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特許7397814モデル作成装置、モデル作成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】モデル作成装置、モデル作成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20231206BHJP
   H04B 17/23 20150101ALI20231206BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231206BHJP
【FI】
H04B17/391
H04B17/23
G06N20/00 130
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021001444
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106445
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-02-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度総務省「仮想空間における電波模擬システム技術の高度化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智史
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122008(JP,A)
【文献】国際公開第2020/007483(WO,A1)
【文献】特開2019-029915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/391
H04B 17/23
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを取得する画像データ取得部と、
前記可視領域画像データに対応する三次元空間において前記送信機から前記受信機まで前記電波を送信した場合の時空間伝搬特性を示す機械学習用時空間伝搬特性データを取得する特性データ取得部と、
前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記機械学習用時空間伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、が入力されると、入力された前記送信位置から前記受信位置まで前記電波が送信された場合の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性データを出力する時空間伝搬特性モデルを作成するモデル作成部と、
を有するモデル作成装置。
【請求項2】
前記モデル作成部は、前記三次元空間に含まれる構造物の表面における、前記送信機が送信した電波に基づく電力の分布を示す電力分布データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成する、
請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項3】
前記モデル作成部は、前記三次元空間に含まれる構造物の表面の深度を示す深度データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成する、
請求項1又は2に記載のモデル作成装置。
【請求項4】
前記モデル作成部は、前記三次元空間のうち、前記送信位置及び前記受信位置の両方から視認可能な領域を示す視認領域データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
【請求項5】
前記モデル作成部は、前記三次元空間に含まれる構造物の面の角度を示す角度データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
【請求項6】
前記モデル作成部は、前記可視領域画像データのうち、前記三次元空間に含まれる構造物のエッジ部分から所定の範囲内の領域に対応するデータを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
【請求項7】
前記モデル作成部は、前記送信位置に光源を配置した場合に前記光源が発した光を視認可能な前記受信位置から視認することができる前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のモデル作成装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを取得するステップと、
前記可視領域画像データに対応する三次元空間において前記送信機から前記受信機まで前記電波を送信した場合の時空間伝搬特性を示す機械学習用時空間伝搬特性データを取得するステップと、
前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記機械学習用時空間伝搬特性データとを教師データとして学習し、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、が入力されると、入力された前記送信位置から前記受信位置まで前記電波が送信された場合の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性データを出力する時空間伝搬特性モデルを作成するステップと、
を有するモデル作成方法。
【請求項9】
コンピュータに、
