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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/00 20060101AFI20231206BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B21D43/00 U
B25J15/08 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021567269
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020046500
(87)【国際公開番号】W WO2021131842
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019238681
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 勇司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 舜
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-179030(JP,U)
【文献】特開2001-256680(JP,A)
【文献】特開平11-066645(JP,A)
【文献】実開平05-051584(JP,U)
【文献】特開平07-237076(JP,A)
【文献】特開2008-055531(JP,A)
【文献】特開2012-040658(JP,A)
【文献】特開2013-059826(JP,A)
【文献】特開平01-240249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00
B25J 15/08
B23P 19/00 - 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め対象物の位置決め用孔に挿入可能な先端部と前記先端部の一端から延びる基端部とをそれぞれ有し、略L字状に形成された複数の位置決めピンと、
前記複数の位置決めピンのそれぞれの基端部に接続され、前記複数の位置決めピンを互いに接触する閉方向と互いに離間する開方向とに移動自在に支持する支持体と、
前記複数の位置決めピンのそれぞれの前記基端部をそれぞれ駆動して前記複数の位置決めピンを前記閉方向と前記開方向とに移動させるアクチュエータとを備え、
前記支持体は、少なくとも、前記複数の位置決めピンの前記先端部が挿入される貫通孔と、前記貫通孔から放射状に延び、前記基端部が移動自在に嵌合するように形成された複数のガイド溝とを有する底板と、前記底板の上に重ねられ、前記位置決めピンを収容する枠体とを含む、位置決め装置において、
前記位置決め用孔は、開口形状が円形となるように形成され、
前記複数の位置決めピンの前記先端部は、閉方向で互いに接触することにより前記位置決め用孔の孔径より外径が小さい円柱状の柱状体となるように形成されているとともに、前記柱状体を周方向に均等に分割した形状に形成され、
前記先端部は、前記位置決め対象物の位置決め用孔に挿入された状態で開方向に移動することによって、前記位置決め用孔の孔壁に沿うように接触する同一円弧形状に形成され、
前記支持体と前記アクチュエータとは、前記位置決め対象物の上方に位置する搬送部材に、少なくとも2組が異なる位置に、前記位置決めピンの前記先端部が下方に向けて突出するように取付けられ、
前記搬送部材は、上下方向と水平方向とに移動可能であるとともに、前記位置決め対象物を把持するクランプ装置を備え、
前記位置決めピンの下端となる先端面には、上方に向かって凹む凹部が形成され、
前記凹部は、前記複数の位置決めピンの前記先端部が互いに接触することにより形成される柱状体の軸心部に形成されていることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
請求項1記載の位置決め装置において、
前記アクチュエータは、
回転軸を有する動力源と、
前記回転軸の回転を前記回転軸の軸線とは直交する方向への往復移動に変換して前記複数の位置決めピンの前記基端部に伝達する変換機構とを備え、
