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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/12 20060101AFI20231207BHJP
   B65H 5/36 20060101ALI20231207BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B65H5/12 A
B65H5/36
B41J2/01 305
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019195339
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2020083655
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2018217901
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】江川 知宏
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-188795(JP,A)
【文献】特開2003-025547(JP,A)
【文献】特開2003-276899(JP,A)
【文献】特開2013-184758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/12
B65H 5/36
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記シートをガイドするガイド部と、
前記ガイド部のシート搬送方向の下流側に配置される搬送回転体と、
前記搬送回転体に配置され、前記シートの先端を挟み込む把持部と、
前記搬送部の搬送によって前記シートの先端が進入する前記把持部のシート進入範囲を当該シート面に交差する方向で調整可能な調整機構と、を備え
前記調整機構は、
前記ガイド部によって形成されるシート搬送面に直交する方向で移動する可動ガイド部を有し、
前記可動ガイド部を移動させることにより、前記シート進入範囲を調整する搬送装置。
【請求項2】
シートを搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記シートをガイドするガイド部と、
前記ガイド部のシート搬送方向の下流側に配置される搬送回転体と、
前記搬送回転体に配置され、前記シートの先端を挟み込む把持部と、
前記搬送部の搬送によって前記シートの先端が進入する前記把持部のシート進入範囲を当該シート面に交差する方向で調整可能な調整機構と、を備え、
前記調整機構は、
前記ガイド部によって形成されるシート搬送面に直交する方向の位置が回転角度によって変化する調整回転体を有し、
前記調整回転体の回転角度を変更することにより、前記シート進入範囲を調整する搬送装置。
【請求項3】
前記調整機構を駆動して前記シート進入範囲を調整する駆動部と、
前記シートの厚さを示す厚さ情報に基づいて前記駆動部の駆動量を制御する制御部と、
を備える請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の搬送装置と、
前記搬送装置に搬送される前記シートに画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートを搬送する搬送装置において、シリンダやドラム等の搬送回転体にグリッパ等の把持部を配置し、該把持部によってシートを挟持した状態で搬送回転体を回転させてシートを目的の場所に搬送する技術が知られている。
【0003】
この種の技術に関するものとして特許文献1がある。特許文献1には、転写ドラムのグリッパによってシートとしての記録材の先端を掴み、感光ドラムまで搬送する搬送装置について記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送回転体の把持部へのシートの受渡し時に、シートの先端がバタついてシートの位置がずれたり撓んだりした状態で、把持部の挟み込みが行われることがある。搬送装置では厚さの異なるシートの搬送に対応する必要があるが、薄いシートの場合、把持部の間隔に対して遊びの空間が相対的に大きくなるためバタつきも生じ易くなる。シートのバタつきを抑制するという点で従来技術には改善の余地があった。
【0005】
本発明は、シートの厚さにかかわらず、把持部へのシートの受渡し時のバタつきを抑制できる搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シートを搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記シートをガイドするガイド部と、前記ガイド部のシート搬送方向の下流側に配置される搬送回転体と、前記搬送回転体に配置され、前記シートの先端を挟み込む把持部と、前記搬送部の搬送によって前記シートの先端が進入する前記把持部のシート進入範囲を当該シート面に交差する方向で調整可能な調整機構と、を備え、前記調整機構は、前記ガイド部によって形成されるシート搬送面に直交する方向で移動する可動ガイド部を有し、前記可動ガイド部を移動することにより、前記シート進入範囲を調整する搬送装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の搬送装置及び画像形成装置によれば、シートの厚さにかかわらず、把持部へのシートの受渡し時のバタつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】第1の実施の形態の搬送装置の渡し胴及びグリッパを示す斜視図である。
