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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】移動支援用具
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20231206BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20231206BHJP
   F16B 7/14 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61G5/10 703
F16B7/18 A
F16B7/14 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022092185
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2018077973の分割
【原出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2022118043
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】598026851
【氏名又は名称】株式会社カワムラサイクル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 治人
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-259638(JP,A)
【文献】米国特許第08517469(US,B1)
【文献】実開平07-033318(JP,U)
【文献】特開2001-046441(JP,A)
【文献】特開2002-039126(JP,A)
【文献】実開昭59-115109(JP,U)
【文献】実開昭60-056807(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/10
A61G 5/12
F16B 7/18
F16B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空パイプの一端に軸方向に移動可能な棒体を上記中空パイプに対して位置決め固定する伸縮固定具を有する移動支援用具であって、
上記伸縮固定具が、上記中空パイプに固定される固定部材と、上記棒体の軸方向を回転軸に回転することで上記固定部材に係合する回転部材とを備えており、
上記回転部材が、上記棒体が通される回転部材貫通孔と、押圧部とを備えており、
上記固定部材が、上記棒体が通される固定部材貫通孔と、上記中空パイプに取り付けられたときに上記中空パイプの一端から軸方向に突出する第一当接部とを備えており、
上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が直接又は間接に上記第一当接部を押圧する様に構成されており、
上記押圧部が押圧する上記第一当接部が、上記棒体の外周面に押し当てられ、
上記棒体に形成された軸方向に延びるスライド溝に、上記固定部材貫通孔から半径方向内向きに突出する係合突起が係合し、上記中空パイプに対して上記棒体の周方向の回転が規制される、移動支援用具。
【請求項2】
上記棒体と上記回転部材との間に配置される第二当接部材を備えており、
上記第二当接部材が円筒形状を備えており、その軸方向に延びる切り欠きを備えており、
上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が直接又は間接に上記第二当接部材を押圧する様に構成されており、
上記押圧部が押圧する上記第二当接部材が、上記棒体の外周面に押し当てられる請求項1に記載の移動支援用具。
【請求項3】
中空パイプの一端に軸方向に移動可能な棒体を上記中空パイプに対して位置決め固定する伸縮固定具を有する移動支援用具であって、
上記伸縮固定具が、上記中空パイプに固定される固定部材と、上記棒体の軸方向を回転軸に回転することで上記固定部材に係合する回転部材と、上記棒体と上記回転部材との間に配置される第二当接部材とを備えており、
上記回転部材が、上記棒体が通される回転部材貫通孔と、押圧部とを備えており、
上記固定部材が、上記棒体が通される固定部材貫通孔を備えており、
上記第二当接部材が円筒形状を備えており、その軸方向に延びる切り欠きを備えており、
上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が直接又は間接に上記第二当接部材を押圧する様に構成されており、
上記押圧部が押圧する上記第二当接部材が、上記棒体の外周面に押し当てられ、
上記棒体に形成された軸方向に延びるスライド溝に、上記固定部材貫通孔から半径方向内向きに突出する係合突起が係合し、上記中空パイプに対して上記棒体の周方向の回転が規制される、移動支援用具。
【請求項4】
上記棒体と上記回転部材との間に配置されたスペーサーを備えており、
上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が上記スペーサーを介して上記第一当接部を押圧する様に構成されている請求項1又は2に記載の移動支援用具。
【請求項5】
上記棒体と上記回転部材との間に配置されたスペーサーを備えており、
上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が上記スペーサーを介して上記第二当接部材を押圧する様に構成されている請求項2又は3に記載の移動支援用具。
【請求項6】
上記棒体が外周面に形成されて周方向に延びる位置決め溝を備えており、
上記第一当接部が、半径方向内向きに突出する位置決め凸部を備えており、
上記押圧部が上記第一当接部を押圧する状態において、上記位置決め凸部が上記位置決め溝に係合している請求項1、2及び4のいずれかに記載の移動支援用具。
【請求項7】
上記棒体が外周面に形成されて周方向に延びる位置決め溝を備えており、
上記第二当接部材が、半径方向内向きに突出する位置決め凸部を備えており、
上記押圧部が上記第二当接部材を押圧する状態において、上記位置決め凸部が上記位置決め溝に係合している請求項2、3及び5のいずれかに記載の移動支援用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮固定具を備える移動支援用具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-188664号公報には、フットレストを備える車いすが開示されている。このフットレストは、車いすに着座した使用者の足を支持する。このフットレストは、レッグポストに取り付けられている。このレッグポストがレッグパイプに通されている。このレッグパイプの軸方向におけるレッグポストの固定位置を変更することで、フットレストの高さ位置が調整される。このフットレストは、ボルトを締め付けるだけで、高さ位置が調整される。この車いすは、使用者の体型に合わせて、フットレストの高さ位置が調整される。
【0003】
特開2005-118145号公報にも、フットレストを備える車いすが開示されている。このフットレストは、ブラケット棒に取り付けられている。このブラケット棒は、ステップ取付部にスライド可能に通されている。このステップ取付部におけるブラケット棒の固定位置を変更することで、フットレストの高さ位置が調整される。このフットレストは、ステップ取付部に取り付けられたピンをブラケット棒の穴に通すことで、ブラケット棒の固定位置を変更できる。この車いすも、使用者の体型に合わせて、フットレストの高さ位置が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-188664号公報
