(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】対基板作業機およびユニット管理方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20231206BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2020557507
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2018044158
(87)【国際公開番号】W WO2020110286
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 正隆
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】吉田 昌弘
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101674(JP,A)
【文献】特開2016-178134(JP,A)
【文献】特開2013-81282(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024368(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と前記駆動部によって駆動される被駆動部と記憶装置とを備える駆動ユニット
と、
前記駆動ユニットを管理するユニット管理装置
と、
を備え、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機であって、
前記駆動ユニットは、前記対基板作業機に着脱可能に設けられ、
前記ユニット管理装置は、
前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値
であって前記被駆動部が前記駆動ユニットに搭載されてから最初に駆動されるときの前記被駆動部の駆動状態に基づき設定される前記基準値を、前記駆動ユニットの前記記憶装置から取得する基準値取得部と、
前記駆動部を駆動させて前記被駆動部の駆動状態の現在値を取得する現在値取得部と、
前記基準値取得部によって前記駆動ユニットの前記記憶装置から取得された前記基準値と前記現在値取得部によって取得された前記駆動状態の前記現在値とを比較して前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する判断部と、
を具備する
対基板作業機。
【請求項2】
前記駆動ユニットは、一つの前記駆動部に対して選択的に駆動される複数の前記被駆動部を備え、
前記記憶装置は、前記被駆動部の各々に対応する複数の前記基準値を記憶し、
前記判断部は、前記被駆動部の各々に対応する複数の前記基準値に基づき複数の前記被駆動部の各々について前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する請求項
1に記載の
対基板作業機。
【請求項3】
前記判断部は、前記基準値に基づき前記被駆動部のメンテナンスの必要度に応じた複数の閾値を設定し、前記駆動状態の前記現在値と比較した前記閾値に応じて、前記被駆動部のメンテナンスの必要度を取得する請求項1
または請求項
2に記載の
対基板作業機。
【請求項4】
前記判断部は、前記基準値に基づき閾値を設定し、一定の前記駆動状態が見込まれる所定の駆動条件で前記駆動部を駆動させたときの前記被駆動部の前記駆動状態の前記現在値が前記閾値を超える場合に、前記被駆動部のメンテナンスが必要であると判断する請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の
対基板作業機。
【請求項5】
前記ユニット管理装置は、前記判断部によって前記被駆動部のメンテナンスが必要であると判断されたときに、前記現在値取得部によって取得された前記駆動状態の前記現在値の経時変化に基づき前記被駆動部のメンテナンスが必要になった要因を推定する推定部をさらに備える請求項
4に記載の
対基板作業機。
【請求項6】
前記推定部は、前記駆動状態の前記現在値が前記閾値を超えるタイミング、および、前記駆動状態の前記現在値が前記閾値を超えている持続時間に基づき前記被駆動部のメンテナンスが必要になった要因を推定する請求項
5に記載の
対基板作業機。
【請求項7】
前記ユニット管理装置は、前記判断部によって判断された前記被駆動部のメンテナンスの要否を、前記対基板作業機の使用者に案内する案内部をさらに備える請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の
対基板作業機。
【請求項8】
前記駆動ユニットは、前記対基板作業機において複数の作業位置の各々に移動して前記対基板作業を行う移動ヘッドであり、
前記駆動部は、電動機であり、
前記被駆動部は、前記電動機の駆動によって鉛直方向に移動される昇降体、および、前記電動機の駆動によって回転される回転体のうちの少なくとも一方である請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の
対基板作業機。
【請求項9】
前記対基板作業機は、前記基板に部品を装着する部品装着機であり、
前記駆動ユニットは、前記部品を採取し保持して位置決めされた前記基板に装着する保持部材を備える装着ヘッド、または、前記部品を供給するフィーダである請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の
対基板作業機。
【請求項10】
基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機に着脱可能に設けられ
る駆動ユニットであって駆動部と前記駆動部によって駆動される被駆動部と記憶装置とを備える
前記駆動ユニットを管理するユニット管理方法であって、
前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値
であって前記被駆動部が前記駆動ユニットに搭載されてから最初に駆動されるときの前記被駆動部の駆動状態に基づき設定される前記基準値を、前記駆動ユニットの前記記憶装置から取得する基準値取得工程と、
前記駆動部を駆動させて前記被駆動部の駆動状態の現在値を取得する現在値取得工程と、
前記基準値取得工程によって前記駆動ユニットの前記記憶装置から取得された前記基準値と前記現在値取得工程によって取得された前記駆動状態の前記現在値とを比較して前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する判断工程と、
