(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ガス流ヘッドを用いる積層造形システム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/16 20060101AFI20231206BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20231206BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20231206BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20231206BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20231206BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231206BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231206BHJP
【FI】
B23K26/16
B23K26/21 Z
B23K26/34
B29C64/153
B29C64/35
B33Y30/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2021501003
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 US2019045106
(87)【国際公開番号】W WO2020033310
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518009515
【氏名又は名称】ヴァルカンフォームズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スイートランド,マシュー
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265530(JP,A)
【文献】特表2016-528374(JP,A)
【文献】特開2018-008493(JP,A)
【文献】特開平06-285668(JP,A)
【文献】特開2014-125643(JP,A)
【文献】特開2017-100170(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049143(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B29C 64/153
B29C 64/35
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B22F 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形面と;
1つ以上のレーザエネルギー源と;
前記造形面に対して可動であり且つレーザエネルギーを前記1つ以上のレーザエネルギー源から前記造形面の方へ向けるように構成されたオプティクスアセンブリであって、前記造形面上の材料の層を前記レーザエネルギーにさらすことによって、前記材料の層の少なくとも一部分を溶融する、オプティクスアセンブリと;
前記オプティクスアセンブに結合され、且つ前記オプティクスアセンブリと前記造形面との間に、部分的に囲まれた体積部を画成するガス流ヘッドであって:
前記ガス流ヘッドの動作中に前記ガス流ヘッドに供給ガスが流入するガス流入部、
前記ガス流ヘッドの動作中に前記ガス流ヘッドからリターンガスが流出するガス流出部、及び
前記レーザエネルギーを、前記ガス流ヘッドを通って前記造形面まで透過させることができるように配置されたアパーチャであって、前記供給ガス及びリターンガスは、
前記ガス流ヘッドの動作中の前記ガス流ヘッド内のガス流プロフィールを規定する、アパーチャ
を含む、ガス流ヘッドと
を含
み、
前記ガス流ヘッドの動作中において、前記ガス流ヘッドに流入する前記供給ガスの第1の流量は、前記ガス流ヘッドから流出する前記リターンガスの第2の流量を下回り、且つ、前記第1の流量と前記第2の流量の差によって、前記ガス流ヘッドに掃気ガスを流入させる、積層造形システム。
【請求項2】
前記ガス流ヘッド及びオプティクスアセンブリは、前記造形面を横切って実質的に同じ速度で動かされるように構成されている、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項3】
前記アパーチャは、前記1つ以上のレーザエネルギー源のビーム面積の約10~約10,000倍に及ぶ面積を有する、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項4】
前記ガス流ヘッドは、前記アパーチャの前記面積の約10~約100倍に及ぶ面積を有する、請求項3に記載の積層造形システム。
【請求項5】
ガス流ヘッドの前記面積は、前記造形面の面積の約0.05~約0.2倍である、請求項4に記載の積層造形システム。
【請求項6】
前記アパーチャの最大寸法は、前記1つ以上のレーザエネルギー源の最大ビーム幅よりも、15mm未満大きい、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項7】
前記第1及び第2の流量は、約0.5cm
3/s~約1.5cm
3/sである、請求項
1に記載の積層造形システム。
【請求項8】
前記ガス流ヘッドは、前記造形面に隣接する下面、及び前記オプティクスアセンブリと前記下面との間に位置決めされた上面をさらに含む、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項9】
前記アパーチャは、前記上面に位置決めされた第1のアパーチャであり、及び前記ガスヘッドは、前記下面に位置決めされた第2のアパーチャをさらに含む、請求項
8に記載の積層造形システム。
【請求項10】
前記第1のアパーチャ及び前記第2のアパーチャは互いに整列されている、請求項
9に記載の積層造形システム。
【請求項11】
前記第1のアパーチャの第1の最大寸法は、前記1つ以上のレーザエネルギー源のビーム幅よりも1~2mm大きく、及び前記第2のアパーチャの第2の最大寸法は、前記第1の最大寸法よりも5~15mm大きい、請求項
9に記載の積層造形システム。
【請求項12】
前記第1のアパーチャを覆い且つ前記第1のアパーチャにレーザエネルギーを透過させることができるように配置された光学窓をさらに含む、請求項
9に記載の積層造形システム。
【請求項13】
前記ガス流ヘッド内に位置決めされたガス速度発生器をさらに含む、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項14】
前記ガス速度発生器は、前記ガス流ヘッド内に、回転可能なディスクを含んで、前記ディスクの前記回転に対する接線方向に沿ってガス速度を発生させる、請求項
13に記載の積層造形システム。
【請求項15】
前記ディスクは、光学的に透明な材料から形成されている、請求項
14に記載の積層造形システム。
【請求項16】
前記ガス流ヘッド内に、前記ガスの流れを方向付けるように配置された1つ以上のフローガイドをさらに含む、請求項1
から15のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【請求項17】
前記ガス流ヘッド内の前記ガス流プロフィールは、前記材料の層を前記レーザエネルギーにさらすことによって発生した放出粒子及び/又はヒュームを流れに取り込むように構成されている、請求項1
から16のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【請求項18】
前記ガス流ヘッドは、前記造形面の方へ向かって延在する一対のバッフルプレートをさらに含み、各バッフルプレートは、前記ガス流ヘッドの走査方向に対して実質的に平行である、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項19】
各バッフルプレートは、伸長位置と引込み位置との間で選択的に作動可能である、請求項
18に記載の積層造形システム。
【請求項20】
レーザエネルギーを、1つ以上のレーザエネルギー源からオプティクスアセンブリを通して造形面の方へ方向付けることであって、前記オプティクスアセンブリは、前記造形面に対して可動であること;
造形面上の材料の層を前記レーザエネルギーにさらすこと;
前記材料の層の少なくとも一部分を、前記レーザエネルギーに前記部分をさらすことに起因して、溶融すること;
ガス流ヘッドのガス流入部を通して
第1の流量で前記ガス流ヘッドに供給ガスを流入させることであって、前記ガス流ヘッドは前記オプティクスアセンブリに結合されていること;
前記第1の流量を上回る第2の流量で前記ガス流ヘッドのガス流出部を通して前記ガス流ヘッドからリターンガスを流出させること;及び