【文献】特開2005-118145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2015-188664号公報の車いすでは、フットレストの高さ位置の調整に、ボルトを緩めたり締め付けたりする工具が使用される。この車いすでは、この高さ位置の調整に工具が必要とされる。一方、特開2005-118145号公報の車いすでは、フットレストの高さ位置の調整に、ピンをブラケット棒の穴の位置に合わせて通す必要がある。このピンの位置を穴の位置に合わせることは容易ではない。また、ピンを操作する作業は、指先に力の入りにくい使用者には、困難である。特に、車いすは、身障者、高齢者、負傷者等に使用されることが多い。この様な使用者にとっては、この高さ位置の調整は容易でない。
【0006】
本発明の目的は、容易に長さを調整しうる伸縮固定具を備える移動支援用具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る移動支援用具は、中空パイプの一端に軸方向に移動可能な棒体を、上記中空パイプに対して位置決め固定する、伸縮固定具を有する。この移動支援用具では、上記伸縮固定具は、上記中空パイプに固定される固定部材と、上記棒体の軸方向を回転軸に回転することで上記固定部材に係合する回転部材とを備えている。上記回転部材は、上記棒体が通される回転部材貫通孔と、押圧部とを備えている。上記固定部材は、上記棒体が通される固定部材貫通孔と、上記中空パイプに取り付けられたときに上記中空パイプの一端から軸方向に突出する第一当接部とを備えている。上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が直接又は間接に上記第一当接部を押圧する様に構成されている。上記押圧部が押圧する上記第一当接部は、上記棒体の外周面に押し当てられる。
【0008】
好ましくは、この移動支援用具は、上記棒体と上記回転部材との間に配置される第二当接部材を備えている。上記第二当接部材は、円筒形状を備えている。上記第二当接部材は、その軸方向に延びる切り欠きを備えている。上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が直接又は間接に上記第二当接部材を押圧する様に構成されている。上記押圧部が押圧する上記第二当接部材は、上記棒体の外周面に押し当てられる。
【0009】
本発明に係る他の移動支援用具は、中空パイプの一端に軸方向に移動可能な棒体を、上記中空パイプに対して位置決め固定する、伸縮固定具を有する。この移動支援用具では、上記伸縮固定具は、上記中空パイプに固定される固定部材と、上記棒体の軸方向を回転軸に回転することで上記固定部材に係合する回転部材と、上記棒体と上記回転部材との間に配置される第二当接部材とを備えている。上記回転部材は、上記棒体が通される回転部材貫通孔と、押圧部とを備えている。上記第二当接部材は円筒形状を備えている。上記第二当接部材は、その軸方向に延びる切り欠きを備えている。上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が直接又は間接に上記第二当接部材を押圧する様に構成されている。上記押圧部が押圧する上記第二当接部材は、上記棒体の外周面に押し当てられる。
【0010】
好ましくは、この移動支援用具は、上記棒体と上記回転部材との間に配置されたスペーサーを備えている。上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部は上記スペーサーを介して上記第一当接部を押圧する様に構成されている。
【0011】
好ましくは、この移動支援用具は、上記棒体と上記回転部材との間に配置されたスペーサーを備えている。上記回転部材が軸方向を回転軸に回転して、上記回転部材が上記固定部材に係合することで、上記押圧部が上記スペーサーを介して上記第二当接部材を押圧する様に構成されている。
【0012】
好ましくは、上記棒体は、外周面に形成されて周方向に延びる位置決め溝を備えている。上記第一当接部は、半径方向内向きに突出する位置決め凸部を備えている。上記押圧部が上記第一当接部を押圧する状態において、上記位置決め凸部が上記位置決め溝に係合している。
【0013】
好ましくは、上記棒体は、外周面に形成されて周方向に延びる位置決め溝を備えている。上記第二当接部材は、半径方向内向きに突出する位置決め凸部を備えている。上記押圧部が上記第二当接部材を押圧する状態において、上記位置決め凸部が上記位置決め溝に係合している。
【0014】
好ましくは、移動支援用具は、回転抑制部材を備えている。上記回転抑制部材は、上記回転部材と上記固定部材との係合が弛む向きに上記回転部材が回転することを抑制する。
【0015】
好ましくは、上記固定部材に上記回転抑制部材が取り付けられている。上記回転抑制部材は、係合ピンと、この係合ピンをその先端が突出する向きに付勢する弾性体とを備えている。上記固定部材は、上記係合ピンの先端が突出する向きの移動を規制するストッパーを備えている。上記回転部材は、係合凹部を備えている。上記係合凹部は、上記回転部材が上記固定部材に係合される回転向きの後方から前方に向かって深くなる係合テーパ面を備えている。上記中空パイプに上記棒体が固定された状態において、上記係合ピンの頸下長さLpは、上記固定部材の上記ストッパーから上記回転部材の上記端面までの距離Dtより大きくされている。
【0016】
好ましくは、上記中空パイプに上記棒体が固定された状態において、上記係合ピンの頸下長さLpは、上記固定部材の上記ストッパーから上記回転部材の上記係合凹部の底面までの距離Dbより小さくされている。
【0017】
好ましくは、この移動支援用具に用いられる伸縮固定具は、中空パイプの一端に軸方向に移動可能に挿入される棒体を上記中空パイプに対して位置決め固定する。
この伸縮固定具は、上記中空パイプに固定される固定部材と、上記固定部材に螺合される回転部材とを備えている。
上記固定部材は、上記棒体が通される固定部材貫通孔と、雄ねじが形成された雄ねじ部と、上記中空パイプに取り付けられたときに上記中空パイプの一端から軸方向に突出する第一当接部とを備えている。上記第一当接部は、外周面に形成されて上記中空パイプから離れる向きに向かって中空パイプの半径方向外側から内側に傾斜して延びる第一外テーパ面と、軸方向に延びて先端に開口する切り欠きとを備えている。
上記回転部材は、上記固定部材に対向する端面と、上記棒体が通される回転部材貫通孔と、内周面に形成されて上記雄ねじに螺合する雌ねじと、内周面に形成される押圧部とを備えている。
上記回転部材の雌ねじが上記固定部材の雄ねじに螺合されることで、上記押圧部は、直接又は間接に上記第一外テーパ面を押圧して、上記第一当接部が上記棒体の外周面に押し当てられる。
【0018】
好ましくは、この伸縮固定具は、円筒状の軸方向一端から他端まで切り欠かれた第二当接部材と、円筒状のスペーサーとを備えている。
上記第二当接部材は、外周面に形成されて軸方向に対して半径方向外側から内側に傾斜して延びる第二外テーパ面と、内周面に突出する位置決め凸部とを備えている。
上記棒体は、外周面に形成されて周方向に延びる位置決め溝を備えている。
上記棒体が上記回転部材、上記第二当接部材、上記スペーサー、上記固定部材の順に通された状態で、上記回転部材の雌ねじが上記固定部材の雄ねじに螺合されることで、
上記押圧部は、直接又は間接に上記第二外テーパ面を押圧して、上記位置決め凸部が上記位置決め溝に係合しており、上記スペーサーは、上記第一外テーパ面を押圧して上記第一当接部が上記棒体の外周面に押し当てられる。
【0019】
好ましくは、この伸縮固定具は、回転抑制部材を備えている。上記固定部材に上記回転抑制部材が取り付けられている。上記固定部材の上記雄ねじ部と上記回転部材の上記雌ねじ部とが螺合した状態において、上記回転抑制部材が上記回転部材に係合して上記回転部材の回転を抑制する。
