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特許7397818建物評価額算出装置、建物評価額算出方法および建物評価額算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】建物評価額算出装置、建物評価額算出方法および建物評価額算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/03 20230101AFI20231206BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20231206BHJP
【FI】
G06Q40/03
G06Q50/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021040619
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139999
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 聡司
(72)【発明者】
【氏名】小松 勝也
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095599(JP,A)
【文献】特開2015-090537(JP,A)
【文献】特開2002-197268(JP,A)
【文献】特開2019-133586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備える建物評価額算出装置であって、
前記制御部は、
建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報と当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報とを含むマスタおよび前記取得用情報と前記建物に関する数的情報とを含む建物データに基づいて、前記マスタから、前記建物データ中の前記取得用情報と同じものと紐づく計算式情報を取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した前記計算式情報で特定される計算式および前記建物データ中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する算出手段と、
を備え、
前記取得用情報が、金融機関が前記建物を担保として住宅ローンの融資を行う場合における前記住宅ローンの資金使途であること、
を特徴とする建物評価額算出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記算出手段で算出した前記建物評価額が、前記建物についての販売額を超えている場合に、アラートを表示する表示手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項1に記載の建物評価額算出装置。
【請求項3】
制御部を備える情報処理装置で実行される建物評価額算出方法であって、
前記制御部で実行される、
建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報と当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報とを含むマスタおよび前記取得用情報と前記建物に関する数的情報とを含む建物データに基づいて、前記マスタから、前記建物データ中の前記取得用情報と同じものと紐づく計算式情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記計算式情報で特定される計算式および前記建物データ中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する算出ステップと、
を含み、
前記取得用情報が、金融機関が前記建物を担保として住宅ローンの融資を行う場合における前記住宅ローンの資金使途であること、
を特徴とする建物評価額算出方法。
【請求項4】
制御部を備える情報処理装置に実行させるための建物評価額算出プログラムであって、
前記制御部に実行させるための、
建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報と当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報とを含むマスタおよび前記取得用情報と前記建物に関する数的情報とを含む建物データに基づいて、前記マスタから、前記建物データ中の前記取得用情報と同じものと紐づく計算式情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記計算式情報で特定される計算式および前記建物データ中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する算出ステップと、
を含み、
前記取得用情報が、金融機関が前記建物を担保として住宅ローンの融資を行う場合における前記住宅ローンの資金使途であること、
を特徴とする建物評価額算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物評価額算出装置、建物評価額算出方法および建物評価額算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リフォームなどにより上昇する不動産の価格を高精度かつ容易に算出する不動産評価システム、不動産評価プログラム、および不動産評価方法が開示されている(特許文献1の0007段落参照)。また、特許文献1に記載の不動産評価システムによれば、リフォームに伴う不動産の上昇価格である評価結果の信頼性を向上でき、また評価時間も大幅に低減でき、結果として、建物のリフォームに関する費用についても住宅ローンで融資を受けることが可能となることが開示されている(特許文献1の0054段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-68751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のように、金融機関等が住宅ローンの融資を行うにあたっては、不動産を担保として融資を行うが、この際、担保とする不動産の時価評価を算出する必要がある。
