(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】損失引当金算出装置、損失引当金算出方法および損失引当金算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20231206BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20231206BHJP
【FI】
G06Q40/12
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021013440
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 遼
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】藤澤 美穂
(56)【参考文献】
【文献】工事契約会計,建設産業経理研究所,2008年06月30日,p.85-117,ISBN : 978-4-433-35978-2
【文献】業種別会計実務ガイドブック,初版第1刷,税務研究会出版局,2011年03月15日,p.945-952,ISBN : 978-4-7931-1887-6
【文献】会計全書 平成29年度,2017年07月10日,p.680-687,ISBN : 978-4-502-89002-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部および記憶部を備え、ある案件について将来発生すると見込まれる損失についての引当金である損失引当金を算出する損失引当金算出装置であって、
前記記憶部には、
契約識別データと前記案件の契約金額とを含む契約データと、
前記契約識別データと前記案件の予算金額とを含む予算データと、
前記契約識別データと前記案件の進行基準による売上金額の累計金額である進行基準売上累計金額とを含む進行基準売上データと、
前記契約識別データと前記案件について発生した原価金額の累計金額である原価累計金額とを含む原価集計データと、
が格納されており、
前記制御部は、
前記契約識別データ毎に、前記契約データ中の前記契約金額から前記予算データ中の前記予算金額を減じた値と、前記進行基準売上データ中の前記進行基準売上累計金額から前記原価集計データ中の前記原価累計金額を減じた値と
の和を算出し、
当該和が負の値でない場合は、その契約識別データの契約は損失引当金が発生しない契約であるとし、
当該和が負の値である場合は、その契約識別データの契約は損失引当金が発生する契約であるとし、当該和の絶対値を損失引当金として算出する算出手段
を備えること、
を特徴とする損失引当金算出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記
算出手段によって損失引当金が発生する契約
であるとされた契約を、オペレータに通知する通知手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項1に記載の損失引当金算出装置。
【請求項3】
前記算出手段は、
前記原価集計データ中の前記原価累計金額を前記予算データ中の前記予算金額で除することにより前記案件の進捗率を算出し、更に、前記契約データ中の前記契約金額に当該算出した進捗率を乗じることにより前記進行基準売上累計金額を算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の損失引当金算出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記損失引当金が発生する場合、前記算出手段で算出した前記損失引当金を含む仕訳を生成する仕訳生成手段を更に備え、
当該仕訳は、前記損失引当金の発生月に生成される前記損失引当金の計上用の仕訳である計上用仕訳および前記発生月の翌月に生成される前記損失引当金の振り戻し用の仕訳である振戻用仕訳であること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の損失引当金算出装置。
【請求項5】
前記案件が、工事案件であり、
前記損失引当金が、工事損失引当金であること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の損失引当金算出装置。
【請求項6】
制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、ある案件について将来発生すると見込まれる損失についての引当金である損失引当金を算出する損失引当金算出方法であって、
前記記憶部には、
契約識別データと前記案件の契約金額とを含む契約データと、
前記契約識別データと前記案件の予算金額とを含む予算データと、
前記契約識別データと前記案件の進行基準による売上金額の累計金額である進行基準売上累計金額とを含む進行基準売上データと、
前記契約識別データと前記案件について発生した原価金額の累計金額である原価累計金額とを含む原価集計データと、
が格納されており、
前記制御部で実行される、
前記契約識別データ毎に、前記契約データ中の前記契約金額から前記予算データ中の前記予算金額を減じた値と、前記進行基準売上データ中の前記進行基準売上累計金額から前記原価集計データ中の前記原価累計金額を減じた値と
の和を算出し、
当該和が負の値でない場合は、その契約識別データの契約は損失引当金が発生しない契約であるとし、
当該和が負の値である場合は、その契約識別データの契約は損失引当金が発生する契約であるとし、当該和の絶対値を損失引当金として算出する算出ステップ
を含むこと、
を特徴とする損失引当金算出方法。
【請求項7】
制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、ある案件について将来発生すると見込まれる損失についての引当金である損失引当金を算出する損失引当金算出プログラムであって、
前記記憶部には、
契約識別データと前記案件の契約金額とを含む契約データと、
前記契約識別データと前記案件の予算金額とを含む予算データと、