【0020】
好ましくは、上記回転抑制部材は、係合ピンと、この係合ピンをその先端が突出する向きに付勢する弾性体とを備えている。上記固定部材は、上記係合ピンの先端が突出する向きの移動を規制するストッパーを備えている。上記回転部材は、係合凹部を備えている。上記係合凹部は、上記回転部材が上記固定部材に螺合される回転向きの後方から前方に向かって深くなる係合テーパ面を備えている。上記中空パイプに上記棒体が固定された状態において、上記係合ピンの頸下長さLpは、上記固定部材の上記ストッパーから上記回転部材の上記端面までの距離Dtより大きくされている。
【0021】
好ましくは、上記中空パイプに上記棒体が固定された状態において、上記係合ピンの頸下長さLpは、上記固定部材の上記ストッパーから上記回転部材の上記係合凹部の底面までの距離Dbより小さくされている。
【0022】
好ましくは、上記中空パイプは、車いすのフットレストパイプとステップポストとのいずれか一方であり、上記棒体がその他方である。
【発明の効果】
【0023】
この移動支援用具の伸縮固定具では、回転部材を手で握って、回転部材は固定部材に回転させられる。この回転によって、回転部材の押圧部が直接又は間接に第一当接部及び第二当接部材の少なくとも一方を棒体の外周面に押し付ける。これにより、中空パイプに対して棒体が位置決めされる。この伸縮固定具では、長さや高さを調整するために、指先でピンを抜き差しする作業が必要とされない。この伸縮固定具では、工具が必要とされない。この伸縮固定具では、容易に長さや高さの調整がされうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る移動支援用具である車いすが示された斜視図である。
図2図2は、図1の車いすのサイドフレームとアームサポートとの部分分解図である。
図3図3は、図1の車いすの伸縮固定具とその周辺部の部分分解図である。
図4図4は、図3の車いすのステップポストの一部が示された説明図である。
図5図5は、図3の伸縮固定具の固定部材が示された説明図である。
図6図6は、図3の伸縮固定具の回転部材が示された説明図である。
図7図7は、図6の回転部材の、軸線に沿った断面図である。
図8図8は、図3の伸縮固定具の第二当接部材が示された説明図である。
図9図9は、図3の伸縮固定具の使用状態が示された部分断面図である。
図10図10(a)は図3の伸縮固定具の他の使用状態が示された部分断面図であり、図10(b)は更に他の使用状態が示された部分断面図である。
図11図11は、図1の車いすの背折れ連結具の断面図である。
図12図12(a)は図11の背折れ連結具の使用状態が示された断面図であり、図12(b)は図11の背折れ連結具の他の使用状態が示された断面図である。
図13図13は、図1の車いすの背折れ連結具と後アーム支持具の一部が示された説明図である。
図14図14は、本発明の他の実施形態に係る車いすの伸縮固定具が示された説明図である。
図15図15は、本発明の更に他の実施形態に係る車いすの伸縮固定具とその周辺部の部分分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0026】
図1には、本発明に係る移動支援用具の一例である車いす1が示されている。この車いす1は、一対のサイドフレーム2、一対のアームサポート3、クロスフレーム4、一対のフットレッグサポート5、一対の前輪6、一対の後輪7、座シート8、背シート9及びブレーキ装置10を備えている。図1の矢印Xは、車いす1の前後方向前向きを表している。矢印Yは、車いす1の左右方向左向きを表している。矢印Zは、車いす1の上下方向上向きを表している。
【0027】
クロスフレーム4は、一対のサイドフレーム2を連結している。クロスフレーム4は、一対のシートパイプ4a及びクロスメンバー対4bを備えている。一対のシートパイプ4aは、左右のサイドフレーム2に沿って前後方向に延びている。クロスメンバー対4bは、クロスメンバー4cとクロスメンバー4dとからなっている。このクロスメンバー4cの中央部とクロスメンバー4dの中央部が軸着されている。クロスメンバー4cの上端は、左のシートパイプ4aに固定されている。クロスメンバー4cの下端部は右のサイドフレーム2に軸着されている。クロスメンバー4dの上端は、右のシートパイプ4aに固定されている。クロスメンバー4dの下端部は左のサイドフレーム2に軸着されている。
【0028】
このクロスメンバー対4bを回動させることで、一対のサイドフレーム2の間隔が変更可能にされている。このクロスフレーム4によって、車いす1の全幅が変更可能にされている。この車いす1の姿勢は、図1に示される、使用者が着座する使用姿勢と、左右のサイドフレーム2が互いに近づけられた折り畳み姿勢との間で変更可能にされている。
【0029】
それぞれの前輪6は、キャスター本体6a、車輪6b及びキャスター支持具6cを備えている。キャスター支持具6cはサイドフレーム2の前方下部に固定されている。キャスター本体6aは、キャスター支持具6cに上下方向を回転軸にして回転可能に支持される。車輪6bは、キャスター本体6aに回転可能に支持されている。
【0030】
座シート8は、一対のシートパイプ4aに架け渡される。この座シート8は、車いす1に着座する使用者の臀部を支持する。背シート9は、座シート8の後方かつ上方で、一対のサイドフレーム2に架け渡されている。背シート9は、着座する使用者の背中を支持する。
【0031】
ブレーキ装置10は、図示されないブレーキ本体と、ブレーキレバー10aと、ブレーキワイヤー10bとを備えている。ブレーキ本体は、後輪7に取り付けられている。ブレーキ本体は、後輪7の回転を制動する機能を備えている。ブレーキワイヤー10bは、ブレーキ本体とブレーキレバー10aとを接続している。ブレーキレバー10aは、サイドフレーム2に取り付けられている。ブレーキレバー10aが握られることで、ブレーキワイヤー10bを介して、ブレーキ本体が後輪7の回転を制動する。ブレーキレバー10aを握ることをやめることで、ブレーキ本体が後輪7の回転の制動を解除する。このブレーキ本体としては、ドラムブレーキ、ディスクブレーキ、バンドブレーキ等が例示される。
【0032】
図2には、右側に位置する、サイドフレーム2、アームサポート3及びフットレッグサポート5が示されている。ここでは、右側に位置する、サイドフレーム2、アームサポート3及びフットレッグサポート5について説明がされるが、左側に位置するそれぞれも、略左右対称に同様に構成されている。
【0033】
このサイドフレーム2は、ベースパイプ12、シートサイドパイプ13、フロントパイプ14、後輪取付部15、背下パイプ16、背上パイプ17、背折れ連結具18、クロスフレーム取付部19、前座受具20及び後座受具21を備えている。アームサポート3は、アームパイプ22、前アーム支持具23及び後アーム支持具24を備えている。フットレッグサポート5は、中空パイプとしてのレッグパイプ25、棒体としてのレッグポスト26、フットレスト27及び伸縮固定具28を備えている。
【0034】
図2に示される様に、サイドフレーム2のベースパイプ12は、サイドフレーム2の下側に位置して前後方向に延びている。ベースパイプ12は、フロントパイプ14から後輪取付部15まで延びている。ベースパイプ12には、クロスフレーム取付部19が取り付けられている。このクロスフレーム取付部19は、クロスメンバー4cの下端部を回動可能に支持する(図1参照)。図示されない左側に位置する、サイドフレーム2のクロスフレーム取付部19は、クロスメンバー4dの下端部を回動可能に支持する(図1参照)。
【0035】
