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特許7398033粘着剤、粘着シート、積層体、およびディスプレイ
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  • 特許-粘着剤、粘着シート、積層体、およびディスプレイ 図1
  • 特許-粘着剤、粘着シート、積層体、およびディスプレイ 図2
  • 特許-粘着剤、粘着シート、積層体、およびディスプレイ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】粘着剤、粘着シート、積層体、およびディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20231207BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20231207BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20231207BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231207BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231207BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231207BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/14
C09J133/02
C09J11/06
C09J7/38
G02B5/30
G09F9/00 313
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022179756
(22)【出願日】2022-11-09
【審査請求日】2023-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088549(JP,A)
【文献】特開2013-032428(JP,A)
【文献】特開2017-132872(JP,A)
【文献】特表2021-501240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体(A1)、アクリル系共重合体(A2)および、架橋剤(B)を含み、アクリル系共重合体(A1)は、下記モノマー(a-1)および(a-2)を含むモノマー混合物の共重合体であり、アクリル系共重合体(A2)は、モノマー混合物100質量%中に、下記モノマー(a-3)を25~99質量%含むモノマー混合物の共重合体であって、
(a-1)アルキル基の炭素数が8~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ただし、(a-3)を除く)
(a-2)水酸基を有するモノマーおよびカルボキシ基を有するモノマーから選択される1種類以上の極性基を有するモノマー
(a-3)シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー
架橋剤(B)がイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物のいずれかであって、
下記(1)~(5)の全てを満たすことを特徴とする粘着剤。
(1)SP(A1)>SP(A2)、かつ0.50<|SP(A1)-SP(A2)|<1.60
(2)Tg(A1)<Tg(A2)、かつ100<|Tg(A1)-Tg(A2)|<180
(3)Mw(A1)が50万~200万
(4)Mw(A2)が0.5万~10万
(5)10<Mw(A1)/Mw(A2)<80
ここで、上記式のうち、
SP(A1)は、アクリル系共重合体(A1)のSP値
SP(A2)は、アクリル系共重合体(A2)のSP値
Tg(A1)は、アクリル系共重合体(A1)のガラス転移温度
Tg(A2)は、アクリル系共重合体(A2)のガラス転移温度
Mw(A1)は、アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量
Mw(A2)は、アクリル系共重合体(A2)の重量平均分子量
|SP(A1)-SP(A2)|は、SP(A1)とSP(A2)の差の絶対値
|Tg(A1)-Tg(A2)|は、Tg(A1)とTg(A2)の差の絶対値
Mw(A1)/Mw(A2)は、Mw(A1)をMw(A2)で除した値
である。
【請求項2】
アクリル系共重合体(A2)は、メタクリル酸2-ジメチルアミノエチルを含むモノマー混合物の共重合体であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
アクリル系共重合体(A1)100質量部に対し、アクリル系共重合体(A2)を1~30質量部含む、請求項1記載の粘着剤。
【請求項4】
アクリル系共重合体(A1)は、モノマー混合物100質量%中に、
モノマー(a-1)を25~99質量%、かつモノマー(a-2)を0.1~4質量%含み、
前記アクリル系共重合体(A2)は、モノマー混合物100質量%中に、
メタクリル酸2-ジメチルアミノエチルを0.1~4質量%含むことを特徴とする、請求項2記載の粘着剤。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量が80~150万であり、前記アクリル系共重合体(A2)の重量平均分子量が2~8万であることを特徴とする請求項2記載の粘着剤。
【請求項6】
ゲル分率が60~90質量%であることを特徴とする、請求項1記載の粘着剤。
【請求項7】
架橋剤(B)がイソシアネート系化合物であることを特徴とする、請求項6記載の粘着剤。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項記載の粘着剤の硬化物である粘着剤層を備えた、粘着シート。
【請求項9】
光透過性基材、粘着剤層、および偏光板を備え、前記粘着剤層は、請求項1~7いずれか1項記載の粘着剤の硬化物である粘着剤層を備えた積層体。
【請求項10】
請求項9記載の積層体、および光学素子を備える、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性基材、粘着剤層、および偏光板を備える積層体を形成するための粘着剤、粘着シート、および該粘着シートにより形成されてなる粘着剤層を有する積層体に関する。前記積層体は、ディスプレイ用に用いられる。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等の薄型画像表示装置は、通常、液晶層、有機EL層等の画像形成層と、光学フィルムやカバーパネルとを含む積層構造を有している。画像表示装置を構成する各層の接合には、粘着剤が使用されることが一般的である。例えば、タッチパネルに用いる透明導電性フィルムは、支持ガラスや支持フィルム等の部材に粘着剤層を介して積層されている。また、画像装置に用いる偏光板フィルムは、液晶モジュールや有機ELモジュールに粘着剤層を介して貼付される。このように、画像表示装置の各部材は、粘着剤層により貼付、固定化される。
【0003】
さらには、前記画像表示装置としては、ガラス基板を用いたフラットディスプレイが主流であったが、近年、プラスチック等の可撓性基板を用いた、折り曲げ可能なフォルダブルディスプレイ(Foldable display)や、巻き取り可能なローラブルディスプレイ(Rollable display)等の、フレキシブルディスプレイが開発されている。このようなフレキシブルディスプレイは、従来のガラス基板を用いたフラットディスプレイと比較して、軽量性、薄さ、可撓性等に優れており、また意匠性にも優れている等の種々の利点を有する。
【0004】
前記粘着剤層には、従来から高温環境や高温高湿環境で発泡や剥がれが生じない性質が必要であったが、近年ではさらなる機能化が必要となり、フレキシブルディスプレイにおいては、フレキシブル性が必要となってきている。フレキシブル性とは、例えば、フォルダブルディスプレイにおいては、ディスプレイの屈曲に対応する適性(屈曲性)である。一般に、屈曲性としては、折り曲げを繰り返した際、発泡、浮きやハガレが生じない特性(動的屈曲性)が必要とされる。