を具備するユニット管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ユニット管理装置およびユニット管理方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の状態監視装置は、駆動状態検知手段と、判定手段とを備えている。駆動状態検知手段は、駆動系の駆動状態を検知する。判定手段は、検知された駆動系の駆動状態が正常状態、異常状態、異常状態に至る前の異常予兆状態のうちのいずれの状態にあるかを判定する状態判定を行う。また、駆動状態検知手段は、駆動制御によりモータから出力される出力トルクを検知または推定する出力トルク検知推定手段を有しており、判定手段は、検知若しくは推定された出力トルク、または、出力トルクの変化に基づき、状態判定を行う。これらにより、特許文献1に記載の状態監視装置は、部品装着機が生産中に異常停止することを抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、判定手段が状態判定の際に用いる基準値の格納場所を開示するものではない。例えば、複数の部品装着機の各々の制御装置に基準値が記憶されていると、状態判定を行う際に制御装置から基準値を読み出す必要があり、判定作業が煩雑になる可能性がある。特に、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機に着脱可能に設けられる駆動ユニットでは、駆動ユニットの取り付け位置が対基板作業に応じて変更される可能性がある。そのため、駆動ユニットごとの基準値の管理がさらに煩雑になる可能性がある。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、対基板作業機に着脱可能に設けられる駆動ユニットが備える被駆動部のメンテナンスの要否を容易に判断可能なユニット管理装置およびユニット管理方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機に着脱可能に設けられ、かつ、駆動部と前記駆動部によって駆動される被駆動部と記憶装置とを備える駆動ユニットを管理するユニット管理装置を開示する。前記ユニット管理装置は、基準値取得部と、現在値取得部と、判断部とを具備する。前記基準値取得部は、前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値を、前記駆動ユニットの前記記憶装置から取得する。前記現在値取得部は、前記駆動部を駆動させて前記被駆動部の駆動状態の現在値を取得する。前記判断部は、前記基準値取得部によって取得された前記基準値と前記現在値取得部によって取得された前記駆動状態の前記現在値とに基づき前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する。
【0007】
また、本明細書は、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機に着脱可能に設けられ、かつ、駆動部と前記駆動部によって駆動される被駆動部と記憶装置とを備える駆動ユニットを管理するユニット管理方法を開示する。前記ユニット管理方法は、基準値取得工程と、現在値取得工程と、判断工程とを具備する。前記基準値取得工程は、前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値を、前記駆動ユニットの前記記憶装置から取得する。前記現在値取得工程は、前記駆動部を駆動させて前記被駆動部の駆動状態の現在値を取得する。前記判断工程は、前記基準値取得工程によって取得された前記基準値と前記現在値取得工程によって取得された前記駆動状態の前記現在値とに基づき前記被駆動部のメンテナンスの要否を判断する。
【発明の効果】
【0008】
上記のユニット管理装置によれば、基準値取得部と、現在値取得部と、判断部とを具備する。基準値取得部は、被駆動部のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値を、駆動ユニットの記憶装置から取得する。そのため、ユニット管理装置は、基準値の取得が容易である。また、判断部は、基準値取得部によって取得された基準値と現在値取得部によって取得された駆動状態の現在値とに基づき被駆動部のメンテナンスの要否を判断する。よって、ユニット管理装置は、駆動ユニットが備える被駆動部のメンテナンスの要否を容易に判断することができる。ユニット管理装置について上述したことは、ユニット管理方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】対基板作業ラインWMLの構成例を示す構成図である。
【
図2】部品装着機WM3の構成例を示す平面図である。
【
図3】装着ヘッド20の構成例を示す側面図である。
【
図4】駆動ユニット60およびユニット管理装置70の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図5】ユニット管理装置70による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6A】被駆動部62が駆動ユニット60に搭載されてから最初に駆動されるときの被駆動部62の駆動状態の経時変化の一例を示す模式図である。
【
図6B】現在値取得部72によって取得された駆動状態の経時変化の一例を示す模式図である。
【
図6C】現在値取得部72によって取得された駆動状態の経時変化の他の一例を示す模式図である。
【
図6D】現在値取得部72によって取得された駆動状態の経時変化の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.対基板作業ラインWMLの構成例
対基板作業ラインWMLでは、基板90に所定の対基板作業を行う。対基板作業ラインWMLを構成する対基板作業機WMの種類および数は、限定されない。
図1に示すように、本実施形態の対基板作業ラインWMLは、印刷機WM1、印刷検査機WM2、部品装着機WM3、リフロー炉WM4および外観検査機WM5の複数(5つ)の対基板作業機WMを備えている。複数(5つ)の対基板作業機WMは、上流側から、印刷機WM1、印刷検査機WM2、部品装着機WM3、リフロー炉WM4、外観検査機WM5の順に配置されている。基板90は、対基板作業ラインWMLの先頭に位置する印刷機WM1に搬入される。そして、基板90は、対基板作業ラインWMLの基板搬送装置(図示略)によって下流側へ搬送され、対基板作業ラインWMLの末尾に位置する外観検査機WM5から搬出される。
【0011】
印刷機WM1は、基板90において、複数の部品91の各々の装着位置に、はんだを印刷する。基板90に印刷されるはんだは、ペースト状であり、所定の粘性を備える。はんだは、基板90と、基板90に装着される複数の部品91とを接合する接合材として機能する。印刷検査機WM2は、印刷機WM1によって印刷されたはんだの印刷状態を検査する。部品装着機WM3は、印刷機WM1によって印刷されたはんだの上に複数の部品91を装着する。部品装着機WM3は、一つであっても良く、複数であっても良い。部品装着機WM3が複数設けられる場合は、複数の部品装着機WM3が分担して、複数の部品91を装着することができる。
【0012】
リフロー炉WM4は、部品装着機WM3によって複数の部品91が装着された基板90を加熱し、はんだを溶融させて、はんだ付けを行う。外観検査機WM5は、部品装着機WM3によって装着された複数の部品91の装着状態などを検査する。具体的には、外観検査機WM5は、基板90に装着された複数の部品91の各々の適否、複数の部品91の各々の装着状態(X軸座標、Y軸座標および装着角度)などを認識し、管理装置WMCに送出する。このように、対基板作業ラインWMLは、複数(5つ)の対基板作業機WMを用いて、基板90を順に搬送し、検査処理を含む生産処理を実行して基板製品900を生産することができる。
