IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローブライド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図1
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図2
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図3
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図4
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図5
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図6
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図7
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図8
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図9
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図10
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図11
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図12
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図13
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図14
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図15
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20231206BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20231206BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022202888
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2020115303の分割
【原出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2023024576
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】奥 豊
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-180540(JP,A)
【文献】特開2014-073158(JP,A)
【文献】特開2017-158683(JP,A)
【文献】特開2015-167742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0218053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部と、クラウン部と、ソール部と、サイド部とを備えた中空構造からなる金属製のヘッド本体を有するゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部はカップ状に形成されており、
前記ヘッド本体には、フェース部側に、周方向に沿うように溝が形成されると共に、前記溝の後方側に、ヘッド本体の内部に向けて突出するリブが形成されており、
前記リブは、前記ヘッド本体を構成する外殻部材のフェース部側端部を内方に向けて屈曲することで形成されており、
前記溝は、前記カップ状に形成されたフェース部材の後端側に、ヘッド本体内側に屈曲する段部を形成して、前記段部の後端縁を前記リブに直接当接することで形成されている、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記溝は、周方向に沿って非連続に断続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記溝は、前記クラウン部と前記ソール部と前記サイド部に、前記ヘッド本体の周方向全周に連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記溝は、前記段部をバック側に向けて次第に内方に向けて傾斜させ、その端縁を前記屈曲したリブに当接させることで形