(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ねじりコイルばねとその製造方法、装身具用留め具とその製造方法及び装身具
(51)【国際特許分類】
F16F 1/12 20060101AFI20231207BHJP
A44C 25/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16F1/12 A
A44C25/00 B
(21)【出願番号】P 2023125740
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503175966
【氏名又は名称】株式会社クロスフォー
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 秀位
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-1660(JP,A)
【文献】特開2013-111234(JP,A)
【文献】特開2006-283881(JP,A)
【文献】登録実用新案第3155597(JP,U)
【文献】特開2021-82404(JP,A)
【文献】特開2007-278334(JP,A)
【文献】実開昭57-38931(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
A44C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に連結された第1部材と第2部材とを相対的に回転させる付勢力を発生するねじりコイルばねであって、
線材が螺旋状に巻かれたコイル部と、
前記コイル部の第1端部から延出した第1アーム部と、
前記コイル部の第2端部から延出した第2アーム部とを有し、
前記第1アーム部は、
前記第1部材に設けられた孔に挿入される挿入部と、
前記第1端部と前記挿入部とを接続する第1中間部と、
前記挿入部と前記第1中間部との間で折れ曲がった第1折れ曲がり部と
を含み、
前記第2アーム部は、
前記第2部材に設けられた段差部と係合する係合部と、
前記第2端部と前記係合部とを接続する第2中間部と、
前記第2中間部と前記係合部との間で折れ曲がった第2折れ曲がり部と
を含み、
前記コイル部の中央のコイル孔は、螺旋形状の中心線と平行な中心線方向から見て円形状を持ち、
前記第1端部は、前記中心線に垂直な第1方向から見て、前記中心線の背後に位置し、
前記第2端部は、前記中心線に垂直な第2方向から見て、前記中心線の背後に位置し、
前記第1中間部は、
前記中心線方向から見て、前記コイル孔の前記円形状の第1接線に沿って延びており、
前記第1方向から見て、前記中心線に垂直な第1垂線に接するとともに、前記第1端部から離れるにつれて前記中心線から離れる方向へ延びており、
前記挿入部は、
前記中心線方向から見て、前記第1折れ曲がり部から離れるにつれて前記第1接線から離れる方向であって、前記第1接線に対して前記コイル孔が位置する側の反対側に向かう方向へ延びており、
前記第1方向から見て、前記第1折れ曲がり部から離れるにつれて前記第1垂線から離れる方向であって、前記第1垂線に対して前記コイル部が位置する側に向かう方向へ延びており、
前記第2中間部は、
前記中心線方向から見て、前記コイル孔の前記円形状の第2接線に沿って延びており、
前記第2方向から見て、前記中心線に垂直な第2垂線に接するとともに、前記第2端部から離れるにつれて前記中心線から離れる方向へ延びており、
前記係合部は、前記第2方向から見て、前記第2折れ曲がり部から離れるにつれて前記第2垂線から離れる方向であって、前記第2垂線に対して前記コイル部が位置する側に向かう方向へ、前記中心線と平行に延びている、
ねじりコイルばね。
【請求項2】
前記第1アーム部は、前記第1折れ曲がり部において、前記中心線方向と前記第1方向のそれぞれから見て、前記第1中間部と前記挿入部とが鈍角をなすように折れ曲がっている、
請求項1に記載のねじりコイルばね。
【請求項3】
前記第2アーム部は、前記第2折れ曲がり部において、前記第2方向から見て、前記第2中間部と前記係合部とが直角をなすように折れ曲がっている、
請求項1に記載のねじりコイルばね。
【請求項4】
前記係合部は、前記第2方向から見て、前記コイル部の中央を通り前記中心線に垂直な第3垂線に達する長さを持つ、
請求項1に記載のねじりコイルばね。
【請求項5】
前記コイル孔に向かって前記第1接線と前記第2接線とのなす角度が鋭角である、
請求項1に記載のねじりコイルばね。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載されたねじりコイルばねの製造方法であって、
前記線材を螺旋状に巻くことにより前記コイル部を形成するコイル部形成工程と、
前記第1アーム部を形成する第1アーム部形成工程と、
前記第2アーム部を形成する第2アーム部形成工程とを有し、
前記第1アーム部形成工程は、前記第1端部から延出した前記線材を、前記第1折れ曲がり部において折り曲げる第1折り曲げ工程を含み、
前記第2アーム部形成工程は、前記第2端部から延出した前記線材を、前記第2折れ曲がり部において折り曲げる第2折り曲げ工程とを含み、
前記第1折り曲げ工程は、前記挿入部となる部分が、前記中心線方向から見て、前記第1折れ曲がり部から離れるにつれて前記第1接線から離れる方向であって、前記第1接線に対して前記コイル孔が位置する側の反対側に向かう方向へ延びるとともに、前記第1方向から見て、前記第1折れ曲がり部から離れるにつれて前記第1垂線から離れる方向であって、前記第1垂線に対して前記コイル部が位置する側に向かう方向へ延びるように、前記第1端部から延出した前記線材を前記第1折れ曲がり部において折り曲げることを含み、
前記第2折り曲げ工程は、前記係合部となる部分が、前記第2方向から見て、前記第2折れ曲がり部から離れるにつれて前記第2垂線から離れる方向であって、前記第2垂線に対して前記コイル部が位置する側に向かう方向へ、前記中心線と平行に延びるように、前記第2端部から延出した前記線材を前記第2折れ曲がり部において折り曲げることを含む、
ねじりコイルばねの製造方法。
【請求項7】
