って設けられている。絶縁層118は、トランジスタ100を保護する保護層として機能する。
【0048】
導電層112の一部は、ゲート電極として機能する。絶縁層110の一部は、ゲート絶縁層として機能する。トランジスタ100は、半導体層108上にゲート電極が設けられる、いわゆるトップゲート型のトランジスタである。
【0049】
半導体層108は、金属酸化物を含むことが好ましい。
【0050】
例えば半導体層108は、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有すると好ましい。特にMはアルミニウム、ガリウム、イットリウム、またはスズから選ばれた一種または複数種とすることが好ましい。
【0051】
特に、半導体層108として、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物を用いることが好ましい。
【0052】
半導体層108として、組成の異なる層、または結晶性の異なる層、または不純物濃度の異なる層を積層した積層構造としてもよい。
【0053】
半導体層108は、導電層112と重畳する領域と、当該領域を挟む一対の低抵抗な領域108nを有する。半導体層108の、導電層112と重畳する領域は、トランジスタ100のチャネル形成領域として機能する。一方、領域108nは、トランジスタ100のソース領域またはドレイン領域として機能する。
【0054】
領域108nは、チャネル形成領域よりも低抵抗な領域、キャリア密度が高い領域、酸素欠損密度の高い領域、またはn型である領域ともいうことができる。
【0055】
領域108nは、例えば、金属酸化物をプラズマに曝すことにより形成できる。金属酸化物をプラズマに曝すと金属酸化物に欠陥、代表的には酸素欠損(以下、Vと記す場合がある)が生成される。金属酸化物に酸素欠損(V)及び水素が存在すると、酸素欠損に水素が入った状態(以下、VHと記す場合がある)が形成される場合がある。VHはキャリア発生源となり、キャリア密度が増加することで、金属酸化物がn型となり、低抵抗な領域108nが形成される。
【0056】
例えば、絶縁層118の形成にプラズマ化学気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置という)を用いることで、絶縁層118の形成とともに領域108nを自己整合的に形成できる。
【0057】
また、図1(B)及び図1(C)に示すように、領域108nは絶縁層118と接し、領域108nが絶縁層118で覆われていると好ましい。
【0058】
絶縁層118は、酸化物を有する。絶縁層118として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネートなどの無機絶縁材料を用いることができる。また、絶縁層118はさらに不純物元素を含むと好ましい。当該不純物元素としては、例えば、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、ヒ素、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、または希ガスなどが挙げられる。なお、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。絶縁層118は、酸素と結合しやすい不純物元素を含むことが特に好ましく、例えば、リン、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム及びシリコンから選ばれる一以上を含むことが好ましい。また、これらの不純物元素を2以上含んでいてもよい。
【0059】
本明細書等において、酸化窒化物とは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い物質を指す。窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を指す。
【0060】
絶縁層118は前述の不純物元素を含むことにより、絶縁層118が有する酸素が絶縁層118から脱離することを抑制できる。絶縁層118は酸素と結合しやすい不純物元素を含むことが特に好ましく、該不純物元素が絶縁層118中の酸素と結合することにより、絶縁層118が有する酸素が絶縁層118から脱離することを効率良く抑制できる。
【0061】
ここで、酸素を有する絶縁層は、該絶縁層から酸素が脱離する場合がある。脱離した酸素が領域108nに達すると、該酸素は領域108nが有するVHから水素を奪って水分子(HO)として脱離し、水素が奪われたVHは酸素欠損(V)となる。また、VHから水素が奪われたことにより生成した酸素欠損(V)は、領域108nに達した別の酸素により補填される。このように、領域108nに酸素が供給されると領域108nが有するVH及び酸素欠損(V)が減少、つまり領域108nのキャリア密度が減少し、領域108nの抵抗が高くなる場合がある。
【0062】
本発明の一態様であるトランジスタ100は、領域108nと接する絶縁層118が前述の不純物元素を有する。このような構成とすることで、絶縁層118が有する酸素が絶縁層118から脱離することを抑制し、領域108nの抵抗が高くなることを抑制できる。
【0063】
絶縁層110は、半導体層108のチャネル形成領域と接する領域、すなわち導電層112と重畳する領域を有する。
【0064】
半導体層108のチャネル形成領域に接する絶縁層103及び絶縁層110には、酸化物膜を用いることが好ましい。例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜などの酸化物膜を用いることができる。これにより、トランジスタ100の作製工程における熱処理などで、絶縁層103や絶縁層110から脱離した酸素をチャネル形成領域に供給し、チャネル形成領域中の酸素欠損を低減することができる。
【0065】
また、図1(B)及び図1(C)に示すように、絶縁層110の側面は絶縁層118と接することが好ましい。
【0066】
ここで、絶縁層110が有する酸素が絶縁層110から脱離し、該酸素が領域108nに達すると、領域108nが有するVH及び酸素欠損(V)が減少し、領域108nの抵抗が高くなる場合がある。また、絶縁層110が有する酸素が絶縁層110から脱離し、該酸素が導電層112に達すると、導電層112が酸化され、導電層112の抵抗が高くなる場合がある。
【0067】
本発明の一態様であるトランジスタ100は、絶縁層110の側面が絶縁層118と接し、絶縁層110が絶縁層118で覆われている。このような構成とすることで、絶縁層110が有する酸素が絶縁層118へ拡散する場合、絶縁層118が有する不純物が該酸素を捕獲し、捕獲された酸素は絶縁層118から脱離しづらくなる。つまり、絶縁層110が有する酸素が絶縁層118を介して領域108n及び導電層112に達し、領域108n及び導電層112の抵抗が高くなることを抑制できる。
【0068】
また、図1(A)及び図1(B)に示すように、トランジスタ100は、絶縁層118上に導電層120a及び導電層120bを有していてもよい。導電層120a及び導電層120bはソース電極またはドレイン電極として機能する。導電層120a及び導電層120bは、それぞれ絶縁層118に設けられた開口部141aまたは開口部141bを介して、半導体層108が有する領域108nに電気的に接続される。
【0069】
図1(B)及び図1(C)に示すように、導電層112、金属酸化物層114及び絶縁層110は、上面形状が互いに概略一致するように加工されている。
【0070】
なお、本明細書等において「上面形状が概略一致」とは、積層した層と層との間で少なくとも輪郭の一部が重なることをいう。例えば、上層と下層とが、同一のマスクパターン、または一部が同一のマスクパターンにより加工された場合を含む。ただし、厳密には輪郭が重なり合わず、上層が下層の内側に位置することや、上層が下層の外側に位置することもあり、この場合も「上面形状が概略一致」という。
【0071】
絶縁層110と導電層112との間に位置する金属酸化物層114は、絶縁層110に含まれる酸素が導電層112側に拡散することを防ぐバリア膜として機能する。さらに金属酸化物層114は、導電層112に含まれる水素や水が絶縁層110側に拡散することを防ぐバリア膜としても機能する。金属酸化物層114は、例えば少なくとも絶縁層110よりも酸素及び水素を透過しにくい材料を用いることができる。
【0072】
金属酸化物層114により、導電層112にアルミニウムや銅などの酸素を吸引しやすい金属材料を用いた場合であっても、絶縁層110から導電層112へ酸素が拡散することを防ぐことができる。また、導電層112が水素や水を含む場合であっても、導電層112から絶縁層110を介して半導体層108へ水素や水が拡散することを防ぐことができる。その結果、半導体層108のチャネル形成領域におけるキャリア密度を極めて低いものとすることができる。
【0073】
金属酸化物層114としては、絶縁性材料または導電性材料を用いることができる。金属酸化物層114が絶縁性を有する場合には、ゲート絶縁層の一部として機能する。一方、金属酸化物層114が導電性を有する場合には、ゲート電極の一部として機能する。
【0074】
金属酸化物層114として、酸化シリコンよりも誘電率の高い絶縁性材料を用いることが好ましい。特に、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、またはハフニウムアルミネート膜等を用いると、駆動電圧を低減できるため好ましい。
【0075】
金属酸化物層114として、例えば酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITO)、またはシリコンを含有したインジウムスズ酸化物(ITSO)などの、導電性酸化物を用いることもできる。特にインジウムを含む導電性酸化物は、導電性が高いため好ましい。
【0076】
また、金属酸化物層114として、半導体層108と同一の元素を一以上含む酸化物材料を用いることが好ましい。特に、上記半導体層108に適用可能な酸化物半導体材料を用いることが好ましい。このとき、金属酸化物層114として、半導体層108と同じスパッタリングターゲットを用いて形成した金属酸化物膜を適用することで、装置を共通化できるため好ましい。
【0077】
または、半導体層108と金属酸化物層114の両方に、インジウム及びガリウムを含む金属酸化物材料を用いる場合、金属酸化物層114に半導体層108よりもガリウムの組成(含有割合)が高い材料を用いると、酸素に対するバリア性をより高めることができるため好ましい。このとき、半導体層108には、金属酸化物層114よりもインジウムの組成が高い材料を用いることで、トランジスタ100の電界効果移動度を高めることができる。
【0078】
また、金属酸化物層114は、スパッタリング装置を用いて形成すると好ましい。例えば、スパッタリング装置を用いて酸化物膜を形成する場合、酸素ガスを含む雰囲気で形成することで、絶縁層110や半導体層108中に好適に酸素を添加することができる。
【0079】
図2(A)に、図1(B)中の一点鎖線で囲った領域Pを拡大した断面図を示している。
【0080】
半導体層108は、絶縁層118と接する領域108nを有する。領域108nは、導電層112と重ならない。また、絶縁層110の側面は、絶縁層118と接する。
【0081】
絶縁層118は、不純物元素の濃度が、1×1019atoms/cm以上、1×1023atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以上、5×1022atoms/cm以下、より好ましくは1×1020atoms/cm以上、1×1022atoms/cm以下である領域を含むことが好ましい。
【0082】
絶縁層118に含まれる不純物元素の濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)や、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)等の分析法により分析することができる。XPS分析を用いる場合には、表面側または裏面側からのイオンスパッタリングとXPS分析を組み合わせることで、深さ方向の濃度分布を知ることができる。
【0083】
また、絶縁層118において、不純物元素は酸化された状態で存在していることが好ましい。例えば不純物元素としてホウ素、リン、マグネシウム、アルミニウム、シリコンなどの酸化されやすい元素を用いることが好ましい。このような酸化されやすい元素は、絶縁層118中の酸素と結合した状態で安定に存在しうるため、後の工程で高い温度(例えば400℃以上、600℃以上、または800℃以上)がかかった場合であっても、脱離することが抑制される。また、不純物元素が絶縁層118中の酸素と結合することで、絶縁層118が有する酸素が絶縁層118から脱離するのを抑制できる。また、酸化された状態の不純物元素が含まれる絶縁層118は、酸素が拡散しにくい状態となるため、絶縁層118の外から絶縁層118を介して領域108n及び導電層112に酸素が供給されることも防ぐことができる。そのため、高い温度のかかる処理を行なう際には、酸素に対するバリア性の高い絶縁層118で領域108n及び導電層112を覆った状態で処理することが好ましい。
【0084】
例えば、不純物元素としてホウ素を用いた場合、絶縁層118に含まれるホウ素は酸素と結合した状態で存在しうる。このことは、XPS分析において、例えばB結合に起因するスペクトルピークが観測されることで確認できる。また、XPS分析において、ホウ素元素が単体で存在する状態に起因するスペクトルピークが観測されない、または測定下限のバックグラウンドノイズに埋もれる程度にまでピーク強度が極めて小さくなる。
【0085】
ここで、半導体層108のチャネル形成領域に形成されうる酸素欠損について説明する。
【0086】
半導体層108のチャネル形成領域に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。例えば、チャネル形成領域中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、キャリア供給源となりうる。チャネル形成領域中にキャリア供給源が生成されると、トランジスタ100の電気特性の変動、代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。したがって、チャネル形成領域においては、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0087】
本発明の一態様においては、半導体層108のチャネル形成領域近傍の絶縁膜、具体的には、チャネル形成領域の上方に位置する絶縁層110、及び下方に位置する絶縁層103が、酸化物膜を含む構成である。作製工程中の熱などにより絶縁層103及び絶縁層110からチャネル形成領域へ酸素を移動させることで、チャネル形成領域中の酸素欠損を低減することが可能となる。
【0088】
図1(B)、図1(C)及び図2(A)に示すように、酸素に対するバリア性の高い絶縁層118が絶縁層110の側面と接し、絶縁層110を覆っている。このような構成とすることにより、絶縁層110から放出されうる酸素が絶縁層118側へ拡散することを防ぐことができ、半導体層108のチャネル形成領域中の酸素欠損を効率良く低減することが可能となる。
【0089】
また、半導体層108は、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すると好ましい。Inの原子数比が多いほど、トランジスタの電界効果移動度を向上させることができる。
【0090】
ここで、In、Ga、Znを含む金属酸化物の場合、Inと酸素の結合力は、Gaと酸素の結合力よりも弱いため、Inの原子数比が大きい場合には、金属酸化物膜中に酸素欠損が形成されやすい。また、Gaに代えて、上記Mで示す金属元素を用いた場合でも同様の傾向がある。金属酸化物膜中に酸素欠損が多く存在すると、トランジスタの電気特性の低下や、信頼性の低下が生じる。
【0091】
しかしながら本発明の一態様では、金属酸化物を含む半導体層108中に極めて多くの酸素を供給できるため、Inの原子数比の大きな金属酸化物材料を用いることが可能となる。これにより、極めて高い電界効果移動度と、安定した電気特性と、高い信頼性とを兼ね備えたトランジスタを実現することができる。
【0092】