【0005】
これらの問題を解決すべく、特許文献1には、ウレタンポリマーとアクリルポリマーとからなる粘着剤が開示されている。また、特許文献2には、主剤とイオン性化合物および、硬化剤からなる粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-161433号公報
【文献】特開2022-115914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年、さらなるディスプレイの高耐久化に対応すべく、使用される粘着剤にはこれまでよりも厳しい耐久性が必要とされる。特にフォルダブルディスプレイにおいては、屈曲を繰り返した際、発泡、浮きやハガレが生じない特性(動的屈曲性)に加え、長時間、屈曲状態を保持した際、発泡、浮きやハガレが生じない特性(静的屈曲性)も必要となっている。また、ローラブルディスプレイにおいては、ローラブルディスプレイに使用することができるよう、ディスプレイの巻き取りに対応する適性(巻き取り性)が必要となる。巻き取り性としては、長時間、巻き取り状態を保持した際、発泡、浮きやハガレが生じない特性が必要とされる。
【0008】
さらには、従来、これら屈曲性は室温下でのみ必要な要求品質であったが、ディスプレイの普及に伴い、極寒地域を想定した低温環境下や、極暑地域や炎天下での自動車車内を想定した高温環境下での屈曲性が加えて必要となってきている。
【0009】
これに対し、従来の粘着シートでは、実用上問題の無いレベルでの耐熱性および耐湿熱性と、屈曲性および巻き取り性等のフレキシブル性を満たすことができていないのが現状である。
また、フレキシブル性には、ディスプレイ構成によって、動的屈曲性、静的屈曲性、巻き取り性が必要とされるが、これらフレキシブル性を個別に満足することはできても、同時に満足することは困難であり、加えて、高温環境や高温高湿環境下において、動的屈曲性、静的屈曲性、巻き取り性を満たすことができていないのが現状である。
【0010】
本発明は、透明性に優れ、さらに耐熱性および耐湿熱性と、屈曲性および巻き取り性の全てを達成可能な粘着剤、粘着シート、および該積層体、さらにはディスプレイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の実施態様は、アクリル系共重合体(A1)、アクリル系共重合体(A2)および、架橋剤(B)を含み、下記(1)~(5)の全てを満たすことを特徴とする粘着剤により解決される。
(1)SP(A1)>SP(A2)、かつ0.50<|SP(A1)-SP(A2)|<1.60
(2)Tg(A1)<Tg(A2)、かつ100<|Tg(A1)-Tg(A2)|<180
(3)Mw(A1)が50万~200万
(4)Mw(A2)が0.5万~10万
(5)10<Mw(A1)/Mw(A2)<80
ここで、上記式のうち、
SP(A1)は、アクリル系共重合体(A1)のSP値
SP(A2)は、アクリル系共重合体(A2)のSP値
Tg(A1)は、アクリル系共重合体(A1)のガラス転移温度
Tg(A2)は、アクリル系共重合体(A2)のガラス転移温度
Mw(A1)は、アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量
Mw(A2)は、アクリル系共重合体(A2)の重量平均分子量
|SP(A1)-SP(A2)|は、SP(A1)とSP(A2)の差の絶対値
|Tg(A1)-Tg(A2)|は、Tg(A1)とTg(A2)の差の絶対値
Mw(A1)/Mw(A2)は、Mw(A1)をMw(A2)で除した値である。
【0012】
また、本発明の実施態様は、アクリル系共重合体(A1)は、下記モノマー(a-1)および、(a-2)を含むモノマー混合物の共重合体であり、アクリル系共重合体(A2)は、下記モノマー(a-3)および、(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であることを特徴とする、上記粘着剤である。
(a-1)アルキル基の炭素数が8~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ただし、(a-3)を除く)
(a-2)水酸基を有するモノマーおよびカルボキシ基を有するモノマーから選択される1種類以上の極性基を有するモノマー
(a-3)シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー
(a-4)アミノ基を有するモノマー
【0013】
また、本発明の実施態様は、アクリル系共重合体(A1)100質量部に対し、アクリル系共重合体(A2)を1~30質量部含むことを特徴とする、上記粘着剤である。
【0014】
また、本発明の実施態様は、アクリル系共重合体(A1)は、モノマー混合物100質量%中に、モノマー(a-1)を25~99質量%、かつモノマー(a-2)を0.1~4質量%含み、
前記アクリル系共重合体(A2)は、モノマー混合物100質量%中に、モノマー(a-3)を25~99質量%、かつモノマー(a-4)を0.1~4質量%含むことを特徴とする、上記粘着剤である。
【0015】
また、本発明の実施態様は、前記アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量が80~150万であり、前記アクリル系共重合体(A2)の重量平均分子量が2~8万であることを特徴とする、上記粘着剤である。
【0016】
また、本発明の実施態様は、ゲル分率が60~90質量%であることを特徴とする、上記粘着剤である。
【0017】
また、本発明の実施態様は、架橋剤(B)がイソシアネート系化合物であることを特徴とする、上記粘着剤である。
【0018】
また、本発明の実施態様は、上記粘着剤の硬化物である粘着剤層を備えた、粘着シートである。
【0019】
また、本発明の実施態様は、光透過性基材、粘着剤層、および偏光板を備え、前記粘着剤層は、上記粘着剤の硬化物である粘着剤層を備えた積層体である。
【0020】
また、本発明の実施態様は、上記積層体、および光学素子を備える、ディスプレイである。
【発明の効果】
【0021】
上記の本発明により、透明性に優れ、さらに耐熱性および耐湿熱性と、屈曲性および巻き取り性の全てを達成可能な粘着剤、粘着シート、ならびに該粘着シートを用いた積層体を提供する。
また、本発明の粘着シート、および積層体を用いることで、視認性とコントラストに優れるディスプレイを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の粘着シートを部分的に示す概略断面図である。
図2】本発明の粘着シートの使用例である、積層体を部分的に示す概略断面図である。
図3】本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の粘着剤、粘着シート、積層体、およびディスプレイの構成例を説明するが、これに限定されない。
【0024】
本明細書で使用する用語を定義する。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む。モノマーとは、エチレン性不飽和基含有単量体である。被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。本発明でシート、フィルムおよびテープは同義語である。
また、本明細書では、(a-1)アルキル基の炭素数が8~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(a-2)ヒドロキシ基を有するモノマーおよびカルボキシ基を有するモノマーから選択される1種類以上の極性基を有するモノマー、(a-3)シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー、(a-4)アミノ基を有するモノマー、(a-5)(a-1)~(a-4)以外のその他モノマー、アクリル系共重合体(A1)、およびアクリル共重合体(A2)をそれぞれ、モノマー(a-1)、モノマー(a-2)、モノマー(a-3)、モノマー(a-4)、モノマー(a-5)、共重合体(A1)、および共重合体(A2)と略記することがある。
なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0025】
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0026】
「粘着剤」
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体(A1)、アクリル系共重合体(A2)および、架橋剤(B)を含み、下記(1)~(5)の全てを満たすことを特徴とする粘着剤である。
(1)SP(A1)>SP(A2)、かつ0.50<|SP(A1)-SP(A2)|<1.60
(2)Tg(A1)<Tg(A2)、かつ100<|Tg(A1)-Tg(A2)|<180
(3)Mw(A1)が50万~200万
(4)Mw(A2)が0.5万~10万
(5)10<Mw(A1)/Mw(A2)<80
ここで、上記式のうち、
SP(A1)は、アクリル系共重合体(A1)のSP値
SP(A2)は、アクリル系共重合体(A2)のSP値
Tg(A1)は、アクリル系共重合体(A1)のガラス転移温度
Tg(A2)は、アクリル系共重合体(A2)のガラス転移温度
Mw(A1)は、アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量
Mw(A2)は、アクリル系共重合体(A2)の重量平均分子量
|SP(A1)-SP(A2)|は、SP(A1)とSP(A2)の差の絶対値
|Tg(A1)-Tg(A2)|は、Tg(A1)とTg(A2)の差の絶対値
Mw(A1)/Mw(A2)は、Mw(A1)をMw(A2)で除した値
である。
【0027】
<アクリル系共重合体(A1)およびアクリル系共重合体(A2)>
アクリル系共重合体(A1)および、アクリル系共重合体(A2)は、下記に記載するモノマーから選ばれるモノマー混合物の共重合体である。モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー、芳香環を有するモノマー、水酸基を有するモノマー、カルボキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマー、アルキレンオキシ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、その他ビニルモノマー等が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0029】
シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
【0030】
芳香環を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、スチレン等が挙げられる。
【0031】
水酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシシクロヘキシル、等が挙げられる。
【0032】
カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸p-カルボキシベンジル、アクリル酸β-カルボキシエチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0033】
エポキシ基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0034】
アミノ基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0035】
アルキレンオキシ基を有するモノマーは、例えば、下記一般式(1)で示すモノマー、または一般式(2)で示すモノマーが挙げられる。
【0036】
【化1】
・・・一般式(1)
【0037】
【化2】
・・・一般式(2)
【0038】
一般式(1)および一般式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、n、mは、繰り返し単位を表す整数であり、1≦n≦25、1≦m≦25であり、1≦n≦13、1≦m≦5が好ましい。
一般式(1)で示すモノマーの市販品は、例えば、メトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=1)、メトキシジエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=2)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=3)、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=9)、メトキシポリエチレングリコール#600アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=23)、メトキシジエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rがメチル基、n=2)、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rがメチル基、n=3)、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rがメチル基、n=4)、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=9)、メトキシポリエチレングリコール#600メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=23)が挙げられる。
【0039】
一般式(2)で示すモノマーの市販品は、例えば、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rが水素原子、m=3)、メトキシトリプロピレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rがメチル基、m=3)
【0040】
アクリルアミドモノマーは、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物;
N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有する化合物等が挙げられる。
【0041】
その他ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0042】
アクリル系共重合体(A1)は、前記モノマーのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含有することが好ましく、特に、炭素数が8~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a-1)を含有することが好ましい。ただし、(a-1)はアルキル基がシクロアルキル基である(a-3)を除く。
さらに具体的には、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシルが応力緩和性および密着力の観点より好ましい。
【0043】
モノマー(a-1)は、アクリル系共重合体(A1)を構成するモノマー混合物100質量%中、25~99質量%含まれることが好ましく、40~99質量%がより好ましい。含有量が25質量%以上になることで十分な応力緩和性を得やすい。また、含有量が99質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなるために好ましい。
【0044】
これらモノマー(a-1)は、単独または2種類以上を併用できる。特に、2種類以上のモノマー(a-1)を併用することは、密着性と凝集力の両立の観点からより好ましいい。
【0045】