シートサイドパイプ13は、ベースパイプ12の上方に位置して、前後方向に延びている。シートサイドパイプ13は、フロントパイプ14から後輪取付部15まで延びている。このシートサイドパイプ13に、前座受具20及び後座受具21が取り付けられる。後座受具21は、前座受具20の後方に位置している。
【0036】
この前座受具20及び後座受具21に、右のシートパイプ4aが着脱可能に支持される。左のシートサイドパイプ13に取り付けられた、図示されない前座受具20及び後座受具21に、左のシートパイプ4aが着脱可能に支持される。これにより、クロスフレーム4は、一対のサイドフレーム2を連結している。
【0037】
フロントパイプ14は、サイドフレーム2の前側に位置している。フロントパイプ14は、上下方向に延びている。フロントパイプ14は、ベースパイプ12の前端とシートサイドパイプ13の前端とに連結している。
【0038】
後輪取付部15は、サイドフレーム2の後側に位置している。後輪取付部15は、上下方向に延びている。後輪取付部15は、ベースパイプ12の後端とシートサイドパイプ13の後端とに連結されている。この後輪取付部15には、後輪7が取り付けられる。
【0039】
それぞれの背下パイプ16は、後輪取付部15の上端から上方に延びている。背下パイプ16は、シートサイドパイプ13の後端部から上方に延びていてもよい。この背下パイプ16は、下方から上方に向かって前方から後方向きに傾斜して延びている。
【0040】
それぞれの背上パイプ17は、背下パイプ16の上方に位置している。背上パイプ17は、中空パイプとしての第一背上パイプ29、棒体としての第二背上パイプ30、ハンドル取付部31、伸縮固定具28及びハンドル33を備えている。第一背上パイプ29は、第二背上パイプ30の下方に位置している。第二背上パイプ30は、伸縮固定具28によって、第一背上パイプ29に取り付けられている。ハンドル取付部31は、第二背上パイプ30の上端から後方に向かって延びている。このハンドル取付部31に、ハンドル33が固定されている。このハンドル33は、車いす1の後方に立つ介助者によって握られる。
【0041】
背折れ連結具18は、背下パイプ16と背上パイプ17との間に位置している。背折れ連結具18は、背下パイプ16と背上パイプ17とを連結している。背折れ連結具18は、背下パイプ16に対して、左右方向を回動軸にして、背上パイプ17を回動可能にしている。
【0042】
図2に示される様に、アームサポート3のアームパイプ22は、前後方向に延びる主部22aと上下方向に延びる前端部22bとを備えている。前アーム支持具23は、フロントパイプ14に取り付けられる。後アーム支持具24は、背下パイプ16に取り付けられる。アームパイプ22は、前アーム支持具23及び後アーム支持具24によって、サイドフレーム2に取り付けられる。サイドフレーム2に取り付けられたアームパイプ22の主部22aは、シートサイドパイプ13の上方に位置して、前後方向に延びている。
【0043】
前アーム支持具23は、フロントパイプ14に取り付けられる。アームパイプ22の前端部22bは、前アーム支持具23の有底の挿入孔23aに挿入される。前アーム支持具23には、セットビスがねじ込まれる。このセットビスが前端部22bに押し当てられて、先端部22bは挿入孔23aから抜け止めされる。この様にして、アームパイプ22の前端部22bは、フロントパイプ14に着脱可能に取り付けられる。アームパイプ22の前端部22bは、シートサイドパイプ13に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0044】
後アーム支持具24は、取付部24a、支持部24b及び連結部24cを備えている。取付部24aは、背下パイプ16に取り付けられる。支持部24bに、アームパイプ22が取り付けられる。連結部24cは、取付部24aと支持部24bとの間に位置して、取付部24aと支持部24bとを連結している。この連結部24cは、下方から上方に向かって、左右方向内側から外側向きに傾斜して延びている。これにより、取付部24aに対して、支持部24bは、上方にかつ左右方向外側に位置している。この取付部24aは、背下パイプ16に取り付けられる。アームパイプ22の主部22aは、支持部24bに、着脱可能に取り付けられる。このアームサポート3は、サイドフレーム2に着脱可能に取り付けられる。
【0045】
図2に示される様に、フットレッグサポート5のレッグパイプ25は、フロントパイプ14の前方に位置している。フットレスト27は、レッグポスト26に取り付けられている。レッグポスト26は、伸縮固定具28によって、レッグパイプ25に取り付けられている。
【0046】
このレッグパイプ25は、上端部25a、中間部25b、下端部25c及び支持部25dを備えている。上端部25aは、シートサイドパイプ13の前端から前方に延びている。中間部25bは、上端部25aの前端から、上方から下方に向かって後方から前方の向きに傾斜して延びている。下端部25cは、中間部25bの下端から下方に向かって延びている。支持部25dは、ベースパイプ12の前端から下端部25cまで延びている。
【0047】
図3に示される様に、レッグパイプ25の下端部25cには、貫通孔34が形成されている。このレッグパイプ25は、中空パイプからなっている。このレッグパイプ25は、その軸方向に延びる空孔を備えている。この空孔は、下端部25cの軸方向に垂直な断面において、円形の内周面に囲まれている。貫通孔34は、この空孔を横切って、下端部25cを貫通している。
【0048】
図3の一点鎖線L1は、伸縮固定具28の軸線を表している。この軸線L1は、レッグパイプ25の下端部25cの軸線とレッグポスト26の軸線でもある。伸縮固定具28は、固定部材35、回転部材36、第二当接部材37、スペーサー38、係合ピン39を備えている。更に、図3では図示されないが、伸縮固定具28は、弾性体としてのコイルばね40を備えている(図9参照)。この固定部材35は、貫通孔34に通された固定軸201によって、レッグパイプ25の下端部25cに取り付けられている。
【0049】
この伸縮固定具28では、レッグパイプ25の下端部25cの軸線とレッグポスト26の軸線とは軸線L1上に位置しているが、これに限られない。この下端部25cの軸線に対して、レッグポスト26の軸線は、レッグパイプ25の半径方向にずれていてもよく、傾斜していてもよい。
【0050】
図4に示される様に、レッグポスト26は、挿入部41を備えている。この挿入部41は、レッグパイプ25の軸方向に延びる空孔に挿入される部分である。この挿入部41は、外周面42を備えている。この外周面42に、スライド溝43、位置決め溝44及び長孔45が形成されている。この外周面42は、スライド溝43、位置決め溝44及び長孔45が形成されなければ、軸方向に垂直な断面において、円形の輪郭を備えている。スライド溝43は、軸方向に延びている。位置決め溝44は、外周面42を周方向に延びている。この位置決め溝44は、周方向に一周している。複数の位置決め溝44が、軸方向に所定の間隔をあけて形成されている。長孔45は、軸方向をその長手方向として、挿入部41の軸方向に垂直に交わる方向に、挿入部41を貫通している。
【0051】
図5に示される様に、伸縮固定具28の固定部材35は、頭部46、雄ねじ部47及び第一当接部48を備えている。伸縮固定具28の軸方向において、頭部46は雄ねじ部47の一方に位置し、第一当接部48は雄ねじ部47の他方に位置している。
【0052】
この頭部46の軸方向端面46aに、有底の大径孔49が軸方向に沿って形成されている。更に、固定部材35は、固定部材貫通孔としての小径孔50を備えている。この小径孔50は、第一当接部48の端面48aから大径孔49の底面49aまで、軸方向に沿って形成されている。小径孔50の内周面51には、半径方向内向きに突出する一対の係合突起52が形成されている。
【0053】