少なくとも一部には、前記ガス流ヘッドに流入する前記供給ガスの前記
第1の流
量と前記ガス流ヘッドから流出する前記リターンガスの前記
第2の流
量の差に起因して、前記ガス流ヘッド内にガス流プロフィールを生成すること
であって、掃気ガスを前記ガス流ヘッドに流入させることを含む、生成すること
を含む、積層造形方法。
【請求項21】
前記オプティクスアセンブリの動きの速度と実質的に等しい速度で前記造形面に対して前記ガス流ヘッドを動かすことをさらに含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の流速は、約0.5cm
3/s~約1.5cm
3/sに及ぶ、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
ガス速度発生器によって、前記ガス流ヘッド内にガス速度を発生させることをさらに含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
前記ガス速度発生器は、前記ガス流ヘッド内に、回転可能なディスクを含み、及び前記ディスクを回転させることによって、前記ディスクの前記回転に対して接線方向に沿ってガス速度を発生させる、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記ディスクは光学的に透明な材料で形成される、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
1つ以上のフローガイドによって、前記ガス流ヘッド内での前記ガスの流れを方向付けることをさらに含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項27】
前記ガス流ヘッド内の前記ガス流プロフィールは、前記材料の層を前記レーザエネルギーにさらすことによって発生した放出粒子及び/又はヒュームを流れに取り込むように構成されている、請求項
20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2018年8月6日出願の35 U.S.C.§119(e)下において、米国仮特許出願第62/715,028号(表題「ADDITIVE MANUFACTURING SYSTEM WITH GAS FLOW HEAD」)の優先権を主張し、その全体を参照することにより本書に援用する。
【0002】
分野
[0002] 開示の実施形態は、積層造形(additive manufacturing)用のシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 金属積層造形の多くの方法が、現在、市場において入手可能である。方法は、材料源(粉末、ワイヤ、フィルムなど)、及び溶融/結合(レーザ溶融、電子ビーム溶融、溶接アーク、焼結など)を得るためのエネルギー付加の形態によって分けられ得る。所与の加工の最後の部分の解像度、精度、及び獲得可能なフィーチャー・サイズは、初期の材料の形態、及び金属融合(fusion)のためにエネルギーの配置を制御する能力に基づく。所与の加工の有効率(effective rate)は、一般に、エネルギーを造形面(build surface)に制御しながら送達する能力によって、制限されている。
【0004】
[0004] 金属積層造形のための選択的レーザ溶融加工では、1つ以上のレーザスポットが、一般に、薄い金属粉末層の上側にわたって走査される。レーザスポットによって走査される金属粉末は、固体金属構造に溶融及び融合される。ひとたび層が完成したら、構造は割送りされ、新しい金属粉末層が敷かれて、加工は繰り返される。以前の層の先の被走査領域の上方にある新しい層上のある領域がレーザスポットによって走査されると、粉末は、以前の層から固形物上に溶融及び融合される。この加工は、何度も繰り返されて、ほぼどんな形態の3次元形状も構築し得る。
【0005】
[0005] 単一レーザシステム及びマルチレーザシステムの双方とも、選択的レーザ溶融加工において使用される。例えば、いくつかのシステムは、造形面上の所望のパターンにわたって各レーザビームを走査するために、一対のガルバノメータ取付ミラーを使用する。いくつかのシステムは、造形面の上側にわたってレーザを走査するために、移動ステージを使用する。さらに、いくつかのシステムは、造形面の上側にわたってレーザを走査するために、移動ステージとガルバノメータとの組み合わせを使用する。走査法の一部としてガルバノメータを使用するシステムは、所与の造形面サイズでは、造形面へのレーザビームの入射角を可能な限り垂直に近く保つのを支援するために、Fシータ又はテレセントリックレンズを使用することが多い。いずれかのレーザ経路の最終的な光学構成要素(例えば、最終的なオプティクス、ガルバノメータ、ミラー、テレセントリックレンズ又はFシータレンズ)間の間隔は、約数ミリメートルから数百センチメートルまで、又はそれ以上とし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
[0006] 一実施形態では、積層造形システムが、造形面、1つ以上のレーザエネルギー源、及び造形面に対して可動であり且つレーザエネルギーを1つ以上のレーザエネルギー源から造形面の方へ向けるように構成されたオプティクスアセンブリを含む。造形面上の材料の層をレーザエネルギーにさらすことによって、材料の層の少なくとも一部分を溶融する。システムは、オプティクスアセンブリに結合され且つオプティクスアセンブリと造形面との間に部分的に囲まれた体積部を画成するガス流ヘッドをさらに含む。ガス流ヘッドは、供給ガスがガス流ヘッドに流入するガス流入部と、リターンガスがガス流ヘッドから流出するガス流出部と、レーザエネルギーを、ガス流ヘッドを通って造形面まで透過させることができるように配置されたアパーチャとを含む。供給ガス及びリターンガスは、ガス流ヘッド内のガス流プロフィールを規定する。
【0007】
[0007] 別の実施形態では、積層造形方法は、1つ以上のレーザエネルギー源からのレーザエネルギーを、オプティクスアセンブリを通って造形面の方へ方向付けること、造形面上の材料の層をレーザエネルギーにさらすこと、及びレーザエネルギーの部分をさらすことによって材料の層の少なくとも一部分を溶融することを含む。オプティクスアセンブリは、造形面に対して可動である。方法は、ガス流ヘッドのガス流入部を通してガス流ヘッドに供給ガスを流入させること、ガス流ヘッドのガス流出部を通してガス流ヘッドからリターンガスを流出させること、及び少なくとも一部には、ガス流ヘッドに流入する供給ガスの流れ及びガス流ヘッドから流出するリターンガスの流れに起因して、ガス流ヘッド内にガス流プロフィールを生成することをさらに含む。ガス流ヘッドはオプティクスアセンブリに結合される。
【0008】
[0008] 上記の概念、及び下記で説明する追加的な概念は、本開示はこの点で限定されないため、任意の好適な組み合わせで配置され得ることが理解されるべきである。さらに、本開示の他の利点及び新規の特徴は、添付図面と併せて考慮されるときに、様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0009】
図面の簡単な説明
[0009] 添付図面は、縮尺通りではない。図面では、様々な図面に示されているそれぞれ同一又はほぼ同一の構成要素は、同様の符号で表され得る。明白にするために、全ての図面において全ての構成要素に符号が付されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]一実施形態による、ガス流ヘッドを含む積層造形システムの概略図である。
【
図2】[0011]一実施形態による、オプティクスユニット及びガス流ヘッドの概略図である。
【
図3】[0012]一実施形態による、ガス流ヘッドの一部分内のガス速度プロフィールの概略図である。
【
図4】[0013]一実施形態による、ガス流ヘッド内へ流入する掃気流を生じるように配置されたガス流ヘッドの概略図である。
【
図5】[0014]一実施形態による、ガス流ヘッドから流出する排気流を生じるように配置されたガス流ヘッドの概略図である。
【
図6】[0015]一実施形態によるガス流ヘッドの概略図である。
【
図7】[0016]2つの取り得るアパーチャ形状を備える、ガス流ヘッドの上面図を示す。
【
図8】[0017]一実施形態によるガス流ヘッドの概略図である。
【
図9】[0018]一実施形態によるガス流ヘッド内のガス速度プロフィールの概略図である。
【
図10】[0019]一実施形態による、アパーチャの上側を覆う窓を含むガス流ヘッドの概略図である。
【
図11】[0020]一実施形態による、マスクを含むガス流ヘッドの概略図である。
【
図12】[0021]一実施形態による、マスクを含むガス流ヘッド内のガス速度プロフィールの概略図である。
【
図13】[0022]一実施形態による、ガス流ヘッドが粉末ベッドに対して動く間の、ガス流ヘッド内のガス速度プロフィールの概略図である。
【
