(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
E03D9/08 F
(21)【出願番号】P 2019074091
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018106338
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】矢岡 寿成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】田代 啓介
(72)【発明者】
【氏名】松本 勘
(72)【発明者】
【氏名】神田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】諸富 洋
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-084335(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0098644(KR,A)
【文献】特開2008-038475(JP,A)
【文献】特開2006-274641(JP,A)
【文献】国際公開第2007/114298(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
A47K 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側に向かって下降傾斜しており、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する吐水孔を有する局部洗浄ノズルと、
前記局部洗浄ノズルを進出及び後退させる駆動装置と、
前記局部洗浄ノズルを後退させた状態において、前記局部洗浄ノズルの全体を収納可能なノズル収納部を有するケーシングと、
除菌作用を有する光である除菌光を照射する照光部と、
を備え、
前記照光部は、少なくとも、前記局部洗浄ノズルの前面と、前記ノズル収納部の底面部における前記前面の下方に位置する部分と、に対して、前記除菌光を照射することを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記照光部は、前記前面と、前記ノズル収納部における前記前面よりも前方側に位置する部分と、に対する前記除菌光の平均照度が、前記局部洗浄ノズルの外周面に対する前記除菌光の平均照度よりも大きくなるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記照光部は、前記前面と、前記ノズル収納部における前記前面よりも前方側に位置する部分と、に対する前記除菌光の照射範囲が、前記局部洗浄ノズルの外周面に対する前記除菌光の照射範囲よりも広くなるよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズル収納部の前端に設けられた開口に対して開閉可能に設けられたノズル蓋であって、前記局部洗浄ノズルが進出した状態では前記ノズル収納部内を開き、前記局部洗浄ノズルの全体が前記
ノズル収納部内に収納された状態では前記ノズル収納部内を閉じるよう設けられた前記ノズル蓋をさらに備え、
前記ノズル蓋における前記ノズル収納部側に位置する裏面の少なくとも一部は、反射材で形成されており、
前記照光部は、前記ノズル蓋を閉じた状態において、前記ノズル蓋の前記裏面に対して前記除菌光の少なくとも一部を直接照射することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記照光部は、前記ノズル蓋の裏面に対して直接照射される前記除菌光の照射範囲が、前記ノズル蓋の裏面以外の部分に対して直接照射される前記除菌光の照射範囲よりも広くなるよう構成されていることを特徴とする請求項4記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記除菌光には、前記ノズル蓋によって反射された反射光と、前記ノズル蓋によって反射されない直接光とが含まれており、
前記照光部は、前記ノズル収納部の前記底面部の前端部分に対して、前記直接光が照射される位置に配置されることを特徴とする請求項4または5に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記照光部は、前記底面部の前記前端部分に対して、前記直接光と前記反射光が照射されるよう配置されることを特徴とする請求項6記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記ノズル蓋の裏面は、反射光が拡散するよう曲面状に形成されていることを特徴とする請求項4~7のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
前記局部洗浄ノズルの前端部近傍には、前記局部洗浄ノズルの外面に洗浄水を吐出するノズル洗浄孔を有するノズル洗浄部が設けられており、
前記ノズル洗浄部は、前記除菌光を透過させる透過材料で形成されていることを特徴とする請求項4~8のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項10】
前記ノズル洗浄部は、透過時に前記除菌光が拡散するよう構成されており、
前記ノズル洗浄部の少なくとも一部は、前記局部洗浄ノズルの全体が前記
ノズル収納部内に収納された状態において、前記局部洗浄ノズルの前記前面よりも前方側に配置されることを特徴とする請求項9記載の衛生洗浄装置。
【請求項11】
前記照光部を作動させた状態において、前記ノズル洗浄部を動かすことを特徴とする請求項10記載の衛生洗浄装置。
【請求項12】
前記照光部を作動させた状態において、前記ノズル蓋を開くことなく、前記ノズル洗浄部を動かすことを特徴とする請求項11記載の衛生洗浄装置。
【請求項13】
前記照光部の少なくとも一部は、前記局部洗浄ノズルの前記前面より前方側に配置されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項14】
前記照光部は、前記局部洗浄ノズルの前記前面に加えて、少なくとも、前記ノズル収納部の前記底面部における前端部分に対して、前記除菌光を照射することを特徴とする請求項1~13のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、局部洗浄ノズルを備えた衛生洗浄装置が開示されている。この衛生洗浄装置では、局部洗浄ノズルに付着した汚れを除去するために、局部洗浄ノズルに対して、洗浄水を噴射すると共に除菌作用を有するUV光を照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術によれば、局部洗浄ノズルの汚れを抑制することが可能となる。また、特許文献1では、UV光を局部洗浄ノズルの上方から照射し、局部洗浄ノズルだけでなく、その周辺部にも照射する点が開示されている。しかし、局部洗浄ノズルは傾斜配置されているため、局部洗浄ノズルの上方からUV光を照射しても、局部洗浄ノズルの上部が陰となり、局部洗浄ノズルの前面や局部洗浄ノズルの下方に位置するノズル収納部にUV光が照射されない。このため、特許文献1の技術では、ノズル収納部の汚れを十分に抑制できない。
【0005】
ノズル収納部の汚れには、便や尿が付着することによる汚れと、ノズル収納部に局部洗浄やノズルのセルフクリーニングなどにより付着した水に、トイレ空間中に浮遊する菌やカビが付着し、増殖することにより発生した可視汚れが存在する。このノズル収納部は、衛生洗浄装置を掃除する際などに使用者がノズル蓋を開けた場合や、ノズル清掃の際にノズルを進出させた場合にノズル蓋が開き目視可能となる。ノズル収納部に菌やカビが付着していることを使用者が認識すると、局部洗浄ノズル自体がきれいであったとしても、その局部洗浄ノズルの清潔性について使用者が不安を感じる可能性がある。この結果、清潔意識の高い使用者においては、局部洗浄ノズルを使用しなくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑み、ノズル蓋が開いた際に使用者が視認しうる領域の汚れを抑制できる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、前方側に向かって下降傾斜しており、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する吐水孔を有する局部洗浄ノズルと、前記局部洗浄ノズルを進出及び後退させる駆動装置と、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態において、前記局部洗浄ノズルの全体を収納可能なノズル収納部を有するケーシングと、除菌作用を有する光である除菌光を照射する照光部と、を備え、前記照光部は、少なくとも、前記局部洗浄ノズルの前面と、前記ノズル収納部の底面部における前記前面の下方に位置する部分と、に対して、前記除菌光を照射することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0008】
