(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】回路基板及びプローブカード
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231206BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H05K1/02 N
G01R1/073 E
(21)【出願番号】P 2021574017
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002417
(87)【国際公開番号】W WO2021153494
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2020013087
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】本田 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸田 芳宏
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347551(JP,A)
【文献】特開2011-238974(JP,A)
【文献】特開2013-140952(JP,A)
【文献】特開2016-100434(JP,A)
【文献】特開2009-111132(JP,A)
【文献】特開2001-244584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
G01R 1/073
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する絶縁基板と、
前記絶縁基板の内部に位置するベタ状導体と、
前記ベタ状導体に前記第1面側から接続される第1ビア導体と、
前記ベタ状導体に前記第2面側から接続される第2ビア導体と、
を備え、
前記ベタ状導体は、前記第1ビア導体の接続点と前記第2ビア導体の接続点とを結ぶ線分と交差する切欠きを有
し、
前記ベタ状導体は、前記絶縁基板の異なる層に位置し、互いに導通された第1ベタ状導体と第2ベタ状導体とを含み、
前記第1ベタ状導体と前記第2ベタ状導体との両方が前記切欠きを有し、
前記第1ベタ状導体及び前記第2ベタ状導体のうち、電圧が供給される側のベタ状導体の前記切欠きが、電圧が出力される側のベタ状導体の前記切欠きよりも大きい、
回路基板。
【請求項2】
前記第1面に位置し前記第1ビア導体を介して前記ベタ状導体に電気的に接続される第1電極と、
前記第2面に位置し前記第2ビア導体を介して前記ベタ状導体に電気的に接続される第2電極と、
を備える請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記切欠きはスリット状である、
請求項1又は請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記ベタ状導体に前記第1面側から接続される第3ビア導体を備え、
前記ベタ状導体における、前記第1ビア導体の接続点から前記第2ビア導体の接続点までの最短導電経路長と、前記第1ビア導体の接続点から前記第3ビア導体の接続点までの最短導電経路長との差が、前記第1ビア導体の接続点と前記第2ビア導体の接続点とを結ぶ線分長と、前記第1ビア導体の接続点と前記第3ビア導体の接続点とを結ぶ線分長との差よりも、小さい、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記第1面に位置し前記第3ビア導体を介して前記ベタ状導体に電気的に接続される第3電極を、更に備える請求項4記載の回路基板。
【請求項6】
前記第1面に垂直な方向から透視したとき、前記第1ベタ状導体の前記切欠きの位置と、前記第2ベタ状導体の前記切欠きの位置とが異なる、
請求項
1から請求項5のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の回路基板と、
前記第1ビア導体を介して前記ベタ状導体に電気的に接続されたプローブピンと、