図14】[0023]一実施形態による、ガス速度発生器を含むガス流ヘッドの概略図である。
【
図15】[0024]ガス速度発生器を含むガス流ヘッドの一実施形態の上面図である。
【
図16】[0025]一実施形態による、ガス速度発生器を含むガス流ヘッドの概略図である。
【
図17】[0026]一実施形態による、フローガイドを含むガス流ヘッドの概略図である。
【
図18】[0027]一実施形態による、バッフルプレートを含むガス流ヘッドの概略図である。
【
図19】[0028]
図19のガス流ヘッドの側面の断面図である。
【
図20】[0029]例示的なガス流をさらに示す、
図19のガス流ヘッドの概略図である。
【
図21】[0030]一実施形態による、作動されたバッフルプレートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
[0031] 本発明人らは、造形面上の粉末材料層へのレーザの入射点における選択的レーザ溶融システム内での溶融プールのふるまいに多くの要因が影響を与え得ることを認識し且つ理解した。これらの要因は、加工で使用される金属粉末のタイプ、粉末層の厚さ、レーザビームの入射エネルギー、レーザビームの焦点サイズ、レーザビームの走査速度、以前の走査の熱履歴、及び周囲のガス環境のタイプを含み得る。全ての場合において、溶融プールの領域の近くで、溶融プール内の動力学は、溶融金属のヒューム発生及びある程度のガス化を生じる。場合によっては、これらの発生したヒュームは、レーザビームに干渉し得る。
【0012】
[0032] さらに、粉末状の溶融金属のガス化及び急速な膨張はまた、溶融プールが粒子を溶融プールから上方に且つそこから離れるように放出する原因となり得る。これらの放出粒子は、未溶融金属粉末粒子、部分的に融合された粉末粒子、及び溶融プールからの放出後に、続いて冷却して凝固する溶融金属の粒子を含み得る。部分的に融合された粉末粒子は、未加工のベース粉末よりも何倍もサイズが大きいとし得る。さらに、放出され且つ放出後に続いて冷却される溶融金属液滴は、ある範囲の形状及びサイズを取り得る。放出時のそれらの表面積が広く、しかも高温であることに起因して、そのような放出粒子は、周囲のガス環境内にある微量元素と反応して、ソース金属粉末又は融合金属構造のいずれとも、物理的特性が非常に異なる化合物を形成し得る。
【0013】
[0033] 本発明人らは、様々なタイプの放出粒子(例えば、個々の粉末粒子、部分的に融合された粉末粒子、冷却された溶融液滴)は、レーザが粉末層の上側にわたって走査し続けるときに、並びにレーザが、それに続く層の上側にわたって走査するときに、いくつもの問題を引き起こし得ることを理解した。例えば、大焼結粒子及び冷却された溶融液滴は、造形(build)加工に害を及ぼし得る。後続するトラックのレーザ加工は、大焼結粒子及び冷却された溶融液滴の再溶融を試みることがあり、これにより、最終的な造形構成要素内に介在物(inclusions)を生じ得る。これらの介在物は、最終的な造形構成要素の機械的特性、例えばその強度、剛性、耐疲労性、及び/又は密度にかなり影響を及ぼし得る。また、1つ又は複数のレーザは走査し続け、及び粒子は特定のレーザ走査の軌跡から放出されるため、未溶融の大焼結粒子及び冷却された溶融液滴は、後続のレーザ走査の軌跡に含まれ得る。これは、いくつかの層にわたって蓄積される場合、これら放出物が優先的に着地する領域に材料を過剰造形し(overbuild)得る。この過剰造形は、最終部分に歪み及び不精密な寸法を生じ得る。
【0014】
[0034] 場合によっては、放出粒子は、造形面上の粉末ベッドの表面に戻るように着地することがあり、これにより、平滑面を乱し、且つホール及び/又はマウンドを形成する原因となり得る。これらの結果として生じるホールのうちの1つが、1つ又は複数のレーザによって走査される場合、その箇所にある材料の量は、全高が溶融された層を形成するのには不十分とし得る。その結果、表面は、溶融プールが凝固した後、他の領域よりも低くなる。後続の粉末層が造形面上に堆積されると、粉末層は、この箇所において、周囲の領域よりも厚くなり、及びその領域が、再度1つ又は複数のレーザビームによって走査される場合、入射エネルギーは、粉末の深さ全体を溶融するには十分ではないかもしれない。これは、最終的な造形構成要素又は部分に、未溶融の粉末を含む未加工のボイドを生じ得る。同様に、放出粒子が粉末ベッドの表面にマウンドを形成し、それに続いて、次の層が敷かれる前にマウンドが走査される場合、マウンドの箇所の入射レーザエネルギーは、マウンドの厚さを通して全ての粉末を溶融するには十分ではないかもしれない。これは、未溶融の粉末が捕捉されたボイドを生じ得る。マウンドが十分に高く、且つ走査されて溶融される場合、マウンドは、凝固した構造に高い点を生じる可能性があり、これは、重ね塗りブレード(recoating blade)に接触して損傷を与え得る。時間が経つにつれて、重ね塗りブレードへの繰り返しの損傷によって、粉末層を適切に広げることができなくし、且つ重ね塗り機構を動かなくし、それにより、全造形を失敗させ得る。
【0015】
[0035] 上記に加えて、本発明人らは、溶融プールから放出される粒子は他の問題も引き起こし得ることを認識した。例えば、溶融プールから放出される、部分的に融合された粒子及び冷却された溶融粒子は、通常の造形加工中に造形面に広げられる金属粉末のサイズの何倍ともし得る。これらの大粒子は、それらが着地するときに、それらの質量が大きいため、粉末ベッドの表面内にホール及びマウンドを生じやすいとし得る。また、これらの大粒子は、それらが着地した後に走査される領域にある場合、より小さく且つより均一に広げられた粉末と同じようには加工されないかもしれない。例えば、それらのより大きな相対質量及び不均一な形状は、1つ又は複数の入射レーザによって走査されているときに、十分に溶融されるのを妨げ得る。これはまた、最終的な造形構成要素又は部分内に、ボイド又は未溶融の粉末領域の形成を引き起こし得る。さらに、溶融プールからの放出後に凝固する溶融液滴は、それらがそれに続いて走査される場合、溶融プール内で溶融及び融合しない化合物を形成し得る。結果として生じるボイド又は未加工の粒子も、最終部分の機械的特性及び物理的特性に影響を及ぼし得る。
【0016】
[0036] 場合によっては、重ね塗り加工中に造形面上に、及び積層造形加工中に後続の加工層に広げられる金属粉末の公称寸法と比較して大きい放出粒子も、問題を引き起こし得る。例えば、放出粒子は、重ね塗りブレードによって捕らえられ且つそれに沿って引きずられるほどの大きさとし得る。これらの引きずられる粒子は、粉末ベッドの表面に一様でないトラックを生じることがあり、それに続く加工に課題を生じ得る。これらのトラックは、重ね塗り中に粉末を堆積させすぎることによって、それに続く走査のいくつかの領域内に、あまりにも積み重なりすぎ得る。それらは、いくつかのトラックにおける不十分な粉末に起因して、被走査領域の他の領域内にスポットを生じ得る。これらの高い及び低い領域は、最終部分における歪み又は応力の原因となり得る。大粒子はまた、最後には、外面に部分的に焼結され得、表面粗さを大きくし、且つ造形品質を全体的に低下させる。
【0017】
[0037] 乱された粉末ベッドの表面の結果である溶融加工におけるそのような高い及び低い領域はまた、被製造構成要素又は部分の様々な造形層の層間剥離を引き起こし得る。例えば、冷却すると、各層は、温度変化に起因して収縮し得る。粉末が所与の領域に蓄積されすぎて、以前のレーザ走査ステップ中に十分に加工されなかった場合、これは、その層と以前の層との間の境界面を弱くし得る。この最後の層は冷えて収縮するため、以前の層から離れて層間剥離して、被生産部分は固体構造を形成しない。部分的な焼結粒子が造形面上の所与の領域に着地しすぎて、その後走査される場合、同様の結果が起こり得る。
【0018】
[0038] さらに、本発明人らは、場合によっては、溶融プールから放出される粒子は、積層造形システムの光学構成要素上の堆積物の原因となり得ることを認識した。そのような堆積物は、入射レーザビーム経路と干渉し得、1つ又は複数のレーザビームの入射点に不均一な照明パターンを生じ得る。一部の例では、これは、溶融プールの動力学に影響を及ぼし、且つ強制的に、より低速の加工速度にして所望の品質レベルの最終的な造形構成要素を維持するようにし得る。さらに、これらの堆積物が十分に稠密になる場合、それらは、入射レーザエネルギーのかなりの部分を1つ又は複数の光学構成要素によって吸収させ得る。これは、構成要素の局所的な加熱及び損傷の原因となり、これは、造形加工の失敗及び又は積層造形システムの故障を引き起こし得る。光学構成要素に永久的な損傷を引き起こすのに十分な堆積物がない場合でも、加工は、光路をきれいにするために、定期的に停止される必要があり得る。光路をきれいにするための、又は何らかの他の理由での造形加工の停止は、生産部分の過度の冷却及び再加熱に起因して、熱応力及び機械的応力をもたらし得る。一部の例では、加工中に停止又は中断される必要がある造形は、層間であっても、造形の失敗とみなされて、その部分を使用することはできない。