また、アクリル系共重合体(A1)は、極性基を有するモノマーを含有することが好ましく、特に、水酸基を有するモノマーおよびカルボキシ基を有するモノマーから選択される1種類以上の極性基を有するモノマー(a-2)を含有することが好ましい。さらに具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸が、凝集力および密着力の観点より好ましい。
【0046】
モノマー(a-2)は、アクリル系共重合体(A1)を構成するモノマー混合物100質量%中、0.1~4質量%含まれることが好ましく、0.4~3質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%以上になることで十分な凝集力を得やすい。また、含有量が4質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなるために好ましい。
【0047】
アクリル系共重合体(A2)は、前記モノマーのうち、シクロアルキル基を有するモノマー(a-3)を含有することが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、が凝集力および密着力の観点より好ましい。
【0048】
モノマー(a-3)は、アクリル系共重合体(A2)を構成するモノマー混合物100質量%中、25~99質量%含まれることが好ましく、40~99質量%がより好ましい。含有量が25質量%以上になることで十分な凝集力を得やすい。また、含有量が99質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなるために好ましい。
【0049】
また、アクリル系共重合体(A2)は、前記モノマーのうち、アミノ基を有するモノマー(a-4)を含有することが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチルが凝集力および密着力の観点より好ましい。
【0050】
モノマー(a-4)は、アクリル系共重合体(A2)を構成するモノマー混合物100質量%中、0.1~4質量%含まれることが好ましく、0.4~3質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%以上になることで十分な凝集力を得やすい。また、含有量が4質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなるために好ましい。
【0051】
<アクリル系共重合体の溶解度パラメーター(SP値)の計算>
次に、アクリル系共重合体(A1)および、アクリル系共重合体(A2)のSP値について説明する。本発明において、アクリル系共重合体のSP値は、下記式3により算出することで求められる。なお、アクリル系共重合体を構成するモノマーのSP値は、Fedorsの算出法[「Polymer Engineering and Science」、第14巻、第2号(1974)、148~154ページ]を参照した。
【0052】
[式3]
δ=(ΣΔe+Δe+・・・Δe)/(ΣΔv+Δv+・・・Δv1/2
[式中、δはアクリル系共重合体(A1)および、アクリル系共重合体(A2)の溶解度パラメーター(SP値)であり、Δe(i=1、2、・・・n)は、アクリル系共重合体を構成するモノマーiのモル蒸発エネルギーであり、Δv(i=1、2、・・・n)は、アクリル系共重合体を構成するモノマーiのモル体積であり、M(i=1、2、・・・n)は、アクリル系共重合体を構成するモノマーiの全モノマー成分中のモル分率を表す。]
ここで溶解度パラメーターの単位は(cal/mol)1/2である。
【0053】
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体(A1)のSP値であるSP(A1)とアクリル系共重合体(A2)のSP値であるSP(A2)が、SP(A1)>SP(A2)であり、かつ、SP(A1)とSP(A2)の差の絶対値である|SP(A1)-SP(A2)|が、0.50<|SP(A1)-SP(A2)|<1.60であり、0.60<|SP(A1)-SP(A2)|<1.30がより好ましい。
本発明の粘着剤は、SP値の異なる2種類のアクリル系共重合体を含み、高極性アクリル系共重合体であるアクリル系共重合体(A1)が、高極性被着体への密着性を向上し、低極性アクリル系共重合体であるアクリル系共重合体(A2)が、低極性被着体への密着性を向上させる。|SP(A1)-SP(A2)|が、0.50よりも大きいことで、低極性被着体と高極性被着体への密着性を向上することができ、1.60よりも小さいことで、透明性を維持することができる。
【0054】
<アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)の計算>
次に、アクリル系共重合体(A1)および、アクリル系共重合体(A2)のTgについて説明する。本発明において、アクリル系共重合体のTgは、各モノマーのホモポリマーのTgをもとに、下記式4であらわされるFox式により算出することで求められる。なお、アクリル系共重合体を構成するモノマーのホモポリマーのTgは、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989年) に記載の数値である。また、上記Polymer Handbookに記載のないモノマーについては、モノマー製造企業のカタログ値を採用する。
【0055】
[式4]
Fox式:1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・W/Tg
[式中、Tgはアクリル系共重合体(A1)および、アクリル系共重合体(A2)のガラス転移温度(Tg)であり、Tg(i=1、2、・・・n)は、アクリル系共重合体を構成するモノマーiのホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(Tg)であり、W(i=1、2、・・・n)は、アクリル系共重合体を構成するモノマーiの全モノマー成分中の質量分率を表す。]
ここでガラス転移温度の単位は(K)である。
【0056】
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体(A1)のTgであるTg(A1)とアクリル系共重合体(A2)のTgであるTg(A2)が、Tg(A1)<Tg(A2)であり、かつ、Tg(A1)とTg(A2)の差の絶対値である|Tg(A1)-Tg(A2)|が、100<|SP(A1)-SP(A2)|<180であり、120<|SP(A1)-SP(A2)|<160がより好ましい。
本発明の粘着剤は、Tgの異なる2種類のアクリル系共重合体を含み、低Tgアクリル系共重合体であるアクリル系共重合体(A1)が、被着体への密着性を向上し、高Tgアクリル系共重合体であるアクリル系共重合体(A2)が、耐久性を向上させる。|Tg(A1)-Tg(A2)|が、100よりも大きいことで、密着性と耐久性を向上することができ、180よりも小さいことで、透明性を維持することができる。
【0057】
<アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定>
次に、アクリル系共重合体(A1)および、アクリル系共重合体(A2)のMwについて説明する。本発明において、アクリル系共重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。具体的には、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量の換算値として求めることができる。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0058】
アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量は、50万~200万であり、80万~150万がより好ましい。50万~200万の範囲にあると凝集力がより向上し、耐湿熱性、耐熱性がより向上する。
【0059】
アクリル系共重合体(A2)の重量平均分子量は、0.5万~10万であり、2万~8万がより好ましい。0.5万~10万の範囲にあると密着性がより向上し、屈曲性、巻き取り性がより向上する。
【0060】
