(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20231206BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20231206BHJP
B60N 2/06 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2021105932
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】富岡 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】人見 翼
(72)【発明者】
【氏名】島崎 隼人
(72)【発明者】
【氏名】福岡 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岸本 英一
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-084959(JP,A)
【文献】特開2013-103638(JP,A)
【文献】米国特許第09731636(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、該シートクッションに対して角度調整可能に連結されたシートバックと、該シートバックの傾斜角度を調整するリクライニング機構と、を備える乗物用シートであって、
該シートバックから前記シートクッションにかけて配策される伝達部材と、
前記リクライニング機構に近接して前記シートバック又は前記シートクッションに設けられ
る前記伝達部材を保護する複数の保護部材と、を
備え、
前記複数の保護部材のうち、前記リクライニング機構に近接して前記シートクッションの後側に設けられる保護部材は、カバー部材を構成しており、
前記カバー部材を構成する前記複数の保護部材は、前記シートクッション側に配策される前記伝達部材が挿通される1つの第1空間を形成しており、
前記第1空間を形成する前記複数の保護部材には、前記リクライニング機構の内側部分を覆うリクライニングインナーカバーと、前記シートクッションの下面を覆うシートクッションアンダーカバーと、クッションカバーと、が含まれることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記複数の保護部材のうち
、前記リクライニング機構に近接して前記シートバックに設けられる保護部材
は、線条体支持部材を構成しており、
前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材
は、前記シートバック側に配策される前記伝達部材が挿通されて挟み込まれる、1つの第2空間を形成していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記線条体支持部材は、前記伝達部材を挟み込む
前記第2空間において前記シートクッションに向けて開口する開口部を有し、該開口部は前記シートバックが起立状態のときに前記乗物用シートの前後方向に延びる溝状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材のそれぞれが、壁部と、該壁部から突出する複数の連結部とを有し、前記複数の保護部材が前記連結部により結合されることで、前記壁部と前記連結部とにより溝状の前記開口部が形成されることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材は、互いに連結する複数の連結部のうち一方に設けられた係合部と他方に設けられた被係合部とが嵌合することにより、結合されることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記線条体支持部材は、前記複数の連結部により形成された前記シートバックから前記伝達部材を挿入して前記開口部につながる挿入孔を有し、
前記開口部は、前記挿入孔の出口を中心として前記乗物用シートの前後方向に180度開いた形状に形成されることを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材により前記伝達部材は固定されていないことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記カバー部材の前記
第1空間に挿通される前記伝達部材は、シートバック表皮トリムカバーとシートクッション表皮トリムカバーとにより挟み込まれることを特徴とする請求項
1に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シートバックの前記リクライニング機構に近接する位置において前記伝達部材を固定するシートバック側固定部と、
前記シートクッションの前記リクライニング機構に近接する位置において前記伝達部材を固定するシートクッション側固定部と、を備え、
前記伝達部材は、前記シートバックが前記シートクッション側に倒伏した状態であるときに、前記シートバック側固定部から前記シートクッション側固定部までの間で、下面視においてL字形に屈曲し配策されていることを特徴とする
請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記伝達部材は、側面視において前記シートバック側固定部から前記シートクッション側固定部に向かって、前記シートバックの傾斜角度に対応して屈曲する角度が変化することを特徴とする請求項