前記位置決めピンの前記基端部は、水平方向で前記先端部に対し開方向に離間する位置にあって、閉方向で互いに接触する前記先端部の柱状体は、上下方向に延び、その中心が前記回転軸の軸線の延長線上にあることを特徴とする位置決め装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置決め装置において、
前記位置決め用孔は、前記位置決め対象物を貫通して前記位置決め対象物の表面と裏面とに開口するように形成され、
前記位置決めピンの前記先端部は、前記位置決め用孔に前記位置決め対象物の表面側から挿入された状態で前記位置決め対象物の裏面側に突出する延長部を有し、
前記延長部は、前記複数の位置決めピンが前記閉方向に移動した状態で前記位置決め用孔を通過可能に形成されているとともに、前記複数の位置決めピンが前記開方向に移動して前記位置決め用孔の孔壁により移動が規制された状態で前記位置決め対象物の前記裏面と対向するように前記開方向に突出していることを特徴とする位置決め装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一つに記載の位置決め装置において、
前記ガイド溝における前記貫通孔とは反対側の端部は、前記枠体によって塞がれる、位置決め装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一つに記載の位置決め装置において、
前記位置決め対象物はホットスタンプ工法を実施する熱間プレス成型装置に投入される金属板材である、位置決め装置。
【請求項6】
請求項2に記載の位置決め装置において、
前記変換機構は、径方向の外側に凸となる円弧状の長穴を有する回転プレートと、前記長穴に挿入される前記位置決めピンのノックピンと、前記位置決めピンの前記基端部が移動自在に嵌合する前記ガイド溝とによって構成され、
前記位置決めピンの開方向と閉方向の位置を規制する規制構造を有する、位置決め装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一つに記載の位置決め装置において、
前記先端部は、閉方向でお互いに接触した柱状体を3等分する、位置決め装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか一つに記載の位置決め装置において、
前記搬送部材には、ブラケットを介し、前記アクチュエータと前記支持体とが取り付けられ、前記支持体から前記位置決めピンの前記先端部が突出する、位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め対象の位置決め用孔に挿入される位置決めピンを有する位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板等の薄板材からなる位置決め対象物の位置を決めるにあたっては、例えば特許文献1に記載されているように、位置決め対象物の位置決め用孔に位置決めピンを嵌合させて行うことがある。特許文献1に開示されている位置決め装置は、プレス型の固定型に位置決め対象物を位置決めするためのものである。この位置決め装置は、固定型に立設された複数の位置決めピンを位置決め対象物の一つの位置決め用孔に挿入する構成が採られている。複数の位置決めピンは、互いに接触する方向である閉方向と、互いに離間する方向である開方向とに移動するように、固定型に移動自在に支持されている。固定型には、複数の位置決めピンを閉方向に付勢する径方向付勢手段が設けられている。
【0003】
可動型には、複数の位置決めピンの中央部に挿入されるピンが設けられている。可動型のピンは、可動型が固定型に向けて進むことにより複数の位置決めピンの中央部に挿入され、複数の位置決めピンどうしの間隔を拡げる。
複数の位置決めピンは、それぞれ閉方向に移動して互いに接触している状態で、位置決め対象物の位置決め用孔に挿入される。そして、複数の位置決めピンの中央部に可動型のピンが挿入され、複数の位置決めピンが径方向付勢手段のばね力に抗して開方向に移動する。このように複数の位置決めピンがそれぞれ開方向に移動することにより、各位置決めピンが位置決め用孔の孔壁を押すようになり、位置決め対象物の位置決めが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-85362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す位置決め装置では、位置決めを行うにあたって、複数の位置決めピンの基端部を閉方向に付勢する径方向付勢手段と、複数の位置決めピンの先端部を開方向に押す可動型のピンとが必要である。この位置決め装置を使用するためには、位置決めピンの基端部と先端部とをそれぞれ駆動する必要がある。このため、特許文献1に記載されている位置決め装置を使用できる装置は、位置決め対象物を両側から挟むような構造の装置に限定されるという問題があった。
