(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】自動車のヘッドライトのための光ビームの分布を修正するための光学素子
(51)【国際特許分類】
F21S 41/37 20180101AFI20231206BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20231206BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20231206BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20231206BHJP
【FI】
F21S41/37
G02B5/08 A
G02B5/08 C
G02B5/10 C
F21W102:13
(21)【出願番号】P 2021522153
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 FR2019051668
(87)【国際公開番号】W WO2020008154
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519351406
【氏名又は名称】アーエムエル システムス
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】コウロウ ハサン
(72)【発明者】
【氏名】ノローニャ アンダーソン
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-228715(JP,A)
【文献】特開2008-277237(JP,A)
【文献】特開昭49-003840(JP,A)
【文献】特開2018-016863(JP,A)
【文献】特開2002-093217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/37
G02B 5/08
G02B 5/10
F21W 102/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のヘッドライトのための光ビームの分布を修正するように意図されている可動光学素子であって、前記光ビームを反射することができる反射コーティング(4)で被覆される機能面(3)を有する樹脂本体(2)を含み、前記反射コーティング(4)は、
- 前記機能面(3)を少なくとも部分的に被覆する銅層(5)と、
- 前記銅層(5)を被覆するニッケル層(6)と、
- 前記ニッケル層(6)を被覆するクロム層(7)と、
を含
み、
更に、前記機能面(3)と前記銅層(5)との間に、ニッケルと銅との混合物を含むめっき層を含むことを特徴とする可動光学素子。
【請求項2】
更に、前記機能面(3)と前記銅層(5)との間に、ニッケルめっき層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の可動光学素子。
【請求項3】
前記ニッケル層(6)は、
- 前記銅層(5)を被覆する半光沢ニッケル下層(9)と、
- 前記半光沢ニッケル下層(9)を被覆する高硫黄ニッケル下層(10)と、
- 前記高硫黄ニッケル下層(10)を被覆する光沢ニッケル下層(11)と、
- 前記光沢ニッケル下層(11)を被覆するつや消しニッケル下層(12)と、
を含む、
ことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の可動光学素子。
【請求項4】
前記機能面(3)は、半楕円形状を有することを特徴とする、請求項1乃至
3のいずれかに記載の可動光学素子。
【請求項5】
前記機能面(3)は、平面形状を有することを特徴とする、請求項1乃至
3のいずれかに記載の可動光学素子。
【請求項6】
自動車のためのヘッドライトであって、前記ヘッドライトは、少なくとも1つのリフレクタ(14)と、少なくとも1つの光ビームを照射することができる少なくとも1つの光源(15)とを備え、前記リフレクタ(14)は、楕円体の対称面(16)の上方に延在する半楕円体の一部の形状を有し、前記光源(15)は、前記楕円体の対称軸上に配置され、
更に、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の可動光学素子(1)を備え、前記可動光学素子(1)は、前記光源(15)によって照射され前記リフレクタ(14)によって反射される前記光ビーム(17)の分布を修正するために移動可能であるように設計されている、