この衛生洗浄装置によれば、照光部により、局部洗浄ノズルの前面と、ノズル収納部の底面部における当該前面の下方に位置する部分と、に対して、除菌光が照射される。これらの領域は、使用者が目視可能な視認可能領域であり、除菌光の照射により、局部洗浄ノズル及びノズル収納部内における視認可能領域での汚れの付着を抑制できる。これにより、局部洗浄ノズルが清潔であり、且つそれが収納されるノズル収納部も清潔であると、使用者に認識させることができる。このため、清潔意識の高い使用者においても、局部洗浄ノズルを安心して使用することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記照光部は、前記前面と、前記ノズル収納部における前記前面よりも前方側に位置する部分と、に対する前記除菌光の平均照度が、前記局部洗浄ノズルの外周面に対する前記除菌光の平均照度よりも大きくなるよう構成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0010】
この衛生洗浄装置によれば、局部洗浄ノズルおよびノズル収納部の視認可能領域に重点的に除菌光が照射される。このため、清潔性が高く要求される視認可能領域に汚れがより付着し難くなる。また、衛生洗浄装置については、近年デザイン性を向上させるために小型化が望まれている。局部洗浄ノズルの外周面に対する平均照度をノズル収納部の視認可能領域よりも小さくすることで、不要な除菌光の照射が抑制され、照光部に印加する電力を小さくできる。電力が小さくなると、照光部の発熱が小さくなる。これにより、照光部の熱を放熱させるヒートシンクなどを小さくでき、照光部を小型化できる。この結果、衛生洗浄装置を小型化することができる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記前面と、前記ノズル収納部における前記前面よりも前方側に位置する部分と、に対する前記除菌光の照射範囲が、前記局部洗浄ノズルの外周面に対する前記除菌光の照射範囲よりも広くなるよう構成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0012】
この衛生洗浄装置によれば、ノズル収納部の視認可能領域に重点的に除菌光が照射される。このため、清潔性が高く要求される視認可能領域に汚れがより付着し難くなる。また、衛生洗浄装置については、近年デザイン性を向上させるために小型化が望まれている。局部洗浄ノズルの外周面に対する平均照度をノズル収納部の視認可能領域よりも小さくすることで、不要な除菌光の照射が抑制され、照光部に印加する電力を小さくできる。電力が小さくなると、照光部の発熱が小さくなる。これにより、照光部の熱を放熱させるヒートシンクなどを小さくができ、照光部を小型化できる。この結果、衛生洗浄装置を小型化することができる。
【0013】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記ノズル収納部の前端に設けられた開口に対して開閉可能に設けられたノズル蓋であって、前記局部洗浄ノズルが進出した状態では前記ノズル収納部内を開き、前記局部洗浄ノズルの全体が前記収納部内に収納された状態では前記ノズル収納部内を閉じるよう設けられた前記ノズル蓋をさらに備え、前記ノズル蓋における前記ノズル収納部側に位置する裏面の少なくとも一部は、反射材で形成されており、前記照光部は、前記ノズル蓋を閉じた状態において、前記ノズル蓋の前記裏面に対して前記除菌光の少なくとも一部を直接照射することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0014】
この衛生洗浄装置によれば、ノズル蓋の裏面に除菌光が直接照射されるため、ノズル蓋の裏面における汚れの付着を抑制できる。また、ノズル蓋の裏面は、局部洗浄ノズル及びノズル収納部の視認可能領域の広範囲に面する。この裏面を反射材で形成することで、裏面で反射した除菌光が、視認可能領域の広範囲に照射される。これにより、照光部を小型化しても視認可能領域の広範囲に除菌光を照射できる。
【0015】
第5の発明は、第4の発明において、前記ノズル蓋の裏面に対して直接照射される前記除菌光の照射範囲が、前記ノズル蓋の裏面以外の部分に対して直接照射される前記除菌光の照射範囲よりも広くなるよう構成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0016】
この衛生洗浄装置によれば、ノズル蓋の裏面に直接照射される除菌光の照射範囲を大きくできる。これにより、ノズル蓋の裏面で反射した除菌光を、視認可能領域のより広範囲に照射できる。
【0017】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記除菌光には、前記ノズル蓋によって反射された反射光と、前記ノズル蓋によって反射されない直接光とが含まれており、前記照光部は、前記ノズル収納部の前記底面部の前端部分に対して、前記直接光が照射される位置に配置されることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0018】
本発明者らは、ノズル収納部内の残水がノズル収納部の底面部における前端部分に発生しやすいこと、その前端部分が最も汚れやすいこと、を発見した。この衛生洗浄装置によれば、視認可能領域において最も汚れが発生しやすい前端部分に、除菌力の強い直接光を照射でき、前端部分に菌やカビが発生することを抑制できる。
【0019】
第7の発明は、第6の発明において、前記照光部は、前記底面部の前記前端部分に対して、前記直接光と前記反射光が照射されるよう配置されることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0020】
この衛生洗浄装置によれば、最も汚れが発生しやすい底面部の前端部分に、直接光と反射光の両方が照射される。このため、視認可能領域の残水が発生しやすい部位に対しても菌やカビが発生することをさらに抑制できる。
【0021】
第8の発明は、第4~第7のいずれか1つの発明において、前記ノズル蓋の裏面は、反射光が拡散するよう曲面状に形成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0022】
この衛生洗浄装置によれば、ノズル蓋の裏面が平面状である場合に比べて、裏面で反射した除菌光をより拡散させ、視認可能領域のより広範囲に除菌光を照射できる。
【0023】
第9の発明は、第4~第8のいずれか1つの発明において、前記局部洗浄ノズルの前端部には、前記局部洗浄ノズルの外面に洗浄水を吐出するノズル洗浄孔を有するノズル洗浄部が設けられており、前記ノズル洗浄部は、前記除菌光を透過させる透過材料で形成されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0024】
この衛生洗浄装置によれば、ノズル洗浄部を透過した除菌光Lが、局部洗浄ノズルとノズル洗浄部との間の隙間や、照光部に対して陰に位置する視認可能領域に照射される。これにより、視認可能領域のより広範囲に除菌光を照射できる。
【0025】
第10の発明は、第9の発明において、前記ノズル洗浄部は、透過時に前記除菌光が拡散するよう構成されており、前記ノズル洗浄部の少なくとも一部は、前記局部洗浄ノズルの全体が前記収納部内に収納された状態において、前記局部洗浄ノズルの前記前面よりも前方側に配置されることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0026】
この衛生洗浄装置によれば、光の拡散作用を有するノズル洗浄部を局部洗浄ノズルの前面よりも前方に配置したことで、ノズル洗浄部の光の拡散作用によって、視認可能領域のより広範囲に除菌光を届けることができる。
【0027】
第11の発明は、第10の発明において、前記照光部を作動させた状態において、前記ノズル洗浄部を動かすことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0028】
この衛生洗浄装置によれば、照光部を作動させた状態において、ノズル洗浄部を動かすことで、ノズル洗浄部による光の拡散方向を変化させることできる。これにより、視認可能領域のより広範囲に除菌光を照射できる。
【0029】
第12の発明は、第11の発明において、前記照光部を作動させた状態において、前記ノズル蓋を開くことなく、前記ノズル洗浄部を動かすことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0030】