【0005】
しかしながら、従来においては、不動産の時価評価は、担当者が手動計算により行っていたため、人的負担が大きく、また、顧客に対する回答まで時間がかかってしまうという問題があった。また、近年、マイナス金利およびネット銀行の参入による金融業界の多様化等により、住宅ローン融資の1件あたりの審査に時間をかけたくないという事情もある。その一方で、顧客との繋がりを確保するためには、住宅ローンの融資自体は継続しなければならない。
【0006】
すなわち、住宅ローンの融資業務自体は継続する必要がありつつも、当該業務は利益には繋がらないため、担保とする不動産の建物評価額を、相場の額(概算額)でも良いので簡便かつ短時間で算出できる方法が求められていた。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、不動産の建物評価額を算出することができる建物評価額算出装置、建物評価額算出方法および建物評価額算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る建物評価額算出装置は、制御部を備える建物評価額算出装置であって、前記制御部が、建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報と当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報とを含むマスタおよび前記取得用情報と前記建物に関する数的情報とを含む建物データに基づいて、前記マスタから、前記建物データ中の前記取得用情報と同じものと紐づく計算式情報を取得する取得手段と、前記取得手段で取得した前記計算式情報で特定される計算式および前記建物データ中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する算出手段と、を備えること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る建物評価額算出装置は、前記取得用情報が、金融機関が前記建物を担保として住宅ローンの融資を行う場合における前記住宅ローンの資金使途であること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る建物評価額算出装置は、前記制御部が、前記算出手段で算出した前記建物評価額が、前記建物についての販売額を超えている場合に、アラートを表示する表示手段を更に備えること、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る建物評価額算出方法は、制御部を備える情報処理装置で実行される建物評価額算出方法であって、前記制御部で実行される、建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報と当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報とを含むマスタおよび前記取得用情報と前記建物に関する数的情報とを含む建物データに基づいて、前記マスタから、前記建物データ中の前記取得用情報と同じものと紐づく計算式情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記計算式情報で特定される計算式および前記建物データ中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する算出ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る建物評価額算出プログラムは、制御部を備える情報処理装置に実行させるための建物評価額算出プログラムであって、前記制御部に実行させるための、建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報と当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報とを含むマスタおよび前記取得用情報と前記建物に関する数的情報とを含む建物データに基づいて、前記マスタから、前記建物データ中の前記取得用情報と同じものと紐づく計算式情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記計算式情報で特定される計算式および前記建物データ中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する算出ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不動産の建物評価額を算出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、建物評価額算出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、担保物件登録データの一例を示す図である。
図3図3は、担保物件登録データの一例を示す図である。
図4図4は、建物・マンション種類判断マスタの一例を示す図である。
図5図5は、「A:新築請負物件(戸建)」の計算式の一例を示す図である。
図6図6は、「B:新築建売物件(戸建)」の計算式の一例を示す図である。
図7図7は、「C:中古戸建物件」の計算式の一例を示す図である。
図8図8は、「D:借換案件の建物、G:リフォーム」の計算式の一例を示す図である。
図9図9は、「E:新築マンション」の計算式の一例を示す図である。
図10図10は、自動算出した建物評価額の表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る建物評価額算出装置、建物評価額算出方法および建物評価額算出プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
[1.概要]
住宅ローンの融資を行うにあたっては、不動産を担保として融資を行う。この際、担保とする不動産(土地、建物およびマンション等)の時価評価を算出する必要がある。
【0017】