9に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特にシートバックからシートクッションにかけてケーブル又はワイヤハーネス等の伝達部材が配策された乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、ケーブル等の伝達部材をシートバックとシートクッションとの間に配設したチューブ状のカバー部材により被覆する構造が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の構造では、チューブ状カバー部材の少なくとも一方端部に引張部材を取付け、シートバックの倒伏時にカバー部材に生じる緩みをシートクッション又はシートバック側に引張部材により引き込むようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明では、シートバックを倒伏させるとき、伝達部材を被覆するカバー部材を引き込んでいるため、カバー部材が別の部材に引掛かるとシートバックの倒伏動作が妨げられる場合があった。また、チューブ状のカバー部材が露出していてると外観商品性の低下を招く場合があった。
【0005】
そのため、シートバックが前方に傾倒する乗物用シートにおいて、シートバックからシートクッションにかけて配策される伝達部材が、シートバックの倒伏動作で支障なくスムーズに作動し、伝達部材がフレーム等に干渉することのない構造が求められていた。また、伝達部材がシート本体から突出することなく外観商品性のよい乗物用シートが求められている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートバックの倒伏動作で伝達部材が支障なくスムーズに作動すると共にフレーム等に干渉することが抑制された乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、乗物用シートであって、シートクッションと、該シートクッションに対して角度調整可能に連結されたシートバックと、該シートバックの傾斜角度を調整するリクライニング機構と、を備える乗物用シートであって、該シートバックから前記シートクッションにかけて配策される伝達部材と、前記リクライニング機構に近接して前記シートバック又は前記シートクッションに設けられる前記伝達部材を保護する複数の保護部材と、を備え、前記複数の保護部材のうち、前記リクライニング機構に近接して前記シートクッションの後側に設けられる保護部材は、カバー部材を構成しており、前記カバー部材を構成する前記複数の保護部材は、前記シートクッション側に配策される前記伝達部材が挿通される1つの第1空間を形成しており、前記第1空間を形成する前記複数の保護部材には、前記リクライニング機構の内側部分を覆うリクライニングインナーカバーと、前記シートクッションの下面を覆うシートクッションアンダーカバーと、クッションカバーと、が含まれることにより解決される。
【0008】
上記の乗物用シートによれば、シートバックからシートクッションにかけて配策されるケーブル及びワイヤハーネス等の伝達部材を複数の保護部材により形成された空間に挿通することで、保護部材によりシートフレーム等の周辺部材と干渉又は当接させないよう保護することができ、断線等による動作不良を抑制することができる。
また、シートクッションの後側に設けられる保護部材により構成されたカバー部材を設けることで、シートクッション側に配置された周辺部材と干渉又は当接することが抑制され断線等による動作不良を抑制することができる。
また、リクライニング機構やシートクッションフレーム等の部材と干渉又は当接することが抑制され、伝達部材が保護される。それにより、断線等による動作不良を抑制することができる。
【0009】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記複数の保護部材のうち、前記リクライニング機構に近接して前記シートバックに設けられる保護部材は、線条体支持部材を構成しており、前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材は、前記シートバック側に配策される前記伝達部材が挿通されて挟み込まれる、1つの第2空間を形成しているとよい。
上記の構成により、伝達部材をリクライニング機構又はシートバックフレーム等の周辺部材と干渉又は当接させないよう保護することができ、断線等による動作不良を抑制することができる。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記線条体支持部材は、前記伝達部材を挟み込む前記第2空間において前記シートクッションに向けて開口する開口部を有し、該開口部は前記シートバックが起立状態のときに前記乗物用シートの前後方向に延びる溝状に形成されているとよい。
開口部が前後方向に延びる溝状に形成されることにより、伝達部材を前後方向に分岐させたり、シートバックを倒伏動作に応じて伝達部材を揺動させたりすることができる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材のそれぞれが、壁部と、該壁部から突出する複数の連結部とを有し、前記複数の保護部材が前記連結部により結合されることで、前記壁部と前記連結部とにより溝状の前記開口部が形成されるとよい。
複数の保護部材が有する壁部と複数の連結部とにより溝状の開口部が形成されることにより、容易に溝状の開口部が形成され、保護部材により伝達部材を挟み込むことができるようになると共に、溝状の開口部において伝達部材を分岐させたり、シートバックの倒伏動作に応じて伝達部材を揺動させたりすることができる。
【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材は、互いに連結する複数の連結部のうち一方に設けられた係合部と他方に設けられた被係合部とが嵌合するとよい。