この衛生洗浄装置によれば、ノズル蓋が開かないようにノズル洗浄部を動かす。照光部の作動中にノズル蓋を開けないことで、除菌光がケーシングの外に漏れることを抑制できる。これにより、使用者の安全性を高めつつ、視認可能領域のより広範囲に除菌光を照射できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の態様によれば、ノズル蓋を開けた際に使用者が視認しうる領域の汚れを抑制できる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態に係る衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【
図4】実施形態に係る衛生洗浄装置の内部構造を表す平面図である。
【
図5】実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル収納部を表す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【
図7】実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【
図8】実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す正面図である。
【
図9】実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺の一例を表す断面図である。
【
図10】実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺の別の一例を表す断面図である。
【
図11】実施形態に係る衛生洗浄装置の照光部の変形例を表す平面図である。
【
図12】実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル洗浄部の変形例を表す断面図である。
【
図13】実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル洗浄部の変形例を表す斜視図である。
【
図14】実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル洗浄部の変形例を表す正面図である。
【
図15】実施形態に係る衛生洗浄装置の除菌光の波長分布の例を表すグラフである。
【
図16】実施形態に係る衛生洗浄装置の動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【
図17】他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【
図18】他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【
図19】他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【
図20】他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す平面図である。
【
図21】他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【
図22】他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視図である。
図1に表したように、トイレ装置は、腰掛大便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設置された衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0034】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者の便座200への着座を検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部500(
図2参照)を操作すると、局部洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を便器800のボウル801内に進出させたり、ボウル801内から後退させたりすることができる。なお、
図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
【0035】
ノズル473は、人体局部に向けて水(洗浄水)を吐出し、人体局部の洗浄を行う。ノズル473の先端部には、ビデ洗浄吐水口474a及びおしり洗浄吐水口474bが設けられている。ノズル473は、その先端に設けられたビデ洗浄吐水口474aから水を噴射して、便座200に座った女性の女性局部を洗浄することができる。あるいは、ノズル473は、その先端に設けられたおしり洗浄吐水口474bから水を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」を洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0036】
「おしり」を洗浄するモードのなかには、例えば、「おしり洗浄」と、「おしり洗浄」よりもソフトな水流で優しく洗浄する「やわらか洗浄」と、が含まれる。ノズル473は、例えば、「ビデ洗浄」と、「おしり洗浄」と、「やわらか洗浄」と、を実行することができる。
【0037】
なお、
図1に表したノズル473では、ビデ洗浄吐水口474aがおしり洗浄吐水口474bよりもノズル473の先端側に設けられているが、ビデ洗浄吐水口474a及びおしり洗浄吐水口474bの設置位置は、これだけに限定されるわけではない。ビデ洗浄吐水口474aは、おしり洗浄吐水口474bよりもノズル473の後端側に設けられていてもよい。また、
図1に表したノズル473では、2つの吐水口が設けられているが、3つ以上の吐水口が設けられていてもよい。
【0038】
図2は、実施形態に係る衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
図2では、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
図2に表したように、衛生洗浄装置100は、導水部20を有する。導水部20は、水道や貯水タンクなどの給水源10からノズル473に至る管路20aを有する。導水部20は、管路20aにより、給水源10から供給された水をノズル473に導く。管路20aは、例えば、以下に説明する電磁弁431、熱交換器ユニット440、流路切替部472などの各部と、これらの各部を接続する複数の配管と、によって形成される。
【0039】
導水部20の上流側には、電磁弁431が設けられている。電磁弁431は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて水の供給を制御する。換言すれば、電磁弁431は、管路20aを開閉する。電磁弁431を開状態にすることにより、給水源10から供給された水が、管路20aに流れる。
【0040】
電磁弁431の下流には、調圧弁432が設けられている。調圧弁432は、給水圧が高い場合に、管路20a内の圧力を所定の圧力範囲に調整する。調圧弁432の下流には、逆止弁433が設けられている。逆止弁433は、管路20a内の圧力が低下した場合などに、逆止弁433よりも上流側への水の逆流を抑制する。
【0041】
逆止弁433の下流には、熱交換器ユニット440(加熱部)が設けられている。熱交換器ユニット440は、ヒータを有し、給水源10から供給された水を加熱して例えば規定の温度まで昇温する。すなわち、熱交換器ユニット440は、温水を生成する。
【0042】
熱交換器ユニット440は、例えばセラミックヒータなどを用いた瞬間加熱式(瞬間式)の熱交換器である。瞬間加熱式の熱交換器は、貯湯タンクを用いた貯湯加熱式の熱交換器と比較すると、短い時間で水を規定の温度まで昇温させることができる。なお、熱交換器ユニット440は、瞬間加熱式の熱交換器には限定されず、貯湯加熱式の熱交換器であってもよい。また、加熱部は、熱交換器に限ることなく、例えば、マイクロ波加熱を利用するものなど、他の加熱方式を用いたものでもよい。
【0043】
熱交換器ユニット440は、制御部405と接続されている。制御部405は、例えば、使用者による操作部500の操作に応じて熱交換器ユニット440を制御することにより、操作部500で設定された温度に水を昇温する。
【0044】
熱交換器ユニット440の下流には、流量センサ442が設けられている。流量センサ442は、熱交換器ユニット440から吐出された水の流量を検知する。すなわち、流量センサ442は、管路20a内を流れる水の流量を検知する。流量センサ442は、制御部405に接続されている。流量センサ442は、流量の検知結果を制御部405に入力する。
【0045】
流量センサ442の下流には、電解槽ユニット450が設けられている。電解槽ユニット450は、内部を流れる水道水を電気分解することにより、水道水から次亜塩素酸を含む液(機能水)を生成する。電解槽ユニット450は、制御部405に接続されている。電解槽ユニット450は、制御部405による制御に基づいて、機能水の生成を行う。