回転自在に連結された第1部材及び第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とを相対的に回転させる付勢力を発生する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載されたねじりコイルばねと
を有する装身具用留め具。
【請求項8】
前記第1部材と前記第2部材とが回転中心線の周りで相対的に回転可能であり、
前記ねじりコイルばねの前記中心線と前記回転中心線とが平行である、
請求項7に記載の装身具用留め具。
【請求項9】
前記第1部材と前記第2部材とをそれぞれ回転自在に連結する2つの連結部を有し、
前記第1部材は、対向する2つの第1側板部を含み、
前記第2部材は、対向する2つの第2側板部を含み、
一方の前記第1側板部と一方の前記第2側板部とが1つの前記連結部により連結され、
他方の前記第1側板部と他方の前記第2側板部とが他の1つの前記連結部により連結され、
前記ねじりコイルばねの少なくとも一部は、2つの前記第1側板部の間に位置するとともに、2つの前記第2側板部の間に位置する、
請求項7に記載の装身具用留め具。
【請求項10】
前記第1部材の外面に設けられ、前記第2部材に対して前記第1部材を相対的に回転させる操作に用いられる操作部を有し、
前記操作部は、前記孔の貫通方向に沿って見た前記第1部材の前記外面において、少なくとも前記孔と前記孔から突出した前記挿入部とを含んだ範囲を覆っている、
請求項7に記載の装身具用留め具。
【請求項11】
装身具用留め具の製造方法であって、
前記装身具用留め具は、
回転自在に連結された第1部材及び第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とを相対的に回転させる付勢力を発生する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載されたねじりコイルばねとを有し、
前記ねじりコイルばねを準備する工程と、
回転自在に連結された前記第1部材及び前記第2部材を準備する工程と、
前記挿入部を前記第1部材に当接させるとともに、前記係合部を前記第2部材に当接させながら、前記挿入部が前記第1部材の前記孔の中に入り、かつ、前記係合部が前記第2部材の前記段差部と係合するまで、前記第1部材と前記第2部材との間に前記ねじりコイルばねを押し込む工程と
を有する装身具用留め具の製造方法。
【請求項12】
請求項7に記載の装身具用留め具を備える装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじりコイルばねとその製造方法、装身具用留め具との製造方法及び装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
ネックレスなどの装身具において線状部材(チェーンなど)の連結に用いられる留め具(クラスプとも呼ばれる。)には、引き輪タイプ、差し込みタイプ、ねじタイプなどの様々なタイプが知られている。また、回転自在に連結された2つの部材により開状態と閉状態を実現する回転式の構造を備える留め具も知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転自在に連結された2つの部材を付勢する簡易な弾性手段として、一般的には板ばねが用いられる。しかしながら、装身具に用いられる留め具はサイズが小さいため、板ばねでは十分な付勢力を発生させることが難しい。他方、ねじりコイルばねは、同じサイズの板ばねと比較して大きな弾性力を発生させることが可能なことから、留め具の弾性手段としてねじりコイルばねを用いる場合がある。
【0005】
留め具にねじりコイルばねを用いる場合、通常は、線材をコイル状に巻いて形成されるコイル部の孔に回転軸(シャフト)が挿通される。
図10は、一般的なねじりコイルばねを留め具に用いた場合を示す図である。
図10に示す留め具は、シャフト800を介して回転自在に連結された2つの部材701,702と、ねじりコイルばね600を有する。ねじりコイルばね600は、シャフト800が挿通されたコイル部603と、コイル部603の両端から延出した2つのアーム部601,602を有する。アーム部601の先端が部材701の内面の右端を押し、アーム部602の先端が部材702の内面の左端を押している。
【0006】
図10に示すように、2つのアーム部601,602が2つの部材701,702を押す力Fは、シャフト800の回転中心を通る回転中心線Lrに垂直な方向から見て、シャフト800を左回転させるように作用する無駄な力を生じさせる。この無駄な力は、回転中心線Lrの周りにおける部材701,702の回転に寄与しない一方、部材701又は部材702とシャフト800との摺動部分における摩擦を大きくするため、付勢力を低減させたり、回転に関わる機構の耐久性を低下させたりする原因となる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転自在に連結された2つの部材に与える回転の付勢力が低減することを抑制できるねじりコイルばねとその製造方法を提供すること、そのようなねじりコイルばねを用いた装身具用留め具とその製造方法を提供すること、並びに、そのような装身具用留め具を備えた装身具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、回転自在に連結された第1部材と第2部材とを相対的に回転させる付勢力を発生するねじりコイルばねであって、線材が螺旋状に巻かれたコイル部と、コイル部の第1端部から延出した第1アーム部と、コイル部の第2端部から延出した第2アーム部とを有し、第1アーム部は、第1部材に設けられた孔に挿入される挿入部と、第1端部と挿入部とを接続する第1中間部と、挿入部と第1中間部との間で折れ曲がった第1折れ曲がり部とを含み、第2アーム部は、第2部材に設けられた段差部と係合する係合部と、第2端部と係合部とを接続する第2中間部と、第2中間部と係合部との間で折れ曲がった第2折れ曲がり部とを含み、コイル部の中央のコイル孔は、螺旋形状の中心線と平行な中心線方向から見て円形状を持ち、第1端部は、中心線に垂直な第1方向から見て、中心線の背後に位置し、第2端部は、中心線に垂直な