この頭部46には、頭部46を貫通するピン孔53が形成されている。このピン孔53は、大径孔49より半径方向外側に位置している。ピン孔53の軸線は、軸線L1に平行である。この頭部46には、ピン孔53の一方の開口端に、ストッパーとしての端面54を備えている。この端面54は、ピン孔53の軸線に直交して拡がる平面である。更に、この頭部46には、大径孔49の半径方向に延びる貫通孔35aが形成されている(図3参照)。
【0054】
雄ねじ部47には、雄ねじ55が形成されている。第一当接部48は、軸方向において、第一当接部48の端面48aから雄ねじ部47に向かって、半径方向内側から外側向きに傾斜して延びる第一外テーパ面56が形成されている。第一当接部48には、軸方向に延びる複数の切り欠き57が形成されている。これらの切り欠き57は、周方向に並んでいる。それぞれの切り欠き57は、第一当接部48の外周面から内周面まで貫通している。この切り欠き57は、第一当接部48の先端としての端面48aに開口している。
【0055】
図6に示される様に、回転部材36は、軸方向に貫通する固定部材貫通孔36aが形成されて、略円筒状の形状を備えている。回転部材36は、外周面58、内周面59及び端面60を備えている。この外周面58には、周方向に並べられた多数の凹部61が形成されている。この凹部61によって、外周面58に凹凸が形成されている。端面60は、軸方向において、固定部材35の頭部46に対向する面である。この端面60には、周方向に並べられた複数の係合凹部63が形成されている。この係合凹部63は、回転部材36の周方向一方から他方に向かって深くなる係合テーパ面64と、浅くなる係合テーパ面65とを備えている。
【0056】
図7に示される様に、この回転部材36の内周面59には、雌ねじ66と、押圧部としてのテーパ面67が形成されている。なお、先に示した図6では、内周面59の雌ねじ66は省略されている。雌ねじ66は、固定部材35の雄ねじ55と螺合する。雌ねじ66は、軸方向において、端面60側に形成されている。テーパ面67は、雌ねじ66より端面60から離れて形成されている。テーパ面67は、端面60から離れる向きに向かって、半径方向外側から内側向きに傾斜している。
【0057】
図8に示される様に、第二当接部材37の形状は、軸方向に延びる切り欠きを備えた略円筒形状である。ここでの軸方向は、軸に対して平行な方向に限られず、軸方向に対して斜めになっている方向をも含む。第二当接部材37は、軸方向に垂直な断面において、C型状の形状を備えている。第二当接部材37は、端面37aと外周面37bと内周面37cとを備えている。この端面37aは、固定部材35と回転部材36との間に組み付けられた状態で、固定部材35の頭部46に対向する面である。この外周面37bには、第二外テーパ面としてのテーパ面69が形成されている。このテーパ面69は、軸方向において端面37aから離れる向きに向かって、半径方向外側から内側向きに傾斜して延びている。内周面37cには、位置決め凸部としての筋状凸部71が形成されている。この筋状凸部71は周方向に延びている。
【0058】
この第二当接部材37の切り欠きは、第二当接部材37を縮径可能にできればよく、この切り欠きは、軸方向において、端面37aから他方の端面までの延びているものに限られない。この切り欠きは、端面37aに開口し他方の端面に開口してなくともよい。この切り欠きは、端面37aに開口せずに他方の端面に開口していてもよい。更には、この切り欠きは、外周面37bに開口して、端面37や他方の端面に開口していなくてもよい。
【0059】
図9には、図3の係合ピン39が固定部材35の頭部46に取り付けられた使用状態が示されている。この図9では、回転部材36は、固定部材35に螺合されている。言い換えると、回転部材36は固定部材35に係合されている。図9は、レッグパイプ25にレッグポスト26が固定された状態における、固定部材35と回転部材36との位置関係を表している。
【0060】
係合ピン39は、頭部39a、頸下部39b、先端39c及びナット39dを備えている。頸下部39bの外周面には、雄ねじ39eが形成されている。この係合ピン39は、頭部46のピン孔53に挿入されている。係合ピン39の先端39cは、回転部材36の端面60に向かって、頭部46から突出している。コイルばね40は、ピン孔53に挿入されている。係合ピン39の雄ねじ39eにナット39dが螺合されて、コイルばね40が抜け止めされている。コイルばね40は、係合ピン39の先端39cが頭部46から突出する向きに、係合ピン39を付勢している。係合ピン39の頭部39aが端面54に当接している。この端面54は、付勢された係合ピン39のストッパーとして機能している。この係合ピン39の先端39cは、係合凹部63に挿入されている。
【0061】
図9の両矢印Lpは、係合ピン39の頸下長さを表している。この頸下長さLpは、頭部39aの端面から先端39cまで長さとして測定される。両矢印Dtは、固定部材35の端面54から回転部材36の端面60までの軸方向距離を表している。両矢印Dbは、固定部材35の端面54から回転部材36の係合凹部63の底面63aまでの軸方向距離を表している。図9の状態において、頸下長さLpは、距離Dtより大きくされている。この状態において、頸下長さLpは、距離Dbより小さくされている。
【0062】
図3に示される様に、スペーサー38は、円筒形状を備える。スペーサー38は、軸方向において、固定部材35と第二当接部材37との間に位置する。
【0063】
固定部材35の大径孔49にレッグパイプ25の下端部25cが挿入される。固定部材35の貫通孔35aと下端部25cの貫通孔34とに固定軸201が通される。この固定軸201によって、固定部材35が、レッグパイプ25に固定される。
【0064】
レッグポスト26の挿入部41が、端面60を固定部材35側に向けた姿勢の、回転部材36に通される。更に、挿入部41が、テーパ面69を回転部材36側に向けた姿勢の、第二当接部材37に通される。更に、挿入部41が、スペーサー38に通される。更に、この挿入部41が、固定部材35の小径孔50に通される。更に、この挿入部41は、レッグパイプ25に挿入される。挿入部41の外周面42は、レッグパイプ25の空孔を形成する内周面に摺動可能に挿入される。
【0065】
この挿入部41の長孔45に、固定軸201が通される。これにより、このレッグポスト26は、レッグパイプ25に対してスライド可能に挿入され、レッグパイプ25から抜け止めされる。この固定部材35の係合突起52(図5参照)は、レッグポスト26のスライド溝43に係合する。これにより、レッグパイプ25に対して、レッグポスト26の周方向の回転は規制される。また、レッグポスト26に長孔45が形成されない場合は、固定軸201に代わって、ビスなどを用いて固定部材35をレッグパイプ25に固定してもよい。
【0066】
回転部材36の雌ねじ66が固定部材35の雄ねじ55に螺合させられる。この回転部材36が螺合されるにつれて、回転部材36は、固定部材35に近付く。この回転部材36によって、第二当接部材37及びスペーサー38が固定部材35の第一外テーパ面56に向かって押し上げられる。第二当接部材37の端面37aは、スペーサー38に当接する。スペーサー38の内周面は、固定部材35の第一外テーパ面56に当接する。この状態では、スペーサー38は、軸方向において、固定部材35の雄ねじ部47と第二当接部材37との間に位置する。
【0067】
回転部材36が固定部材35に螺合されると、回転部材36のテーパ面67(図7参照)は、第二当接部材37のテーパ面69に当接する。このテーパ面67とテーパ面69との当接によって、第二当接部材37はスペーサー38を第一外テーパ面56に押し当てる。スペーサー38が押し当てられることによって、固定部材35の第一当接部48が縮径される。この第一当接部48が、レッグポスト26の外周面42に押し当てられる。テーパ面67は、第二当接部材37及びスペーサー38を介して、間接に第一外テーパ面56を押圧する。これにより、レッグパイプ25に対して、レッグポスト26が固定される。