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記リブは、前記ヘッド本体の周方向全周に亘って連続して又は非連続に断続して形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記ヘッド本体には、前記リブと連結し、バック側に向けて延出する前後方向リブが更に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、詳細には、フェース部と、クラウン部と、ソール部とを備えた中空構造からなる金属製のゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェース部と、クラウン部と、ソール部とを備えた中空構造からなる金属製のヘッド本体を有するゴルフクラブヘッド(以下、ヘッドとも称する)において、フェース部は、撓み易くすることで、打球時にボールの潰れが抑制され、これにより、ボール変形によるエネルギーロスを少なくして、飛距離の向上が図れることが知られている。例えば、特許文献1には、クラウン部、ソール部、サイド部のフェース側の周囲に溝(内部に突出する屈曲部)を形成して、打球時にフェース部が撓み易いように構成することが知られている。すなわち、クラウン部、ソール部、サイド部のフェース部側に、全周に亘って(ゴルフ規則を考慮した場合、サイド部を除くクラウン部及びソール部でも良い)溝を形成すると、クラウン部、ソール部、サイド部が前後方向(フェース・バック方向)に変位し易くなるため、打球時にフェース部の中央が大きく撓んで、飛距離の向上を図ることが期待できる。
【0003】
また、最近では、フェース部の肉厚を、中心よりも周囲ほど薄くして反発係数の高い範囲を広くすることも行われている。特に、特許文献1のように、ヘッドのフェース部側に溝を形成することで、フェース部全体が撓み易くなることから、その効果を大きくすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-52099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、クラウン部、ソール部、サイド部に溝を形成することで、その部分がフェース・バック方向に撓み易くなり、打球した際、その復元力によってボールの初速を上げる効果が期待できる。しかしながら、溝よりも後方側のクラウン部、ソール部、サイド部に撓みが生じてしまうため、少なからずのエネルギーロスが発生してしまい、その結果、ボールに十分な初速を与えることができない。実際にクラウン部、ソール部、サイド部のフェース部側に溝を形成したヘッドを装着したゴルフクラブで打球したところ、溝があることでフェース部が撓んで高反発領域が得られるものの、十分な飛距離の向上が得られない(ボールの初速が十分ではない)という結果が得られた。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、打球時にフェース部を撓み易くするとともに、エネルギーロスを少なくしてボールの初速の向上が図れるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係るゴルフクラブヘッドは、フェース部と、クラウン部と、ソール部と、サイド部とを備えた中空構造からなる金属製のヘッド本体を有するゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部はカップ状に形成されており、前記ヘッド本体には、フェース部側に、周方向に沿うように溝が形成されると共に、前記溝の後方側に、ヘッド本体の内部に向けて突出するリブが形成されており、前記リブは、前記ヘッド本体を構成する外殻部材のフェース部側端部を内方に向けて屈曲することで形成されており、前記溝は、前記カップ状に形成されたフェース部材の後端側に、ヘッド本体内側に屈曲する段部を形成して、前記段部を前記リブに当接させることで形成されている、ことを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
上記したヘッド構造によれば、クラウン部、ソール部、サイド部に、周方向に沿うように溝が形成されているため、打球時にフェース部を撓み易くすることができる。この場合、前記溝の後方側に一体化するようにリブが形成されているため、溝の後方側は、剛性が高まって撓み難くなる。すなわち、前記リブを形成したことで、打球した際、溝の後方側での撓み(クラウン部及びソール部で生じる撓み)によるエネルギーロスが少なくなり、これにより、フェース部の変形が受け止められて反発性を高めることができる(ボールの初速を向上して、ボールの飛距離の向上が図れるようになる)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るゴルフクラブヘッドの第1の実施形態を示す図であり、ゴルフクラブヘッドを装着したゴルフクラブを示す正面図。