第2方向から見て、中心線の背後に位置し、第1中間部は、中心線方向から見て、コイル孔の円形状の第1接線に沿って延びており、第1方向から見て、中心線に垂直な第1垂線に接するとともに、第1端部から離れるにつれて中心線から離れる方向へ延びており、挿入部は、中心線方向から見て、第1折れ曲がり部から離れるにつれて第1接線から離れる方向であって、第1接線に対してコイル孔が位置する側の反対側に向かう方向へ延びており、第1方向から見て、第1折れ曲がり部から離れるにつれて第1垂線から離れる方向であって、第1垂線に対してコイル部が位置する側に向かう方向へ延びており、第2中間部は、中心線方向から見て、コイル孔の円形状の第2接線に沿って延びており、第2方向から見て、中心線に垂直な第2垂線に接するとともに、第2端部から離れるにつれて中心線から離れる方向へ延びており、係合部は、第2方向から見て、第2折れ曲がり部から離れるにつれて第2垂線から離れる方向であって、第2垂線に対してコイル部が位置する側に向かう方向へ、中心線と平行に延びている、ねじりコイルばねである。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様に係るねじりコイルばねの製造方法であって、線材を螺旋状に巻くことによりコイル部を形成するコイル部形成工程と、第1アーム部を形成する第1アーム部形成工程と、第2アーム部を形成する第2アーム部形成工程とを有し、第1アーム部形成工程は、第1端部から延出した線材を、第1折れ曲がり部において折り曲げる第1折り曲げ工程を含み、第2アーム部形成工程は、第2端部から延出した線材を、第2折れ曲がり部において折り曲げる第2折り曲げ工程とを含み、第1折り曲げ工程は、挿入部となる部分が、中心線方向から見て、第1折れ曲がり部から離れるにつれて第1接線から離れる方向であって、第1接線に対してコイル孔が位置する側の反対側に向かう方向へ延びるとともに、第1方向から見て、第1折れ曲がり部から離れるにつれて第1垂線から離れる方向であって、第1垂線に対してコイル部が位置する側に向かう方向へ延びるように、第1端部から延出した線材を第1折れ曲がり部において折り曲げることを含み、第2折り曲げ工程は、係合部となる部分が、第2方向から見て、第2折れ曲がり部から離れるにつれて第2垂線から離れる方向であって、第2垂線に対してコイル部が位置する側に向かう方向へ、中心線と平行に延びるように、第2端部から延出した線材を第2折れ曲がり部において折り曲げることを含む、ねじりコイルばねの製造方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、回転自在に連結された第1部材及び第2部材と、第1部材と第2部材とを相対的に回転させる付勢力を発生する、上記第1の態様に係るねじりコイルばねとを有する装身具用留め具である。
【0011】
本発明の第4の態様は、装身具用留め具の製造方法であって、装身具用留め具は、回転自在に連結された第1部材及び第2部材と、第1部材と第2部材とを相対的に回転させる付勢力を発生する、上記第1の態様に係るねじりコイルばねとを有し、ねじりコイルばねを準備する工程と、回転自在に連結された第1部材及び第2部材を準備する工程と、挿入部を第1部材に当接させるとともに、係合部を第2部材に当接させながら、挿入部が第1部材の孔の中に入り、かつ、係合部が第2部材の段差部と係合するまで、第1部材と第2部材との間にねじりコイルばねを押し込む工程とを有する、装身具用留め具の製造方法である。
【0012】
本発明の第5の態様は、上記第3の態様の装身具用留め具を備える装身具である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転自在に連結された2つの部材に与える回転の付勢力が低減することを抑制できるねじりコイルばねとその製造方法、そのようなねじりコイルばねを用いた装身具用留め具とその製造方法、並びに、そのような装身具用留め具を備えた装身具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、本実施形態に係るねじりコイルばねの一例を示す図である。
【
図2】
図2A~
図2Cは、本実施形態に係るねじりコイルばねの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、回転自在に連結された2つの部材をねじりコイルばねにより付勢する例を示す図である。
【
図4】
図4Aは、第2の実施形態に係る留め具を含んだ装身具の一例を示す図である。
図4Bは、開状態の留め具の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7Aは留め具の内部構造を示す断面図であり、
図7Bは留め具の背面図である。
【
図8】
図8Aは、本実施形態に係るねじりコイルばねの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図8Bは、アーム部を形成する手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、本実施形態に係る留め具の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、従来のねじりコイルばねを用いた装身具用の留め具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
図1A~
図1B及び
図2A~
図2Cは、本実施形態に係るねじりコイルばねの一例を示す図である。本実施形態に係るねじりコイルばね1は、回転自在に連結された2つの部材(後述する第1部材21、第2部材22)を相対的に回転させる付勢力を発生するために使用される。ねじりコイルばね1は、
図1A及び
図1Bに示すように、線材10が螺旋状に巻かれたコイル部12と、コイル部12の一方の端部である第1端部121から延出した第1アーム部13と、コイル部12の他方の端部である第2端部122から延出した第2アーム部14とを有する。
【0016】
図1Bにおける「Dc」は、コイル部12の螺旋形状の中心線Lcに平行な方向(以下、「中心線方向Dc」と記す。)を示す。
図1A及び