例えば、Inの原子数比が、Mの原子数比に対して1.5倍以上、または2倍以上、または3倍以上、または3.5倍以上、または4倍以上である金属酸化物を、好適に用いることができる。
【0093】
特に、半導体層108のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=5:1:6またはその近傍(Inが5の場合、Mが0.5以上1.5以下であり、且つZnが5以上7以下を含む)とすることが好ましい。または、In、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3またはその近傍とすると好ましい。また、半導体層108の組成として、半導体層108のIn、M、及びZnの原子数の比を概略等しくしてもよい。すなわち、In、M、及びZnの原子数の比が、In:M:Zn=1:1:1またはその近傍の材料を含んでいてもよい。
【0094】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートドライバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示装置を提供することができる。また、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ソースドライバ(特に、ソースドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が少ない表示装置を提供することができる。
【0095】
なお、半導体層108が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有していても、半導体層108の結晶性が高い場合、電界効果移動度が低くなる場合がある。半導体層108の結晶性としては、例えば、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)を用いて分析する、あるいは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて分析することで解析できる。
【0096】
ここで、半導体層108に混入する水素または水分などの不純物は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。したがって、半導体層108においては、水素または水分などの不純物が少ないほど好ましい。不純物濃度を低く、欠陥準位密度の低い金属酸化物膜を用いることで、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。不純物濃度が低く、欠陥準位密度を低く(酸素欠損を少なく)することにより、膜中のキャリア密度を低くすることができる。このような金属酸化物膜を半導体層に用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、このような金属酸化物膜を用いたトランジスタは、オフ電流が著しく小さい特性を得ることができる。
【0097】
半導体層108に結晶性の高い金属酸化物膜を用いると、半導体層108の加工時や、絶縁層110の成膜時のダメージを抑制することができ、信頼性の高いトランジスタを実現できる。一方、半導体層108に結晶性の比較的低い金属酸化物膜を用いることで、電気伝導性が向上し、電界効果移動度の高いトランジスタを実現できる。
【0098】
半導体層108としては、後述するCAAC(c-axis aligned crystal)構造を有する金属酸化物膜、nc(nano crystal)構造を有する金属酸化物膜、またはCAAC構造とnc構造とが混在した金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0099】
また、半導体層108が、2層以上の積層構造を有していてもよい。
【0100】
例えば、組成の異なる2以上の金属酸化物膜を積層した半導体層108を用いることができる。例えば、In-Ga-Zn酸化物を用いた場合に、In、M、及びZnの原子数の比が、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=2:2:1、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:2、またはそれらの近傍であるスパッタリングターゲットで形成する膜のうち、2以上を積層して用いることが好ましい。
【0101】
また、結晶性の異なる2以上の金属酸化物膜を積層した半導体層108を用いることができる。その場合、同じ酸化物ターゲットを用い、成膜条件を異ならせることで、大気に触れることなく連続して形成されることが好ましい。
【0102】
このとき、半導体層108として、nc構造を有する金属酸化物膜と、CAAC構造を有する金属酸化物膜の積層構造とすることができる。または、nc構造を有する金属酸化物膜と、nc構造を有する金属酸化物膜の積層構造としてもよい。なお、半導体層108a及び半導体層108bに好適に用いることのできる金属酸化物の機能、または材料の構成については、後述するCAC(Cloud-Aligned Composite)を援用することができる。
【0103】
例えば、先に形成する第1の金属酸化物膜の成膜時の酸素流量比を、後に形成する第2の金属酸化物膜の成膜時の酸素流量比よりも小さくする。または、第1の金属酸化物膜の成膜時に、酸素を流さない条件とする。これにより、第2の金属酸化物膜の成膜時に、酸素を効果的に供給することができる。また、第1の金属酸化物膜は第2の金属酸化物膜よりも結晶性が低く、電気伝導性の高い膜とすることができる。一方、上部に設けられる第2の金属酸化物膜を第1の金属酸化物膜よりも結晶性の高い膜とすることで、半導体層108の加工時や、絶縁層110の成膜時のダメージを抑制することができる。
【0104】
より具体的には、第1の金属酸化物膜の成膜時の酸素流量比を、0%以上50%未満、好ましくは0%以上30%以下、より好ましくは0%以上20%以下、代表的には10%とする。また第2の金属酸化物膜の成膜時の酸素流量比を、50%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下、代表的には100%とする。また、第1の金属酸化物膜と第2の金属酸化物膜とで、成膜時の圧力、温度、電力等の条件を異ならせてもよいが、酸素流量比以外の条件を同じとすることで、成膜工程にかかる時間を短縮することができるため好ましい。
【0105】
このような構成とすることで、電気特性に優れ、且つ信頼性の高いトランジスタ100を実現できる。
【0106】
次に、前述のトランジスタ100と一部の構成が異なる例について説明する。
【0107】
図3(A)は、トランジスタ100Aの上面図であり、図3(B)はトランジスタ100Aのチャネル長方向の断面図であり、図3(C)はトランジスタ100Aのチャネル幅方向の断面図である。
【0108】
トランジスタ100Aは、領域108nが前述の不純物元素を含む点で、トランジスタ100と主に相違している。
【0109】
また、絶縁層103は、絶縁層118と接する界面近傍に、前述の不純物元素を含む領域103dを有してもよい。また、領域103dは、領域108nと接する界面近傍にも設けられていてもよい。このとき、領域108nと重畳する部分の不純物濃度は、絶縁層118と接する部分よりも低い濃度となる場合がある。
【0110】
領域103dは、絶縁層118を形成した後に加熱処理を行い、絶縁層118が有する不純物元素が絶縁層103へ拡散することで形成できる。また、該加熱処理により絶縁層118が有する不純物元素が半導体層108へ拡散することで、不純物元素を含む領域108nを形成できる。これにより、不純物元素を含む領域108nの形成と同時に、領域110dを自己整合的に形成することができる。また、トランジスタ100Aにおいて、領域108nは、チャネル形成領域よりも不純物元素の濃度が高い領域であるともいうことができる。なお、絶縁層118を形成する際に、不純物元素を含む領域108n及び領域103dが形成される場合がある。
【0111】
図2(B)に、図3(B)中の一点鎖線で囲った領域Qを拡大した断面図を示している。
【0112】
領域108nが不純物元素を含む場合、領域108n中の不純物元素は絶縁層118に近いほど濃度が高くなるような濃度勾配を有することが好ましい。これにより、領域108nの上部ほど低抵抗となるため、導電層120a(または導電層120b)との接触抵抗をより効果的に低減することができる。また、領域108n全体に亘って均一な濃度とした場合に比べて、領域108n内の不純物元素の総量を少なくできるため、作製工程中の熱などの影響によりチャネル形成領域に拡散しうる不純物の量を少なく保つことができる。領域108n中の不純物元素の濃度は、絶縁層118の形成条件、及び絶縁層118を形成した後に行う加熱処理の温度、時間で調整することができる。
【0113】
なお、図2(B)等では、絶縁層103の不純物元素の濃度の高い部分が、絶縁層118との界面近傍に位置することを誇張して示すために、領域103dを絶縁層103中の絶縁層118の近傍にのみハッチングパターンを付して図示しているが、実際には絶縁層103の厚さ方向全体に亘って上記不純物元素が含まれてもよい。
【0114】
領域108n及び領域103dはそれぞれ、不純物濃度が、1×1019atoms/cm以上、1×1023atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以上、5×1022atoms/cm以下、より好ましくは1×1020atoms/cm以上、1×1022atoms/cm以下である領域を含むことが好ましい。
【0115】
領域108n及び領域103dに含まれる不純物の濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)や、X線光電子分光法(XPS)等の分析法により分析することができる。XPS分析を用いる場合には、表面側または裏面側からのイオンスパッタリングとXPS分析を組み合わせることで、深さ方向の濃度分布を知ることができる。
【0116】
また、領域108nにおいて、不純物元素は酸化された状態で存在していることが好ましい。例えば不純物元素としてホウ素、リン、マグネシウム、アルミニウム、シリコンなどの酸化されやすい元素を用いることが好ましい。このような酸化されやすい元素は、半導体層108中の酸素と結合した状態で安定に存在しうるため、後の工程で高い温度(例えば400℃以上、600℃以上、または800℃以上)がかかった場合であっても、脱離することが抑制される。また、不純物元素が半導体層108中の酸素を奪うことで、領域108n中に多くの酸素欠損(V)が生成される。この酸素欠損(V)と、膜中の水素とが結合したVHが形成されることでキャリア密度が高くなり、領域108nは極めて低抵抗な状態となる。
【0117】
なお、後の工程で高い温度がかかる処理を行なう際、外部や領域108nの近傍の膜から多量の酸素が領域108nに供給されてしまうと、抵抗が上昇してしまう場合がある。そのため、高い温度のかかる処理を行なう際には、酸素に対するバリア性の高い絶縁層118で覆った状態で処理することが好ましい。
【0118】
また、領域103dにおいても、不純物元素は酸化された状態で存在していることが好ましい。このような酸化されやすい元素は、絶縁層103中の酸素と結合した状態で安定に存在しうるため、後の工程で高い温度がかかった場合でも脱離することが抑制される。また特に絶縁層103中に加熱により脱離しうる酸素(過剰酸素ともいう)が含まれる場合には、当該過剰酸素と不純物元素とが結合して安定化するため、領域103dから領域108nへ酸素が供給されることを抑制することができる。また、酸化された状態の不純物元素が含まれる領域103dは、酸素が拡散しにくい状態となるため、領域103dよりも上部から当該領域103dを介して領域108nに酸素が供給されることも防ぐことができる。
【0119】
例えば、不純物元素としてホウ素を用いた場合、領域108n及び領域103dに含まれるホウ素は酸素と結合した状態で存在しうる。このことは、XPS分析において、B結合に起因するスペクトルピークが観測されることで確認できる。また、XPS分析において、ホウ素元素が単体で存在する状態に起因するスペクトルピークが観測されない、または測定下限のバックグラウンドノイズに埋もれる程度にまでピーク強度が極めて小さくなる。
【0120】
領域103dは、領域108nと接する界面近傍にも設けられていてもよい。このとき、領域108nと重畳する部分の不純物濃度は、絶縁層110と接する部分よりも低い濃度となる。
【0121】
以上が構成例1についての説明である。
【0122】
<構成例2>
以下では、前述の構成例1と一部の構成が異なるトランジスタの例について説明する。なお、以下では、構成例1と重複する部分は説明を省略する場合がある。また、以下で示す図面において、上記構成例と同様の機能を有する部分についてはハッチングパターンを同じくし、符号を付さない場合もある。
【0123】
図4(A)は、トランジスタ100Bの上面図であり、図4(B)はトランジスタ100Bのチャネル長方向の断面図であり、図4(C)はトランジスタ100Bのチャネル幅方向の断面図である。
【0124】
トランジスタ100Bは、絶縁層110が領域108n上及び絶縁層103上に延伸して形成される点で、構成例1と主に相違している。トランジスタ100Bにおいて、絶縁層110は、半導体層108の上面及び側面、並びに絶縁層103の上面に接して設けられ、且つ導電層112と重畳しない領域を有する。
【0125】
図2(C)に、図4(B)中の一点鎖線で囲った領域Rを拡大した断面図を示している。
【0126】
トランジスタ100Bにおいて、領域108nは前述の不純物元素を含んでもよい。領域108nにおいて、不純物元素は絶縁層110に近いほど濃度が高くなるような濃度勾配を有することが好ましい。これにより、領域108nの上部ほど低抵抗となるため、導電層120a(または導電層120b)との接触抵抗をより効果的に低減することができる。また、領域108n全体に亘って均一な濃度とした場合に比べて、領域108n内の不純物元素の総量を少なくできるため、作製工程中の熱などの影響によりチャネル形成領域に拡散しうる不純物の量を少なく保つことができる。領域108n中の不純物元素の濃度は、絶縁層110の膜厚、絶縁層118の形成条件、及び絶縁層118を形成した後に行う加熱処理の温度、時間で調整することができる。
【0127】
絶縁層110は、領域108n及び絶縁層103と接する領域110dを有する。領域110dは、前述の不純物元素を含む。また、図4(B)、図4(C)及び図2(C)に示すように、領域110dは、半導体層108のチャネル形成領域と接する部分には設けられていないことが好ましい。
【0128】
加熱により酸素を放出可能な酸化物膜を適用した絶縁層110において、前述の不純物元素を含む領域110dでは、他の領域に比べて酸素の放出を抑えることができる。そのため、領域110dは酸素に対するバリア層として機能し、領域108nに供給される酸素を効果的に低減することができる。
【0129】
領域110dは、絶縁層118を形成した後に加熱処理を行い、絶縁層118が有する不純物元素が絶縁層110へ拡散することで形成できる。また、該加熱処理により不純物元素が半導体層108にも拡散することで、領域108nが不純物元素を含むことができきる。
【0130】
領域110dは、不純物濃度が1×1019atoms/cm以上、1×1023atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以上、5×1022atoms/cm以下、より好ましくは1×1020atoms/cm以上、1×1022atoms/cm以下である領域を含むことが好ましい。また、領域108nは、絶縁層110の領域110dよりも、不純物濃度が高い部分を有すると、領域108nの電気抵抗をより効果的に低抵抗化できるため好ましい。
【0131】
領域110dに含まれる不純物の濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)や、X線光電子分光法(XPS)等の分析法により分析することができる。XPS分析を用いる場合には、表面側または裏面側からのイオンスパッタリングとXPS分析を組み合わせることで、深さ方向の濃度分布を知ることができる。
【0132】