【0046】
電解槽ユニット450において生成される機能水は、例えば、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される機能水は、電解塩素やオゾンなどを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される機能水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。
【0047】
電解槽ユニット450の下流には、バキュームブレーカ(VB)452が設けられている。バキュームブレーカ452は、例えば、水を流すための流路と、流路内に空気を取り込むための吸気口と、吸気口を開閉する弁機構と、を有する。弁機構は、例えば、流路に水が流れている時に吸気口を塞ぎ、水の流れの停止とともに吸気口を開放して流路内に空気を取り込む。すなわち、バキュームブレーカ452は、導水部20に水の流れが無い時に、管路20a内に空気を取り込む。弁機構には、例えば、フロート弁が用いられる。
【0048】
バキュームブレーカ452は、上記のように管路20a内に空気を取り込むことにより、例えば、管路20aのバキュームブレーカ452よりも下流の部分の水抜きを促進させる。バキュームブレーカ452は、例えば、ノズル473の水抜きを促進する。このように、バキュームブレーカ452は、ノズル473内の水を抜いてノズル473内に空気を取り込むことにより、例えば、ノズル473内の洗浄水やボウル801内に溜まった汚水などが、給水源10(上水)側に逆流してしまうことを抑制する。
【0049】
バキュームブレーカ452の下流には、圧力変調部454が設けられている。圧力変調部454は、導水部20の管路20a内の水の流れに脈動または加速を与え、ノズル473のビデ洗浄吐水口474a及びおしり洗浄吐水口474bやノズル洗浄部478の吐水部から吐水される水に脈動を与える。すなわち、圧力変調部454は、管路20a内を流れる水の流動状態を変動させる。圧力変調部454は、制御部405に接続されている。圧力変調部454は、制御部405による制御に基づいて、水の流動状態を変動させる。圧力変調部454は、管路20a内の水の圧力を変動させる。
【0050】
圧力変調部454の下流には、流量調整部471が設けられている。流量調整部471は、水勢(流量)の調整を行う。流量調整部471の下流には、流路切替部472が設けられている。流路切替部472は、ノズル473やノズル洗浄部478への給水の開閉や切替を行う。流量調整部471及び流路切替部472は、1つのユニットとして設けてもよい。流量調整部471及び流路切替部472は、制御部405に接続されている。流量調整部471及び流路切替部472の動作は、制御部405によって制御される。
【0051】
流路切替部472の下流には、ノズル473、ノズル洗浄部478、及び噴霧ノズル479が設けられている。ノズル473は、ノズルモータ476からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり、ボウル801内から後退したりする。つまり、ノズルモータ476は、制御部405からの指令に基づいてノズル473を進退させる駆動装置である。
【0052】
ノズル洗浄部478は、例えば、吐水部から機能水あるいは水を噴射することにより、ノズル473の外面(胴体)を洗浄する。ノズル473の外面は、例えば、ノズル473の前面及びノズル473の外周面を含む。噴霧ノズル479は、洗浄水や機能水をミスト状にしてボウル801に噴霧する。この例では、人体を洗浄するためのノズル473とは別に噴霧ノズル479を設けている。これに限ることなく、ミスト状の液体をボウル801に噴霧するための吐水口をノズル473に設けてもよい。
【0053】
また、流路切替部472の下流には、おしり洗浄流路21と、やわらか洗浄流路22と、ビデ洗浄流路23と、が設けられている。おしり洗浄流路21及びやわらか洗浄流路22は、導水部20を介して給水源10から供給された水や電解槽ユニット450において生成された機能水をおしり洗浄吐水口474bへ導く。ビデ洗浄流路23は、導水部20を介して給水源10から供給された水や電解槽ユニット450において生成された機能水をビデ洗浄吐水口474aへ導く。
【0054】
また、流路切替部472の下流には、表面洗浄流路24と、噴霧用流路25と、が設けられている。表面洗浄流路24は、導水部20を介して給水源10から供給された水や電解槽ユニット450において生成された機能水をノズル洗浄部478の吐水部へ導く。噴霧用流路25は、導水部20を介して給水源10から供給される水や電解槽ユニット450において生成された機能水を噴霧ノズル479に導く。
【0055】
制御部405は、流路切替部472を制御することにより、おしり洗浄流路21、やわらか洗浄流路22、ビデ洗浄流路23、表面洗浄流路24と、及び噴霧用流路25の各流路の開閉を切り替える。このように、流路切替部472は、ビデ洗浄吐水口474a、おしり洗浄吐水口474b、ノズル洗浄部478、及び噴霧ノズル479などの複数の吐水口のそれぞれについて、管路20aに連通させた状態と、管路20aに連通させない状態と、を切り替える。
【0056】
制御部405は、電源回路401から電力を供給され、人体検知センサ403や着座検知センサ404、流量センサ442、操作部500などから送られた信号に基づいて、電磁弁431や熱交換器ユニット440、電解槽ユニット450、圧力変調部454、流量調整部471、流路切替部472、ノズルモータ476などの作動を制御する。
【0057】
また、制御部405は、例えば、人体検知センサ403や着座検知センサ404の検知情報に基づいて、照光部700を制御する。照光部700は、ノズル473の周辺(後述のノズル収納部)に除菌作用を有する光である除菌光を照射する。照光部700については、後述する。
【0058】
人体検知センサ403は、
図1に表したように、ケーシング400の上面に形成された凹設部409に埋め込まれるように設けられ、便座200に近づいた使用者(人体)を検知する。換言すれば、人体検知センサ403は、衛生洗浄装置100の近傍にいる使用者を検知する。また、便蓋300の後部には透過窓310が設けられている。そのため、便蓋300が閉じた状態において、人体検知センサ403は、透過窓310を介して使用者の存在を検知することができる。制御部405は、例えば、人体検知センサ403による使用者の検知に応答して、便蓋300を自動的に開く。
【0059】
また、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、ケーシング400の側面には、脱臭ユニットからの排気口407及び室内暖房ユニットからの排出口408が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0060】
図3(a)、
図3(b)、
図6、
図7(a)、及び
図7(b)は、実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
図4は、実施形態に係る衛生洗浄装置の内部構造を表す平面図である。
図5は、実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル収納部を表す斜視図である。
図8(a)及び
図8(b)は、実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す正面図である。
なお、
図4では、衛生洗浄装置100のノズル473以外の構成が省略されている。
【0061】
図3(a)及び
図4に表したように、ケーシング400は、ノズル473を後退させた状態において、ノズル473の全体を収納可能なノズル収納部480を有する。ノズル収納部480は、ノズル473を収納するための部材であり、ノズル473の全体が収納された状態でノズル473に隣接する。この例では、
図5に表したように、ノズル収納部480として、ノズル支持部482及びノズル洗浄部478が設けられている。
【0062】
ノズル支持部482は、ノズル473の下方においてノズル473を支持する。ノズル支持部482は、後方から前方に向かう方向において、下方に傾斜している。ノズル473は、ノズル支持部482に対して摺動しながら、進出及び後退する。ノズル収納部480には、例えば、ノズル473を収納する筒状の部材が設けられてもよい。
【0063】
ノズル洗浄部478は、ノズル支持部482の前端に取り付けられている。
図3(a)に表したように、ノズル洗浄部478は、洗浄水を吐水する吐水穴が形成された吐水部478aと、その支持体478bと、を含む。ケーシング400の前端の下部には、
図3(a)及び