図2Aにおける「D1」、「D2」、「D3」は、それぞれ中心線Lcに垂直な方向を示す(以下、「D1」、「D2」、「D3」をそれぞれ「第1方向D1」、「第2方向D2」、「第3方向D3」と記す。)。
【0017】
図1A及び
図2Aは、ねじりコイルばね1を中心線方向Dcから見た図である。
図1Bは、ねじりコイルばね1を第3方向D3から見た図である。
図2Bは、ねじりコイルばね1を第1方向D1から見た図である。
図2Cは、ねじりコイルばね1を第2方向D2から見た図である。
【0018】
(コイル部12)
コイル部12は、
図1B、
図2B、
図2Cの例において、線材10を螺旋状に3回半程度巻いて形成される。この例において、コイル部12は密着巻きにより形成されているが、線材10同士を密着させない他の巻き方で形成されてもよい。中心線方向Dcから見たコイル部12の中央の孔(以下、「コイル孔120」と記す。)は、
図1B等に示すように、ほぼ円形状である。中心線Lcは、この円形状の中心を通る。
【0019】
図1A、
図2Aにおける「Lt1」及び「Lt2」は、中心線方向Dcから見たコイル孔120の円形状の接線(以下、それぞれ「第1接線Lt1」、「第2接線Lt2」と記す。)を示す。
【0020】
(第1アーム部13)
第1アーム部13は、
図1B等に示すように、挿入部132と、第1中間部131と、第1折れ曲がり部133を有する。挿入部132は、後述する第1部材21の孔215(
図3)に挿入される。第1中間部131は、コイル部12の第1端部121と挿入部132とを接続する。第1折れ曲がり部133は、第1中間部131と挿入部132との間の折れ曲がった部分である。
【0021】
第1中間部131につながるコイル部12の第1端部121は、
図2Bに示すように、第1方向D1から見て、中心線Lcの背後に位置する。第1方向D1は、中心線Lcに対して垂直な方向であるとともに、
図2Aに示すように、第1接線Lt1に対して概ね垂直な方向である。
【0022】
第1中間部131は、
図2Aに示すように、中心線方向Dcから見て、コイル孔120の円形状の第1接線Lt1に沿って延びている。また第1中間部131は、
図2Bに示すように、第1方向D1から見て、中心線Lcに垂直な垂線Lp1(以下、「第1垂線Lp1」と記す。)に接するとともに、第1端部121から離れるにつれて中心線Lcから離れる方向(
図2Aの上方向)へ延びている。
【0023】
挿入部132は、
図2Aに示すように、中心線方向Dcから見て、第1折れ曲がり部133から離れるにつれて第1接線Lt1から離れる方向であって、第1接線Lt1に対してコイル孔120が位置する側の反対側(
図2Aにおける第1接線Lt1の上側)に向かう方向へ延びている。
図2Aの例において、中心線方向Dcから見た挿入部132は、直線L1に沿って延びている。
【0024】
また挿入部132は、
図2Bに示すように、第1方向D1から見て、第1折れ曲がり部133から離れるにつれて第1垂線Lp1から離れる方向であって、第1垂線Lp1に対してコイル部12が位置する側(
図2Bにける第1垂線Lp1の左側)に向かう方向へ延びている。
図2Bの例において、第1方向D1から見た挿入部132は、直線L2に沿って延びている。
【0025】
第1アーム部13は、
図2Aに示すように、第1折れ曲がり部133において、中心線方向Dcから見て、第1中間部131と挿入部132とが鈍角をなすように折れ曲がっている。すなわち、中心線方向Dcから見て、挿入部132の延伸方向を示す直線L1と第1接線Lt1とのなす角度θ1(
図2A)は、概ね90°より大きく180°より小さい範囲に含まれる。
【0026】
また第1アーム部13は、
図2Bに示すように、第1折れ曲がり部133において、第1方向D1から見て、第1中間部131と挿入部132とが鈍角をなすように折れ曲がっている。すなわち、第1方向D1から見て、挿入部132の延伸方向を示す直線L2と第1垂線Lp1とのなす角度θ2(
図2B)は、概ね90°より大きく180°より小さい範囲に含まれる。
【0027】
(第2アーム部14)
第2アーム部14は、
図1B等に示すように、係合部142と、第2中間部141と、第2折れ曲がり部134とを有する。係合部142は、後述する第2部材22に設けられた凹部225の段差(
図3)と係合する。第2中間部141は、コイル部12の第2端部122と係合部142とを接続する。第2折れ曲がり部134は、第2中間部141と係合部142との間の折れ曲がった部分である。
【0028】
第2中間部141につながるコイル部12の第2端部122は、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、中心線Lcの背後に位置する。第2方向D2は、中心線Lcに対して垂直な方向であるとともに、
図2Aに示すように、第2接線Lt2に対して概ね垂直な方向である。
【0029】
第2中間部141は、
図2Aに示すように、中心線方向Dcから見て、コイル孔120の円形状の第2接線Lt2に沿って延びている。また第2中間部141は、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、中心線Lcに垂直な垂線Lp2(以下、「第2垂線Lp2」と記す。)に接するとともに、第2端部122から離れるにつれて中心線Lcから離れる方向(
図2Cの下方向)へ延びている。
【0030】
係合部142は、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、第2折れ曲がり部134から離れるにつれて第2垂線Lp2から離れる方向であって、第2垂線Lp2に対してコイル部12が位置する側(
図2Cにおける第2垂線Lp2の右側)に向かう方向へ、中心線Lcと概ね平行に延びている。
【0031】
係合部142は、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、コイル部12の中央を通り中心線Lcに垂直な垂線Lp3(以下、「第3垂線Lp3」と記す。)に達する長さを持つ。
【0032】
第2アーム部14部は、
図2Cに示すように、第2折れ曲がり部134において、第2方向D2から見て、第2中間部141と係合部142とが概ね直角をなすように折れ曲がっている。
【0033】
なお