ことを特徴とするヘッドライト。
【請求項7】
前記光源(15)は、前記楕円体の実質的に第1の焦点に配設され、前記リフレクタ(14)は、前記1つ又は複数の光ビームを、前記楕円体の第2の焦点に向けて反射することができ、前記可動光学素子(1)の前記機能面(3)は、前記第2の焦点に配設されることを特徴とする、請求項
6に記載のヘッドライト。
【請求項8】
少なくとも前記可動光学素子(1)の第1の位置と前記可動光学素子(1)の第2の位置との間で前記可動光学素子(1)の位置を変更するように構成される駆動モジュール(26)を備え、前記可動光学素子(1)の前記第1の位置は、前記ヘッドライト(13)の出力においてビームをロービーム状に形成することを可能にし、前記可動光学素子(1)の前記第2の位置は、前記ヘッドライト(13)の出力においてビームをハイビーム状に形成することを可能にすることを特徴とする、請求項
6又は
7のいずれかに記載のヘッドライト。
【請求項9】
請求項1乃至
5のいずれかに記載の、光ビームの分布を修正するように意図されている可動光学素子(1)を製造するための方法であって、以下のステップ:
- 機能面(3)を有する樹脂本体(2)を形成するステップと、
- 前記機能面(3)の少なくとも一部を銅層(5)で被覆する第1のステップと、
- 前記銅層(5)をニッケル層(6)で被覆する第2のステップと、
- 前記ニッケル層(6)をクロム層(7)で被覆する第3のステップと、
を含
み、
更に、前記第1の被覆ステップの前に、ニッケルと銅との混合物を含むめっきで被覆するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
更に、前記第1の被覆ステップの前に、ニッケルめっきを施すステップを含むことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のステップは、
- 前記銅層(5)に半光沢ニッケル下層(9)を施す第1のサブステップと、
- 前記半光沢ニッケル下層(9)に高硫黄ニッケル下層(10)を施す第2のサブステップと、
- 前記高硫黄ニッケル下層(10)上に光沢ニッケル下層(11)を施す第3のサブステップと、
- 前記光沢ニッケル下層(11)につや消しニッケル下層(12)を施す第4のサブステップと、
を含む、
ことを特徴とする、請求項
9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のための機器、特にこれらの自動車のためのヘッドライトの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドライトは、一般に、楕円形のリフレクタを備え、リフレクタには、光源と、光ビームの隠蔽の様々な段階を可能にする遮断バーと、道路上で生じる光ビームを拡散する光学レンズとが配置されている。
【0003】
遮断バーは、アクチュエータによって電気的に作動されて、コマンドで少なくとも2つの角度位置の間で移動して、これらの角度位置において、遮断バーは、光ビームを多かれ少なかれ覆い隠すようになっている。これによって、ヘッドライトの範囲を、例えば、すれ違いビームヘッドライトの範囲(ロービーム位置として知られる)に限定して、反対方向に走行する運転者の目をくらまさないようにしたり、又は遮蔽がない主ビームヘッドライトの範囲(いわゆるハイビーム位置)に限定することができる。この技術は、ハロゲン又はキセノンヘッドライトなどのハイパワー光源を備えるヘッドライトと共に、一般的に用いられ、このようなヘッドライトにとって、バーによる光束の遮断による光度の損失は、実際に不利益ではない。
【0004】
自動車のヘッドライトの技術は、現在、コストの低減及び運用寿命の延長のために、LEDとして知られる発光ダイオードからなる光源を用いる傾向がある。他方で、これらの装置によって照射される光度は、依然として、当分の間、限定されたままであり、それを最大限に利用する必要がある。したがって、遮蔽部材(ロービーム位置では、照射された光束の実質的に半分を吸収する)なしで済ませることが望ましい。
【0005】
特許文献1は、移動反射面の使用を提案している。この反射面は、その移動性のおかげで、光ビームの方向を向け直して、いかなる遮蔽もなく、したがって照射される光ビームの出力の一部を失うことなく、所望通りにハイビーム又はロービームを形成することを可能にする。