ここで、不動産評価の業務を行っている業界(例えば、金融業界等)においては、次のような四つの業界背景がある。
【0018】
一つ目に、昨今の低金利(マイナス金利およびネット銀行等の参入による金融業の多様化)により、住宅ローン融資を行っても収益につながらない。このため、住宅ローン融資については、1件当たりの審査に時間を使っていられないという背景がある。しかしながら、顧客とのつながりを確保するためには、住宅ローン融資自体は継続をする必要がある。
【0019】
二つ目に、住宅ローンの担保評価に関しては、
(1)正常先が多く、貸し倒れリスクが少ない。
(2)住宅ローンという性質上、貸し倒れが発生しても担保物件を取り立てづらい。それよりも、個人の属性情報(過去の融資実績および保証人有無等)をきちんと審査し、貸し倒れに繋がらない融資を行うことが重要である。
(3)ただし、物件価値から融資倍率は求める必要があるため、担保物件の相場感を持つ必要がある。
【0020】
三つ目に、従来における建物評価は、実際に現地調査を行った結果を指数化して補正を行う等の厳格な評価プロセスによる建物評価、すなわち、手作業による建物評価であった。これは、金融検査マニュアルによって定められており、不動産担保評価を厳正に行っていた時代が長らく続いており、不動産担保評価業務においても保守的な考え方が強く存在していたためである。しかしながら、手作業による建物評価は、人的負担が大きい上に、顧客に対する審査回答までに時間がかかるという問題もあった。
【0021】
四つ目に、物件の特性(例えば、資金使途)によって建物の評価に用いる評価計算式が異なり、また、1日に多くの建物を評価する必要があるため、用いる評価計算式をオペレータの判断で選定すると、選定ミスや計算ミスが発生しやすいという問題があった。
【0022】
このような業界背景を受けて、本実施形態においては、建物評価額の相場観を把握するための以下の(1)~(4)に示す機能を実現した。
【0023】
(1)まず、本実施形態においては、例えば、金融機関で一般的に採用されている原価法評価(=構造・種類より再調達価格および耐用年数を決定し、経年減価させる)により、建物評価額を自動で算出できるようにした。言い換えると、住宅ローンの不動産担保評価に際して、資金使途に応じて、建物評価額(原価法評価、売買事例評価)を自動判別し、評価の基礎データとなる平米単価までを自動算出する簡易自動評価機能を実装した。
【0024】
(2)前記(1)で述べた算出について説明すると、本実施形態においては、例えば、資金使途に応じて、建物の評価計算式および使用するパラメータの選定を行い、建物の評価額を自動算出できるようにした。より具体的には、本実施形態においては、例えば、不動産担保評価の建物評価額算出において、建物の特性(例えば、資金使途)に応じた計算式を選定し、当該選定した計算式および建物の数的情報を基に、建物の評価額を自動で算出できるようにした。
【0025】
(3)そして、本実施形態においては、例えば、ある建物について自動算出された建物評価額が販売価格を超えている場合には、前記ある建物をアラート対象として抽出することにより、前記ある建物については販売価格を採用できるようにした。言い換えると、自動算出された建物評価額と販売価格(売買価格)の比較を実施し、相対的な評価を実施できるようにした。
【0026】
(4)更に、本実施形態においては、例えば、自動算出された建物評価額を、評価結果画面から修正できるようにした。以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0027】
[2.構成]
本実施形態に係る建物評価額算出装置100の構成の一例について、図1を参照して説明する。図1は、建物評価額算出装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
建物評価額算出装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、建物評価額算出装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0029】
建物評価額算出装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。建物評価額算出装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0030】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、建物評価額算出装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、建物評価額算出装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0031】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0032】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0033】
記憶部106は、例えば、マスタとしての建物・マンション種類判断マスタ106a(以下、単に「判断マスタ106a」ということがある。)と、建物データとしての担保物件登録データ106bと、を備えている。
【0034】
判断マスタ106aは、本実施形態における特徴であり、図4に示すように、例えば、建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報(建物・マンションの計算パターン)と、当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報(判断方法(資金使途))と、等を含む。各々の前記計算パターンで特定される計算式の詳細は、例えば、図5図9に示すとおりである。前記取得用情報は、例えば、金融機関が前記建物を担保として住宅ローンの融資を行う場合における前記住宅ローンの資金使途である。当該資金使途の具体例は、図3に示すとおりである。
【0035】