前記契約識別データと前記案件の進行基準による売上金額の累計金額である進行基準売上累計金額とを含む進行基準売上データと、
前記契約識別データと前記案件について発生した原価金額の累計金額である原価累計金額とを含む原価集計データと、
が格納されており、
前記制御部に実行させるための、
前記契約識別データ毎に、前記契約データ中の前記契約金額から前記予算データ中の前記予算金額を減じた値と、前記進行基準売上データ中の前記進行基準売上累計金額から前記原価集計データ中の前記原価累計金額を減じた値と
の和を算出し、
当該和が負の値でない場合は、その契約識別データの契約は損失引当金が発生しない契約であるとし、
当該和が負の値である場合は、その契約識別データの契約は損失引当金が発生する契約であるとし、当該和の絶対値を損失引当金として算出する算出ステップ
を含むこと、
を特徴とする損失引当金算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損失引当金算出装置、損失引当金算出方法および損失引当金算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工事進行基準会計の実施のために計算する工事進捗度の信頼性を評価する方法が開示されている(特許文献1の0001段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のような工事やIT(Information Technology)の分野においては、将来発生すると見込まれる損失を引当金として計上することがある。このような引当金のことを損失引当金という。
【0005】
ここで、従来においては、契約毎の損失引当金の計算は、担当者が手計算により行っていたため、計算ミスのリスクがあり、また、作業負荷も大きかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、契約毎の損失引当金を自動で算出することができる損失引当金算出装置、損失引当金算出方法および損失引当金算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る損失引当金算出装置は、制御部および記憶部を備え、ある案件について将来発生すると見込まれる損失についての引当金である損失引当金を算出する損失引当金算出装置であって、前記記憶部には、契約識別データと前記案件の契約金額とを含む契約データと、前記契約識別データと前記案件の予算金額とを含む予算データと、前記契約識別データと前記案件の進行基準による売上金額の累計金額である進行基準売上累計金額とを含む進行基準売上データと、前記契約識別データと前記案件について発生した原価金額の累計金額である原価累計金額とを含む原価集計データと、が格納されており、前記制御部が、前記契約識別データ毎に、前記契約データ中の前記契約金額から前記予算データ中の前記予算金額を減じた値と、前記進行基準売上データ中の前記進行基準売上累計金額から前記原価集計データ中の前記原価累計金額を減じた値と、に基づいて前記損失引当金を算出する算出手段を備えること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る損失引当金算出装置は、前記制御部が、前記減じた値同士の和が負の値となった前記契約識別データで特定される契約を、前記損失引当金が発生する契約として特定してオペレータに通知する通知手段を更に備えること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る損失引当金算出装置は、前記算出手段が、前記原価集計データ中の前記原価累計金額を前記予算データ中の前記予算金額で除することにより前記案件の進捗率を算出し、更に、前記契約データ中の前記契約金額に当該算出した進捗率を乗じることにより前記進行基準売上累計金額を算出すること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る損失引当金算出装置は、前記制御部が、前記損失引当金が発生する場合、前記算出手段で算出した前記損失引当金を含む仕訳を生成する仕訳生成手段を更に備え、当該仕訳は、前記損失引当金の発生月に生成される前記損失引当金の計上用の仕訳である計上用仕訳および前記発生月の翌月に生成される前記損失引当金の振り戻し用の仕訳である振戻用仕訳であること、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る損失引当金算出装置は、前記案件が、工事案件であり、前記損失引当金が、工事損失引当金であること、を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る損失引当金算出方法は、制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、ある案件について将来発生すると見込まれる損失についての引当金である損失引当金を算出する損失引当金算出方法であって、前記記憶部には、契約識別データと前記案件の契約金額とを含む契約データと、前記契約識別データと前記案件の予算金額とを含む予算データと、前記契約識別データと前記案件の進行基準による売上金額の累計金額である進行基準売上累計金額とを含む進行基準売上データと、前記契約識別データと前記案件について発生した原価金額の累計金額である原価累計金額とを含む原価集計データと、が格納されており、前記制御部で実行される、前記契約識別データ毎に、前記契約データ中の前記契約金額から前記予算データ中の前記予算金額を減じた値と、前記進行基準売上データ中の前記進行基準売上累計金額から前記原価集計データ中の前記原価累計金額を減じた値と、に基づいて前記損失引当金を算出する算出ステップを含むこと、を特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る損失引当金算出プログラムは、制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、ある案件について将来発生すると見込まれる損失についての引当金である損失引当金を算出する損失引当金算出プログラムであって、前記記憶部には、契約識別データと前記案件の契約金額とを含む