【0013】
なお、対基板作業ラインWMLは、例えば、対基板作業機WMである機能検査機を備えることができる。機能検査機は、リフロー炉WM4によって、はんだ付けされた基板90の機能検査を行う。また、対基板作業ラインWMLは、例えば、生産する基板製品900の種類などに応じて、対基板作業ラインWMLの構成を適宜追加することができ、構成を適宜変更することができる。対基板作業ラインWMLは、例えば、バッファ装置、基板供給装置、基板反転装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などの対基板作業機WMを備えることもできる。
【0014】
対基板作業ラインWMLを構成する複数(5つ)の対基板作業機WMおよび管理装置WMCは、通信部LCによって電気的に接続されている。通信部LCは、有線であっても良く、無線であっても良い。また、通信方法は、種々の方法をとり得る。本実施形態では、複数(5つ)の対基板作業機WMおよび管理装置WMCによって、構内情報通信網(LAN:Local Area Network)が構成されている。これにより、複数(5つ)の対基板作業機WMは、通信部LCを介して、互いに通信することができる。また、複数(5つ)の対基板作業機WMは、通信部LCを介して、管理装置WMCと通信することができる。
【0015】
管理装置WMCは、対基板作業ラインWMLを構成する複数(5つ)の対基板作業機WMの制御を行い、対基板作業ラインWMLの動作状況を監視する。管理装置WMCには、複数(5つ)の対基板作業機WMを制御する種々の制御データが記憶されている。管理装置WMCは、複数(5つ)の対基板作業機WMの各々に制御データを送信する。また、複数(5つ)の対基板作業機WMの各々は、管理装置WMCに動作状況および生産状況を送信する。
【0016】
管理装置WMCには、例えば、画像保存サーバ、生産情報サーバなどの種々のデータサーバを設けることができる(いずれも図示略)。画像保存サーバは、対基板作業機WMによって撮像された種々の画像データを保存することができる。生産情報サーバは、基板90の生産に関する種々の生産情報を保存することができる。例えば、生産情報に含まれる部品データは、部品91の種類毎の形状に関する情報、電気的特性に関する情報、部品91の取り扱い方法に関する情報などを含んでいる。また、印刷検査機WM2、外観検査機WM5などの検査機による検査結果は、生産情報に含まれる。
【0017】
1-2.部品装着機WM3の構成例
部品装着機WM3は、基板90に複数の部品91を装着する。
図2に示すように、部品装着機WM3は、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、部品カメラ14、基板カメラ15および制御装置16を備えている。基板搬送装置11は、例えば、ベルトコンベアなどにより構成され、基板90を搬送方向(X軸方向)に搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路および電気回路のうちの少なくとも一方が形成される。基板搬送装置11は、部品装着機WM3の機内に基板90を搬入すると共に、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機WM3による複数の部品91の装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機WM3の機外に搬出する。
【0018】
部品供給装置12は、基板90に装着される複数の部品91を供給する。部品供給装置12は、基板90の搬送方向(X軸方向)に沿って設けられる複数のフィーダ121を備えている。複数のフィーダ121の各々は、複数の部品91が収納されるキャリアテープ(図示略)をピッチ送りさせて、フィーダ121の先端側に位置する供給位置において部品91を採取可能に供給する。また、部品供給装置12は、チップ部品などと比べて比較的大型の電子部品(例えば、リード部品など)を、トレイ上に配置した状態で供給することもできる。
【0019】
部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131および移動台132を備えている。ヘッド駆動装置131は、直動機構により移動台132を、X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されている。移動台132には、クランプ部材(図示略)により装着ヘッド20が着脱可能(交換可能)に設けられている。装着ヘッド20は、少なくとも一つの保持部材50を用いて、部品供給装置12によって供給される部品91を採取し保持して、基板搬送装置11によって位置決めされた基板90に部品91を装着する。保持部材50は、例えば、吸着ノズル、チャックなどを用いることができる。
【0020】
部品カメラ14および基板カメラ15は、例えば、撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を用いることができる。撮像素子は、例えば、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサを用いることができる。部品カメラ14および基板カメラ15は、制御装置16から送出される制御信号に基づき撮像を行う。部品カメラ14および基板カメラ15によって撮像された画像データは、制御装置16に送信される。
【0021】
部品カメラ14は、光軸がZ軸方向の上向き(鉛直上方方向)になるように、部品装着機WM3の基台に固定されている。部品カメラ14は、保持部材50によって保持されている部品91を下方から撮像することができる。基板カメラ15は、光軸がZ軸方向の下向き(鉛直下方方向)になるように、部品移載装置13の移動台132に設けられている。基板カメラ15は、基板90を上方から撮像することができる。
【0022】
制御装置16は、公知の中央演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている(いずれも図示略)。中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)は、種々の演算処理を行うことができる。記憶装置は、第一記憶装置および第二記憶装置を備えている。第一記憶装置は、揮発性の記憶装置(RAM:Random Access Memory)であり、第二記憶装置は、不揮発性の記憶装置(ROM:Read Only Memory)である。制御装置16には、部品装着機WM3に設けられている各種センサから出力される情報、画像データなどが入力される。制御装置16は、制御プログラムおよび予め設定されている所定の装着条件などに基づき、各装置に対して制御信号を送出する。
【0023】