本発明の目的は、複数の位置決めピンの基端部のみを駆動して位置決めを行うことができ、汎用性が高い位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る位置決め装置は、位置決め対象物の位置決め用孔に挿入可能な先端部をそれぞれ有する複数の位置決めピンと、前記複数の位置決めピンのそれぞれの基端部に接続され、前記複数の位置決めピンを互いに接触する閉方向と互いに離間する開方向とに移動自在に支持する支持体と、前記複数の位置決めピンのそれぞれの前記基端部をそれぞれ駆動して前記複数の位置決めピンを前記閉方向と前記開方向とに移動させるアクチュエータとを備えているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、複数の位置決めピンのそれぞれの基端部が支持体に支持された状態でアクチュエータによって駆動されることにより、複数の位置決めピンがそれぞれ閉方向と開方向とに移動する。複数の位置決めピンが互いに接触する状態で位置決め対象物の位置決め用孔に挿入された後にそれぞれ開方向に移動し、位置決め用孔の孔壁に押し付けられることによって、位置決め対象物が複数の位置決めピンの位置に位置決めされる。したがって、本発明によれば、複数の位置決めピンの基端部のみを駆動して位置決めが行われ、この位置決め装置を使用できる装置が位置決め対象物を両側から挟む装置に限定されることはないから、汎用性が高い位置決め装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、搬送部材に取付けられた位置決め装置の斜視図である。
図2図2は、位置決め装置が取付けられた搬送部材の斜視図である。
図3図3は、位置決め対象物の平面図である。
図4図4は、クランプ装置の構成を説明するための正面図である。
図5図5は、アクチュエータと位置決めピンの斜視図である。
図6図6は、変換機構の一部を示す平面図である。
図7A図7Aは、要部を斜め上方から見た断面図である。
図7B図7Bは、要部を斜め上方から見た断面図である。
図8図8は、位置決めピンと変換機構の分解斜視図である。
図9A図9Aは、変換機構の動作を説明するための要部の下面図である。
図9B図9Bは、変換機構の動作を説明するための要部の下面図である。
図10A図10Aは、位置決め時の動作を説明するための正面図である。
図10B図10Bは、位置決め時の動作を説明するための正面図である。
図10C図10Cは、位置決め時の動作を説明するための正面図である。
図11図11は、位置決めピンの変形例を示す斜視図である。
図12A図12Aは、ワークを搬送先の装置に載置するときの動作を説明するための模式図である。
図12B図12Bは、ワークを搬送先の装置に載置するときの動作を説明するための模式図である。
図12C図12Cは、ワークを搬送先の装置に載置するときの動作を説明するための模式図である。
図13図13は、位置決めピンの変形例を示す斜視図である。
図14図14は、位置決めピンの変形例を示す斜視図である。
図15図15は、位置決めピンの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る位置決め装置の一実施の形態を図1図10Cを参照して詳細に説明する。図1に示す位置決め装置1は、詳細は後述するが、図1において最も下に描かれている複数の位置決めピン2と、これらの複数の位置決めピン2を支持する支持体3と、図1において最も上に描かれているロータリークランプシリンダ4を動力源として複数の位置決めピン2を駆動するアクチュエータ5とを備えている。この実施の形態においては、位置決め装置1を図1に示す姿勢、すなわち複数の位置決めピン2が下方に向けて突出するような姿勢で使用する場合の例を示す。
【0010】