契約データと、前記契約識別データと前記案件の予算金額とを含む予算データと、前記契約識別データと前記案件の進行基準による売上金額の累計金額である進行基準売上累計金額とを含む進行基準売上データと、前記契約識別データと前記案件について発生した原価金額の累計金額である原価累計金額とを含む原価集計データと、が格納されており、前記制御部に実行させるための、前記契約識別データ毎に、前記契約データ中の前記契約金額から前記予算データ中の前記予算金額を減じた値と、前記進行基準売上データ中の前記進行基準売上累計金額から前記原価集計データ中の前記原価累計金額を減じた値と、に基づいて前記損失引当金を算出する算出ステップを含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、契約毎の損失引当金を自動で算出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、損失引当金算出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、1カ月目における処理フローの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、2カ月目における処理フローの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、1カ月目に登録される契約データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、1カ月目に登録される予算データおよび予算履歴データの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、1カ月目に登録される原価データおよび原価集計データの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、1カ月目に登録される進捗率データおよび進行基準売上データの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、2カ月目に登録される予算データおよび予算履歴データの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、2カ月目に登録される原価データおよび原価集計データの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、2カ月目に登録される進捗率データおよび進行基準売上データの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、2カ月目に登録される損失引当金データの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、工事損失引当金の計上用仕訳の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、工事損失引当金の振戻用仕訳の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る損失引当金算出装置、損失引当金算出方法および損失引当金算出プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
[1.概要]
工事を行う際には、工事損失が発生することがある。前記工事損失とは、工事契約について、工事原価総額が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合において、前記超過すると見込まれる額のことである。
【0018】
また、前記工事損失が発生する場合には、工事損失引当金を計上する必要がある。前記工事損失引当金とは、前記工事損失から、前記工事契約に関してすでに計上された損益の額を控除した残額について計上される引当金のことである。前記工事損失引当金は、工事進行基準において、工事原価総額が合理的に見積もりできている場合に採用することができる。
【0019】
ここで、従来においては、前記工事損失引当金は、担当者が手動で計算して求めていたため、金額の誤入力や計算ミス等のリスクの問題があった。また、従来においては、前記工事損失引当金を計上すべき工事(工事契約)の把握は、担当者が人為的判断により行っていたため、把握に手間がかかるという問題もあった。そして、従来においては、前記工事損失引当金が発生した場合の仕訳の計上も、担当者が手動で行ったため、仕訳計上の手間や計上ミス等の問題もあった。
【0020】
そこで、本実施形態においては、例えば、前記工事損失引当金を自動で算出できるようにした。また、本実施形態においては、例えば、工事進行基準の契約について、システムで保持している予算データ、原価データおよび進行基準売上データ等から、前記工事損失引当金を計上すべき工事(工事契約)を自動判断できるようにした。そして、本実施形態においては、例えば、前記工事損失引当金を計上すべき工事(工事契約)に対して工事損失引当金計上仕訳を自動で計上できるようにした。以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0021】
[2.構成]
本実施形態に係る損失引当金算出装置100の構成の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は、損失引当金算出装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
損失引当金算出装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、損失引当金算出装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0023】