また、領域110dにおいて、不純物元素は酸化された状態で存在していることが好ましい。例えば不純物元素としてホウ素、リン、マグネシウム、アルミニウム、シリコンなどの酸化されやすい元素を用いることが好ましい。このような酸化されやすい元素は、絶縁層110中の酸素と結合した状態で安定に存在しうるため、後の工程で高い温度がかかった場合でも脱離することが抑制される。また特に絶縁層110中に加熱により脱離しうる酸素(過剰酸素ともいう)が含まれる場合には、当該過剰酸素と不純物元素とが結合して安定化するため、領域110dから領域108nへ酸素が供給されることを抑制することができる。また、酸化された状態の不純物元素が含まれる領域110dは、酸素が拡散しにくい状態となるため、領域110dよりも上部から当該領域110dを介して領域108nに酸素が供給されることも防ぐことができる。
【0133】
例えば、不純物元素としてホウ素を用いた場合、領域110dに含まれるホウ素は酸素と結合した状態で存在しうる。このことは、XPS分析において、B結合に起因するスペクトルピークが観測されることで確認できる。また、XPS分析において、ホウ素元素が単体で存在する状態に起因するスペクトルピークが観測されない、または測定下限のバックグラウンドノイズに埋もれる程度にまでピーク強度が極めて小さくなる。
【0134】
また、絶縁層103は、絶縁層110と接する界面近傍に、前述の不純物元素を含む領域103dを有してもよい。また、領域103dは、領域108nと接する界面近傍にも設けられていてもよい。このとき、領域108nと重畳する部分の不純物濃度は、絶縁層110と接する部分よりも低い濃度となる。
【0135】
次に、前述のトランジスタ100Bと一部の構成が異なる例について説明する。
【0136】
図5(A)は、トランジスタ100Cの上面図であり、図5(B)はトランジスタ100Cのチャネル長方向の断面図であり、図5(C)はトランジスタ100Cのチャネル幅方向の断面図である。
【0137】
トランジスタ100Cは、絶縁層110が膜厚の異なる領域を有する点で、トランジスタ100Bと主に相違している。
【0138】
図2(D)に、図5(B)中の一点鎖線で囲った領域Sを拡大した断面図を示している。
【0139】
トランジスタ100Dにおいて、導電層112と重なる領域の絶縁層110の膜厚と比較して、導電層112と重ならない領域の絶縁層110、つまり領域110dの膜厚は薄い。このような構成とすることで、絶縁層118と領域108nとの距離が短くなり、領域108n中の不純物濃度を増やすことができる。また、領域110dの膜厚を調整することで、領域108n中の不純物元素の濃度の調整が容易となる。また、領域108n中の不純物元素の濃度は、絶縁層118を形成した後に行う加熱処理の温度、時間でも調整することができる。
【0140】
以上が、構成例2についての説明である。
【0141】
<構成例3>
以下では、前述の構成例1と一部の構成が異なるトランジスタの例について説明する。なお、以下では、構成例1と重複する部分は説明を省略する場合がある。また、以下で示す図面において、上記構成例と同様の機能を有する部分についてはハッチングパターンを同じくし、符号を付さない場合もある。
【0142】
図6(A)は、トランジスタ100Dの上面図であり、図6(B)はトランジスタ100Dのチャネル長方向の断面図であり、図6(C)はトランジスタ100Dのチャネル幅方向の断面図である。
【0143】
トランジスタ100Dは、基板102と絶縁層103との間に導電層106を有する点で、トランジスタ100と主に相違している。導電層106は半導体層108及び導電層112と重畳する領域を有する。
【0144】
前述と異なる例を示す。図7(A)は、トランジスタ100Eの上面図であり、図7(B)はトランジスタ100Eのチャネル長方向の断面図であり、図7(C)はトランジスタ100Eのチャネル幅方向の断面図である。
【0145】
トランジスタ100Eは、基板102と絶縁層103との間に導電層106を有する点で、トランジスタ100Cと主に相違している。導電層106は半導体層108及び導電層112と重畳する領域を有する。
【0146】
トランジスタ100D及びトランジスタ100Eにおいて、導電層106は、第1のゲート電極(ボトムゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電層112は、第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)としての機能を有する。また、絶縁層103の一部は第1のゲート絶縁層として機能し、絶縁層110の一部は、第2のゲート絶縁層として機能する。
【0147】
半導体層108の、導電層112及び導電層106の少なくとも一方と重畳する部分は、チャネル形成領域として機能する。なお以下では説明を容易にするため、半導体層108の導電層112と重畳する部分をチャネル形成領域と呼ぶ場合があるが、実際には導電層112と重畳せずに、導電層106と重畳する部分(領域108nを含む部分)にもチャネルが形成しうる。
【0148】
また、図6(C)及び図7(C)に示すように、導電層106は、金属酸化物層114、絶縁層110、及び絶縁層103に設けられた開口部142を介して、導電層112と電気的に接続されていてもよい。これにより、導電層106と導電層112には、同じ電位を与えることができる。
【0149】
導電層106は、導電層112、導電層120a、または導電層120bと同様の材料を用いることができる。特に導電層106に銅を含む材料を用いると、配線抵抗を低減できるため好ましい。
【0150】
また、図6(A)、図6(C)、図7(A)及び図7(C)に示すように、チャネル幅方向において、導電層112及び導電層106が、半導体層108の端部よりも外側に突出していることが好ましい。このとき、図6(C)及び図7(C)に示すように、半導体層108のチャネル幅方向の全体が、絶縁層110と絶縁層103を介して、導電層112と導電層106に覆われた構成となる。
【0151】
このような構成とすることで、半導体層108を一対のゲート電極によって生じる電界で、電気的に取り囲むことができる。このとき特に、導電層106と導電層112に同じ電位を与えることが好ましい。これにより、半導体層108にチャネルを誘起させるための電界を効果的に印加できるため、トランジスタ100D及びトランジスタ100Eのオン電流を増大させることができる。そのため、トランジスタ100D及びトランジスタ100Eを微細化することも可能となる。
【0152】
なお、導電層112と導電層106とを接続しない構成としてもよい。このとき、一対のゲート電極の一方に定電位を与え、他方にトランジスタ100D及びトランジスタ100Eを駆動するための信号を与えてもよい。このとき、一方の電極に与える電位により、トランジスタ100D及びトランジスタ100Eを他方の電極で駆動する際のしきい値電圧を制御することもできる。
【0153】
以上が、構成例3についての説明である。
【0154】
<応用例>
以下では、不純物を含む半導体膜を容量素子の一方の電極として用い、トランジスタと容量素子とを同一面上に形成する例について説明する。
【0155】
図8(A)に示す断面図では、構成例1で例示したトランジスタ100に並べて、容量素子130Aが設けられている。
【0156】
また、図8(B)に示す断面図では、構成例3で例示したトランジスタ100Dに並べて、容量素子130Aが設けられている。
【0157】
容量素子130Aは、半導体層108cと、導電層120bとの間に、誘電体として機能する絶縁層110、及び絶縁層118が設けられた構成を有する。
【0158】
半導体層108cは、半導体層108と同一面上に設けられている。例えば半導体層108cは、半導体層108と同一の金属酸化物膜を加工した後に、領域108nと同じ不純物元素を添加することにより形成することができる。
【0159】
このような構成とすることで、工程を増やすことなく容量素子130Aを作製することができる。
【0160】
図8(C)に示す容量素子130Bは、導電層106cと、半導体層108cとの間に、誘電体として機能する絶縁層103が設けられた構成を有する。
【0161】
導電層106cは、導電層106と同一面上に設けられている。導電層106cは、導電層106と同一の導電膜を加工して形成することができる。
【0162】
容量素子130Bは、容量素子130Aに比べて誘電体の厚さを薄くできるため、より大容量の容量素子とすることができる。
【0163】
以上が応用例についての説明である。
【0164】
<半導体装置の構成要素>
次に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0165】
[基板]
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、シリコンや炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板102として用いてもよい。
【0166】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100等を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100等の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、トランジスタ100等は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0167】
[絶縁層103]
絶縁層103としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法等を適宜用いて形成することができる。また、絶縁層103としては、例えば、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層して形成することができる。なお、半導体層108との界面特性を向上させるため、絶縁層103において少なくとも半導体層108と接する領域は酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。また、絶縁層103には、加熱により酸素を放出する膜を用いることが好ましい。
【0168】
絶縁層103として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn酸化物などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。
【0169】
また、絶縁層103の半導体層108に接する側に窒化シリコン膜などの酸化物膜以外の膜を用いた場合、半導体層108と接する表面に対して酸素プラズマ処理などの前処理を行い、当該表面、または表面近傍を酸化することが好ましい。
【0170】
[導電膜]
ゲート電極として機能する導電層112及び導電層106、ソース電極として機能する導電層120a、ドレイン電極として機能する導電層120bとしては、クロム、銅、アルミニウム、金、銀、亜鉛、モリブデン、タンタル、チタン、タングステン、マンガン、ニッケル、鉄、コバルトから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
【0171】
また、導電層112、導電層106、導電層120a、及び導電層120bには、In-Sn酸化物、In-W酸化物、In-W-Zn酸化物、In-Ti酸化物、In-Ti-Sn酸化物、In-Zn酸化物、In-Sn-Si酸化物、In-Ga-Zn酸化物等の酸化物導電体または金属酸化物膜を適用することもできる。
【0172】
ここで、酸化物導電体(OC:OxideConductor)について説明を行う。例えば、半導体特性を有する金属酸化物に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、金属酸化物は、導電性が高くなり導電体化する。導電体化された金属酸化物を、酸化物導電体ということができる。
【0173】
また、導電層112等として、上記酸化物導電体(金属酸化物)を含む導電膜と、金属または合金を含む導電膜の積層構造としてもよい。金属または合金を含む導電膜を用いることで、配線抵抗を小さくすることができる。このとき、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層と接する側には酸化物導電体を含む導電膜を適用することが好ましい。
【0174】
また、導電層112、導電層106、導電層120a、導電層120bには、上述の金属元素の中でも、特にチタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。特に、窒化タンタル膜を用いると好適である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅、酸素、または水素に対して、高いバリア性を有し、且つ自身からの水素の放出が少ないため、半導体層108と接する導電膜、または半導体層108の近傍の導電膜として、好適に用いることができる。
【0175】
[絶縁層110]
トランジスタ100等のゲート絶縁膜として機能する絶縁層110は、PECVD法、スパッタリング法等により形成できる。絶縁層110としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を用いることができる。なお、絶縁層110を、2層の積層構造または3層以上の積層構造としてもよい。
【0176】
また、半導体層108と接する絶縁層110は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域を有することがより好ましい。別言すると、絶縁層110は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。例えば、酸素雰囲気下にて絶縁層110を形成すること、成膜後の絶縁層110に対して酸素雰囲気下での熱処理、プラズマ処理等を行うこと、または、絶縁層110上に酸素雰囲気下で酸化物膜を成膜することなどにより、絶縁層110中に酸素を供給することもできる。
【0177】
また、絶縁層110として、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率の高い酸化ハフニウム等の材料を用いることもできる。これにより絶縁層110の膜厚を厚くしトンネル電流によるリーク電流を抑制できる。特に結晶性を有する酸化ハフニウムは、非晶質の酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備えるため好ましい。
【0178】
[半導体層]
半導体層108がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットは、Inの原子数比がMの原子数比以上であることが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0179】
また、スパッタリングターゲットとしては、多結晶の酸化物を含むターゲットを用いると、結晶性を有する半導体層108を形成しやすくなるため好ましい。なお、成膜される半導体層108の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、半導体層108に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される半導体層108の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0180】
なお、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍と記載する場合、Inの原子数比を4としたとき、Gaの原子数比が1以上3以下であり、Znの原子数比が2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍であると記載する場合、Inの原子数比を5としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍であると記載する場合、Inの原子数比を1としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0181】