【0068】
回転部材36が固定部材35に螺合されると、回転部材36のテーパ面67(図7参照)は、第二当接部材37のテーパ面69に当接する。このテーパ面67とテーパ面69との当接によって、第二当接部材37が縮径される。第二当接部材37が縮径されることで、第二当接部材37の内周面37cが、レッグポスト26の外周面42に当接する。更に、第二当接部材37の筋状凸部71が、位置決め溝44に係合する。テーパ面67は直接にテーパ面69を押圧する。これにより、レッグパイプ25に対して、レッグポスト26が更に強固に固定される。図3及び図4に示される位置決め溝44の形状は、例示であって、この形状に限られない。位置決め溝44の形状は、挿入部41の表面に、第二当接部材37の筋状凸部71が係合する凹部形状であればよい。
【0069】
この回転部材36の端面60が固定部材35の頭部46に近付くと、係合ピン39が係合凹部63に係合する。この係合によって、固定部材35に対して、回転部材36の回転が抑制される。この係合ピン39と係合凹部63との係合によって、固定部材35に対して、回転部材36の弛み止めがされている。この係合ピン39とコイルばね40とは、回転抑制部材として機能している。
【0070】
この車いす1では、レッグパイプ25、レッグポスト26及び伸縮固定具28は、伸縮機構を構成している。この伸縮機構によって、フットレスト27の高さ位置が調節される。ここでは、レッグパイプ25にレッグポスト26が挿入されたが、これに限られない。レッグポスト26がパイプで形成されて、レッグポスト26にレッグパイプ25が挿入されてもよい。この場合、固定部材35はレッグポスト26に固定される。
【0071】
固定部材35の第一当接部48には、切り欠き57が形成されている。この切り欠き57によって、第一当接部48の縮径が容易にされている。この固定部材35では、第一外テーパ面56を備えることで、第一当接部48の縮径が容易にされている。これにより、第一当接部48は、レッグポスト26の外周面42に強く押し当てられる。
【0072】
第二当接部材37は、一部が切り欠かれたC型状の形状を備えている。この形状を備えることによって、第二当接部材37の縮径が容易にされている。テーパ面69を備えることで、第二当接部材37の縮径が容易にされている。これにより、第二当接部材37の内周面37cは、大きく縮径変形しうる。第二当接部材37の内周面37cは、レッグポスト26の外周面42に強く押し当てられる。これにより、筋状凸部71と位置決め溝44との係合が容易にされている。
【0073】
更に、回転部材36は、その内周面にテーパ面67を備えることで、第二当接部材37の縮径を更に容易にしている。このテーパ面67は、レッグパイプ25に対するレッグポスト26の位置決めをより容易にしている。
【0074】
この伸縮固定具28では、雄ねじ55と雌ねじ66との螺合によって、第一外テーパ面56に、スペーサー38が押し当てられる。この螺合によって、第二当接部材37のテーパ面69に、回転部材36のテーパ面67が押し当てられる。この第一テーパ面56と、テーパ面69と、雄ねじ55及び雌ねじ66の螺合とに組み合わせによって、比較的に小さい力で、レッグパイプ25に対するレッグポスト26の位置決めがされる。この伸縮固定具28は、大きな力をかけることなく、レッグパイプ25にレッグポスト26を固定しうる。
【0075】
この伸縮固定具28では、係合ピン39が回転部材36の係合凹部63に係合することで、回転部材36が固定部材35から弛むことが抑制されている。この回転抑制部材は、振動や衝撃によって、回転部材36と固定部材35との螺合が弛むことを抑制している。この車いす1は、走行する路面状態や障害物等によって、振動や衝撃を受けることがある。この回転抑制部材を備える伸縮固定具28は、車いす1の伸縮機構に適している。
【0076】
この伸縮固定具28では、係合ピン39は、コイルばね40によって、付勢されている。これにより、係合ピン39は、その軸線方向に移動可能にされた状態で、係合凹部63に向かって付勢されている。この係合凹部63は、回転部材36が固定部材35に螺合される回転向きの後方から前方に向かって深くなる係合テーパ面64を備えている。この係合テーパ面64を備えることで、係合ピン39の先端を係合凹部63から抜き取ることなく、回転部材36を固定部材35に螺合することができる。この伸縮固定具28では、回転部材36を固定部材35に螺合することが容易にされている。
【0077】
この係合凹部63は、回転部材36が固定部材35に螺合が解除される回転向きの後方から前方に向かって深くなる係合テーパ面65を備えている。この係合テーパ面65を備えることで、係合ピン39の先端を係合凹部63から抜き取ることなく、回転部材36を固定部材35の螺合を緩めることができる。この伸縮固定具28では、回転部材36と固定部材35との螺合の解除が容易にされている。
【0078】
この係合凹部63は、この係合テーパ面65が形成されなくともよい。この係合テーパ面65に代えて、回転部材36の周方向に垂直な面が形成されてもよい。この垂直な面が形成されることで、係合ピン39を係合凹部63から抜き取らなければ、回転部材36は螺合を緩める向きの回転が規制される。これにより、回転部材36の螺合の弛み止めが図られうる。また、伸縮固定具28の誤動作の防止にも役立つ。
【0079】
フットレスト27は、車いす1に着座した使用者の足を支持する。使用者が足を動かしたり、踏ん張ったりすることで、フットレスト27は不規則な外力を受ける。この車いす1では、第二当接部材37の筋状凸部71とレッグポスト26の位置決め溝44とが係合して、フットレスト27が位置決めされている。これにより、不規則な外力を受ける場合にも、フットレスト27の高さ位置がずれることが抑制される。
【0080】
この車いす1では、回転部材36の外周面58を握って固定部材35に対して螺合することで、フットレスト27の位置決め固定ができる。この車いす1では、フットレスト27の高さ位置の調節に工具を必要としない。この車いす1では、位置決めのために、指先での細かい作業を必要としない。この車いす1では、身障者、高齢者、負傷者等が、容易に、フットレスト27の高さを調整しうる。
【0081】
この伸縮固定具28では、回転部材36のテーパ面67が間接に固定部材35の第一外テーパ面56を押圧していたが、テーパ面67が第一外テーパ面56に当接して直接に第一外テーパ面56を押圧してもよい。
【0082】
この車いす1では、伸縮固定具28によって、第一背上パイプ29に、第二背上パイプ30が固定されている。この車いす1では、ハンドル33の高さ位置が、フットレスト27と同様に調整可能にされている。これにより、車いす1を押す介助者の背丈に合わせて、ハンドル33の高さを調整しうる。これにより、介助者は楽な姿勢で車いす1を押すことができる。また、ブレーキレバー10aの操作が容易にできる。例えば、坂道を下る際に、介助者は、ブレーキレバー10aの握り加減によって、制動力の加減を容易に調整しうる。
【0083】
更に、この伸縮固定具28の用途は、フットレスト27の高さ位置調整やハンドル33の高さ位置調整に限られない。例えば、クロスフレーム4のクロスメンバー4c及びクロスメンバー4dの長さ調整に用いられてもよい。これにより、使用者の体型に合わせてシート幅を調整しうる。シートパイプ4a、ベースパイプ12及びシートサイドパイプ13の長さ調整に用いられてもよい。これにより、使用者の体型に合わせてシート奥行きを調整しうる。また、アームパイプ22の主部22aの長さや前端部22bの高さ調整に用いられてもよい。更には、後輪取付部15をフロントパイプ14と同様にパイプで形成し、この伸縮固定具28がフロントパイプ14と後輪取付部15との高さ位置調整に用いられてもよい。これにより、座高さを調整しうる。