を備えるプローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板及びプローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板において、電源電圧が各部へ送られる際、電源用導体において電圧降下が生じ、各部に供給される電源電圧に差異が生じることがある。特開2005-150338号公報には、上記のような電源電圧の差異を低減するため、僅かに電圧が異なる複数の電源電圧を伝送する複数の電源ラインを備え、適宜選択された電源ラインが各部の電源用導体に接続されて、電源電圧の一様化が図られる回路基板が示されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示に係る回路基板は、
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する絶縁基板と、
前記絶縁基板の内部に位置するベタ状導体と、
前記ベタ状導体に前記第1面側から接続される第1ビア導体と、
前記ベタ状導体に前記第2面側から接続される第2ビア導体と、
を備え、
前記ベタ状導体は、前記第1ビア導体の接続点と前記第2ビア導体の接続点とを結ぶ線分と交差する切欠きを有し、
前記ベタ状導体は、前記絶縁基板の異なる層に位置し、互いに導通された第1ベタ状導体と第2ベタ状導体とを含み、
前記第1ベタ状導体と前記第2ベタ状導体との両方が前記切欠きを有し、
前記第1ベタ状導体及び前記第2ベタ状導体のうち、電圧が供給される側のベタ状導体の前記切欠きが、電圧が出力される側のベタ状導体の前記切欠きよりも大きい。
【0004】
本開示に係るプローブカードは、
上記の回路基板と、
前記第1ビア導体を介して前記ベタ状導体に電気的に接続されたプローブピンと、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】本開示の実施形態に係るプローブカードを示す平面図である。
【
図2】ベタ状導体とビア導体との交差部の構造の一例を示す図である。
【
図3B】配置例1におけるベタ状導体を示す図である。
【
図4A】切欠きを有さない比較例1における第1面を示す図である。
【
図4B】比較例1におけるベタ状導体を示す図である。
【
図5B】配置例2におけるベタ状導体を示す図である。
【
図6A】切欠きを有さない比較例2における第1面を示す図である。
【
図6B】比較例2におけるベタ状導体を示す図である。
【
図7B】配置例3における第1ベタ状導体を示す図である。
【
図7C】配置例3における第2ベタ状導体を示す図である。
【
図8A】切欠きを有さない比較例3における第1面を示す図である。
【
図8B】比較例3における第1ベタ状導体を示す図である。
【
図8C】比較例3における第2ベタ状導体を示す図である。
【
図9B】配置例4における第1ベタ状導体を示す図である。
【
図9C】配置例4における第2ベタ状導体を示す図である。
【
図10A】切欠きを有さない比較例4における第1面を示す図である。
【
図10B】比較例4における第1ベタ状導体を示す図である。
【
図10C】比較例4における第2ベタ状導体を示す図である。
【
図10D】比較例4における第2面を示す図である。
【
図11A】配置例5における第1面を示す図である。
【
図11B】配置例5における第1ベタ状導体を示す図である。
【
図11C】配置例5における第2ベタ状導体を示す図である。
【
図11D】配置例5における第2面を示す図である。
【
図12A】配置例6における第1面を示す図である。
【
図12B】配置例6における第1ベタ状導体を示す図である。
【
図12C】配置例6における第2ベタ状導体を示す図である。
【
図12D】配置例6における第2面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0007】
図1Aは、本開示の実施形態に係るプローブカードを示す平面図である。
図1Bは、
図1AのB-B線における断面図である。本実施形態に係るプローブカード700は、第1回路基板100と、第2回路基板200と、複数のプローブピン400とを備える。第1回路基板100は、複数のセラミック絶縁層1aが積層された絶縁基板1と回路導体2とを有する。第2回路基板200は、複数の樹脂絶縁層201aが積層された絶縁基板201と回路導体220とを有する。第1回路基板100と第2回路基板200とが合わさって回路基板300を構成する。
図1Aは、プローブピン400を接合していない回路基板300を示している。
【0008】