支持体3とアクチュエータ5は、取付用ブラケット6を介して搬送部材7に支持されている。取付用ブラケット6は、搬送部材7に沿う取付板6aを有している。取付板6aは、複数の固定用ボルト8を有する締結構造9によって搬送部材7のレール7aに固定されている。取付用ブラケット6は、固定用ボルト8が緩められることによって、レール7aに沿って移動自在となる。このため、固定用ボルト8を緩めることにより、位置決め装置1の搬送部材7に対する取付位置を変えることができる。
【0011】
搬送部材7は、図2に示すように、上方から見て長方形となる枠状に形成された枠部11と、枠部11の中に設けられた複数の部品支持部12とによって構成されている。以下においては、枠部11の長手方向Lとは直交する水平方向を幅方向Wという。この搬送部材7は、図示していない搬送装置に上方から支持され、搬送装置によって駆動されることにより上下方向と水平方向とに移動する。
【0012】
搬送部材7の複数の部品支持部12には、それぞれ機能部品が取付けられている。機能部品は、本発明に係る位置決め装置1と、図2において搬送部材7の下方に描かれている位置決め対象物13(以下、単にワーク13という)を把持する第1~第7のクランプ装置14~20である。この実施の形態によるワーク13は、ホットスタンプ工法を実施する熱間プレス成型装置(図示せず)に投入される金属板材である。ワーク13は、図3に示すように、厚み方向(図3の紙面とは直交する上下方向)から見て略長方形となる形状に形成されている。このワーク13は、長手方向が搬送部材7の長手方向Lと一致し、かつ長手方向とは直交する幅方向が搬送部材7の幅方向Wと一致する姿勢、すなわち搬送部材7の枠部11に沿うような姿勢で第1~第7のクランプ装置14~20によって把持される。
【0013】
第1~第7のクランプ装置14~20は、図4に示すように、ワーク13に対して揺動自在なアーム21と、アーム21を駆動するエアシリンダ22とによって構成されており、一対のクランプ装置でワーク13を水平方向の両側から挟んで把持するように搬送部材7に取付けられている。アーム21は、図4中に実線で示すようにワーク13を把持する把持位置と、図4中に二点鎖線で示すように、ワーク13から離間する退避位置との間で揺動する。
【0014】
搬送部材7の長手方向Lの両端部に位置する第1のクランプ装置14と第7のクランプ装置20は、ワーク13を長手方向の両側から挟んで把持する。第2、第4および第6のクランプ装置15,17,19は、ワーク13の幅方向の一方の側部(図2においては右上側の側部)を幅方向の反対側に向けて押し、第3および第5のクランプ装置16,18は、ワーク13の幅方向の他方の側部(図2においては左下側の側部)を反対側に向けて押す。このため、第2、4、6のクランプ装置15,17,19と、第3、5のクランプ装置16,18とがワーク13を幅方向の両側から把持する。なお、クランプ装置の数や位置は、適宜変更可能である。
【0015】
位置決め装置1は、図2に示すように、搬送部材7の長手方向と幅方向とに離間した2箇所にそれぞれ設けられている。これらの位置決め装置1は、それぞれ位置決めピン2がワーク13の位置決め用孔23(図3参照)に挿入された状態で後述する位置決め動作を行う。位置決め用孔23は、開口形状が円形となるように形成された貫通孔である。
位置決め装置1による位置決め動作が行われることにより、所定の把持位置にワーク13が位置決めされる。所定の把持位置とは、第1~第7のクランプ装置14~20によってワーク13が正しく把持されるワーク13の位置である。
【0016】
この実施の形態による位置決め装置1は、図5に示すように、3本の位置決めピン2を備えている。これらの位置決めピン2は、図8に示すように、それぞれ上下方向に延びる先端部2aと、先端部2aの上端から水平方向に延びる基端部2bとを有する断面L字状に形成されており、後述する支持体3(図1参照)に移動自在に支持されている。3本の位置決めピン2の基端部2bには、それぞれノックピン24が立てて設けられている。ノックピン24は、円筒状に形成されており、基端部2bから上方に向けて突出している。
【0017】
支持体3は、複数の部品を上下方向に組み合わせて構成されている。この実施の形態による支持体3は、図8において最も下に描かれている底板25と、底板25の上に重ねられる枠体26と、枠体26の上に重ねられる蓋体27とによって構成されている。底板25の中央部には貫通孔28が穿設されている。貫通孔28には、3つの位置決めピン2のそれぞれの先端部2aが挿入される。また、底板25の上面には、3つの位置決めピン2の基端部2bに接続される3つのガイド溝29が形成されている。