損失引当金算出装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。損失引当金算出装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0024】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、損失引当金算出装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、損失引当金算出装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0025】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0026】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0027】
記憶部106は、例えば、契約データ106aと、予算データ106bと、予算履歴データ106cと、原価データ106dと、原価集計データ106eと、進捗率データ106fと、進行基準売上データ106gと、損失引当金データ106hと、科目設定マスタ106iと、を備えている。
【0028】
本実施形態に係る損失引当金算出装置100によれば、ある案件について将来発生すると見込まれる損失についての引当金である損失引当金を算出することができる。本実施形態に係る損失引当金算出装置100は、工事やIT等の様々な分野において使用することが可能であるが、工事の分野を例にとると、前記案件は工事案件であり、前記損失引当金は前記工事損失引当金である。
【0029】
契約データ106aは、
図4に示すように、例えば、プロジェクト識別データ(PJ番号)と、契約識別データ(契約番号)と、契約行番号と、売上基準と、前記案件の契約金額と、等を含む。
【0030】
予算データ106bは、
図5および
図8に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(PJ番号)と、前記契約識別データ(契約番号)と、前記契約行番号と、登録日と、前記案件の予算金額と、等を含む。予算データ106bには、最新の情報が上書きされるため、過去の予算情報は次段落で説明する予算履歴データ106cから参照することができる。
【0031】
予算履歴データ106cは、予算データ106bの修正を行った場合において、修正前および修正後の予算情報を履歴として残すためのデータである。予算履歴データ106cは、
図5および
図8に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(PJ番号)と、前記契約識別データ(契約番号)と、前記契約行番号と、新規、修正前または修正後の処理区分と、前記登録日と、前記案件の予算金額と、等を含む。
【0032】
原価データ106dは、当月に実際に発生した原価金額を管理するためのデータである。原価データ106dは、
図6および
図9に示すように、例えば、伝票番号と、前記プロジェクト識別データ(PJ番号)と、前記契約識別データ(契約番号)と、前記契約行番号と、当月に実際に発生した原価金額と、等を含む。
【0033】
原価集計データ106eは、当月に実際に発生した前記原価金額の累計金額である原価累計金額を管理するためのデータである。原価集計データ106eは、
図6および
図9に示すように、例えば、伝票番号と、前記プロジェクト識別データ(PJ番号)と、前記契約識別データ(契約番号)と、前記契約行番号と、会計年月と、当月に実際に発生した前記原価金額と、当該原価金額の累計金額である原価累計金額と、等を含む。
【0034】
進捗率データ106fは、
図7および
図10に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(PJ番号)と、前記契約識別データ(契約番号)と、前記契約行番号と、会計基準と、前記案件の進捗率と、等を含む。
【0035】
進行基準売上データ106gは、
図7および
図10に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(PJ番号)と、前記契約識別データ(契約番号)と、前記契約行番号と、会計年月と、当月の進行基準による売上金額(進行基準売上金額・・・A)と、前月以前の進行基準による売上金額の累計金額(前月以前進行基準売上累計金額・・・B)と、等を含む。進行基準売上データ106gは、図示していないが、進行基準による売上金額の累計金額である進行基準売上累計金額も更に含む。当該進行基準売上累計金額は、AとBの和となる。
【0036】
損失引当金データ106hは、発生する前記損失引当金を管理するためのデータであり、仕訳生成の基となるデータでもある。損失引当金データ106hは、
図11に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(PJ番号)と、前記契約識別データ(契約番号)と、前記契約行番号と、会計年月と、前記損失引当金(損失引当金額)と、等を含む。
【0037】
科目設定マスタ106iは、前記損失引当金を含む仕訳に用いる勘定科目を管理するためのマスタである。科目設定マスタ106iは、
図13に示すように、例えば、科目設定区分と、総勘定科目コードと、補助科目コードと、補助内訳科目コードと、等を含む。
図13に示す科目設定マスタ106iの例では、前記科目設定区分=60に工事損失引当金科目が設定されており、前記科目設定区分=61に工事損失引当金繰入科目が設定されている。
【0038】
制御部102は、損失引当金算出装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0039】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)前記契約識別データ毎に、前記契約データ中の前記契約金額から前記予算データ中の前記予算金額を減じた値と、前記進行基準売上データ中の前記進行基準売上累計金額から前記原価集計データ中の前記原価累計金額を減じた値と、に基づいて前記損失引当金を算出する算出手段としての算出部102aと、(2)前記減じた値同士の和が負の値となった前記契約識別データで特定される契約を、前記損失引当金が発生する契約として特定してオペレータに通知する通知手段としての通知部102bと、(3)前記損失引当金が発生する場合、前記算出手段で算出した前記損失引当金を含む仕訳を生成する仕訳生成手段としての仕訳生成部102cと、を備えている。