第1回路基板100の絶縁基板1は、第1面11と第1面11とは反対側の第2面12とを有する。第1回路基板100の回路導体2は、第1面11に位置する複数の接合導体21と、第2面12に位置する複数の外部端子23と、第1面11から第2面12にかけて位置する内部導体22とを備える。第1回路基板100は、温度を上げるためのヒータ線3を有していてもよい。
【0009】
第2回路基板200の絶縁基板201は、第1面211と第1面211とは反対側の第2面212とを有する。第2回路基板200の回路導体220は、第1面211に位置する複数の接合導体221と、第2面212に位置する複数の接合導体223と、第1面211から第2面212にかけて位置する複数の内部導体222とを有する。
【0010】
第1回路基板100と第2回路基板200とは、第1回路基板100の複数の接合導体21と第2回路基板200の複数の接合導体223とが接合されるように重なり、第1回路基板100の第1面11と第2回路基板200の第2面212とが接着される。複数のプローブピン400は、第2回路基板200の複数の接合導体221に接合される。
【0011】
第1回路基板100の内部導体22と、第2回路基板200の内部導体222とは、基板面(第1面11、211、第2面12、212のいずれか)に垂直な方向に延在するビア導体と、基板面に沿った方向に延在する膜状導体とを含む。
【0012】
内部導体22の膜状導体、内部導体222の膜状導体、又は、これら両方の膜状導体には、ベタ状導体50が含まれる。
図1Bでは、内部導体222にベタ状導体50が含まれる例を示している。ベタ状導体50は、上下に隣接する一対のセラミック絶縁層1a、1aの間、あるいは、上下に隣接する一対の樹脂絶縁層201aの間において、ビア導体の径に比べて縦横に非常に大きい二次元領域を有する。本明細書においてベタ状導体とは、ビア導体の直径の15倍以上の縦寸と横寸を有する導体と定義される。
【0013】
図2は、ベタ状導体とビア導体との交差部の構造の一例を示す図である。
【0014】
ベタ状導体50には、第2面12側の1つ又は複数の外部端子23から電源電圧が供給され、第1面211側の1つ又は複数の接合導体221へ電源電圧を出力する。電源電圧とは、接地電圧を含む概念である。ベタ状導体50は、
図2に示すように、ベタ状導体50と交差しかつ絶縁される内部導体222(ベタ状導体50が第1回路基板100に含まれる場合には内部導体22)が通される貫通孔30を有していてもよい。
【0015】
以下、ベタ状導体50が、第2回路基板200に含まれるものとして説明する。加えて、ベタ状導体50に接続された第1面11側のビア導体(内部導体222)を出力ビア、ベタ状導体50に接続された第2面12側のビア導体(内部導体222)を入力ビアと呼ぶ。さらに、入力ビアは第2面12まで延在して接合導体221に接続され、出力ビアは第1面11まで延在して接合導体223に接続されているものとする。ベタ状導体50には接合導体221及び入力ビアから電源電圧が供給され、接合導体223及び出力ビアを介して電源電圧が出力される。上記の構成の特定は、説明の便宜上のものに過ぎず、ベタ状導体50は、第1回路基板100に含まれてもよい。また、入力ビア及び出力ビアは、途中で膜状導体と接続され、基板面に沿った方向に位置が異なる接合導体221、223(あるいは接合導体21と外部端子23)に電気的に接続されていてもよい。
【0016】
【0017】
<配置例1>
図3及び
図4の例は、ベタ状導体50に入力ビア61を介して電源電圧が入力され、ベタ状導体50を介して出力ビア71A、71Bへ電源電圧が出力される例である。一方の出力ビア71Aは入力ビア61に近く、他方の出力ビア71Bは入力ビア61から遠い。
【0018】
図4Bの比較例1では、上記の入力ビア61からの距離の差に基づき、入力ビア61から出力ビア71A、71Bに電流経路A1、A2のように電源電流が流れる際に、出力ビア71Aと出力ビア71Bとで異なる量の電圧降下が生じる。したがって、出力ビア71Aに出力される電源電圧と、出力ビア71Bに出力される電源電圧とに、差が生じてしまう。
【0019】
本実施形態のベタ状導体50は、
図3Bに示すように、切欠き91を有する。切欠き91はスリット状であってもよい。切欠きとは、直線及び外に凸の角又は曲線に囲まれた二次元領域において、その一部が欠けている部分を意味し、ベタ状導体の形成時から存在するものも含まれる。スリット状とは、一方に長い形状を有し、長い方の寸法が短い方の寸法の2倍以上の形状と定義されてもよい。
