(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】屋上ダクト構造
(51)【国際特許分類】
E04F 17/04 20060101AFI20231206BHJP
F24F 7/02 20060101ALI20231206BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20231206BHJP
F23J 13/02 20060101ALI20231206BHJP
F23J 13/00 20060101ALI20231206BHJP
F23J 13/04 20060101ALI20231206BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E04F17/04 B
F24F7/02 K
F24F13/02 F
F24F13/02 A
F24F13/02 H
F23J13/02
F23J13/00 A
F23J13/04 Z
E04B1/70 Z
(21)【出願番号】P 2023110079
(22)【出願日】2023-07-04
【審査請求日】2023-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾嶋 雅也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 基文
(72)【発明者】
【氏名】木村 友昭
(72)【発明者】
【氏名】古田 和真
(72)【発明者】
【氏名】西山 光佳
(72)【発明者】
【氏名】水野 和亮
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0057090(US,A1)
【文献】特開2017-066699(JP,A)
【文献】特開2018-087444(JP,A)
【文献】特開平08-135851(JP,A)
【文献】特開平10-318482(JP,A)
【文献】実開平07-020485(JP,U)
【文献】特開2003-120976(JP,A)
【文献】実開平6-64047(JP,U)
【文献】特開2020-41740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0078965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04D 13/143
E04D 13/16
E04F 17/04
E04F 17/08
F23J 13/00-13/08
F24F 7/02
F24F 7/04
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋内側と屋外側とを連通する屋上ダクト構造であって、
下方において開口する下方開口部と側方において開口する側方開口部とを有するダクト体を備え、
前記ダクト体は、前記下方開口部が前記貫通孔に臨み、前記側方開口部が屋上に設置される屋上ダクト部材に接続されるように前記屋上スラブ上に配置され、
前記貫通孔と前記屋上ダクト部材とは、前記ダクト体の内部空間を通じて連通
し、
前記ダクト体は、前記屋上スラブのうち、前記貫通孔を囲んで立ち上がる立上り部の上方にシール材を介して配置され、
前記ダクト体の内部空間全体は、前記貫通孔から前記屋上ダクト部材へと流れる流体、または、前記屋上ダクト部材から前記貫通孔へと流れる流体の流路となっている屋上ダクト構造。
【請求項2】
前記ダクト体の側面には、折り曲げ部が全周にわたって設けられており、
前記屋上スラブと前記折り曲げ部との間に形成される隙間には
前記シール材が充填される、
請求項1に記載の屋上ダクト構造。
【請求項3】
屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋内側と屋外側とを連通する屋上ダクト構造であって、
下方において開口する下方開口部と側方において開口する側方開口部とを有するダクト体
と、
前記貫通孔の内周面に設けられるスリーブと、を備え、
前記ダクト体は、前記下方開口部が前記貫通孔に臨み、前記側方開口部が屋上に設置される屋上ダクト部材に接続されるように前記屋上スラブ上に配置され、
前記スリーブの上端には、前記ダクト体が前記下方開口部を介して接続され、
前記スリーブの下端には、屋内に設置される屋内ダクト部材が接続され、
前記貫通孔と前記屋上ダクト部材とは、前記ダクト体の内部空間を通じて連通する屋上ダクト構造。
【請求項4】
前記ダクト体は、前記屋上スラブのうち、前記貫通孔を囲んで立ち上がる立上り部の上方に配置される、
請求項3に記載の屋上ダクト構造。
【請求項5】
前記下方開口部が開口する第1平面と前記側方開口部が開口する第2平面とが成す角度は、前記側方開口部が鉛直方向下方を向くように設定され、
前記ダクト体の前記側方開口部側は、屋上に設置された支持部によって支持される、