図2図1に示すゴルフクラブヘッドをクラウン部側から見た正面斜視図。
図3図1に示すゴルフクラブヘッドをソール部側から見た正面斜視図。
図4図1のIV―IV線に沿った断面図。
図5図3のV-V線に沿った断面図。
図6図2のVI-VI線に沿った断面図。
図7】ヘッド本体に、溝及びリブを形成していない場合のフェース部におけるCT値の分布状態を示す図。
図8】ヘッド本体に、リブを形成することなく溝を形成した場合のフェース部におけるCT値の分布状態を示す図。
図9】ヘッド本体に、溝及びリブを形成した場合のフェース部におけるCT値の分布状態を示す図。
図10】ゴルフクラブヘッドの第2の実施形態を示す図であり、ヒール部側の内部構造を示す断面図。
図11図10に示すゴルフクラブヘッドのトウ部側の内部構造を示す断面図。
図12図10に示すゴルフクラブヘッドのフェース部側の内部構造を示す断面図。
図13】(a)及び(b)は、それぞれ図10に示すゴルフクラブヘッドの溝とリブの接合状態の一構成例を示す図。
図14】ゴルフクラブヘッドの第3の実施形態を示す図であり、ヒール部側の内部構造を示す断面図。
図15図14に示すゴルフクラブヘッドのトウ部側の内部構造を示す断面図。
図16図14に示すゴルフクラブヘッドのフェース部側の内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るゴルフクラブヘッドの実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1から図6は、ゴルフクラブヘッドの第1の実施形態を示す図であり、図1は、本実施形態に係るゴルフクラブヘッドを装着したゴルフクラブを示す正面図、図2は、図1に示すゴルフクラブヘッドをクラウン部側から見た正面斜視図、図3は、図1に示すゴルフクラブヘッドをソール部側から見た正面斜視図、図4は、図1のIV―IV線に沿った断面図、図5図3のV-V線に沿った断面図、そして、図6図2のVI-VI線に沿った断面図である。
【0015】
以下、本願発明で特定する「バック側」とは、ゴルフクラブヘッドの軸線方向において、フェース部とは反対の後方側を意味する。また、「周方向」とは、ゴルフクラブヘッド(ヘッド本体)の軸線方向と直交する面で切断した際の外縁を意味する。
【0016】
本実施形態に係るゴルフクラブ1は、ヘッド本体3にシャフト50を止着したドライバータイプとして構成されている。
前記ヘッド本体3は、打球面(フェース面)5aを有するフェース部5と、フェース部5の上縁から後方に延出するクラウン部6と、フェース部5の下縁から後方に延出するソール部7と、前記クラウン部6及びソール部7の縁部を繋ぐサイド部8とを備えた中空構造となっている。前記サイド部8は、フェース部5と対向するバック部8aと、フェース部5からバック部8aを経由するトウ部8b及びヒール部8cを備えている。なお、前記サイド部8は、クラウン部6との間、及び、ソール部7との間に形成される稜線によって区画される場合、その稜線同士の間の領域で定義されるが、図に示すように、ソール部7との間で、稜線で区画されることなくソール部から面一状に形成される場合、地面に接地するソール部7から立ち上がった領域で定義される。
【0017】
前記ヘッド本体3は、様々な位置で分割した複数の金属製の外殻部材同士を溶着、接着等によって接合することで構成されている。それぞれの外殻部材については、例えば、チタン合金、アルミ系合金、マグネシウム合金等を鋳造、プレス成形等で一体形成することが可能であり、それぞれの端縁領域を溶接、接着、ロウ付け、ビス止め等することによりヘッド本体3が作成される。この場合、ヘッド本体3を構成する各部材(外殻部材)は、サイド部8を、ソール部7と一体化したり、クラウン部6と一体化する等、複数の部材、或いは各部材の部分的な構成要素を鋳造等で一体形成しておき、それらを溶着、接着等によって接合したものであっても良い。また、サイド部8については、図に示すように、ソール部7との間で稜線を形成することなく面一状に一体化した構成であっても良いし、クラウン部6との間で稜線を形成することなく面一状に一体化した構成であっても良い。
【0018】
前記フェース部5については、例えば、チタン、チタン合金等を、プレス加工、CNC加工、或いは鍛造等することで形成されており、溶接、レーザ溶接、プラズマ溶接、ロウ付け、接着等によって、クラウン部、ソール部及びサイド部の前方側に形成された開口に対して接合される。この場合、フェース部5は、板状に形成されて他の外殻部材に対して接合しても良いし、カップ状に形成されて、クラウン部、サイド部、ソール部の前端縁に接合され、これらの一部を構成していても良い。
【0019】
また、ヘッド本体3内には、シャフト(図示せず)の先端を止着するホーゼル部10が一体形成されている。このホーゼル部10は、クラウン部6から上方に突出しており、この開口穴10aに前記シャフト50の先端部が嵌合され止着される。