また、半導体層108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上である。このように、シリコンよりもエネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0182】
また、半導体層108は、非単結晶構造であると好ましい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC構造、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC構造は最も欠陥準位密度が低い。
【0183】
以下では、CAAC(c-axis aligned crystal)について説明する。CAACは結晶構造の一例を表す。
【0184】
CAAC構造とは、複数のナノ結晶(最大径が10nm未満である結晶領域)を有する薄膜などの結晶構造の一つであり、各ナノ結晶はc軸が特定の方向に配向し、かつa軸及びb軸は配向性を有さずに、ナノ結晶同士が粒界を形成することなく連続的に連結しているといった特徴を有する結晶構造である。特にCAAC構造を有する薄膜は、各ナノ結晶のc軸が、薄膜の厚さ方向、被形成面の法線方向、または薄膜の表面の法線方向に配向しやすいといった特徴を有する。
【0185】
CAAC-OS(Oxide Semiconductor)は結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0186】
ここで、結晶学において、単位格子を構成するa軸、b軸、及びc軸の3つの軸(結晶軸)について、特異的な軸をc軸とした単位格子を取ることが一般的である。特に層状構造を有する結晶では、層の面方向に平行な2つの軸をa軸及びb軸とし、層に交差する軸をc軸とすることが一般的である。このような層状構造を有する結晶の代表的な例として、六方晶系に分類されるグラファイトがあり、その単位格子のa軸及びb軸は劈開面に平行であり、c軸は劈開面に直交する。例えば層状構造であるYbFe型の結晶構造をとるInGaZnOの結晶は六方晶系に分類することができ、その単位格子のa軸及びb軸は層の面方向に平行となり、c軸は層(すなわちa軸及びb軸)に直交する。
【0187】
微結晶構造を有する酸化物半導体膜(微結晶酸化物半導体膜)は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することができない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、TEMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0188】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測され、当該リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合があるスポットが観測されうる。
【0189】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低い。ただし、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。従って、nc-OS膜はCAAC-OS膜と比べて、キャリア密度が高く、電子移動度が高くなる場合がある。従って、nc-OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を示す場合がある。
【0190】
nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比較して、成膜時の酸素流量比を小さくすることで形成することができる。また、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比較して、成膜時の基板温度を低くすることでも形成することができる。例えば、nc-OS膜は、基板温度を比較的低温(例えば130℃以下の温度)とした状態、または基板を加熱しない状態でも成膜することができるため、大型のガラス基板や、樹脂基板などに適しており、生産性を高めることができる。
【0191】
金属酸化物の結晶構造の一例について説明する。なお、以下では、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法にて成膜された金属酸化物を一例として説明する。上記ターゲットを用いて、基板温度を100℃以上130℃以下として、スパッタリング法により形成した金属酸化物は、nc(nano crystal)構造及びCAAC構造のいずれか一方の結晶構造、またはこれらが混在した構造をとりやすい。一方、基板温度を室温(R.T.)として、スパッタリング法により形成した金属酸化物は、ncの結晶構造をとりやすい。なお、ここでいう室温(R.T.)とは、基板を加熱しない場合の温度を含む。
【0192】
[金属酸化物の構成]
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0193】
なお、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
【0194】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与できる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0195】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0196】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0197】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0198】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0199】
以上が、構成要素についての説明である。
【0200】
<作製方法例1>
以下では、本発明の一態様のトランジスタの作製方法の例について説明する。ここでは、構成例3で例示したトランジスタ100Dを例に挙げて説明する。
【0201】
なお、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法や、熱CVD法などがある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0202】
また、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等の方法により形成することができる。
【0203】
また、半導体装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いて加工することができる。それ以外に、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0204】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。一つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう一つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0205】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外光(EUV:Extreme Ultra-violet)やX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0206】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0207】
図9及び図10に示す各図には、トランジスタ100Dの作製工程の各段階におけるチャネル長方向及びチャネル幅方向の断面を並べて示している。
【0208】
[導電層106の形成]
基板102上に導電膜を成膜し、これをエッチングにより加工して、ゲート電極として機能する導電層106を形成する。
【0209】
[絶縁層103の形成]
続いて、基板102、導電層106を覆って絶縁層103を形成する(図9(A))。絶縁層103はPECVD法、ALD法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0210】
絶縁層103を形成した後に、絶縁層103に対して酸素を供給する処理を行ってもよい。例えば酸素雰囲気下でのプラズマ処理または加熱処理などを行うことができる。または、プラズマイオンドーピング法やイオン注入法により、絶縁層103に酸素を供給してもよい。
【0211】
[半導体層108の形成]
続いて、絶縁層103上に金属酸化物膜を成膜し、これを加工することにより島状の半導体層108を形成する(図9(B))。
【0212】
金属酸化物膜は、金属酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により形成することが好ましい。
【0213】
また、金属酸化物膜を成膜する際に、酸素ガスの他に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。なお、金属酸化物膜を成膜する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流量比ともいう)が高いほど、金属酸化物膜の結晶性を高めることができ、信頼性の高いトランジスタを実現できる。一方、酸素流量比が低いほど、金属酸化物膜の結晶性が低くなり、オン電流が高められたトランジスタとすることができる。
【0214】
また、金属酸化物膜の成膜条件としては、基板温度を室温以上200℃以下、好ましくは基板温度を室温以上140℃以下とすればよい。例えば成膜温度を、室温以上140℃未満とすると、生産性が高くなり好ましい。また、基板温度を室温とする、または加熱しない状態で、金属酸化物膜を成膜することで、結晶性を低くすることができる。
【0215】
また、金属酸化物膜を成膜する前に、絶縁層103の表面に吸着した水や水素、有機物成分等を脱離させるための処理や、絶縁層103中に酸素を供給する処理を行うことが好ましい。例えば、減圧雰囲気下にて70℃以上200℃以下の温度で加熱処理を行うことができる。または、酸素を含む雰囲気下におけるプラズマ処理を行ってもよい。また、一酸化窒素ガスを含むプラズマ処理を行うと、絶縁層103の表面の有機物を好適に除去することができる。このような処理の後、絶縁層103の表面を大気に暴露することなく、連続して金属酸化物膜を成膜することが好ましい。
【0216】
金属酸化物膜の加工には、ウェットエッチング法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。このとき、半導体層108と重ならない絶縁層103の一部がエッチングされ、薄くなる場合がある。
【0217】
また、金属酸化物膜の成膜後、または半導体層108に加工した後、金属酸化物膜または半導体層108中の水素または水を除去するために加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板の歪み点未満、または250℃以上450℃以下、または300℃以上450℃以下とすることができる。
【0218】
加熱処理は、希ガス、または窒素を含む雰囲気で行うことができる。または、当該雰囲気で加熱した後、酸素を含む雰囲気で加熱してもよい。なお、上記加熱処理の雰囲気に水素、水などが含まれないことが好ましい。該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、加熱処理時間を短縮することができる。
【0219】
[絶縁膜110f、金属酸化物膜114fの形成]
続いて、絶縁層103及び半導体層108を覆って、絶縁層110となる絶縁膜110fと、金属酸化物層114となる金属酸化物膜114fを積層して成膜する(図9(C))。
【0220】
絶縁膜110fとしては、例えば酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの酸化物膜を、プラズマ化学気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置という)を用いて形成することが好ましい。また、マイクロ波を用いたPECVD法を用いて形成してもよい。
【0221】
金属酸化物膜114fは、例えば酸素を含む雰囲気下で成膜することが好ましい。特に、酸素を含む雰囲気下でスパッタリング法により形成することが好ましい。これにより、金属酸化物膜114fの成膜時に絶縁膜110fに酸素を供給することができる。
【0222】
金属酸化物膜114fを、上記半導体層108の場合と同様の金属酸化物を含む酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により形成する場合には、上記を援用することができる。
【0223】
例えば金属酸化物膜114fの成膜条件として、成膜ガスに酸素を用い、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法により、金属酸化物膜を形成してもよい。金属ターゲットとして、例えばアルミニウムを用いた場合には、酸化アルミニウム膜を成膜することができる。
【0224】
金属酸化物膜114fの成膜時に、成膜装置の成膜室内に導入する成膜ガスの全流量に対する酸素流量の割合(酸素流量比)、または成膜室内の酸素分圧が高いほど、絶縁膜110f中に供給される酸素を増やすことができる。酸素流量比または酸素分圧は、例えば50%以上100%以下、好ましくは65%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下とする。特に、酸素流量比100%とし、酸素分圧を100%にできるだけ近づけることが好ましい。
【0225】
このように、酸素を含む雰囲気下でスパッタリング法により金属酸化物膜114fを形成することにより、金属酸化物膜114fの成膜時に、絶縁膜110fへ酸素を供給するとともに、絶縁膜110fから酸素が脱離することを防ぐことができる。その結果、絶縁膜110fに極めて多くの酸素を閉じ込めることができる。そして、後の加熱処理によって、半導体層108に多くの酸素を供給することができる。その結果、半導体層108中の酸素欠損を低減でき、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0226】
また、金属酸化物膜114fの形成後に、加熱処理を行うことで、絶縁膜110fから半導体層108に酸素を供給してもよい。加熱処理は、窒素、酸素、希ガスのうち一以上を含む雰囲気下にて、200℃以上400℃以下の温度で行うことができる。
【0227】
続いて、金属酸化物膜114fの成膜後に、金属酸化物膜114f、絶縁膜110f、及び絶縁層103の一部をエッチングすることで、導電層106に達する開口を形成する。これにより、後に形成する導電層112と導電層106とを、当該開口を介して電気的に接続することができる。
【0228】
[絶縁層110、導電層112、金属酸化物層114の形成]
続いて、絶縁膜110f、金属酸化物膜114f上に、導電層112となる導電膜112fを成膜する(図9(D))。導電膜112fは、金属または合金のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により成膜することが好ましい。
【0229】
続いて、絶縁膜110f、導電膜112f及び金属酸化物膜114fの一部をエッチングし、絶縁層110、導電層112及び金属酸化物層114を形成する(図9(E))。絶縁膜110f、導電膜112f及び金属酸化物膜114fは、それぞれ同じレジストマスクを用いて加工することが好ましい。または、エッチング後の導電層112をハードマスクとして用いて、絶縁膜110f及び金属酸化物膜114fをエッチングしてもよい。
【0230】
これにより、上面形状が概略一致した絶縁層110、導電層112及び金属酸化物層114を形成することができる。
【0231】
[絶縁層118の形成]
続いて、絶縁層118を形成する(図10(A))。絶縁層118の形成には、プラズマCVD、減圧CVD、ECRCVD等のCVD法を用いることができる。原料ガスとして、不純物元素を含むガス(不純物元素源)を用いることができる。