【0006】
しかしながら、この反射面は、外部放射線、特に日射に曝される。したがって、反射面は、反射面上への外部放射線の集束の結果として、加熱する可能性がある。この反射面は、プラスチック支持体によって支えられる場合があり、したがって、反射面のレベルで加熱することによって、支持体が損傷する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐熱性光学素子を提供することによって、これらの欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、自動車のヘッドライトのための光ビームの分布を修正するように意図されている光学素子に関する。
【0010】
本発明によれば、前記光学素子は、前記光ビームを反射することができる反射コーティングで被覆される機能面を有する樹脂本体を含み、前記反射コーティングは、
- 少なくとも前記機能面を被覆する銅層と、
- 前記銅層を被覆するニッケル層と、
- 前記ニッケル層を被覆するクロム層と、
を含む。
【0011】
したがって、機能面上で発生する熱は、銅層によって放散することができる。銅層は、熱放散が、光学素子に対して構造的完全性及びエージング効果を可能にするためのものである。機能面の寸法は、プラスチック射出成形によって容易に複製することができるので、樹脂本体は樹脂で成形される。樹脂本体は、特定の形状設計が必要な場合、金属射出成形と比較して、容易に特定の形状に形成される。
【0012】
一実施形態によれば、前記光学素子は、更に、前記機能面と前記銅層との間に、ニッケルめっき層を含む。本体が樹脂本体であるので、ニッケルめっき層は、樹脂本体上に直接めっきすることができる。
一変形例によれば、前記光学素子は、前記機能面と前記銅層との間に、ニッケルと銅との混合物を含むめっき層を含む。本体が樹脂本体であるので、ニッケルと銅との混合物を含むめっき層は、樹脂本体上に直接めっきすることができる。
【0013】
めっき層は、反射コーティングと樹脂本体との良好な接着を可能にする。
【0014】
別の実施形態によれば、前記ニッケル層は、
- 前記銅層を被覆する半光沢ニッケル下層と、
- 前記半光沢ニッケル下層を被覆する高硫黄ニッケル下層と、
- 前記高硫黄ニッケル下層を被覆する光沢ニッケル下層と、
- 前記光沢ニッケル下層を被覆するつや消しニッケル下層と、
を含む。
ニッケル層は、異なるテクスチャ及び組成仕様を有する4つの異なる種類のNiベースの層を含む。この多層ニッケルめっきは、多層反射層の機能及び信頼性のために、耐食性、機械的保護、熱サイクル応力及び接着の厳しい要求に対応する。
【0015】
第1の実施形態によれば、前記機能面は、半楕円形状を有する。
【0016】
第2の実施形態によれば、前記機能面は、平面形状を有する。
【0017】
本発明は、また、自動車のためのヘッドライトに関し、前記ヘッドライトは、少なくとも1つのリフレクタと、少なくとも1つの光ビームを照射することができる少なくとも1つの光源とを備え、前記リフレクタは、楕円体の対称面の上方に延在する半楕円体の一部の形状を有し、前記光源は、前記楕円体の対称軸上に配置される。
【0018】
本発明によれば、前記ヘッドライトは、更に、上記の光学素子を備え、前記光学素子は、前記光源によって照射され前記リフレクタによって反射される前記光ビームの分布を修正するために移動可能であるように設計されている。
【0019】
また、前記光源は、前記楕円体の実質的に第1の焦点に配設され、前記リフレクタは、前記1つ又は複数の光ビームを、前記楕円体の第2の焦点に向けて反射することができ、前記光学素子の前記機能面は、前記第2の焦点に配設される。光学素子は、光源が楕円体の第1の焦点に配置されるときにリフレクタから反射される光を最大にする楕円体の第2の焦点に配置される。
【0020】
更に、前記ヘッドライトは、少なくとも前記光学素子の第1の位置と前記光学素子の第2の位置との間で前記光学素子の位置を変更するように構成される駆動モジュールを備え、前記光学素子の前記第1の位置は、前記ヘッドライトの出力においてビームをすれ違いビーム状に形成することを可能にし、前記光学素子の前記第2の位置は、前記ヘッドライトの出力においてビームをハイビーム状に形成することを可能にする。
【0021】