図2Aに示すように、コイル孔120に向かって第1接線Lt1と第2接線Lt2とのなす角度θcは鋭角である。
【0034】
図3は、回転自在に連結された2つの部材(第1部材21、第2部材22)を上述したねじりコイルばね1によって付勢する例を示す図である。第1部材21と第2部材22は、2つの連結部23によって回動自在に連結されており、回転中心線Lrの周りで相対的に回転することができる。
図3は、回転中心線Lrに対して垂直な方向から見た図である。
【0035】
第1部材21は、挿入部132が挿入される孔215を有し、第2部材22は、係合部142と係合する段差部が形成された凹部225を有する。ねじりコイルばね1は、挿入部132が挿入されるとともに、係合部142が凹部225の段差部と係合した状態で、第1部材21と第2部材22の間に保持される。この状態で、ねじりコイルばね1の中心線Lcと回転中心線Lrとが概ね平行である。
【0036】
第1部材21は、孔215が形成された上板部210と、上板部210の両端に設けられた2つの第1側板部212とを有する。また第2部材22は、段差部を形成する凹部225が設けられた底板部220と、底板部220の両端に設けられた2つの第2側板部222とを有する。一方の第1側板部212と一方の第2側板部222とが1つの連結部23により連結され、他方の第1側板部212と他方の第2側板部222とが他の1つの連結部23により連結される。
図3の例において、連結部23は、第2側板部222に設けられた突起部224と、第1側板部212に設けられた連結用孔214とを含む。突起部224が連結用孔214へ挿入されており、連結用孔214の中で突起部224が回転可能となっている。
【0037】
本実施形態によれば、
図2Bに示すように、第1方向D1から見て、第1折れ曲がり部133から離れるにつれて第1垂線Lp1から離れる方向であって、第1垂線Lp1に対してコイル部12が位置する側に向かう方向へ挿入部132が延びている。また、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、第2折れ曲がり部134から離れるにつれて第2垂線Lp2から離れる方向であって、第2垂線Lp2に対してコイル部12が位置する側に向かう方向へ係合部142が延びている。すなわち
図1Bに示すように、挿入部132と係合部142の位置が、
図10に示す従来のねじりコイルばね600におけるアーム部601、602に比べて、中心線Lcに垂直な方向から見てコイル部12の中央側に近づく。これにより、コイル部12の中心線Lcと回転中心線Lrとが平行になるようにねじりコイルばね1を第1部材21及び第1部材21の間に配置させた場合、挿入部132及び係合部142によって第1部材21及び第1部材21に作用する付勢力の方向が、
図10に示す従来のねじりコイルばね600に比べて、回転中心線Lrに直交する方向に近づく。ねじりコイルばね1による付勢力が、回転中心線Lrに直交する方向に近づくほど、2つの連結部23の回転中心が回転中心線Lrに対してずれるように作用する無駄な力(回転中心線Lrの周りにおける第1部材21及び第2部材22の回転に寄与しない力)が小さくなり、連結部23の摺動部分(突起部224と連結用孔214との摺動部分)における摩擦が小さくなる。従って、第1部材21及び第2部材22に与える回転の付勢力が低減することを効果的に抑制できる。また、連結部23にかかる無駄な力が小さくなるため、耐久性の低下を抑制できる。
【0038】
本実施形態によれば、
図3に示すように、第1アーム部13の挿入部132が第1部材21の孔215に挿入されるとともに、第2アーム部14の係合部142が第2部材22の凹部225に形成された段差部と係合する。従って、
図10に示すように回転軸のシャフトがコイル部12に挿通されていなくても、ねじりコイルばね1を第1部材21及び第2部材22から外れ難くすることができる。また、第2アーム部14の係合部142と第2部材22の段差部との係合によって第2アーム部14が第2部材22に保持されることから、第2アーム部14を第2部材22に取り付け易くなる。これにより、第1部材21及び第2部材22に対してねじりコイルばね1の各アーム部を容易に取り付けることができる。
【0039】
本実施形態によれば、
図2Aに示すように、中心線方向Dcから見て、第1折れ曲がり部133から離れるにつれて第1接線Lt1から離れる方向であって、第1接線Lt1に対してコイル孔120が位置する側の反対側に向かう方向へ挿入部132が延びている。これにより、ねじりコイルばね1を第1部材21及び第1部材21の間に配置させたとき、挿入部132を第1部材21の孔215へ挿入させ易くすることができる。
また、第1アーム部13の第1折れ曲がり部133において、中心線方向Dcと第1方向D1のそれぞれから見て、第1中間部131と挿入部132とが鈍角をなすように折れ曲がっている(
図2A、
図2B)。従って、これらの角度が鋭角の場合に比べて、挿入部132を第1部材21の孔215へ挿入させ易くすることができる。
【0040】
本実施形態によれば、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、係合部142が中心線Lcに対して平行に延びている。そのため、回転中心線Lrに対して凹部225の段差部が平行に延びた第2部材22と第1部材21との間に、中心線Lcと回転中心線Lrとが平行になるようにねじりコイルばね1を配置させた場合、中心線Lcに対して平行に延びた係合部142と、回転中心線Lrに対して平行に延びた凹部225の段差部とが係合することになる。これにより、回転中心線Lrの周りで第1部材21と第2部材22とが回転するとき、凹部225の段差部と係合部142とが平行に保たれるため、これらの係合が外れ難くなる。
【0041】
本実施形態によれば、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、第2中間部141と係合部142とが第2折れ曲がり部134において直角をなすように折れ曲がっている。これにより、
図10に示すような従来のねじりコイルばねに比べて、中心線方向Dcにおけるねじりコイルばね1の幅を小さくすることができる。
【0042】