請求項1、3及び4の何れか1つに記載の屋上ダクト構造。
【請求項6】
前記ダクト体は、前記貫通孔の開口端を覆うように前記屋上スラブに取り付けられる、
請求項3に記載の屋上ダクト構造。
【請求項7】
前記ダクト体の外表面には、断熱材が設けられる、
請求項1から4の何れか1つに記載の屋上ダクト構造。
【請求項8】
前記ダクト体は、金属製の板材で形成される、
請求項1から4の何れか1つに記載の屋上ダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、屋外へとダクト等の配管を取り出すために屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて建築物の内部へと雨水が浸入することを防止するために施工されたコンクリート製の構造体、いわゆる、ハト小屋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなコンクリート製のハト小屋を屋上スラブ上に施工する場合、鉄筋の配筋や型枠の設置、コンクリートの打設、コンクリートの養生、型枠の脱型といった多くの作業工程が必要となるため、施工が完了するまでに時間を要することになる。そして、ハト小屋の施工が完了するまでは、下階の天井裏での配管設置作業等に着手することができないことから、結果として建築物の施工期間が長期化してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、建築物の施工期間を短縮させることが可能な屋上ダクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋内側と屋外側とを連通する屋上ダクト構造であって、下方において開口する下方開口部と側方において開口する側方開口部とを有するダクト体を備え、ダクト体は、下方開口部が貫通孔に臨み、側方開口部が屋上に設置される屋上ダクト部材に接続されるように屋上スラブ上に配置され、貫通孔と屋上ダクト部材とは、ダクト体の内部空間を通じて連通し、ダクト体は、屋上スラブのうち、貫通孔を囲んで立ち上がる立上り部の上方にシール材を介して配置され、ダクト体の内部空間全体は、貫通孔から屋上ダクト部材へと流れる流体、または、屋上ダクト部材から貫通孔へと流れる流体の流路となっている。また、屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋内側と屋外側とを連通する屋上ダクト構造であって、下方において開口する下方開口部と側方において開口する側方開口部とを有するダクト体と、貫通孔の内周面に設けられるスリーブと、を備え、ダクト体は、下方開口部が貫通孔に臨み、側方開口部が屋上に設置される屋上ダクト部材に接続されるように屋上スラブ上に配置され、スリーブの上端には、ダクト体が下方開口部を介して接続され、スリーブの下端には、屋内に設置される屋内ダクト部材が接続され、貫通孔と屋上ダクト部材とは、ダクト体の内部空間を通じて連通する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建築物の施工期間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る屋上ダクト構造の断面図である。
【
図3】
図1の矢印Bで示される部分を拡大して示した拡大図である。
【
図4】
図1の矢印Cで示される部分を拡大して示した拡大図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る屋上ダクト構造の変形例の拡大図である。
【
図6】従来の屋上ダクトの配置例について説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る屋上ダクト構造の配置例について説明するための図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る屋上ダクト構造の断面図である。
【
図10】
図8の矢印Eで示される部分を拡大して示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る屋上ダクト構造について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1~4を参照して、第1実施形態に係る屋上ダクト構造100について説明する。屋上ダクト構造100は、
図1に示されるように、屋内の空気を屋外へと排出するため、または、屋外から屋内へと空気を供給するために屋上スラブ10に設けられた貫通孔11を通じて雨水が屋内に浸入することを防止するための構造であり、従来、屋上スラブ10上に形成されていたハト小屋と称される鉄筋コンクリート造等の防雨構造に代わって用いられるものである。
【0011】
図1は、屋上ダクト構造100の断面図であり、
図2は、
図1のA-A線に沿う断面図である。また、
図3及び4は、
図1において矢印B及びCで示された部分をそれぞれ拡大して示した拡大図である。
【0012】
屋上ダクト構造100は、屋上スラブ10に設けられた貫通孔11を通じて屋内側と屋外側とを連通するものであり、下方において開口する下方開口部21と側方において開口する側方開口部22とを有するダクト体20を備える。
【0013】
ダクト体20は、
図1に示されるように、下方開口部21が屋上スラブ10に設けられた貫通孔11に臨み、側方開口部22が屋上に設置される屋上ダクト部材50に接続されるように、屋上スラブ10上に配置される。つまり、貫通孔11と屋上ダクト部材50とは、ダクト体20の内部空間を通じて連通する。なお、屋上ダクト構造100内を流れる流体は、単なる空気に限定されず、蒸気や煙等が含まれるものであってもよいし、加圧または減圧された状態の流体であってもよい。
【0014】
ダクト体20は、アルミ製またはアルミ合金製の板材によって略直方体状に形成された中空の構造体であり、板材の継ぎ目となる各辺や頂点は、気密性を確保するためにそれぞれ溶接接合されている。なお、ダクト体20の材質は、アルミやアルミ合金に限定されないが、気密性を確保する観点からは溶接可能な金属製であることが好ましく、例えば、ダクト体20内を流れる流体の圧力が比較的高い場合や負圧となる場合、変動する場合には、ダクト体20の変形を抑えるために、剛性の高い亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板が用いられてもよい。一方で、設置作業性の観点からは、ダクト体20の材質は、ダクト体20の重量を軽くすることが可能なアルミやアルミ合金であることが好ましく、また、加工性の観点からも、加工性が比較的容易なアルミやアルミ合金であることが好ましい。
【0015】
ダクト体20は、下方において開口し貫通孔11よりも大きい開口面積を有する下方開口部21と、一側面において開口し屋上ダクト部材50が取り付けられる側方開口部22と、を有し、ダクト体20の外形の大きさ(三辺寸法)は、側方開口部22の大きさ、すなわち、屋上ダクト部材50の流路断面積の大きさ、及び、下方開口部21の大きさ、すなわち、貫通孔11の流路断面積の大きさなどに応じて適宜設定される。なお、屋上ダクト部材50の流路断面積の大きさや貫通孔11の流路断面積の大きさは、要求される空気の最大排出流量や最大供給流量に基づいて予め設定される。
【0016】
ダクト体20は、
図3に示されるように、下端に形成された下端縁部27を介して、屋上スラブ10のうち、貫通孔11を囲んで立ち上がる立上り部12の上面に設置される。換言すると、ダクト体20は、貫通孔11の開口端を覆うようにして屋上スラブ10に取り付けられている。なお、下端縁部27により囲まれた開口部が下方開口部21となる。
【0017】
下端縁部27は、ダクト体20の側面25の下方部分を全周にわたって内側に向かって折り曲げることによって形成された第1折り曲げ部26(折り曲げ部)の先端部を、下方に向かって側面25とほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって形成された部分である。
【0018】
一方、立上り部12の上面には、固定方向線F1に沿って立上り部12に取り付けられた図示しないアンカーボルトを介してアングル材14の一方の辺が固定されている。このように立上り部12に固定されたアングル材14の他方の辺に対して、下端縁部27が固定方向線F2に沿って図示しないビス等の締結部材により固定されることによって、ダクト体20は、立上り部12の上面に取り付けられた状態となる。
【0019】
このように立上り部12に固定されたダクト体20の第1折り曲げ部26と立上り部12の上面との間には、
図2及び
図3に示されるように、シール材を充填可能な第1隙間G1(隙間)が全周にわたって形成される。なお、
図2では、シール材が充填される隙間をわかりやすく示すために、シール材の図示を省略している。
【0020】
第1折り曲げ部26と立上り部12の上面との間の第1隙間G1には、最初に第1バックアップ材41aが装填され、その後、コーキングにより第1シール材42aが充填される。そして、第1シール材42aがある程度乾燥した後、第2バックアップ材41bが装填され、その後、コーキングにより第2シール材42bが充填される。
【0021】
このように、ダクト体20と立上り部12との間に全周にわたって設けられるシールを二重シールとすることにより、ダクト体20と立上り部12との間の隙間を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。また、ダクト体20は、立上り部12の上面に設置されていることから、屋上スラブ10上に溜まった雨水が、ダクト体20と立上り部12との間の隙間に至りにくくなっている。なお、立上り部12を含む屋上スラブ10の表面には、予め塗膜防水等の防水処理が施されている。
【0022】
屋上ダクト部材50は、亜鉛メッキ鋼板によって形成された管状部材であり、断面形状が略矩形状の筒状部51と、筒状部51の端部に形成されたフランジ部52と、を有する。筒状部51の他端側は、屋上スラブ10上に設置された図示しない送風機に対して直接的または間接的に接続される。なお、例えば、送風機が屋内に設置される場合、屋上ダクト部材50は、他端側が送風機に接続されることなく鉛直方向下方に向かって開放したダクトフードとなっていてもよい。また、屋上ダクト部材50の材質は、亜鉛メッキ鋼に限定されず、ステンレス鋼であってもよいし、ダクト体20と同様にアルミやアルミ合金であってもよい。
【0023】
屋上ダクト部材50のフランジ部52は、
図4に示すように、筒状部51の端部を筒状部51の内側に向かって折り曲げることによって形成されており、屋上ダクト部材50は、フランジ部52を介してダクト体20に取り付けられる。
【0024】
一方、ダクト体20の側面25のうち、側方開口部22が設けられる第1側面25aには、
図4に示されるように、屋上ダクト部材50のフランジ部52が取り付けられる取付部29が環状に形成される。取付部29は、第1側面25aに形成された開口部の内縁を全周にわたってダクト体20の内側に向かって折り曲げることによって形成された第2折り曲げ部28の先端部を、第1側面25aとほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって形成された部分である。なお、取付部29により囲まれた開口部が上述の側方開口部22となる。
【0025】
このようにダクト体20の第1側面25aに形成された取付部29に対して、フランジ部52が締結部材60により固定されることによって、屋上ダクト部材50は、ダクト体20に取り付けられた状態となる。
【0026】
また、ダクト体20に固定された屋上ダクト部材50の筒状部51と第1側面25aに設けられた第2折り曲げ部28との間には、
図2及び
図4に示されるように、シール材を充填可能な環状の第2隙間G2が形成される。
【0027】
この第2隙間G2には、最初に第1バックアップ材43aが装填され、その後、コーキングにより第1シール材44aが充填される。そして、第1シール材44aがある程度乾燥した後、第2バックアップ材43bが装填され、その後、コーキングにより第2シール材44bが充填される。
【0028】
このように、ダクト体20の第1側面25aと屋上ダクト部材50との間に全周にわたって設けられるシールを二重シールとすることにより、ダクト体20と屋上ダクト部材50との間の隙間を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。
【0029】
なお、屋上ダクト部材50のフランジ部53は、
図5に示す変形例のように、筒状部51の端部が筒状部51の外側に向かって折り曲げることによって形成されていてもよい。この場合、取付部29とフランジ部53との間の隙間を通じて雨水が浸入することを防止するために、締結部材60の周囲に第1シール材45aがコーキングにより塗布され、フランジ部53の外縁に沿って第2シール材45bがコーキングにより塗布される。また、取付部29とフランジ部53とにより挟持されるガスケット46を設けることによって、シール材45a,45bのシール性を補完している。
【0030】
また、ダクト体20の外表面には、
図1において一点鎖線で示される保護カバーLC(ラッキングカバー)内に所定の厚さのグラスウール等の断熱材(不図示)が設けられる。このようにダクト体20の外表面に断熱材が設けられることによって、ダクト体20内の空間と屋外との間における熱の出入りが遮断されるため、結果として、ダクト体20内を流れる空気の温度変化が抑制されるとともに、ダクト体20内で結露が生じることが抑制される。また、断熱材は、ダクト体20に雨が当たることによって生じる雨音が屋内に響くことを防止する吸音材としても機能する。なお、断熱材は、ダクト体20の外表面に代えて、内表面に設けられていてもよいし、ダクト体20の外表面と内表面との両面に設けられていてもよい。
【0031】
また、ダクト体20の上面に雨水が溜まらないようにするために、ダクト体20の上面は、
図1に示されるように、水平面に対して緩やかな勾配を有していることが好ましい。
【0032】
屋上ダクト構造100は、上記形状のダクト体20に加えて、
図1に示されるように、貫通孔11の内周面に設けられるスリーブ16をさらに備える。スリーブ16の下端には、屋内に配置される屋内ダクト部材18の一端が接続される。なお、屋内ダクト部材18の他端は、屋内施設の排気口や給気口に接続される。
【0033】
これにより屋内ダクト部材18、貫通孔11、ダクト体20及び屋上ダクト部材50を通じて屋内の空気を屋外へと排出することが可能であるとともに、屋上ダクト部材50、ダクト体20、貫通孔11及び屋内ダクト部材18を通じて屋外から屋内へと空気を供給することが可能である。
【0034】
ここで、建築物1の屋上に排気用または給気用の屋上側ダクト3を設置する場合、従来は、
図6に示されるように、屋上スラブ10上に設けられた鉄筋コンクリート等で造られたハト小屋2から各送風機4に向けて屋上側ダクト3がそれぞれ設置される。また、建築物1の天井裏には、図示しない複数の屋内側ダクトがハト小屋2の下方に向けて屋内の各施設からそれぞれ設置される。つまり、屋内側ダクトと屋上側ダクト3とはハト小屋2内で接続される。なお、
図6は、建築物1の屋上平面を上方から見た図である。
【0035】
一方、上記構成の屋上ダクト構造100は、貫通孔11を通じて雨水が屋内に浸入することを防止することが可能であることから、建築物1の屋上に屋上ダクト構造100を介して排気用または給気用のダクトを設置する場合には、
図7に示されるように、排気や給気が必要な各屋内施設の近傍に立上り部12をそれぞれ設けておき、立上り部12の近くに設置された送風機4と立上り部12に設置された屋上ダクト構造100とを屋上ダクト部材50によって接続することにより排気設備または給気設備を容易に設置することが可能である。なお、
図7は、
図6と同様に、建築物1の屋上平面を上方から見た図である。
【0036】
また、屋内側と屋外側とを連通する貫通孔11を排気や給気が必要となる屋内施設の近傍に設けることが可能となることによって、従来のようにハト小屋2を用いた場合と比較し、屋上ダクト部材50及び屋内ダクト部材18を大幅に短くすることができる。
【0037】
この結果、屋上ダクト部材50及び屋内ダクト部材18の設置に要する施工期間を短縮することが可能になるとともに、屋上ダクト部材50及び屋内ダクト部材18の製作に必要となる部材を削減することが可能となることから、施工コストを低減することができる。また、屋上ダクト部材50及び屋内ダクト部材18の長さが短くなることによって圧力損失(通気抵抗)が低下することから送風機4の消費電力を低減させることができる。
【0038】
また、
図6に示されるようにハト小屋2を用いた従来例と比較し、建築物1の屋上において、屋上ダクト部材50や送風機4等が密集して配置されることが避けられることから、屋上ダクト部材50や送風機4等のメンテナンス作業が容易になるとともに、屋上の空きスペースを有効利用することが可能となる。
【0039】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0040】
上記構成の屋上ダクト構造100において、下方において開口する下方開口部21と側方において開口する側方開口部22とを有するダクト体20は、下方開口部21が貫通孔11に臨み、側方開口部22が屋上に設置される屋上ダクト部材50に接続されるように屋上スラブ10上に配置され、貫通孔11と屋上ダクト部材50とは、ダクト体20の内部空間を通じて連通する。
【0041】
このため、屋上ダクト部材50を取り付け可能なダクト体20を、貫通孔11を覆うように屋上スラブ10上に設置するだけで、貫通孔11を通じて建築物1の屋内側と屋外側とを連通することが可能となるとともに、貫通孔11を通じて雨水が屋内に浸入することを防止することが可能となる。これにより、貫通孔11を通じて雨水が浸入することを防止するために、従来の鉄筋コンクリート造等のハト小屋を屋上スラブ10上に施工することが不要となることから、結果として、建築物の施工期間を短縮させることができる。
【0042】
具体的には、例えば、鉄筋コンクリート造等のハト小屋を屋上スラブ10上に施工する場合、ハト小屋の施工が完了するまでは屋内から屋内ダクト部材18を立ち上げることができず、下階での内装工事が遅延してしまうおそれがあるが、上記構成の屋上ダクト構造100では、例えば、貫通孔11を覆うようにダクト体20を屋上スラブ10上に設置し防水シート等でダクト体20を覆ったり、貫通孔11の内周面に設けられるスリーブ16の上端を閉塞したりすることで、屋内へ雨水が浸入することを防止することができるため、屋上側で行われる防水等の工事と屋内側で行われる内装工事(例えば、スリーブ16への屋内ダクト部材18の接続作業等)とを同時並行で進行させることが可能となる。
【0043】
また、排気や給気が必要な屋内施設の近傍に貫通孔11を設けることによって、屋内に設置される屋内ダクト部材18を短くすることが可能になるとともに、屋上スラブ10上において比較的自由に送風機4を配置し、送風機4に接続される屋上ダクト部材50を短くすることが可能になることから、結果として、施工コストを削減することができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、
図8から
図10を参照して、本発明の第2実施形態に係る屋上ダクト構造200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、その説明を省略する。
【0045】
第2実施形態に係る屋上ダクト構造200は、ダクト体120が、立上り部12に取り付けられたアングル材14ではなく、貫通孔11の内周面に設けられたスリーブ116に固定されている点において、上述の第1実施形態に係る屋上ダクト構造100と主に異なっている。なお、
図8は、
図1に相当する断面を示す断面図であり、
図9は、
図8のD-D線に沿う断面図である。また、
図10は、
図8において矢印Eで示された部分をそれぞれ拡大して示した拡大図である。
【0046】
屋上ダクト構造200は、屋上スラブ10に設けられた貫通孔11を通じて屋内側と屋外側とを連通するものであり、下方において開口する下方開口部121と側方において開口する側方開口部122とを有するダクト体120と、貫通孔11の内周面に設けられダクト体120が接続されるスリーブ116と、を備える。
【0047】
ダクト体120は、
図8及び
図9に示されるように、下方開口部121が屋上スラブ10に設けられた貫通孔11に臨み、側方開口部122が屋上に設置される屋上ダクト部材150に接続されるように、屋上スラブ10上に配置される。つまり、貫通孔11と屋上ダクト部材150とは、ダクト体120の内部空間を通じて連通する。
【0048】
ダクト体120は、亜鉛メッキ鋼板によって形成された中空の構造体であり、下方開口部121が開口する第1フランジ部125と、側方開口部122が開口する第2フランジ部126と、一端に第1フランジ部125が設けられ他端に第2フランジ部126が設けられた断面形状が略矩形状の筒状部127と、を有する。なお、ダクト体120の材質は、亜鉛メッキ鋼に限定されないが、気密性を確保する観点からは溶接可能な金属製であることが好ましく、特に、ダクト体120内を流れる流体の圧力が比較的高い場合や負圧となる場合、変動する場合には、ダクト体120の変形を抑えるために、剛性の高い亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板を用いることが好ましい。また、ダクト体120の変形を抑制する必要性がない場合には、アルミ製やアルミ合金製の板材が用いられてもよい。
【0049】
筒状部127は、内部を流れる空気等の圧力損失(通気抵抗)を小さくするために、
図8に示されるように、側面視において、第1フランジ部125から第2フランジ部126に向かって円弧状に湾曲して形成される。
【0050】
また、側方開口部122を通じて雨水がダクト体120内に直接的に入り込むことを防止するために、側方開口部122が開口する第2フランジ部126は、ダクト体120が屋上スラブ10上に設置された状態において、フランジ面が鉛直面に対して傾斜し側方開口部122が水平方向よりも僅かに鉛直方向下方を向くように形成される。
【0051】
具体的には、下方開口部121が開口する第1フランジ部125のフランジ面である第1平面P1と側方開口部122が開口する第2フランジ部126のフランジ面である第2平面P2とが成す角度θの大きさは、側方開口部122が鉛直方向下方を向くように設定されており、例えば、
図8に示されるように、第1フランジ部125が水平面に対して設置されている場合には、90°よりも大きく、好ましくは、100°から120°の範囲に設定される。
【0052】
なお、筒状部127の形状は、第1フランジ部125から第2フランジ部126に向かって円弧状に湾曲したものに限定されず、側方開口部122が鉛直方向下方を向くように第1平面P1と第2平面P2とが成す角度θの大きさが設定されていれば、第1フランジ部125から第2フランジ部126に向かって、エルボ状に折れ曲がって形成されていてもよいし、段階的に折れ曲がって形成されていてもよい。
【0053】
上記形状のダクト体120は、
図10に示されるように、下端に形成された第1フランジ部125を介して、屋上スラブ10のうち、貫通孔11を囲んで立ち上がる立上り部12の上方に設置される。換言すると、ダクト体120は、貫通孔11の開口端を覆うようにして屋上スラブ10に取り付けられている。なお、第1フランジ部125の略中央に形成された開口部が上述の下方開口部121となる。
【0054】
具体的には、ダクト体120は、
図10に示されるように、貫通孔11の内周面に設けられたスリーブ116の上端に形成されたフランジ部117に対して第1フランジ部125が図示しない締結部材を介して固定されることによって立上り部12に設置される。
【0055】
このように立上り部12に設置されたダクト体120の第1フランジ部125と立上り部12の上面との間には、
図9及び
図10に示されるように、シール材を充填可能な第3隙間G3が全周にわたって形成される。なお、
図9では、シール材が充填される隙間をわかりやすく示すために、シール材の図示を省略している。
【0056】
第1フランジ部125と立上り部12の上面との間の第3隙間G3には、最初に第1バックアップ材47aが装填され、その後、コーキングにより第1シール材48aが充填される。そして、第1シール材48aがある程度乾燥した後、第2バックアップ材47bが装填され、その後、コーキングにより第2シール材48bが充填される。
【0057】
なお、第1フランジ部125と立上り部12の上面との間の隙間がシール材によって確実に封止されるようにするために、スリーブ116のフランジ部117の外縁は、第1フランジ部125の外縁よりも内側であって、第2シール材48bが充填される箇所よりも内側、好ましくは、第1シール材48aが充填される箇所よりも内側に位置している。
【0058】
このように、ダクト体120と立上り部12との間に全周にわたって設けられるシールを二重シールとすることにより、ダクト体120と立上り部12との間の隙間を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。また、ダクト体120は、立上り部12の上面に設置されていることから、屋上スラブ10上に溜まった雨水が、ダクト体120と立上り部12との間の隙間に至りにくくなっている。
【0059】
屋上ダクト部材150は、亜鉛メッキ鋼板によって形成された管状部材であり、断面形状が略矩形状の筒状部151と、筒状部151の端部に形成されたフランジ部152と、を有する。筒状部151の他端側は、屋上スラブ10上に設置された図示しない送風機に対して直接的または間接的に接続される。なお、例えば、送風機が屋内に設置される場合、屋上ダクト部材150は、他端側が送風機に接続されることなく鉛直方向下方に向かって開放したダクトフードとなっていてもよい。また、屋上ダクト部材150の材質は、亜鉛メッキ鋼に限定されず、ステンレス鋼やアルミ、アルミ合金であってもよい。
【0060】
屋上ダクト部材150は、
図8に示されるように、ダクト体120の第2フランジ部126に対してフランジ部152が締結部材を介して固定されることによってダクト体120に取り付けられる。また、第2フランジ部126とフランジ部152との間には、雨水の浸入を確実に防止するために、図示しないガスケットが設けられる。なお、第2フランジ部126の略中央に形成された開口部が上述の側方開口部122となる。
【0061】
また、ダクト体120の外表面には、
図8において一点鎖線で示される保護カバーLC(ラッキングカバー)内に所定の厚さのグラスウール等の断熱材(不図示)が設けられる。このようにダクト体120の外表面に断熱材が設けられることによって、ダクト体120内の空間と屋外との間における熱の出入りが遮断されるため、結果として、ダクト体120内を流れる空気の温度変化が抑制されるとともに、ダクト体120内で結露が生じることが抑制される。また、断熱材は、ダクト体120に雨が当たることによって生じる雨音が屋内に響くことを防止する吸音材としても機能する。なお、断熱材は、ダクト体120の外表面に代えて、内表面に設けられていてもよいし、ダクト体120の外表面と内表面との両面に設けられていてもよい。
【0062】
また、ダクト体120が上端に接続されるスリーブ116の下端には、屋内に配置される屋内ダクト部材18の一端が接続される。なお、屋内ダクト部材18の他端は、屋内施設の排気口や給気口に接続される。
【0063】
これにより屋内ダクト部材18、貫通孔11、ダクト体120及び屋上ダクト部材150を通じて屋内の空気を屋外へと排出することが可能であるとともに、屋上ダクト部材150、ダクト体120、貫通孔11及び屋内ダクト部材18を通じて屋外から屋内へと空気を供給することが可能である。
【0064】
ここで、上述のように、ダクト体120は、側方開口部122が鉛直方向下方を向くように、側方開口部122が開口する第2フランジ部126のフランジ面(第2平面P2)が鉛直方向に対して傾斜した状態、すなわち、重心が第2フランジ部126寄りに位置した状態となっているため、ダクト体120とスリーブ116との締結部には、ダクト体120が第2フランジ部126側に倒れようとする荷重が作用することになる。
【0065】
このような荷重がダクト体120とスリーブ116との締結部に作用すると、第1フランジ部125と立上り部12の上面との間の隙間は、ダクト体120の重心から遠い箇所において僅かに拡がるおそれがある。例えば、
図8に示される例では、図中の右側において、第1フランジ部125と立上り部12の上面との間の隙間が僅かに拡がり、結果として、当該箇所に設けられたシール材48a,48bによるシール性が低下するおそれがある。
【0066】
このように第1フランジ部125と立上り部12の上面との間の隙間が拡がってシール性が低下することを防止するために、屋上ダクト構造200は、ダクト体120の側方開口部122側を下方から支持する支持部130をさらに備える。
【0067】
支持部130は、屋上スラブ10上に設置されるベース部131と、ベース部131から上方に向かって延びる支柱132と、を有し、