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量であるMw(A1)をアクリル系共重合体(A2)の重量平均分子量であるMw(A2)で除した値であるMw(A1)/Mw(A2)が、10<Mw(A1)/Mw(A2)<80でり、20<Mw(A1)/Mw(A2)<70がより好ましい。本発明の粘着剤は、Mwの異なる2種類のアクリル系共重合体を含み、高Mwアクリル系共重合体であるアクリル系共重合体(A1)が、耐久性を向上し、低Mwアクリル系共重合体であるアクリル系共重合体(A2)が、被着体への投錨性を向上させる。Mw(A1)/Mw(A2)が、10よりも大きいことで、耐久性と被着体への投錨性を向上することができ、80よりも小さいことで、低Mwアクリル系共重合体(A2)のブリードアウトによる耐久性不良を抑制することができる。
【0061】
<アクリル系共重合体(A1)とアクリル系共重合体(A2)の混合比>
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体(A1)100質量部に対し、アクリル系共重合体(A2)を1~30質量部含むことが好ましく、2~20質量部含むことがより好ましい。1質量部以上となることで、被着体への密着性、耐久性を向上することができる。また、30質量部以下になることで、柔軟性を維持でき、屈曲性および巻き取り性を維持することができる。
【0062】
[アクリル系共重合体の製造]
共重合体(A1)および共重合体(A2)は、それぞれ、(a-1)および(a-2)、(a-3)および(a-4)を含むモノマー混合物を重合し、製造することができる。
重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。
重合温度は、60~120℃の沸点反応が好ましい。重合時間は、5~12時間程度が好ましい。
【0063】
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0064】
アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル等が挙げられる。
【0065】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0066】
<架橋剤(B)>
本発明の粘着剤は、架橋剤(B)を含む。架橋剤(B)は、共重合体(A1)が有する水酸基および/または、カルボキシ基と反応することで、粘着剤層の凝集力が向上し、耐久性、耐汚染性が向上する。
【0067】
架橋剤(B)としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、または金属キレート等が挙げられる。
これらのうち、架橋剤(B)として、イソシアネート化合物を使用することで、接着性および、耐久性が向上できるために好ましい。
【0068】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0069】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0073】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0074】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0075】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
【0076】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0077】
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0078】
アジリジン化合物は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0079】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0080】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0081】
架橋剤(B)は、共重合体(A1)および共重合体(A2)の合計100質量部に対して0.02~4.0質量部含むことが好ましく、0.04~1.0質量部含むことがより好ましい。含有量が0.02質量部以上になると凝集力がより向上し、4.0質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために好ましい。
【0082】
<有機シラン化合物>
本発明の粘着剤は、さらに有機シラン化合物を含有できる。有機シランを含有することで、被着体への密着性を向上することができる。
有機シラン化合物は、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0083】
有機シラン化合物は、共重合体(A1)および共重合体(A2)の合計100質量部に対して、0.01~2.0質量部を使用することが好ましく、0.05~1.0質量部がより好ましい。
【0084】
本発明の粘着剤には、課題を解決できる範囲であれば、任意成分として各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を含有できる。
【0085】
<ゲル分率>
本発明の粘着剤は、ゲル分率が60~90質量%であることが好ましく、60~80質量%がより好ましい。ゲル分率が60質量%以上であると、粘着剤の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、耐久性が向上し、90%質量以下であると、粘着剤の応力緩和性が向上し、柔軟な粘着剤層が得られ、密着力が向上する。
【0086】
[ゲル分率測定方法]
ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができる。具体的には、下記、式1によって表される様、粘着剤層を酢酸エチル中に50℃で1日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の粘着剤層に対する質量分率(単位:質量%)として求められる。
(式1)
ゲル分率(質量%)=(Y/X)×100
X=浸漬前の粘着剤層の質量(g)
Y=浸漬後の粘着剤層の質量(g)
一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。ゲル分率(架橋構造の導入量) は、架橋構造の導入方法や、硬化剤の種類および量等により所望の範囲に調整できる。
【0087】
「粘着シート」
本発明の粘着シートは、光透過性基材と粘着剤層からなる積層体における、前記粘着剤層を形成するために用いられる粘着シートであり、すなわち本発明の粘着シートは、光透過性基材を接合するために用いられる。
図1に、本発明の粘着シートを部分的に示す概略断面図の例を示す。図1において1は、粘着剤層1、2は剥離フィルムである。
【0088】
本発明の粘着シートは、図1で示すように、粘着剤層の両面に剥離フィルムが形成された構成を有しており、且つ剥離フィルムの間に形成されている粘着剤層が、アクリル系共重合体(A1)、アクリル系共重合体(A2)および、架橋剤(B)の混合物により形成された粘着剤層である。
【0089】
<剥離フィルム>
剥離フィルムとしては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン等のプラスチック材料などが挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0090】
剥離フィルムとしては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿などの苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材としては、特に、PETフィルム又はシートが好適である。
【0091】
透明プラスチック基材の厚さは、特に限定されず、例えば、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましい。
