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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
E03D9/08 B
E03D9/08 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019217489
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085309
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】矢岡 寿成
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一磨
(72)【発明者】
【氏名】松本 勘
(72)【発明者】
【氏名】田代 啓介
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0038661(KR,A)
【文献】特開2019-027013(JP,A)
【文献】特開2008-038475(JP,A)
【文献】特開2010-084335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0269247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の内部に進出した状態で使用者の局部に向けて水を吐出する局部洗浄ノズルと、
前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で前記局部洗浄ノズルの全体を収納可能なノズル収納部を有するケーシングと、
前記局部洗浄ノズルおよび前記ノズル収納部に供給される除菌水を生成する除菌水生成部と、
前記ノズル収納部の内部に向けて除菌作用を有する除菌光を照射する照光部と、
を備え、
前記照光部は、前記ノズル収納部の内部に供給される前記除菌水が残留する残水発生部に向けて除菌光を照射し、
前記残水発生部は、前記ノズル収納部の底部の前端側を含んでいることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
便器の内部に進出した状態で使用者の局部に向けて水を吐出する局部洗浄ノズルと、
前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で前記局部洗浄ノズルの全体を収納可能なノズル収納部を有するケーシングと、
前記局部洗浄ノズルおよび前記ノズル収納部に供給される除菌水を生成する除菌水生成部と、
前記ノズル収納部の内部に向けて除菌作用を有する除菌光を照射する照光部と、
を備え、
前記照光部は、前記ノズル収納部の内部に供給される前記除菌水が残留する残水発生部に向けて除菌光を照射し、
前記照光部は、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で少なくとも一部が前記局部洗浄ノズルの前面よりも前方に配設されていることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記除菌水生成部は、前記局部洗浄ノズルの吐水口に向けて前記除菌水を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記局部洗浄ノズルに向けて前記除菌水を吐出する吐水部を備え、
前記除菌水生成部は、前記吐水部に向けて前記除菌水を供給することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズル収納部は、前端に設けられた開口を開閉可能なノズル蓋を有し、
前記残水発生部は、前記ノズル蓋の内面の下端側を含んでいることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記照光部は、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で少なくとも一部が前記局部洗浄ノズルの前面の中心よりも下方に配設されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記照光部は、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で少なくとも一部が前記局部洗浄ノズルの前面の下端よりも上方に配設されていることを特徴とする請求項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記照光部は、前記ノズル収納部の左右方向の一側に配設され、左右方向の他側に向けて除菌光を照射することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
前記ノズル収納部は、前記他側に除菌光を反射させる反射材を有し、
前記照光部は、除菌光を前記反射材に反射させて残水発生部に照射することを特徴とする請求項に記載の衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、局部洗浄ノズルを備えた衛生洗浄装置が開示されている。この衛生洗浄装置では、局部洗浄ノズルに付着した汚れを除去するために、局部洗浄ノズルに向けて除菌水(殺菌水)を噴射するとともに、除菌作用を有する除菌光(紫外光)を照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-83141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
局部洗浄ノズルに向けて噴射された除菌水は、局部洗浄ノズルが収納されるノズル収納部に広がる。噴射された除菌水は、時間経過とともに除菌成分の濃度が低下する。除菌効果が低下した除菌水が残留した箇所は、水分の影響により菌やカビが発生しやすくなる虞がある。