【0232】
例えば、絶縁層118として不純物元素を含む酸化シリコンを形成する場合、原料ガスとして、シリコン源、酸素源及び不純物元素源を用いることができる。絶縁層118が不純物元素を含む酸化窒化シリコンの場合、原料ガスとして、シリコン源、酸素源、窒素源及び不純物元素源を用いることができる。シリコン源としてはTEOS(Tetraethyl orthosilicate)等の有機シラン、SiH(モノシラン)、Si(ジシラン)等の無機シランを用いることができる。酸素源としてはO、O、NO等を用いることができる。窒素源としてはNH、NO等を用いることができる。なお、NOは酸素源及び窒素源として用いることができる。不純物元素をリンとする場合、不純物元素源としてはPH(ホスフィン)等を用いることができる。不純物元素をホウ素とする場合、不純物元素源としてはB(ジボラン)等を用いることができる。また、これらの不純物元素源を複数用いてもよい。
【0233】
原料ガスに不純物元素源を含ませて絶縁層118を形成することで、絶縁層118の全体に不純物元素を含ませることができる。絶縁層118の全体に不純物元素を含むことで、絶縁層118が有する酸素が絶縁層118から脱離することを効率良く抑制できる。また、絶縁層118の膜厚方向における不純物元素の濃度を均一にすることができる。絶縁層118の膜厚方向において、不純物濃度の最小値に対する最大値の比は1.0以上10.0以下が好ましく、さらには1.0以上7.0以下が好ましく、さらには1.0以上5.0以下が好ましく、さらには1.0以上3.0以下が好ましい。さらに、基板面内における不純物元素の濃度のばらつきを低減できる。これにより、電気特性の良好な半導体装置を生産性高く製造することができる。
【0234】
また、原料ガスに不純物元素源を含ませて絶縁層118を形成することで、半導体層108へのダメージを抑制しつつ、半導体層108上に不純物元素源を含む絶縁層118を形成できる。絶縁層118形成時の半導体層108へのダメージを抑制できることで、半導体層108の結晶性が低下してしまうことを抑制できる。特に、導電層112と重ならない領域である領域108nの結晶性が低下することを、効率的に抑制できる。そのため、結晶性の低下により領域108nの電気抵抗が高まり、半導体装置の電気特性が低下してしまうことを抑制できる。また、導電層112と重なる領域の半導体層108、および導電層112と重ならない領域である領域108nはどちらも結晶性を有し、双方の結晶性を同程度とすることができる。
【0235】
なお、絶縁層118の形成にプラズマCVD法を用いることで、半導体層108に効率良く酸素欠損(V)を形成できる。絶縁層118をプラズマCVD法により形成する場合、成膜温度が高すぎると、領域108n等に含まれる不純物が、半導体層108のチャネル形成領域を含む周辺部に拡散することや、領域108nの電気抵抗が上昇してしまう恐れがある。絶縁層118の成膜温度としては、例えば150℃以上400℃以下、好ましくは180℃以上360℃以下、より好ましくは200℃以上250℃以下とすることが好ましい。絶縁層118を低温で成膜することにより、チャネル長の短いトランジスタであっても、良好な電気特性を付与することができる。
【0236】
また、絶縁層118の形成の段階で、半導体層108の絶縁層118と接する領域が不純物元素を含む場合がある。
【0237】
次に、前述とは異なる絶縁層118の形成方法について、説明する。
【0238】
絶縁層118は、絶縁層118となる絶縁層を形成した後に、該絶縁層に不純物元素を供給(添加、または注入ともいう)する処理を行うことでも形成できる。絶縁層118となる絶縁層として、不純物元素を含まない酸化物を用いることができる。また、絶縁層118となる絶縁層として、不純物元素を含む酸化物を用いてもよい。
【0239】
絶縁層118となる絶縁層の形成には、プラズマCVD、減圧CVD、ECRCVD等のCVD法を用いることができる。例えば、絶縁層118となる絶縁層として酸化シリコンを形成する場合、原料ガスとして、シリコン源及び酸素源を用いることができる。絶縁層118となる絶縁層として酸化窒化シリコンを形成する場合、原料ガスとして、シリコン源、酸素源及び窒素源を用いることができる。
【0240】
絶縁層118となる絶縁層への不純物元素の供給は、プラズマイオンドーピング法、またはイオン注入法を好適に用いることができる。これらの方法は、深さ方向の濃度プロファイルを、イオンの加速電圧とドーズ量等により、高い精度で制御することができる。プラズマイオンドーピング法を用いることで、生産性を高めることができる。また質量分離を用いたイオン注入法を用いることで、供給される不純物元素の純度を高めることができる。
【0241】
不純物元素の供給処理において、絶縁層118となる絶縁層中で不純物元素濃度が最も高くなるように、処理条件を制御することが好ましい。これにより、低い加速電圧での処理が可能となり、生産性を高めることができる。
【0242】
絶縁層118となる絶縁層に供給する不純物元素の原料ガスとして、前述の不純物元素を含むガスを用いることができる。ホウ素を供給する場合、代表的にはBガスやBFガスなどを用いることができる。またリンを供給する場合には、代表的にはPHガスを用いることができる。また、これらの原料ガスを希ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。
【0243】
その他、原料ガスとして、CH、N、NH、AlH、AlCl、SiH、Si、F、HF、H、(CMg、及び希ガス等を用いることができる。また、イオン源は気体に限られず、固体や液体を加熱して気化させたものを用いてもよい。
【0244】
不純物元素の供給は、絶縁層118となる絶縁層の組成や密度、厚さなどを考慮して、加速電圧やドーズ量などの条件を設定することで制御することができる。
【0245】
例えば、イオン注入法またはプラズマイオンドーピング法でホウ素の添加を行う場合、加速電圧は例えば5kV以上100kV以下、好ましくは7kV以上70kV以下、より好ましくは10kV以上50kV以下の範囲とすることができる。またドーズ量は、例えば1×1013ions/cm以上1×1017ions/cm以下、好ましくは1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下、より好ましくは1×1015ions/cm以上、3×1016ions/cm以下の範囲とすることができる。
【0246】
また、イオン注入法またはプラズマイオンドーピング法でリンの添加を行う場合、加速電圧は、例えば10kV以上100kV以下、好ましくは30kV以上90kV以下、より好ましくは40kV以上80kV以下の範囲とすることができる。またドーズ量は、例えば1×1013ions/cm以上1×1017ions/cm以下、好ましくは1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下、より好ましくは1×1015ions/cm以上、3×1016ions/cm以下の範囲とすることができる。
【0247】
なお、不純物元素の供給方法としてはこれに限られず、例えばプラズマ処理や、加熱による熱拡散を利用した処理などを用いてもよい。プラズマ処理法の場合、添加する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
【0248】
絶縁層118となる絶縁層中で不純物元素濃度が最も高くなるように、処理条件を制御することにより、半導体層108が結晶性を有する場合であっても、不純物元素の供給の際に結晶性が損なわれてしまうことを抑制できる。そのため、結晶性の低下により電気抵抗が増大してしまうような場合には好適である。
【0249】
[加熱処理]
絶縁層118の形成後、加熱処理を行う。加熱処理は、窒素、酸素、希ガスのうち一以上を含む雰囲気下にて、150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下の温度で行うことが好ましい。当該加熱処理により、半導体層108にVHが形成され、低抵抗な領域108nが形成される(図10(B))。例えば、上記温度で加熱処理を行うことにより、絶縁層118が有する不純物元素が拡散し不純物元素を含む領域108n及び領域103dが形成されうる。なお、加熱処理の温度が高すぎる(例えば500℃以上)と、不純物元素がチャネル形成領域内にまで拡散し、トランジスタの電気特性や信頼性の悪化を招く恐れがある。
【0250】
また、加熱処理によって、半導体層108のチャネル形成領域や絶縁層110が有する欠陥を、修復できる場合もある。
【0251】
また、加熱処理により、絶縁層110から半導体層108のチャネル形成領域に酸素を供給することができる。このとき、絶縁層110の側面は絶縁層118と接しているため、絶縁層110から絶縁層118側へ酸素が放出されることが抑制される。その結果、領域108nの抵抗が高くなることを効果的に防ぐことができる。さらにこのとき、絶縁層110から放出される酸素を選択的に当該チャネル形成領域に供給することができる。
【0252】
また、領域108nはチャネル形成領域よりも酸素欠損が多く存在した状態であるため、加熱処理により、当該酸素欠損によってチャネル形成領域中に含まれる水素をゲッタリングする効果が期待できる。これによりチャネル形成領域中の水素濃度を低減することができ、より信頼性の高いトランジスタを実現できる。また、チャネル形成領域から供給された水素と、領域108n中の酸素欠損とが結合してキャリア生成源となるため、より低抵抗化した領域108nを実現できる。
【0253】
[開口部141a、開口部141bの形成]
続いて、絶縁層118の所望の位置にリソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁層118の一部をエッチングすることで、領域108nに達する開口部141a及び開口部141bを形成する。
【0254】
[導電層120a、導電層120bの形成]
続いて、開口部141a及び開口部141bを覆うように、絶縁層118上に導電膜を成膜し、当該導電膜を所望の形状に加工することで、導電層120a及び導電層120bを形成する(図10(C))。
【0255】
以上の工程により、トランジスタ100Dを作製することができる。例えば、トランジスタ100Dを表示装置の画素に適用する場合には、この後に、保護絶縁層、平坦化層、画素電極、または配線のうち1以上を形成する工程を追加すればよい。
【0256】
以上が作製方法例1についての説明である。
【0257】
<作製方法例2>
以下では、本発明の一態様のトランジスタの作製方法の例について説明する。ここでは、構成例3で例示したトランジスタ100Eを例に挙げて説明する。
【0258】
図11に示す各図には、トランジスタ100Eの作製工程の各段階におけるチャネル長方向及びチャネル幅方向の断面を並べて示している。
【0259】
導電膜112fを形成するまでは、<作製方法例1>に示した作製方法と同様である。よって、図9(A)乃至図9(D)に係るトランジスタの作製方法を参酌することができる。
【0260】
[絶縁層110、導電層112、金属酸化物層114の形成]
次に、絶縁膜110f、導電膜112f及び金属酸化物膜114fの一部をエッチングし、絶縁層110、導電層112及び金属酸化物層114を形成する(図11(A))。エッチングの際に、導電層112と重ならない領域の絶縁膜110fの一部を残すことにより、異なる膜厚を有する絶縁層110を形成できる。また、導電層112と重ならない領域の全ての絶縁膜110fをエッチングせずに、半導体層108の上面及び側面、並びに絶縁層103を覆った状態とすることで、導電層112等のエッチングの際に、半導体層108や絶縁層103の一部がエッチングされ、膜厚が薄くなることを防ぐことができる。
【0261】
絶縁膜110f、導電膜112f及び金属酸化物膜114fは、それぞれ同じレジストマスクを用いて加工することが好ましい。または、エッチング後の導電層112をハードマスクとして用いて、絶縁膜110f及び金属酸化物膜114fをエッチングしてもよい。
【0262】
これにより、上面形状が概略一致した導電層112及び金属酸化物層114を形成することができる。
【0263】
[絶縁層118の形成]
続いて、絶縁層118を形成する(図11(A))。絶縁層118の形成には、プラズマCVD、減圧CVD、ECRCVD等のCVD法を用いることができる。原料ガスとして、不純物元素を含むガス(不純物元素源)を用いることができる。絶縁層118の形成については、前述の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0264】
前述とは異なる絶縁層118の形成方法について、説明する。
【0265】
絶縁層118は、絶縁層118となる絶縁層を形成した後に、該絶縁層に不純物元素を供給(添加、または注入ともいう)する処理を行うことでも形成できる。絶縁層118となる絶縁層として、不純物元素を含まない酸化物を用いることができる。また、絶縁層118となる絶縁層として、不純物元素を含む酸化物を用いることができる。また、絶縁層118となる絶縁層として、不純物元素を含まない酸化物を用いてもよい。
【0266】
絶縁層118となる絶縁層の形成については、前述の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0267】
絶縁層118となる絶縁層への不純物元素の供給は、プラズマイオンドーピング法、またはイオン注入法を好適に用いることができる。絶縁層118となる絶縁層への不純物元素の供給については、前述の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0268】
例えば、イオン注入法またはプラズマイオンドーピング法でホウ素の添加を行う場合、加速電圧は例えば5kV以上100kV以下、好ましくは7kV以上80kV以下、より好ましくは10kV以上60kV以下の範囲とすることができる。またドーズ量は、例えば1×1013ions/cm以上1×1017ions/cm以下、好ましくは1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下、より好ましくは1×1015ions/cm以上、3×1016ions/cm以下の範囲とすることができる。
【0269】
また、イオン注入法またはプラズマイオンドーピング法でリンの添加を行う場合、加速電圧は、例えば10kV以上100kV以下、好ましくは30kV以上100kV以下、より好ましくは40kV以上100kV以下の範囲とすることができる。またドーズ量は、例えば1×1013ions/cm以上1×1017ions/cm以下、好ましくは1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下、より好ましくは1×1015ions/cm以上、3×1016ions/cm以下の範囲とすることができる。
【0270】
[加熱処理]
絶縁層118の形成後、加熱処理を行う。当該加熱処理により、絶縁層118が有する不純物元素が絶縁層110を介して半導体層108に拡散する。半導体層108に拡散した不純物元素は半導体層108が有する酸素と結合し、酸素欠損(V)が形成される。さらに当該酸素欠損(V)は、半導体層108が有する水素と結合してVHとなり、低抵抗な領域108nが形成される(図11(B))。また、絶縁層118と接する絶縁層103にも不純物元素が拡散し、領域103dが形成される。加熱処理については、前述の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0271】
[開口部141a、開口部141bの形成]
続いて、絶縁層118の所望の位置にリソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁層118及び絶縁層110の一部をエッチングすることで、領域108nに達する開口部141a及び開口部141bを形成する。
【0272】
[導電層120a、導電層120bの形成]
続いて、開口部141a及び開口部141bを覆うように、絶縁層118上に導電膜を成膜し、当該導電膜を所望の形状に加工することで、導電層120a及び導電層120bを形成する(図11(C))。
【0273】
以上の工程により、トランジスタ100Eを作製することができる。例えば、トランジスタ100Eを表示装置の画素に適用する場合には、この後に、保護絶縁層、平坦化層、画素電極、または配線のうち1以上を形成する工程を追加すればよい。