【0092】
なお、剥離フィルムは単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、透明基材表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの適宜な表面処理が施されていてもよい。
【0093】
<粘着シートの製造>
本発明の粘着シートは、通常の粘着シートの製造方法に従って製造することができる。例えば、剥離フィルムの剥離処理面に、アクリル系共重合体(A1)、アクリル系共重合体(A2)および、架橋剤(B)(以下、単に「粘着剤」と記述する場合がある。)を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように直接塗工して粘着剤層を形成し、剥離フィルムを貼付する方法や、2枚の剥離フィルムの剥離処理面に、粘着剤を乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗工して、2つの粘着剤層をそれぞれ形成した後、各粘着剤層を貼付する方法等により作製することができる。
【0094】
粘着剤層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、10~500μmが好ましく、50~200μmがより好ましい。粘着剤層の厚みが10~500μmであると、十分な凝集力が得やすく、耐熱性、耐湿熱性、屈曲性および巻き取り性を高度に両立できるために好ましい。
【0095】
なお、粘着剤の塗工に際しては、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、またはスプレーコーターなどを用いることができる。
【0096】
前記粘着シートとしては、適宜の幅に裁断し、ロール状に巻回することにより、ロール状に巻回した粘着テープの形態を有していてもよい。
【0097】
「積層体」
本発明の積層体は、光透過性基材、粘着剤層、および偏光板を備え、前記粘着剤層は、本発明の粘着シートを用いて形成されてなる。
【0098】
本発明の積層体は、透明性、耐熱性、耐湿熱性、屈曲性および巻き取り性に優れた粘着シートにより形成されるため、透明性、耐熱性、耐湿熱性、屈曲性および巻き取り性に優れる。
【0099】
図2に、本発明の粘着シートの使用例である、積層体を部分的に示す概略断面図の例を示す。図2において3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層1、4は偏光板である。
【0100】
図2で示される積層体では、光透過性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤からなる粘着剤層を介して、偏光板に貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤から形成された透明粘着剤層が、光透過性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付される形態で用いることができる。
【0101】
光透過性基材(カバーパネル)としては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリイミド等のプラスチック材料などが挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0102】
光透過性基材(カバーパネル)としては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿などの苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材としては、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロオレフィン、ポリイミドが好適である。
【0103】
光透過性基材(カバーパネル)の厚さは、特に限定されず、例えば、100~2000μmが好ましく、200~1000μmがより好ましい。
【0104】
《ディスプレイ》
ディスプレイは、本発明の積層体、および光学素子を備える。光学素子としては、特に限定されず、例えば、液晶素子、有機EL素子等が挙げられる。
【0105】
本発明のディスプレイは、透明性、耐熱性、耐湿熱性、屈曲性および巻き取り性に優れた積層体を有するため、透明性、耐熱性、耐湿熱性、屈曲性および巻き取り性に優れる。
【0106】
図3に、本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図の例を示す。図3において、3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層1、4は偏光板、5は粘着剤層2、6は窒化ケイ素等のバリア層、7は有機EL層、8はポリイミド等の支持体、10は有機ELセルである。なお、ディスプレイの構成が図3に限定されることはない。
【0107】
図3で示されるディスプレイでは、光透過性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤からなる粘着剤層(粘着剤層1)を介して、偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層(粘着剤層2)を介して有機ELセルに貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤から形成された透明粘着剤層が、光透過性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層を介して積層体が有機ELに貼付される形態で用いることができる。
例えば、図3において、本発明の粘着剤は、粘着剤層1、および粘着剤層2のいずれにも用いることができる。
一般に、粘着剤層1と粘着剤層2を比較した場合、粘着剤層に要求される要求品質は粘着剤層1の方が要求は高く、本発明の粘着剤は、基材への密着性および、接着性が良好であることから、粘着剤層1に用いられることが好ましい。このとき、粘着剤層2を形成するための粘着剤は、本発明の粘着剤を用いてもよく、従来公知の粘着剤を用いてもよい。
【0108】
ディスプレイの使用用途としては、特に制限はないが、有機ELテレビをはじめ、有機ELスマートフォン、有機ELタブレット、有機ELスマートウォッチ等が挙げられる。
【実施例
【0109】
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示し、「RH」は相対湿度を意味する。また、表中の配合量は、質量部である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、アクリル系共重合体の重量平均分子量の測定方法は、下記に示す通りである。また、実施例9は、特許請求の範囲に整合させることを目的として参考例9と読み替えるものとする。
【0110】
<重量平均分子量の測定>
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行うことができる。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0111】
<アクリル系共重合体の製造例>
(アクリル系共重合体(A1-1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)30部、アクリル酸ブチル(BA)67部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル2部、アクリル酸1部、開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、60℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を60℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%の共重合体(A1-1)溶液を得た。得られた共重合体(A1-1)の重量平均分子量は180万であった。