本発明は、また、上記の光ビームの分布を修正するように意図されている光学素子を製造するための方法に関する。
【0022】
本発明によれば、前記方法は、以下のステップ:
- 機能面を有する樹脂本体を形成するステップと、
- 前記機能面の少なくとも一部を銅層で被覆する第1のステップと、
- 前記銅層をニッケル層で被覆する第2のステップと、
- 前記ニッケル層をクロム層で被覆する第3のステップと、
を含む。
【0023】
一実施形態によれば、前記方法は、更に、前記第1の被覆ステップの前に、ニッケルめっきを施すステップを含む。本体が樹脂本体であるので、ニッケルめっき層は、樹脂本体上に直接めっきすることができる。
【0024】
一変形例によれば、前記方法は、更に、前記第1の被覆ステップの前に、ニッケルと銅との混合物を含むめっきで被覆するステップを含む。本体が樹脂本体であるので、ニッケルと銅との混合物を含むめっき層は、樹脂本体上に直接めっきすることができる。
【0025】
別の実施形態によれば、前記第2の被覆ステップは、
- 前記銅層に半光沢ニッケル下層を施す第1のサブステップと、
- 前記半光沢ニッケル下層に高硫黄ニッケル下層を施す第2のサブステップと、
- 前記高硫黄ニッケル下層に光沢ニッケル下層を施す第3のサブステップと、
- 前記光沢ニッケル下層につや消しニッケル下層を施す第4のサブステップと、
を含む。
ニッケル層は、異なるテクスチャ及び組成仕様を有する4つの異なる種類のNiベースの層を含む。この多層ニッケルめっきは、多層反射層の機能及び信頼性のために、耐食性、機械的保護、熱サイクル応力及び接着の厳しい要求に対応する。
【0026】
添付図面を参照して説明を読むと、本発明は、その特徴及び利点と共に、より明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態による自動車のためのヘッドライトの側面図である。
【
図3】一実施形態による本体上の反射コーティングの断面を示す図である。
【
図4】別の実施形態による本体上の反射コーティングの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
【0029】
ヘッドライトは、少なくとも1つのリフレクタ14と、少なくとも1つの光ビーム17を照射することができる少なくとも1つの光源15とを備える。
【0030】
以下の説明では、「光ビーム(light beam)」という用語は、単数形で使用する。しかしながら、この用語は、複数形の「光ビーム(light beams)」を意味することもできることは理解されるであろう。
【0031】
リフレクタ14は、楕円体の対称面16の上方に延在する半楕円体の一部の形状を有する。光源15は、楕円体の対称軸上に配置される。光源は、光源によって照射される光ビームの全てがリフレクタによって反射されるように、2πステラジアンの立体角で照射する少なくとも1つのLEDダイオードを含むことができる。
【0032】
ヘッドライト13は、更に、光源15によって照射されリフレクタ14によって反射される光ビーム17の分布を修正するための可動光学素子1を備える。
【0033】
有利なことに、光源15は、楕円体の実質的に第1の焦点に配設される。リフレクタ14は、光ビーム17を、楕円体の第2の焦点に向けて反射することができる。
【0034】
ヘッドライトは、光ビーム17がリフレクタ14で反射されて、光学素子1によって遮蔽及び/又は反射された後、光ビーム17の経路に配置されるレンズ18を含むこともできる。レンズ18は、好ましくは、収束レンズである。
【0035】
有利なことに、ヘッドライト13は、少なくとも光学素子1の第1の位置と光学素子1の第2の位置との間で光学素子1の位置を変更するように構成される駆動モジュール26を備える。光学素子1の第1の位置は、ヘッドライト13の出力においてビームをロービームライト状に形成することを可能にする。光学素子1の第2の位置は、ヘッドライト13の出力においてビームをハイビームライト状に形成することを可能にする。
【0036】
図2に、光ビームの分布を修正するように意図されている光学素子1を示す。
【0037】
光学素子1は、光ビームを反射することができる反射コーティング4で被覆される機能面3を有する樹脂本体2を含む。機能面の寸法は、プラスチック射出成形によって容易に複製することができるので、樹脂本体2は樹脂で成形される。樹脂本体2は、特定の形状設計が必要な場合、金属射出成形と比較して、容易に特定の形状に形成される。