この構成により、保護部材同士を容易に結合することができ、部品点数、組立工数、重量の増加を抑制し、伝達部材を容易に保護することができる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記線条体支持部材は、前記複数の連結部により形成された前記シートバックから前記伝達部材を挿入して前記開口部につながる挿入孔を有し、
前記開口部は、前記挿入孔の出口を中心として前記乗物用シートの前後方向に180度開いた形状に形成されるとよい。
この構成により、シートバックを倒伏させたとき、保護部材の壁部により伝達部材を左右方向において保護しつつ伝達部材の左右方向の移動を抑制する。また、開口部が前後方向に180度開いているため、伝達部材を前後方向においてスムーズに屈曲させることができる。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記線条体支持部材を構成する前記複数の保護部材により前記伝達部材は固定されていないとよい。
伝達部材が複数の保護部材により固定されていないことにより、伝達部材は保護部材により形成された空間内を拘束されずに自由に移動できる。そのため、伝達部材によりシートバックの倒伏動作が阻害されない。
【0017】
上記の乗物用シートにおいて、前記カバー部材の前記第1空間に挿通される前記伝達部材は、シートバック表皮トリムカバーとシートクッション表皮トリムカバーとにより挟み込まれるとよい。
シートバック表皮トリムカバーとシートクッション表皮トリムカバーとにより挟み込まれることで、フレーム等の周辺部材と干渉又は当接することが抑制され、伝達部材が保護されるようになる。それにより、断線等による動作不良を抑制することができる。
【0018】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記シートバックの前記リクライニング機構に近接する位置において前記伝達部材を固定するシートバック側固定部と、前記シートクッションの前記リクライニング機構に近接する位置において前記伝達部材を固定するシートクッション側固定部と、を備え、前記伝達部材は、前記シートバックが前記シートクッション側に倒伏した状態であるときに、前記シートバック側固定部から前記シートクッション側固定部までの間で、下面視においてL字形に屈曲し配策されているとよい。
【0019】
伝達部材が下面視においてL字形に屈曲して配策されていることで、シートバックを倒伏動作させた場合、伝達部材は前後方向に屈曲される。そのため、伝達部材がシートバックの倒伏動作を阻害せず、伝達部材をスムーズに屈曲・移動させることができる。
【0020】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記伝達部材は、側面視において前記シートバック側固定部から前記シートクッション側固定部に向かって、前記シートバックの傾斜角度に対応して屈曲する角度が変化するとよい。
シートバックが傾倒する角度に対応して、伝達部材の屈曲する角度が変化することで、伝達部材がシートバックの倒伏動作を阻害することがなく、伝達部材への負荷を低減させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の乗物用シートによれば、シートバックからシートクッションにかけて配策される伝達部材を、シートフレーム等の周辺部材と干渉又は当接させないよう保護することができ、断線等による動作不良を抑制することができる。
また、リクライニング機構に近接させて、複数の保護部材から構成される線条体支持部材を設けることで、リクライニング機構、シートバックフレーム等の周辺部材と干渉又は当接させないよう保護することができ、断線等による動作不良を抑制することができる。
また、開口部が前後方向に延びる溝状に形成されることにより、伝達部材を前後方向に分岐させたり、シートバックを傾倒させる動作に応じて伝達部材を揺動させたりすることができる。
また、複数の保護部材が有する壁部と複数の連結部とにより溝状の開口部が形成されることにより、容易に溝状の開口部が形成され、保護部材により伝達部材を挟み込むことができるようになると共に、溝状の開口部において伝達部材を分岐させたり、シートバックを傾斜させる動作に応じて伝達部材を揺動させたりすることができる。
また、複数の保護部材に設けられた係合部と被係合部とを嵌合させることにより連結することで、保護部材同士を容易に結合することができ、部品点数、組立工数、重量の増加を抑制し、伝達部材を容易に保護することができる。
また、開口部が前後方向に180度開いた形状に形成されることで、シートバックを倒伏動作させたとき、保護部材の壁部により伝達部材を左右方向において保護しつつ、伝達部材の左右方向の移動を抑制する。また、開口部が前後方向に180度開いているため、伝達部材を前後方向においてスムーズに屈曲させることができる。
また、伝達部材が複数の保護部材により固定されないことにより、伝達部材は保護部材により形成された空間内において拘束されずに自由に移動できる。そのため、伝達部材によりシートバックを傾倒させる動作が阻害されない。
シートクッションの後側に設けられる保護部材により構成されたカバー部材を設けることで、シートクッションフレーム等のシートクッション側に配置された部材と干渉又は当接することが抑制され伝達部材が保護され、断線等による動作不良を抑制することができる。
また、カバー部材を構成する複数の保護部材がリクライニングインナーカバーと、シートクッションアンダーカバーと、クッションカバーと、を含むことにより、リクライニング機構、シートクッションフレーム等の周辺部材と干渉又は当接することが抑制され、伝達部材が保護される。それにより、断線等による動作不良を抑制することができる。
また、伝達部材がシートバック表皮トリムカバーと、シートクッション表皮トリムカバーとにより挟み込まれることで、シートバックフレーム、シートクッションフレーム等と干渉又は当接することが抑制され、伝達部材が保護されるようになる。それにより、断線等による動作不良を抑制することができる。