【0019】
[0039] 積層造形加工中に溶融プールから発生するヒュームは、積層造形システムのガス環境に漂い得る非常に小さい粒状物質を含み得る。これらのヒュームは、時間が経つにつれてシステムの壁及び構造に堆積物及びフィルムが形成される原因となり得る。そのように堆積されたフィルム層は、定期的にきれいにされる必要があり、並びに機械的構成要素の摩耗及び加速劣化の原因となり得る。一部の例では、これらのフィルムは、反応性が高く、且つ機械の日常メンテナンス中に周囲空気にさらされると迅速に酸化し得る。従って、これらのヒュームの閉じ込め及びフィルタリングが望ましい。
【0020】
[0040] 上記のことを考慮して、本発明人らは、粉末ベッドの表面を横切るガス流を含む積層造形システムに関連する数多くの利益を認識し且つ理解した。そのようなガス流は、積層造形加工中に放出粒子によって引き起こされる上述の問題点の1つ以上に対処し得る。例えば、ガス流は、放出粒子及びヒュームを流れに取り込み(entrain)、且つそれらを外部フィルターユニットまで運び、そこで、それらは安全に捕捉されて、システムから除去される。いくつかの実施形態では、ガス流は十分に速いため、粒子のほとんど又は全てを捕らえて流れに取り込み得る。さらに、いくつかの実施形態では、ガス流は、造形面の一部分にわたって均一とし得る。例えば、流れが遅すぎる場合、より大きな粒子は、流れに取り込まれずに、造形面に落ちることがあり、及び流れが均一ではない場合、造形面のいくつかの部分にわたる放出粒子は、十分に取り込まれないかもしれない。また、高品質の部分を生じさせるために、造形面全体の熱履歴は、可能な限り均一である必要がある。造形面にわたるガス流が均一でない場合、いくつかの領域は、空気の流れの少ない領域よりも対流冷却され得る。表面冷却の変化は、加工中での熱応力及び部分変形を多くし得る。
【0021】
[0041] 場合によっては、造形面にわたるガス流は、ガス流が粉末面に悪影響を及ぼさないように、制限され得る。例えば、ガス速度が造形面の近くで速すぎる場合、ガスのせん断力は、粉末面の均一性を変形させ得る。不均一な粉末面は、造形エラー及び/又は劣悪な加工条件につながり得る。
【0022】
[0042] 造形体積部が増加し且つ造形面のサイズが大きくなるにつれて、ほとんどの粒子を取り込むのに十分に高速でありながら、粉末面の変形又は乱れを防ぐために、どこにおいても表面速度を十分に低く保つ、造形面にわたる均一なガス場を生じることが、どんどん難しくなる。例えば、既存のシステムにおいて用いられる指向性のガス噴射が、それらの長さにわたって拡散するため、造形面の離れた側で粒子を流れに取り込むのに好適な速度を生じるのに十分な噴射は、望ましくない乱流及びガス速度の原因となり、造形面の手前側にある粉末面を変形させて乱し得る。また、造形体積部が増加するにつれて、造形面を横切る均一なガス流を保証するために必要なガス容積流量は、大きくなり得る。これは、一般に、大きなファン又は送風器を必要とし、これは、エネルギーの使用を多くし、且つ機器費用を増加させる。
【0023】
[0043] 上記のことを考慮して、本発明人らは、溶融プールの近くに、高速のガス流であるがガスの全循環量は少ない、局所的な取り込まれたガス流を生じるように構成及び配置された積層造形システムに関連する数多くの利益を認識し且つ理解した。
【0024】
[0044] いくつかの態様によれば、本明細書で説明するシステム及び方法は、光学構成要素を有する粉末ベッド融合/選択的レーザ溶融システムと一緒に使用され得、これらの光学構成要素は、粉末ベッドの表面の上方に位置決めされていて、且つ1つ以上の移動ステージを用いて、又は短いガルバノメータの動作と組み合わせた移動ステージによって、表面を横切って走査するように配置されている。ガルバノメータの短い動きは、造形面の寸法よりもガルバノメータの短い走査長を含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、溶融プール領域から離れた体積部からの取り込まれたガスが溶融プール領域に酸素又は水分を導入しない、密閉された不活性環境内で動作し得る。
【0025】
[0045] いくつかの実施形態では、積層造形システムは、オプティクスアセンブリ(例えば、レーザビームシステムの1つ以上の光学構成要素)と粉末面との間に位置決めされたガス流ヘッドを含み得る。ガス流ヘッドは、オプティクスアセンブリ(例えば、入射レーザビームの走査の動作の少なくとも一部を行う1つ以上の移動ステージ)に取り付けられ得る。ガス流ヘッドは、周囲条件と比べて陽圧をもたらすためのガス流入などのガス流のソース、及び周囲条件と比べて陰圧をもたらすためのガス流出などのリターンガス流の双方を含み得る。ソース流及びリターン流は、互いに依存していても、又はそれらは独立して制御されていてもよい。ソース流及びリターン流は、溶融プール領域にわたって、放出粒子及びヒュームを取り込む局所的なガス流を生じさせるために用意し得る。この流れは、粉末面に直接さらされても、又は溶融プール及び入射レーザビームに適合するより小さなアパーチャのあるマスクによって、二次的に遮蔽されてもよい。いくつかの実施形態では、ガス流及び結果として生じるガス速度プロフィールは、強制容積ガス流量のみによって誘発されても、又は速度プロフィールはまた、二次ガス速度発生器若しくは回転ディスクなどの速度誘発源によって制御されてもよい。ディスクは、中実形状とし得、光路と交差しない。他の実施形態では、速度発生器が、光学的に透明な材料から形成され得、1つ又は複数のレーザビームが回転ディスクを通過して、上流の光学構成要素をさらに保護できるようにする。
【0026】
[0046] 図面を検討すると、特定の非限定的な実施形態がさらに詳細に説明されている。本開示は、本明細書で説明する特定の実施形態にのみ限定されるわけではないため、これらの実施形態に関して説明する様々なシステム、構成要素、特徴、及び方法は、個別に及び/又は任意の所望の組み合わせにおいてのいずれかで使用され得ることが理解されるべきである。
【0027】
[0047]
図1は、1つ以上の入射レーザビーム4を、ガス流ヘッド2を通って造形面、例えば粉末ベッドの表面3上へと方向付けるオプティクスユニット1などの光学アセンブリを含む積層造形システムの一実施形態を示す。1つ又は複数の入射レーザビーム4は、粉末ベッドの表面3上に溶融プール5を生じる。粉末ベッドの表面3上の溶融プール5の位置は、例えば移動ステージを使用して、オプティクスユニット1を造形面に対して方向6及び7に沿って動かすことによって、設定される。
【0028】
[0048]
図2には、オプティクスユニット20及びガス流ヘッド23の詳細な側面図が示されている。ガス流ヘッド23は、マウンティングブラケット28によってオプティクスユニット20に取り付けられる。この実施形態では、この配置構成は、オプティクスユニット20に対して定位置にガス流ヘッド23を維持する。このようにして、オプティクスユニット20は粉末ベッドの表面27にわたって走査されるため、ガス流ヘッド23も、オプティクスユニットと実質的に同じ速度で粉末ベッドの表面27にわたって走査される。ガス流ヘッド23は、粉末ベッドの表面27の上方の体積部30を少なくとも部分的に取り囲む外側ハウジング29を含む。供給ガス25が、ガス流入部31を経由してガス流ヘッド23に供給される。リターンガス供給部26が、ガス流出部32を使用して、ガスヘッドから出ている(ported)。供給ガス及びリターンガス流は、限定されるものではないが、1つ以上のファン、送風器、圧縮ガス供給部、機械的圧縮システム、及び/又は真空ポンプを含む、任意の好適な速度発生構造を使用して発生され得る。供給ガス流及びリターンガス流は、つながっていて、閉循環システムを使用して適合され得るか、又はそれらは、独立したフロー制御によって確立されて、それぞれが個別に制御され得るようにし得る。オプティクスユニットからの入射レーザビーム21は、ガスヘッドの上部にあるアパーチャ24を通ってガス流ヘッドを通過する。入射レーザビームは、粉末ベッドの表面に溶融プール22を生じるように配置される。
【0029】
[0049] 上述の実施形態は、オプティクスユニットに直接結合されたガス流ヘッドを含んで、オプティクスユニット及びガス流ヘッドが、粉末ベッドに対して実質的に同じ速度で動くようにしているが、他の配置構成が好適であり得ることは理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、ガス流ヘッド及びオプティクスユニットは、粉末ベッドを横切って実質的に同じ速度でオプティクスユニット及びガス流ヘッドの双方を走査する共通ガントリーシステム(又は他の好適な構造)に結合され得る。他の実施形態では、オプティクスユニット及びガス流ヘッドは、オプティクスユニット及びガス流ヘッドのそれぞれを造形面に対して動かす別個のそれぞれのガントリーシステム(又は他の好適な構造)を有してもよい。そのような実施形態では、これらの別個のシステムは、粉末ベッドを横切って実質的に同じ速度でガス流ヘッド及びオプティクスユニットが走査されるように、動作され得る。
