(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】熱応動スイッチ素子及び電気回路
(51)【国際特許分類】
H01H 37/54 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H01H37/54 C
(21)【出願番号】P 2021001617
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】宮田 圭太郎
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190514(JP,A)
【文献】中国実用新案第201421806(CN,Y)
【文献】実開昭51-008472(JP,U)
【文献】実公昭48-009724(JP,Y1)
【文献】特開昭59-132525(JP,A)
【文献】特開2004-311352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/00 - 37/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
前記可動片を弾性変形させることにより、前記固定接点から前記可動接点を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点に接触するように前記可動片を作動させる熱応動素子とを備え、
前記熱応動素子は、第1熱膨張率の第1層と、前記第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層とを有し、
前記熱応動素子の厚さ方向で、前記第1層は前記固定接点の側に、前記第2層は前記可動接点の側に配されている、
熱応動スイッチ素子。
【請求項2】
固定接点と、
可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
前記可動片を弾性変形させることにより、前記固定接点から前記可動接点を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点に接触するように前記可動片を作動させる熱応動素子とを備え、
前記熱応動素子は、第1熱膨張率の第1層と、前記第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層とを有し、
前記熱応動素子の厚さ方向で、前記第2層は前記可動片の側に配されている、
熱応動スイッチ素子。
【請求項3】
前記固定接点、前記可動片及び前記熱応動素子を収容する空間を有するケースを備え、
前記ケースは、底壁と前記底壁から前記熱応動素子の側に突出し、前記第1層と接触する接触部を有する、請求項1又は2に記載の熱応動スイッチ素子。
【請求項4】
前記ケースには、前記熱応動素子の厚さ方向から視た平面視で、前記熱応動素子の一部と重複する領域に、前記ケースを貫通する貫通孔が形成されている、請求項3に記載の熱応動スイッチ素子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の熱応動スイッチ素子と、電源と、負荷とを含む電気回路であって、
前記熱応動スイッチ素子は、前記電源と前記負荷とを接続するパワーラインに直列に接続されている、
電気回路。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の熱応動スイッチ素子と、電源と、負荷とを含む電気回路であって、
前記熱応動スイッチ素子は、前記電源と前記負荷とを接続するパワーラインで前記負荷に対して並列に接続されている、
電気回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応動スイッチ素子等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱応動スイッチ素子の一例として、温度上昇に応じて電流を遮断するブレーカーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている熱応動スイッチ素子は、通常時に可動接点が固定接点に接触し、可動片と固定片との間で導通状態が維持されているため、可動片及び固定片にジュール熱が発生する。従って、熱応動素子の温度は、熱応動スイッチ素子の周辺温度に上記ジュール熱によって上昇する温度が加えられた温度となり、熱応動スイッチ素子の周辺温度を正確に感知できない虞がある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ジュール熱の影響を受けることなく、熱応動スイッチ素子の周辺の温度上昇に応じて正確に動作する熱応動スイッチ素子を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、固定接点と、可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、前記可動片を弾性変形させることにより、前記固定接点から前記可動接点を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点に接触するように前記可動片を作動させる熱応動素子とを備え、前記熱応動素子は、第1熱膨張率の第1層と、前記第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層とを有し、前記熱応動素子の厚さ方向で、前記第1層は前記固定接点の側に、前記第2層は前記可動接点の側に配されている。