【0112】
(アクリル系共重合体(A1-2~A1-13、A’1-1、A’1-2)
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系共重合体(A-1)の製造と同様の方法で共重合体(A1-2~A1-13、A’1-1、A’1-2)を製造した。
【0113】
(アクリル系共重合体(A2-1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸ブチル(BA)5部、アクリル酸イソボロニル95部、開始剤として、AIBN2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、60℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を60℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%の共重合体(A2-1)溶液を得た。得られた共重合体(A2-1)の重量平均分子量は5万であった。
【0114】
(アクリル系共重合体(A2-1~A2-6、A’2-1、A’2-2)
表2記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系共重合体(A2-1)の製造と同様の方法で共重合体(A2-2~A2-6、A’2-1、A’2-2)を製造した。
【0115】
得られた共重合体(A1-1~A1-13、A’1-1、A1’-2、A2-1~A2-6、A’2-1、A’2-2)の溶解度パラメーター(SP値)、重量平均分子量(Mw)および、ガラス転移温度(Tg)を表1および表2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
表中の略号は以下の通りである。
EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル(アルキル基の炭素数8)
OA:アクリル酸オクチル(アルキル基の炭素数8)
DOA:アクリル酸ドデシル(アルキル基の炭素数12)
BA:アクリル酸ブチル(アルキル基の炭素数4)
MA:アクリル酸メチル(アルキル基の炭素数1)
MMA:メタクリル酸メチル(アルキル基の炭素数1)
MEA:アクリル酸2-メトキシエチル(一般式(1)において、Rが水素原子、n=1のモノマー)
IBXA:アクリル酸イソボロニル(シクロアルキル基を有するモノマー)
IBXMA:メタクリル酸イソボロニル(シクロアルキル基を有するモノマー)
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
Am:アクリルアマイド
DM:メタクリル酸2-ジメチルアミノエチル
【0119】
(実施例1)
<粘着剤の調製>
アクリル系共重合体(A1-1)不揮発分100部に対して、アクリル系共重合体(A2-1)1部、架橋剤(B)としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体(B-1)0.20部、有機シラン化合物として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S-1)0.1部、さらに不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤を得た。
【0120】
<粘着シートの製造>
得られた粘着剤を、厚み50μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、「E7004」、シリコーン系剥離層、東洋紡社製)上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、100℃で3分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚み38μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート、「SP-PET3811」、シリコーン系剥離層、リンテック社製)の片面を貼り合せ、「剥離性シート/粘着剤層/剥離性シート」の積層体を作製した。次いで、得られた積層体を40℃環境下で1週間熟成させて、粘着シートを得た。
【0121】
(実施例2~15、比較例1~1
表3に示す通り、共重合体および、硬化剤の種類と配合量(質量部)を変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤および粘着シートを得た。
【0122】
【表3】
【0123】
表中の略号は以下の通りである。
<架橋剤(B)>
B-1 : トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
B-2 : ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
B-3 : キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
B-4 : N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン
B-5 : 4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン
<有機シラン化合物>
S-1 : 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0124】
《粘着シートの物性測定および評価》
得られた粘着シートを用いて、ゲル分率、および、以下の透明性、耐熱性、耐湿熱性、動的耐屈曲性、静的屈曲性、巻き取り性を評価した。結果を表3、4に示す。
【0125】
<試験用粘着シートの作成>
得られた粘着シートの、厚み38μmの剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を23℃、相対湿度50%雰囲気下で厚さ50μmのPETフィルム(東レ株式会社製、T60)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着剤層/剥離フィルムからなる試験用粘着シートを作製した。
【0126】
<ゲル分率>
得られた粘着シートを、幅25mm×長さ100mmのサイズに切り出した。切り出した粘着シートの一方の剥離フィルムを剥がし、あらかじめ質量を測定しておいた、幅50mm×長さ120mmの200メッシュに貼着した。次いで、他方の剥離フィルムを剥がし、粘着剤が露出しないよう、メッシュを粘着剤が内側になるよう折りたたんだ。メッシュで包まれた粘着剤を、約50mLの酢酸エチル中に、23℃で7日間浸漬し、粘着剤のゾル成分をメッシュ外へ溶出させた。浸漬後、メッシュで包まれた粘着剤を取出し、100℃で1時間乾燥させ、約20分間放冷した後、乾燥質量を測定した。粘着剤のゲル分率は、次式により算出した。
ゲル分率(質量%)=((X-Y)/X)×100
X=浸漬前の粘着剤層の質量(g)
Y=浸漬後の粘着剤層の質量(g)
【0127】
<透明性>
試験用粘着シートを幅112mm×長さ200mm(9インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出してPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルムからなる試験用粘着シート2を作製した。
この試験用粘着シート2から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気で無アルカリガラス板(EN-A1:旭硝子社製)にラミネーターを用いて貼着し、HAZEを測定した。なお、HAZEは日本電色工業社製Turbidimeter NDH5000Wを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
○:HAZEが1.0未満(良好)。
×:HAZEが1.0以上(不良)。
【0128】
<耐熱性・耐湿熱性>