【0030】
[0050] ここで
図3を参照して、ガスヘッドの一部分、アパーチャ、及び溶融プールをより詳細に説明する。図示の実施形態では、入射レーザビーム40は、ガス流ヘッドアパーチャ41、部分的に囲まれた体積部48を、粉末ベッドの表面43上まで通過する。溶融プール44が、粉末面上に確立され、且つ粒状物質が粉末面から上方に及びそれから離れるように放出される。ガス流プロフィール45が、ガス流ヘッド内の部分的に囲まれた体積部48内で確立される。速度プロフィールの特定の形状及び大きさが、供給ガス46及びリターンガス47の容積流量、並びに囲まれた体積部48の寸法、及び粉末ベッドの表面の上側にわたるオプティクスユニット/ガスヘッドの速度によって、設定される。より大量のガスが、粉末ベッドの表面において、より大きい速度プロフィール及びより急な速度勾配を生じる。ガスヘッドの寸法及び循環ガスの容積流量の双方が、粉末ベッドの表面のいずれの歪みも防止しながら全ての放出粒子を流れに取り込む速度プロフィールを生じるように修正され得る。
【0031】
[0051] 特定の実施形態に依存して、ガス流ヘッド内のガスの流速(例えば、ガス流ヘッドにあるアパーチャに対応する領域を横切る)は、約0.5メートル毎秒~約3メートル毎秒とし得る。例えば、流速は、0.5メートル毎秒~1.5メートル毎秒とし得る。一実施形態では、ガス流ヘッド内でガスが流れる面積は、約8cm2となり得るため、ガス流ヘッドに流入するガスの流量は、約0.5cm3/s~約1.5cm3/sに及び得る。いくつかの実施形態では、ガス流ヘッドからのリターンガスの流量は、ガス流ヘッドに流入する供給ガスの流量の約0.5~約3倍に及び得る。しかしながら、本開示はこの点において限定されないため、供給ガス及び/又はリターンガスの他の流速、ガス流面積、及び/又は流量が好適であり得ることは理解されるべきである。
【0032】
[0052]
図4は、レーザビーム61がガス流ヘッド60のアパーチャ66を通過して、粉末ベッドの表面63上に溶融プール62を形成する、積層造形システムの別の実施形態を示す。ガス流ヘッド60は、ガス流入部70を通る供給ガス流68よりも大量の、ガス流出部72を通るリターンガス流71を含む。この流量差は、外部粉末ベッド体積部から囲まれた体積部67内へ流入する掃気ガス流を誘発する。この掃気流は、周囲掃気流64及びアパーチャ掃気流65によってガス流ヘッドに引き入れられ得る。2つの掃気流の比は、周囲の面積及びアパーチャ66の面積によって決定され得る。この掃気流は、放出粒子及びヒュームがガス流ヘッド内に留まって、外部粉末ベッド体積部へ伝わることができないようにすることを保証するのを支援し得る。一実施形態では、供給ガス流はゼロに設定され得るので、全てのリターンガスは、周囲掃気流及びアパーチャ掃気流から構成される。
【0033】
[0053]
図5に示す別の実施形態では、レーザビーム81が、ガス流ヘッド80のアパーチャ91を通過して、粉末ベッドの表面83に溶融プール82を形成する。この実施形態では、ガス流入部85による供給ガス流86は、ガス流出部88を通るリターンガス流87よりも多くなるように設定され得、それにより、囲まれた体積部84からの周囲排ガス流89及びアパーチャ排ガス流90を生じ得る。これは、安定した動作条件のために追加的な対流冷却が必要とされる場合に、有益とし得る。
【0034】
[0054] いくつかの実施形態では、ガス流ヘッド内の囲まれたガス体積部を可能な限り抑制するように保つために、ガス流ヘッドの上部のアパーチャを可能な限り小さく保つことが望ましいとし得る。レーザビームの走査する動きが、走査式ガルバノメータ取付ミラーアセンブリを使用して少なくとも部分的に発生される状況では、アパーチャは、走査レーザビームを完全に通過できるようにするために、広げられ得る。1つのそのような実施形態を
図6に示す。ガス流ヘッド100は、入射レーザビーム108が、ガルバノメータ(図示せず)によって生成された走査角103にわたって走査されるときに、ビームがガスヘッドを通過して粉末ベッドの表面101上の領域105を照明するようにするのに、十分な大きさであるアパーチャ104を有する。供給ガス流106及びリターンガス流107の体積は、この大きなアパーチャを通る掃気流に適応するように、調整され得る。入射レーザビームを走査するガルバノメータに適応するためのこの拡大アパーチャの形状は、走査のタイプに依存し得る。
【0035】
[0055]
図7は、いくつかの実施形態による、2つの取り得るアパーチャ形状による、ガスヘッドの上面図を示す。一方向におけるガルバノメータの走査戦略では、ガス流ヘッド120は、入射レーザビームの動きの範囲に適応するために、長くて細いスロット121を有する。2つの方向に走査するガルバノメータでは、ガス流ヘッドに必要なアパーチャは、丸いホール131とし得る。
【0036】
[0056] 実施形態に依存して、ガス流ヘッドの位置及び形状は、周囲に異なる流れプロフィールを生じるように調整され得る。上述のように、供給ガス流とリターンガス流が釣り合う場合、正味の周囲掃気又は排気流はない。オプティクスユニット及びガスヘッドが粉末ベッドの全表面の上側にわたって走査されるときに、依然として、ガスヘッドの周りの周囲間隙を通る誘起流があり得る。供給ガス流とリターンガス流が釣り合わない場合、この周囲流の形状、大きさ、及び/又は方向は、供給流量とリターン流量の比、ガスヘッドの周囲の長さ、オプティクスユニットの走査速度、並びに周囲間隙の高さ及び幅に依存する。
【0037】
[0057]
図8は、粉末ベッドの表面143に溶融プール142を形成するためにレーザビーム141が通過するアパーチャ144を含むガス流ヘッド140を含む、一実施形態を示す。図示の実施形態では、ガス流ヘッドは、ガス流ヘッドと造形面との間に、低い高さの周囲間隙147及び細い周囲幅148を含む。供給流145よりも流量の多いリターン流146に起因して正味の周囲掃気流150がある場合、粉末ベッドの表面143とガス流ヘッド側壁151との間の狭い間隙は、大きな速度勾配を生じ得る。同様に、リターン流よりも流量の多い供給流に起因して正味の周囲排気流がある場合、高いガス側壁下の出口流れは、大きな速度勾配を生じ得る。オプティクスユニットの高速の走査速度は、ガス流ヘッドの一方の側でこの速度プロフィールを増加させ、及びガスヘッドの他方の側で速度プロフィールを低下させる働きをし得る。これは、ガス流ヘッド周囲での、粉末ベッドの表面を変形させるか又は乱す可能性を高め得る高い速度プロフィールを回避するのを支援し得る。特定の実施形態に依存して、許容可能な間隙サイズ、オプティクスユニット速度、ガス速度プロフィール、及び掃気/排気流の値は、特定の積層造形加工で用いられる粉末のタイプに依存し得る。例えば、鋼などのより高い密度の材料のより大きな粉末直径は、アルミニウムなどのより低い密度の材料又は小さい粒子粉末直径と比較して、より大きな速度勾配及びより狭い間隙を可能にし得る。いくつかの実施形態では、実質的に釣り合いのとれた供給ガス流及びリターンガス流を使用することはまた、ガスヘッド周囲間隙下の速度勾配を下げるのを助け得る。
【0038】
[0058] ここで
図9を参照すると、粉末ベッドの表面162に溶融プール163を形成するようにレーザビーム161が通過するアパーチャ170を含むガス流ヘッド160を含む、実施形態が示されている。この実施形態では、ガス流ヘッドは、周囲に幅広のリップ172を含む。この幅広の周囲を使用して、ガス流ヘッドの底面と造形面との間の間隙164内の速度プロフィールを制御し得る。オプティクスユニットが方向173に沿って走査している状態で、ガス流ヘッドに流入する正味の掃気流が、供給ガス流168よりも流量の多いリターンガス流169を設定することによって、確立され得る。間隙下のガス速度プロフィールは、周囲の場所に依存し得る。前縁側にある(leading)間隙では、速度プロフィール167は、固体表面におけるゼロ相対速度の境界層条件に起因して、反転し得る。粉末面のガスは、ゼロ速度を有し、且つガス流ヘッド間隙におけるガスは、ガスヘッドの動きと比較して、ゼロ相対速度を有する。これは、間隙の幅内で方向を変える流れプロフィールを生じ得る。例えば、ガス流ヘッドの後縁166でのガス速度プロフィールは、前縁167でのガス速度とは異なる形状を有し得る。間隙の長さ及び間隙の高さの双方は、ガスヘッド周囲全体にわたって好適なガス速度勾配を維持するために調整され得る。いくつかの実施形態では、間隙の高さ及び長さは、ガスヘッド周囲で均一であっても又はそうでなくてもよい。
【0039】
[0059] いくつかの実施形態では、ガス流ヘッドのアパーチャは、オプティクスユニットから入射レーザエネルギー(例えば、1つ以上のレーザビーム)を、全走査位置用のアパーチャを通して透過させるのに十分な形状の開放孔とし得る。或いは、アパーチャ窓は、