【0020】
前記フェース部5の打球面(フェース面)5aは、ゴルフボールを打つ部分であり、上下を規定するトップエッジ5A、ソールエッジ5B、及び両サイドを規定するサイドエッジ5Cによって囲まれた領域となっている。すなわち、フェース面5aについては、ヘッド本体3を正面視した際、それが把握できるように、クラウン部6、ソール部7及びサイド部8との間の稜線(前記トップエッジ5A、ソールエッジ5B、及びサイドエッジ5Cによる境界線)によって把握できるようになっている。なお、稜線が湾曲している場合は、前記境界線は、湾曲頂部によって規定される。この場合、前記フェース面5aが明確になるように、境界線部分を色彩などによって色分けしても良い。また、フェース面5aには、別途、スコアラインを形成しておいても良い。
【0021】
前記フェース部5には、クラウン・ソール方向(上下方向)に沿って湾曲するロールが形成されると共に、トウ・ヒール方向(左右方向)に沿って湾曲するバルジが形成されており、両方の湾曲部の頂部領域に、フェース部5の中央位置(フェースセンター)Cが存在している。このフェースセンターCは、上記したように規定されるフェース面5aの幾何学的中心位置である。すなわち、図1において、ゴルフクラブを基準水平面Pに対して規定のライ角で構えた状態でフェース面5aを正面視した際、フェース面5aの最大幅の中央において基準水平面Pに対して垂直面を引いた場合、その垂直面上におけるフェース高さの中央位置がフェースセンターCとなる。
このフェースセンターCは、フェース部5で最も撓み量(フェース・バック方向の撓み量)が大きい領域となり易い。
【0022】
前記ヘッド本体3のフェース部側には、周方向に沿うように溝20が形成されている。本実施形態の溝20は、クラウン部6のトウ側端部とヒール側端部を除いた領域で、トウ・ヒール方向に延出するように形成され(クラウン側の溝20A;この溝を第一の溝とも称する)、かつ、ソール部7から立ち上がるサイド領域において、トウ側端部とヒール側端部を除いた領域で、ソール部7のトウ・ヒール方向に延出するように形成されている(ソール側の溝20B;この溝を第二の溝とも称する)。すなわち、本実施形態の溝20は、ヘッド本体3のフェース部側において、連続して環状に形成されるのではなく、クラウン部6及びソール部7(サイド部8)の夫々で、トウ側端部及びヒール側端部で終端するように形成されている。
【0023】
このように、ヘッド本体のフェース部側に溝20(第一の溝20A,第二の溝20B)を形成することで、フェース部5の撓み性を向上することが可能となる。なお、溝20の断面形状については、特に限定されることはなく、図4のクラウン部6に形成される第一の溝20Aのように断面凹状、ソール部7に形成される第二の溝20Bのように断面U状、更には、断面V状に形成する等、フェース部5の撓み性を向上できる構成であれば良い。また、溝については、周方向に沿って連続形成されるのではなく、フェース部の撓み性を向上できれば、ヘッド本体のフェース部側において、連続的であっても、或いは非連続的(断続的)に形成されていても良い。
【0024】
前記ヘッド本体3には、上記したように形成される溝20の後方側に、ヘッド本体の内部に向けて突出するリブ22が周方向に沿うように突出形成されている。本実施形態のリブ22は、溝20よりも後方側で、周方向に亘って環状となるように突出形成されており、溝20の後方側の剛性を高くする機能を備えている。
【0025】
なお、リブ22は、フェース部5を効果的に撓ませるように、周方向に亘って環状に形成することが好ましいが、本実施形態のように、溝20が環状に形成されていない場合、第一の溝20A,第二の溝20Bに対応する位置に形成しておいても良い。また、リブ22は、周方向に沿って連続的であっても、或いは非連続的(断続的)に形成されていても良い。
【0026】
前記リブ22は、打球時に、フェース部の撓み性の向上機能を果たす溝20の後方側でクラウン部及びソール部が変形して(撓んで)エネルギーロスが生じることがない程度に形成されていれば良い。具体的には、リブ22の肉厚Tについては、1.0mm以上で、突出高さHについては、1.0mm以上で形成することが好ましい(勿論、それ以下の数値で形成されていても良い)。ただし、肉厚Tを厚く過ぎたり、突出高さHを高くし過ぎると、ヘッド本体が重量化したり、重心位置が前方側にシフトして重心深度が浅くなるため、肉厚Tについては、2.0mm以下、突出高さHについては、3.0mm以下に形成することが好ましい。
【0027】
なお、上記した構成の溝20及びリブ22は、ヘッド本体を構成する外殻部材を鋳造やプレス成形によって形成する際、各外殻部材の接合ポイントを考慮して、外殻部材と共に一体形成することが可能である。
【0028】