電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを取得するステップと、
前記可視領域画像データに対応する三次元空間において前記送信機から前記受信機まで前記電波を送信した場合の時空間伝搬特性を示す機械学習用時空間伝搬特性データを取得するステップと、
前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記機械学習用時空間伝搬特性データとを教師データとして学習し、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、が入力されると、入力された前記送信位置から前記受信位置まで前記電波が送信された場合の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性データを出力する時空間伝搬特性モデルを作成するステップと、
を実行させるためのプログラム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の時空間伝搬特性を特定するために用いられるモデル作成装置、モデル作成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間内の電波の伝搬特性を推定する手法として、受信点を含む地図データにCNN(Convolutional Neural Network)を適用して都市構造パラメータを特徴量として抽出し、抽出された特徴量からFNN(Fully-connected Neural Network)により推定する手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-122008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
時空間伝搬特性には、送信点及び受信点から視認可能な構造物が大きく影響するが、従来の手法においては、時空間伝搬特性への影響が比較的小さい領域の構造物に関する情報も使用される。したがって、時空間伝搬特性の学習に長時間を要するという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、空間の画像データを用いて電波の時空間伝搬特性を機械学習により推定するために要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のモデル作成装置は、電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを取得する画像データ取得部と、前記可視領域画像データに対応する三次元空間において前記送信機から前記受信機まで前記電波を送信した場合の時空間伝搬特性を示す機械学習用時空間伝搬特性データを取得する特性データ取得部と、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記機械学習用時空間伝搬特性データとを教師データとして機械学習し、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、が入力されると、入力された前記送信位置から前記受信位置まで前記電波が送信された場合の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性データを出力する時空間伝搬特性モデルを作成するモデル作成部と、を有する。
【0007】
前記モデル作成部は、前記三次元空間に含まれる構造物の表面における、前記送信機が送信した電波に基づく電力の分布を示す電力分布データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0008】
前記モデル作成部は、前記三次元空間に含まれる構造物の表面の深度を示す深度データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0009】
前記モデル作成部は、前記三次元空間のうち、前記送信位置及び前記受信位置の両方から視認可能な領域を示す視認領域データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0010】
前記モデル作成部は、前記三次元空間に含まれる構造物の面の角度を示す角度データが関連付けられた前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0011】
前記モデル作成部は、前記可視領域画像データのうち、前記三次元空間に含まれる構造物のエッジ部分から所定の範囲内の領域に対応するデータを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0012】
前記モデル作成部は、前記送信位置に光源を配置した場合に前記光源が発した光を視認可能な前記受信位置から視認することができる前記可視領域画像データを前記教師データとして用いて機械学習することにより前記時空間伝搬特性モデルを作成してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様のモデル作成方法は、コンピュータが実行する、電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを取得するステップと、前記可視領域画像データに対応する三次元空間において前記送信機から前記受信機まで前記電波を送信した場合の時空間伝搬特性を示す機械学習用時空間伝搬特性データを取得するステップと、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記機械学習用時空間伝搬特性データとを教師データとして学習し、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、が入力されると、入力された前記送信位置から前記受信位置まで前記電波が送信された場合の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性データを出力する時空間伝搬特性モデルを作成するステップと、を有する。