例えば、制御装置16は、基板搬送装置11によって搬入され位置決めされた基板90を基板カメラ15に撮像させる。制御装置16は、基板カメラ15によって撮像された画像を画像処理して、基板90の位置決め状態を認識する。制御装置16は、例えば、基板90に設けられている位置決め基準部(図示略)などを画像処理によって把握して、基板90の位置決め状態を認識することができる。また、制御装置16は、部品供給装置12によって供給された部品91を保持部材50に採取させ保持させて、保持部材50に保持されている部品91を部品カメラ14に撮像させる。制御装置16は、部品カメラ14によって撮像された画像を画像処理して、部品91の保持姿勢を認識する。制御装置16は、例えば、部品91の外観で特徴的な部位などを画像処理によって把握して、部品91の保持姿勢を認識することができる。
【0024】
制御装置16は、制御プログラムなどによって予め設定される装着予定位置の上方に向かって、保持部材50を移動させる。また、制御装置16は、基板90の位置決め状態、部品91の保持姿勢などに基づき、装着予定位置を補正して、実際に部品91を装着する装着位置を設定する。装着予定位置および装着位置は、位置(X軸座標およびY軸座標)の他に回転角度を含む。制御装置16は、装着位置に合わせて、保持部材50の目標位置(X軸座標およびY軸座標)および回転角度を補正する。制御装置16は、補正された目標位置において補正された回転角度で保持部材50を下降させて、基板90に部品91を装着する。制御装置16は、上記のピックアンドプレースサイクルを繰り返すことによって、基板90に複数の部品91を装着する装着処理を実行する。
【0025】
1-3.装着ヘッド20の構成例
図3に示すように、装着ヘッド20は、移動台132にクランプされるヘッド本体21を備えている。ヘッド本体21には、R軸モータ22によって所定の角度ごとに回転角度を割り出し可能に、ロータリヘッド23が設けられている。ロータリヘッド23は、R軸と同心の円周上において周方向に等間隔に複数(例えば、12本)のツール軸24を、Z軸およびR軸に平行なθ軸方向(
図3の上下方向)に摺動可能に且つθ軸周りに回転可能に保持する。
【0026】
ツール軸24は、スプリング(図示略)の弾性力によりロータリヘッド23に対して上方に付勢されている。これにより、ツール軸24は、外力が付与されていない通常状態では、上昇端に位置している。ツール軸24の下端部には、保持部材50が着脱可能に取り付けられる。保持部材50には、少なくとも正圧エアまたは負圧エアが供給され、部品91を採取する。保持部材50には、負圧エアにより部品91を吸着する吸着ノズルの他に、正圧エアまたは負圧エアにより動作するチャック(図示略)などが含まれる。また、ツール軸24は、保持部材50が取り付けられると、軸内スプリング(図示略)の弾性力により、保持部材50を下方に付勢する。
【0027】
複数の保持部材50の各々は、保持部材50のエア通路にエアが供給されて部品91を保持する。複数の保持部材50は、R軸モータ22の駆動に伴ってロータリヘッド23が回転することにより、R軸周りの所定の角度位置(例えば、ツール軸24の昇降位置)に順次割り出される。
図3に示すように、装着ヘッド20は、ヘッド本体21に固定されたθ軸モータ25を備えている。θ軸モータ25の出力軸には、複数のギヤを介して回転力を伝達可能に全てのツール軸24が連結されている。ツール軸24および保持部材50は、θ軸モータ25の動作によりθ軸周りに一体的に回転(自転)し、回転角度や回転速度が制御される。
【0028】
また、ヘッド本体21には、Z軸方向(鉛直上下方向)に移動可能に作動部材26が設けられている。作動部材26は、Z軸モータ27の駆動によって動作するボールねじ機構28によりZ軸方向に昇降する。作動部材26は、複数のツール軸24のうちの昇降位置に割り出されたツール軸24の上端部に接触するレバー29を備えている。レバー29は、作動部材26のZ軸方向下方への移動に伴って下降する。レバー29は、接触するツール軸24のスプリングの弾性力に抗してツール軸24をZ軸方向の下方へと押圧し、ツール軸24を下降させる。ツール軸24および保持部材50は、Z軸モータ27の駆動によりZ軸方向に一体的に昇降し、Z軸方向位置や移動速度が制御される。
【0029】
1-4.駆動ユニット60の構成例
駆動ユニット60は、基板90に所定の対基板作業を行う対基板作業機WMに着脱可能に設けられる。駆動ユニット60は、対基板作業機WMに着脱可能に設けられる駆動ユニットであれば良く限定されないが、駆動ユニット60は、対基板作業機WMにおいて複数の作業位置の各々に移動して対基板作業を行う移動ヘッド60hであると好適である。例えば、対基板作業機WMが印刷機WM1の場合、はんだを印刷する印刷ヘッド、はんだペースト、グルーを塗布するディスペンスヘッドなどは、移動ヘッド60hに含まれる。また、対基板作業機WMが印刷検査機WM2、外観検査機WM5などの検査機の場合、基板90上を移動する検査ヘッドは、移動ヘッド60hに含まれる。
【0030】
さらに、対基板作業機WMが部品装着機WM3の場合、
図3に示すように、駆動ユニット60は、部品91を採取し保持して位置決めされた基板90に装着する保持部材50を備える装着ヘッド20であると好適である。既述したように、装着ヘッド20は、部品装着機WM3において複数の作業位置(部品吸着位置および部品装着位置)の各々に部品移載装置13によって移動して、対基板作業(部品吸着作業、部品装着作業)を行う。つまり、装着ヘッド20は、移動ヘッド60hに含まれる。
【0031】
図4に示すように、駆動ユニット60は、駆動部61と、駆動部61によって駆動される被駆動部62と、記憶装置63とを備える。駆動部61および被駆動部62は、種々の形態をとり得るが、駆動ユニット60が移動ヘッド60hの場合、駆動部61は、電動機61mであり、被駆動部62は、昇降体62eおよび回転体62rのうちの少なくとも一方であると好適である。電動機61mは、公知の種々の直流モータ、交流モータを用いることができる。例えば、装着ヘッド20では、サーボモータ、ステッピングモータなどが用いられる。
図3に示すR軸モータ22、θ軸モータ25およびZ軸モータ27は、電動機61mに含まれる。
【0032】
昇降体62eは、電動機61mの駆動によって鉛直方向に移動される部位であり、例えば、
図3に示すツール軸24、作動部材26およびボールねじ機構28は、昇降体62eに含まれる。回転体62rは、電動機61mの駆動によって回転される部位であり、例えば、
図3に示すロータリヘッド23およびツール軸24は、回転体62rに含まれる。また、θ軸モータ25の駆動軸に連結されている歯車部25aと、R軸モータ22の駆動軸に連結され歯車部25aと噛み合う歯車部25bとを備える歯車機構25gは、回転体62rに含まれる。
【0033】
記憶装置63は、公知の記憶装置を用いることができる。記憶装置63は、例えば、不揮発性の記憶装置を用いると好適である。この場合、記憶装置63は、電力が供給されていない状態においても、データを記憶し続けることができる。記憶装置63は、例えば、マスクロムなどの書き換え不可能な不揮発性の記憶装置を用いることができる。また、記憶装置63は、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの書き換え可能な不揮発性の記憶装置を用いることもできる。