【0040】
算出部102aは、前記契約識別データ毎に、契約データ106a中の前記契約金額から予算データ106b中の前記予算金額を減じた値と、進行基準売上データ106g中の前記進行基準売上累計金額から原価集計データ106e中の前記原価累計金額を減じた値と、に基づいて前記損失引当金を算出する。当該減じた値同士の和が正の値または0となった場合、前記損失引当金が発生しないこととなる。当該減じた値同士の和が負の値となった場合、前記損失引当金が発生することとなり、当該負の値の絶対値が前記損失引当金となる。
【0041】
算出部102aは、前記進行基準売上累計金額を以下のようにして算出できる。すなわち、算出部102aは、原価集計データ106e中の前記原価累計金額を予算データ106bの前記予算金額で除することにより前記案件の進捗率を算出し、更に、契約データ106a中の前記契約金額に当該算出した進捗率を乗じることにより前記進行基準売上累計金額を算出する。
【0042】
通知部102bは、前記減じた値同士の和が負の値となった前記契約識別データで特定される契約を、前記損失引当金が発生する契約として特定してオペレータに通知する。
【0043】
仕訳生成部102cは、前記損失引当金が発生する場合、算出部102aで算出した前記損失引当金を含む仕訳を生成する。当該仕訳は、前記損失引当金の発生月に生成される前記損失引当金の計上用の仕訳である計上用仕訳および前記発生月の翌月に生成される前記損失引当金の振り戻し用の仕訳である振戻用仕訳である。
【0044】
[3.処理の概要]
本項目では、本実施形態に係る処理の概要を説明する。
【0045】
[3-1.機能概要]
本実施形態においては、例えば、工事進行基準の契約について、工事進行基準売上計算の要素および計算結果として登録されている金額を用いて、前記工事損失引当金の計上対象となる工事を決定し、また、前記工事損失引当金に関する仕訳を計上することができる。前記要素とは、例えば、契約金額、予算金額および原価累計金額である。前記計算結果とは、例えば、進行基準売上金額である。
【0046】
前記工事損失引当金は、例えば、「(契約金額-予算金額)+(進行基準売上累計金額-原価累計金額)」という計算式により算出することができる。また、当該計算式による計算結果が負の値(<0)である工事が、前記工事損失引当金が発生する工事ということとなる。
【0047】
[3-2.処理フロー]
本実施形態においては、例えば、
図2および
図3に示す処理フローに従って、処理が進行する。例えば、1カ月目と2カ月目において、どのように処理が進行するかを説明する。
【0048】
1カ月目の処理フローを、
図2を用いて本段落において説明する。まず、「契約入力」において、工事契約の受注金額が指定されて登録される。次に、「売上基準登録」において、工事契約の売上基準が進行基準に変更される。次に、「予算入力」において、工事契約に対して、予算金額が入力される。次に、「原価入力」において、工事契約に対して、原価が紐付けされる。次に、「進捗率計算処理」が行われる。次に、「進行基準売上計算処理」が行われる。最後に、「仕訳連携」において、前記工事損失引当金が発生していた場合、前記工事損失引当金の仕訳が計上される。
【0049】
2カ月目の処理フローを、
図3を用いて本段落において説明する。まず、「予算入力」において、工事契約に対して、予算金額が修正される。次に、「原価入力」において、工事契約に対して、原価が紐付けされる。次に、「進捗率計算処理」が行われる。次に、「進行基準売上計算処理」が行われる。最後に、「仕訳連携」において、前記工事損失引当金が発生していた場合、前記工事損失引当金の仕訳が計上される。
【0050】
[4.処理の具体例]
本項目では、本実施形態に係る処理の具体例を説明する。本項目では、1カ月目(2020/04)および2カ月目(2020/05)における、前記工事損失引当金が発生するか否かの判断の処理について説明する。また、本項目では、算出した前記工事損失引当金に基づく仕訳の生成についても説明する。
【0051】
[4-1.1カ月目における、前記工事損失引当金が発生するか否かの判断]
本項目では、1カ月目(2020/04)における、前記工事損失引当金が発生するか否かの判断の処理について、
図4~
図7を用いて説明する。
【0052】
(1)契約入力
まず、
図4に示すように、契約データ106aが登録される。本例では、
図4に示すように、契約番号PJJUC00001についての契約金額として1,000,000円が登録され、契約番号PJJUC00002についての契約金額として2,000,000円が登録されている。
【0053】
(2)予算入力
次に、
図5に示すように、予算データ106bが登録される。本例では、
図5に示すように、契約番号PJJUC00001についての予算金額として900,000円が登録され、契約番号PJJUC00002についての予算金額として1,800,000円が登録されている。また、併せて、
図5に示すように、予算履歴データ106cが生成される。
【0054】
(3)原価入力
次に、
図6に示すように、2020/04に発生した原価金額が入力されることにより、原価データ106dが登録される。本例では、
図6に示すように、契約番号PJJUC00001についての原価金額として90,000円が登録され、契約番号PJJUC00002についての原価金額として360,000円が登録されている。
【0055】
また、併せて、
図6に示すように、原価集計データ106eが生成される。原価集計データ106eは、処理時点までの前記入力された原価金額を集計したデータであるが、2020/04時点では、2020/04に入力された原価金額が存在しないため、
図6に示すように、原価集計データ106e中の原価累計金額(原価金額)は、原価データ106d中の原価金額と同じとなる。
【0056】
(4)進捗率計算処理
次に、算出部102aは、「原価集計データ106e中の原価累計金額(原価金額)÷予算データ106b中の予算金額×100」という計算式により、契約別の進捗率を算出する。
【0057】