【0038】
非限定的に、樹脂は、ガラス繊維で強化されたポリフタルアミド(PPA)(PPA GF 25~40%)とすることができる。この樹脂は、優れた熱特性及び高い機械的強度を有する。この樹脂は、また、耐疲労性である。
【0039】
好ましくは、樹脂は、強化PPA(PPA MR 30%)とすることができる。この樹脂は、優れた熱特性、良好な機械的強度、及び非常に良好な寸法安定性を有する。PPA MR 30%は、その寸法安定性にとって好ましい。結局、連続的なコーティングは、外観の欠陥を増大させる傾向がある。
【0040】
有利なことに、光学素子1の機能面3は、楕円体の実質的に第2の焦点に配設される。光学素子1は、光源が楕円体の第1の焦点に配置されるときにリフレクタ14から反射される光を最大にする楕円体の第2の焦点に配置される。
【0041】
機能面3は、半楕円形状又は平面形状を有することができる。
【0042】
機能面3の半楕円形状は、楕円体の焦点面の外側でレンズ18と焦点面との間に位置する凹状の半楕円形状に対応して、光源15の反射が、すれ違いビーム上の追加のやわらかな光の分布を実現して、垂直の交通標識の視認性を向上させるようにすることができる。
【0043】
反射コーティング4は、
- 機能面3を少なくとも部分的に被覆する銅層5と、
- 銅層5を被覆するニッケル層6と、
- ニッケル層6を被覆するクロム層7と、
を含む(
図3)。
【0044】
銅層5は、熱伝導層に相当する。銅層5は、機能面3上で外部放射線19によって発生する熱を放散する。銅層5は、また、良好な耐熱性及び耐温度変化性を有する。銅は、樹脂本体2及びニッケル層6の材料との良好な接着を示す。銅層5は、また、反射コーティング4に良好な弾性を付与する。
【0045】
ヘッドライト13が収束レンズ18を含む場合、機能面3上への外部放射線19の収束によって発生する機能面3の熱は、銅層5によって放散することができる。したがって、熱は、外部放射線19が収束する場所に集中しない。これによって、樹脂本体2の破壊を防ぐ。
【0046】
非限定的に、銅層5は、15μm~25μm、好ましくは20μmの厚さを有する。
【0047】
ニッケル層6は、反射コーティング4の腐食に対して耐性があるようにすることを可能にする。ニッケル層6は、また、良好な耐候性を示す。
【0048】
クロム層7は、明るさと共に硬さを、反射コーティング4に付与することを可能にする。
【0049】
非限定的に、クロム層は、0.1μm~1μm、好ましくは0.25μmの厚さを有する。
【0050】
一実施形態によれば、反射コーティングは、更に、機能面3と銅層5との間に、めっき層8を含む。
【0051】
めっき層8は、ニッケルから形成されるか又はニッケルと銅との混合物を含むことができる。
【0052】
非限定的に、めっき層は、銅を50%~70%、ニッケルを30%~50%含む。好ましくは、めっき層は、銅を約60%、ニッケルを40%含む。
【0053】
めっき層8は、銅層5と樹脂本体2との接着を向上させる。
【0054】
非限定的に、めっき層は、0.5μm~1.5μm、好ましくは1μmの厚さを有する。
【0055】
別の実施形態(
図4)によれば、ニッケル層6は、
- 銅層5を被覆する半光沢ニッケル下層9と、
- 半光沢ニッケル下層9を被覆する高硫黄ニッケル下層10と、
- 高硫黄ニッケル下層10を被覆する光沢ニッケル下層11と、
- 光沢ニッケル下層11を被覆するつや消しニッケル下層12と、
を含む。
【0056】
半光沢ニッケル下層9は、銅層5とニッケル層6との良好な相互接着を提供する。半光沢ニッケル下層9は、また、反射コーティング4に、良好な耐食性を付与する。
【0057】
非限定的に、半光沢ニッケル下層9は、0.002~0.005質量%の低硫黄含有量を有する。
【0058】
非限定的に、半光沢ニッケル下層9は、10μm~20μm、好ましくは15μmの厚さを有する。
【0059】
高硫黄ニッケル下層10は、半光沢ニッケル下層9と光沢ニッケル下層11との良好な接着を可能にする。
【0060】
非限定的に、高硫黄ニッケル下層10は、0.1~0.25質量%の硫黄含有量を有する。「高硫黄ニッケル」という用語は、ニッケルが0.1~0.25質量%の範囲の硫黄含有量を含むことを意味する。
【0061】
非限定的に、高硫黄ニッケル下層10は、1.5μm~2.5μmの厚さを有する。