【0034】
1-5.ユニット管理装置70の構成例
ユニット管理装置70は、駆動ユニット60を管理する。駆動ユニット60が基板製品900の生産に使用されるにつれて、被駆動部62に劣化が生じる。例えば、
図3に示すロータリヘッド23とツール軸24との間のグリスの消失、ボールねじ機構28のグリスの消失、ツール軸24の変形は、被駆動部62の劣化の一例である。また、歯車機構25gのグリスの消失、歯車部25aおよび歯車部25bのうちの少なくとも一方の摩耗、歯車部25aと歯車部25bとの間における異物(例えば、埃など)の挟み込みは、被駆動部62の劣化の他の一例である。このように、被駆動部62に劣化が生じると、被駆動部62の駆動状態が劣化前と比べて変化する。そのため、ユニット管理装置70は、被駆動部62の駆動状態の変化に基づき、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。
【0035】
ユニット管理装置70は、制御ブロックとして捉えると、基準値取得部71と、現在値取得部72と、判断部73とを備えている。ユニット管理装置70は、推定部74および案内部75のうちの少なくとも一方をさらに備えると好適である。
図4に示すように、本実施形態のユニット管理装置70は、基準値取得部71と、現在値取得部72と、判断部73と、推定部74と、案内部75とを備えている。また、
図1に示すように、本実施形態のユニット管理装置70は、対基板作業機WMと別体に設けられているが、対基板作業機WMに設けることもできる。この場合、ユニット管理装置70は、例えば、駆動ユニット60の待機時間(例えば、基板90の搬送中など)、対基板作業が休止している休止時間などに、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。
【0036】
また、ユニット管理装置70は、
図5に示すフローチャートに従って、制御プログラムを実行する。基準値取得部71は、ステップS11に示す処理を行う。現在値取得部72は、ステップS12に示す処理を行う。判断部73は、ステップS13に示す判断を行い、ステップS14およびステップS15に示す処理を行う。推定部74は、ステップS16に示す処理を行う。案内部75は、ステップS17に示す処理を行う。
【0037】
1-5-1.基準値取得部71
基準値取得部71は、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値を、駆動ユニット60の記憶装置63から取得する(
図5に示すステップS11)。基準値は、被駆動部62が駆動ユニット60に搭載されてから最初に駆動されるときの被駆動部62の駆動状態に基づき設定されると好適である。これにより、ユニット管理装置70は、被駆動部62が劣化していない初期状態を基準にして、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。
【0038】
駆動ユニット60の製造者は、例えば、駆動ユニット60の出荷前において、駆動部61を所定の駆動条件で駆動させて、被駆動部62の駆動状態(以下、「駆動状態の初期値」という。)を取得する。駆動ユニット60の出荷前は、被駆動部62が劣化していない状態の一例であり、例えば、被駆動部62が交換されて最初に駆動される場合なども含む。駆動部61が電動機61mの場合、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値は、例えば、所定の速度プロファイルに従って駆動ユニット60を駆動させたときの電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)で表すことができる。電動機61mの出力トルクは、例えば、電動機61mの入力電流の検出値などに基づき取得することができる。また、電動機61mの出力トルクは、例えば、電動機61mの駆動軸にトルク検出器を設けて、直接検出することもできる。そして、駆動ユニット60の製造者は、駆動状態の初期値を駆動ユニット60の記憶装置63に記憶させる。基準値取得部71は、駆動ユニット60の記憶装置63に記憶されている駆動状態の初期値に所定の一定値を加算して、基準値を取得することができる。
【0039】
なお、被駆動部62が劣化していない状態では、駆動状態の設計値(シミュレーション値を含む。)と駆動状態の初期値との偏差が無視できる程度に僅少な場合がある。この場合、駆動ユニット60の製造者は、駆動状態の初期値の代わりに、駆動状態の設計値を駆動ユニット60の記憶装置63に記憶させることもできる。基準値取得部71は、駆動ユニット60の記憶装置63に記憶されている駆動状態の設計値に所定の一定値を加算して、基準値を取得することができる。
【0040】
また、駆動ユニット60の製造者は、駆動状態の初期値または設計値に所定の一定値を加算した基準値を、駆動ユニット60の記憶装置63に記憶させることもできる。この場合、基準値取得部71は、駆動ユニット60の記憶装置63に記憶されている基準値を読み出して、基準値を取得することができる。なお、いずれの場合も、所定の一定値は、被駆動部62のメンテナンスが必要になるまでの許容範囲を示しており、正値または負値の場合がある。
【0041】
さらに、駆動ユニット60が一つの駆動部61に対して選択的に駆動される複数の被駆動部62を備える場合、被駆動部62の駆動状態に個体差が生じる場合がある。例えば、
図3に示すロータリヘッド23は、R軸と同心の円周上において周方向に等間隔に複数(例えば、12本)のツール軸24を保持している。複数のツール軸24において、被駆動部62の駆動状態(例えば、各ツール軸24を回転させるときの電動機61mの出力トルク)に許容値以上のばらつきが生じる場合がある。この場合、基準値は、複数の被駆動部62の各々について、設定されると好適である。これにより、ユニット管理装置70は、複数の被駆動部62の固有値を加味したメンテナンスの要否判断を行うことができる。
【0042】
具体的には、駆動ユニット60の製造者は、複数の被駆動部62の各々について、駆動状態の初期値を取得する。そして、駆動ユニット60の製造者は、複数の被駆動部62の各々について、駆動状態の初期値を駆動ユニット60の記憶装置63に記憶させる。基準値取得部71は、複数の被駆動部62の各々について、駆動ユニット60の記憶装置63に記憶されている駆動状態の初期値に所定の一定値を加算して、基準値を取得することができる。
【0043】
また、駆動ユニット60の製造者は、複数の被駆動部62の各々について、駆動状態の初期値に所定の一定値を加算した基準値を、駆動ユニット60の記憶装置63に記憶させることもできる。この場合、基準値取得部71は、駆動ユニット60の記憶装置63に記憶されている基準値を読み出して、複数の被駆動部62の各々について、基準値を取得することができる。
【0044】
1-5-2.現在値取得部72
現在値取得部72は、駆動部61を駆動させて被駆動部62の駆動状態の現在値を取得する(