また、伝達部材が下面視においてL字形に屈曲して配策されることで、シートバックを倒伏動作させた場合でも、伝達部材は前後方向に屈曲される。そのため、伝達部材がシートバックの倒伏動作を阻害せず、伝達部材をスムーズに屈曲・移動させることができる。
シートバックが傾倒する角度に対応して、伝達部材の屈曲する角度が変化することで、伝達部材がシートバックの倒伏動作を阻害することがなく、伝達部材への負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】車両用シートの外観を示す、斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】
図1の部分IIIにおけるシート内部の状況を示した拡大図であり、クッショントリムカバーを取り除いてフレーム及び線条体支持部材を示した図である。
【
図4】線条体支持部材を示す斜視図であり、車両用シートの外側から見た図である。
【
図5A】線条体支持部材を構成する第一支持部材を示す斜視図である。
【
図5B】線条体支持部材を構成する第二支持部材を示す斜視図である。
【
図6】線条体支持部材及びカバー部材の配置状態を示す斜視図である。
【
図7】カバー部材を構成するリクライニングインナーカバーを斜め後方から見た斜視図である。
【
図8】カバー部材を構成するシートクッションアンダーカバーの説明図である。
【
図9A】シートバックを起立させたときの伝達部材の状態を示す説明図であり、車両用シートを斜め後方から見た図である。
【
図9B】シートバックを起立させたときの伝達部材の状態を示す説明図であり、車両用シートを斜め後方下側から見た図である。
【
図10A】シートバックを前方に倒伏させたときの伝達部材の状態を示す説明図であり、車両用シートを後方斜め上側から見た図である。
【
図10B】シートバックを前方に倒伏させたときの伝達部材の状態を示す説明図であり、車両用シートを後方斜め内側から見た図である。
【
図10C】シートバックを前方に倒伏させたときの伝達部材の状態を示す説明図であり、車両用シートを後方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0024】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0025】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向(換言すると、シート本体の幅方向)であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0026】
また、シート幅方向の「車外側」とは、車体の外側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアに近い側)を意味し、「車内側」とは、車体の内側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアから離れている側)を意味している。
また、以下の説明中、「回動」は、特に断る場合を除き、シート幅方向に沿う軸を中心とした回動動作を意味する。
【0027】
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0028】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図であり、
図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、クッショントリムカバーTやパッドPを外した構成にて図示している。
【0029】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の後部座席に相当するリアシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、前席シートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0030】
図1に図示の構成では、車両用シートSは、左側に配置された左シートSa、右側に配置された右シートSb及びそれらの間に設けられる中央シートScを有する。中央シートScは、可動式のアームレスト及びその収納ボックスが設けられている。左シートSaと中央シートScとはそれらのシートバック1が一体となって前方に倒伏するよう構成されているが、基本的に右シートSbと左シートSaとは同様の構成を有することから、以下では、車両用シートSの左シートSaの構造を中心に説明する。
【0031】
左シートSaは、
図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とは後述するリクライニング機構7を挟み込むように連結されている。シートバック1は、シートクッション2に対して回動して、角度調整可能に連結されている。リクライニング機構7は、シートバックの傾斜角度を調整する。また、リクライニング機構7は外側において、リクライニングアウターカバー41によって覆われている。また、内側はリクライニングインナーカバー42によって覆われている。
【0032】
左シートSaの中には、
図3に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1のフレームであるシートバックフレーム10と、シートクッション2のフレームであるシートクッションフレーム20とから構成される。
【0033】
シートバックフレーム10は全体として方形枠状に形成されており、シートバックフレーム10は、両サイドに配置されるバックサイドフレーム11と、その間に配置されるバックパネル16とを備える。