したがって、ノズル収納部に除菌水が残留した場合、これらの箇所にも除菌光を照射して、菌やカビの発生を抑制することが望ましい。
しかし、除菌光は基本的に直進するため、ノズル収納部内の広範囲に照射することは、難しい。ノズル収納部内の広範囲に除菌光を照射するには、多数の光源や反射材を設ける必要があるので、ケーシングが大型化したり、コストが増加したりする虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、除菌水と除菌光とによりノズル収納部の清潔状態を効率よく保つことができる衛生洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、便器の内部に進出した状態で使用者の局部に向けて水を吐出する局部洗浄ノズルと、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で前記局部洗浄ノズルの全体を収納可能なノズル収納部を有するケーシングと、前記局部洗浄ノズルおよび前記ノズル収納部に供給される除菌水を生成する除菌水生成部と、前記ノズル収納部の内部に向けて除菌作用を有する除菌光を照射する照光部と、を備え、前記照光部は、前記ノズル収納部の内部に供給される前記除菌水が残留する残水発生部に向けて除菌光を照射することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0007】
この衛生洗浄装置によれば、除菌水により、局部洗浄ノズルとノズル収納部とを洗浄、除菌できる。すなわち、除菌水により、局部洗浄ノズルとノズル収納部の内部との広範囲を除菌できる。また、照光部は、ノズル収納部の内部に残留した残水発生部に向けて除菌光を照射して除菌する。すなわち、照光部は、菌やカビが発生しやすい残水発生部に向けて除菌光を照射する。従って、光源や反射材などを多数設けなくても、除菌水と除菌光とを用いて効率よく局部洗浄ノズルとノズル収納部との清潔状態を保つことができるとともに、ケーシングが大型化するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、除菌水と除菌光とによりノズル収納部の清潔状態を効率よく保つことができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視図である。
図2】衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
図3】局部洗浄ノズルがケーシング内に後退した状態を表す断面図である。
図4】局部洗浄ノズルがケーシング内から進出した状態を表す断面図である。
図5図3中の局部洗浄ノズルの前端側を拡大して局部洗浄ノズルの内筒を表す断面図である。
図6】局部洗浄ノズル周辺を表す平面図である。
図7図7(a)~図7(c)は、除菌水により除菌される局部洗浄ノズルとノズル収納部との範囲を表す説明図である。
図8図8(a)、図8(b)は、ノズル収納部に残留する除菌水の残水発生部と残水発生部に照射される除菌光との一例を表す説明図である。
図9図9(a)、図9(b)は、第1変形例によるノズル収納部のノズル蓋に残留する除菌水の残水発生部と残水発生部に照射される除菌光との一例を表す説明図である。
図10図10(a)、図10(b)は、第2変形例による照光部を局部洗浄ノズルの上方に設けた場合を表す説明図である。
図11図11(a)~図11(c)は、第3変形例による照光部とは左右方向の反対側に除菌光を反射させる反射材を設けた説明図である。
図12図12(a)、図12(b)は、第4変形例による局部洗浄ノズルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視図である。
図1に表したように、トイレ装置は、腰掛大便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、便器800の上部に設けられる衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0011】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者の便座200への着座を検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部500(図2参照)を操作すると、局部洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を便器800の内部(ボウル801内)に進出させたり、ボウル801内から後退させたりすることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
【0012】
ノズル473は、人体局部に向けて水を吐出し、人体局部の洗浄を行う。ノズル473は、前後方向に摺動可能な外筒473aと、外筒473aの内部に設けられ前後方向に摺動可能な内筒473bと、を有している。すなわち、ノズル473は、外筒473aと内筒473bとが前後方向に進後退する二段ノズルとなっている。ノズル473の内筒473bの先端部には、ビデ洗浄吐水口474aおよびおしり洗浄吐水口474bが設けられている。ノズル473は、その先端に設けられたビデ洗浄吐水口474aから水を噴射して、便座200に座った女性の女性局部を洗浄することができる。また、ノズル473は、その先端に設けられたおしり洗浄吐水口474bから水を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」を洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0013】
「おしり」を洗浄するモードのなかには、例えば、「おしり洗浄」と、「おしり洗浄」よりもソフトな水流で優しく洗浄する「やわらか洗浄」と、が含まれる。ノズル473は、例えば、「ビデ洗浄」と、「おしり洗浄」と、「やわらか洗浄」と、を実行することができる。