【0014】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを取得するステップと、前記可視領域画像データに対応する三次元空間において前記送信機から前記受信機まで前記電波を送信した場合の時空間伝搬特性を示す機械学習用時空間伝搬特性データを取得するステップと、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、前記機械学習用時空間伝搬特性データとを教師データとして学習し、前記可視領域画像データと、前記送信位置と、前記受信位置と、が入力されると、入力された前記送信位置から前記受信位置まで前記電波が送信された場合の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性データを出力する時空間伝搬特性モデルを作成するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、空間の画像データを用いて電波の時空間伝搬特性の機械学習をするために要する時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るモデル作成装置の概要を説明するための図である。
図2】モデル作成装置1の構成を示す図である。
図3】送信位置及び受信位置から視認可能な領域の例を示す図である。
図4】時空間伝搬特性特定装置2の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[モデル作成装置の概要]
図1は、本実施形態に係るモデル作成装置の概要を説明するための図である。モデル作成装置は、電波の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性モデルを作成するためのコンピュータである。時空間伝搬特性は、例えば遅延スプレッド、角度スプレッド、ドップラースプレッド、Kファクタ、又はシャドウフェージング偏差である。
【0018】
図1は、構造物が存在する領域を上方から見た状態を模式的に示している。構造物は、例えばビル、家、ホール等の建物であり、電波の時空間伝搬特性に影響を与える物体である。図1には、電波を送信する送信機Tと、電波を受信する受信機Rとが示されている。送信機Tが送信した電波はアンテナの指向性に対応する方向に放射されるが、図1においては、受信機Rに向けて放射される電波W1、構造物B1に向けて放射される電波W21、及び構造物B2に向けて放射される電波W31が示されている。
【0019】
図1(a)においては、電波W1は送信機Tから受信機Rに直接届く。電波W21は、構造物B1の壁で反射し、反射したW22が受信機Rに届く。しかし、構造物B2に向けて放射された電波W31は、構造物B1で遮られて構造物B2には届かない。図1(b)においては、電波W31が構造物B2に届いて構造物B2の壁で反射するが、反射した電波W32は構造物B1に遮られて受信機Rには届かない。
【0020】
以上のように、送信機Tから送信された電波は、構造物B2で反射して受信機Rに到達しないので、送信機Tから受信機Rへの電波の時空間伝搬特性に、構造物B2の存在は影響しない。従来、送信機Tから受信機Rへの電波の時空間伝搬特性を推定する際には、送信機T及び受信機Rの周辺の全ての構造物の影響が考慮されていた。しかし、本実施形態に係るモデル作成装置は、図1に示す構造物B2のように伝搬特性に影響しない構造物等の構造物を考慮することなく、送信機T又は受信機Rの少なくともいずれかから見通すことができる構造物の位置及び形状等に基づいて時空間伝搬特性を機械学習することにより、時空間伝搬特性モデルを作成するために要する時間を短縮することができる。
【0021】
以下、本実施形態に係るモデル作成装置、及びモデル作成装置が作成した時空間伝搬特性モデルに基づいて時空間伝搬特性を特定する時空間伝搬特性特定装置の構成及び動作を詳細に説明する。
【0022】
[モデル作成装置1の構成]
図2は、モデル作成装置1の構成を示す図である。モデル作成装置1は、送信位置と受信位置との間での電波の時空間伝搬特性を示すモデルを作成するための装置であり、例えばコンピュータである。モデル作成装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。制御部13は、画像データ取得部131と、特性データ取得部132と、モデル作成部133と、を有する。
【0023】
通信部11は、ネットワークを介して各種のデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部11は、モデル作成装置1がモデルを作成するために使用する画像データ及び時空間伝搬特性データを外部装置から取得する。
【0024】
画像データは、電波を送信する送信機Tが設置された送信位置、又は電波を受信する受信機Rが設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データである。可視領域画像データは、例えば三次元空間における構造物の位置及び向きの情報を含む全天球画像データであり、モデル作成部133が機械学習により時空間伝搬特性モデルを構築するための教師データとして使用される。可視領域画像データは、送信位置又は受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域の画像データのみを含んでもよい。