【0274】
以上が作製方法例2についての説明である。
【0275】
本実施の形態で例示した構成例、作製方法例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、作製方法例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0276】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0277】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の一例について説明を行う。
【0278】
[構成例]
図12(A)に、表示装置700の上面図を示す。表示装置700は、シール材712により貼りあわされた第1の基板701と第2の基板705を有する。また第1の基板701、第2の基板705、及びシール材712で封止される領域において、第1の基板701上に画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706が設けられる。また画素部702には、複数の表示素子が設けられる。
【0279】
また、第1の基板701の第2の基板705と重ならない部分に、FPC716(FPC:Flexible printed circuit)が接続されるFPC端子部708が設けられている。FPC716によって、FPC端子部708及び信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706のそれぞれに各種信号等が供給される。
【0280】
ゲートドライバ回路部706は、複数設けられていてもよい。また、ゲートドライバ回路部706及びソースドライバ回路部704は、それぞれ半導体基板等に別途形成され、パッケージされたICチップの形態であってもよい。当該ICチップは、第1の基板701上、またはFPC716に実装することができる。
【0281】
画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706が有するトランジスタに、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタを適用することができる。
【0282】
画素部702に設けられる表示素子としては、液晶素子、発光素子などが挙げられる。液晶素子としては、透過型の液晶素子、反射型の液晶素子、半透過型の液晶素子などを用いることができる。また、発光素子としては、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、QLED(Quantum-dot LED)、半導体レーザなどの、自発光性の発光素子が挙げられる。また、シャッター方式または光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子や、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、または電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示素子などを用いることもできる。
【0283】
図12(B)に示す表示装置700Aは、大型の画面を有する電子機器に好適に用いることのできる表示装置である。例えばテレビジョン装置、モニタ装置、パーソナルコンピュータ(ノート型またはデスクトップ型を含む)、タブレット端末、デジタルサイネージなどに好適に用いることができる。
【0284】
表示装置700Aは、複数のソースドライバIC721と、一対のゲートドライバ回路部722を有する。
【0285】
複数のソースドライバIC721は、それぞれFPC723に取り付けられている。また、複数のFPC723は、一方の端子が基板701に、他方の端子がプリント基板724にそれぞれ接続されている。FPC723を折り曲げることで、プリント基板724を画素部702の裏側に配置して、電気機器に実装することができ、電子機器の省スペース化を図ることができる。
【0286】
一方、ゲートドライバ回路部722は、基板701上に形成されている。これにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0287】
このような構成とすることで、大型で且つ高解像度の表示装置を実現できる。例えば画面サイズが対角30インチ以上、40インチ以上、50インチ以上、または60インチ以上の表示装置にも適用することができる。また、解像度が4K2K、または8K4Kなどといった極めて高解像度の表示装置を実現することができる。
【0288】
[断面構成例]
以下では、表示素子として液晶素子を用いる構成、及びEL素子を用いる構成について、図13乃至図15を用いて説明する。なお、図13乃至図15は、それぞれ図12(A)に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図である。図13及び図14は、表示素子として液晶素子を用いた構成であり、図15は、EL素子を用いた構成である。
【0289】
[表示装置の共通部分に関する説明]
図13乃至図15に示す表示装置は、引き回し配線部711と、画素部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。引き回し配線部711は、信号線710を有する。画素部702は、トランジスタ750及び容量素子790を有する。ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を有する。図14では、容量素子790が無い場合を示している。
【0290】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、実施の形態1で例示したトランジスタを適用できる。
【0291】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くできる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くでき、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を低減する効果を奏する。
【0292】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、シリコンウェハ等により形成された駆動回路を適用しない構成も可能であり、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0293】
図13及び図15に示す容量素子790は、トランジスタ750が有する半導体層と同一の膜を加工して形成され、低抵抗化された下部電極と、ソース電極またはドレイン電極と同一の導電膜を加工して形成される上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750を覆う2層の絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0294】
また、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量素子790上には平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0295】
画素部702が有するトランジスタ750と、ソースドライバ回路部704が有するトランジスタ752とは、異なる構造のトランジスタを用いてもよい。例えばいずれか一方にトップゲート型のトランジスタを適用し、他方にボトムゲート型のトランジスタを適用した構成としてもよい。なお、上記のソースドライバ回路部704を、ゲートドライバ回路部と読み替えてもよい。
【0296】
信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極等と同じ導電膜で形成されている。このとき、銅元素を含む材料等の低抵抗な材料を用いると、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となるため好ましい。
【0297】
FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC716を有する。接続電極760は、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して電気的に接続される。ここでは、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極等と同じ導電膜で形成されている。
【0298】
第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板、またはプラスチック基板等の可撓性を有する基板を用いることができる。
【0299】
また、第2の基板705側には、遮光膜738と、着色膜736と、これらに接する絶縁膜734と、が設けられる。
【0300】
[液晶素子を用いる表示装置の構成例]
図13に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電層772、導電層774、及びこれらの間に液晶層776を有する。導電層774は、第2の基板705側に設けられ、共通電極としての機能を有する。また、導電層772は、トランジスタ750が有するソース電極またはドレイン電極と電気的に接続される。導電層772は、平坦化絶縁膜770上に形成され、画素電極として機能する。
【0301】
導電層772には、可視光に対して透光性の材料、または反射性の材料を用いることができる。透光性の材料としては、例えば、インジウム、亜鉛、スズ等を含む酸化物材料を用いるとよい。反射性の材料としては、例えば、アルミニウム、銀等を含む材料を用いるとよい。
【0302】
導電層772に反射性の材料を用いると、表示装置700は反射型の液晶表示装置となる。一方、導電層772に透光性の材料を用いると、透過型の液晶表示装置となる。反射型の液晶表示装置の場合、視認側に偏光板を設ける。一方、透過型の液晶表示装置の場合、液晶素子を挟むように一対の偏光板を設ける。
【0303】
図14に示す表示装置700は、横電界方式(例えば、FFSモード)の液晶素子775を用いる例を示す。導電層772上に絶縁層773を介して、共通電極として機能する導電層774が設けられる。導電層772と導電層774との間に生じる電界によって、液晶層776の配向状態を制御することができる。
【0304】
図14において、導電層774、絶縁層773、導電層772の積層構造により保持容量を構成することができる。そのため、別途容量素子を設ける必要がなく、開口率を高めることができる。
【0305】
また、図13及び図14において図示しないが、液晶層776と接する配向膜を設ける構成としてもよい。また、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)、及びバックライト、サイドライトなどの光源を適宜設けることができる。
【0306】
液晶層776には、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。
【0307】
また、液晶素子のモードとしては、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、ゲストホストモードなどを用いることができる。
【0308】
また、液晶層776に高分子分散型液晶や、高分子ネットワーク型液晶などを用いた、散乱型の液晶を用いることもできる。このとき、着色膜736を設けずに白黒表示を行う構成としてもよいし、着色膜736を用いてカラー表示を行う構成としてもよい。
【0309】
また、液晶素子の駆動方法として、継時加法混色法に基づいてカラー表示を行う、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式ともいう)を適用してもよい。その場合、着色膜736を設けない構成とすることができる。時間分割表示方式を用いた場合、例えばR(赤色)、G(緑色)、B(青色)のそれぞれの色を呈する副画素を設ける必要がないため、画素の開口率を向上させることや、精細度を高められるなどの利点がある。
【0310】
[発光素子を用いる表示装置]
図15に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電層772、EL層786、及び導電膜788を有する。EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0311】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、などが挙げられる。
【0312】
図15に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770上に導電層772の一部を覆う絶縁膜730が設けられる。ここで、発光素子782は透光性の導電膜788有し、トップエミッション型の発光素子である。なお、発光素子782は、導電層772側に光を射出するボトムエミッション構造や、導電層772及び導電膜788の双方に光を射出するデュアルエミッション構造としてもよい。
【0313】
また、着色膜736は発光素子782と重なる位置に設けられ、遮光膜738は絶縁膜730と重なる位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に設けられている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。また、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、EL層786を画素毎に島状または画素列毎に縞状に形成する、すなわち塗り分けにより形成する場合においては、着色膜736を設けない構成としてもよい。
【0314】
[表示装置に入力装置を設ける構成例]
また、図13乃至図15に示す表示装置700に入力装置を設けてもよい。当該入力装置としては、例えば、タッチセンサ等が挙げられる。
【0315】
例えばセンサの方式としては、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。または、これら2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0316】
なお、タッチパネルの構成は、入力装置を一対の基板の内側に形成する、所謂インセル型のタッチパネル、入力装置を表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタッチパネル、または表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネルなどがある。
【0317】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0318】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0319】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、図16を用いて説明を行う。
【0320】
図16(A)に示す表示装置は、画素部502と、駆動回路部504と、保護回路506と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
【0321】
画素部502や駆動回路部504が有するトランジスタに、本発明の一態様のトランジスタを適用することができる。また保護回路506にも、本発明の一態様のトランジスタを適用してもよい。
【0322】
画素部502は、X行Y列(X、Yはそれぞれ独立に2以上の自然数)に配置された複数の表示素子を駆動する複数の画素回路501を有する。
【0323】
駆動回路部504は、ゲート線GL_1乃至GL_Xに走査信号を出力するゲートドライバ504a、データ線DL_1乃至DL_Yにデータ信号を供給するソースドライバ504bなどの駆動回路を有する。ゲートドライバ504aは、少なくともシフトレジスタを有する構成とすればよい。またソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0324】