【0020】
切欠き91は、入力ビア61とベタ状導体50との接続点と、出力ビア71Aとベタ状導体50の接続点とを結ぶ線分M1に交差する。さらに、切欠き91は、線分M1、M2の長さの差よりも、最短導電経路L1a、L2の経路長の差の方が、小さくなるように配置される。線分M2は入力ビア61の接続点と出力ビア71Bの接続点の間の線分である。最短導電経路L1aは入力ビア61と出力ビア71Aの間の最短導電経路である。最短導電経路L2は入力ビア61と出力ビア71Bの間の最短導電経路である。線分の差、並びに、経路長の差は、絶対値で表わすものとする。以下同様である。
【0021】
切欠き91により、入力ビア61から出力ビア71Aまでの最短導電経路L1aが長くなり、その間の抵抗(電気抵抗)が大きくなる。すると、入力ビア61から出力ビア71Aまでの平均的な電流経路A1aの長さと、入力ビア61から出力ビア71Bまでの平均的な電流経路A2の長さとが近づく。すなわち、切欠き91を有さない比較例1(
図4)の電流経路A1、A2の長さの差よりも、
図3の実施形態の電流経路A1a、A2の長さの差の方が、小さい。したがって、切欠き91により、
図4の比較例1と比べて、出力ビア71Aまでの電圧降下量が、出力ビア71Bまでの電圧降下量に近づき、2つの出力ビア71A、71Bに出力される電源電圧の差を小さくできる。なお、平均的な電流経路A1a、A2は、入力点から出力点までの総合の抵抗の大小を比喩的に表わしたもので、経路長が抵抗に比例する。
図5~
図12においても同様である。
【0022】
なお、入力ビア及び出力ビアの数が増えると、各出力ビアまでの平均的な電流経路の経路長を近づける切欠きの配置は複雑になる。しかし、例えば回路シミュレータを用いて様々なパターンの切欠きを設けた例を比較することで、各出力ビアに出力される電源電圧を近づける切欠きの配置を適宜算出することができる。
【0023】
<配置例2>
図5及び
図6の例は、ベタ状導体50に、2つの入力ビア62A、62Bと2つの出力ビア72A、72Bとが接続されている例である。2つの入力ビア62A、62Bに対して出力ビア72Aよりも出力ビア72Bの方が遠い。
【0024】
図6Bの比較例2では、2つの入力ビア62A、62Bと出力ビア72Aまでの平均的な電流経路A3は、2つの入力ビア62A、62Bと出力ビア72Bまでの平均的な電流経路A4よりも短い。したがって、出力ビア72A、72Bに出力される電源電圧に差が生じる。図では、平均的な電流経路A3、A4の各々を、複数の入力ビア62A、62Bのいずれか一つから延びる経路として描いているが、これは比喩である。平均的な電流経路A3は、経路長により、複数の入力ビア62A、62Bと1つの出力ビア72Aとの間の抵抗値を比喩的に表わし、平均的な電流経路A4は、経路長により、複数の入力ビア62A、62Bと1つの出力ビア72Bとの間の抵抗値を比喩的に表わす。以下、同様である。
【0025】
本実施形態のベタ状導体50は、
図5Bに示すように、切欠き92を有する。切欠き92はスリット状であってもよく、入力ビア62A、62Bと出力ビア72A、72Bとの接続点間を結ぶ線分M3、M4に交差し、入力ビア62A、62Bから出力ビア72Aまでの最短導電経路L3aの長さと出力ビア72Bまでの最短導電経路L4aの長さの差を小さくする。したがって、切欠き92により、
図6Bの比較例2に比べて、出力ビア72Aへの平均的な電流経路A3aの経路長と、出力ビア72Bへの平均的な電流経路A4の経路長とが近づく。すなわち、切欠き92を有さない比較例2(
図6)の電流経路A3、A4の長さの差よりも、
図5の実施形態の電流経路A3a、A4の長さの差の方が、小さい。上記のように、切欠き92により、最短導電経路の長さが調整されることで、平均的な電流経路A3a、A4の長さが近づき、出力ビア72A、72Bに出力される電源電圧の差を小さくできる。
【0026】
<配置例3>
図7及び
図8の例は、入力ビア63A、63Bと出力ビア73A、73Bとの間に、2層の第1ベタ状導体51及び第2ベタ状導体52が位置する例である。第1ベタ状導体51と第2ベタ状導体52との間で、第1ベタ状導体51と第2ベタ状導体52とにだけ導通される中間ビア81が含まれていてもよい。中間ビア81は、第1ベタ状導体51に対しては入力ビアとして作用し、第2ベタ状導体52に対しては出力ビアとして作用する。