上記したヘッド構造によれば、ヘッド本体3のフェース部側に、周方向に沿うように溝20が形成されているため、打球時にフェース部5を撓み易くすることができると共に、溝20から後方側にはリブ22が形成されているため、溝20の後方側は、剛性が高まって撓み難くなる(変形し難くなる)。すなわち、溝20から後方側のクラウン部6、ソール部7、及びサイド部8は、フェース部5が撓むことで変形しようとするが、リブ22を形成したことでそのような変形が抑制され、打球した際、溝20の後方側での撓みによるエネルギーロスが少なくなり、これにより、フェース部5の撓みが効果的に受け止められて反発性を高めることが可能となる(ボールの初速を向上して、ボールの飛距離の向上が図れるようになる)。
【0029】
また、本実施形態では、リブ22を、ヘッド本体内で周方向に亘って連続形成しているため、ヘッド本体3のフェース側に環状の高剛性部が形成されることとなり、フェース部5の周囲全体で、後方側へのエネルギーロスがなくなって、フェース部5の周囲をより効果的に撓ませることが可能となる。これにより、打球した際のボールの初速が向上し、飛距離の向上が図れるようになる。
【0030】
ここで、ヘッド本体3に上記したような溝20及びリブ22を形成することで、フェース部の反発性が、どの程度向上するかについて、一般的に公知であるペンデュラムテストに基づいて測定したCT値の分布状態(フェース部の特定位置毎のCT値の値、及び、等高線分布)を図7から図9に示す。
これらの図において、表で示すCT値は、フェースセンターCにおいて測定したCT値を基準(100%とする)としたものであり、クラウン(U)・ソール(D)方向、及び、トウ(T)・ヒール(H)方向を、それぞれ5mm単位で、各位置での相対値を示したものである。また、等高線分布は、フェースセンターCを中心として、反発領域がどのような分布状態になっているかを示したものである。
【0031】
図7は、ヘッド本体に、溝及びリブを形成していない場合のフェース部におけるCT値の分布状態を示しており、図8は、ヘッド本体に、リブを形成することなく溝を形成した場合のフェース部におけるCT値の分布状態を示している。また、図9は、上記した実施形態のように、ヘッド本体に、溝20及びリブ22を形成した場合のフェース部におけるCT値の分布状態を示している。
【0032】
ヘッド本体に、溝及びリブを形成しない構成(図7参照)と比較して、ヘッドのフェース部側に溝を形成すると(図8参照)、フェースセンターCを中心として、ヒール側5mmの範囲でクラウン側5mmの範囲領域、及び、トウ側10mm~20mmの範囲でクラウン側5mm~10mmの範囲領域で高反発エリアが得られている。すなわち、ヘッド本体に溝、及び、リブを形成しない構成と比較すると、フェース部側に溝を形成することによって、高反発エリアが得られることが分かる。
そして、ヘッド本体のフェース部側に、上記したような溝20及びリブ22を形成すると(図9参照)、フェースセンターCを中心として、ヒール側5mmの範囲でクラウン側5mmの範囲領域、及び、トウ側5mm~20mmの範囲でクラウン側10mm~ソール側10mmの範囲領域で高反発エリアが得られている。
【0033】
すなわち、フェース部全面を考慮すると、ヘッド本体に溝を形成することで、フェース部に高反発エリアが得られるようになり(図8参照)、更に、溝に加え、溝の後方側にリブを形成することで、その高反発エリアを拡大することが可能となる(図9参照)。このように拡大した高反発エリアは、溝の後方側にリブを形成したことで、打球時におけるエネルギーロスを抑えたことで得られたものと考えられ、これにより、ボールの初速を向上することが可能となる。
【0034】
次に、本発明に係るゴルフクラブヘッドの別の実施形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態では、上記した実施形態と同様な構成については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0035】
図10から図12は、ゴルフクラブヘッドの第2の実施形態を示す図であり、図10はヒール部側の内部構造を示す図、図11図10に示すゴルフクラブヘッドのトウ部側の内部構造を示す図、図12図10に示すゴルフクラブヘッドのフェース部側の内部構造を示す図である。
この実施形態のリブ22は、ヘッド本体の内部で周方向に連続して環状に形成されているが、クラウン部6側に形成されるリブ22A(以下、第一のリブとも称する)、及び、ソール部7及びサイド部8側に形成されるリブ22B(以下、第二のリブとも称する)については、クラウン部6側に形成される第一の溝20A、及び、ソール部7及びサイド部8側に形成される第二の溝20Bの後方壁部と一体化するように形成されている。
【0036】