図3】第1の実施の形態の搬送装置の構成を示す模式図である。
図4】第1の実施の形態の調整機構の調整位置の設定の様子を示す模式図である。
図5】第1の実施の形態の調整機構によるシートの位置調整の様子を示す模式図である。
図6】第2の実施の形態の調整機構によるシートの位置調整の様子を示す模式図である。
図7】第3の実施の形態の調整機構によるシートの位置調整の様子を示す模式図である。
図8】第4の実施の形態の調整機構によるシートの位置調整の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に示す画像形成装置1は、用紙としてのシートPにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の印刷装置である。
【0010】
まず、画像形成装置1の全体的な構成について説明する。画像形成装置1は、給紙部11と、プレコート部12と、画像形成部13と、乾燥部14と、冷却部15と、反転部16と、排紙部17と、制御装置50と、操作装置53と、を含んで構成される。
【0011】
給紙部11は、給紙カセット111と、給送装置112と、給紙搬送装置113と、を備える。給紙カセット111に積載された複数のシートPは、給送装置112によって1枚ずつ分離された後、給紙搬送装置113によってプレコート部12に送られる。
【0012】
プレコート部12は、シートPに前処理を行うプレコートユニット121と、シートを搬送するプレコート搬送装置122と、を備える。プレコートユニット121は、画像形成部13に送られる前のシートPに対して処理液を塗布する。処理液は、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための薬剤等である。
【0013】
画像形成部13は、前処理されたシートPを搬送する搬送装置20と、搬送装置20によって搬送されるシートPにインクを吐出して画像を形成するインク吐出部130と、を備える。
【0014】
インク吐出部130は、複数色のインクを吐出してシートPに画像を形成するものであり、複数色に対応した複数の液体吐出ヘッド135を備える。液体吐出ヘッド135は、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体吐出ヘッド135が吐出するインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等である。これ以外にも、白色、金色、銀色等の特殊なインクを液体吐出ヘッド135が吐出する構成としてもよい。また、インクの他に表面コート液のような画像を構成しない液体等を吐出する液体吐出ヘッド135を配置してもよい。
【0015】
複数の液体吐出ヘッド135は、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。なお、シートPに形成される画像は、文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等も含まれる。
【0016】
搬送装置20は、ローラ搬送部21、搬送回転体としての渡し胴131、ドラム132、渡し胴133の順でシートPを受け渡していく。渡し胴131、ドラム132及び渡し胴133は、何れも軸方向に長いシリンダ状に構成される。
【0017】
渡し胴131の周面には、シートPの先端を把持するグリッパ30が配置される。グリッパ30は、シートPの先端を把持する把持部である。
【0018】
図2は、第1の実施の形態の搬送装置20の渡し胴131及びグリッパ30を示す斜視図である。この図2では、搬送装置20の後述する調整機構22の一部が見えるように、渡し胴131の一部を省略して表現している。
【0019】
図2に示すように、グリッパ30は、グリッパ回転軸31と、爪台32と、爪部33と、を備える。グリッパ回転軸31には爪部33が櫛歯状に複数配置されており、グリッパ回転軸31の回転によって複数の爪部33が同時に回転する。爪台32は、爪部33の数に対応して渡し胴131に複数配置されており、爪部33とともにシートPを挟み込む。
【0020】
爪部33は、機械的な手段によって開閉する。グリッパ回転軸31の端部と筐体側のそれぞれには、カム機構(図示省略)が配置される。カム機構により、渡し胴131の回転によってグリッパ30がシートPを挟み込む位置に到達すると、爪部33が爪台32に近づくようにグリッパ回転軸31が回転する。なお、グリッパ回転軸31を回転させる構成が機械的な手段に限定されるわけではなく、モータ等によって適宜のタイミングでグリッパ回転軸31を回転させる構成としてもよい。
【0021】
画像形成部13に搬送されてきたシートPは、グリッパ30によって先端が把持された状態で渡し胴131の周面に巻き付いた状態でドラム132との受け渡し位置まで移動する。なお、ローラ搬送部21から渡し胴131のグリッパ30へのシートPの受け渡し動作については後述する。
【0022】
ドラム132の周面にも渡し胴131と同様のグリッパ136が配置され、渡し胴133の周面にも同様のグリッパ137が配置される。ドラム132のグリッパ136は、渡し胴131のグリッパ30に対して互い違いの櫛歯状に構成されており、互いに対向する位置でシートPの受け渡しが行われる。渡し胴133のグリッパ137とドラム132のグリッパ136も、互い違いの櫛歯状に構成されており、互いに対向する位置でシートPの受け渡しが行われる。
【0023】
ドラム132の内側には吸引装置138が配置される。ドラム132の表面には複数の吸引孔(図示省略)が分散して形成されており、吸引装置138の起動によってシートPを吸い込む吸引流が発生する。渡し胴131からドラム132へ受け渡されたシートPは、グリッパ136によって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によってドラム132の表面に吸着した状態で、ドラム132の回転移動に伴って搬送される。
【0024】
ドラム132に担持されたシートPが、インク吐出部130との対向領域を通過する際に、液体吐出ヘッド135から各色インクが吐出され、画像情報に応じた画像が形成される。画像が形成されたシートPは、ドラム132から渡し胴133に送られる。渡し胴133に送られたシートPは、乾燥部14に通じるベルトコンベア140に送られる。ベルトコンベア140には吸引装置(図示省略)が配置されており、シートPは、吸引されながら乾燥部14を搬送される。
【0025】
乾燥部14は、ベルトコンベア140によって搬送されるシートPを乾燥させる乾燥装置141を備える。乾燥装置141により、インク中の水分等の液分が蒸発し、シートP上にインクが固着する。乾燥装置141によって乾燥されたシートPは、ベルトコンベア140によって冷却部15に搬送される。
【0026】
冷却部15は、乾燥装置141で乾燥されたシートPを冷却する冷却装置151を備える。冷却装置151で冷却されたシートPは、反転部16へと送られる。
【0027】
反転部16は、片面印刷と両面印刷で経路を切り替える反転装置161を備える。反転装置161は、片面印刷が設定されている場合はシートPを反転させることなく、排紙部17に送り、両面印刷が設定されている場合はシートPを反転させて反転経路162に送る。反転経路162は、反転部16から画像形成部13を接続しており、反転経路162に送られたシートPは裏返された状態で渡し胴131に送られる。渡し胴131に送られた後、表面と同様の画像形成処理がシートPの裏面に行われる。
【0028】
排紙部17は、反転部16を通過したシートPを収容する排紙カセット171と、シートPを画像形成装置1の外側に排出する排紙トレイ172と、を備える。排紙部17に搬送されてきたシートPは、排紙カセット171又は排紙トレイ172に送られる。
【0029】
制御装置50は、搬送装置20及び画像形成装置1の各種の制御を行うコンピュータである。なお、制御装置50の物理的な配置場所は特に限定されない。画像形成装置1の所定箇所に制御装置50が配置されていてもよいし、通信によって離れた場所から画像形成装置1を制御する構成としてもよい。
【0030】
操作装置53は、タッチパネルディスプレイやボタン等によって構成される。操作装置53は、画像形成装置1に配置されていてもよいし、外部のコンピュータであってもよい。操作装置53は、制御装置50に電気的に接続されており、該操作装置53を通じて印刷開始の指示や画像形成する対象のシートPの種類を設定可能になっている。
【0031】
以上、画像形成装置1の全体的な構成について説明したが、画像形成装置1の構成は、適宜変更することができる。例えば、複数枚のシートPを綴じる処理を行う後処理装置を排紙部17に配置する等、他の機能部を適宜追加してもよい。また、プレコート部12、乾燥部14、冷却部15、反転部16等の構成の一部を省略してもよい。
【0032】
次に、画像形成部13に配置される搬送装置20について説明する。図3は、第1の実施の形態の搬送装置20の構成を示す模式図である。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態の搬送装置20は、上述の渡し胴131にシートPを送る構成として、ローラ搬送部21と、固定ガイド部215と、調整機構22と、を備える。
【0034】
ローラ搬送部21は、対向配置される2個のローラ211,212からなるローラ対である。2個のローラ211,212のうち、一方が駆動ローラであり、他方が駆動ローラに対して押圧される従動ローラである。ローラ搬送部21のローラ211,212の回転よってシートPが搬送方向下流側に送られる。
【0035】
固定ガイド部215は、間隔をあけて配置される下側ガイド部216と上側ガイド部217を備える。ローラ搬送部21によって送り出されるシートPは、下側ガイド部216のシート搬送面219に沿って搬送方向下流側に送られる。本実施の形態におけるシート搬送面219は、水平方向に沿った面である。シートPは、下側ガイド部216と上側ガイド部217の間の隙間を通過し、渡し胴131のグリッパ30に受け渡される受渡し位置100まで搬送される。なお、シート搬送面219は、下側ガイド部216によって搬送されるシートPのシート搬送方向に沿って形成される仮想的な面であってシート面200と重なる概念であり、下側ガイド部216の上面の範囲に限定されるわけではない。
【0036】
調整機構22は、固定ガイド部215の搬送方向下流側であって受渡し位置100に配置される。調整機構22は、高さ方向に移動可能な可動ガイド部220と、可動ガイド部220を昇降させる移動機構35と、を備える。
【0037】
可動ガイド部220は、固定ガイド部215とは別体である。可動ガイド部220には、グリッパ30の爪部33の位置に対応するガイド溝221が形成される。シートPの把持は、グリッパ30の爪部33がガイド溝221に潜り込んだ状態で行われる。ガイド溝221の形状は、図2においても示されている。
【0038】
移動機構35は、ギアやスライド部材等の機械的機構によって構成される。本実施の形態の移動機構35は、可動ガイド部220を高さ方向に移動させる駆動部としてモータ36を備え、該モータ36の駆動量によって可動ガイド部220の移動量が決定する。モータ36は、制御装置50から送信される制御信号によって駆動制御される。
【0039】
制御装置50によるモータ36の駆動制御について説明する。制御装置50は、画像形成や搬送タイミング等の各種の処理を実行する制御部51と、シートPに形成する画像情報やシートPの種類等の各種の情報を記憶する記憶部52と、備える。モータ36の駆動制御は、画像を形成する対象のシートPの厚さを示す厚さ情報に基づいて行われる。
【0040】
シートPの厚さ情報は、シートPの種類ごとに設定されたテーブルであってもよいし、ユーザの入力によって設定されてもよい。制御部51は、操作装置53から入力される厚さ情報に基づいてモータ36の駆動量を決定し、可動ガイド部220の高さを調整する。なお、調整機構22による高さの調整は、シート面200に対する垂直方向を成分として含む位置の調整である。即ち、調整機構22は、少なくともシート面200に対して交差する方向にシートPの先端の位置を調整できる構成であればよく、シートPの先端位置をシート面200に対して斜め方向に移動させる構成であってもよい。
【0041】
可動ガイド部220の移動について説明する。図4は、第1の実施の形態の調整機構22の調整位置の設定の様子を示す模式図である。図4に示すように、本実施の形態の可動ガイド部220は、搬送方向上流側の上面が斜面222となっており、搬送方向下流側の上面が水平方向に沿う水平面223となっている。斜面222は、搬送方向下流側に向かうに従って上昇するように傾斜している。
【0042】
位置調整前の待機位置では、可動ガイド部220の水平面223が爪台32と爪部33に挟まれる空間よりも下側に位置する。この待機位置は、可動ガイド部220の可動範囲を考慮して設定される。下側ガイド部216の下面218における搬送方向下流側の端部と、可動ガイド部220の斜面222と、の間の隙間sが調整代となっている。隙間sは、可動ガイド部220の最大上昇時に該可動ガイド部220と下側ガイド部216が衝突しない大きさに設定されている。
【0043】
制御部51は、設定されたシートPの厚さ情報に基づいた駆動量でモータ36を駆動し、可動ガイド部220を待機位置から調整位置に高さ方向で移動させる。この高さ方向は、シートPが把持位置にある状態においてシート面200に直交する方向でもある。
【0044】
上述のように、可動ガイド部220に形成されるガイド溝221により、爪部33が干渉することなく、一点鎖線で示す調整位置に到達する。調整位置において、可動ガイド部220の水平面223と爪台32の間の間隔d1が、爪台32と爪部33の間の間隔d2よりも狭い状態となる。これにより、爪台32と爪部33の間のシートPの進入できる高さ方向の範囲が狭められる。
【0045】
次に、受渡し位置100におけるシートPの挙動について説明する。図5は、第1の実施の形態の調整機構22によるシートPの位置調整の様子を示す模式図である。固定ガイド部215をローラ搬送部210によって搬送されてきたシートPは、爪部33よりも上方に位置する可動ガイド部220に案内されながら爪台32と爪部33の間の奥側に進む。シートPの厚さtに応じて爪台32と爪部33の間のシートPの進入できる高さ方向の範囲が狭められているので、受渡し位置100に到達したシートPの先端がバタつくことなく適切な位置に案内される。この状態でグリッパ30によってシートPの先端が挟持される。
【0046】
以上説明したように、第1の実施の形態の搬送装置20は、ローラ搬送部(搬送部)21と、固定ガイド部(ガイド部)215と、渡し胴(搬送回転体)131と、該渡し胴131に配置されるグリッパ(把持部)30と、調整機構22と、を備える。調整機構22は、シートPの先端が進入するグリッパ30のシート進入範囲(間隔d1)をシート面200に交差する方向で調整することにより、シート面200に交差する方向で、ローラ搬送部21の搬送によってグリッパ30に進入するシートPの先端の位置を調整可能に構成される。
【0047】
この構成により、シートPの厚さtに応じて該シートPの進入できる範囲が高さ方向(シート面200に交差する方向)に調整されるので、適切な導入位置でシートPが爪台32と爪部33の間に進入し、シートPのバタつきが抑制される。シートPの位置が適切に維持された状態で爪台32と爪部33の挟み込みが行われるので、ローラ搬送から把持搬送への受渡し時に生じる不具合の発生を効果的に抑制できる。また、シート進入範囲が当該シートPの厚さに応じたものとなるので、シートPの厚さtによって爪台32と爪部33がシートPを挟み込むタイミングも一定となり、爪台32と爪部33の把持動作をよりスムーズに行うことができる。
【0048】
また、本実施の形態の調整機構22は、シート搬送面219に直交する方向で移動する可動ガイド部220を有し、可動ガイド部220を移動することにより、グリッパ30のシート進入範囲を調整し、シートPの先端を位置調整する。この構成により、可動ガイド部220の昇降によってシート進入範囲を当該シートPの厚さに応じて正確に調整できる。
【0049】
また、本実施の形態の搬送装置20は、調整機構22を駆動してシートPの導入位置を調整するモータ(駆動部)36と、シートPの厚さtを示す厚さ情報に基づいてモータ36の駆動量を制御する制御部51と、を備える。この構成により、容易な操作により、シートPの厚さtに応じて自動的に爪台32と爪部33の間のシート進入範囲(間隔d1)を適切に設定できる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、可動ガイド部220が、高さ方向に移動する構成となっているが、高さ方向に対して斜めに移動する構成としてもよい。また、上記実施の形態では、固定ガイド部215と可動ガイド部220が別体の構成となっているが、この構成に限定されない。固定ガイド部215と可動ガイド部220を一体的な部材として構成することもできる。即ち、下ガイド部を持ち上げてシートPの先端の位置調整を行う調整機構としてもよい。
【0051】
次に、上記実施の形態とは、調整機構の構成が異なる実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上記実施の形態と共通又は同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0052】
図6は、第2の実施の形態の調整機構225によるシートPの位置調整の様子を示す模式図である。図6に示す調整機構225は、受渡し位置100のグリッパ30に対向する位置で、フレーム(図示省略)によって回転可能に支持される略丸棒状の部材である。調整回転体230の回転軸231は偏芯しており、回転軸231を中心として旋回する構成となっている。また、第2の実施の形態では、固定ガイド部250が有する下側ガイド部251のシート搬送面255の搬送方向下流側に斜面252が形成される。なお、第2の実施の形態のシート搬送面255は、下側ガイド部251の斜面252を除いた一部分により形成されるシート搬送方向に沿った面である。
【0053】
調整回転体230は、爪部33に干渉しない形状に構成される。第2の実施の形態の調整回転体230の周面には爪部33との干渉を避けるための溝(図示省略)が形成される。該溝の深さは、調整回転体230の旋回軌跡に基づいて設定される。これにより、調整回転体230の接触部位232が、爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を狭める位置に移動可能になっている。
【0054】
調整回転体230の回転軸231は偏芯しているので、調整回転体230のシートPの接触部位232の高さ(シート搬送面219に直交する方向の位置)が回転角度(位相)によって異なることになる。第2の実施の形態では、このシートPの厚さtに応じて回転角度を調整することにより、爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を設定する。
【0055】
一点鎖線で示す位置に待機する調整回転体230は、駆動部としてのモータ(図示省略)に機械的に接続されており、モータの回転によって実線で示す位置に回転移動する。第2の実施の形態においても、シートPの導入位置を調整するための調整回転体230の移動は自動で行われる。シートPの厚さtに応じて設定された回転角度で調整回転体230の位置が保持されるようにモータの駆動量が制御部51によって制御される。
【0056】
図7は、第3の実施の形態の調整機構325によるシートPの位置調整の様子を示す模式図である。第3の実施の形態では、第2の実施の形態の調整回転体230とは異なる構成の調整回転体330により、爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を設定する。なお、固定ガイド部250が有する下側ガイド部251は第2の実施の形態と同様の構成である。
【0057】
調整回転体330は、受渡し位置100のグリッパ30に対向する位置で、フレーム(図示省略)によって回転可能に支持される角棒状の部材である。また、該調整回転体330にも、第2の実施の形態と同様に、爪部33との干渉を避ける溝(図示省略)が形成される。なお、調整回転体330の回転軸331は、偏芯していてもよいし、中心にあってもよい。
【0058】
第3の実施の形態では、調整回転体330は、その軸方向に直交する断面が長方形に形成されており、シートPに接触する部位の高さ(シート搬送面219に直交する方向の位置)が回転角度(位相)によって異なる。
【0059】
図7において、一点鎖線で示す位置の調整回転体330は、長辺部333が水平方向に沿う状態となっており、実線で示す位置では短辺部334が水平方向に沿う状態となる。シートPの厚さtに応じて爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を狭める場合は、一点鎖線で示す位置から実線で示す位置の方向に調整回転体330を回転させる。第3の実施の形態においても、回転軸331がモータ(図示省略)に機械的に接続されており、制御部51により、モータの回転角度が制御される。
【0060】
なお、調整回転体330の回転角度は、90度単位に限定されるわけではなく、角部を利用して爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を調整してもよい。また、長方形に限らず、三角形や五角形等の多角形で調整回転体330を構成してもよい。
【0061】
以上説明した第2の実施の形態及び第3の実施の形態の何れにおいても、調整機構225,325は、回転角度によってシート搬送面219に直交する方向の位置が変化する調整回転体230,330を有する。調整機構225,325は、調整回転体230,330の回転角度を変更することにより、爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を調整し、シートPの先端を位置調整する。このように、調整回転体230,330の回転によって爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を調整できるようにすることで、シンプルな構成で第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
図8は、第4の実施の形態の調整機構425によるシートPの位置調整の様子を示す模式図である。図8に示す第4の実施の調整機構425は、グリッパ430に配置される点が上記実施の形態と異なっている。なお、固定ガイド部250が有する下側ガイド部251は第2の実施の形態と同様の構成である。
【0063】
第4の実施の形態では、グリッパ430は、渡し胴131側に配置され、シート搬送面219に直交する方向で移動可能な爪台432と、爪台432に対向配置される開閉可能な爪部33を有する。そして、調整機構425は、爪台432を移動することにより、爪台32と爪部33の間のシート進入範囲を調整し、シートPの先端を位置調整する。
【0064】
爪台432は、モータやアクチュエータ等の駆動部により、移動する。爪台432の移動量は、制御部51からの制御信号に基づいてシートPの厚さtに応じて調整される。この第4の実施の形態においても、爪台432の移動によって該爪台432と爪部33の間のシート進入範囲を調整でき、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0066】
上記の実施の形態では、操作装置53に設定された厚さ情報に基づいて制御部51が調整機構22,225,325,425を制御する構成であるが、この構成に限定されない。画像形成装置にシートPの厚さを検知する検知部を設け、該検知部の検知信号に基づいて自動で位置調整を行う構成としてもよい。この構成では、シートPの種類が変わるタイミングで調整機構の調整位置が変更される。
【0067】
上記の実施の形態では、何れも制御部51の制御信号に基づいて爪台32(爪台432)と爪部33の間のシート進入範囲が電気的に調整される構成であるが、この構成に限定されない。制御部51による電気的な制御を省略し、工具やレバー等の操作部材を用いて調整機構の位置調整を行う構成としてもよい。
【0068】
上記の実施の形態では、液体吐出ヘッド135とシートPが相対的に移動するインクジェット式の画像形成装置を例として説明したが、液体吐出ヘッド135とシートPとの相対的な移動の構成は特に限定されない。例えば、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置や液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等のシートPの搬送にも本発明を適用することができる。
【0069】
更に、本発明の搬送装置は、画像形成装置の適用に限定されるわけではなく、シートを搬送する種々の装置に適用できる。また、搬送対象のシートは、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的でも付着可能なものであればよく、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品等に使用されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
13 画像形成部
20 搬送装置
21 ローラ搬送部(搬送部)
22,225,325,425 調整機構
30,430 グリッパ(把持部)
32,432 爪台
33 爪部
131 渡し胴(搬送回転体)
200 シート面
215 ガイド部
219,255 シート搬送面
220 可動ガイド部
230,330 調整回転体
P シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【文献】特開平5-188795号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8