図8に表したように、開口481が設けられている。ノズル洗浄部478は、開口481の後方に位置する。ノズル洗浄部478は、例えば、ノズル473が進退する際に、吐水部478aから機能水あるいは水を噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を洗浄する(セルフクリーニング)。
【0064】
ノズル473及びノズル洗浄部478の前方には、ノズル蓋600が設けられている。ノズル蓋600は、開口481に対して開閉可能に設けられる。ノズル蓋600は、
図3(b)に表したように、ノズル473が進出した状態では開口481を開く開状態であり、
図3(a)に表したように、ノズル473の全体がノズル収納部480に収納された状態では開口481を閉じる閉状態である。例えば、ノズル蓋600が閉状態のとき、ノズル収納部480の前端に設けられた開口481は、ノズル蓋600により塞がれている。
【0065】
ノズル473は、使用されていない状態では、
図3(a)に表したように、ノズル収納部480に収納されている。ノズル473によって局部洗浄が行われる場合、ノズル収納部480に対してノズル473が前下方に摺動する。ノズル473が前下方に摺動すると、ノズル473がノズル洗浄部478に接触し、ノズル洗浄部478の吐水部478a及びノズル蓋600が上方に押し上げられる。例えば、ノズル473が所定の位置に到達するまでの間に、吐水部478aからの吐水によって、ノズル473が洗浄される。
【0066】
図3(b)に表したように、ノズル473が所定の位置に到達すると、ビデ洗浄吐水口474aまたはおしり洗浄吐水口474bから使用者の局部に向けて水が吐出され、洗浄が行われる。局部洗浄が完了すると、ノズル473は、ノズル収納部480に向けて後上方に摺動する。例えば、ノズル473がノズル収納部480に収納されるまでの間に、吐水部478aからの吐水によって、ノズル473が洗浄される。ノズル473は、所定の位置まで後退し、
図3(a)に表した状態のように、ノズル収納部480に収納される。
【0067】
図3(a)、
図3(b)、
図4、及び
図6に表したように、衛生洗浄装置100は、除菌作用を有する光である除菌光を照射する照光部700を備える。除菌光の照射により、対象に付着した菌の少なくとも一部が死滅又は不活性化し、除菌される。除菌光の波長は、250nm~480nmである。本発明者らの検討の結果、250nm~300nm付近の波長においては、菌・カビ等のDNAを書き換えることで増殖できないようにし除菌し、300~480nm付近においては、菌・カビ等が体内に持つ水分に光が作用し、ラジカルを生成することで、そのラジカルにより菌を死滅又は不活性化し除菌することが分かっている。なお、発明者は、水道水に対して300nm~480nmの波長を照射することにより、水道水中に過酸化水素が生成されることを確認している。これは、ラジカル生成における過程のなかで、水中に過酸化水素が生成されることを意味する。また、水中の菌に対して300nm~480nmの波長の光を照射することにより水中の菌が除菌できることを確認している。照光部700は、例えば、ケーシング400の内部に設けられる。
図4及び
図6に表したように、この例では、照光部700は、2つの発光部710を有している。2つの発光部710は、それぞれ、ノズル支持部482の下方の左右の側部に設けられている。
【0068】
照光部700は、例えば、発光素子720(発光体)を有する。発光素子720は、例えば、LED(Light Emitting Diode)である。発光素子720は、LEDに限ることなく、例えば、LD(Laser Diode)やOLED(Organic Light Emitting Diode)などでもよい。また、発光素子に代えて、冷陰極管や熱陰極管を用いてもよい。発光素子720は、例えば、基板を介して
図2に示した制御部405に接続されており、制御部405の制御に基づいて点灯及び消灯する。制御部405は、発光素子720の点灯及び消灯を制御することで、照光部700の作動を制御する。また、制御部405は、例えば、発光素子720に印加する電圧を調整することで、発光素子720の全光束を制御してもよい。発光素子720は、例えば、発光部710に設けられる。
【0069】
発光部710は、ノズル473及びノズル収納部480のそれぞれの前方側(開口481側)に向けて除菌光を照射する。除菌光により、ノズル473の前面と、ノズル収納部480のノズル473下方に位置する部分と、を含む視認可能領域が除菌される。
【0070】
視認可能領域について、
図7(a)、
図7(b)、
図8(a)、及び
図8(b)を参照して、より具体的に説明する。
図7(a)は、ノズル473の全体がノズル収納部480に収納された状態を表す。
図7(b)は、使用者がノズル蓋600を全開にした状態を表す。視認可能領域とは、
図7(a)に表した状態では使用者が視認できず、
図7(b)に表した状態で使用者から視認可能となる、ノズル473の前面と、ノズル収納部480のノズル473下方に位置する部分と、を指す。例えば、
図7(b)に表した状態において、使用者が矢印A1で表した方向から衛生洗浄装置100を見た場合に視認可能な、ノズル473の前面の領域R1と、ノズル収納部480の領域R2と、が視認可能領域である。
【0071】
視認可能領域に除菌光を照射する照光部700が設けられることで、使用者がノズル蓋600を開けた際に目視可能な部位における汚れの付着を抑制できる。特に、本発明に係る衛生洗浄装置100によれば、
図7(b)に表した領域R1及び領域R2のように、ノズル473の前面やノズル収納部480のノズル473下方に位置する部分などにも除菌光が照射される。これらの部分は、ノズル蓋600が開かれた際に使用者から見え易いが、一方でノズル473に対する通常の除菌光の照射では、除菌光が十分に照射され難い。本発明によれば、このような部分にも除菌光を照射して汚れの付着を抑制できるため、使用者にノズル473が清潔な場所に収納されていると認識させることができる。このため、清潔意識の高い使用者においても、ノズル473を安心して使用することができるようになる。
【0072】
照光部700は、視認可能領域の全体に対して除菌光を照射することが望ましい。なお、本願明細書では、「視認可能領域の全体に対して除菌光を照射する」とは、視認可能領域の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上に対して、24時間で菌が99%減少するよう、除菌光を照射することを指す。照光部700により、視認可能領域の全体が実質的に除菌される。
【0073】
視認可能領域には、
図7(b)に表した状態において使用者が手鏡等を使用した際に視認可能な領域がさらに含まれても良い。例えば
図7(b)及び
図8(b)に表したように、ノズル蓋600を全開した状態において、矢印A1の方向から肉眼で直視可能な領域R1及びR2に加えて、手鏡等を用いて視認可能な、ノズル蓋600の裏面600aの領域R3が視認可能領域に含まれても良い。すなわち、照光部700は、領域R1及びR2に加えて、裏面600aにも除菌光Lを照射する。
【0074】
これは、清潔意識の高い使用者においては、衛生洗浄装置100を清掃する際に、肉眼で直視できない領域を手鏡等を用いて確認しながら清掃する場合が在るためである。裏面600aにも除菌光Lが照射されることで、裏面600aにおける汚れの付着を抑制できる。このため、裏面600aを観察する使用者に対しても、ノズル473が清潔な場所に収納されていると認識させることができ、使用者がノズル473を安心して使用することができるようになる。
【0075】
照光部700は、ノズル収納部480内の視認可能領域以外の領域である非視認可能領域よりも、視認可能領域に対して、より重点的に除菌光を照射する。例えば、照光部700は、視認可能領域における除菌光の平均照度が、非視認可能領域における除菌光の平均照度よりも大きくなるよう構成されている。または、照光部700は、視認可能領域における除菌光の照射範囲が、非視認可能領域における除菌光の照射範囲よりも広くなるよう構成されている。
こうすることで、清潔性が高く要求される視認可能領域の汚れ除去性能を高くできる。また、衛生洗浄装置100については、近年デザイン性を向上させるために小型化が望まれている。非視認可能領域よりも視認可能領域に重点的に除菌光を照射することで、不要な除菌光の照射が抑制され、照光部700に印加する電力を小さくできる。電力が小さくなると、照光部700の発熱が小さくなる。これにより、照光部700の熱を放熱させるヒートシンクなどを小さくができ、照光部700を小型化できる。この結果、衛生洗浄装置100を小型化することができる。
【0076】
視認可能領域における除菌光の平均照度は、視認可能領域の各点における除菌光の照度を平均化することで算出される。非視認可能領域における除菌光の平均照度は、非視認可能領域の各点における除菌光の照度を平均化することで算出される。