図5に示すステップS12)。現在値取得部72は、駆動状態の初期値または設計値を取得したときと同じ駆動条件で駆動部61を駆動させて、被駆動部62の駆動状態の現在値を取得する。被駆動部62の駆動状態(例えば、電動機61mの出力トルク)の取得方法について上述したことは、現在値取得部72についても同様に言える。
【0045】
1-5-3.判断部73
判断部73は、基準値取得部71によって取得された基準値と、現在値取得部72によって取得された駆動状態の現在値とに基づき被駆動部62のメンテナンスの要否を判断する。判断部73は、例えば、基準値取得部71によって取得された基準値と、現在値取得部72によって取得された駆動状態の現在値とを比較して、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。また、判断部73は、基準値に基づき閾値を設定し、一定の駆動状態が見込まれる所定の駆動条件で駆動部61を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態の現在値が閾値を超える場合に、被駆動部62のメンテナンスが必要であると判断すると好適である(
図5に示すステップS13~ステップS15)。
【0046】
図6Aは、被駆動部62が駆動ユニット60に搭載されてから最初に駆動されるときの被駆動部62の駆動状態の経時変化の一例を示している。実線L10は、一定の駆動状態が見込まれる所定の駆動条件(例えば、所定の速度プロファイルに従って駆動させる速度制御)で駆動部61(電動機61m)を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、電動機61mの出力トルクを示し、横軸は、時刻を示している。
【0047】
実線L10に示すように、電動機61mが起動すると、電動機61mの出力トルクは、徐々に増加して正極性の出力トルクTq0で一定になる(以下、「加速区間」という)。その後、電動機61mの出力トルクは、出力トルクTq0より小さい出力トルクで一定になる(以下、「定速区間」という)。そして、電動機61mを減速させると、電動機61mの出力トルクは、負極性の出力トルクで一定になり(以下、「減速区間」という)、電動機61mが停止すると、電動機61mの出力トルクは、ゼロになる。なお、出力トルクTq0は、駆動状態の初期値を示している。一定値C0は、出力トルクTq0(駆動状態の初期値)に加算する所定値を示している。出力トルクTq1は、出力トルクTq0に一定値C0が加算された加算値であり、基準値に基づき設定される閾値に相当する。
【0048】
図6Bは、現在値取得部72によって取得された駆動状態の経時変化の一例を示している。既述したように、駆動ユニット60が基板製品900の生産に使用されるにつれて、被駆動部62に劣化が生じる。実線L11は、このときに
図6Aの場合と同じ駆動条件で駆動部61(電動機61m)を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、電動機61mの出力トルクを示し、横軸は、時刻を示している。
【0049】
実線L11に示すように、電動機61mの出力トルクは、加速区間、定速区間および減速区間に応じて、
図6Aの場合と同様に変動する。但し、加速区間における電動機61mの出力トルクは、出力トルクTq2で一定になる。出力トルクTq2は、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)と比べて、大きい。また、時刻Tm11は、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)の現在値が、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)を超える時刻を示し、時刻Tm21は、電動機61mの出力トルクが、出力トルクTq1以下になる時刻を示している。
【0050】
図6Bに示す例において、判断部73は、次のようにして被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。判断部73は、現在値取得部72によって取得された被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の現在値が、基準値取得部71によって取得された基準値に基づき設定される閾値(出力トルクTq1)を超えているか否かを判断する(
図5に示すステップS13)。被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の現在値が閾値(出力トルクTq1)を超えている場合(ステップS13でYesの場合)、判断部73は、被駆動部62のメンテナンスが必要であると判断する(ステップS14)。被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の現在値が閾値(出力トルクTq1)以下の場合(ステップS13でNoの場合)、判断部73は、被駆動部62のメンテナンスが不要であると判断する(ステップS15)。
図6Bに示す例では、時刻Tm11において、被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の現在値が閾値(出力トルクTq1)を超える。よって、判断部73は、被駆動部62のメンテナンスが必要であると判断する。
【0051】
本実施形態の判断部73は、基準値に基づき閾値を設定し、一定の駆動状態が見込まれる所定の駆動条件で駆動部61を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態の現在値が閾値を超える場合に、被駆動部62のメンテナンスが必要であると判断する。これにより、ユニット管理装置70は、被駆動部62の劣化に伴って被駆動部62の駆動状態が増加する傾向をもつメンテナンス要因(例えば、被駆動部62に塗布されているグリスの消失、被駆動部62の変形、摩耗、異物の混入など)に対して、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。
【0052】
なお、判断部73は、基準値に基づき閾値を設定し、一定の駆動状態が見込まれる所定の駆動条件で駆動部61を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態の現在値が閾値より小さくなる場合に、被駆動部62のメンテナンスが必要であると判断することもできる。この場合、既述した所定の一定値C0(被駆動部62のメンテナンスが必要になるまでの許容範囲)は、負値とする。これにより、ユニット管理装置70は、被駆動部62の劣化に伴って被駆動部62の駆動状態が減少する傾向をもつメンテナンス要因に対して、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。
【0053】
また、
図3に示すように、駆動ユニット60が一つの駆動部61に対して選択的に駆動される複数の被駆動部62を備える場合、現在値取得部72は、複数の被駆動部62を順に一つずつ駆動させることができる。また、駆動ユニット60が一つの駆動部61に対して選択的に駆動される複数の被駆動部62を備える場合、現在値取得部72は、複数の被駆動部62のうち、連動する所定の複数の被駆動部62を同時に駆動させることもできる。この場合、基準値取得部71は、複数の被駆動部62を同時に駆動させたときの基準値を取得する。