【0034】
シートクッションフレーム20も方形枠状に形成され、その側部にはクッションサイドフレーム21が設けられている。また、クッションサイドフレーム21を前方で連結する前方連結フレーム(図示せず)と、後方で連結する後方連結フレーム23とを有する。(
図6参照)
【0035】
シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20の外側には、パッドP及びクッショントリムカバーT(クッションカバー)が設けられることで、シートバック1及びシートクッション2が構成される。パッドPは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、クッショントリムカバーTは、例えばクロス、合成皮革又は本革等の表皮材からなる。
【0036】
また、シートクッション2の後端部とシートバック1の下端部との間にはリクライニング機構7が設けられている。より詳細には、リクライニング機構7は、シートバック1のシートバックフレーム10と、シートクッション2のシートクッションフレーム20と、を連結している。リクライニング機構7は、シートクッション2(シートクッションフレーム20)に対するシートバック1(シートバックフレーム10)の角度を調節可能にしている。リクライニング機構7により、シートバック1を所定の角度でロックして傾斜した状態を維持することができる。また、そのロックを解除することによりシートバック1を前方又は後方に倒伏したりすることができる。
【0037】
また、車両用シートSの下部には、
図1及び
図2に示すようにスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、車両用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられる。
【0038】
スライドレール4は、前後方向に沿って左シートSa及び中央シートSc、又は、右シートSbをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロア上に固定されるロアレール、及びロアレールに対してスライド移動可能なアッパーレールを有する。車体に固定されたロアレールに対してアッパーレールが摺動可能となっている。スライドレール4は、車両用シートSのスライド移動をロックするロック機構を有している。ロック機構は、例えば左シートSaの肩部に設けられたレバー15を引き上げることにより解除することができる。レバー15とロック機構とはケーブル13により連結されていて、ケーブル13によりスライドレール4のロック状態を解除するよう操作力が伝達される。ケーブル13は、
図1及び
図3に示すように、シートバック1からシートクッション2にかけてその内部に配策されている。
【0039】
また、車両用シートSの側部には、エアバック装置8が設けられている。エアバック装置8は、図示しないエンジンコントロールユニット(ECU)とワイヤハーネス14により、電気的に接続されている。ワイヤハーネス14は、電源供給や信号通信に用いられる電線の束であり、ケーブル13と同様に、エアバック装置8とECUとを接続するために、シートバック1からシートクッション2にかけて配策されている。なお、ワイヤハーネス14は、エアバック装置8に限らず、シートバック1に設けられた照明又はシートバック1を自動的に倒伏又は起立させるための電動モータに接続するために配策されたものであってもよい。本願では、シートバック1からシートクッション2にかけて配策された、ケーブル13又はワイヤハーネス14をまとめて伝達部材と称する場合がある。
【0040】
従来の車両用シートでは、シートバックからシートクッションにかけて配策されたケーブル又はワイヤハーネスは、シートバックとシートクッションの連結部分において外出していた。若しくは、特許文献1に開示されるようにチューブ状の部材で覆われていた。そのため、シートバックを倒伏させたときに、ケーブルやそれを覆うチューブ状の部材が他の部材と接触し引掛かる場合があり、ケーブルがシートバックの倒伏動作を阻害する場合があった。また、ケーブルの一部が後方に外出する場合があった。
【0041】
本実施形態の車両用シートSでは、複数の保護部材を、リクライニング機構7に近接してシートバック1又はシートクッション2に設けている。そして、設けた複数の保護部材により形成される空間に、ケーブル13又はワイヤハーネス14を挿通することにより、シート内の周辺部材と干渉又は当接したりすることを抑制している。より具体的には、
図3に示すように、シートバックフレーム10の下端に設けられた線条体支持部材30と、
図6に示すシートクッションフレーム20の後方に設けられたカバー部材40とを用いてケーブル13、ワイヤハーネス14等の伝達部材を保護している。
【0042】
<線条体支持部材>
図3~
図5Bを用いて線条体支持部材30について説明する。線条体支持部材30は、リクライニング機構7に近接して、シートバック1に設けられる部材である。線条体支持部材30は、保護部材である第一支持部材31と第二支持部材32とにより構成されている。線条体支持部材30は、第一支持部材31と第二支持部材32とにより、ケーブル13等を挿通する空間R1として挿入孔34及び開口部33を形成している。空間R1に挿入されたケーブル13とワイヤハーネス14とを、第一支持部材31と第二支持部材32によりを挟み込むことにより、それらを保護する。
【0043】
線条体支持部材30は、取付ブラケット35により、シートバック1のシートバックフレーム10に取り付けられている。より具体的には、