【0018】
ガイド溝29は、位置決めピン2の基端部2bが移動自在に嵌合するように形成されており、貫通孔28から放射状に延びている。ガイド溝29に基端部2bが嵌合した3つの位置決めピン2は、ガイド溝29に沿って移動することにより、閉方向と開方向とに移動可能となる。閉方向は、先端部2aどうしが互いに接触する方向である。開方向は、先端部2aどうしが互いに離間する方向である。
【0019】
位置決めピン2の先端部2aは、互いに接触することにより、図7Aおよび図9Aに示すように、ワーク13の位置決め用孔23の孔径より外径が小さい円柱状の柱状体31となるように形成されている。すなわち、位置決めピン2の先端部2aは、この柱状体31を周方向に均等に分割した形状に形成されている。図7Aおよび図7Bは、位置決め装置1の下部およびワークを図6中にVII-VII線で示す位置で破断して斜め上方から見た断面図である。図9Aにおいては、位置決めピン2の先端部2aからなる柱状体31の外周に相当する仮想の円を二点鎖線Aによって示す。
3つの位置決めピン2の先端部2aからなる円柱状の柱状体31の外周面は、図7Bおよび図10B図10Cに示すように、先端部2aがワーク13の位置決め用孔23に挿入された状態で開方向に移動することによって、位置決め用孔23の孔壁23aに沿うように形成されている。
【0020】
枠体26には、3つの位置決めピン2と、後述する回転プレート32とを収容する円形の孔33が形成されている。蓋体27には、後述する回転プレート32のボス部32aが挿通される貫通孔34が形成されている。蓋体27は、取付用ブラケット6に図示していない固定用ボルトによって固定される。これらの底板25と、枠体26と、蓋体27とは、枠体26内に位置決めピン2と回転プレート32とが収容された状態で複数の締結用ボルト35(図8においては1本のみが描いてある)によって互いに離れることができないように締結されている。
【0021】
回転プレート32は、3つの位置決めピン2を閉方向と開方向とに駆動するためのもので、図6および図8に示すように、円筒状のボス部32aと、ボス部32aが中心に位置する円板部32bとによって構成されている。ボス部32aには、上方から見て6角形の穴36が形成されている。この穴36には、断面形状が6角形のプラグ37(図8参照)が上方から嵌合する。プラグ37は、ロータリークランプシリンダ4の回転軸38(図5参照)の一部を構成するものである。ロータリークランプシリンダ4は、空気圧によって回転軸38を回動させる。
【0022】
この実施の形態による位置決め装置1は、回転プレート32の回転方向の位置を規定するために規制構造39(図7A参照)を備えている。規制構造39は、ボス部32aの外周面に設けられた凹部39a(図8参照)と、この凹部39aに係合する蓋体27内のボール39b(図7A参照)とを用いて構成されている。ボール39bは、図示していないばね部材によって凹部39aに押し付けられて係合している。ボール39bとばね部材は、蓋体27の横方向貫通穴40に挿入され、横方向貫通穴40に挿入された棒状のホルダー41(図8参照)によって蓋体27内に保持されている。
【0023】
回転プレート32の円板部32bには、位置決めピン2のノックピン24が挿入される3つの長穴42(図6参照)が形成されている。これらの長穴42は、円板部32bを周方向に3等分する位置にそれぞれ径方向の外側に向けて凸になる円弧状に形成され、回転プレート32の円板部32bを上下方向に貫通している。長穴42の長手方向とは直交する方向の開口幅は、位置決めピン2のノックピン24が挿入可能な幅である。詳述すると、この開口幅は、長穴42に挿入されたノックピン24を回転プレート32に対して水平方向に移動させたときに、ノックピン24の移動方向が長穴42の長手方向のみとなるような幅である。
【0024】