視認可能領域における除菌光の照射範囲は、視認可能領域において、所定の照度以上で除菌光が照射されている部分の面積で表される。非視認可能領域における除菌光の照射範囲は、非視認可能領域において、所定の照度以上で除菌光が照射されている部分の面積で表される。所定の照度は、例えば5mW/cm2である。
【0077】
また、ノズル収納部480の非視認可能領域は、局部洗浄やノズル473のセルフクリーニング等により生じた非視認可能領域の水がノズル収納部480の視認可能領域に誘導されるよう形成されていることが望ましい。
図3及び
図5に表した例では、ノズル収納部480を構成するノズル支持部482が、後方から前方に向かう方向において、下方に傾斜している。すなわち、非視認可能領域であるノズル支持部482の後方側から、視認可能領域であるノズル支持部482の前方側へ、水が誘導されるよう形成されている。
この構成によれば、非視認可能領域において菌やカビが増殖する要因となる残水の発生を抑制でき、非視認可能領域に汚れが付着することを抑制できる。また、この結果、非視認可能領域で発生したカビから胞子がノズル収納部内に放出され、視認可能領域に菌やカビが繁殖することを抑制できる。
【0078】
例えば、発光部710は、上述したようにノズル支持部482下方の側部に設けられている。発光部710は、ノズル収納部480の内側に設けられても良いが、
図4及び
図6に表したように、ノズル収納部480の外に設けられることが望ましい。ノズル収納部480内には、ノズル473が洗浄された際や、洗浄されたノズル473が収納される際に、水が飛散する。従って、発光部710がノズル収納部480内に設けられていると、発光部710に水がかかり、発光部710の故障の原因となる。発光部710がノズル収納部480の外に設けられることで、発光部710及び発光部710への給電部に水がかからなくなり、発光部710が故障することを防止できる。
【0079】
発光部710がノズル収納部480の外に設けられる場合、ノズル収納部480の除菌光が照射される部分は、光透過性であることが望ましい。すなわち、ノズル収納部480は、発光部710から発光された除菌光をノズル収納部480内に導くための透過部480a(
図6に示す)を有していることが望ましい。透過部480aが設けられることで、ノズル収納部480内の視認可能領域に照射される除菌光の照度を高め、除菌作用を高めることができる。
【0080】
図9(a)~
図9(c)は、実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺の一例を表す断面図である。
図9(a)~
図9(c)においては、除菌光が照射される視認可能領域にドットを付している。
照光部700は、例えば
図9(a)に表したように、視認可能領域の全体に除菌光Lを照射するための反射部740を有する。反射部740は、発光部710から放射された除菌光Lを、視認可能領域に向けて反射させる。反射部740は、例えば、反射率を高めるために金属材料で形成される。また、反射部740の表面(発光部710に対向する面)は、鏡面加工されていることが望ましい。又は、反射部740は、反射率の高い樹脂材料で形成されても良い。このような樹脂材料として、例えば、フッ素系の化合物又はポリエステル系の化合物が用いられる。反射部740の全てが上述したような反射率の高い材料で構成されていても良いし、反射部740の一部のみが反射率の高い材料で構成されていても良い。
【0081】
または、照光部700は、導光手段750を有していても良い。導光手段750は、例えば
図9(b)に表したように、導光材料で形成されたノズル洗浄部478である。ノズル洗浄部478が導光材料からなることで、ノズル洗浄部478に照射された除菌光Lがノズル洗浄部478の内部を通り、ノズル洗浄部478から放射される。
導光手段750は、
図9(c)に表したように、導光材料で形成されたノズル蓋600であっても良い。ノズル蓋600が導光材料からなることで、ノズル蓋600に照射された除菌光Lがノズル蓋600の内部を通り、ノズル蓋600から放射される。
ノズル洗浄部478又はノズル蓋600を構成する導光材料としては、例えば、アクリル系樹脂部材や、シリコン系樹脂、又はガラスなどが用いられる。
【0082】
照光部700が反射部740又は導光手段750を有することで、発光部710からは陰となるノズル473の前端面などにも効率的に除菌光を照射できる。これにより、より小さい(又は少ない)発光部710で、視認可能領域の全体に効率的に除菌光を照射でき、衛生洗浄装置100を小型化できる。
【0083】
なお、照光部700具体的構成は、適宜変更可能である。
図10(a)~
図10(c)は、実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺の別の一例を表す断面図である。
図10(a)~
図10(c)においては、除菌光が照射される視認可能領域にドットを付している。
図11は、実施形態に係る衛生洗浄装置の照光部の変形例を表す平面図である。
【0084】
例えば
図10(a)に表したように、発光部710が、ノズル473の前端よりも上方に設けられていても良い。衛生洗浄装置100においては、ノズル473の上方に、ノズル473の側方や下方に比べて空間的な余裕が存在する。従って、ノズル473の前端よりも上方に発光部710を設けることで、ノズル473の下方や側方に発光部710を設ける場合に比べて、衛生洗浄装置100を小型化できる。
【0085】
発光部710がノズル473の前端よりも上方に設けられる場合、発光部710は下方に向けて除菌光Lを照射する。この場合も、
図10(a)~
図10(c)に表したように、照光部700は、反射部740又は導光手段750を有することが望ましい。反射部740又は導光手段750が設けられることで、発光部710からは陰となるノズル473の前端面やノズル473の下方に位置するノズル収納部480などに対しても効率的に除菌光Lを照射できる。
【0086】
また、
図11に表したように、発光素子720はノズル収納部480から離れた位置に設けられてもよい。この例では、ノズル収納部480から左右に離れた位置に2つの発光素子720が設けられており、2つの発光素子720は、それぞれ、光ファイバ730を介してノズル収納部480の左右の側部に設けられた2つの発光部710に接続されている。
【0087】
実施形態においては、このように、発光素子720から光ファイバなどで発光部710に除菌光を導光し、ノズル収納部480付近に設けられた発光部710からノズル収納部480に除菌光を照射してもよい。
【0088】
図12は、実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル洗浄部の変形例を表す断面図である。
図13は、実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル洗浄部の変形例を表す斜視図である。
図14は、実施形態に係る衛生洗浄装置のノズル洗浄部の変形例を表す正面図である。
【0089】
ノズル洗浄部478の構造は、
図3及び
図5に表した例に限定されない。例えば、
図12及び
図13に表したノズル洗浄部478が設けられていても良い。この例では、ノズル洗浄部478は、ノズル支持部482の先端に取り付けられた筒状の部材である。ノズル473が完全に後退した状態において、ノズル473の前端は、ノズル洗浄部478に囲われる。ノズル洗浄部478の内壁には、ノズル473の外周に向けて洗浄水を吐水するための吐水穴が形成されている。例えば、ノズル収納部480は、このノズル洗浄部478と、ノズル支持部482と、から構成される。
【0090】
図12及び
図13に表したノズル洗浄部478が設けられる場合においても、衛生洗浄装置100には、ノズル蓋600を全開した場合に視認可能となる視認可能領域が存在する。例えば、
図14に表したように、ノズル473の前面の領域R1と、ノズル473下方に位置するノズル収納部480の領域R2と、が視認可能領域である。照光部700は、この視認可能領域に対して除菌光を照射する。
【0091】
このように、ノズル収納部480近傍の構造は適宜変更可能である。いずれの構造においても、ノズル473の前面とノズル収納部480のノズル473下方に位置する部分とにおける視認可能領域に除菌光が照射されることで、当該領域における汚れの付着を抑制できる。
【0092】
図15は、実施形態に係る衛生洗浄装置の除菌光の波長分布の例を表すグラフである。
図15に表したように、この例では、除菌光は、約360nm~約420nmの波長の光を含み、ピーク波長は、約385nmである。このように、除菌光のピーク波長を、可視光域と紫外光域の境界付近に設定することで、例えば、紫外光成分であるUV-A成分(315nm以上400nm以下)と紫~青の可視光成分(400nm以上480nm以下)とを含む除菌光を照射することができる。このような除菌光であれば、除菌光によるノズル収納部480の除菌効果と使用者への視認効果とを両立することができる。
【0093】