図3に示すように、シートバックフレームのバックサイドフレーム11の下端において、リクライニング機構7の反対側に取り付けられている。線条体支持部材30は、シートバック1から延びるケーブル13及びワイヤハーネス14を、第一支持部材31と第二支持部材32により挟み込むことで支持している。
【0044】
第一支持部材31と第二支持部材32とにより形成される空間R1には、シートクッション2に向けてケーブル13等が表出する開口部33が形成されている。開口部33は、
図3に示すように、シートバック1が起立状態のときに車両用シートSの前後方向に延びる溝状に形成されている。開口部33が溝状に形成されていることから、挟まれるケーブル13及びワイヤハーネス14を前後方向に分岐させたり、シートバック1の倒伏動作に応じて、ケーブル13及びワイヤハーネス14を前後に揺動させたりすることができる。
【0045】
図5A及び
図5Bは、線条体支持部材30の第一支持部材31と第二支持部材32とを個別に示す斜視図である。第一支持部材31及び第二支持部材32は、ケーブル13等を挿通する空間R1の壁となる壁部31a、32aをそれぞれ有する。また、その壁部31a、32aから突出し、第一支持部材31と第二支持部材32とを連結する複数の連結部31b、32bを有する。第一支持部材31と第二支持部材32のそれぞれに設けられた連結部31b、32b同士が結合することにより、線条体支持部材30として一体的となる。
【0046】
第一支持部材31の連結部31bには、
図5Aに示すように連結部31bの下面から上方に向けて延びるよう形成されたスリット状の凹部31c(被係合部の一例)が形成されている。また、第二支持部材32の連結部31bには、
図5Bに示すように下面から上方に向けて延びるよう形成された凸部32c(係合部の一例)が形成されている。第二支持部材32を第一支持部材31に下方から上方にスライドさせることで、凹部31cと凸部32cとが嵌合して、第一支持部材31に第二支持部材32が結合される。
【0047】
なお、第一支持部材31と第二支持部材32とを凹部31cと凸部32cとを嵌合させて固定する方法は一例であり、第一支持部材31に凸部が設けられ、第二支持部材32に凹部が形成されてもよい。連結部31b、32bのそれぞれに複数の凸部や凹部が形成されてもよい。また、第一支持部材31及び第二支持部材32に凹部や凸部を形成せず、互いに当接する面に接着剤を塗布し接着により固定されてもよく、また、ねじ又は樹脂クリップ等を用いて固定されてもよい。
【0048】
第一支持部材31に第二支持部材32が結合されることにより、線条体支持部材30には、第一支持部材31と第二支持部材32との間に側面視で逆T字型の空間R1が形成される。シートバック1から延びるケーブル13又はワイヤハーネス14は、
図3~
図5Bに示すように、まず挿入孔34に挿通され、その後、溝状の開口部33に挿通される。また、溝状の開口部33は
図5A及び
図5Bからも分かるように、点線で示すケーブル13及びワイヤハーネス14の挿入方向(矢印A方向)を中心として、挿入孔34の出口から前後方向(水平方向)に180度開いた形に形成されている。
【0049】
また、線条体支持部材30を構成する第一支持部材31と第二支持部材32とは、ケーブル13及びワイヤハーネス14を直接固定してはいない。そのため、挿入孔34の部分では、ケーブル13及びワイヤハーネス14は、壁部31a、32a及び連結部31b、32bにより前後方向及び左右方向の移動が規制されるが、縦方向には自由に移動することができる。
また、溝状に形成された開口部33において、ケーブル13及びワイヤハーネス14は、壁部31a、32aにより左右方向の移動が規制されるが、前後方向の移動は規制されない。そのため、シートバック1を倒伏させても、ケーブル13及びワイヤハーネス14は開口部33において前後方向に自由に曲がることができる。すなわち、シートバック1の倒伏動作に応じてケーブル13及びワイヤハーネス14を前後方向に揺動させることができる。また、左右方向には第一支持部材31と第二支持部材32の壁部31a、32aにより保護されることから、シート内の周辺部材、例えばバックサイドフレーム11やリクライニング機構7と干渉又は当接することが抑制される。それにより、断線等による動作不良を抑制するとともに、シートバック1の倒伏動作を阻害することが抑制されようになる。
【0050】
線条体支持部材30は、取付ブラケット35によりバックサイドフレーム11の下端部において、リクライニング機構7の反対側に固定されている。取付ブラケット35は、
図3に示すようにその上端部においてバックサイドフレーム11に固定されている。取付ブラケット35は断面がL字状に形成されおり、下端部にフランジ部35bと後方に延びる腕部35aとを有する。線条体支持部材30は、取付ブラケット35に、複数の固定部材39を用いて固定されている。フランジ部35bに貫通孔35cが形成されていて、第一支持部材31の内部に設けられた十字リブ39b(
図4)を挿入し、爪部39a(
図3)をかける。そして、樹脂クリップ39cが、取付ブラケット35の腕部35aの孔と、第一支持部材31の側部に形成された孔に挿通されて固定される。
【0051】
取付ブラケット35には、シートバック側固定部として、ケーブル13をバックサイドフレーム11に沿って保持するケーブル固定部51が設けられている。また、シートバック側固定部として、取付ブラケット35の側部にワイヤハーネス14を保持する第一クリップ52が設けられている。
【0052】
<カバー部材>
図6~
図8を用いて、本実施形態のカバー部材40について説明する。カバー部材40は、リクライニング機構7に近接してシートクッション2の後側に設けられる複数の保護部材により構成された部材である。具体的に述べると、カバー部材40は、保護部材であるリクライニングインナーカバー42、シートクッションアンダーカバー43及びクッショントリムカバーTを有し、それらにより形成された空間R2にケーブル13及びワイヤハーネス14を挿通している。ケーブル13及びワイヤハーネス14は、保護部材であるリクライニングインナーカバー42、シートクッションアンダーカバー43及びクッショントリムカバーTにより保護される。