別途作成した、試験用粘着シート2から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気で偏光板(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ シクロオレフィンフィルム)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着剤層/偏光板からなる試験用積層体を得た。次いで、耐熱性試験として105℃の条件下に500時間放置し、25℃、相対湿度50%雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および試験用積層体の浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した。又、耐湿熱性の評価として、上記試験用積層体を60℃、相対湿度95%RH雰囲気で500時間放置し、25℃、相対湿度50%雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した。耐熱性、耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
[評価基準]
◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない。
○:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所未満認められるが、実用上問題がない。
×:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所以上認められ、実用上問題がある。
【0129】
<動的耐屈曲性:耐屈曲性[1]、[2]、[3]>
別途作成した、試験用粘着シート2から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気で偏光板(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ シクロオレフィンフィルム)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着剤層/偏光板からなる試験用積層体を得た。次いで試験用積層体を、常態試験として25℃、相対湿度50%雰囲気にて耐屈曲性[1]、耐熱試験として85℃雰囲気下にて耐屈曲性[2]、また、耐湿熱試験として60℃、相対湿度95%RH雰囲気下にて耐屈曲性[3]、それぞれ折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)にて折り曲げた時の内径(直径)が6mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。動的屈曲性は、試験後の外観を下記観点で評価した。
外観:試験用積層体の気泡の有無および粘着剤層の浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
[評価基準]
◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない。
○:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所未満認められるが、実用上問題がない。
×:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所以上認められ、実用上問題がある。
【0130】
<静的耐屈曲性:耐屈曲性[1]、[2]、[3]>
別途作成した、試験用粘着シート2から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気で偏光板(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ シクロオレフィンフィルム)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着剤層/偏光板からなる試験用積層体を得た。次いで試験用積層体を、常態試験として25℃、相対湿度50%雰囲気にて耐屈曲性[1]、耐熱試験として85℃雰囲気下にて耐屈曲性[2]、また、耐湿熱試験として60℃、相対湿度95%RH雰囲気下にて耐屈曲性[3]、それぞれ面状体無負荷U字伸縮試験機により、試験片の偏光板側の面を内側として、曲げ半径3mm、曲げ角度180°の屈曲状態で保持して、240時間保持した。静的屈曲性は、試験後の外観を下記観点で評価した。
外観:試験用積層体の気泡の有無および粘着剤層の浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
[評価基準]
◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない。
○:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所未満認められるが、実用上問題がない。
×:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所以上認められ、実用上問題がある。
【0131】
<巻き取り性>
別途作製した、試験用粘着シート2から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気で偏光板(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ シクロオレフィンフィルム)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着剤層/偏光板からなる試験用積層体を得た。次いで、試験用積層体を半径3mmの金属棒に、試験片のPET側の面を内側として、長辺方向に巻き取り、ロール状にした後、タコ糸で3カ所結んで固定した。巻き取り試験として、ロール状の試験用積層体を25℃、相対湿度50%雰囲気に240時間保持した。巻き取り性は、試験後の外観を下記観点で評価した。
外観:試験用積層体の気泡の有無および粘着剤層の浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
[評価基準]
◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない。
○:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所未満認められるが、実用上問題がない。
×:気泡の発生、浮き・ハガレが5カ所以上認められ、実用上問題がある。
【0132】
【表4】
【0133】
試験用粘着シートおよび、試験用積層体の層構成
[A];PETフィルム/粘着剤層/ガラス
[B];PETフィルム/粘着剤層/偏光板
試験条件
耐屈曲性[1];25℃、相対湿度50%雰囲気
耐屈曲性[2];85℃雰囲気
耐屈曲性[3];60℃、相対湿度95%雰囲気
【0134】
表4の結果から実施例1~15の粘着シートは、透明性に加えて、耐熱性および耐湿熱性と、屈曲性および巻き取り性のすべてが良好であることが確認できた。これにより、本発明の粘着シートを使用した積層体および、ディスプレイは、透明性、耐熱性、耐湿熱性、および屈曲性に優れている。さらには、本発明のディスプレイは、視認性、コントラストも優れていた。
一方、比較例1~11の粘着シートは、前記特性の全てを満たすことはできなかった。
【符号の説明】
【0135】
1 粘着剤層1
2 剥離フィルム
3 光透過性基材(カバーパネル)
4 偏光板
5 粘着剤層2
6 バリア層
7 有機EL層
8 支持体
9 有機ELセル
【要約】
【課題】透明性に優れ、さらに耐熱性および耐湿熱性と、屈曲性および巻き取り性の両立が可能な粘着剤、粘着シート、および該積層体、さらにはディスプレイの提供。
【解決手段】アクリル系共重合体(A1)、アクリル系共重合体(A2)および、架橋剤(B)を含み、アクリル系共重合体(A1)のSP値、ガラス転移温度、重量平均分子量、およびアクリル系共重合体(A2)のSP値、ガラス転移温度、重量平均分子量が、特定の要件を満足することを特徴とする粘着剤。
【選択図】 図1
図1
図2
図3