具体的には、契約番号PJJUC00001については、原価累計金額(原価金額)は(3)で説明したように90,000円であり、予算金額は(2)で説明したように900,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00001についての進捗率を、90,000円÷900,000円×100=10%と算出する。
【0058】
また、契約番号PJJUC00002については、原価累計金額(原価金額)は(3)で説明したように360,000円であり、予算金額は(2)で説明したように1,800,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00002についての進捗率を、360,000円÷1,800,000円×100=20%と算出する。
【0059】
そして、
図7に示すように、本項目で説明した算出結果を含む進捗率データ106fが登録される。
【0060】
(5)進行基準売上計算処理
次に、算出部102aは、「契約データ106a中の契約金額×進捗率-前月以前進行基準売上累計金額」という計算式により、契約別の1カ月目(2020/04)の進行基準売上金額を算出する。
【0061】
具体的には、契約番号PJJUC00001については、契約金額は(1)で説明したように1,000,000円であり、進捗率は(4)で説明したように10%であり、前月以前進行基準売上累計金額は0円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00001についての1カ月目(2020/04)の進行基準売上金額を、1,000,000円×10%-0円=100,000円と算出する。これにより、契約番号PJJUC00001についての進行基準売上累計金額0円が、「前月以前進行基準売上累計金額0円+1カ月目(2020/04)の進行基準売上金額100,000円」という計算式により、100,000円に更新される。
【0062】
また、契約番号PJJUC00002については、契約金額は(1)で説明したように2,000,000円であり、進捗率は(4)で説明したように20%であり、前月以前進行基準売上累計金額は0円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00002についての1カ月目(2020/04)の進行基準売上金額を、2,000,000円×20%-0円=400,000円と算出する。これにより、契約番号PJJUC00002についての進行基準売上累計金額0円が、「前月以前進行基準売上累計金額0円+1カ月目(2020/04)の進行基準売上金額400,000円」という計算式により、400,000円に更新される。
【0063】
そして、
図7に示すように、本項目で説明した算出結果を含む進行基準売上データ106gが登録される。なお、
図7の進行基準売上データ106gにおいて示す「進行基準売上金額」とは、本項目で算出した1カ月目(2020/04)の進行基準売上金額を意味している。
【0064】
(6)損失引当金判断処理
最後に、算出部102aは、1カ月目についての損失引当金判断をするために、「(契約データ106a中の契約金額-予算データ106b中の予算金額)+(進行基準売上データ106g中の進行基準売上累計金額+原価集計データ106e中の原価累計金額)」という計算式による計算を行う。
【0065】
具体的には、契約番号PJJUC00001については、契約金額は(1)で説明したように1,000,000円であり、予算金額は(2)で説明したように900,000円であり、進行基準売上累計金額は(5)で説明したように100,000円であり、原価累計金額は(3)で説明したように90,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00001について、1カ月目(2020/04)の時点では、「(1,000,000円-900,000円)+(100,000円-90,000円)」=110,000円を算出する。当該算出結果が負の値でない場合、前記工事損失引当金は発生しないこととなる。つまり、1カ月目(2020/04)の時点では、契約番号PJJUC00001については、前記工事損失引当金は発生しない。
【0066】
また、契約番号PJJUC00002については、契約金額は(1)で説明したように2,000,000円であり、予算金額は(2)で説明したように1,800,000円であり、進行基準売上累計金額は(5)で説明したように400,000円であり、原価累計金額は(3)で説明したように360,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00002について、1カ月目(2020/04)の時点では、「(2,000,000円-1,800,000円)+(400,000円-360,000円)」=240,000円を算出する。当該算出結果が負の値でない場合、前記工事損失引当金は発生しないこととなる。つまり、1カ月目(2020/04)の時点では、契約番号PJJUC00002についても、前記工事損失引当金は発生しない。
【0067】
[4-2.2カ月目における、前記工事損失引当金が発生するか否かの判断]
本項目では、2カ月目(2020/05)における、前記工事損失引当金が発生するか否かの判断の処理について、
図8~
図11を用いて説明する。
【0068】
(1)契約入力
契約入力は、1カ月目に既に行われているため、2カ月目には行われない。
【0069】
(2)予算入力
まず、
図8に示すように、予算データ106bの内容が変更される。本例では、
図8に示すように、契約番号PJJUC00001についての予算金額が、900,000円から1,100,000円に変更され、一方で、契約番号PJJUC00002についての予算金額は、1,800,000円から変更されない。
【0070】
また、併せて、
図8に示すように、1カ月目および2カ月目の予算データ106bの内容を含む予算履歴データ106cが生成される。予算データ106bは修正を行うと上書きされるため、過去月の予算の参照は、予算履歴データ106cから行うことができる。
【0071】
(3)原価入力
次に、
図9に示すように、2020/05に発生した原価金額が入力されることにより、原価データ106dが登録される。本例では、