図9に示されるように、ダクト体120の側方開口部122側を挟んで一対配置される。
【0068】
支柱132は、例えば、アングル材であり、ダクト体120には、支柱132の一方の辺に図示しない締結部材を介して締結されるブラケット128が複数取り付けられている。
【0069】
なお、支柱132またはベース部131には、支柱132に対してブラケット128が取り付けられる高さを調整することが可能な高さ調整部が設けられてもよい。
【0070】
このように支持部130によってダクト体120の側方開口部122側が下方から支持されることで、第1フランジ部125と立上り部12の上面との間の隙間が拡がることが抑制され、結果としてシール材48a,48bによるシール性を保持することができる。
【0071】
以上の第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、以下に示す効果を奏する。
【0072】
上記構成の屋上ダクト構造200において、下方において開口する下方開口部121と、側方において開口する側方開口部122と、を有するダクト体120は、下方開口部121が貫通孔11に臨み、側方開口部122が屋上に設置される屋上ダクト部材150に接続されるように屋上スラブ10上に配置され、貫通孔11と屋上ダクト部材150とは、ダクト体120の内部空間を通じて連通する。
【0073】
このため、屋上ダクト部材150を取り付け可能なダクト体120を、貫通孔11を覆うように屋上スラブ10上に設置するだけで、貫通孔11を通じて建築物1の屋内側と屋外側とを連通することが可能となるとともに、貫通孔11を通じて雨水が屋内に浸入することを防止することが可能となる。これにより、貫通孔11を通じて雨水が浸入することを防止するために、従来の鉄筋コンクリート造等のハト小屋を屋上スラブ10上に施工することが不要となることから、結果として、建築物の施工期間を短縮させることができる。
【0074】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0075】
上記各実施形態では、ダクト体20,120は、屋上スラブ10から立ち上がる立上り部12の上面に設置されている。これに代えて、ダクト体20,120は、屋上スラブ10上に直接設置されてもよい。なお、屋上スラブ10上に溜まった雨水が貫通孔11を通じて屋内に浸入しにくくするためには、貫通孔11を囲んで立ち上がる立上り部12を設け、その上にダクト体20,120を設置することが好ましい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、ダクト体20や屋上ダクト部材50には、折り曲げることにより形成される部位(例えば、下端縁部27やフランジ部52など)があると説明したが、これらの部位は各図に図示されるような形状となればどのような加工方法によって形成されてもよく、例えば、部材を直接的に折り曲げることによって形成されてもよいし、絞り加工等によって形成されてもよいし、部材同士を溶接接合することによって形成されてもよい。
【0077】
また、上記第2実施形態では、第1フランジ部125は、スリーブ116のフランジ部117に固定されるとともに、立上り部12の上面との間に第3隙間G3を構成している。これに代えて、例えば、立上り部12の上面との間に第3隙間G3を構成する部材は、スリーブ116のフランジ部117に固定される第1フランジ部125とは別の部材であってもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態では、ダクト体120に屋上ダクト部材150が接続されているが、ダクト体120は、屋上ダクト部材150が接続されることなく、側方開口部122側が鉛直方向下方に向かって開放したダクトフードとなっていてもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0080】
100,200・・・屋上ダクト構造
20,120・・・ダクト体
21,121・・・下方開口部
22,122・・・側方開口部
10・・・屋上スラブ
11・・・貫通孔
12・・・立上り部
16,116・・・スリーブ
18・・・屋内ダクト部材
26・・・第1折り曲げ部(折り曲げ部)
42a・・・第1シール材(シール材)
42b・・・第2シール材(シール材)
50,150・・・屋上ダクト部材
130・・・支持部
G1・・・第1隙間(隙間)
【要約】
【課題】建築物の施工期間を短縮する。
【解決手段】屋上ダクト構造100は、下方において開口する下方開口部21と側方において開口する側方開口部22とを有するダクト体20を備え、ダクト体20は、下方開口部22が貫通孔11に臨み、側方開口部22が屋上に設置される屋上ダクト部材50に接続されるように屋上スラブ10上に配置され、貫通孔11と屋上ダクト部材50とは、ダクト体20の内部空間を通じて連通する。
【選択図】
図1