端子部507は、外部の回路から表示装置に電源、制御信号、及び画像信号等を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0325】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。図16(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線である走査線GL、またはソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DL等の各種配線に接続される。
【0326】
また、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bは、それぞれ画素部502と同じ基板上に設けられていてもよいし、ゲートドライバ回路またはソースドライバ回路が別途形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)をCOGやTAB(Tape Automated Bonding)によって基板に実装する構成としてもよい。
【0327】
また、図16(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図16(B)及び図16(C)に示す構成とすることができる。
【0328】
図16(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量素子560と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、走査線GL_m、電位供給線VL等が接続されている。
【0329】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0330】
また、図16(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素子562と、発光素子572と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、走査線GL_m、電位供給線VL_a、電源供給線VL_b等が接続されている。
【0331】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。トランジスタ554のゲートに与えられる電位に応じて、発光素子572に流れる電流が制御されることにより、発光素子572からの発光輝度が制御される。
【0332】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0333】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0334】
(実施の形態4)
以下では、画素に表示される階調を補正するためのメモリを備える画素回路と、これを有する表示装置について説明する。実施の形態1で例示したトランジスタは、以下で例示する画素回路に用いられるトランジスタに適用することができる。
【0335】
[回路構成]
図17(A)に、画素回路400の回路図を示す。画素回路400は、トランジスタM1、トランジスタM2、容量C1、及び回路401を有する。また画素回路400には、配線S1、配線S2、配線G1、及び配線G2が接続される。
【0336】
トランジスタM1は、ゲートが配線G1と、ソース及びドレインの一方が配線S1と、他方が容量C1の一方の電極と、それぞれ接続する。トランジスタM2は、ゲートが配線G2と、ソース及びドレインの一方が配線S2と、他方が容量C1の他方の電極、及び回路401と、それぞれ接続する。
【0337】
回路401は、少なくとも一の表示素子を含む回路である。表示素子としては様々な素子を用いることができるが、代表的には有機EL素子やLED素子などの発光素子、液晶素子、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子等を適用することができる。
【0338】
トランジスタM1と容量C1とを接続するノードをN1、トランジスタM2と回路401とを接続するノードをN2とする。
【0339】
画素回路400は、トランジスタM1をオフ状態とすることで、ノードN1の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とすることで、ノードN2の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とした状態で、トランジスタM1を介してノードN1に所定の電位を書き込むことで、容量C1を介した容量結合により、ノードN1の電位の変位に応じてノードN2の電位を変化させることができる。
【0340】
ここで、トランジスタM1、トランジスタM2のうちの一方または両方に、実施の形態1で例示した、酸化物半導体が適用されたトランジスタを適用することができる。そのため極めて低いオフ電流により、ノードN1及びノードN2の電位を長期間に亘って保持することができる。なお、各ノードの電位を保持する期間が短い場合(具体的には、フレーム周波数が30Hz以上である場合等)には、シリコン等の半導体を適用したトランジスタを用いてもよい。
【0341】
[駆動方法例]
続いて、図17(B)を用いて、画素回路400の動作方法の一例を説明する。図17(B)は、画素回路400の動作に係るタイミングチャートである。なおここでは説明を容易にするため、配線抵抗などの各種抵抗や、トランジスタや配線などの寄生容量、及びトランジスタのしきい値電圧などの影響は考慮しない。
【0342】
図17(B)に示す動作では、1フレーム期間を期間T1と期間T2とに分ける。期間T1はノードN2に電位を書き込む期間であり、期間T2はノードN1に電位を書き込む期間である。
【0343】
[期間T1]
期間T1では、配線G1と配線G2の両方に、トランジスタをオン状態にする電位を与える。また、配線S1には固定電位である電位Vrefを供給し、配線S2には第1データ電位Vを供給する。
【0344】
ノードN1には、トランジスタM1を介して配線S1から電位Vrefが与えられる。また、ノードN2には、トランジスタM2を介して第1データ電位Vが与えられる。したがって、容量C1には電位差V-Vrefが保持された状態となる。
【0345】
[期間T2]
続いて期間T2では、配線G1にはトランジスタM1をオン状態とする電位を与え、配線G2にはトランジスタM2をオフ状態とする電位を与える。また、配線S1には第2データ電位Vdataを供給する。配線S2には所定の定電位を与える、またはフローティングとしてもよい。
【0346】
ノードN1には、トランジスタM1を介して第2データ電位Vdataが与えられる。このとき、容量C1による容量結合により、第2データ電位Vdataに応じてノードN2の電位が電位dVだけ変化する。すなわち、回路401には、第1データ電位Vwと電位dVを足した電位が入力されることとなる。なお、図17(B)ではdVが正の値であるように示しているが、負の値であってもよい。すなわち、電位Vdataが電位Vrefより低くてもよい。
【0347】
ここで、電位dVは、容量C1の容量値と、回路401の容量値によって概ね決定される。容量C1の容量値が回路401の容量値よりも十分に大きい場合、電位dVは第2データ電位Vdataに近い電位となる。
【0348】
このように、画素回路400は、2種類のデータ信号を組み合わせて表示素子を含む回路401に供給する電位を生成することができるため、画素回路400内で階調の補正を行うことが可能となる。
【0349】
また画素回路400は、配線S1及び配線S2に供給可能な最大電位を超える電位を生成することも可能となる。例えば発光素子を用いた場合では、ハイダイナミックレンジ(HDR)表示等を行うことができる。また、液晶素子を用いた場合では、オーバードライブ駆動等を実現できる。
【0350】
[適用例]
[液晶素子を用いた例]
図17(C)に示す画素回路400LCは、回路401LCを有する。回路401LCは、液晶素子LCと、容量C2とを有する。
【0351】
液晶素子LCは、一方の電極がノードN2及び容量C2の一方の電極と、他方の電極が電位Vcom2が与えられる配線と接続する。容量C2は、他方の電極が電位Vcom1が与えられる配線と接続する。
【0352】
容量C2は保持容量として機能する。なお、容量C2は不要であれば省略することができる。
【0353】
画素回路400LCは、液晶素子LCに高い電圧を供給することができるため、例えばオーバードライブ駆動により高速な表示を実現すること、駆動電圧の高い液晶材料を適用することなどができる。また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、使用温度や液晶素子LCの劣化状態等に応じて階調を補正することもできる。
【0354】
[発光素子を用いた例]
図17(D)に示す画素回路400ELは、回路401ELを有する。回路401ELは、発光素子EL、トランジスタM3、及び容量C2を有する。
【0355】
トランジスタM3は、ゲートがノードN2及び容量C2の一方の電極と、ソース及びドレインの一方が電位VHが与えられる配線と、他方が発光素子ELの一方の電極と、それぞれ接続される。容量C2は、他方の電極が電位Vcomが与えられる配線と接続する。発光素子ELは、他方の電極が電位Vが与えられる配線と接続する。
【0356】
トランジスタM3は、発光素子ELに供給する電流を制御する機能を有する。容量C2は保持容量として機能する。容量C2は不要であれば省略することができる。
【0357】
なお、ここでは発光素子ELのアノード側がトランジスタM3と接続する構成を示しているが、カソード側にトランジスタM3を接続してもよい。そのとき、電位Vと電位Vの値を適宜変更することができる。
【0358】
画素回路400ELは、トランジスタM3のゲートに高い電位を与えることで、発光素子ELに大きな電流を流すことができるため、例えばHDR表示などを実現することができる。また、また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、トランジスタM3や発光素子ELの電気特性のばらつきの補正を行うこともできる。
【0359】
なお、図17(C)及び図17(D)で例示した回路に限られず、別途トランジスタや容量などを追加した構成としてもよい。
【0360】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0361】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いて作製することができる表示モジュールについて説明する。
【0362】
図18(A)に示す表示モジュール6000は、上部カバー6001と下部カバー6002との間に、FPC6005が接続された表示装置6006、フレーム6009、プリント基板6010、及びバッテリー6011を有する。
【0363】
例えば、本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示装置6006に用いることができる。表示装置6006により、極めて消費電力の低い表示モジュールを実現することができる。
【0364】
上部カバー6001及び下部カバー6002は、表示装置6006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0365】
表示装置6006はタッチパネルとしての機能を有していてもよい。
【0366】
フレーム6009は、表示装置6006の保護機能、プリント基板6010の動作により発生する電磁波を遮断する機能、放熱板としての機能等を有していてもよい。
【0367】
プリント基板6010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路、バッテリー制御回路等を有する。バッテリー6011による電源であってもよい。
【0368】
図18(B)は、光学式のタッチセンサを備える表示モジュール6000の断面概略図である。
【0369】
表示モジュール6000は、プリント基板6010に設けられた発光部6015及び受光部6016を有する。また、上部カバー6001と下部カバー6002により囲まれた領域に一対の導光部(導光部6017a、導光部6017b)を有する。
【0370】
表示装置6006は、フレーム6009を間に介してプリント基板6010やバッテリー6011と重ねて設けられている。表示装置6006とフレーム6009は、導光部6017a、導光部6017bに固定されている。
【0371】
発光部6015から発せられた光6018は、導光部6017aにより表示装置6006の上部を経由し、導光部6017bを通って受光部6016に達する。例えば指やスタイラスなどの被検知体により、光6018が遮られることにより、タッチ操作を検出することができる。
【0372】
発光部6015は、例えば表示装置6006の隣接する2辺に沿って複数設けられる。受光部6016は、発光部6015と対向する位置に複数設けられる。これにより、タッチ操作がなされた位置の情報を取得することができる。
【0373】
発光部6015は、例えばLED素子などの光源を用いることができ、特に、赤外線を発する光源を用いることが好ましい。受光部6016は、発光部6015が発する光を受光し、電気信号に変換する光電素子を用いることができる。好適には、赤外線を受光可能なフォトダイオードを用いることができる。
【0374】
光6018を透過する導光部6017a、導光部6017bにより、発光部6015と受光部6016とを表示装置6006の下側に配置することができ、外光が受光部6016に到達してタッチセンサが誤動作することを抑制できる。特に、可視光を吸収し、赤外線を透過する樹脂を用いると、タッチセンサの誤動作をより効果的に抑制できる。
【0375】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0376】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いて作製された表示装置を備える電子機器について説明する。
【0377】
以下で例示する電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を備えるものである。したがって、高い解像度が実現された電子機器である。また高い解像度と、大きな画面が両立された電子機器とすることができる。
【0378】
本発明の一態様の電子機器の表示部には、例えばフルハイビジョン、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。
【0379】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、ノート型のパーソナルコンピュータ、モニタ装置、デジタルサイネージ、パチンコ機、ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0380】
本発明の一態様が適用された電子機器は、家屋やビルの内壁または外壁、自動車等の内装または外装等が有する平面または曲面に沿って組み込むことができる。
【0381】
図19(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示す図である。
【0382】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッターボタン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り付けられている。
【0383】
なおカメラ8000は、レンズ8006と筐体とが一体となっていてもよい。
【0384】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押す、またはタッチパネルとして機能する表示部8002をタッチすることにより撮像することができる。
【0385】
筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー8100のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0386】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する。