図9に示すように、契約番号PJJUC00001についての原価金額として240,000円が登録され、契約番号PJJUC00002についての原価金額として360,000円が登録されている。
【0072】
また、併せて、
図9に示すように、原価集計データ106eが生成される。原価集計データ106eは、処理時点までの前記入力された原価金額を集計したデータである。契約番号PJJUC00001については、[4-1]の(3)で説明した2020/04の原価金額90,000円および前段落で説明した2020/05の原価金額240,000円の累計金額である330,000円が原価累計金額となる。契約番号PJJUC00002については、[4-1]の(3)で説明した2020/04の原価金額360,000円および前段落で説明した2020/05の原価金額360,000円の累計金額である720,000円が原価累計金額となる。
【0073】
(4)進捗率計算処理
次に、算出部102aは、「原価集計データ106e中の原価累計金額÷予算データ106b中の予算金額×100」という計算式により、契約別の進捗率を算出する。
【0074】
具体的には、契約番号PJJUC00001については、原価累計金額(原価金額)は(3)で説明したように330,000円であり、予算金額は(2)で説明したように変更後の1,100,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00001についての進捗率を、330,000円÷1,100,000円×100=30%と算出する。
【0075】
また、契約番号PJJUC00002については、原価累計金額(原価金額)は(3)で説明したように720,000円であり、予算金額は(2)で説明したように変更されていないので1,800,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00002についての進捗率を、720,000円÷1,800,000円×100=40%と算出する。
【0076】
そして、
図10に示すように、本項目で説明した算出結果を含む進捗率データ106fが登録される。
【0077】
(5)進行基準売上計算処理
次に、算出部102aは、「契約データ106a中の契約金額×進捗率-前月以前進行基準売上累計金額」という計算式により、契約別の2カ月目(2020/05)の進行基準売上金額を算出する。
【0078】
具体的には、契約番号PJJUC00001については、契約金額は(1)で説明したように変更されていないので1,000,000円であり、進捗率は(4)で説明したように30%であり、前月以前進行基準売上累計金額は[4-1]の(5)で説明したように100,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00001についての2カ月目(2020/05)の進行基準売上金額を、1,000,000円×30%-100,000円=200,000円と算出する。これにより、契約番号PJJUC00001についての進行基準売上累計金額100,000円が、「前月以前進行基準売上累計金額100,000円+2カ月目(2020/05)の進行基準売上金額200,000円」という計算式により、300,000円に更新される。
【0079】
また、契約番号PJJUC00002については、契約金額は(1)で説明したように変更されていないので2,000,000円であり、進捗率は(4)で説明したように40%であり、前月以前進行基準売上累計金額は[4-1]の(5)で説明したように400,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00002についての2カ月目(2020/05)の進行基準売上金額を、2,000,000円×40%-400,000円=400,000円と算出する。これにより、契約番号PJJUC00002についての進行基準売上累計金額400,000円が、「前月以前進行基準売上累計金額400,000円+2カ月目(2020/05)の進行基準売上金額400,000円」という計算式により、800,000円に更新される。
【0080】
そして、
図10に示すように、本項目で説明した算出結果を含む進行基準売上データ106gが登録される。なお、
図10の進行基準売上データ106gにおいて示す「進行基準売上金額」とは、本項目で算出した2カ月目(2020/05)の進行基準売上金額を意味している。
【0081】
(6)損失引当金判断処理
最後に、算出部102aは、2カ月目についての損失引当金判断をするために、「(契約データ106a中の契約金額-予算データ106b中の予算金額)+(進行基準売上データ106g中の進行基準売上累計金額+原価集計データ106e中の原価累計金額)」という計算式による計算を行う。
【0082】
具体的には、契約番号PJJUC00001については、契約金額は(1)で説明したように1,000,000円であり、予算金額は(2)で説明したように変更後の1,100,000円であり、進行基準売上累計金額は(5)で説明したように300,000円であり、原価累計金額は(3)で説明したように330,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00001について、2カ月目(2020/04)の時点では、「(1,000,000円-1,100,000円)+(300,000円-330,000円)」=-130,000円を算出する。当該算出結果が負の値である場合、前記工事損失引当金が発生することとなる。つまり、2カ月目(2020/05)の時点では、契約番号PJJUC00001については、前記工事損失引当金は130,000円発生する。
【0083】
通知部102bは、前記工事損失引当金が発生した契約番号PJJUC00001の契約をオペレータに通知する。これにより、オペレータは、前記工事損失引当金を計上すべき契約を効率的かつ正確に把握することができる。
【0084】