【0014】
なお、図1に表したノズル473では、ビデ洗浄吐水口474aがおしり洗浄吐水口474bよりもノズル473の先端側に設けられているが、ビデ洗浄吐水口474aおよびおしり洗浄吐水口474bの設置位置は、これだけに限定されるわけではない。ビデ洗浄吐水口474aは、おしり洗浄吐水口474bよりもノズル473の後端側に設けられていてもよい。また、図1に表したノズル473では、2つの吐水口が設けられているが、3つ以上の吐水口が設けられていてもよい。
【0015】
図2は、衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
図2では、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
図2に表したように、衛生洗浄装置100は、導水部20を有する。導水部20は、水道や貯水タンクなどの給水源10からノズル473に至る管路20aを有する。導水部20は、管路20aにより、給水源10から供給された水をノズル473に導く。管路20aは、例えば以下に説明する電磁弁431、熱交換器ユニット440、流路切替部472などの各部と、これらの各部を接続する複数の配管と、によって形成される。
【0016】
導水部20の上流側には、電磁弁431が設けられている。電磁弁431は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて水の供給を制御する。換言すれば、電磁弁431は、管路20aを開閉する。電磁弁431を開状態にすることにより、給水源10から供給された水が、管路20aに流れる。
【0017】
電磁弁431の下流には、調圧弁432が設けられている。調圧弁432は、給水圧が高い場合に、管路20a内の圧力を所定の圧力範囲に調整する。調圧弁432の下流には、逆止弁433が設けられている。逆止弁433は、管路20a内の圧力が低下した場合などに、逆止弁433よりも上流側への水の逆流を抑制する。
【0018】
逆止弁433の下流には、熱交換器ユニット440(加熱部)が設けられている。熱交換器ユニット440は、ヒータを有し、給水源10から供給された水を加熱して例えば規定の温度まで昇温する。すなわち、熱交換器ユニット440は、温水を生成する。
【0019】
熱交換器ユニット440は、例えばセラミックヒータなどを用いた瞬間加熱式(瞬間式)の熱交換器である。瞬間加熱式の熱交換器は、貯湯タンクを用いた貯湯加熱式の熱交換器と比較すると、短い時間で水を規定の温度まで昇温させることができる。なお、熱交換器ユニット440は、瞬間加熱式の熱交換器には限定されず、貯湯加熱式の熱交換器であってもよい。また、加熱部は、熱交換器に限ることなく、例えばマイクロ波加熱を利用するものなど、他の加熱方式を用いたものでもよい。
【0020】
熱交換器ユニット440は、制御部405と接続されている。制御部405は、例えば、使用者による操作部500の操作に応じて熱交換器ユニット440を制御することにより、操作部500で設定された温度に水を昇温する。
【0021】
熱交換器ユニット440の下流には、流量センサ442が設けられている。流量センサ442は、熱交換器ユニット440から吐出された水の流量を検知する。すなわち、流量センサ442は、管路20a内を流れる水の流量を検知する。流量センサ442は、制御部405に接続されている。流量センサ442は、流量の検知結果を制御部405に入力する。
【0022】
流量センサ442の下流には、電解槽ユニット450が設けられている。電解槽ユニット450は、内部を流れる水道水を電気分解することにより、水道水から次亜塩素酸を含む液(機能水)を生成する。電解槽ユニット450は、制御部405に接続されている。電解槽ユニット450は、本発明の除菌水生成部を構成するもので、制御部405による制御に基づいて、除菌水(機能水)の生成を行う。
【0023】
電解槽ユニット450において生成される機能水は、例えば銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む溶液であってもよい。また、電解槽ユニット450において生成される機能水は、電解塩素やオゾンなどを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される機能水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。電解槽ユニット450は、ノズル473のビデ洗浄吐水口474aやおしり洗浄吐水口474b、およびノズル洗浄部478の吐水部478aに除菌水(機能水)を供給する。
【0024】
電解槽ユニット450の下流には、バキュームブレーカ(VB)452が設けられている。バキュームブレーカ452は、例えば水を流すための流路と、流路内に空気を取り込むための吸気口と、吸気口を開閉する弁機構と、を有する。弁機構は、例えば流路に水が流れているときに吸気口を塞ぎ、水の流れの停止とともに吸気口を開放して流路内に空気を取り込む。すなわち、バキュームブレーカ452は、導水部20に水の流れがないときに、管路20a内に空気を取り込む。弁機構には、例えばフロート弁が用いられる。
【0025】
バキュームブレーカ452は、上記のように管路20a内に空気を取り込むことにより、例えば管路20aのバキュームブレーカ452よりも下流の部分の水抜きを促進させる。バキュームブレーカ452は、例えばノズル473の水抜きを促進する。このように、バキュームブレーカ452は、ノズル473内の水を抜いてノズル473内に空気を取り込むことにより、例えばノズル473内の洗浄水やボウル801内に溜まった汚水などが、給水源10(上水)側に逆流してしまうことを抑制する。
【0026】