【0025】
可視領域画像データは、例えば、三次元空間における深度を示す深度情報及び自由空間伝搬損失(FSPL:Free Space Path Loss)情報を含んでいる。深度は、例えば、可視領域画像の撮影方向における基準位置(例えば観測点の位置)から構造物の表面までの距離である。通信部11は、例えば、外部のコンピュータに記憶されている三次元構造物情報データベース、点群情報データベース、又は実測全天球画像データベースにアクセスすることにより、可視領域画像データを取得する。
【0026】
時空間伝搬特性データは、可視領域画像データに対応する三次元空間において送信機Tから受信機Rまで電波を送信した場合の時空間伝搬特性を示す機械学習用時空間伝搬特性データである。時空間伝搬特性データは、送信機Tから受信機Rまで電波が伝送される間に生じる時空間伝搬特性を示す実測データであり、モデル作成部133が機械学習により時空間伝搬特性モデルを構築するための教師データとして使用される。
【0027】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、モデル作成部133により作成される時空間伝搬特性モデル121を記憶する。時空間伝搬特性モデル121は、モデル作成部133により作成された後に更新されてもよい。時空間伝搬特性モデル121は、時空間伝搬特性の推定が必要な三次元空間の可視領域情報が入力されると、当該三次元空間において指定された送信位置と受信位置との間の遅延スプレッド及び角度スプレッド等の時空間伝搬特性の推定値を出力する機械学習モデルである。
【0028】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、画像データ取得部131、特性データ取得部132及びモデル作成部133として機能する。
【0029】
画像データ取得部131は、通信部11を介して、モデル作成部133が機械学習に使用する可視領域画像データを取得する。可視領域画像データは、三次元空間がカメラで撮影されることにより作成された撮像画像データであってもよく、三次元空間内の構造物の位置及び形状が実測されて作成された画像データであってもよい。画像データ取得部131は、取得した可視領域画像データをモデル作成部133に入力する。
【0030】
画像データ取得部131は、取得した可視領域画像データをそのままモデル作成部133に入力してもよいが、取得した可視領域画像データに、送信位置及び受信位置の両方から視認できない領域の画像データが含まれている場合、取得した可視領域画像データのうち、送信位置又は受信位置の少なくともいずれかから視認可能な領域の画像データのみを抽出し、抽出した可視領域画像データをモデル作成部133に入力してもよい。画像データ取得部131は、送信位置及び受信位置の両方から視認可能な領域の画像データのみを抽出し、抽出した可視領域画像データをモデル作成部133に入力してもよい。
【0031】
特性データ取得部132は、通信部11を介して、モデル作成部133が機械学習に使用する時空間伝搬特性データを取得する。時空間伝搬特性データは、可視領域画像データが示す三次元空間内の2つの位置の組み合わせに関連付けられている。時空間伝搬特性データは、例えば、可視領域画像に含まれる三次元空間内の送信機Tの位置を示す緯度・経度情報及び受信機Rの位置を示す緯度・経度情報に関連付けられており、送信機Tから受信機Rに電波が送信された際の時空間伝搬特性を実測した結果に基づいて作成されている。特性データ取得部132は、取得した時空間伝搬特性データをモデル作成部133に入力する。
【0032】
モデル作成部133は、可視領域画像データと、送信位置と、受信位置と、機械学習用時空間伝搬特性データとを教師データとして機械学習する。モデル作成部133は、機械学習することにより、可視領域画像データと、送信位置と、受信位置と、が入力されると、入力された送信位置から受信位置まで電波が送信された場合の時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性データを出力する時空間伝搬特性モデル121を作成する。
【0033】
モデル作成部133は、三次元空間のうち、送信位置及び受信位置の両方から視認可能な領域を示す視認領域データが関連付けられた可視領域画像データを教師データとして用いて機械学習することにより時空間伝搬特性モデル121を作成してもよい。送信位置及び受信位置の両方から視認可能な領域を示す視認領域データは、例えば図1における構造物B1のように、送信機T及び受信機Rから見通すことができる構造物の位置及び形状を示すデータである。
【0034】
図1(a)に示した構造物B2は、送信機T及び受信機Rの両方から見通すことができないので、構造物B2は、送信位置及び受信位置の両方から視認可能な領域に含まれない。図1(b)に示した構造物B2は、送信機Tから見通すことができるが、受信機Rから見通すことができない。このような場合にも、構造物B2は、送信位置及び受信位置の両方から視認可能な領域に含まれない。
【0035】
図3は、送信位置及び受信位置から視認可能な領域の例を示す図である。図3(a)と図3(b)とでは、送信機Tの位置と受信機Rの位置とが異なっている。図3における白い四角形は、送信機Tと受信機Rの両方から視認可能な構造物である。図3における網点の四角形は、送信機T又は受信機Rのいずれか一方から視認可能な構造物である。図3における斜線の四角形は、送信機Tからも受信機Rからも視認できない構造物である。