ここで、判断マスタ106aにおいて、前記計算パターンと前記資金使途とは、1:1の関係に限定されず、2つ以上の前記資金使途に対して1つの前記計算パターンが設定されてもよい。図4の判断マスタ106aの例においては、「1:新築住宅」および「4:土地購入及び住宅新築」という2つの前記資金使途に対して、「A:新築請負物件(戸建)」という1つの前記計算パターンが設定されている。また、図4の判断マスタ106aの例において、「F:中古マンション」の前記計算パターンに該当する場合には、本実施形態における自動評価の対象外となる。
【0036】
このように、本実施形態においては、判断マスタ106aを用いて前記計算パターンと前記資金使途とを紐づけることにより、前記資金使途に応じた適切な前記計算パターンを用いた前記建物評価額の自動算出が可能となる。従来においては、人為的作業に起因して、例えば、前記計算パターンの選定ミスが発生したり、または、前記計算パターンの選定は正しくても計算式を用いて計算を行う過程において計算ミスが発生していたが、本実施形態においては、前記計算パターンの選定から前記建物評価額の算出までを自動でできるため、このようなミスをなくすことができる。
【0037】
担保物件登録データ106bは、図2および図3に示すように、例えば、建物を評価する対象となる物件を識別するための物件識別データ(物件番号)と、前記物件の位置情報(緯度経度)と、前記取得用情報(資金使途)と、前記建物に関する数的情報(土地面積および建物面積)と、前記建物の構造(構造)と、前記建物の種類(種類)と、前記建物の建築年月日(建築年月日)と、必要資金(必要資金_建物、必要資金_土地建物購入および必要資金_増改築修繕)と、等を含む。
【0038】
制御部102は、建物評価額算出装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0039】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)建物の評価額である建物評価額を算出するための計算式を識別するための計算式情報と当該計算式情報を取得するための前記建物に関する情報である取得用情報とを含むマスタおよび前記取得用情報と前記建物に関する数的情報とを含む建物データに基づいて、前記マスタから、前記建物データ中の前記取得用情報と同じものと紐づく計算式情報を取得する取得手段としての取得部102aと、(2)前記取得手段で取得した前記計算式情報で特定される計算式および前記建物データ中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する算出手段としての算出部102bと、(3)前記算出手段で算出した前記建物評価額が、前記建物についての販売額を超えている場合に、アラートを表示する表示手段としての表示部102cと、を備えている。なお、各部が実行する処理の内容については、以下の[3.処理の具体例]において説明する。
【0040】
[3.処理の具体例]
本項目では、本実施形態に係る処理の具体例を説明する。本項目においては、銀行等における担当者が、住宅ローンの融資判断を行う際に、担保とする物件の建物評価額を算出するという場面を想定して説明する。
【0041】
[3-1.物件所在地登録]
まず、担保物件の所在地についての情報が登録される。当該登録は、(1)電子地図画面からの担保物件位置情報のポインティングにより行われてもよいし、(2)緯度経度の情報がオペレータによって手動入力されることにより行われてもよい。本例では、3つの担保物件についての緯度経度情報が登録されるものとする。緯度経度情報が登録された担保物件登録データ106bを、図2に示す。なお、仮に、上記(1)および(2)のいずれの方法によっても緯度経度情報を登録できない場合は、緯度経度情報は、後述する手動位置登録をしたタイミングで再計算される。
【0042】
[3-2.簡易評価登録]
続いて、担保物件情報の資金使途、土地面積、建物面積、構造および種類等の情報が登録される。これらの情報が登録された担保物件登録データ106bを、図3に示す。
【0043】
[3-3.自動評価処理]
続いて、前記建物評価額の自動算出が行われるが、当該自動算出に先立ち、判断マスタ106aが図4に示す内容で登録される。図4に示すように前記資金使途に応じて前記計算パターンが設定されるため、前記資金使途に応じて建物またはマンション評価の評価計算式が決定されることとなる。以下、前記建物評価額の自動算出の仕方を説明する。
【0044】
取得部102aは、前記計算式情報(前記計算パターン)と前記取得用情報(前記資金使途)とを含む判断マスタ106aおよび前記取得用情報(前記資金使途)と前記建物に関する数的情報(建物面積等)とを含む担保物件登録データ106bに基づいて、判断マスタ106aから、担保物件登録データ106b中の前記取得用情報(前記資金使途)と同じものと紐づく前記計算式情報(前記計算パターン)を取得する。
【0045】
すなわち、取得部102aは、図4の判断マスタ106aから、図3の担保物件登録データ106b中の各物件の各資金使途と紐づく前記計算パターンを取得する。具体的には、取得部102aは、
(1)PJ0001の物件については当該物件の前記資金使途「1:新築住宅」と紐づく前記計算パターンとして「A:新築請負物件(戸建)」を取得し、
(2)PJ0002の物件については当該物件の前記資金使途「3:建売購入」と紐づく前記計算パターンとして「B:新築建売物件(戸建)」を取得し、
(3)PJ0003の物件については当該物件の前記資金使途「5:中古住宅購入」と紐づく前記計算パターンとして「C:中古戸建物件」を取得し、
(4)PJ0004の物件の前記資金使途「9:借換」と紐づく前記計算パターンとして「D:借換案件の建物」を取得し、
(5)PJ0004の物件の前記資金使途「6:新築マンション購入」と紐づく前記計算パターンとして「E:新築マンション」を取得し、
(6)PJ0004の物件の前記資金使途「7:中古マンション購入」と紐づく前記計算パターンとして「F:中古マンション」を取得し、
(7)PJ0004の物件の前記資金使途「2:住宅増改築」と紐づく前記計算パターンとして「G:リフォーム」を取得する。
【0046】
算出部102bは、取得部102aで取得した前記計算式情報(前記計算パターン)で特定される計算式および担保物件登録データ106b中の前記数的情報に基づいて、前記建物評価額を算出する。
【0047】