【0084】
図10(a)には、図9に示された、レッグパイプ25にレッグポスト26が固定された状態に至る過程の状態が示されている。矢印Ffは、固定部材35に対して回転部材36が螺合される向きを示している。この係合ピン39の頸下長さLpは、図9の距離Dtより大きくされている。図10(a)では、係合ピン39の先端39cは、係合凹部63の底面63aに接触していない。係合ピン39の頭部39aは、端面54に当接している。
【0085】
図10(b)には、図9に示された、レッグパイプ25にレッグポスト26が固定された状態に至る過程の他の状態が示されている。この状態は、図9の状態に近い状態が示されている。この係合ピン39の頸下長さLpは、図9の距離Dbより小さくされている。このため、係合ピン39の先端39cが端面60に当接している。この当接により、係合ピン39は、コイルばね40の付勢力に抗して押し上げられている。頭部39aは、端面54から離れている。
【0086】
この伸縮固定具28では、固定部材35に回転部材36が螺合されていくときに、図9に示された、レッグパイプ25にレッグポスト26が固定された状態に至る過程において、係合ピン39は、図10(a)の姿勢と、図10(b)の姿勢とを交互に繰り返す。図10(b)の姿勢から図10(a)の姿勢になるときに、係合ピン39の頭部39aは端面54に当接する。この当接によって、当接音が発生する。
【0087】
この伸縮固定具28では、レッグパイプ25にレッグポスト26が固定された状態において、係合ピン39の頸下長さLpは、距離Dtより大きくされているので、回転部材36の螺合の弛み止めがされている。この頸下長さLpは距離Dbより小さくされているので、レッグパイプ25にレッグポスト26が固定される状態に至ったことが、当接音によって判断できる。この伸縮固定具28は、固定部材35に回転部材36をねじ込み過ぎたり、逆にねじ込み不足を生じたりすることが抑制されている。
【0088】
図11に示される様に、背折れ連結具18は、本体86、下側連結部87、軸88、回動部89、上側連結部90、ピン91、スプリング92及びレバー93を備えている。
【0089】
本体86は、受部94及びピン孔95を備えている。下側連結部87は、本体86の下端から下方に向かって延びている。本体86に、軸88が左右方向を長手方向にして固定されている。回動部89は、軸88を回転軸にして、本体86に対して回動可能にされている。上側連結部90は、回動部89の上端から上方に向かって延びている。ピン91は、回動部89にピン91の長手方向に沿って摺動可能に挿入されている。スプリング92は、ピン91をその先端が押し出される向きに付勢している。レバー93は、ピン91の後部に係合している。図11では、回動部89が受部94に当接している。このとき、スプリング92の付勢力によって、ピン91の先端がピン孔95に挿入されている。
【0090】
下側連結部87の軸線と上側連結部90の軸線とは、同一直線上にある。これにより、下側連結部87に取り付けられる背下パイプ16の軸線と、上側連結部90に取り付けられる背上パイプ17の軸線とは、同一直線上にされる。
【0091】
図12(a)には、背折れ連結具18のレバー93が時計回りに回動させられた状態が示されている。このレバー93の回動によって、スプリング92の付勢力に抗して、ピン91の先端がピン孔95から抜かれている。このピン91とピン孔95との係合が解除されて、本体86に対して回動部89が回動可能になっている。
【0092】
図12(b)では、本体86に対して回動部89が回動した状態が示されている。図12(b)では、背下パイプ16に対して、背上パイプ17が回動している。更に、背上パイプ17を回動させることで、背下パイプ16と背上パイプ17とは、折り畳み可能にされている。
【0093】
図13に示される様に、この車いす1では、後アーム支持具24がアームパイプ22を支持している。この後アーム支持具24は、取付部24aに対して、支持部24bは、上方にかつ左右方向外側に位置している。この車いす1では、背折れ連結具18は、アームパイプ22により下方に位置させることができる。これにより、背上パイプ17を折り畳んだ状態において、車いす1の高さをより低くできる。
【0094】
図14には、本発明の他の実施形態に係る車いす101の伸縮固定具102が示されている。この車いす101では、車いす1の伸縮固定具28に代えて、伸縮固定具102が用いられる他は、車いす1と同様の構成を備えている。この車いす101について、車いす1と異なる構成について説明がされ、同様の構成についてはその説明が省略される。また、ここでは、車いす1と同様の構成については、同じ符号を用いて説明がされる。
【0095】
この伸縮固定具102は、固定部材35、回転部材103、第二当接部材104及びスペーサー105を備えている。図示されないが、この伸縮固定具102は、伸縮固定具28と同様に、係合ピン39及びコイルばね40を備えている。
【0096】
回転部材103は、軸方向に貫通する回転部材貫通孔103aが形成されて、略円筒状の形状を備えている。回転部材103は、外周面106、内周面107及び端面108を備えている。図示されないが、この外周面106には、回転部材36と同様に、多数の凹部61が形成されている。端面108は、軸方向において、固定部材35の頭部46に対向する面である。この端面108には、回転部材36と同様に、周方向に並べられた複数の係合凹部63が形成されている。
【0097】
この回転部材103は、雌ねじ109と、押圧部としての底面110とを備えている。この雌ねじ109は、内周面107に形成されている。雌ねじ109は、固定部材35の雄ねじ55と螺合する。雌ねじ109は、軸方向において、端面108側に形成されている。底面110は、内周面107から半径方向内向きに突出して形成されている。底面110は、雌ねじ109より端面108から離れて形成されている。底面110は、固定部材35に対向する面である。
【0098】
この第二当接部材104は、第二当接部材37と同様に、略円筒形状の一部が切り欠かれた形状を備えている。第二当接部材104の外周面111には、第二外テーパ面としてのテーパ面112が形成されている。このテーパ面112は、固定部材35に向かって、半径方向外側から内側向きに傾斜している。内周面113には、周方向に延びる筋状凸部71が形成されている。
【0099】
スペーサー105は、略円筒形状を備えている。スペーサー105の内周面114には、第一内テーパ面115及び第二内テーパ面116が形成されている。第一内テーパ面115は、軸方向において固定部材35側に形成されている。第一内テーパ面115は、回転部材103から固定部材35に向かって半径方向内側から外側向きに傾斜して延びている。第二内テーパ面116は、軸方向において第二当接部材104側に形成されている。第二内テーパ面116は、固定部材35から回転部材103に向かって半径方向内側から外側向きに傾斜して延びている。
【0100】
この伸縮固定具102では、固定部材35に回転部材103が螺合されると、底面110が第二当接部材104に当接する。第二当接部材104は、スペーサー105に当接する。回転部材103は、第二当接部材104とスペーサー105とを固定部材35に向かって押し上げる。固定部材35の、第一当接部48の第一外テーパ面56は、スペーサー105の第一内テーパ面115に当接する。底面110は、第二当接部材104及びスペーサー105を介して間接に、第一外テーパ面56を押圧する。これにより、第一当接部48は縮径される。第二当接部材104のテーパ面112は、スペーサー105の第二内テーパ面116に当接する。底面110は、スペーサー105を介して間接に、テーパ面112を押圧する。これにより、第二当接部材104が縮径される。この様にして、レッグポスト26はレッグパイプ25に固定される。