【0053】
リクライニングインナーカバー42は、リクライニング機構7の内側部分と、シートクッションフレーム20の一部を覆う部材である。より具体的には説明すると、リクライニングインナーカバー42は、
図7に示すように、リクライニング機構7の内側を覆うリクライニング機構カバー部42aと、シートクッションフレーム20の後方連結フレーム23を覆うクッションフレームカバー部42bとを有する。
【0054】
シートクッションアンダーカバー43は、シートクッション2の下面を覆う部材である。シートクッションアンダーカバー43は、
図8に示すように、シートクッション2の下面を覆うクッション下面カバー部43aと、シートクッション2の後部を覆うクッション後方カバー部43bと有する。クッション後方カバー部43bは、シートクッション2の後部の形状に対応するよう曲面で形成されていて、そのうち、ケーブル13等が収納される部分はさらに凹形状に形成されている。シートクッションアンダーカバー43は、シートクッション2に取り付けられたとき、クッションフレームカバー部42bとの間に、ケーブル13及びワイヤハーネス14が挿通される空間R2が形成されるように構成されている。空間R2が形成されることにより、リクライニング機構カバー部42aとの間で挟まれるケーブル13及びワイヤハーネス14がシートクッションフレーム20と干渉又は当接することを抑制している。また、ケーブル13及びワイヤハーネス14を外側から見えないようしている。また、クッション後方カバー部43bは、シートバック1を倒伏させたときに、ケーブル13及びワイヤハーネス14を抑えることで、シートクッション2の後方から飛び出すことを抑制し、それにより、ケーブル13及びワイヤハーネス14を保護している。
【0055】
図9A及び
図9Bは、シートバック1を起立させた状態のケーブル13及びワイヤハーネス14の配策状態を示す図である。なお、ケーブル13及びワイヤハーネス14の配策状態をわかりやすくするために、シートクッションアンダーカバー43を取り外して示している。
【0056】
図9A及び
図9Bに示すように、線条体支持部材30の開口部33からシートクッション2まで配策されるケーブル13及びワイヤハーネス14は、後方(矢印D方向)に延びた後、幅方向(矢印C方向)に配策される。線条体支持部材30から延びるケーブル13及びワイヤハーネス14は、図に示すようにシートバック1の下端部から延びるシートバック表皮トリムカバー44とシートクッション表皮トリムカバー45とにより挟みこまれている。それにより、周辺部材との干渉又は当接が抑止される。
【0057】
図9Bに示すように、シートバック表皮トリムカバー44とシートクッション表皮トリムカバー45とにより、ケーブル13等が外出するスリット開口46が形成されている。このスリット開口46は、線条体支持部材30の壁部31a、32aにより保持されていてる。そのため、スリット開口46及びそれを通るケーブル13等が車両用シートSの内側に寄らず、例えば、後方連絡フレームの上部に一定の空間(リフトエリア9)を確保することができる(
図10C参照)。
【0058】
シートバック表皮トリムカバー44は、シートバック1のクッショントリムカバーTの一部であり、その下端から延出している。シートクッション表皮トリムカバー45は、シートクッション2のクッショントリムカバーTの一部であり、その後端から延出している。ケーブル13及びワイヤハーネス14と接触するシートバック表皮トリムカバー及びシートクッション表皮トリムカバーの部位の部材は、パッドを取り除いた不織布で構成されている。ケーブル13及びワイヤハーネス14と当接する部分を不織布で構成することにより、当接による異音の発生が抑制される。また、当接する部分を不織布で構成することで、ケーブル13及びワイヤハーネス14が動く際に発生する抵抗を低減させることができ、シートバック1の倒伏動作を阻害することが抑制されるようになる。
【0059】
シートクッション2側におけるケーブル13及びワイヤハーネス14の配策状態について説明する。上述したように、シートクッション2のシートクッションフレーム20には、両側部に設けられる一対のクッションサイドフレーム21と、それらを連結する前方連結フレーム(図示せず)と後方連結フレーム23とを有する。シートクッション2側のケーブル13は幅方向(矢印C方向)に延びるよう配置され、
図9A及び
図9Bに示すように、後方連結フレーム23から前方に延びるブラケット25に取り付けられた第二クリップ53(シートクッション側固定部)を用いて固定されている。また、シートクッション2側に配策されたワイヤハーネス14も幅方向に延び、ブラケット25に第二クリップ53とは別の場所に配置された第三クリップ54(シートクッション側固定部)を用いて固定される。
一方、上述したように、シートバック1側に配策されるケーブル13は、取付ブラケット35のケーブル固定部51により、バックサイドフレーム11に沿って幅方向(矢印C方向)に延びるよう固定されている。ワイヤハーネス14は、取付ブラケット35の第一クリップ52によりバックサイドフレーム11に沿って幅方向(矢印C方向)に延びるよう固定されている。
【0060】
図10A~
図10Cは、シートバック1を前方に倒伏させた状態の車両用シートSを後方から見た図であり、ケーブル13及びワイヤハーネス14の配策状態を示している。なお、配策状態をわかりやすくするために、シートクッションアンダーカバー43を取り外して示している。