すなわち、算出部102bは、取得部102aで取得した前記計算パターンで特定される図5図9に示す計算式および図3の担保物件登録データ106b中の面積情報等に基づいて、前記建物評価額を算出する(なお、図5図9において、ドットおよび斜線のハッチングを示した箇所は、そのセットがシステムより判断される項目である)。具体的には、算出部102bは、
(1)PJ0001の物件については、前記取得した計算パターン「A:新築請負物件(戸建)」で特定される図5に示す計算式を用いて前記建物評価額を算出し、
(2)PJ0002の物件については、前記取得した計算パターン「B:新築建売物件(戸建)」で特定される図6に示す計算式を用いて前記建物評価額を算出し、
(3)PJ0003の物件については、前記取得した計算パターン「C:中古戸建物件」で特定される図7に示す計算式を用いて前記建物評価額を算出し、
(4)PJ0004の物件の前記資金使途「6:新築マンション購入」については、前記取得した計算パターン「D:借換案件の建物」で特定される図8に示す計算式を用いて前記建物評価額を算出し、
(5)PJ0004の物件の前記資金使途「6:新築マンション購入」については、前記取得した計算パターン「E:新築マンション」で特定される図9に示す計算式を用いて前記建物評価額を算出し、
(6)PJ0004の物件の前記資金使途「7:中古マンション購入」については、前記建物評価額を自動算出はせず(=自動評価の対象とはならず)、
(7)PJ0004の物件の前記資金使途「2:住宅増改築」については、前記取得した計算パターン「G:リフォーム」で特定される図8に示す計算式を用いて前記建物評価額を算出する。
【0048】
[3-4.評価結果画面の表示]
最後に、表示部102cは、算出部102bで算出した前記建物評価額が、前記建物についての販売額を超えている場合に、アラートを表示する。
【0049】
例えば、算出部102bで算出した前記建物評価額が10,000,000円であり、前記建物についての販売額(マスタ等に設定可能である)が9,000,000円である場合、前記建物評価額が前記建物についての販売額を超えている。この場合、表示部102cは、自動評価した結果を図10の画面に表示する際に、当該超えている物件については、「アラート」の列にアラートの文言を表示する。なお、図10の画面中に示す文字や数字は、飽くまで、画面のイメージを示すためのものであるため、図9までの内容との連関性はない。
【0050】
図10に表示された前記建物評価額(評価額)に問題がない場合、オペレータは、前記建物評価額(評価額)を確定する。これに対して、図10に表示された前記建物評価額(評価額)に問題がある場合、オペレータは、前記建物評価額(評価額)の補正をすることができる。
【0051】
[4.本実施形態のまとめ]
このように、本実施形態に係る建物評価額算出装置100によれば、主に[3-3]で説明したように、不動産の建物評価額を算出することができる。具体的には、本実施形態においては、判断マスタ106aを用いて前記計算パターンと前記資金使途とを紐づけることにより、前記計算パターンの選定から前記建物評価額の算出までを自動で行うことができる。これにより、例えば、前記資金使途に応じた前記計算パターンの選定ミスおよび計算ミス等をなくすことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る建物評価額算出装置100によれば、[3-4]で説明したように、自動算出した前記建物評価額が、前記建物についての販売額を超えている場合に、アラートを表示することができる。これにより、例えば、前記自動算出した前記建物評価額と前記建物についての販売額のうち、より低い金額を最終的な評価額として採用することができる。
【0053】
[5.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0056】
[6.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0057】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0058】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0059】
また、建物評価額算出装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0060】
例えば、建物評価額算出装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて建物評価額算出装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0061】
また、このコンピュータプログラムは、建物評価額算出装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0062】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0063】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0064】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0065】
また、建物評価額算出装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、建物評価額算出装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0066】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば、不動産(土地および建物等)の評価額を簡易算出する業務を行っている業界において有用であり、特に、金融業界においては極めて有用である。
【符号の説明】
【0068】
100 建物評価額算出装置
102 制御部
102a 取得部
102b 算出部
102c 表示部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 建物・マンション種類判断マスタ
106b 担保物件登録データ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10