また、契約番号PJJUC00002については、契約金額は(1)で説明したように2,000,000円であり、予算金額は(2)で説明したように変更されていないので1,800,000円であり、進行基準売上累計金額は(5)で説明したように800,000円であり、原価累計金額は(3)で説明したように720,000円である。このため、算出部102aは、契約番号PJJUC00002について、2カ月目(2020/05)の時点では、「(2,000,000円-1,800,000円)+(800,000円-720,000円)」=280,000円を算出する。当該算出結果が負の値でない場合、前記工事損失引当金は発生しないこととなる。つまり、2カ月目(2020/05)の時点では、契約番号PJJUC00002については、前記工事損失引当金は発生しない。
【0085】
(7)損失引当金データ生成処理
最後に、
図11に示すように、(6)で前記工事損失引当金が発生する契約番号PJJUC00001についての損失引当金データ106hが生成される。
図11の損失引当金データ106hにおいて、1行目のレコード(損失引当金額130,000円を有するレコード)は、当月(2020/04)の前記工事損失引当金計上用のデータであり、2行目のレコード(損失引当金額-130,000円を有するレコード)は、翌月(2020/05)の前記工事損失引当金振り戻し用のデータである。当該生成された損失引当金データ106hは、以下の[4-3]で説明する仕訳の生成に用いられる。
【0086】
[4-3.仕訳の生成]
本項目では、[4-2]の(6)前記工事損失引当金が発生する契約番号PJJUC00001についての仕訳の生成について説明する。仕訳生成部102cは、[4-2]の(7)で生成した損失引当金データ106hおよび
図13に示す科目設定マスタ106iに基づいて、仕訳を生成する。
【0087】
具体的には、仕訳生成部102cは、契約番号PJJUC00001についての工事損失引当金発生月(2020/05)の仕訳として、
図12に示す計上用仕訳を生成する。また、仕訳生成部102cは、契約番号PJJUC00001についての工事損失引当金発生翌月(2020/06)の仕訳として、
図14に示す振戻用仕訳を生成する。なお、振戻用仕訳の勘定科目は、発生月の計上用仕訳同様の設定である。
【0088】
このように、前記工事損失引当金が発生した月の月末の仕訳連携処理のタイミングで、当月で前記工事損失引当金を計上し、翌月で振り戻し仕訳を計上する。これにより、発生した前記工事損失引当金を累積して積み上げるのではなく、毎月同じロジックで計算し計上を行うことが可能となる。
【0089】
[5.本実施形態のまとめ]
本実施形態に係る損失引当金算出装置100によれば、[4-1]および[4-2]で説明したように、契約毎の前記損失引当金を自動で算出することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る損失引当金算出装置100によれば、[4-2]の(6)で説明したように、通知部102bを備えることにより、前記損失引当金が発生した契約を把握することができる。
【0091】
そして、本実施形態に係る損失引当金算出装置100によれば、[4-3]で説明したように、前記工事損失引当金が発生した契約についての仕訳を自動で生成することができる。
【0092】
[6.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0093】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0094】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0095】
[7.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0096】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0097】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0098】
また、損失引当金算出装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0099】
例えば、損失引当金算出装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて損失引当金算出装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0100】
また、このコンピュータプログラムは、損失引当金算出装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0101】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0102】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0103】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0104】
また、損失引当金算出装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、損失引当金算出装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0105】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、例えば、建設工事業界およびIT業界等において有用である。
【符号の説明】
【0107】
100 損失引当金算出装置
102 制御部
102a 算出部
102b 通知部
102c 仕訳生成部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 契約データ
106b 予算データ
106c 予算履歴データ
106d 原価データ
106e 原価集計データ
106f 進捗率データ
106g 進行基準売上データ
106h 損失引当金データ
106i 科目設定マスタ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク