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特許7398029樹脂組成物、成形体、および、多色射出成形体
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  • 特許-樹脂組成物、成形体、および、多色射出成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体、および、多色射出成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231206BHJP
   C08L 59/00 20060101ALI20231206BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20231206BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L59/00
C08L51/04
B29C45/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023552592
(86)(22)【出願日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2023020626
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022094008
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山元 裕太
(72)【発明者】
【氏名】須長 大輔
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-011562(JP,A)
【文献】特表2001-518403(JP,A)
【文献】特開2003-048252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂と、コアシェルエラストマーを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)に成形し、ISO178に従って測定した曲げ弾性率が50~1000MPaであり、多色射出成形用であり、
前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、30~90体積%がコアシェルエラストマーであり、かつ、前記樹脂組成物に含まれる樹脂成分の合計100質量部に対し、イオン捕捉が可能な化合物を0.01~1質量部含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記曲げ弾性率が800MPa以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、ポリアセタール樹脂の割合が10~50体積%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記コアシェルエラストマーのシェルがアクリル系樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記イオン捕捉が可能な化合物が、トリアジン骨格を含む化合物、ヒンダードアミン、アルカリ土類金属の水酸化塩、ハイドロタルサイト、および、脂肪酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアセタール樹脂の割合が、50~100体積%である樹脂組成物(B)との多色射出成形用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ポリアセタール樹脂と、コアシェルエラストマーを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)に成形し、ISO178に従って測定した曲げ弾性率が50~1000MPaであり、多色射出成形用であり、
前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、35~50体積%がポリアセタール樹脂であり、かつ、35~50体積%がコアシェルエラストマーである、樹脂組成物。
【請求項8】
前記曲げ弾性率が800MPa以下である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記コアシェルエラストマーのシェルがアクリル系樹脂を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
ポリアセタール樹脂の割合が、50~100体積%である樹脂組成物(B)との多色射出成形用である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形体。
【請求項13】
請求項11に記載のペレットから形成された成形体。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、ポリアセタール樹脂の割合が、50~100体積%である樹脂組成物(B)との多色射出成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体、および、多色射出成形体に関する。特に、ポリアセタール樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックの一種であるポリアセタール(POM)樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性等において優れた特性を有しており、主に構造材料や機構部品として電気・電子機器、自動車部品、事務機器部品、日用雑貨部品などに幅広く使用されている。また、ポリアセタール樹脂に軟質性を付与するために、エラストマーを配合することが行われている。
一方、ポリアセタール樹脂とエラストマーを含むポリアセタール樹脂組成物を成形するに際し、複雑な形状の成形体でも成形することができ、かつ大量生産に適するものであることから、射出成形法が適用されることが多い。また、近年、樹脂製の部品や部材の高性能・高機能化の要求が厳しくなり、その中でポリアセタール樹脂と、ポリアセタール樹脂とエラストマーを含む樹脂組成物との複合化についても注目されている。ここで、複合化には、両者に共通した成形手段である射出成形法により両者を相互に熱融着(単に融着とも言う。)させることが最も効果的である。一例としては、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-048252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、エラストマーの割合が多いポリアセタール樹脂組成物から形成された成形体は、軟質性が高い傾向にある。これに対し、エラストマーの割合が低い、あるいは、含まないポリアセタール樹脂組成物から形成された成形体は硬い傾向にある。このような硬い部材と軟質性の高い部材を多色射出成形で成形して複合化できれば有益である。また、用途に応じては、静音性が求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、軟質性が高いポリアセタール樹脂組成物であって、硬いポリアセタール部材との多色射出成形が可能であり、かつ、静音性に優れた樹脂組成物、ならびに、成形体、および、多色射出成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアセタール樹脂にコアシェルエラストマーを配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアセタール樹脂と、コアシェルエラストマーを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)に成形し、ISO178に従って測定した曲げ弾性率が50~1000MPaであり、多色射出成形用である、樹脂組成物。
<2>前記曲げ弾性率が800MPa以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、ポリアセタール樹脂の割合が10~50体積%である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、30~90体積%がコアシェルエラストマーである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記コアシェルエラストマーのシェルがアクリル系樹脂を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量部に対し、イオン捕捉が可能な化合物を0.01~1質量部含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記イオン捕捉が可能な化合物が、トリアジン骨格を含む化合物、ヒンダードアミン、アルカリ土類金属の水酸化塩、ハイドロタルサイト、および、脂肪酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、<6>に記載の樹脂組成物。
<8>ポリアセタール樹脂の割合が、50~100体積%である樹脂組成物(B)との多色射出成形用である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、30~90体積%がコアシェルエラストマーであり、かつ、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量部に対し、イオン捕捉が可能な化合物を0.01~1質量部含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、35~50体積%がポリアセタール樹脂であり、かつ、35~50体積%がコアシェルエラストマーである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形体。
<13><11>に記載のペレットから形成された成形体。
<14><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物と、ポリアセタール樹脂の割合が、50~100体積%である樹脂組成物(B)との多色射出成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、軟質性が高いポリアセタール樹脂組成物であって、硬いポリアセタール部材との多色射出成形が可能であり、かつ、静音性に優れた樹脂組成物、ならびに、成形体、および、多色射出成形体を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の二色射出成形体の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
本明細書において、樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積とは、ポリアセタール樹脂、エラストマー、応力緩和剤その他の樹脂成分の合計体積を意味する。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物(以下、樹脂組成物(A)ということがある)は、ポリアセタール樹脂と、コアシェルエラストマーを含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)に成形し、ISO178に従って測定した曲げ弾性率が50~1000MPaであり、多色射出成形用であることを特徴とする。このような構成とすることにより、軟質性が高いポリアセタール樹脂組成物であって、硬いポリアセタール部材との多色射出成形が可能であり、かつ、静音性に優れた樹脂組成物を提供可能になる。
すなわち、軟質性の高い部材を得るため、ポリアセタール樹脂にエラストマーを配合して、曲げ弾性率を低くすることが考えられる。そして、本発明者は、このようなエラストマーを多く含むポリアセタール樹脂組成物について、硬質性のポリアセタール樹脂組成物、例えば、ポリアセタール樹脂の割合が、50~100体積%である樹脂組成物(B)と2色射出成形することを検討した。しかしながら、エラストマーを多く含む軟質性のポリアセタール樹脂組成物は、組成物そのものが製造できなかったり、組成物を製造できても、2色射出成形ができない場合があることが分かった。そして、本発明者がより具体的に検討を行ったところ、エラストマーを多く含む軟質性のポリアセタール樹脂組成物と硬質性の樹脂組成物(B)を2色射出成形できない理由として、エラストマー部分で層剥離してしまうことが原因であると推測された。さらに、本発明者が検討を行ったところ、ポリウレタン等の一般的なエラストマーを樹脂組成物に多く配合すると、ポリアセタール樹脂にエラストマーが分散するのではなく、エラストマー中にポリアセタール樹脂が分散している状態となってしまうことが問題であると推測された。
かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアセタール樹脂に配合するエラストマーの一部または全部として、コアシェルエラストマーを用いることを見出した。コアシェルエラストマーと用いると、ポリアセタール樹脂中で、粒子の状態で分散するため、かかるコアシェルエラストマーを含む樹脂組成物から成形された成形体においては、最表層は、ポリアセタール樹脂が多めとなる。さらに、最表層では、ポリアセタール樹脂がコアシェルエラストマー(粒子)を覆っている状態となる。そのため、硬質性の樹脂組成物(B)との2色射出成形が可能になったと推測された。
【0010】
<ポリアセタール樹脂>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、ポリアセタール樹脂を含む。
ポリアセタール樹脂は特に限定されるものではなく、2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と、炭素数が2~6の2価のオキシアルキレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
【0011】
炭素数が2~6のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、および、オキシブチレン基などが挙げられる。
【0012】
ポリアセタール樹脂においては、オキシメチレン基および炭素数2~6のオキシアルキレン基の総モル数に占める炭素数2~6のオキシアルキレン基の割合は特に限定されるものではなく、0.5~10モル%であればよい。
【0013】
上記ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中に炭素数2~6のオキシアルキレン基を導入するには、環状ホルマールや環状エーテルを用いることができる。環状ホルマールの具体例としては、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキセパン、1,3-ジオキソカン、1,3,5-トリオキセパン、1,3,6-トリオキソカンなどが挙げられ、環状エーテルの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどが挙げられる。ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、主原料として、1,3-ジオキソランを用いればよく、オキシプロピレン基を導入するには、主原料として、1,3-ジオキサンを用いればよく、オキシブチレン基を導入するには、主原料として、1,3-ジオキセパンを用いればよい。なお、ポリアセタール樹脂においては、ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、熱や酸、塩基に対して不安定な末端基量が少ない方がよい。ここで、ヘミホルマール末端基とは、-OCHOHで表されるものであり、ホルミル末端基とは-CHOで表されるものである。
【0014】
本実施形態で用いるポリアセタール樹脂(A)は、ISO1133に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したメルトボリュームレート(MVR)が、0.5cm/10分以上であることが好ましく、0.6cm/10分以上であることがより好ましく、0.8cm/10分以上であることがさらに好ましく、1cm/10分以上であることが一層好ましく、5cm/10分以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の流動性や生産性がより向上する傾向にある。また、前記ポリアセタール樹脂のMVRは、100cm/10分以下であることが好ましく、80cm/10分以下であることがより好ましく、70cm/10分以下であることがさらに好ましく、50cm/10分以下であることが一層好ましく、20cm/10分以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、コアシェルエラストマー(B)の分散性が向上する傾向にある。
【0015】
ポリアセタール樹脂としては、上記の他、特開2015-074724号公報の段落0018~0043に記載のポリアセタール樹脂を用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物(A)は、中の樹脂成分の合計体積に対し、ポリアセタール樹脂を10体積%以上含むことが好ましく、15体積%以上含むことがより好ましく、20体積%以上含むことがさらに好ましく、30体積%以上含んでいてもよく、35体積%以上含んでいてもよく、40体積%以上であってもよい。上限は、樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計体積に対し、50体積%以下であることが一層好ましく、47体積%以下であることがより一層好ましく、45体積%以下であることがさらに一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)中、ポリアセタール樹脂を10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましく、25質量%以上含むことがさらに好ましく、35質量%以上含むことがさらに好ましい。上限は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以下であることが一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0017】
<コアシェルエラストマー>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、コアシェルエラストマーを含む。コアシェルエラストマーを含むことにより、軟質性に優れた成形体が得られ、また、多色射出成形が可能になる。
コアシェルエラストマーとは、コア部とその一部または全部を被覆するシェル層を有する多層構造のポリマーであり、カネカ社のカネエースシリーズや三菱ケミカル社のメタブレンシリーズが知られている。
【0018】
本実施形態で用いるコアシェルエラストマーの種類は特に問わないが、コアは、ゴム系ポリマーが好ましい。ゴム系ポリマーとしては、ブタジエン含有ゴム、ブチルアクリレ-ト含有ゴム、2-エチルヘキシルアクリレ-ト含有ゴム、シリコ-ン系ゴムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ブタジエン含有ゴムを含むことがより好ましい。シェルは、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物等の1種または2種以上の単量体の重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル由来の単位が全体の50質量%以上を占める重合体(アクリル系樹脂)がより好ましい。
本実施形態で用いるコアシェルエラストマーは、コアがゴム系ポリマーを含み、シェルがアクリル系樹脂を含むことが好ましい。このようなコアシェルエラストマーを用いると、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
本実施形態で用いるコアシェルエラストマーの比重は、0.9以上であることが好ましく、また、1.3以下であることが好ましい。
【0019】
<コアシェルエラストマー以外のエラストマー(非コアシェルエラストマー)>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、コアシェルエラストマー以外のエラストマー(非コアシェルエラストマー)を含んでいてもよい。非コアシェルエラストマーを含むことにより、軟質性に優れた成形体が得られる。
非コアシェルエラストマーとしては、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、コポリエステル・エーテルエラストマー、アクリルエラストマー、塩化ビニル・ニトリルエラストマーが例示され、ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0020】
<エラストマーの含有量>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計体積に対し、エラストマーを30体積%以上含むことが好ましく、40体積%以上含むことがより好ましく、50体積%以上含むことが好ましく、52体積%以上含むことがより好ましく、55体積%以上含むことがさらに好ましい。上限は、樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計体積に対し、90体積%以下であることが好ましく、85体積%以下であることがより好ましく、80体積%以下であることがさらに好ましく、70体積%以下であってもよい。
特に、樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計体積に対するコアシェルエラストマーの割合は、30体積%であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であってもよく、また、90体積%以下であることが好ましく、85体積%以下であることがより好ましく、さらには、70体積%以下、66体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、47体積%以下であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)中、エラストマーを30質量%以上含むことが好ましく、35質量%以上含むことがより好ましく、40質量%以上含むことがさらに好ましく、45質量%以上含むことがさらに好ましい。上限は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、65質量%以下であることが一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマー(特に、コアシェルエラストマー、非コアシェルエラストマーのそれぞれについて)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
本実施形態の樹脂組成物(A)において、コアシェルエラストマーの割合は、エラストマーの合計量を100質量部としたとき、60質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、75質量部以上であることがさらに好ましく、85質量部以上、90質量部以上であってもよい。上限は、コアシェルエラストマーが100質量部の場合である。
尚、本実施形態の樹脂組成物(A)は、ポリアセタール樹脂とエラストマーの合計が樹脂組成物の85質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましく、94質量%以上であってもよい。
また、本実施形態の樹脂組成物(A)は、ポリアセタール樹脂とエラストマーと応力緩和剤の合計が樹脂組成物の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上であってもよい。
【0022】
<イオン捕捉が可能な化合物>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)100質量部に対し、イオン捕捉が可能な化合物を0.01~1質量部含むことが好ましい。このようなイオン補足が可能な化合物を含むことにより、エラストマー、特に、非コアシェルエラストマーの含有量を多くしても、押出が可能となり、また、優れた多色射出成形性が達成できる。
イオン捕捉が可能な化合物としては、トリアジン骨格を含む化合物、ヒンダードアミン、アルカリ土類金属の水酸化塩、ハイドロタルサイト、および、脂肪酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
トリアジン骨格を含む化合物としては、特開2014-005385号公報の段落0095~0097の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
ヒンダードアミンは、特開2019-038990号公報の段落0030~0031の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
アルカリ土類金属の水酸化塩としては、特開2014-234511号公報の段落0044の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
ハイドロタルサイトとしては、特開2019-065221号公報の段落0042および0043の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
脂肪酸金属塩としては、特開2021-080443号公報の段落0028および0029の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0023】
本実施形態の樹脂組成物(A)が、イオン捕捉が可能な化合物を含む場合、その含有量は樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることがさらに好ましく、0.07質量部以上であることが一層好ましく、0.09質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアセタール樹脂中の酸イオンを補足し、樹脂組成物(A)の押出性がより向上する傾向にある。また、前記イオン捕捉が可能な化合物の含有量の上限値は、樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計100質量部に対し、1質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以下であることがさらに好ましく、0.4質量部以下であることが一層好ましく、0.2質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、連続射出成形時の金型汚染をより効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物(A)は、イオン捕捉が可能な化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0024】
<応力緩和剤>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、さらに、応力緩和剤を含んでいてもよい。応力緩和剤を含むことにより、樹脂組成物の弾性率を更に下げると共に成形時に発生する残留歪みを効果的に除去できるという効果が期待される。
本実施形態で用いる応力緩和剤は、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体、ポリアミド/ポリアルキレングリコールブロック共重合体、数平均分子量が20,000以上のポリエチレングリコール、および、数平均分子量が20,000以上のポリエチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、数平均分子量が20,000以上のポリエチレンオキシドがより好ましい。
ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、融点がポリアセタールの融点と同等(例えば、融点の差が10℃以内)もしくはポリアセタール加工時の実際の温度(例えば
、200℃)と同等(例えば、共重合体の融点と加工時の温度の差が10℃以内)であることが好ましい。
ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体を構成するポリオレフィンは、ポリエチレンもしくはポリプロピレンであることが好ましい。また、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールであることが好ましく、融点がポリアセタールの融点と同等(例えば、融点の差が10℃以内)もしくはポリアセタール加工時の実際の温度(例えば、200℃)と同等(例えば、共重合体の融点と加工時の温度の差が10℃以内)であることが好ましい。
数平均分子量が20,000以上のポリエチレングリコールとしては、数平均分子量20,000~100,000のものが好ましく、20,000~50,000のものがより好ましい。
数平均分子量が20,000以上のポリエチレンオキシドは、数平均分子量20,000~500,000のものが好ましく、80,000~30,000のものがより好ましく、100,000~200,000のものがさらに好ましい。
本実施形態で用いる応力緩和剤の融点および数平均分子量は、市販品の場合はカタログ値を採用することができる。
【0025】
本実施形態の樹脂組成物(A)が応力緩和剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.7質量部以上であることがさらに好ましく、1.0質量部以上であることが一層好ましく、1.2質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の軟質性がより向上する傾向にある。また、前記応力緩和剤の含有量の上限値は、樹脂組成物(A)中の樹脂成分の合計100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、靭性を損なうことを効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物(A)は、応力緩和剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0026】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、本発明の目的を損なわない範囲内で、従来公知の任意の添加剤や充填剤を含んでいてもよい。本実施形態に用いる添加剤や充填剤としては、例えば、ポリアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスフレーク、チタン酸カリウムウイスカー等が挙げられる。これらの詳細は、特開2017-025257号公報の段落0113~0124の記載を参酌することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0027】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、前記樹脂組成物(A)を4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)に成形し、ISO178に従って測定した曲げ弾性率が50~1000MPaである。上記上限値以下とすることにより、軟質性に優れた成形体が得られる。また、曲げ弾性率を低くすると、共振周波数(Hz)が低下し、静音性が高い材料が得られる傾向にあり好ましい。
前記曲げ弾性率は、900MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましく、750MPa以下であることがさらに好ましく、用途に応じては、500MPa以下、400MPa以下であってもよい。また、前記曲げ弾性率の下限値は、用途等に応じて定められるが、通常、100MPa以上、350MPa以上、500MPa以上であってもよい。
【0028】
上記曲げ弾性率は、主に、エラストマーを配合することによって達成される。弾性率を調整するためのエラストマーは、コアシェルエラストマーであってもよいし、他のエラストマーであってもよい。また、応力緩和剤を配合することによっても調整できる。
【0029】
<多色射出成形>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、多色射出成形用である。多色射出成形用とは、例えば、ポリアセタール樹脂の割合が、50~100体積%である樹脂組成物(B)との多色射出成形用であり、より具体的には、多色射出成形用とは、後述する実施例において、本実施形態の樹脂組成物(A)がポリアセタール樹脂ペレット(B)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、F20-03、ポリアセタール樹脂)と2色射出成形体を成形でき、かつ、2色射出成形体を構成する部材(A)と部材(B)の剥離時は母材破壊となる接着強度で接着していることを含む趣旨である。
このような多色射出成形用とするための手段は、コアシェルエラストマーを配合することの他、ポリアセタール樹脂およびコアシェルエラストマーの配合量を調整すること、イオン捕捉が可能な化合物や応力緩和剤などを配合することによって達成される。
【0030】
図1は、本実施形態の樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)を用いた多色射出成形体の一例を示している。図1において、1は2色射出成形体を、2は硬い部材(樹脂組成物(B)から形成された成形体)を、3は軟質性を有する部材(樹脂組成物(A)から形成された成形体)をそれぞれ示している。
図1において、まずは、樹脂組成物(B)が金型に射出される。その後、樹脂組成物(B)が固化した後に、樹脂組成物(A)も金型に射出される。その後、金型内で冷却することにより、2色射出成形体が得られる。また、樹脂組成物(B)と樹脂組成物(A)の順番が逆であってもよい。さらに、樹脂組成物(A)、樹脂組成物(B)、または、他の樹脂組成物も用いた3種以上の多色射出成形体であってもよい。
【0031】
樹脂組成物(B)に含まれるポリアセタール樹脂は、樹脂組成物(A)に含まれるポリアセタール樹脂と同義である。樹脂組成物(B)に含まれるポリアセタール樹脂の含有量は、50~100体積%であり、60体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることがさらに好ましく、90体積%以上であることが一層好ましく、95体積%以上であってもよい。
樹脂組成物(B)は、また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、上述の樹脂組成物(A)の項で述べた、イオン捕捉が可能な化合物およびその他の成分が挙げられる。
樹脂組成物(B)は、また、エラストマーを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、エラストマーの含有量が樹脂組成物(B)の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
また、樹脂組成物(B)は4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)に成形し、ISO178に従って測定した曲げ弾性率が1000MPa超であることが好ましく、通常は、2000~3000MPa程度である。
【0032】
その他、多色射出成形の詳細は、特開2022-021882号公報の記載、国際公開第2014/021413号の段落0067~0087の記載、国際公開第2020/045467号の段落0045~0056の記載を参酌できこれらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物(A)は、特に、以下の組成であるときに、多色射出成形性に優れたものとなる。
(1)樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、30~90体積%(好ましくは、35体積%以上、また、85体積%以下)がコアシェルエラストマーであり、かつ、前記樹脂組成物中の樹脂成分の合計100質量部に対し、イオン捕捉が可能な化合物を0.01~1質量部含む樹脂組成物。また、前記範囲内で、コアシェルエラストマー以外のエラストマーを、例えば、15体積%以下の割合で含んでいてもよい。
(2)樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対し、35~50体積%(好ましくは、40体積%以上、47体積%以下)がポリアセタール樹脂であり、かつ、35~50体積%(好ましくは、40体積%以上、また、47体積%以下)がコアシェルエラストマーである前記樹脂組成物。また、前記範囲内で、コアシェルエラストマー以外のエラストマーおよび/または応力緩和剤を、例えば、15体積%以下の割合で含んでいてもよい。
【0034】
<樹脂組成物(A)の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物(A)は、上述した必須成分および必要に応じ上述した任意の成分を含有させてなる。そしてその製造方法は任意であり、従来公知の任意の、樹脂組成物の製造方法を使用し、これらの原料を混合・混練すればよい。
【0035】
平均2次粒子径を上記範囲とするための方法の1つとして、ポリアセタール樹脂とコアシェルエラストマーをタンブラーで混合した後、溶融混練機にて押出し、ストランド状とした後に切断してペレットとする方法が挙げられる。この際、溶融混練機としては単軸押出機では二次凝集が発生しやすいことから、二軸押出機を用いることが好ましい。中でもスクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、また、100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい。前記L/Dを20以上とすることにより、コアシェルエラストマーが微分散しやすくなり、コアシェルエラストマーの二次凝集を効果的に抑制することができる。また、前記L/Dを100以下とすることにより、熱劣化による樹脂組成物の変色を効果的に抑制できる傾向にある。
ダイノズルの形状も特に限定されないが、ペレット形状の点で、直径1mm以上の円形ノズルが好ましく、直径2mm以上の円形ノズルがより好ましく、また、直径10mm以下の円形ノズルが好ましく、直径7mm以下の円形ノズルがより好ましい。
【0036】
また、溶融混練時の樹脂組成物の溶融温度は170℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、また、250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましい。溶融温度を170℃以上とすることにより、溶融が十分となり、生産量が向上する傾向にある。また、250℃以下とすることにより、熱劣化による樹脂組成物の変色を効果的に抑制できる傾向にある。
【0037】
2軸押出機のスクリュー構成は特に制限されるものでは無いが、好ましい実施形態の1つとして少なくとも2つの混練部を有することが挙げられる。混練部はニーディングディスクを有し、主に樹脂の溶融やエラストマーの分散に寄与する。
【0038】
溶融混練時のスクリュー回転数は、50rpm以上であることが好ましく、70rpm以上であることがより好ましく、また、500rpm以下であることが好ましく、350rpm以下であることがより好ましい。スクリュー回転数を50rpm以下とすることにより、コアシェルエラストマーが微分散しやすくなり、二次凝集の発生をより効果的に抑制できる傾向にある。また、500rpm以下とすることにより、溶融混練時の発熱を抑制でき、熱劣化による樹脂組成物の変色を効果的に抑制できる傾向にある。また、吐出量は、5kg/hr以上であることが好ましく、7kg/hr以上であることがより好ましく、1,000kg/hr以下であることが好ましく、800kg/hr以下であることがより好ましい。5kg/hr以上とすることにより、コアシェルエラストマーがより微分散しやすくなり、二次凝集の発生を効果的に抑制できる。また、1,000kg/hr以下とすることにより、溶融混練時の発熱を効果的に抑制でき、熱劣化による樹脂組成物の変色を効果的に抑制できる傾向にある。
【0039】
溶融混練時のスクリュー回転数(Ns)と吐出量(Q)の比(Q/Ns)は、押出機のスクリュー径やスクリュー構成にもよるが、例えば、0.5以上が好ましく、0.7以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましく、また、1.5以下が好ましく、1.3以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。上記Q/Nsは、スクリュー径が18~75mm(さらには、58mm)、スクリュー構成として混練部を2つ有する実施形態において特に好ましい。
【0040】
混練機は、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等が例示される。混合・混練の各種条件や装置についても、特に制限はなく、従来公知の任意の条件から適宜選択して決定すればよい。混練はポリアセタール樹脂が溶融する温度以上、具体的にはポリアセタール樹脂の融解温度以上(一般的には180℃以上)で行うことが好ましい。
【0041】
<成形体>
本実施形態の成形体は、本実施形態の樹脂組成物(A)から形成される。成形体の形状としては、特に制限はなく、成形体の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、キャップ状のもの等が挙げられる。本発明の成形体は、部品であっても、完成品であってもよい。
本実施形態においては、樹脂組成物(A)と、他の樹脂組成物との多色射出成形体であることが好ましく、樹脂組成物(A)と、ポリアセタール樹脂の割合が50~100体積%である樹脂組成物(B)との多色射出成形体であることがより好ましい。樹脂組成物(A)および樹脂組成物(B)の好ましい範囲は、それぞれ上述した通りである。
【0042】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物および樹脂組成物から形成される成形品は、例えば、トリムクリップやシートベルト部材、ヘッドレストガイドなどの自動車部品、建材部品、電気・電子部品、事務機器部品、日用雑貨部品の他、凍食品、飲料、などの容器、冷蔵庫のパッキン等の家電用品、ホースバンドやパッキン、結束バンドなどが例示される。
【実施例
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0044】
1.原料
下記表1または表2に記載の原料を用いた。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
2.実施例1~18、比較例1~6
<樹脂組成物(A)(ペレット(A))の製造>
表3~表6に示す各成分を表3~表6に示す割合(質量部)で、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物をスクリュー径30mm、スクリュー長さ760、ダイノズル径3.5mmのベント付き二軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数120rpm、吐出量10kg/時間で溶融せん断混合し、樹脂組成物のペレット(A)を製造した。
【0048】
<曲げ弾性率>
上記で得られたペレット(A)を、温度80℃の熱風循環式乾燥機にて4時間熱処理を行った。
次に、上記乾燥後のペレット(A)を、射出成形機を用い、シリンダー温度195℃に設定し、金型温度を90℃に設定して、ISO9988-2規格に準拠して、射出成形した。こうして、4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)を得た。
次に、この4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)について、曲げ試験機である全自動曲げ試験機を用いて、ISO178に記載の方法に従って、曲げ試験速度2mm/分で曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。
上記で得られたペレット(A)を、温度80℃の熱風循環式乾燥機にて4時間熱処理を行った。
射出成形機は、芝浦機械社製、EC-100Sを用いた。全自動曲げ試験機は、島津製作所社製のものを用いた。
結果を表3~表6に示した。単位は、MPaで示した。
【0049】
<共振周波数>
上記で得られたISO試験片の片端にテグスを接着し外部から振動の影響を受けない環境にぶら下げた。もう片端に小野測器製測定システム(DS2000)に繋げた振動センサーを取り付けた状態で、同じくDS2000に繋げたインパルスハンマで試験片中央に衝撃を与えた。この時に発生する振動をDS2000で解析し、周波数応答関数を求め、周波数応答関数のピーク周波数を共振周波数とした。この時、共振周波数が120Hz以下であれば静音性に優れる材料と判断した。
【0050】
<生産性>
上記ペレット(A)に際し、以下の通り評価した。
A:問題なく生産できる
B:樹脂の分解や目ヤニが多少発生するが生産は可能である
C:樹脂の分解や目ヤニが顕著に発生し生産が困難である
【0051】
<多色射出成形性・接着性>
上記で得られたペレット(A)と、ポリアセタール樹脂ペレット(B)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、F20-03、ポリアセタール樹脂)を用い、以下の方法に従って、図1に示すような2色射出成形体を製造し、以下の通り評価した。なお、比較例4は上記生産性で、生産が困難であったため、多色射出成形性については評価していない。
射出成形機(日精樹脂工業社製DCE-140)を用いて2色成形法にて積層体Aを得た。具体的には、ポリアセタール樹脂ペレット(B)を、樹脂温度230℃、金型温度80℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の試験フィルムを成形し、続けて金型を回転した後に、ペレット(A)を射出し、その試験フィルムの上にペレット(A)の一部(積層部)を試験フィルムに積層させ、残部(屈曲部)を積層部に対して90°屈曲させてL字型になるように形成した。積層部の寸法は63mm×13mm×2.0mm(厚さ)とし、屈曲部の寸法は15mm×13mm×2.0mm(厚さ)とした。また、積層部と試験フィルムとは、長手方向が一致するように積層した。こうして得られた多色射出成形体を、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の上側治具(固定側)に前記屈曲部を固定し、下側治具(可動側)に前記試験フィルムを固定した。次いで、上側治具を上方向に速度200mm/minで変位させることにより多色射出成形体の剥離試験を実施した。
【0052】
<<成形性>>
上記成形の状態をもとに、以下の通り評価した。
A:問題なく成形できる
B:ランナーの折損があるが成形は可能が発生する
C:離型不良が発生し成形不可
【0053】
<<剥離性>>
上記剥離試験の結果に基づき、以下の通り評価した。
A:部材同士の接着性が良好
B:部材同士の接着性が不良(接着界面で容易に剥離)
C:部材同士の接着性が不良(金型から取り出した時点で未接着)
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
上記表3~表6において、「POM体積比率」とは、樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対するポリアセタール樹脂の体積比率を意味し、「エラストマー体積比率」とは、樹脂組成物中の樹脂成分の合計体積に対するエラストマーの体積比率を意味する。
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の樹脂組成物(A)を用いた場合、樹脂組成物(B)から得られる硬質のポリアセタール樹脂部材(B)との良好な2色射出成形体が得られた。これに対し、比較例1では、コアシェルエラストマー以外のエラストマーを配合したところ、曲げ弾性率は低く、軟質性は確保できたが、硬質のポリアセタール樹脂部材(B)との2色成形ができなかった。また、比較例2では、コアシェルエラストマー以外のエラストマーを用い、その割合を低くしたところ、硬質のポリアセタール樹脂部材(B)との2色成形はできたが、軟質性が確保できなかった。さらに、比較例3では、コアシェルエラストマーを用いても、エラストマーの割合を低くしたところ、硬質のポリアセタール樹脂部材(B)との2色成形はできたが、軟質性が確保できなかった。比較例4では、コアシェルエラストマーを配合したものの、イオン捕捉が可能な化合物を何ら配合せず、かつ、エラストマーの体積割合を高くしたところ、ペレットが生産できなかった。比較例5では、イオン捕捉が可能な化合物を何ら配合せず、かつ、コアシェルエラストマー以外のエラストマーを用いたところ、2色射出成形ができなかった。
【符号の説明】
【0059】
1 2色射出成形体
2 硬い部材(樹脂組成物(B)から形成された成形体)
3 軟質性を有する部材(樹脂組成物(A)から形成された成形体)
【要約】
ポリアセタール樹脂と、コアシェルエラストマーを含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を4mm厚さの多目的試験片(ISO試験片)に成形し、ISO178に従って測定した曲げ弾性率が50~1000MPaであり、多色射出成形用である、樹脂組成物。
図1