【0036】
モデル作成部133は、例えば、図3における白い四角形で示される構造物の位置及び形状を示すデータを教師データとして用いて機械学習することにより時空間伝搬特性モデル121を作成するモデル作成部133が、このように、送信位置及び受信位置の両方から視認可能な領域を示す視認可能領域データが関連付けられた可視領域画像データを教師データとして用いることで、送信位置及び受信位置のいずれか一方から視認できず、時空間伝搬特性への影響が比較的小さい領域が使用されないので、推定精度を損なわずに機械学習により時空間伝搬特性モデル121を作成するための時間を短縮することができる。
【0037】
なお、モデル作成部133は、送信機T又は受信機Rの一方から見通すことができる領域内の構造物は、Tと受信機Rとの間の伝搬特性への影響がゼロではないことから、送信機T又は受信機Rの一方から見通すことができる領域内の構造物の位置及び形状を含む可視領域画像データを教師データとして用いてもよい。図3に示す例の場合、モデル作成部133は、網点で示す構造物の位置及び形状を示すデータを教師データとして用いてもよい。
【0038】
モデル作成部133は、三次元空間に含まれる構造物の表面における、送信機Tが送信した電波に基づく電力の分布を示す電力分布データが関連付けられた可視領域画像データを教師データとして用いて機械学習することにより時空間伝搬特性モデル121を作成してもよい。電力分布データは、構造物の表面における複数の位置それぞれに電波が照射されることで受ける電力の大きさを示すデータである。構造物の表面は、構造物の壁、窓ガラス、ベランダの手すり等のような部位によって異なる状態になっており、送信機Tが送信した電波の反射特性が異なるため、表面が受ける電力の分布が異なっている。
【0039】
そこで、モデル作成部133は、可視領域内の構造物の表面それぞれの電力分布の理論値を電力分布データとして算出又は取得する。モデル作成部133は、当該電力分布データを教師データとして用いることで、時空間伝搬特性モデル121の精度を向上させることができる。モデル作成部133は、例えばレイトレーシングの手法を用いることにより、可視領域画像データに基づいて電力分布データを作成することができる。
【0040】
モデル作成部133は、三次元空間に含まれる構造物の表面の深度を示す深度データが関連付けられた可視領域画像データを教師データとして用いて機械学習することにより時空間伝搬特性モデルを作成してもよい。深度データは、構造物の表面における複数の位置それぞれの基準位置(例えば可視領域画像データの撮影位置)からの距離を示すデータである。
【0041】
モデル作成部133は、深度データと電力分布データの両方が構造物の表面における複数の位置に関連付けられた可視領域画像データを教師データとして用いてもよい。モデル作成部133は、深度データが関連付けられた可視領域画像データを教師データとして用いることにより、可視領域画像データが示す領域内の構造物の三次元形状と時空間伝搬特性とを関連付けて機械学習することができるので、深度データが含まれる可視領域画像データを取得できる場合に適した時空間伝搬特性モデル121を作成することができる。
【0042】
モデル作成部133は、三次元空間に含まれる構造物の面の角度を示す角度データが関連付けられた可視領域画像データを教師データとして用いて機械学習することにより時空間伝搬特性モデル121を作成してもよい。構造物の面の角度は、電波が反射する向きに影響するため、モデル作成部133が構造物の面の角度を示す可視領域画像データを教師データとして用いることで、時空間伝搬特性モデル121の精度が向上する。
【0043】
なお、モデル作成部133は、送信位置又は受信位置の少なくともいずれかから視認できる領域に含まれる構造物については、電力分布データ、深度データ、又は角度データの少なくともいずれかが関連付けられており、他の領域に含まれる構造物については電力分布データ、深度データ、及び角度データが関連付けられていない可視領域画像データを使用してもよい。モデル作成部133がこのような可視領域画像データを使用することで、送信位置又は受信位置の少なくともいずれかから視認できる領域に関するデータ量が増えながらも、他の領域に関するデータ量の増加を抑えることができるので、機械学習に要する時間を抑制しつつ、作成する時空間伝搬特性モデル121の精度を向上させることができる。
【0044】
また、モデル作成部133は、可視領域画像データのうち、三次元空間に含まれる構造物のエッジ部分から所定の範囲内の領域に対応するデータを教師データとして用いて機械学習することにより時空間伝搬特性モデル121を作成してもよい。構造物における複数の面が接するエッジにおいては、電波の伝搬状態が、他の位置に比べて複雑である。そこで、モデル作成部133が、このような構造物のエッジの周辺の部分が抽出された可視領域画像データを教師データとして使用することで、モデル作成部133は、機械学習をする際の処理データ量を削減しつつ、時空間伝搬特性モデル121の精度を十分なレベルにすることができる。
【0045】