また、長穴42の長手方向の一端部42aは、他端部42bと較べると、円板部32bの径方向において異なる位置に形成されている。この実施の形態による長穴42の一端部42aは、他端部42bより回転プレート32の径方向の内側に位置している。このため、長穴42にノックピン24が挿入された状態で回転プレート32が回ることにより、ノックピン24を有する位置決めピン2が底板25のガイド溝29に沿って回転プレート32の径方向に移動する。すなわち、回転軸38の回転が回転軸38の軸線とは直交する方向への往復移動に変換されて複数の位置決めピン2の基端部2bに伝達される。この実施の形態においては、回転プレート32と、ノックピン24と、底板25のガイド溝29とによって、回転を往復移動に変換する変換機構43が構成されている。
【0025】
この実施の形態による長穴42は、図9Aに示すように、3つのノックピン24が長穴42の長手方向の一端部42aに位置している状態で、3つの位置決めピン2の先端部2aが互いに接触する閉状態(図7A参照)となるように形成されている。このように3つの位置決めピン2の先端部2aどうしが互いに接触することにより、上述した柱状体31が実現される。また、長穴42は、図9Bに示すように、3つのノックピン24が長穴42の長手方向の他端部42bに位置している状態で、3つの位置決めピン2の先端部2aが互いに離間し、位置決め用孔23の孔壁23aに接触する開状態(図7B参照)となるように形成されている。この実施の形態においては、回転プレート32が図9Aに示す位置から時計回りに約90度回ることによって、位置決めピン2の先端部2aが閉状態から開状態に移行する。
【0026】
このように構成された位置決め装置1によってワーク13を搬送部材7に位置決めするためには、先ず、図10Aに示すように、ワーク13の上方に搬送部材7を位置付ける。搬送部材7をワーク13の上方に位置付けるにあたっては、位置決めピン2からなる柱状体31がワーク13の位置決め用孔23の真上に位置するように行う。そして、3つの位置決めピン2の先端部2aが閉状態になっている状態で搬送部材7をワーク13に向けて下降させる。なお、このときには、第1~第7のクランプ装置14~20の各アーム21を退避位置に揺動させておく。ワーク13は、図示していない加熱炉によって所定の成型温度に加熱され、支持台44に載置しておく。
【0027】
搬送部材7が下降動作を開始した後、位置決めピン2がワーク13の位置決め用孔23の中に所定の長さだけ挿入された時に搬送部材7を停止させる。次に、アクチュエータ5のロータリークランプシリンダ4を動作させ、回転軸38とともに回転プレート32を一方向に回す。このとき、回転プレート32は、図9Aに示す位置から図9Bに示す位置まで回る。このように回転プレート32が回ることにより、図9Bおよび図10Bに示すように、3つの位置決めピン2の先端部2aがそれぞれ開方向に移動し、ワーク13の位置決め用孔23の孔壁23aに接触する。図10Bにおいては、2本の位置決めピン2のみが描いてある。このように位置決めピン2が位置決め用孔23の孔壁23aに接触することにより、ワーク13が位置決めピン2の位置、すなわち把持位置に位置決めされる。
【0028】
次に、図10Cに示すように、第1~第7のクランプ装置14~20の各アーム21を把持位置に揺動させ、ワーク13を第1~第7のクランプ装置14~20によって把持する。このとき、ワーク13が位置決め装置1によって把持位置に正確に位置決めされているために、第1~第7のクランプ装置14~20でワーク13を正しく把持することができる。ここでいう、「正しく把持する」とは、ワーク13とアーム21との間に隙間が生じたり、アーム21がワーク13を把持したときにワーク13が傾斜したり、ワーク13の上にアーム21が揺動していわゆる空振りとなったりすることがないことを意味する。
このように第1~第7のクランプ装置14~20でワーク13を把持した後、搬送装置によって駆動されて搬送部材7がワーク13とともに上昇し、さらに水平方向に移動して熱間プレス成型装置に送られる。
【0029】
この実施の形態による位置決め装置1においては、3つの位置決めピン2のそれぞれの基端部2bが支持体3に支持された状態でアクチュエータ5によって駆動されることにより、3つの位置決めピン2がそれぞれ閉方向と開方向とに移動する。ワーク13を位置決めピン2の位置に位置決めする際には、3つの位置決めピン2が互いに接触する閉状態でワーク13の位置決め用孔23に挿入される。その後、3つの位置決めピン2がそれぞれ開方向に移動し、位置決め用孔23の孔壁23aに押し付けられることによって、ワーク13が3つの位置決めピン2の位置に位置決めされる。したがって、この実施の形態によれば、3つの位置決めピン2の基端部2bのみを駆動して位置決めが行われるから、この位置決め装置1を使用できる装置は、ワーク1を両側から挟む構造の装置に限定されることがない。この結果、この実施の形態によれば、汎用性が高い位置決め装置を提供することができる。