【0027】
図8A~
図8Dの比較例3では、2つの入力ビア63A、63Bと2つの出力ビア73A、73Bとの距離の差により、平均的な電流経路A5、A6の経路長が異なり、出力ビア73A、73Bの電源電圧に差が生じる。
【0028】
本実施形態では、
図7A~
図7Dに示すように、第1ベタ状導体51及び第2ベタ状導体52が切欠き93A、93Bを有する。切欠き93A、93Bは、入力ビア63Aから中間ビア81までの最短導電経路と、中間ビア81から出力ビア73Aまでの最短導電経路とを長くする。よって、平均的な電流経路A5a(=A5a1+A5a2)と、平均的な電流経路A6との経路長が近づき、出力ビア73A、73Bの電源電圧の差を小さくできる。
【0029】
ここで、第1ベタ状導体51及び第2ベタ状導体52のように複数層のベタ状導体がある場合を想定する。この場合、複数層のベタ状導体の各々に切欠きを設けることで、或る層の切欠きによる最短導電経路の調整と、別の層の切欠きによる最短導電経路の調整とを合わせて、入力ビアから或る出力ビアまでの最短導電経路を長くすることができる。したがって、例えば、電源電圧が入力される側のベタ状導体の切欠きでは粗い最短導電経路の調整を行い、電源電圧が出力される側のベタ状導体の切欠きでは細かい最短導電経路の調整を行うなど、段階的な調整が可能となる。段階的な調整は、入力ビアと出力ビアの数が多い場合に有用である。電源電圧が入力される側のベタ状導体の切欠きは大きく(長手方向の長さを長く)し、電源電圧が出力される側のベタ状導体の切欠きは小さく(長手方向の長さを短く)してもよい。このような切欠きの大小により、出力側に近いほうで細かい調整ができ、電源電圧をより高い精度で一様化できる。また、複数層の切欠きで最短導電経路の調整ができるので、一層の1つの切欠きのみで調整する場合と比較して、各層の切欠きの長さを短くできる。よって、各層のベタ状導体の面積が、切欠きによって低減する割合が小さくなり、ベタ状導体による電源電圧の安定性が阻害されにくい。さらに、複数層のベタ状導体の切欠きを、基板面に垂直な方向から透視したときに異なる位置に配置することで、各層の切欠きの配置及びパターンの選択肢が増え、その分、切欠きの総合長を短くする選択も可能となる。切欠きの総合長が短くなることで、切欠きによる総合的な電圧降下量が小さくなって、電源抵抗の増加を抑制できる。
【0030】
<配置例4>
図9~
図12の例は、入力ビア64A~64Cと出力ビア74A~74Cの数がより多い場合の例である。比較例4の構成(
図10A~
図10D)では、入力ビア64A~64Cから各出力ビア74A~74Cまでの距離が異なり、平均的な電流経路A7~A9の経路長の差が生じる。よって、複数の出力ビア74A~74Cに電源電圧の差が生じる。
【0031】
本実施形態の配置例4(
図9A~
図9D)では、第1ベタ状導体51及び第2ベタ状導体52が、切欠き94A~94Cを有する。切欠き94A、94Cは、入力ビア64Aから中間ビア82までの最短導電経路と、中間ビア82から出力ビア74Aまでの最短導電経路とを長くする。切欠き94Bは、入力ビア64Bから出力ビア74Bまでの最短導電経路を長くする。そして、平均的な電流経路A7a(=A7a1+A7a2)、A8a、A9の経路長が互いに近づき、出力ビア74A、74B、74Cの電源電圧の差を小さくできる。
【0032】
切欠きの設計時において、出力ビア74Bまでの電流経路A8aに作用する切欠き94Bが、他の出力ビア74Aと入力ビア64Aとの間に位置し、これらの間の電流経路にも影響してしまうような場合がある。このような場合には、
図9B及び
図9Cに示すように、異なる層の第2ベタ状導体52に、出力ビア74Aまでの一部の電流経路A7a1を配置することで、切欠き94Bが出力ビア74Aの電流経路に大きく影響してしまうことを回避できる。
【0033】
<配置例5>
本実施形態の配置例5(
図11A~
図11D)では、第1ベタ状導体51及び第2ベタ状導体52が、切欠き95A~95Cを有する。切欠き95A、95Bは、入力ビア64Aから中間ビア82までの最短導電経路と、中間ビア82から出力ビア74Aまでの最短導電経路とを長くする。切欠き95Cは、入力ビア64Bから出力ビア74Bまでの最短導電経路を長くする。切欠き95Cは、第2ベタ状導体52の周端まで延在せず、第2ベタ状導体52に全周が囲まれるように位置する。
【0034】