【0007】
本発明の第2発明は、固定接点と、可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、前記可動片を弾性変形させることにより、前記固定接点から前記可動接点を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点に接触するように前記可動片を作動させる熱応動素子とを備え、前記熱応動素子は、第1熱膨張率の第1層と、前記第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層とを有し、前記熱応動素子の厚さ方向で、前記第2層は前記可動片の側に配されている。
【0008】
本発明に係る前記熱応動スイッチ素子において、前記固定接点、前記可動片及び前記熱応動素子を収容する空間を有するケースを備え、前記ケースは、底壁と前記底壁から前記熱応動素子の側に突出し、前記第1層と接触する接触部を有する、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記熱応動スイッチ素子において、前記ケースには、前記熱応動素子の厚さ方向から視た平面視で、前記熱応動素子の一部と重複する領域に、前記ケースを貫通する貫通孔が形成されている、ことが望ましい。
【0010】
本発明の第3発明は、前記熱応動スイッチ素子と、電源と、負荷とを含む電気回路であって、前記熱応動スイッチ素子は、前記電源と前記負荷とを接続するパワーラインに直列に接続されている。
【0011】
本発明の第4発明は、前記熱応動スイッチ素子と、電源と、負荷とを含む電気回路であって、前記熱応動スイッチ素子は、前記電源と前記負荷とを接続するパワーラインで負荷に対して並列に接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本第1発明の前記熱応動スイッチ素子は、前記熱応動素子は、ジュール熱が生じない状態で前記可動片を弾性変形させることにより、前記固定接点から前記可動接点を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点に接触するように前記可動片を作動させる。これにより、前記熱応動スイッチ素子は、前記固定接点、前記可動接点及び前記可動片で生ずるジュール熱の影響を受けることなく、前記熱応動スイッチ素子の周辺の温度上昇に応じて正確に動作する。さらに、前記熱応動素子は、前記第1熱膨張率の前記第1層と、前記第1熱膨張率より高い前記第2熱膨張率の前記第2層とを有し、前記熱応動素子の厚さ方向で、前記第1層は前記固定接点の側に、前記第2層は前記可動接点の側に配されている。従って、前記熱応動スイッチ素子の厚さを肥大させることなく、正確な上記動作が得られる。
【0013】
本第1発明の前記熱応動スイッチ素子は、前記熱応動素子は、ジュール熱が生じない状態で前記可動片を弾性変形させることにより、前記固定接点から前記可動接点を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点に接触するように前記可動片を作動させる。これにより、前記熱応動スイッチ素子は、ジュール熱の影響を受けることなく、前記熱応動スイッチ素子の周辺の温度上昇に応じて正確に動作する。さらに、前記熱応動素子は、前記第1熱膨張率の前記第1層と、前記第1熱膨張率より高い前記第2熱膨張率の前記第2層とを有し、前記熱応動素子の厚さ方向で、前記第2層は前記可動片の側に配されている。従って、前記熱応動スイッチ素子の厚さを肥大させることなく、正確な上記動作が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による熱応動スイッチ素子の概略構成を示す組立て前の状態を示す斜視図。
【
図2】接点が開状態における上記熱応動スイッチ素子を示す断面図。
【
図3】接点が閉状態における上記熱応動スイッチ素子を示す断面図。
【
図4】
図1のケース本体の変形例の構成を示す斜視図。
【
図5】
図4のケース本体における熱応動素子と貫通孔との関係を示す平面図。
【
図6】
図1の熱応動スイッチ素子を含む電気回路を示す回路図。
【
図7】
図6の電気回路とは別の電気回路を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態による熱応動スイッチ素子について図面を参照して説明する。
図1乃至
図3は、熱応動スイッチ素子1の構成を示している。熱応動スイッチ素子1は、固定接点21と、可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5とを備える。本実施形態の熱応動スイッチ素子1では、固定接点21、可動接点41、可動片4及び熱応動素子5は、ケース10の内部に設けられている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0016】
固定接点21は、固定片2に設けられている。固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。固定片2は、外部回路と電気的に接続される端子22を有している。端子22は、ケース本体7の端縁の側壁から外側に突出している。
【0017】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。