なお、除菌光の光源は、1つに限定されない。例えば、除菌光として、1つの光源から紫外光成分を含み可視光成分を含まない光を照射するとともに、別の光源から可視光成分を含み紫外光成分を含まない光を照射してもよい。換言すれば、除菌光に含まれる紫外光成分と可視光成分とは、それぞれ、異なる光源から同時に照射されていてもよい。
【0094】
また、除菌光は、紫外光成分と可視光成分とを含む光に限定されない。例えば、ノズル蓋600が波長変換材料を含む場合、除菌光は、紫外光成分を含み可視光成分を含まない光であってもよい。
【0095】
次に、実施形態に係る衛生洗浄装置の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図16は、実施形態に係る衛生洗浄装置の動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
図16に表したように、人体検知センサ403が使用者を検知していない状態では、照光部700は作動していない(タイミングt0)。より具体的には、照光部700の発光素子720(例えば、LED)は、消灯している(OFF)。
【0096】
人体検知センサ403が衛生洗浄装置100に近づいた使用者を検知すると、制御部405は、照光部700を作動させる(タイミングt1)。より具体的には、制御部405は、照光部700の発光素子720を点灯させる(ON)。
【0097】
このように、使用者が衛生洗浄装置100に近づいたことを検知したタイミングで照光部700を作動させることで、使用者が便座200に着座する前に、ノズル収納部480を除菌光で除菌していることを使用者に認識させることができる。
【0098】
照光部700は、例えば、着座検知センサ404が使用者の着座を検知するまで作動し続ける。換言すれば、制御部405は、人体検知センサ403が使用者を検知し、かつ着座検知センサ404が着座を検知していない状態において、照光部700を作動させ続ける。
【0099】
着座検知センサ404が使用者の着座を検知すると、制御部405は、照光部700の作動を停止させる(タイミングt2)。より具体的には、制御部405は、照光部700の発光素子720を消灯させる(OFF)。
【0100】
使用者が便座200に着座した後は、開口481からケーシング400の外側に除菌光が漏れている場合、使用者に除菌光の一部が照射されやすい状態となる。使用者が便座200に着座したタイミングで照光部700の作動を停止させることで、使用者に除菌光が照射されることを抑制し、使用者の安全性をより高めることができる。
【0101】
照光部700は、例えば、着座検知センサ404が使用者の離座を検知するまで作動を停止し続ける。換言すれば、制御部405は、着座検知センサ404が着座を検知している状態において、照光部700の作動を停止させ続ける。
【0102】
着座検知センサ404が使用者の離座を検知すると(着座検知センサ404が着座を検知している状態から着座を検知していない状態になると)、制御部405は、照光部700を作動させる(タイミングt3)。より具体的には、制御部405は、照光部700の発光素子720を点灯させる(ON)。これにより、離座した使用者に、ノズル収納部480の除菌が再開されたことを認識させることができる。
【0103】
照光部700は、所定時間TM1が経過するまで作動し続ける。換言すれば、制御部405は、人体検知センサ403が使用者を検知している状態から使用者を検知しない状態(タイミングt4)になっても、所定時間TM1が経過するまで照光部700を作動させ続ける。
【0104】
所定時間TM1が経過すると、制御部405は、照光部700の作動を停止させる(タイミングt5)。より具体的には、制御部405は、照光部700の発光素子720を消灯させる(OFF)。
【0105】
照光部700は、トイレ装置が未使用の状態で所定時間TM2が経過すると作動する。換言すれば、制御部405は、人体検知センサ403が使用者を検知せず、かつ着座検知センサ404が着座を検知していない状態で、所定時間TM2が経過すると、照光部700を作動させる(タイミングt6)。より具体的には、制御部405は、照光部700の発光素子720を点灯させる(ON)。このように、制御部405は、人体検知センサ403が使用者を検知していない状態において、照光部700を作動させてもよい。
【0106】
人体検知センサ403が使用者を検知していない状態においても、除菌光によってノズル収納部480を除菌することで、除菌光の照射時間を長くすることができる。これにより、除菌光によるノズル収納部480の除菌効果を高めることができる。また、除菌光の照射時間を長くすることで、ピーク波長が比較的長い除菌光を照射する場合であっても、除菌光によるノズル収納部480の除菌効果が低下することを抑制できる。したがって、除菌効果が低下することを抑制しつつ、使用者の安全性を高めることができる。
【0107】
所定時間TM3が経過すると、制御部405は、照光部700の作動を停止させる(タイミングt7)。より具体的には、制御部405は、照光部700の発光素子720を消灯させる(OFF)。
【0108】
所定時間TM1~TM3は、任意の時間でよい。所定時間TM1~TM3は、例えば、人体検知センサ403が使用者を検知していない状態における照光部700の作動時間が、人体検知センサ403が使用者を検知している状態における照光部700の作動時間よりも長くなるように、設定される。換言すれば、制御部405は、例えば、人体検知センサ403が使用者を検知していない状態における照光部700の作動時間が、人体検知センサ403が使用者を検知している状態における照光部700の作動時間よりも長くなるように照光部700を制御する。これにより、除菌光によるノズル収納部480の除菌効果を更に高めることができる。
【0109】
(他の実施形態)
図17~
図19は、他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
他の実施形態に係る衛生洗浄装置100aでは、
図17に表したように、照光部700の発光部710が、ノズル473およびノズル蓋600よりも上方に設けられている。
【0110】
図18に表したように、ノズル収納部480は、底面部480bを有する。底面部480bは、ケーシング400の内面の一部であり、ノズル支持部482よりも前方に位置する部分である。発光部710は、
図19(a)に表したように、下方に向けて除菌光Lを照射する。これにより、ノズル蓋600の裏面600aや、底面部480bの一部、ノズル473の上面などに、除菌光Lが照射される。
【0111】
図18に表したように、ノズル473は、前面473aを有する。前面473aは、ノズル473の進出方向を前方としたときに、ノズル473の前方に位置する面である。前面473aは、例えば、ノズル473の進出方向に対して、略垂直である。底面部480bは、前面473aの下方に位置する部分480cを有する。例えば、部分480cの少なくとも一部と、発光部710と、の間には、ノズル473の前面473aが位置する。すなわち、部分480cの少なくとも一部には、発光部710から照射された除菌光が直接的には照射されない。
【0112】
図19(b)では、発光部710から照射され、裏面600aで反射された除菌光Lを表している。裏面600aに除菌光Lが照射されると、
図19(b)に表したように、除菌光Lの一部は反射される。例えば、裏面600aで反射された除菌光Lは、少なくとも、ノズル473の前面473a、及びノズル収納部480における前面473aよりも前方側に位置する部分に照射される。ノズル収納部480における前面473aよりも前方側に位置する部分は、具体的には、ノズル洗浄部478の一部および底面部480bを含む。
【0113】
前面473aや部分480cに対して除菌光Lが照射されることで、ノズル473およびノズル収納部480において使用者が目視可能な領域である視認可能領域での汚れの付着を抑制できる。これにより、ノズル473が清潔であり、且つそれが収納されるノズル収納部480も清潔であると、使用者に認識させることができる。このため、清潔意識の高い使用者においても、局部洗浄ノズルを安心して使用することができる。
【0114】
ノズル473は、ノズル473の進退方向に沿って延びる外周面473bを有する。例えば、ノズル473の形状は、進退方向に沿って延びる円柱状であり、外周面473bは湾曲している。照光部700は、前面473aと、ノズル収納部480における前面473aよりも前方側に位置する部分と、に対する除菌光Lの平均照度が、外周面473bに対する除菌光Lの平均照度よりも大きくなるよう構成されていることが望ましい。または、照光部700は、前面473aと、ノズル収納部480における前面473aよりも前方側に位置する部分と、に対する除菌光Lの照射範囲が、外周面473bに対する除菌光Lの照射範囲よりも広くなるよう構成されていることが望ましい。
こうすることで、ノズル473およびノズル収納部480の視認可能領域に重点的に除菌光Lが照射される。このため、清潔性が高く要求される視認可能領域に汚れがより付着し難くなる。また、衛生洗浄装置100については、近年デザイン性を向上させるために小型化が望まれている。上述した平均照度又は照射範囲の関係によれば、不要な除菌光Lの照射を抑制でき、照光部700へ印加する電力を小さくできる。電力が小さくなると、照光部700の発熱が小さくなる。これにより、照光部700の熱を放熱させるヒートシンクなどを小さくができ、照光部700を小型化できる。この結果、衛生洗浄装置100を小型化できる。ノズル473の外周面473bについては、ノズル洗浄部478から吐水される水や除菌水によって汚れが付着し難い。このため、除菌光Lを重点的に照射しなくとも、外周面473bにおける汚れの付着を抑制できる。
【0115】
裏面600aの少なくとも一部は、前面473a等への除菌光Lの照射強度を大きく、又は照射範囲を広くするために、反射材で形成されていることが望ましい。より望ましくは、裏面600aの全体が、反射材で形成される。例えば、裏面600aにおける反射率は、底面部480bの反射率、又は裏面600aに隣接するケーシング400内面の反射率よりも大きい。反射材としては、上述した反射部740の材料と同様に、金属材料、又は反射率の高い樹脂材料などが用いられる。例えば、裏面600aは、鏡面加工されていることが望ましい。
【0116】
裏面600aに除菌光Lが直接照射されると、裏面600aにおける汚れの付着を抑制できる。また、裏面600aは、ノズル473の前面473aや、ノズル洗浄部478、底面部480bなど、視認可能領域の広範囲に面する。裏面600aを反射材で形成することで、裏面600aで反射した除菌光Lが、視認可能領域の広範囲に照射される。これにより、照光部700(発光部710)を小型化しても、視認可能領域の広範囲に除菌光Lを照射できる。
【0117】
裏面600aに加えて、底面部480bや、裏面600aに隣接するケーシング400の内面も、除菌光Lを反射するように構成されていても良い。この構成によれば、除菌光Lを視認可能領域のより広範囲に照射できる。
【0118】
照光部700は、裏面600aに対して直接照射される除菌光Lの照射範囲が、ケーシング400の内部において裏面600a以外の部分に対して直接照射される除菌光Lの照射範囲よりも広くなるよう構成されていることが望ましい。裏面600aに直接照射される除菌光Lの照射範囲を大きくすることで、裏面600aで反射した除菌光Lを、視認可能領域のより広範囲に照射できる。
【0119】
ケーシング400内の各部に照射される除菌光Lには、反射光と直接光が含まれる。反射光は、発光部710から照射された後、裏面600aによって反射された除菌光Lである。直接光は、発光部710から照射され、裏面600aや他の部材で反射されずに、直接照射される除菌光Lである。照光部700は、底面部480bの前端部分480dに対して、直接光が照射される位置に配置されることが望ましい。前端部分480dは、例えば、底面部480bの前端から後方側に10mm以内の範囲を含む。
【0120】
本発明者らは、検討の結果、ノズル収納部480内の残水が、底面部480bの前端部分480dに発生しやすいことを発見した。また、本発明者らは、前端部分480dが最も汚れやすいことを発見した。視認可能領域において最も汚れが発生しやすい前端部分480dに対して、除菌力の強い直接光が照射されることで、前端部分480dに菌やカビが発生することを抑制できる。これにより、前端部分480dを清潔に保つことができる。
【0121】
より望ましくは、照光部700は、前端部分480dに対して、直接光と反射光が照射されるよう配置される。この構成によれば、最も汚れが発生しやすい前端部分480dに、直接光と反射光の両方が照射される。このため、視認可能領域において残水が発生しやすい前端部分480dにおける菌やカビの発生をさらに抑制できる。
【0122】
図20は、他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す平面図である。
図21および
図22は、他の実施形態に係る衛生洗浄装置の局部洗浄ノズル周辺を表す断面図である。
図20に表したように、ノズル蓋600の裏面600aは、反射光が拡散するように、曲面状に形成されていることが望ましい。この構成によれば、裏面600aが平面状である場合に比べて、裏面600aで反射した除菌光Lをより拡散させ、視認可能領域のより広範囲に除菌光Lを照射できる。
【0123】
また、ノズル洗浄部478は、透過材料で形成されていることが望ましい。すなわち、
図21に表したように、除菌光Lがノズル洗浄部478を透過することが望ましい。ノズル洗浄部478は、ノズル473の前端部に設けられる。このため、ノズル洗浄部478を透過した除菌光Lは、ノズル473とノズル洗浄部478との間の隙間や、発光部710に対して陰に位置する視認可能領域に照射される。これにより、視認可能領域のより広範囲に除菌光を照射できる。例えば、ノズル洗浄部478の透過率は、5%以上であることが望ましい。
【0124】
より望ましくは、ノズル洗浄部478は、透過時に除菌光Lが拡散するよう構成されている。例えば、ノズル洗浄部478は、散乱剤が添加された樹脂により形成されている。ノズル洗浄部478の少なくとも一部は、ノズル473の全体がノズル収納部480内に収納された状態において、前面473aよりも前方側に位置する。このため、ノズル洗浄部478で除菌光Lが拡散すると、視認可能領域のより広範囲に除菌光Lを照射できる。例えば、照光部700に対して陰に位置する視認可能領域への除菌光Lの照度を大きくできる。
【0125】
照光部700を作動させて除菌光Lを照射した状態において、ノズル洗浄部478を動かしても良い。照光部700の作動中にノズル洗浄部478が動くと、
図22(a)および
図22(b)に表したように、除菌光Lの照射範囲が変化する。これにより、視認可能領域のより広範囲に除菌光Lを照射できる。例えば、ノズル洗浄部478は、ノズル473の摺動により動かされる。ノズル洗浄部478を駆動させる駆動部が設けられても良い。駆動部が作動することで、ノズル洗浄部478が動かされる。
【0126】
より望ましくは、照光部700の作動中は、ノズル蓋600を開かないように、ノズル洗浄部478を動かす。これにより、除菌光Lがケーシング400の外に漏れることを抑制でき、使用者の安全性を高めつつ、視認可能領域のより広範囲に除菌光を照射できる。
【0127】
ここでは、衛生洗浄装置100aがノズル蓋600を備える例について説明した。しかし、衛生洗浄装置100aは、ノズル蓋600を備えていなくても良い。この場合、視認可能領域は、局部洗浄ノズルが進出又は後退する開口を通して使用者が目視可能な領域である。衛生洗浄装置100又は100aがノズル蓋600を備える場合、視認可能領域は、ノズル蓋600を全開にしたときに使用者が目視可能な領域である。ノズル蓋600が設けられない場合には、例えば、ノズル473の前面473aや、底面部480bにおける前面473aの下方に位置する部分480cに、直接除菌光Lが照射されるように照光部700が設けられる。
【0128】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、衛生洗浄装置が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0129】
10 給水源、 20 導水部、 21 おしり洗浄流路、 22 やわらか洗浄流路、 23 ビデ洗浄流路、 24 表面洗浄流路、 25 噴霧用流路、 100,100a 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 310 透過窓、 400 ケーシング、 401 電源回路、 403 人体検知センサ、 404 着座検知センサ、 405 制御部、 407 排気口、 408 排出口、 409 凹設部、 431 電磁弁、 432 調圧弁、 433 逆止弁、 440 熱交換器ユニット、 442 流量センサ、 450 電解槽ユニット、 452 バキュームブレーカ、 454 圧力変調部、 471 流量調整部、 472 流路切替部、 473 局部洗浄ノズル、 473a 前面、 473b 外周面、 474a ビデ洗浄吐水口、 474b おしり洗浄吐水口、 476 ノズルモータ、 478 ノズル洗浄部、 478a 吐水部、 478b 支持体、 479 噴霧ノズル、 480 ノズル収納部、 480a 透過部、 480b 底面部、 480c 部分、 480d 前端部分、 481 開口、 482 ノズル支持部、 500 操作部、 600 ノズル蓋、 600a 裏面、 700 照光部、 710 発光部、 720 発光素子、 730 光ファイバ、 740 反射部、 750 導光手段、 800 便器、 801 ボウル、 A1 矢印、 L 除菌光、 R1~R3 領域、 t0~t7 タイミング、 TM1~TM3 所定時間