モデル作成部133は、送信位置に光源を配置した場合に光源が発した光を視認可能な受信位置から視認することができる可視領域画像データを教師データとして用いて機械学習することにより時空間伝搬特性モデル121を作成してもよい。光源が発した光を視認可能な受信位置は、光源を直接視認可能な位置であってもよく、光源が発した光が物体において反射した光又は空間内で散乱した光を視認可能な位置であってもよい。送信位置に光源を配置した場合に光源が発した光を視認可能な受信位置は、例えば、送信位置と受信位置とを結ぶ直線の間に遮蔽物がないという位置である。モデル作成部133が、このような可視領域画像データを教師データとして用いることで、機械学習をする際の処理データ量を削減しつつ、見通せる2地点間での時空間伝搬特性を示す時空間伝搬特性モデル121の精度を十分なレベルにすることができる。
【0046】
[伝搬特性特定装置2の構成]
図4は、伝搬特性特定装置2の構成を示す図である。伝搬特性特定装置2は、モデル作成装置1が作成した時空間伝搬特性モデル121を用いて、指定された送信位置と受信位置との間での電波の伝搬特性を特定するための装置であり、例えばコンピュータである。
【0047】
伝搬特性特定装置2は、通信部21と、表示部22と、操作部23と、記憶部24と、制御部25と、を有する。制御部25は、データ取得部251と、指定受付部252と、出力部253と、を有する。
【0048】
通信部21は、ネットワークを介して各種のデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信部21は、伝搬特性特定装置2が時空間伝搬特性を特定するために使用する可視領域画像データを外部装置から受信し、受信した可視領域画像データをデータ取得部251に入力する。
【0049】
表示部22は、各種のデータを表示するためのディスプレイである。表示部22は、例えば、出力部253から入力された、特定した時空間伝搬特性を示すデータを表示する。
【0050】
操作部23は、伝搬特性特定装置2を使用するユーザの操作を受け付けるデバイスであり、例えばキーボード、マウス又はタッチパネルである。操作部23は、ユーザにより入力された操作の内容を示す情報を指定受付部252に通知する。
【0051】
記憶部24は、ROM、RAM及びSSD等の記憶媒体を有する。記憶部24は、制御部25が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部24は、モデル作成装置1が作成した時空間伝搬特性モデル121を記憶している。
【0052】
制御部25は、例えばCPUを有しており、記憶部24に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部251、指定受付部252及び出力部253として機能する。
【0053】
データ取得部251は、所定の位置から視認することができる領域を示す可視領域画像データを取得する。所定の位置は、伝搬特性特定装置2を使用するユーザが時空間伝搬特性を知りたい位置である。当該可視領域画像データは、ユーザが伝搬特性を知りたい位置で撮影されることにより作成された画像データであってもよく、ユーザが伝搬特性を知りたい位置を視認できる位置で撮影されることにより作成された画像データであってもよい。データ取得部251は、取得した可視領域画像データを出力部253に入力することにより、可視領域画像データを表示部22に表示させる。
【0054】
指定受付部252は、可視領域画像データにおける、送信機Tの位置である送信位置、及び受信機Rの位置である受信位置の指定を受け付ける。指定受付部252は、例えば、可視領域画像データが表示部22に表示された状態で、ユーザが操作部23を用いて行った操作の内容を取得し、操作の内容に基づいて、可視領域画像データにおけるユーザが指定した送信位置及び受信位置の座標を特定する。
【0055】
出力部253は、モデル作成装置1が作成した時空間伝搬特性モデル121に、データ取得部251が取得した可視領域画像データと、指定受付部252が受け付けた送信位置及び受信位置とを入力し、時空間伝搬特性モデル121から出力される時空間伝搬特性データを取得することにより、送信位置から受信位置まで電波が伝搬した場合の時空間伝搬特性データを出力する。出力部253は、時空間伝搬特性データを表示部22に表示させてもよく、プリンタに印刷させてもよい。
【0056】
なお、以上の説明においては、記憶部24が時空間伝搬特性モデル121を記憶している場合を例示したが、記憶部24が時空間伝搬特性モデル121を記憶していなくてもよい。この場合、出力部253は、通信部11を介して、モデル作成装置1又は他のコンピュータが記憶している時空間伝搬特性モデル121にアクセスすることにより、時空間伝搬特性データを取得してもよい。
【0057】
[モデル作成装置1による効果]
以上説明したように、モデル作成装置1は、電波を送信する送信機が設置された送信位置、又は前記電波を受信する受信機が設置された受信位置の少なくとも一方から視認することができる領域を示す機械学習用の可視領域画像データを用いて機械学習することにより、時空間伝搬特性モデル121を作成する。モデル作成装置1がこのような可視領域画像データを用いることにより、送信位置及び受信位置から視認できない構造物に関するデータも含むデータを用いて機械学習をする場合に比べて、推定精度を落とすことなく時空間伝搬特性モデルを作成するために要する計算時間を短縮することができる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0059】
1 モデル作成装置
2 伝搬特性特定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
21 通信部
22 表示部
23 操作部
24 記憶部
25 制御部
121 伝搬特性モデル
131 画像データ取得部
132 特性データ取得部
133 モデル作成部
251 データ取得部
252 指定受付部
253 出力部
図1
図2
図3
図4