【0018】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち
図2において上側の面)を第1面、その反対側の面を第2面として説明している。固定接点21から可動接点41に向く方向を第1方向と、第1方向とは反対の方向を第2方向とそれぞれ定義した場合、第1面は第1方向を向き、第2面は第2方向を向く。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5等についても同様である。
【0019】
可動接点41は、可動片4の長手方向の先端部に形成されている。可動接点41は、例えば、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0020】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4は、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる。
【0021】
可動片4の長手方向の他端部には、外部回路と電気的に接続される端子42が形成されている。端子42はケース本体7の端縁の側壁から外側に突出している。可動片4は、可動接点41と端子42との間に、固定部43及び弾性部44を有している。
【0022】
固定部43は、端子42と弾性部44との間に設けられ、ケース本体7と蓋部材8とによって裏表両面側から挟み込まれて固定される。これにより、ケース本体7に対する可動片4の位置及び姿勢が安定する。
【0023】
弾性部44は、固定部43から可動接点41の側に延出されている。すなわち、固定部43から延びる弾性部44の先端部に可動接点41が設けられている。
【0024】
固定部43においてケース本体7と蓋部材8によって可動片4が固定され、弾性部44が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が可動片4の厚さ方向に移動し、固定接点21と可動接点41との距離が変動し、熱応動スイッチ素子1の開閉が実現される。
【0025】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、作動温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部44の第2面には、熱応動素子5に対向して一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部44に伝達される(
図2及び3参照)。
【0026】
熱応動素子5は、温度変化に伴って変形することにより、可動片4を作動させる。熱応動素子5は、熱膨張率の異なる2種類の材料が積層されることにより構成される。
【0027】
熱応動素子5は、円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましく、小型でありながら弾性部44を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。
【0028】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の絶縁材料を適用してもよい。
【0029】
ケース本体7には、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5などを収容するための内部空間である収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた熱応動素子5の端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によって適宜当接され、熱応動素子5の熱変形時に案内される。
【0030】
蓋部材8には、カバー片9がインサート成形によって埋め込まれている(
図2参照)。カバー片9は、上述した銅等を主成分とする金属又はステンレス鋼等の金属をプレス加工することにより板状に形成される。カバー片9は、
図2及び
図3が示すように、可動片4の第1面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつ熱応動スイッチ素子1の小型化に貢献する。
【0031】
図1に示されるように、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。このとき、ケース本体7と蓋部材8とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の気密性が向上する。これにより、収容凹部73がもたらすケース10の内部空間は密閉され、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5等の部品がケース10の外部の雰囲気から遮断され、保護されうる。また、超音波溶着によって、可動片4の固定部43がケース本体7及び蓋部材8と溶着される。
【0032】
図2は、通常温度における熱応動スイッチ素子1の動作を示している。通常温度の熱応動素子5は、
図1及び2に示されるように、第2方向の側に凸となる初期形状を維持している。初期形状の熱応動素子5は、熱応動スイッチ素子1の長手方向での両端部において突起44a及び44bと当接する。このとき、熱応動素子5は、可動片4の弾性部44が発生する弾性力より大きい弾性力を発生し、可動片4の先端部の突起44bを第1方向の側に押し上げて、可動片4を可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に維持している。従って、固定片2と可動片4との間の通電に伴うジュール熱は生じないため、熱応動素子5の温度は、熱応動スイッチ素子1の周辺の温度を正確に反映した温度となる。