【0062】
光沢ニッケル下層11は、反射コーティング4に良好な光沢を付与し、反射コーティング4の硬さを向上させる。
【0063】
非限定的に、光沢ニッケル下層11は、5μm~15μm、好ましくは10μmの厚さを有する。
【0064】
つや消しニッケル下層12は、反射コーティング4に、鏡と同じである光沢のある表面を付与する。
【0065】
非限定的に、つや消しニッケル下層12は、5μm~15μm、好ましくは10μmの厚さを有する。
【0066】
「半光沢」、「光沢」及び「つや消し」という用語は、拡散反射と鏡面反射(反射率)との間の関係によって、相互に関連付けることができる。反射は、入射光線が多数の方向に反射される場合、拡散的であると言えるが、一方、入射光線が1つの方向に反射されるとき、反射は鏡面的であると言われる。
【0067】
したがって、「つや消し」という用語は、拡散反射が鏡面反射よりも大きいことを意味することができる。したがって、散乱によって反射される光エネルギは、鏡面反射される光エネルギよりも大きい。
【0068】
「光沢」という用語は、鏡面反射が拡散反射よりも大きいことを意味することができる。したがって、鏡面反射された光エネルギは、拡散によって反射される光エネルギよりも大きい。
【0069】
「半光沢」という用語は、これらの定義に由来する。したがって、この用語は、鏡面反射が、拡散反射とおおよそ同じ大きさであるか又はそれよりもかなり小さいことを意味することができる。したがって、鏡面反射された光エネルギは、拡散によって反射される光エネルギに実質的に等しいか又はそれよりもかなり小さい。
【0070】
非限定的に、光沢面は、50%~100%の反射率(鏡面反射)と、20%~50%の半光沢面と、20%未満のつや消し面とを有する。
【0071】
光学素子1は、以下のステップ:
- 機能面3を有する樹脂本体2を形成するステップと、
- 機能面3の少なくとも一部を銅層5で被覆する第1のステップと、
- 銅層5をニッケル層6で被覆する第2のステップと、
- ニッケル層6をクロム層7で被覆する第3のステップと、
を含む製造プロセスによって製造することができる。
【0072】
樹脂本体2を形成するステップは、樹脂を成形することによって又は3D印刷によって実行することができる。
【0073】
第1の被覆ステップは、化学銅めっきによって実行することができる。
【0074】
第2の被覆ステップは、電解析出によって実行することができる。
【0075】
第3の被覆ステップは、電解析出によって実行することができる。
【0076】
一実施形態によれば、方法は、更に、第1の被覆ステップの前に、ニッケルのめっき8又はニッケルと銅との混合物のめっき8を施すステップを含む。
【0077】
めっき8を施すステップは、電解析出によって実行することができる。
【0078】
別の実施形態によれば、第2の被覆ステップは、
- 銅層5に半光沢ニッケル下層9を施す第1のサブステップと、
- 半光沢ニッケル下層9に高硫黄ニッケル下層10を施す第2のサブステップと、
- 高硫黄ニッケル下層10に光沢ニッケル下層11を施す第3のサブステップと、
- 光沢ニッケル下層11につや消しニッケル下層12を施す第4のサブステップと、
を含む。
【0079】
サブステップの各々は、電解析出によって実施することができる。
【0080】
第1の被覆サブステップは、つや消しニッケル層の析出と、つや消しニッケル層の研磨とを含むことができる。
【0081】
第3の被覆サブステップは、つや消しニッケル層の析出と、光沢添加剤を含む浴中につや消しニッケル層を浸漬することとを含むことができる。
【0082】
本明細書は、図及び/又は技術的特徴を参照して、様々な実施形態を詳述する。当業者であれば、様々な実施形態の様々な技術的特徴は、別途明確に述べていない限り又はこれらの技術的特徴が矛盾しない限り、他の実施形態を得るために、互いに組み合わせることができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0083】
1 光学素子
2 樹脂本体
3 機能面
4 反射コーティング
5 銅層
6 ニッケル層
7 クロム層
8 ニッケルめっき層
9 半光沢ニッケル下層
10 高硫黄ニッケル下層
11 光沢ニッケル下層
12 つや消しニッケル下層
13 ヘッドライト
14 リフレクタ
15 光源
16 対称面
17 光ビーム
18 レンズ
19 外部放射線