図10に示すような光学構成要素によって覆われ得る。この実施形態では、レーザビーム201は、ガス流ヘッド200のアパーチャ206の上側にわたる窓202などの光学カバーを通過して、粉末ベッドの表面203に溶融プール204を形成する。そのような配置構成は、アパーチャを通る掃気ガス流205又は排ガス流を低減させ得る及び/又はなくし得る。光学カバーは、入射レーザの反射及び/又は吸収を最小限にするように選択され得、且つさらに上流の光学構成要素を放出粒子から保護し得る。
【0040】
[0060] いくつかの実施形態では、ガス流ヘッドは、造形面に隣接する下側面の少なくとも一部分に沿ってマスクされ得る。そのような配置構成は、ガス流ヘッド内のガス速度プロフィールの一部又はほとんどを、溶融プールの周りの小さな領域を除いて、粉末面から隔絶させるのを支援し得る。例えば、
図11は、レーザ223がガスヘッド220を通過して、粉末ベッドの表面228に溶融プール229を形成する、実施形態を示す。ガス流ヘッド220の底部にマスク227が提供される。このマスクは、ガス流ヘッド220の下方に向かって延在する部分221に固定され得、且つガス流ヘッドを封止して、ガス流ヘッド内に少なくとも部分的に囲まれた体積部222を提供し得る。このようにして、ガス流ヘッドは、マスクと粉末ベッドの表面228との間に、覆われた体積部230を画成し得る。マスクは、囲まれた体積部と覆われた体積部との間のガス交換を可能にする開放アパーチャ231を含み得る。ガスヘッド232の上方アパーチャは、光学窓224によって覆われても、又は開放したままでもよい。上方アパーチャ及びマスクアパーチャは、入射レーザビーム223が粉末面まで伝搬して溶融プール229を発生させることができるように、整列され得る。場合によっては、供給流225に対して、ガス流ヘッドからのより流量の多いリターン流226を設定することによって、外部造形体積部からガス流ヘッドに流入する正味の掃気ガス流233をもたらし得る。上方アパーチャを封止するように光学窓が配置される場合、この掃気ガス流全体が、マスクアパーチャを通過する必要がある。上方アパーチャが開放したままにされる場合、掃気流は、マスクアパーチャと上方アパーチャとの間で共有され得る。
【0041】
[0061] いくつかの実施形態では、ガス流ヘッドの底面と粉末ベッドとの間の間隙の高さ(例えば、周囲間隙の高さ、又はガス流ヘッドの底部マスク又はリップと粉末ベッドとの間の空間)は、約5mm~約40mm(例えば、約5~20mm)に及び得る。さらに、上述のように、ガス流ヘッド内の1つ又は複数のアパーチャのサイズを最小にすること、例えば、1つ又は複数のアパーチャから流出するガスの流量を最小にすることが望ましいとし得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のアパーチャのサイズは、ガス流ヘッドを通過するレーザビームの最大ビーム幅よりもわずかにのみ大きくなるように選択され得る。例えば、上方アパーチャは、いずれの方向においても、最大ビーム寸法よりも約2~3mm大きいとし得、及び下方アパーチャ(含まれる場合)は、可能な最も幅広のビーム幅よりも約5~10mm幅広とし得る。その代わりに又はそれに加えて、いくつかの実施形態では、1つ又は複数のアパーチャのサイズは、1つ又は複数のアパーチャがガスヘッドの外形寸法よりも実質的に小さくなるように選択され得る。例えば、アパーチャの開放面積は、粉末ベッドの表面上のガスヘッドの投影面積の0.05~約0.5倍とし得る。
【0042】
[0062] いくつかの実施形態では、上方アパーチャ及びマスクアパーチャのサイズは、非常に異なり得る。上方アパーチャは、非常に小さな上方アパーチャ面積を維持しながら、入射レーザビームが通過できるような十分な大きさを有するだけでもよい。例えば、入射レーザビームが0.1mm×0.1mmの面積を有する場合、上方アパーチャは2mm×2mmの寸法を有し得る。別の例では、入射レーザビームは、0.1mm×10mmのビームプロフィールの面積の線状のプロフィールを有し得、及び上方アパーチャは2mm×14mmとし得る。
【0043】
[0063] いくつかの実施形態では、レーザビームは、ガルバノメータを使用して走査され得、及び走査する動きの方向における上方アパーチャのサイズは、走査されるレーザプロフィールが完全に通過できるように、増大され得る。いくつかのそのような実施形態では、マスクアパーチャは上方アパーチャよりも大きくて、掃気ガス流用の空間を提供し、並びに粉末面にある溶融プールからの放出粒子及びヒュームがガスヘッドの囲まれた体積部内へと入り且つガス流プロフィールによって流れに取り込まれて閉じ込められる(entrapment)ことができるようにする窓を提供する。例えば、入射レーザビームの面積が0.1mm×0.1mmである場合、マスクアパーチャの寸法は4mm×10mmとし得る。マスクアパーチャのより長い寸法は、走査されるレーザの動きの方向にある。いくつかの実施形態では、マスクアパーチャの幅寸法及び長さ寸法の双方とも、入射レーザビームプロフィールのサイズよりも数桁大きいとし得るが、依然としてガスヘッドマスク表面のサイズよりも小さい。マスクアパーチャの幅及び長さは、レーザビームプロフィールの幅及び長さの100~10000倍とし得るが、依然として、マスク表面の長さ寸法及び幅寸法の0.05~0.5倍にすぎないとし得る。次に、マスク表面のサイズ(粉末面上のガスヘッドの投影面積に対応し得る)は、粉末ベッドの全表面のサイズの0.05倍~0.12倍とし得る。それゆえ、いくつかの実施形態では、ガスヘッドは、粉末ベッド面積よりも実質的に小さいとし得ることが理解されるべきである。
【0044】
[0064] オプティクスヘッドの走査速度が増加するにつれて、動きの方向におけるマスクアパーチャの長さも、粉末ベッドの表面とガスヘッドアセンブリとの間のより速い相対速度に適応させるために、増加され得る。レーザビームプロフィールに対するマスクアパーチャの位置も、より速い走査速度に適応させるために、シフトされ得る。オプティクスヘッドが両方向に又はより遅い速度で走査されるシステムでは、レーザビームは、マスクアパーチャの中心にされ得る。例えば、前進及び後進速度200mm/秒で走査する、ビームプロフィールが長さ0.1mm×幅10mmのオプティクスヘッドは、ビームの中心がマスクアパーチャの中心にある状態で、長さ20mm×幅14mmのマスクアパーチャを有し得る。主に一方向に高速でオプティクスヘッドが走査されるシステムでは、動きの方向におけるマスクアパーチャの長さは長くされ得、及びレーザビームプロフィールは、ガスアパーチャの一方の側の方へシフトされる。例えば、600mm/秒の前進速度で走査する、ビームプロフィールが長さ0.1mm×幅10mmのオプティクスヘッドは、マスクアパーチャの前縁の10mm内にビームがシフトされた状態で、長さ40mm×幅14mmのマスクアパーチャを有し得る。供給ポートからリターンポートへのガス流の方向はまた、高速走査状況に関する主な走査方向に適合するように選択され得る。これは、ガス流全体内のせん断速度が低下されるため、ガスヘッドの囲まれて覆われた体積部によって、誘発された乱流を低減させ得る。多方向走査の場合には、供給ポートからリターンポートへのガス流は、オプティクスボックスの動きに対して直角の主要な流れを確立するように構成され得る。これは、走査される動きが主要なガス流とは反対であるときに、逆流状況が生じるのを防ぐ。
【0045】
[0065]
図12は、ガスヘッドが粉末ベッドの表面266にわたって動いていないときに、ガス流ヘッド260の一実施形態に考えられるガス速度プロフィールを示す。図示の実施形態では、ガス流ヘッドは、ガス流ヘッドの下方に向かって延在する部分269に取り付けられたマスク268を含む;マスクは、下方アパーチャ261を画成する開口部を有する。ガス流ヘッドは、窓263によって覆われた上方アパーチャ262と、ガス流ヘッドのアパーチャを通過して溶融プール265を形成するレーザビーム264とをさらに含む。供給流271に対してより流量の多いリターン流272をもたらすことによって、マスクと粉末ベッドの表面との間の間隙270を通って移動する必要のある正味の流入掃気流273を生じ得る。掃気ガス速度プロフィール274は、間隙の高さ及び掃気ガス容積流量に依存し得る。少量の正味の正の掃気流入量は、ヒュームが溶融プール領域265から外部造形体積部275へと伝搬するのを防止するのを支援し得る。正味の流入掃気ガスはまた、放出粒子267を流れに取り込んで、それらをガス流ヘッド体積部内の内部速度プロフィール276へと引き入れるのを助け得る。ガス流ヘッド内の速度プロフィールは、マスクと粉末ベッドの表面との間の間隙内の掃気ガス速度プロフィールとは無関係とし得る。いくつかの態様によれば、ガスヘッドの速度プロフィール及び速度勾配は、粉末ベッドの表面の変形のリスクなく、開放底部のあるガスヘッドよりも遥かに高いレベルまで増加させ得る。例えば、マスクアパーチャを横切る速度によって、掃気流に不安定さを誘発し始めるときのみ、ガスヘッド内のガス流は制限される必要がある。内部ガス流ヘッド速度プロフィールにおけるそのような大きな速度勾配は、溶融プールからのヒューム及び放出粒子を流れに取り込むのを助け得、且つさらに非常に重くて大きい放出粒子が流れに取り込まれてガスヘッドに捕捉される。これにより、それらが粉末ベッドの表面に接触して、後続の加工に問題を生じるのを防ぎ得る。