【0033】
図3は、異常温度における熱応動スイッチ素子1の動作を示している。熱応動スイッチ素子1の周辺温度が過度に上昇すると、作動温度に達した熱応動素子5は第1方向の側に凸となる形状に変形する。熱応動素子5の上記作動温度は、例えば、70℃~90℃である。熱応動素子5の変形に伴い熱応動素子5が弾性部44を押し上げていた力が消滅または著しく減少し、弾性部44の弾性力によって、可動接点41が固定接点21の側に押圧されて固定接点21に接触する。これにより、可動片4が導通状態に移行する。
【0034】
熱応動スイッチ素子1では、熱応動素子5はジュール熱が生じない状態で可動片4を弾性変形させることにより、固定接点21から可動接点41を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより可動接点41が固定接点21に接触するように可動片4を作動させる。これにより、熱応動スイッチ素子1は、固定接点21、可動接点41及び可動片4で生ずるジュール熱の影響を受けることなく、熱応動スイッチ素子1の周辺の温度上昇に応じて正確に動作する。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、熱応動素子5は、第1熱膨張率の第1層51と、第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層52とを有する、いわゆるバイメタルによって構成されている。第1層51には、例えば、鉄-ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼などの合金からなる材料が採用される。第2層52には、例えば、銅-ニッケル-マンガン合金又はニッケル-クロム-鉄合金などの合金からなる材料が採用される。熱応動素子5は、三層以上の積層構造のトリメタル等によって構成されていてもよい。
【0036】
本熱応動スイッチ素子1では、熱応動素子5の厚さ方向で、第1層51は固定接点21の側に、第2層52は可動接点41の側に配されている。すなわち、第1層51は第2方向の側、第2層52は第1方向の側に配されている。このような配置により、固定接点21及び可動接点41と熱応動素子5とを熱応動スイッチ素子1の長手方向に並べて位置させることが可能となり、熱応動スイッチ素子1の厚さを肥大させることなく、正確な上記動作が得られる。
【0037】
また、本熱応動スイッチ素子1では、熱応動素子5の厚さ方向で、第2層52は可動片4の側に配されている。このような配置により、固定接点21及び可動接点41と熱応動素子5とを熱応動スイッチ素子1の長手方向に並べて位置させることが可能となり、熱応動スイッチ素子1の厚さを肥大させることなく、正確な上記動作が得られる。
【0038】
図1ないし
図3に示されるように、ケース本体7は、底壁75と、熱応動素子5と接触する接触部76とを有している、のが望ましい。接触部76は、底壁75から熱応動素子5の側に突出し、熱応動素子5の第1層51と接触する。すなわち、熱応動素子5は、
図1において、接触部76の上方に載置される。
【0039】
図2に示されるように、初期形状の熱応動素子5は、その中央部において接触部76と接触する。これにより、熱応動素子5が底壁75よりも第1方向の側に位置され、遮断状態での固定接点21からの可動接点41の距離が十分に確保される。従って、熱応動スイッチ素子1が何らかの事情により衝撃を受けた場合等であっても、固定接点21から可動接点41が離隔した状態が容易に維持されるようになり、熱応動スイッチ素子1の動作が安定する。
【0040】
図4は、ケース本体7の変形例であるケース本体7Aを示している。ケース本体7Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述したケース本体7の構成が採用されうる。 ケース本体7Aには、底壁75を貫通する貫通孔77が形成されている。
【0041】
ケース本体7Aの底壁75に貫通孔77が設けられることにより、熱応動スイッチ素子1の外部の熱が放射・対流により熱応動素子5に伝わりやすくなり、熱応動スイッチ素子1の応答性能、感度特性などが向上する。そして、熱応動スイッチ素子1の応答性能が向上すると、熱応動スイッチ素子1の外部環境の温度と熱応動素子5の動作温度との差が小さくなり、より安全に電気回路を保護することができる。
【0042】
図2、
図3に示されるように、固定片2が底壁75の領域までのびている形態では、貫通孔77は、固定片2を貫通していてもよい。貫通孔77が固定片2を貫通することにより、熱応動スイッチ素子1の外部の熱が放射・対流により熱応動素子5に伝わりやすくなる。一方、貫通孔77が固定片2を貫通しない構成では、ケース10内の収容凹部73の機密性が高められる。また、熱応動スイッチ素子1の外部の熱が端子22を介して熱応動素子5に伝わりやすくなる。
【0043】
図5は、熱応動素子5と貫通孔77との関係を示している。貫通孔77は、熱応動素子5の厚さ方向から視た平面視で、熱応動素子5の一部と重複する領域に形成されている。このような配置により、熱応動スイッチ素子1の外部の熱が、より一層、熱応動素子5に伝わりやすくなる。