【0054】
いずれの場合も、記憶装置63は、被駆動部62の各々に対応する複数の基準値を記憶すると好適である。これにより、基準値取得部71は、駆動ユニット60の記憶装置63から被駆動部62の各々に対応する基準値を取得することができる。また、判断部73は、被駆動部62の各々に対応する複数の基準値に基づき、複数の被駆動部62の各々について被駆動部62のメンテナンスの要否を判断すると好適である。さらに、判断部73は、複数の被駆動部62の各々について基準値に基づき閾値を設定し、一定の駆動状態が見込まれる所定の駆動条件で駆動部61を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態の現在値が閾値を超える場合に、被駆動部62のメンテナンスが必要であると判断することもできる。
【0055】
また、
図6Aおよび
図6Bに示すように、判断部73は、基準値に基づき被駆動部62のメンテナンスの必要度に応じた複数の閾値(出力トルクTq10~Tq13)を設定することもできる。例えば、出力トルクTq10は、閾値(出力トルクTq1)と比べて小さく設定されており、被駆動部62のメンテナンスの必要度は、複数の閾値(出力トルクTq10~Tq13)のうち最も低く、メンテナンスの予告レベルを示している。出力トルクTq11、出力トルクTq12、出力トルクTq13は、閾値(出力トルクTq1)と比べて大きく設定されており、被駆動部62のメンテナンスの必要度は、この順に高くなる。なお、複数の閾値(出力トルクTq10~Tq13)は、等間隔に設定することもできる。複数の閾値(出力トルクTq10~Tq13)について上述したことは、
図6Cおよび
図6Dに示す例についても同様に言える。
【0056】
このとき、判断部73は、駆動状態の現在値と比較した閾値に応じて、被駆動部62のメンテナンスの必要度を取得すると好適である。例えば、被駆動部62の駆動状態の現在値と比較した閾値が出力トルクTq13の場合、判断部73は、出力トルクTq13で示される被駆動部62のメンテナンスの必要度を取得する。具体的には、出力トルクTq13は、複数の閾値(出力トルクTq10~Tq13)のうち最も高く、被駆動部62のメンテナンスの必要度は、例えば、至急のメンテナンスが必要なレベルを示している。このように、判断部73は、駆動状態の現在値と比較した閾値に応じて、被駆動部62のメンテナンスの必要度を取得することができる。なお、本実施形態の判断部73は、加速区間において被駆動部62のメンテナンスの要否を判断しているが、判断部73は、定速区間において被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することもできる。また、判断部73は、減速区間において被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することもできる。つまり、判断部73は、加速区間、定速区間および減速区間の各区間に対応する閾値を設定して、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断することができる。
【0057】
1-5-4.推定部74
推定部74は、判断部73によって被駆動部62のメンテナンスが必要であると判断されたときに、現在値取得部72によって取得された駆動状態の現在値の経時変化に基づき被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因を推定する。推定部74は、駆動状態の現在値が閾値を超えるタイミング、および、駆動状態の現在値が閾値を超えている持続時間に基づき、被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因を推定すると好適である。
【0058】
図6Cは、現在値取得部72によって取得された駆動状態の経時変化の他の一例を示している。実線L12は、
図6Aの場合と同じ駆動条件で駆動部61(電動機61m)を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、電動機61mの出力トルクを示し、横軸は、時刻を示している。
【0059】
実線L12に示すように、電動機61mの出力トルクは、加速区間、定速区間および減速区間に応じて、
図6Aの場合と同様に変動する。但し、加速区間における電動機61mの出力トルクは、出力トルクTq0から増加して出力トルクTq3に達し、その後、出力トルクTq0に戻っている。出力トルクTq3は、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)と比べて、大きい。また、時刻Tm12は、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)が、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)を超える時刻を示し、時刻Tm22は、電動機61mの出力トルクが、出力トルクTq1以下になる時刻を示している。
【0060】
図6Dは、現在値取得部72によって取得された駆動状態の経時変化の他の一例を示している。実線L13は、
図6Aの場合と同じ駆動条件で駆動部61(電動機61m)を駆動させたときの被駆動部62の駆動状態(電動機61mの出力トルク)の経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、電動機61mの出力トルクを示し、横軸は、時刻を示している。
【0061】
実線L13に示すように、電動機61mの出力トルクは、加速区間、定速区間および減速区間に応じて、
図6Aの場合と同様に変動する。但し、加速区間における電動機61mの出力トルクは、正弦波状に増減している。正弦波状に増減する電動機61mの出力トルクの下限値は、出力トルクTq41で示され、出力トルクの上限値は、出力トルクTq42で示される。
【0062】
なお、出力トルクTq42は、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)と比べて、大きい。また、時刻Tm13は、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)が、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)を超える時刻を示し、時刻Tm23は、電動機61mの出力トルクが、出力トルクTq1以下になる時刻を示している。正弦波状に増減する電動機61mの出力トルクに応じて、上述した状態が繰り返される。
【0063】