本実施形態によれば、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、係合部142が第3垂線Lp3(コイル部12の中央を通り中心線Lcに垂直な垂線)に達する長さを持つ。これにより、係合部142によって第2部材22を押す力を、第3垂線Lp3の位置(コイル部12の中央付近)まで作用させることができるため、第1部材21及び第1部材21に作用する付勢力の方向を、回転中心線Lrに直交する方向へ近づけることができる。
【0043】
本実施形態によれば、
図2Aに示すように、コイル孔120に向かって第1接線Lt1と第2接線Lt2とのなす角度が鋭角になっている。これにより、第1部材21と第2部材22との間にねじりコイルばね1を挿入する際、第1アーム部13及び第1アーム部13が邪魔になり難くなるため、第1部材21及び第2部材22に対してねじりコイルばね1の各アーム部を取り付ける組立作業が容易になる。
【0044】
本実施形態によれば、
図3に示すように、一方の第1側板部212と一方の第2側板部222とが1つの連結部23により連結され、他方の第1側板部212と他方の第2側板部222とが他の1つの連結部23により連結される。また、ねじりコイルばね1の少なくとも一部が、第1部材21の2つの第1側板部212の間に位置するとともに、第2部材22の2つの第2側板部222の間に位置する。これにより、シャフト800をコイル部603へ挿通させる
図10に示すような構造に比べて、第1部材21及び第2部材22とねじりコイルばね1とを簡単に組み合わせることができる。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、上述したねじりコイルばね1(
図1A~
図1B、
図2A~
図2C)を付勢手段として用いた装身具用の留め具に関するものである。
【0046】
図4Aは、本実施形態に係るねじりコイルばね1を用いた留め具3を含む装身具5の一例を示す図である。
図4Aに示す装身具5は、例えばネックレスやブレスレットであり、分離した線状部材4A、4Bと、これらを環状につなげる留め具3とを備える。
図4Bは、開状態の留め具3を示す。
【0047】
留め具3は、
図4A及び
図4Bに示すように、回転自在に連結された第1部材31及び第2部材32と、第1部材31及び第2部材32を連結する2つの連結部33と、第1部材31及び第2部材32を回転させる操作に用いられる操作部313とを有する。
【0048】
図5Aは第1部材31の側面図を示し、
図5Bは第1部材31の平面図を示す。
図5A及び
図5Bに示すように、第1部材31は、側面から見て鉤状に曲がった正面側端部311と、正面側端部311の上面側から背面側に延びて広がった上板部310と、正面側端部311の側面側から背面側に延びて広がった2つの第1側板部312を有する。2つの第1側板部312は、上板部310の左右の側端から下方へ延びている。上板部310の背面側の端には、ねじりコイルばね1の挿入部132が挿入される孔315が形成される。
【0049】
操作部313は、上板部310の外面の背面側に設けられている。
図5Bに示すように、孔315の貫通方向に沿ってみた上板部310の外面において、操作部313は、孔315を含んだ範囲を覆う。また操作部313は、後述する
図7A及び
図7Bに示すように、孔315から突出した挿入部132を含む範囲も覆うことができる。
図5Aの例において、操作部313は、上板部310の背面側の端から延出し、正面側へ反り返った板状の部材により形成される。操作部313は、側面から見てリング状に曲がり、上板部310に形成された孔315の上方を覆っている。
【0050】
第1部材31の2つの第1側板部312には、それぞれ連結用孔314が形成される。連結用孔314には、第2部材32の後述する突起部324が挿入される。
【0051】
図5Cは第2部材32の側面図を示し、
図5Dは第2部材32の平面図を示す。
図5C及び
図5Dに示すように、第2部材32は、側面から見て鉤状に曲がった正面側端部321と、正面側端部321の底面側から背面側に延びて広がった底板部320と、正面側端部321の側面側から背面側に延びて広がった2つの第2側板部322と、底板部320の背面側の端に設けられた取付部323とを有する。2つの第2側板部322は、底板部320の左右の側端から上方へ延びている。取付部323は、線状部材4Bの末端のリング部材42を取り付けるための取付用孔326を有する。
【0052】
第2部材32の2つの第2側板部322は、それぞれ外方に突き出た突起部324を持つ。2つの突起部324は、それぞれ第1側板部312の連結用孔314に挿入される。1つの連結用孔314とこれに挿入される1つの突起部324とによって、1つの連結部33が構成される。第1部材31及び第2部材32は、2つの連結部33(連結用孔314、突起部324)により、回転中心線Lr(
図6B)の周りで回転自在に連結される。
【0053】
図5Dに示すように、第2部材32の底板部320の内面(第1部材31に対向する側の面)には、凹部325が形成される。凹部325は、2つの連結部33による回転中心線Lr(
図6B)に対して平行に伸びた段差部325a及び325bを持つ。この段差部325a及び325bが、ねじりコイルばね1の係合部142と係合する。
【0054】
図6Aは留め具3の側面図を示し、
図6Bは留め具3の平面図を示す。
図7Aは留め具3の内部構造を示す断面図を示し、
図7Bは留め具3の背面図を示す。留め具3を閉じた状態にすると、第1部材31の正面側端部311と第2部材32の正面側端部321とが当接し、
図6Aに示すように、第1部材31と第2部材32により周囲を囲われた閉空間30が形成される。留め具3を開いた状態にすると、
図4Bに示すように、正面側端部311と正面側端部321との間に隙間が生じ、この隙間からリング部材41を閉空間30へ出入りさせることが可能になる。
図4Aに示すように留め具3を線状部材4Aのリング部材41につなぐ場合は、留め具3を開いた状態にし、鉤状に曲がった正面側端部321にリング部材41を引っ掛けて、留め具3を閉じた状態にする。これにより、リング部材41が閉空間30に挿通された状態になり、閉空間から脱出できなくなる。留め具3をリング部材41から外す場合は、留め具3を開いた状態にし、正面側端部311と正面側端部321との隙間からリング部材41を取り出して、留め具3を閉じた状態にする。