【0030】
この実施の形態によるアクチュエータ5は、回転軸38を有するロータリークランプシリンダ4(動力源)と、回転軸38の回転を回転軸38の軸線とは直交する方向への往復移動に変換して複数の位置決めピン2の基端部2bに伝達する変換機構43とを備えている。このため、複数の位置決めピン2を均等に駆動できるから、位置決めの精度がより一層高い位置決め装置を提供することができる。
【0031】
この実施の形態による支持体3とアクチュエータ5とは、ワーク13(位置決め対象物)の上方に位置する搬送部材7に、位置決めピン2の先端部2aが下方に向けて突出するように取付けられている。搬送部材7は、上下方向と水平方向とに移動可能であるとともに、ワーク13を把持する第1~第7のクランプ装置14~20を備えている。このため、第1~第7のクランプ装置14~20がワーク13を正しく把持する位置に、位置決め装置1によってワーク13を位置決めすることができる。したがって、搬送ミスが発生しないように搬送部材7によってワーク13を搬送することができる。
【0032】
この実施の形態によるワーク13の位置決め用孔23は、開口形状が円形となるように形成されている。3つの位置決めピン2の先端部2aは、互いに接触することにより位置決め用孔23の孔径より外径が小さい円柱状の柱状体31となるように形成されているとともに、柱状体31を周方向に均等に分割した形状に形成されている。
このように形成された3つの位置決めピン2の先端部2aは、互いに離間する開方向に移動することによって、位置決め用孔23の孔壁23aに沿う状態で接触するようになる。したがって、ワーク13が加熱により変形し易い状態になっているにもかかわらず、位置決め動作により位置決め用孔23に位置決めピン2から過度な荷重が加えられて位置決め用孔23が変形するようなことがない。
【0033】
(位置決めピンの第1の変形例)
位置決めピン2は図11図12Cに示すように構成することができる。図11図12Cにおいて、図1図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図11図12Cに示す位置決めピン2は、下端となる先端面が上述した位置決めピン2とは異なっている。図11図12Cに示す3つの位置決めピン2の下端となる先端面には、上方に向かって凹む凹部51がそれぞれ形成されている。この凹部51は、3つの位置決めピン2の先端部2aが互いに接触することにより形成される柱状体31の軸心部に形成されている。凹部51の形状は、ワーク13の搬送先である金型52(図12A図12C参照)に突設されたパイロットピン53の先端部53aが嵌合する形状である。パイロットピン53の先端部53aは、上方に向けて突出しており、円錐状に形成されている。
【0034】
この実施の形態による位置決めピン2を使用して搬送部材7(図示せず)に位置決めされたワーク13を金型に載置するためには、先ず、図12Aに示すように、位置決めピン2がパイロットピン53の上に位置するように搬送部材7を停止させる。このときは、位置決めピン2が開状態で、ワーク13の位置決め用孔23の孔壁23aに接触している。次に、3つの位置決めピン2をそれぞれ閉方向に移動させて閉状態とする。そして、図12Bに示すように、搬送部材7を下降させ、位置決めピン2の凹部51にパイロットピン53の先端部53aを嵌合させる。図12Bは、嵌合状態を理解し易いように、凹部51がパイロットピン53から僅かに離間している状態で描いてある。
【0035】
このように凹部51がパイロットピン53に嵌合することにより、水平方向において位置決めピン2がパイロットピン53に位置決めされ、ワーク13の位置決め用孔23の中心がパイロットピン53の軸心と一致するようになる。その後、図示してはいないが、第1~第7のクランプ装置14~20のアーム21を退避位置に揺動させてワーク13を解放し、搬送部材7を上昇させて初期の位置に戻す。ワーク13は、第1~第7のクランプ装置14~20から解放されることによってパイロットピン53をガイドとして金型52に載置され、パイロットピン53によって規定された所定の成型位置に位置決めされる。