【0046】
[0066]
図13は、粉末ベッドの表面303を横切る方向307に沿ってガス流ヘッドが動いている構成のガス流ヘッド300の別の実施形態を示す。図示の実施形態では、レーザビーム306は、窓305及びガス流ヘッドを通過して、粉末ベッドの表面303に溶融プール304を形成する。供給流308に対してより流量の多いリターン流309に調整することによって、正味の流入掃気流313を生じ得る。ガスヘッド内の高い速度プロフィール310は、大供給流を提供することによって、生成され得る。前縁でのマスク302と粉末ベッドの表面との間のガス速度プロフィール311は、粉末ベッドの表面に対するガスヘッドの動きに起因して、反転したプロフィールを示し得る。後縁でのマスクと粉末ベッドの表面との間のガス速度プロフィール312は、非反転プロフィールを示し得る。十分な正味の掃気流がある場合、溶融プール304からのいずれのヒューム及び放出粒子もガス流ヘッドによって流れに取り込まれて捕らえられ得る。マスクアパーチャのサイズ、及び粉末ベッドの表面の上方のマスクの高さは双方とも、所与の材料及び走査条件の設定に関して粒子及びヒュームの流れへの取り込みを最適にするように調整され得る。より高速のガス速度からの乱れに対する抵抗性が高い非常に重い粉末(例えば、高材料密度)では、より高速の正味の掃気流となる、マスクと粉末ベッドの表面との間のより狭い間隙を可能とし得る。より軽量な粉末(例えば、低材料密度)では、より低速の正味の掃気流となる、粉末ベッドの表面に対してより大きなマスクが、ガスヘッドアセンブリ下で、粉末面の変形を減少させるために必要とし得る。いくつかの実施形態では、マスクアパーチャは、溶融プールの周りで、前縁側よりも後縁側で大きなエッジオフセットがあり、非対称となり、放出粒子及びヒュームの取り込みを増大させ得る。さらに、マスクアパーチャは、ガス流ヘッド中心線に対してオフセットして配置されて、掃気流量を一方の側では増加させ、且つ他方の側では低減させる。ガス流ヘッドエッジとアパーチャとの間のオフセットを長くすることによって、その領域での掃気流量を低減させ得る一方で、ガスヘッドエッジからのオフセットを短くすることによって、その領域での掃気流量を多くする。このようにして、ガス流ヘッドでの大きな速度勾配は、全てのヒューム及び放出粒子の取り込みを保証し得る一方で、粉末ベッドの表面が経験する速度プロフィール及び勾配を減少させる。
【0047】
[0067] 場合によっては、高供給量を使用してガス流ヘッド内に非常に大きな速度勾配を生じることは、より大きなガス容積流量を必要とする。この高ガス流量は、より大きなファン又は送風器、より大きな供給及びリターン配管、及び/又は動作するためにより多くのエネルギーを必要とし得る。ここで
図14を参照して、ガス流ヘッド内に大きな速度勾配を生じ得る一方で総ガス容積流量を減少させる積層造形システムの一実施形態を、詳細に説明する。ガス流ヘッド320は、開放マスクアパーチャ327(例えば、ガス流ヘッドの下面のアパーチャ)、及び窓などの光学構成要素によって覆われている上方アパーチャ325を備えるマスク321を含む。図示の実施形態では、ガス流ヘッドは、ガス流ヘッドの囲まれた体積部333内でドライブシャフト331に装着されたディスク332として形成されたガス速度発生器を含む。ディスクは、ガス流ヘッド内で回転され得、及びディスクのエッジは、粉末ベッドの表面322に溶融プール323を形成するための、ガス流ヘッドを通したレーザビーム324の透過に干渉しないように位置決めされる。供給ガスは、通常の供給送り込み部328を通して及び/又はシャフトが中空である場合ならば、ドライブシャフト329を通して運ばれ得る。リターンガス流330は、総供給量からは独立して設定されて、いずれの所望の掃気又は排気流も確立し得る。ディスクは、任意の好適な速度で回転されて、ガス流ヘッド内に所望のガス速度をもたらし得る。ディスクの回転速度が増加するにつれて、ガス流ヘッド内のガスは、回転するディスクの動きに従って流れに取り込まれ得る。この取り込みは、ディスクの周り(上及び下)でのガスに対して並びにディスクの外縁の周りのガスに対して接線方向に、ガス速度プロフィールを生じ得る。ディスクのエッジの周りのこの取り込まれた接線方向の速度は、マスクアパーチャにわたって大きな速度勾配を生じ得、これは、溶融プール323からの放出粒子及びヒュームを流れに取り込むのを助ける。マスクアパーチャにわたる正味の実効ガス速度は、ディスク回転速度並びに供給及びリターンガスの容積流量によって、設定され得る。
【0048】
[0068]
図15は、回転ディスク341及びアパーチャ343のあるガスヘッド340の上面図を示す。ディスクの回転運動342によって、アパーチャ空間において、接線方向の速度プロフィール344で、ガスを流れに取り込む。体積供給流347及びリターン流348は、ガス流ヘッドの断面積と一緒に、アパーチャ空間における平均バルク速度プロフィール345を規定し得る。接線方向及びバルク速度の用語は、アパーチャ空間にわたる正味の実効ガス速度プロフィール346を定義するために使用され得る。低バルク速度並びに少ない体積供給及びリターンガス流量でも、回転ディスクは、アパーチャ空間にわたって高い速度プロフィール及び大きな勾配を生成し、放出粒子及びヒュームを流れに取り込むことができるようにし得る。
【0049】
[0069]
図16に示すように、ガスヘッド360は、入射レーザビーム364を透過するように構成された材料で作製される回転ディスク370を含み得る。この実施形態では、ディスクは、マスク361の上方アパーチャ371と下方マスクアパーチャ372との間の空間370に延在し、及び入射レーザビーム364は、回転ディスクを通過して、粉末ベッド362に溶融プール363を形成する。これにより、上方アパーチャを覆う光学構成要素368と溶融プール363との間に追加的なレベルの保護を加え得る。ディスクに近い速度勾配は、非常に大きいとし得、且つ放出粒子が回転ディスクに接触するいずれのリスクも著しく低下させ得る。これにより、回転ディスクを清浄に及び汚染物質のない状態に保つのを支援し得、且つさらに、回転ディスクの自然な対流冷却をもたらし得る。非常に高い透過型光学構成要素でも、透過されたレーザエネルギーはある程度吸収され得るので、高い入射レーザエネルギーレベルでは、光学構成要素は過熱され得る。ディスクの回転は、ディスクを冷却するのを助け、且つ局所的な過熱を防止し得る。透過型回転ディスクの使用はまた、上方アパーチャを覆う光学構成要素をなくすのを可能にする一方で、依然として、溶融プールとオプティクスユニット内の上流光学構成要素との間に固体保護バリアを維持できるとし得る。図示の実施形態では、ディスク370は、アクスル369の周りで回転可能であり、及び上述の実施形態と同様に、ガス流ヘッド360は、ガス流入部365及びガス流出部367を含む。
【0050】
[0070]
図17は、マスク401、並びに粉末ベッド402に溶融プール403を形成するためにレーザビーム404の透過を可能にするように両方開放したままとし得る、それぞれ整列された上方アパーチャ及びマスクアパーチャ407及び406がある、ガス流ヘッド400を含む、別の実施形態を示す。図示の実施形態では、ガス流ヘッド内の体積部は、3つの異なる体積部に分けられる。具体的には、バルククロスフロー体積部405が、2つのアパーチャ間に設けられ、且つクロスフロー構成要素、並びにまた下方アパーチャからの正味の掃気流408及び上方アパーチャからの正味の掃気流409を有し得る。供給流410が、整流/流れ案内構造413などのフローガイドによってバルククロスフロー体積部に接続される体積部412に送り込まれる。このフロー構造は、ハニカム配列、整列された菅列、これらの組み合わせの多孔質構造などの任意の好適な形態を取り得る。このフロー構造は、供給流をバルククロスフロー体積部内の均一なクロスフロー構造内へと分配する働きをし得る。これは、バルククロスフロー内の乱流の程度を低下させるのを助け、且つ掃気流の取り込みをより予測可能にするのを支援し得る。リターン流のためのフローガイド415、及びリターンフロー構造の下流に別個のリターン流体積部414があってもよい。これはまた、バルククロスフロー体積部内の速度プロフィールをより均一にする働きをし得る。フロー構造の形状、設計及びレイアウトは、ガス流ヘッド、マスク、アパーチャの形状及び/又はフローの体積に依存し得る。
【0051】
[0071]