【0101】
この伸縮固定具102では、第二当接部材104はスペーサー105に当接して縮径されている。この様に、第二当接部材104の縮径は、スペーサー105によってされてもよいし、伸縮固定具28と同様に、回転部材103によってされてもよい。
【0102】
この伸縮固定具102では、固定部材35の第一当接部48はスペーサー105の第一内テーパ面115に当接して縮径されている。この様に、第一当接部48の縮径は、スペーサー105の様にテーパ面が第一外テーパ面56に当接することによってされてもよいし、伸縮固定具28のスペーサー38の様に、内周面が第一外テーパ面56に当接することによってもされてよい。
【0103】
図15には、本発明の更に他の実施形態に係る車いす120の一部が示されている。この車いす120は、レッグポスト121及び伸縮固定具122を備えている。この車いす120では、車いす1のレッグポスト26に代えて、レッグポスト121が用いられる。車いす1の伸縮固定具28に代えて、伸縮固定具122が用いられる。この車いす120では、その他は、車いす1と同様に構成されている。この車いす120について、車いす1と異なる構成について説明がされ、同様の構成についてはその説明が省略される。また、ここでは、車いす1と同様の構成については、同じ符号を用いて説明がされる。
【0104】
この伸縮固定具122は、固定部材123、回転部材36、第二当接部材37、スペーサー38及び係合ピン39を備えている。図示されないが、この伸縮固定具122は、伸縮固定具28と同様に、コイルばね40を備えている。
【0105】
この固定部材123は、頭部124、雄ねじ部125及び第一当接部126を備えている。雄ねじ部125の軸方向において、頭部124は雄ねじ部125の一方に位置し、第一当接部126は雄ねじ部125の他方に位置している。
【0106】
この頭部124の軸方向端面124aに、大径孔127が形成されている。更に、固定部材123は、固定部材貫通孔としての小径孔128を備えている。この小径孔128の軸線は、大径孔127の軸線に対して、大径孔127の半径方向にずらされている。この頭部124では、大径孔127と小径孔128とは前後方向にずれているが、左右方向にずれていてもよいし、前後左右に対して斜め方向にずれていてもよい。この小径孔128は、第一当接部126の端面126aから端面124aまで、雄ねじ部125の軸方向に沿って形成されている。小径孔128の内周面129には、固定部材35の一対の係合突起52と同様に、半径方向内向きに突出する一対の係合突起が形成されている。
【0107】
この頭部124には、頭部124を貫通するピン孔53が形成されている(図9参照)。このピン孔53は、小径孔128より半径方向外側に位置している。ピン孔53の軸線は、軸線L1に平行である。この頭部124には、ピン孔53の一方の開口端に、ストッパーとしての端面54を備えている。この端面54は、ピン孔53の軸線に直交して拡がる平面である。更に、この頭部124には、大径孔127の半径方向に延びる貫通孔124bと、小径孔128の半径方向に延びる貫通孔124cとが形成されている。
【0108】
雄ねじ部125には、雄ねじ130が形成されている。第一当接部126は、軸方向において、第一当接部126の端面126aから雄ねじ部125に向かって、半径方向内側から外側向きに傾斜して延びる第一外テーパ面131が形成されている。第一当接部126には、軸方向に延びる複数の切り欠き132が形成されている。これらの切り欠き132は、周方向に並んでいる。それぞれの切り欠き132は、第一当接部126の外周面から内周面まで貫通している。この切り欠き132は、第一当接部126の先端としての端面126aに開口している。
【0109】
このレッグポスト121は、小径部133を備えている。この小径部133は、挿入部41に形成されている。小径部133は、挿入部41の外周面42より小径にされて、外周面42から半径方向内向きに凹んだ凹部として形成されている。この小径部133は、挿入部41の上端部に形成され、且つ挿入部41の上端より下端側に形成されている。この小径部133は、挿入部41の軸線方向に、所定の長さで形成されている。レッグポスト121は、この小径部133を備える他は、レッグポスト26と同様に構成されている。
【0110】
この車いす120では、レッグパイプ25が大径孔127に挿入されて、伸縮固定具122が固定される。レッグポスト121は、小径孔128に挿入される。この挿入部41の長孔45に、固定軸202が通される。これにより、このレッグポスト121は、レッグパイプ25に対してスライド可能に挿入され、レッグパイプ25から抜け止めされる。このレッグポスト121は、伸縮固定具122によって、レッグパイプ25に取り付けられている。この車いす120の様に、レッグポスト26の軸線は、レッグパイプ25の軸線に対して、ずらされてもよい。
【0111】
このレッグポスト121には、小径部133が形成されている。第一当接部126及び第二当接部材37が縮径されても第一当接部126及び第二当接部材37が当接しない外径で、この小径部133は形成されている。これにより、この車いす120では、レッグポスト121の固定範囲を所望の範囲に規制している。これにより、フットレスト27と地面との隙間を十分に確保した高さで、レッグポスト121の固定位置を調整しうる。この車いす120では、縁石などの段差とフットレスト27が衝突することが未然に防止されうる。この車いす120では、この小径部133を挿入部41の上端近傍に設けたがこれに限られない。レッグポスト121を固定する位置として望ましくない位置に対応させて、挿入部41に小径部133を設けることで、レッグポスト121の固定範囲を望ましい範囲に規制しうる。
【0112】
この車いす1においても、レッグポスト26に代えてレッグポスト121が用いられてもよい。この車いす120では、レッグパイプ25の軸線の位置とレッグポスト121の軸線の位置とがずれている。これにより、このレッグポスト121の高さ位置の調整範囲をレッグパイプ25による制約を受けることなく設定しうる。この車いす120では、このレッグポスト121を用いることで、レッグポスト121の固定範囲を広い範囲でより好ましい位置に調整しうる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上説明された伸縮固定具の用途は、車いすを例に説明がされたが、これに限られない。この伸縮固定具は、例えば、電動車いす、歩行器、歩行器に車輪が取り付けられた歩行車等の移動支援用具のフレームの伸縮にも広く用いられる。この伸縮固定具は、身障者、高齢者、負傷者等が使用する移動支援用具のフレームの伸縮に特に適している。
【符号の説明】
【0114】
1、101、120・・・車いす
2・・・サイドフレーム
5・・・フットレッグサポート
25・・・レッグパイプ(中空パイプ)
26、121・・・レッグポスト(棒体)
27・・・フットレスト
28、102、122・・・伸縮固定具
35、123・・・固定部材
36、103・・・回転部材
36a、103a・・・回転部材貫通孔
37、104・・・第二当接部材
38、105・・・スペーサー
39・・・係合ピン
40・・・コイルばね
44・・・位置決め溝
48・・・第一当接部
54・・・端面
55、130・・・雄ねじ
56、131・・・第一外テーパ面
57、132・・・切り欠き
60、108・・・端面
63・・・係合凹部
64、65・・・係合テーパ面
66、109・・・雌ねじ
67・・・テーパ面(押圧部)
69、112・・・第二外テーパ面
71・・・筋状凸部
110・・・底面(押圧部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15