【0055】
第1部材31と第2部材32は、ねじりコイルばね1の弾性力により、閉じた状態となる方向へ相対的に回転するように付勢されている。第1部材31及び第2部材32を閉じた状態から開いた状態にする場合は、第1部材31に設けられた操作部313に指などを当てて力を加え、第1部材31及び第2部材32をねじりコイルばね1の付勢力に抗して相対的に回転させる。操作部313に加えた力を解除すると、第1部材31と第2部材32は自動的に閉じた状態へ戻る。
【0056】
図7A及び
図7Bに示すように、ねじりコイルばね1は、挿入部132を第1部材31の孔315に挿入させるとともに、係合部142を第2部材32の凹部325の段差部325a、325bに係合させた状態で、留め具3の内部の空間(第1部材31と第2部材32により囲われた空間)に配置される。ねじりコイルばね1の少なくとも一部(図の例ではコイル部12を含む部分)は、2つの第1側板部312の間に位置するとともに、2つの第2側板部322の間に位置する。ねじりコイルばね1のコイル部12の中心線Lcは、回転中心線Lr(
図6B)に対して概ね平行になっている。
【0057】
本実施形態によれば、第1の実施形態(
図3)と同様に、コイル部12の中心線Lcと回転中心線Lrとが平行になるようにねじりコイルばね1が第1部材31及び第2部材32の内部に配置されており(
図7B)、挿入部132及び係合部142によって第1部材31及び第2部材32に作用する付勢力の方向が、
図10に示す従来のねじりコイルばね600に比べて、回転中心線Lrに直交する方向に近づく。従って、第1部材31及び第2部材32に与える回転の付勢力が低減することを効果的に抑制できる。また、連結部33にかかる無駄な力が小さくなるため、耐久性の低下を抑制できる。
【0058】
本実施形態によれば、孔315の貫通方向に沿って見た第1部材31の外面において、孔315を含む範囲及び孔315から突出した挿入部132を含む範囲が、操作部313によって覆われている(
図7A、
図7B)。これにより、操作部313は、指などで第1部材31及び第2部材32を回転させ易くする本来の機能の他に、孔315から突き出た挿入部132へ指や他の物体が接触することを防止する機能を果たすことができる。従って、挿入部132への接触を防止する別の部材を設ける場合に比べて、留め具3の構成を簡易化することができる。
【0059】
本実施形態によれば、
図7A及び
図7Bに示すように、第1アーム部13の挿入部132が第1部材31の孔315に挿入されるとともに、第2アーム部14の係合部142が第2部材32の凹部325に形成された段差部325a、325bと係合する。従って、
図10に示すように回転軸のシャフトがコイル部12に挿通されていなくても、ねじりコイルばね1を第1部材31及び第2部材32から外れ難くすることができる。また、第2アーム部14の係合部142と第2部材32の段差部325a、325bとの係合によって第2アーム部14が第2部材32に保持されることから、第1部材31及び第2部材32に対してねじりコイルばね1の各アーム部を容易に取り付けることができる。
【0060】
本実施形態によれば、
図5D及び
図6Bに示すように、第2部材32の段差部325a、325bが回転中心線Lrに対して平行に延びており、
図7A及び
図7Bに示すように、中心線Lcと回転中心線Lrとが平行になるように、第1部材31と第2部材32の間にねじりコイルばね1が配置される。また
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、係合部142が中心線Lcに対して平行に延びている。従って、回転中心線Lrの周りで第1部材21と第2部材22とが回転する場合において、第2部材32の段差部325a、325bと係合部142とが平行に保たれるため、これらの係合が外れ難くなる。
【0061】
本実施形態によれば、
図6B及び
図7Bに示すように、一方の第1側板部312と一方の第2側板部322とが1つの連結部33により連結され、他方の第1側板部312と他方の第2側板部322とが他の1つの連結部33により連結される。また、ねじりコイルばね1の少なくとも一部が、第1部材21の2つの第1側板部212の間に位置するとともに、第2部材22の2つの第2側板部222の間に位置する。これにより、シャフト800をコイル部603へ挿通させる
図10に示すような構造に比べて、第1部材31及び第2部材32とねじりコイルばね1とを簡単に組み合わせることができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る上述したねじりコイルばね1の製造方法について説明する。
【0063】
図8Aは、ねじりコイルばね1の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図8Aに示す製造方法では、まず、線材10を螺旋状に巻くことによってコイル部12が形成される(ST100)。次に、コイル部12の第1端部121及び第2端部122から延出した第1アーム部13及び第2アーム部14がそれぞれ形成される(ST105)。
【0064】
図8Bは、第1アーム部13及び第2アーム部14を形成する工程(ST105:
図8A)の一例を説明するためのフローチャートである。
【0065】
ST200:
第1アーム部13を形成する工程は、コイル部12の第1端部121から延出した線材10を、第1折れ曲がり部133において折り曲げる工程(第1折り曲げ工程)を含む。
この第1折り曲げ工程では、挿入部132となる部分が、
図2Aに示すように、中心線方向Dcから見て、第1折れ曲がり部133から離れるにつれて第1接線Lt1から離れる方向であって、第1接線Lt1に対してコイル孔120が位置する側の反対側に向かう方向へ延びるように、第1端部121から延出した線材10が第1折れ曲がり部133において折り曲げられる。また第1折り曲げ工程では、挿入部132となる部分が、