このような第一の溝20A、第二の溝20B及び第一のリブ22A、第二のリブ22Bについては、例えば、図13(a)に示すように、ヘッド本体を構成する外殻部材(図ではクラウン部6を示す)のフェース部5側の端部を、内方に向けて屈曲することで第一のリブ22Aを一体形成すると共に、第一の溝20Aについては、カップ型に形成されたフェース部材の後端側に、ヘッド本体内側に屈曲する段部20aを形成し、段部20aの端縁20bを屈曲形成した第一のリブ22Aに当接させて止着(溶接)することで形成することが可能である。
【0037】
このような構成によれば、屈曲形成された第一のリブ22Aに対して第一の溝20Aの後端縁が当接するため、打球時にフェース部が撓んでも、第一のリブ22Aから後方は変形し難くなり、打球した際のフェース部5の変形がしっかりと受け止められて、フェース部5の反発性をより高めることが可能となる。なお、第一の溝20Aについては、図13(b)に示すように、段部20a´をバック側に向けて次第に内方に向けて傾斜するように形成し、その端縁20b´を屈曲形成したリブ22Aに当接させて止着(溶接)することで、フェース部の撓み性をより向上することが可能になる。
【0038】
図14から図16は、ゴルフクラブヘッドの第3の実施形態を示す図であり、図14はヒール部側の内部構造を示す図、図15図14に示すゴルフクラブヘッドのトウ部側の内部構造を示す図、図16図14に示すゴルフクラブヘッドのフェース部側の内部構造を示す図である。
【0039】
本実施形態では、ヘッド本体3に、前記リブ22と連結され、バック側に向けて延出する前後方向リブ32を形成している。
このように、環状に形成されたリブ22と連結される前後方向リブ32は、クラウン部6、ソール部7、サイド部8が延出する方向に沿うように形成されるため、フェース部5が撓んだ際、その変形を受け止めるように機能し、リブ22による剛性を更に高めることが可能となる。すなわち、リブ22から後方側の変形をより効果的に抑制してエネルギーロスを低減することが可能となり、フェース部5をより効果的に撓ませることが可能となる。
【0040】
なお、上記した前後方向リブ32については、その長さについては特に限定されることはない。また、そのような前後方向リブ32については、クラウン部6のトウ側及びヒール側の両サイド、及び、ソール部7のトウ側及びヒール側の両サイドに形成することで、フェース部5の周囲が効率的に支持された状態となり、フェース部5を安定して撓み易くすることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0042】
上記した溝20については、その溝幅や深さについて、延在方向に沿って変化する構成であっても良い。また、溝20はトウ・ヒール方向に沿って直線状に形成されていたが、湾曲状に形成されていても良い。すなわち、溝20及びリブ22に関し、周方向に沿う形状としては、全周に亘って連続するもの、延出する方向に湾曲しながら連続形成されるもの、連続形成されることなく非連続に断続的に形成されるもの等であっても良く、フェース部が撓み易いように形成されたものであれば良い。また、本発明は、フェース部側に形成される溝の後方に剛性を高めるリブが形成されていれば良く、リブの形成位置や形状については、適宜変形することが可能である。例えば、溝が形成される部分の肉厚を厚くし、溝が形成されていない部分の肉厚を薄くする等、適宜変形することが可能である。また、外殻部材の形状、接合位置等に応じて、溝やリブの構成についても適宜変形することが可能である。
【0043】
また、本発明は、ヘッド本体3に上記した溝20を形成することなく、フェース部側に周方向に沿ってリブ22のみを形成したものであっても良い。例えば、フェース部の周囲を薄肉厚化することで、フェース部5を撓み易くすることができるが、このようにフェース部を溝以外で撓み易くした構成では、打球時にクラウン部6、サイド部7、及びソール部8が変形してエネルギーロスが生じてしまう。このため、上述した実施形態のように、ヘッド本体のフェース部側に、周方向に沿うように、内部に突出するリブを形成することで、リブによる高剛性部によってフェース部の撓みを受けることができ、ボールに対する反発性を向上することが可能となる。特に、周方向に連続したリブ(環状のリブ)を形成することで、フェース部の反発性を向上することが可能となる。
【0044】
さらに、上記した実施形態では、ゴルフクラブとしてドライバータイプを例示したが、フェアウェイウッドやユーティリティクラブ等、中空構造のゴルフクラブヘッドを装着した各種のゴルフクラブに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ゴルフクラブ
3 ヘッド本体
5 フェース部
6 クラウン部
7 ソール部
8 サイド部
20 溝
20A 第一の溝
20B 第二の溝
22 リブ
22A 第一のリブ
22B 第二のリブ
32 前後方向リブ
C フェースセンター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16