このため、この実施の形態によれば、ワーク13を搬送先の装置で簡単に位置決めすることが可能な位置決め装置を提供することができる。なお、ワーク13を金型52に載置するにあたっては、位置決めピン2を閉状態として凹部51にパイロットピン53を嵌合させる代わりに、図12Cに示すように行うことができる。すなわち、位置決めピン2を閉じることなく開いた状態で凹部51にパイロットピン53を挿入し、この状態でワーク13を第1~第7のクランプ装置14~20から解放して落下させる。
【0036】
(位置決めピンの第2の変形例)
上述した各実施の形態に示した位置決めピン2には、ワーク13の位置決めを行う機能の他に、ワーク13を把持して搬送する機能をもたせることができる。この搬送機能は、いわゆるピンクランプシリンダや、2段拡径式のピンの構成を採ることによって実現可能である。2段拡径式のピンの構成を採る場合の一例を図13図14によって説明する。図13図15において、図1図12Cによって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0037】
図13に示す位置決めピン2は、先端部2aの先端(下端)が上述した位置決めピン2とは異なっている。この実施の形態による位置決めピン2の先端部2aは、ワーク13の位置決め用孔23に通される延長部61を有している。位置決め用孔23は、ワーク13を貫通してワーク13の表面13aと裏面13bとに開口するように形成されている。
【0038】
延長部61は、図15に示すように、先端部2aが位置決め用孔23にワーク13の表面13a側から挿入された状態でワーク13の裏面13b側に突出するように形成されている。詳述すると、延長部61は、図14に示すように、複数の位置決めピン2が閉方向に移動した状態で位置決め用孔23を通過可能に形成されている。また、延長部61は、図15に示すように、位置決め用孔23に挿入された複数の位置決めピン2が開方向に移動して位置決め用孔23の孔壁により移動が規制された状態で、ワーク13の裏面と対向するように位置決めピン2の開方向に突出している。
【0039】
このように構成された位置決めピン2においては、ワーク13の位置決めを行った状態でワーク13を延長部61で支えることができる。このため、位置決め装置に位置決めピン2を装備することにより、ワーク13の位置決めを行うことができるとともに、ワーク13を把持して搬送することが可能になる。
【0040】
上述した各実施の形態においては、3つの位置決めピン2を使用する例を示した。しかし、位置決めピン2の数は、適宜変更することができる。位置決めピン2は、2つでもよいし、4つでもよい。
上述した各実施の形態においては、アクチュエータ5の動力源をロータリークランプシリンダ4によって構成する例を示した。しかし、アクチュエータ5の動力源は、図示してはいないが、モータによって構成することができる。また、回転軸38の回転を回転軸38の軸線とは直交する方向への往復移動に変換する変換機構43の構造も適宜変更することができる。例えば、位置決めピン2に個別に設けられたラックを共通のピニオンによって駆動する構成を採ることができる。さらに、アクチュエータ5は、回転軸38の回転を回転軸38の軸線とは直交する方向への往復移動に変換する構成のものに限定されることはない。すなわち、個々の位置決めピン2をエアシリンダやモータなどの個別の動力源でそれぞれ駆動する構成を採ることができる。
【0041】
また、位置決めピン2は、加熱されて付着し易い製品であっても位置決め可能な構成を採ることができる。このような製品の付着を防ぐ機能は、位置決めピン2が振動したり、潤滑油が滲み出るような構成を採ることにより実現可能である。
【0042】
さらに、位置決めピン2は、メンテナンスを行い易いように、着脱式とすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…位置決め装置、2…位置決めピン、2a…先端部、2b…基端部、3…支持体、4…ロータリークランプシリンダ(動力源)、5…アクチュエータ、7…搬送部材、13…ワーク(位置決め対象物)、14~20…第1~第7のクランプ装置、23…位置決め用孔、31…柱状体、38…回転軸、43…変換機構、51…凹部、61…延長部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15