【0387】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントにより、カメラ8000に取り付けられている。ファインダー8100はカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示させることができる。
【0388】
ボタン8103は、電源ボタン等としての機能を有する。
【0389】
カメラ8000の表示部8002、及びファインダー8100の表示部8102に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。なお、ファインダーが内蔵されたカメラ8000であってもよい。
【0390】
図19(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0391】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体8203、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バッテリー8206が内蔵されている。
【0392】
ケーブル8205は、バッテリー8206から本体8203に電力を供給する。本体8203は無線受信機等を備え、受信した映像情報を表示部8204に表示させることができる。また、本体8203はカメラを備え、使用者の眼球やまぶたの動きの情報を入力手段として用いることができる。
【0393】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に、使用者の眼球の動きに伴って流れる電流を検知可能な複数の電極が設けられ、視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流により、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部8201には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使用者の生体情報を表示部8204に表示する機能や、使用者の頭部の動きに合わせて表示部8204に表示する映像を変化させる機能を有していてもよい。
【0394】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0395】
図19(C)、図19(D)及び図19(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図である。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バンド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0396】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。なお、表示部8302を湾曲して配置させると、使用者が高い臨場感を感じることができるため好ましい。また、表示部8302の異なる領域に表示された別の画像を、レンズ8305を通して視認することで、視差を用いた3次元表示等を行うこともできる。なお、表示部8302を1つ設ける構成に限られず、表示部8302を2つ設け、使用者の片方の目につき1つの表示部を配置してもよい。
【0397】
なお、表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置は、極めて精細度が高いため、図19(E)のようにレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より現実感の高い映像を表示することができる。
【0398】
図20(A)乃至図20(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0399】
図20(A)乃至図20(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。なお、電子機器の機能はこれらに限られず、様々な機能を有することができる。電子機器は、複数の表示部を有していてもよい。また、電子機器にカメラ等を設け、静止画や動画を撮影し、記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0400】
図20(A)乃至図20(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0401】
図20(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9100は、大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0402】
図20(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。図20(B)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話などの着信の通知、電子メールやSNSなどの題名、送信者名、日時、時刻、バッテリーの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050などを表示してもよい。
【0403】
図20(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0404】
図20(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチとして用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うことや、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0405】
図20(E)、図20(F)及び図20(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図20(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、図20(G)は折り畳んだ状態、図20(F)は図20(E)と図20(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0406】
図21(A)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7500が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0407】
図21(A)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7500にタッチパネルを適用し、これに触れることで操作してもよい。リモコン操作機7111は、操作ボタンの他に表示部を有していてもよい。
【0408】
なお、テレビジョン装置7100は、テレビ放送の受信機や、ネットワーク接続のための通信装置を有していてもよい。
【0409】
図21(B)に、ノート型パーソナルコンピュータ7200を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7500が組み込まれている。
【0410】
図21(C)及び図21(D)に、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)の一例を示す。
【0411】
図21(C)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7500、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0412】
また、図21(D)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7500を有する。
【0413】
表示部7500が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができ、また人の目につきやすいため、例えば広告の宣伝効果を高める効果を奏する。
【0414】
表示部7500にタッチパネルを適用し、使用者が操作できる構成とすると好ましい。これにより、広告用途だけでなく、路線情報や交通情報、商用施設の案内情報など、使用者が求める情報を提供するための用途にも用いることができる。
【0415】
また、図21(C)及び図21(D)に示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、ユーザが所持するスマートフォン等の情報端末機7311と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7500に表示される広告の情報を情報端末機7311の画面に表示させることや、情報端末機7311を操作することで、表示部7500の表示を切り替えることができる。
【0416】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数のユーザが同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0417】
図21(A)乃至(D)における表示部7500に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0418】
本実施の形態の電子機器は表示部を有する構成としたが、表示部を有さない電子機器にも本発明の一態様を適用することができる。
【0419】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例
【0420】
本実施例では、導電膜上に絶縁膜を形成し、加熱処理後の導電膜の評価を行った。
【0421】
試料は、本発明の一態様である試料Aと、比較試料の計2試料である。試料Aは、絶縁膜をとしてホウ素を含む絶縁膜を用いた。比較試料は、絶縁膜をとしてホウ素を含まない絶縁膜を用いた。
【0422】
<試料の作製>
まず、試料A及び比較試料のそれぞれで、石英基板上に厚さ約150nmのタングステン膜を成膜した。タングステン膜は、タングステンターゲットをスパッタリング法により成膜した。
【0423】
続いて、試料A及び比較試料のそれぞれで、タングステン膜上に厚さ約150nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。酸化窒化シリコン膜は、シランガスと一酸化二窒素ガスを成膜ガスとして用いたプラズマCVD法により成膜した。なお、成膜時の基板温度は200℃とした。
【0424】
続いて、試料Aは、不純物元素の添加を行った。不純物元素としてホウ素(11B)を注入し、不純物元素の添加は質量分離機構を有さないイオン注入装置を用いた。比較試料は、不純物元素の注入を行わなかった。
【0425】
ホウ素の注入は、酸化窒化シリコン膜中でホウ素濃度が最も高くなるように最適化した条件で行った。ホウ素の注入条件は、ビームエネルギーを20keVとし、ドーズ量を5×1015cm-2とした。
【0426】
続いて、試料A及び比較試料のそれぞれで、加熱処理を行った。加熱処理は、大気雰囲気下、600℃、1時間の条件で行った。
【0427】
<注入量のシミュレーション>
試料の深さ方向におけるホウ素の注入量を計算した。計算には、モンテカルロ法によってイオン注入過程の計算を行うためのソフトである、TRIM(Transport of Ion in Matter)を用いた。
【0428】
計算に用いた被注入膜は、絶縁膜として厚さ300nm、密度2.2g/cmの酸化シリコン膜とした。不純物元素としてホウ素を用い、ドーズ量は5×1015cm-2とした。また、ビームエネルギーを20keVとした。
【0429】
図22に計算結果を示す。図22において、縦軸はホウ素の体積濃度(11B concentration)を示し、横軸は深さ(Depth)を示す。図22に示すように、表面から深さ100nm付近でホウ素濃度が最も高くなることを確認できた。
【0430】
<断面観察及びEDX分析>
次に、試料A及び比較試料のそれぞれを集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)により薄片化し、断面を走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)で観察した。STEM観察には、日立ハイテクノロジーズ社製走査透過電子顕微鏡HD-2300を用い、加速電圧は200kVとした。
【0431】
試料Aの断面のSTEM像を図23(A)及び図23(B)に示す。図23(A)は倍率10万倍の透過電子像(TE像:Transmission Electron Image)である。図23(B)は図23(A)と同じ箇所の倍率10万倍のZコントラスト像(ZC像:Z Contrast Image)である。Zコントラスト像では、原子番号が大きい物質ほど明るく見える。図23(A)及び図23(B)に示すように、タングステン膜と酸化窒化シリコン膜との間に異層は確認されなかった。
【0432】
図23(B)に示す断面STEM像を用いて、タングステン膜のEDX分析を行った。EDX分析を行った箇所は、図24(A)に示すpoint Aの1か所である。point AでのEDXスペクトルを図24(B)に示す。図24(B)において、縦軸は特性X線のエネルギー(Energy)を示し、横軸は強度(Intensity)を示す。図24(B)に示すように、試料Aにおいてはタングステンが検出され、酸素は検出下限以下であった。
【0433】
なお、EDX分析で検出されたチタン及び銅はSTEM観察及びEDX分析に用いた試料ホルダーに、ニッケルは試料の固定に用いたメッシュに起因している。EDX分析において検出下限は0.5atomic%程度である。
【0434】
比較試料の断面のSTEM像を図25(A)及び図25(B)に示す。図25(A)は倍率10万倍のTE像である。図25(B)は図25(A)と同じ箇所の倍率10万倍のZC像である。図25(B)に示すように、タングステン膜と酸化窒化シリコン膜との間に異層は確認された。ZC像において、異層はタングステンよりも暗く観察された。
【0435】
図25(B)に示す断面STEM像を用いて、タングステン膜及び異層のEDX分析を行った。EDX分析を行った箇所は、図26(A)に示すpoint B1及びpoin B2の2か所である。point B1はタングステン膜とした。point B2は異層とした。point B1でのEDXスペクトルを図26(B)に、point B2を図26(C)に示す。図26(B)及び図26(C)において、縦軸は特性X線のエネルギー(Energy)を示し、横軸は強度(Intensity)を示す。図26(B)に示すように、タングステン膜ではタングステンが検出され、酸素は検出下限以下であった。図26(C)に示すように、異層ではタングステン及び酸素が検出され、異層が酸化タングステンであることが分かった。
【0436】
断面観察及びEDX分析により、比較試料はタングステン膜と酸化窒化シリコン膜との間に酸化タングステン膜が観察されたのに対し、試料Aはタングステン膜と酸化窒化シリコン膜との間に異層は観察されなかった。比較試料においては、酸化窒化シリコンが有する酸素によってタングステン膜が酸化されて酸化タングステン膜が形成されたと考えられる。一方、本発明の一態様である試料Aにおいては、酸化窒化シリコン膜がホウ素を含むことにより、酸化窒化シリコン膜が有する酸素が脱離しづらく、タングステン膜が酸化されづらくなったと考えられる。つまり、ホウ素を含む酸化物絶縁膜は、酸化物絶縁膜から酸素が脱離しにくくなる機能を有することを確認できた。
【符号の説明】
【0437】
100、100A、100B、100C、100D、100E:トランジスタ、102:基板、103、110、118:絶縁層、103d、108n、110d:領域、106、106c、112、120a、120b:導電層、108、108c:半導体層、112f:導電膜、114:金属酸化物層、114f:金属酸化物膜、130A、130B:容量素子、141a、141b、142:開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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