【0044】
ケース本体7Aでは、同一形状の3個の貫通孔77が形成されている。貫通孔77の形状及び個数は任意である。各貫通孔77の間には、底壁75と接触部76とをつなぐブリッヂ部78が設けられている。ブリッヂ部78によって接触部76の位置が安定し、固定接点21に対する可動接点41の位置も安定する。
【0045】
図6は、熱応動スイッチ素子1を含む電気回路100を示している。電気回路100は、熱応動スイッチ素子1と、電源101と、負荷102とを含んでいる。電源101は、パワーライン103を介して負荷102に駆動電圧を印加する。電気回路100では、熱応動スイッチ素子1は、電源101と負荷102とを接続するパワーライン103に直列に接続されている。
【0046】
熱応動スイッチ素子1は、熱源(図示せず)の一部または近傍に設けられている。熱源は、電気回路100内の負荷102とは別の負荷であってもよく、電気回路100とは独立したものであってもよい。負荷102は、熱源を冷却するための冷却装置である。冷却装置の一例としては、熱源を冷却するための電動ファンが挙げられる。冷却装置は、電動ファンの他、熱源から熱を奪うための熱交換装置であってもよい。
【0047】
通常動作時の電気回路100では、熱応動スイッチ素子1は、固定接点21から可動接点41が離隔した開状態である。このとき、負荷102には電源101の駆動電圧が印加されない。
【0048】
一方、電気回路100において、熱源が過熱すると、熱応動素子5の熱変形に伴い、可動接点41が固定接点21に接触し、熱応動スイッチ素子1は、閉状態に移行する。このとき、冷却装置である負荷102に駆動電圧が印加され、熱源が冷却される。そして、熱源の温度低下に伴い、熱応動素子5が元の形状に復元すると、熱応動スイッチ素子1は、開状態に復帰する。このような電気回路100によって熱源の温度が制御される。
【0049】
図7は、電気回路100の変形例である電気回路100Aの回路図を示している。電気回路100と同様に、電気回路100Aは、熱応動スイッチ素子1と、電源101と、負荷102とを含んでいる。電源101は、パワーライン103を介して負荷102に駆動電圧を印加する。電気回路100では、熱応動スイッチ素子1は、電源101と負荷102とを接続するパワーライン103で負荷102に対して並列に接続されている。また、負荷102とは別の負荷(例えば、抵抗104)が、熱応動スイッチ素子1に対して直列に接続されている。
【0050】
電気回路100Aでは、熱源は、電気回路100A内の負荷102を含んでいる。そして、熱応動スイッチ素子1は、熱源である負荷102の一部または近傍に設けられている。
【0051】
通常動作時の電気回路100Aでは、熱応動スイッチ素子1は、固定接点21から可動接点41が離隔した開状態である。このとき、負荷102には電源101の駆動電圧が印加される。
【0052】
一方、電気回路100において、熱源が過熱すると、熱応動素子5の熱変形に伴い、可動接点41が固定接点21に接触し、熱応動スイッチ素子1は、閉状態に移行する。このとき、熱応動スイッチ素子1にも電源101の駆動電圧が印加され、負荷102に流れる電流の一部がバイパスされる。従って、負荷102に流れる電流が制限され、熱源である負荷102の過熱が抑制される。そして、負荷102の温度低下に伴い、熱応動素子5が元の形状に復元すると、熱応動スイッチ素子1は、開状態に復帰する。このような電気回路100によって熱源の温度が制御される。
【0053】
以上、本発明の熱応動スイッチ素子1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、熱応動スイッチ素子1は、少なくとも、固定接点21と、可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、可動片4を弾性変形させることにより、固定接点21から可動接点41を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより可動接点41が固定接点21に接触するように可動片4を作動させる熱応動素子5とを備え、熱応動素子5は、第1熱膨張率の第1層51と、第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層52とを有し、熱応動素子5の厚さ方向で、第1層51は固定接点21の側に、第2層52は可動接点41の側に配されていればよい。
【0054】
また、熱応動スイッチ素子1は、少なくとも、固定接点21と、可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、可動片4を弾性変形させることにより、固定接点21から可動接点41を離隔させ、温度変化に伴って変形することにより可動接点41が固定接点21に接触するように可動片4を作動させる熱応動素子5とを備え、熱応動素子5は、第1熱膨張率の第1層51と、第1熱膨張率より高い第2熱膨張率の第2層52とを有し、熱応動素子5の厚さ方向で、第2層52は可動片4の側に配されていればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 熱応動スイッチ素子
4 可動片
5 熱応動素子
10 ケース
21 固定接点
41 可動接点
51 第1層
52 第2層
75 底壁
76 接触部
77 貫通孔
100 電気回路
100A 電気回路
101 電源
102 負荷
103 パワーライン