図2Bに示すように、第1方向D1から見て、第1折れ曲がり部133から離れるにつれて第1垂線Lp1から離れる方向であって、第1垂線Lp1に対してコイル部12が位置する側に向かう方向へ延びるように、第1端部121から延出した線材10が第1折れ曲がり部133において折り曲げられる。
【0066】
ST205:
第2アーム部14を形成する工程は、コイル部12の第2端部122から延出した線材10を、第2折れ曲がり部134において折り曲げる工程(第2折り曲げ工程)を含む。
この第2折り曲げ工程では、係合部142となる部分が、
図2Cに示すように、第2方向D2から見て、第2折れ曲がり部134から離れるにつれて第2垂線Lp2から離れる方向であって、第2垂線Lp2に対してコイル部12が位置する側に向かう方向へ、中心線Lcと平行に延びるように、第2端部122から延出した線材10が第2折れ曲がり部134において折り曲げられる。
【0067】
なお、ステップST200の第1折り曲げ工程とステップST205の第2折り曲げ工程の順番は入れ替えてもよいし、これらの工程を並行して行ってもよい。また、上述したねじりコイルばね1の製造方法の各工程は、人手で行ってもよいし、少なくとも一部の工程は、工作機械を用いて行ってもよい。
【0068】
次に、本実施形態に係る上述したねじりコイルばね1を用いた留め具3の製造方法について説明する。
【0069】
この留め具3の製造方法では、まず、上述したねじりコイルばね1が準備される。ねじりコイルばね1は、例えば、
図8A、
図8Bに示す方法により作成することができる。
【0070】
またこの製造方法では、回転自在に連結された第1部材31及び第2部材32が準備される。例えばプレス加工などによって第1部材31(
図5A、
図5B)と第2部材32(
図5C、
図5D)が作成される。第1部材31と第2部材32は、
図9Aに示すように、第2部材32の2つの突起部324を第1部材31の2つの連結用孔314へそれぞれ挿入させることにより、回転自在に連結された状態に組み立てられる。
【0071】
次に、回転自在に連結された第1部材31及び第2部材32に対して、ねじりコイルばね1が取り付けられる。すなわち、挿入部132を第1部材31に当接させるとともに、係合部142を第2部材32に当接させながら、挿入部132が第1部材31の孔315の中に入り、かつ、係合部142が第2部材32の段差部325a、325bと係合するまで、第1部材31と第2部材32との間にねじりコイルばね1が押し込まれる。例えば
図9Bに示すように、連結された第1部材31及び第2部材32の背面側に形成される開口部から、第1部材31及び第2部材32の内部に向かって、ねじりコイルばね1が押し込まれる。ねじりコイルばね1の弾性力により、挿入部132を第1部材31の孔315へ挿入する強い力、及び、係合部142を第2部材32の段差部325a、325bに係合させる強い力が生じるため、ねじりコイルばね1は第1部材31及び第2部材32に対して強固に取り付けられた状態になり、容易に外れなくなる。
【0072】
上述した実施形態は一例であり、本実施形態は更に種々の変形例を含んでいる。
【0073】
例えば、本実施形態のねじりコイルばねにおいて、コイル部の線材の巻き数、線材の太さ、線材の断面形状、コイル部の外形と内径の比率、各方向から見たアーム部の折れ曲がり位置、各方向から見たアーム部の各直線部分の長さ、各方向から見たアーム部の各直線部分の折れ曲がり角度、2つのアーム部において互いの直線部分同士がなす角度などは、
図1A~
図1B、
図2A~
図2Cなどで示した例に限定されない。
【0074】
図6A~
図6B及び
図7A~
図7Bに示す装身具用の留め具3は組み立て済の完成品であるが、本実施形態はこれらの例に限定されない。すなわち、本実施形態には、装身具用の留め具を組み立てるための組み立てセットも含まれる。
図6A~
図6B及び
図7A~
図7Bに示す装身具用の留め具3の組み立てセットは、第1部材31及び第2部材32と、付勢部材としてのねじりコイルばね1とを有する。
【0075】
また、本実施形態に係るねじりコイルばねは、装身具用の留め具に限らず、さまざまな器具等に適用可能であり、特に小型化が求められる器具等に有用である。
【符号の説明】
【0076】
1…ねじりコイルばね、10…線材、12…コイル部、120…コイル孔、121…第1端部、122…第2端部、13…第1アーム部、131…第1中間部、132…挿入部、133…第1折れ曲がり部、14…第2アーム部、141…第2中間部、142…係合部、143…第2折れ曲がり部、21…第1部材、210…上板部、212…第1側板部、214…連結用孔、215…孔、22…第2部材、220…底板部、222…第2側板部、224…突起部、225…凹部、23…連結部、3…留め具、31…第1部材、310…上板部、311…正面側端部、312…第1側板部、313…操作部、314…連結用孔、315…孔、32…第2部材、320…底板部、321…正面側端部、322…第2側板部、323…取付部、324…突起部、325…凹部、325a,325b…段差部、33…連結部、4A…線状部材、4B…線状部材、41,41…リング部材、5…装身具、Dc…中心線方向、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、Lc…中心線、Lt1…第1接線、Lt2…第2接線、Lp1…第1垂線、Lp2…第2垂線、Lp3…第3垂線、Lr…回転中心線
【要約】
【課題】回転自在に連結された2つの部材に与える回転の付勢力が低減することを抑制できるねじりコイルばねを提供する。
【解決手段】ねじりコイルばね1は、コイル部12と、コイル部12の第1端部121及び第2端部122からそれぞれ延出した第1アーム部13及び第2アーム部14を有する。第1アーム部13は、第1部材31に設けられた孔315に挿入される挿入部132と、第1中間部131と、第1折れ曲がり部133とを含み、第2アーム部14は、第2部材32に設けられた凹部325の段差部と係合する係合部142と、第2中間部141と、第2折れ曲がり部134とを含む。コイル部12の中心線Lcと垂直な方向から見て、挿入部132はコイル部12が位置する側に折れ曲がっており、係合部142はコイル部12が位置する側に折れ曲がって中心線Lcと平行に延びている。
【選択図】
図7