図17はまた、かなりのヒュームを生じ得る粉末ベッド材料を取り扱うのに好適な実施形態を示す。ヒューム内容物の非常に小さな粒子サイズ及び高表面積に起因して、大きな速度勾配でも、粒子の一部は、回転ディスクの表面などの動く表面を含む、全表面に堆積し得る。このため、両アパーチャを開放した状態に保つこと、及び供給流よりも高いリターン流を設定することによって掃気ガスが両アパーチャを流れることができるようにすることが、好都合とし得る。アパーチャが開放した状態では、ヒュームは、いずれの光学構成要素にも堆積しないかもしれず、及び1つ又は複数のレーザビームは、オプティクスユニットと粉末ベッドの表面との間に遮られない経路をとらえ得る。ガス流ヘッド及びマスクは、ヒューム及び/又は放出粒子のかなりの部分がガス流ヘッドによって確実に捕らえられるようにする十分なガス流によって、十分に大きく作製され得る。これは、ヒュームが積層造形システム内の内部構造に、又は他の光学構成要素に堆積するのを防止し得る。リターンガス流は、1つ以上のフィルターを通過して、システムに戻される前に、ヒューム及び/又は取り込まれた粒子を除去するのを支援し得る。
【0052】
[0072] 上記に加えて、制御された供給流、リターン流及び掃気流によるガス流ヘッドの使用に関する別の利点は、溶融プール領域の周りに一貫性のある局所的な対流熱伝達が生じ得ることである。大きな粉末ベッドの表面がそれらの領域にわたって不均一な流れを有する場合、造形面の異なる領域における対流熱特性が異なり得る。より多いガス流及びより大きな速度勾配を有する領域は、より少ないガス流及びより小さな速度勾配の領域よりも、大きな対流係数を有し得る。粉末ベッドの表面にわたって流れるガスが、溶融プールの凝固後の領域に生じ得る粉末ベッドの表面よりも冷たい場合、この正味の対流熱伝達は、造形面を冷やす働きをする。ガス流が造形面にわたって異なる場合、いくつかの領域は、他の領域よりも迅速に冷え得る。三次元印刷部分の異なる点における異なる冷却速度は、最終部分を変形させ得る異なる熱応力を誘発し得る。一部の例では、造形面の異なる領域にわたる対流冷却は十分に異なり、造形面のいくつかの領域は、選択的レーザ溶融には全く好適ではあり得ず、及び造形面の有効なサイズを小さくする必要がある。
【0053】
[0073] ガス流ヘッドによって捕らえられる、流れに取り込まれる粒子は、流れるガスによって簡単に流れに取り込まれる非常に小さい微粒子から、特徴的な粉末ベッド材料サイズのサイズの何倍もの粒子まで、広範囲のサイズを網羅し得る。これらのより大きく、より重い粒子は、ガスヘッドによって流れに取り込まれて捕らえられ得るが、リターンガス流によってフィルターユニットまで運ばれるには重すぎ得る。これらのより大きく、より重い粒子は、結局、ガスヘッドの底部にマスクを使用するシステム内の、囲まれたガスヘッド体積部内に捕捉され得る。小さなドレーントラップがマスク表面に追加され得、及び十分な量のより大きな粒子が、囲まれたガスヘッド体積部に蓄積されると、ガスヘッドは、造形体積部の表面外に位置決めされ得、及びドレーントラップは開放して、粉末ベッドの表面に影響を及ぼさないように、システムからより大きな粒子を除去し得る。
【0054】
[0074] いくつかの態様によれば、制御された供給ガス流、リターンガス流及び掃気ガス流によるガス流ヘッドの使用は、溶融プール領域の周りに均一な対流熱伝達条件を生じ得る。1つ又は複数のレーザビームが造形面にわたって走査される場合、ガス流ヘッドは、一貫し且つ均一なガス速度プロフィールを生じ、放出粒子及びヒュームを流れに取り込み得る。このガス流及び速度プロフィールも、一貫し且つ均一な対流熱伝達特徴を生じ得る。造形面全体にわたる均一な冷却は、より均一な部分を生じるのを支援し得、且つ造形面全体をいつでも十分に利用できるようにし得る。
【0055】
[0075] いくつかの実施形態では、造形面にわたるオプティクスヘッドの走査方向は、1つ又は2つの主な方向における前後の走査に限定され得る。例えば、2つの方向の場合、これら方向は、互いに実質的に直交し得る。いくつかの態様によれば、そのような実施形態では、ガス流ヘッドは、ガス流ヘッドの底部マスクと造形面との間の間隙に、1つ以上のフロー制限器及びフローガイドを含み得る。上述の通り、造形体積部からガス流ヘッド内への掃気ガス流は、溶融プールによって生じた粒子及びヒュームを流れに取り込むために、並びにこれらの粒子が造形面に落ちる発生率を低下させるために使用され得、且つ主走査方向の掃気ガス流が増加するにつれて、これらの粒子を捕らえる効力が増大し得る。本発明人らは、ガス流ヘッドの前側から及びガス流ヘッドの後ろ側から(走査方向に関して)、造形体積部からマスクアパーチャ内に流れるガスは、一般に、これらの粒子を捕らえるのに最も効果的である一方、アパーチャの側からの流れは、あまり効果的ではないことを理解した。従って、単一の主要な方向において走査方向が前後方向であるいくつかの実施形態では、ガス流ヘッドは、主要な走査方向に装着されたバッフルプレートを含み得る。これらのバッフルプレートの投影面積は、走査方向においては小さくてもよく、及びプレートの端部は、粉末ベッドの表面の近くに位置決めされ得、プレートが、全く有意義な流れへの取り込みガス効果を生じないようにするか、又は粉末面の変位を引き起こさないようにする。バッフルプレートと粉末ベッドの表面との間の狭い間隙は、ガス流ヘッドの複数の側面からの掃気ガス流をかなり低下させ得、且つ主要なガス流が、走査方向に対してガスヘッドの前及び後ろを確実に通るようにすることを支援し得、これは、粒子及びヒュームの取り込みを高め得る。
【0056】
[0076]
図18~20は、造形面502に対して可動であるガス流ヘッド502の一実施形態を示す。上述の実施形態と同様に、ガス流ヘッドは、レーザエネルギーを、ガス流ヘッドを通って造形面まで透過できるようにするアパーチャ506、並びにガス入口508及びガス出口510を含む。図示の実施形態では、ガス流ヘッド504は、主要走査方向512に沿って造形面502に沿って可動である。ガス流ヘッドは、造形面の方へ下方に延在し且つ主要走査方向に対して実質的に平行な方向に沿って延在するバッフルプレート514をさらに含む。
図19は、主要走査方向512に対して平行なガス流ヘッド504の方向の側面の断面図を示す。この図面に示すように、バッフル514の底部と造形面との間には狭い間隙516が形成される。
図20は、介在物からバッフルプレート514まで生じるガス流を示す。特に、ガス流ヘッド504が、主要走査方向512に沿って造形面502を横切って走査される場合、それぞれガス流ヘッドの後ろ及び前までのガス流518及び520は、実質的に制限されなくてもよいが、バッフルプレート514は、ガス流ヘッドの複数の側面へのガス流522を制限し得る。
【0057】
[0077] 特定の実施形態に依存して、マスクプレートと造形面との間の間隙が、バッフルプレートの底部と造形面との間の間隙よりも大きいとし得る。例えば、造形面とマスクプレートの底部との間の間隙は、約5mm~約30mm(例えば、約8~15mm)とし得る。造形面とバッフルプレートの底部との間の間隙は、約0.2mm~約4mm(例えば、約1~3mm)とし得る。バッフルプレートの薄い断面に起因して、プレートの周り及びバッフルプレートの底部と造形面との間の取り込まれた流れは最小限に保たれ、且つさらには、狭い間隙は、粉末面に乱れを生じない。
【0058】
[0078] いくつかの実施形態では、バッフルプレートはアクチュエータに装着され得、バッフルプレートが選択的に上げ下げされ得るようにする。例えば、オプティクスユニット及びガス流ヘッドが主に2つの直交する走査方向に沿って走査される実施形態では、2組の作動されたバッフルプレートが、所与の流れ方向に関する適切なバッフルプレートを上げ下げできるアクチュエータに装着され得る。
図21は、ガス流ヘッドが異なる方向に沿って走査されるときに、異なる方向に沿ってガス流ヘッド内へ流入するガス流を選択的に制御するために、ガス流ヘッドに装着され得る、作動されたバッフルプレートの例示的な実施形態を示す;明確にするために、ガス流ヘッドは
図21には示されていない。図示の実施形態は、2組のバッフルプレート514a及び514bを含み、各組のバッフルプレートは、伸長位置と引込み位置との間で選択的に可動である。例えば、ガス流ヘッドが第1の走査方向514aに沿って走査されるとき、第1の組のバッフルプレート514aは引っ込められ得(すなわち、造形面から離れるように上げられる)、及び第2の組のバッフルプレート514bは伸長され得る(すなわち、造形面の方へ下げられる)。同様に、ガス流ヘッドが、第2の走査方向512bに沿って走査されるとき、第1の組のバッフルプレート514aは伸長され得、及び第2の組のバッフルプレート514bは引っ込められ得る。図示の通り、各バッフルプレート514は、関連のバッフルプレートの伸長及び引っ込みを制御するように構成され得るアクチュエータ530に結合される。特定の実施形態に依存して、本開示はこの点に関して限定されないため、アクチュエータ530は、空気圧、電気、液圧、又は任意の他の好適なタイプのアクチュエータを含み得る。
【0059】
本教示を様々な実施形態及び例と併せて説明したが、本教示はそのような実施形態又は例に限定されないものとする。それどころか、当業者によって理解されるように、本教示は、様々な代替例、修正例、及び等価物を含む。従って、上述の説明及び図面は例示にすぎない。