配置例5では、出力ビア74Aの電流経路に主に作用する切欠き95Bと、他の出力ビア74Bの電流経路に主に作用する切欠き95Cとが近くに配置され、切欠き95B、95Cの間に幅の狭い狭小部W1が生じる。狭小部W1は抵抗が大きくなるので、この間を電流経路とする出力ビア74Aの電圧降下を大きくしたい場合に適宜利用できる。
【0035】
<配置例6>
本実施形態の配置例6(
図12A~
図12D)は、切欠き95Cを設ける層と、出力ビア74Bが接続される層とを、配置例5の構成から変更した例である。配置例5に生じた第1ベタ状導体51の狭小部W1を無くしたい場合には、狭小部W1を構成する一方の切欠き95Cを、配置例6の第1ベタ状導体51のように別の層に配置することで、狭小部W1を無くすことができる。切欠き95Cを別の層に配置した場合には、切欠き95Cが作用する出力ビア74Bの接続層も別の層(第1ベタ状導体51)に変更することで、切欠き95Cによって出力ビア74Bの最短導電経路長を長くすることができる。
【0036】
このように、複数のベタ状導体が異なる絶縁層にあることで、複数の出力ビア及び複数の入力ビアとの間の最短導電経路長の調整を行う上で、切欠きの配置の選択肢が増え、複数の出力ビアに出力される電源電圧の一様化を図る調整の困難さが低減する。
【0037】
以上のように、本実施形態の回路基板300によれば、ベタ状導体50、第1ベタ状導体51及び第2ベタ状導体52の異なる位置から取り出される電源電圧の一様化を図ることができる。さらに、回路基板300を備えた本実施形態のプローブカード700によれば、ウエハSW上の半導体素子の複数の電源端子に一様な電源電圧を供給することができ、信頼性の高い半導体素子の試験を行うことができる。
【0038】
以上、本開示の各実施形態について説明した。しかし、本開示の回路基板及びプローブカードは上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、ベタ状導体として、回路基板の一対の絶縁層(樹脂絶縁層201a又はセラミック絶縁層1a)の間に一つのベタ状導体50が配置された例を示したが、一対の絶縁層の間に導通しない複数のベタ状導体が配置されてもよい。例えば、プローブカード700が一度にウエハSW上の複数の半導体集積回路に接続される場合には、各半導体集積回路に接続される領域ごとに1つのベタ状導体が配置されてもよい。また、上記実施形態では、ベタ状導体に接続される入力ビアと出力ビアの具体例を模式的にいくつか示したが、これらの具体例に限定されることはない。例えば、ベタ状導体に入力ビアを介して電源電圧を供給する電極(外部端子23又は接合導体223)の数と、ベタ状導体から出力ビアを介して電源電圧が出力される電極(接合導体21又は接合導体221)の数との割合は、1:1であってもよい。また、上記の割合は、出力側の電極数を多くてもよいし、逆に入力側の電極数を多くしてもよい。また、上記実施形態では、本開示の回路基板をプローブカードに適用した例を示したが、本開示の回路基板は、ベタ状導体を有する種々の回路基板に適用可能である。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示は、回路基板及びプローブカードに利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1、201 絶縁基板
1a セラミック絶縁層
2、220 回路導体
11、211 第1面
12、212 第2面
23 外部端子
21 接合導体
221 接合導体(第1電極、第3電極)
223 接合導体(第2電極)
22、222 内部導体
50 ベタ状導体
51 第1ベタ状導体
52 第2ベタ状導体
61 入力ビア(第2ビア導体)
61、62A、62B、63A、63B、64A、64B、64C 入力ビア
71A 出力ビア(第1ビア導体)
71B 出力ビア(第3ビア導体)
72A、72B、73A、73B、74A、74B、74C 出力ビア
91、92、93A、93B、94A、94B、94C、95A、95B、95C 切欠き
M1、M2、M3、M4 接続点間の線分
L1a、L2、L3a、L4a 最短導電経路
A1~A9、A1a、A3a、A5a、A5a1、A5a2、A7a、A7a1、A7a2、A8a 電流経路
100 第1回路基板
201a 樹脂絶縁層
200 第2回路基板
300 回路基板
400 プローブピン
700 プローブカード