図6Bに示す例では、時刻Tm11において、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)は、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)を超える。そして、時刻Tm11から時刻Tm21までの時間ΔT1において、出力トルクTq1を超えている状態が持続しており、出力トルクTq1を超えている状態が加速区間において全体的に発生している。この場合、推定部74は、例えば、被駆動部62に塗布されているグリスの消失が要因であると推定することができる。グリスの消失は、被駆動部62において広範囲に亘って発生し易く、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)は、全体的に増加し易い。
【0064】
図6Cに示す例では、時刻Tm12において、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)は、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)を超える。そして、時刻Tm12から時刻Tm22までの時間ΔT2において、出力トルクTq1を超えている状態が持続している。時間ΔT2は、
図6Bに示す時間ΔT1と比べて短く、出力トルクTq1を超えている状態が局所的に発生している。この場合、推定部74は、例えば、被駆動部62における異物の混入が要因であると推定することができる。異物の混入は、被駆動部62において局所的に発生し易く、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)は、異物が混入した部位において局所的に増加し易い。
【0065】
図6Dに示す例では、時刻Tm13において、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)は、出力トルクTq1(基準値に基づき設定される閾値)を超える。そして、時刻Tm13から時刻Tm23までの時間ΔT3において、出力トルクTq1を超えている状態が持続している。時間ΔT3は、
図6Bに示す時間ΔT1と比べて短く、出力トルクTq1を超えている状態が周期的かつ間欠的に発生している。この場合、推定部74は、例えば、被駆動部62の変形または摩耗が要因であると推定することができる。被駆動部62の変形または摩耗が生じると、電動機61mの出力トルク(被駆動部62の駆動状態)は、変形または摩耗が生じた部位において、例えば、正弦波状などの周期的な変動が生じ易い。このように、本実施形態のユニット管理装置70は、推定部74を備えるので、被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因を推定することができる。なお、
図6B~
図6Dに示す例は、一例であり、被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因は、これらに限定されるものではない。
【0066】
1-5-5.案内部75
案内部75は、判断部73によって判断された被駆動部62のメンテナンスの要否を、対基板作業機WMの使用者に案内する。これにより、対基板作業機WMの使用者は、被駆動部62のメンテナンスの要否を知得することができ、被駆動部62のメンテナンスを行うことができる。
【0067】
案内部75は、例えば、メンテナンスの要否を判断した被駆動部62と、判断結果(メンテナンスの必要あり、または、メンテナンスの必要なし)とを、公知の表示装置(図示略)に表示させることができる。また、案内部75は、被駆動部62のメンテナンスの必要度を表示装置に表示させることもできる。さらに、案内部75は、被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因を表示装置に表示させることもできる。また、案内部75は、被駆動部62のメンテナンス方法を表示装置に表示させることもできる。
【0068】
例えば、被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因がグリスの消失の場合、メンテナンス方法は、グリスの補充であり、対基板作業機WMの製造者は、案内に従ってグリスを補充する。また、被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因が被駆動部62における異物の混入の場合、メンテナンス方法は、異物の除去であり、対基板作業機WMの製造者は、案内に従って異物を除去する。さらに、被駆動部62のメンテナンスが必要になった要因が被駆動部62の変形または摩耗の場合、メンテナンス方法は、被駆動部62の調整、修理若しくは交換であり、対基板作業機WMの製造者は、案内に従って被駆動部62の調整、修理若しくは交換を行う。
【0069】
2.その他
図2に示すように、対基板作業機WMが部品装着機WM3の場合、駆動ユニット60は、部品91を供給するフィーダ121であると好適である。複数のフィーダ121の各々は、スプロケットと、スプロケットを回転駆動させる駆動装置とを備えている(いずれも図示略)。スプロケットは、複数の部品91が収納されているキャリアテープをピッチ送りする。駆動装置は、例えば、ステッピングモータ、サーボモータなどの位置決め可能な電動機を用いることができる。この場合、駆動装置は、駆動部61に相当し、電動機の駆動軸に連結された減速機構およびスプロケットは、被駆動部62に相当する。また、電動機の駆動を制御する制御装置には、記憶装置63を設けることができる。
【0070】
3.ユニット管理方法
ユニット管理装置70について既述したことは、ユニット管理方法についても同様に言える。具体的には、ユニット管理方法は、基準値取得工程と、現在値取得工程と、判断工程とを具備する。基準値取得工程は、基準値取得部71が行う制御に相当する。現在値取得工程は、現在値取得部72が行う制御に相当する。判断工程は、判断部73が行う制御に相当する。また、ユニット管理方法は、推定工程および案内工程のうちの少なくとも一方を備えると好適である。推定工程は、推定部74が行う制御に相当する。案内工程は、案内部75が行う制御に相当する。
【0071】
4.実施形態の効果の一例
ユニット管理装置70によれば、基準値取得部71と、現在値取得部72と、判断部73とを具備する。基準値取得部71は、被駆動部62のメンテナンスの要否を判断する際に用いる基準値を、駆動ユニット60の記憶装置63から取得する。そのため、ユニット管理装置70は、基準値の取得が容易である。また、判断部73は、基準値取得部71によって取得された基準値と現在値取得部72によって取得された駆動状態の現在値とに基づき被駆動部62のメンテナンスの要否を判断する。よって、ユニット管理装置70は、駆動ユニット60が備える被駆動部62のメンテナンスの要否を容易に判断することができる。ユニット管理装置70について上述したことは、ユニット管理方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0072】
60:駆動ユニット、60h:移動ヘッド、61:駆動部、
61m:電動機、62:被駆動部、62e:昇降体、62r:回転体、
63:記憶装置、
70:ユニット管理装置、71:基準値取得部、72:現在値取得部、
73:判断部、74:推定部、75:案内部、
90:基板、91:部品、50:保持部材、20:装着ヘッド、
121:フィーダ、WM:対基板作業機、WM3:部品装着機。