シートバック1を前方に倒伏させた状態において、ケーブル13のシートバック1に配策された部分は、取付ブラケット35のケーブル固定部51により、車両用シートSの前方(矢印B方向)に延びるよう配置される。また、ワイヤハーネス14は、第一クリップ52により、車両用シートSの前方(矢印B方向)に延びるよう配置される。
【0061】
そのため、ケーブル13は、取付ブラケットのケーブル固定部51から、シートクッションの第二クリップ53までの間では、下面視においてL字形に屈曲して配策されるようになる。また、ワイヤハーネス14もシートバック1を前方に倒伏させた状態において、ワイヤハーネス14のシートバック1に配策される部分は、取付ブラケット35の第一クリップ52により車両用シートSの前方に延びるよう配置される。
そのため、ワイヤハーネス14は、ケーブル13と同様、取付ブラケット35の第一クリップ52から、シートクッション2の第三クリップ54までの間では、下面視においてL字形に屈曲して配策されるようになる。
【0062】
このように、ケーブル13及びワイヤハーネス14が、ケーブル固定部51及び第一クリップ52と、第二クリップ及び第三クリップ54とにより、L字形に屈曲することで、シートバック1を倒伏させたときスムーズに屈曲・移動できるようになる。そのため、ケーブル13及びワイヤハーネス14がシートバック1の倒伏動作を阻害することが抑制される。
【0063】
すなわち、ケーブル13及びワイヤハーネス14を下面視でL字形に屈曲させることで、車両用シートSの側面視で、シートバック1に配策されたケーブル13及びワイヤハーネス14は、シートバック1の傾斜角度に対応して、それらの屈曲が変化するようになる。シートバック1の傾斜角度に応じてケーブル13及びワイヤハーネス14を屈曲させることから、シートバック1に配策されるケーブル13及びワイヤハーネス14は幅方向に揺動することがなく、シートバック1の倒伏動作を阻害しない。また、ケーブル13及びワイヤハーネス14を極端に曲げることが抑制され、それにより、ケーブル13及びワイヤハーネス14への負荷を低減できる。
【0064】
なお、車両用シートSを車のボディ内に運ぶ際、シートクッション2の後方連結フレーム23の上側の空間(リフトエリア9、
図10C参照)に、リフトのフォーク(持ち上げ部分)が挿入される。フォークの挿入されることから、ケーブル13やワイヤハーネス14の断線を抑止するため、通常、リフトエリア9に配策することは行われていない。また、リフトエリア9にケーブル13やワイヤハーネス14が揺動することも禁止されている。
本実施形態の線条体支持部材30及びカバー部材40を用いれば、リフトエリア9にケーブル13及びワイヤハーネス14が揺動することが抑制され、リフトのフォークによる断線が抑止される。
【0065】
また、
図6に示すように、シートクッション2側に配策されるケーブル13及びワイヤハーネス14は、シートクッションアンダーカバー43の後方部分で立ち上がるクッション後方カバー部43bによって保護されている。そのため、シートバック1を倒伏させたとき、シートバック1から延びるケーブル13及びワイヤハーネス14は、クッション後方カバー部43bに当接して、外側に露出することが押さえられる。ケーブル13及びワイヤハーネス14は、シートバック1を倒伏させた状態でも、車両用シートSの後方に露出すことがなく外側からは見えなくなるため、外観商品性が向上する。
【0066】
以上、図を用いて本実施形態の車両用シートSについて説明した。なお、車両用シートSの左シートに設けられた線条体支持部材30及びカバー部材40について説明したが、同様の構成を有する線条体支持部材30及びカバー部材40は、右シートSbにも設けられている。また、車両用シートSは、シートバック1に設けられる線条体支持部材30と、シートクッション2に設けられるカバー部材40との両方を備えているが、いずれか一方を用いてケーブル13及びワイヤハーネス14を保護してもよい。
【符号の説明】
【0067】
S 車両用シート(乗物用シート)
Sa 左シート
Sb 右シート
Sc 中央シート
T クッショントリムカバー(クッションカバー)
P パッド
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
7 リクライニング機構
8 エアバック装置
F シートフレーム
R1、R2 空間
9 リフトエリア
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
13 ケーブル(伝達部材)
14 ワイヤハーネス(伝達部材)
15 レバー
16 バックパネル
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
23 後方連結フレーム
25 ブラケット
30 線条体支持部材
31 第一支持部材(保護部材)
31a 壁部
31b 連結部
31c 凹部(被係合部)
32 第二支持部材(保護部材)
32a 壁部
32b 連結部
32c 凸部(係合部)
33 開口部
34 挿入孔
35 取付ブラケット
35a 腕部
35b フランジ部
39 固定部材
39a 爪部
39b 十字リブ
39c 樹脂クリップ
40 カバー部材
41 リクライニングアウターカバー
42 リクライニングインナーカバー(保護部材)
42a リクライニング機構カバー部
42b クッションフレームカバー部
43 シートクッションアンダーカバー(保護部材)
43a クッション下面カバー部
43b クッション後方カバー部
44 シートバック表皮トリムカバー(保護部材)
45 シートクッション表皮トリムカバー(保護部材)
46 スリット開口
51 ケーブル固定部(シートバック側固定部)
52 第一クリップ(シートバック側固定部)
53 第二クリップ(シートクッション側固定部)
54 第三クリップ(シートクッション側固定部)