バキュームブレーカ452の下流には、圧力変調部454が設けられている。圧力変調部454は、導水部20の管路20a内の水の流れに脈動または加速を与え、ノズル473のビデ洗浄吐水口474aおよびおしり洗浄吐水口474bやノズル洗浄部478の吐水部478aから吐水される水に脈動を与える。すなわち、圧力変調部454は、管路20a内を流れる水の流動状態を変動させる。圧力変調部454は、制御部405に接続されている。圧力変調部454は、制御部405による制御に基づいて、水の流動状態を変動させる。圧力変調部454は、管路20a内の水の圧力を変動させる。
【0027】
圧力変調部454の下流には、流量調整部471が設けられている。流量調整部471は、水勢(流量)の調整を行う。流量調整部471の下流には、流路切替部472が設けられている。流路切替部472は、ノズル473やノズル洗浄部478への給水の開閉や切替を行う。流量調整部471および流路切替部472は、1つのユニットとして設けてもよい。流量調整部471及び流路切替部472は、制御部405に接続されている。流量調整部471および流路切替部472の動作は、制御部405によって制御される。
【0028】
流路切替部472の下流には、ノズル473、ノズル洗浄部478、および噴霧ノズル479が設けられている。ノズル473は、ノズルモータ476からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり、ボウル801内から後退したりする。つまり、ノズルモータ476は、制御部405からの指令に基づいてノズル473を進退させる駆動装置である。
【0029】
ノズル洗浄部478は、吐水部478aから除菌水(機能水)を噴射することにより、ノズル473の内筒473bの外周面(胴体)を洗浄および除菌する。なお、ノズル洗浄部478は、吐水部478aから水を噴射することにより、ノズル473の内筒473bの外周表面(胴体)を洗浄してもよい。また、ノズル洗浄部478は、ノズル473の外筒473aの外周面を洗浄および除菌してもよい。噴霧ノズル479は、水や機能水をミスト状にしてボウル801に噴霧する。この例では、人体を洗浄するためのノズル473とは別に噴霧ノズル479を設けている。これに限ることなく、ミスト状の液体をボウル801に噴霧するための吐水口をノズル473に設けてもよい。
【0030】
また、流路切替部472の下流には、おしり洗浄流路21と、やわらか洗浄流路22と、ビデ洗浄流路23と、が設けられている。おしり洗浄流路21およびやわらか洗浄流路22は、導水部20を介して給水源10から供給された水や電解槽ユニット450において生成された機能水をおしり洗浄吐水口474bへ導く。ビデ洗浄流路23は、導水部20を介して給水源10から供給された水や電解槽ユニット450において生成された機能水をビデ洗浄吐水口474aへ導く。
【0031】
また、流路切替部472の下流には、表面洗浄流路24と、噴霧用流路25と、が設けられている。表面洗浄流路24は、導水部20を介して給水源10から供給された水や電解槽ユニット450において生成された機能水をノズル洗浄部478の吐水部478aへ導く。噴霧用流路25は、導水部20を介して給水源10から供給される水や電解槽ユニット450において生成された機能水を噴霧ノズル479に導く。
【0032】
制御部405は、流路切替部472を制御することにより、おしり洗浄流路21、やわらか洗浄流路22、ビデ洗浄流路23、表面洗浄流路24と、および噴霧用流路25の各流路の開閉を切り替える。このように、流路切替部472は、ビデ洗浄吐水口474a、おしり洗浄吐水口474b、ノズル洗浄部478、および噴霧ノズル479などの複数の吐水口のそれぞれについて、管路20aに連通させた状態と、管路20aに連通させない状態と、を切り替える。
【0033】
制御部405は、電源回路401から電力を供給され、人体検知センサ403や、着座検知センサ404や、流量センサ442や、操作部500などからの信号に基づいて、電磁弁431や、熱交換器ユニット440や、電解槽ユニット450や、圧力変調部454や、流量調整部471や、流路切替部472や、ノズルモータ476などの動作を制御する。
【0034】
また、制御部405は、例えば人体検知センサ403や着座検知センサ404の検知情報に基づいて、照光部600を制御する。照光部600は、ノズル473の周辺(後述のノズル収納部480など)に除菌作用を有する光である除菌光を照射する。照光部600については、後述する。
【0035】
人体検知センサ403は、図1に表したように、ケーシング400の上面に形成された凹設部409に埋め込まれるように設けられ、便座200に近づいた使用者(人体)を検知する。換言すれば、人体検知センサ403は、衛生洗浄装置100の近傍にいる使用者を検知する。また、便蓋300の後部には透過窓310が設けられている。そのため、便蓋300が閉じた状態において、人体検知センサ403は、透過窓310を介して使用者の存在を検知することができる。制御部405は、例えば人体検知センサ403による使用者の検知に応答して、便蓋300を自動的に開く。
【0036】
また、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、ケーシング400の側面には、脱臭ユニットからの排気口407および室内暖房ユニットからの排出口408が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0037】
図3は、局部洗浄ノズルがケーシング内に後退した状態を表す断面図である。
図4は、局部洗浄ノズルがケーシング内から進出した状態を表す断面図である。
図5は、図3中の局部洗浄ノズルの前端側を拡大して局部洗浄ノズルの内筒を表す断面図である。
図6は、局部洗浄ノズル周辺を表す平面図である。
図7(a)~図7(c)は、除菌水により除菌される局部洗浄ノズルとノズル収納部との範囲を表す説明図である。図7(a)は、局部洗浄ノズルとノズル収納部とを正面からみた正面図である。図7(a)では、ノズル蓋を省略して表している。図7(b)は、局部洗浄ノズルとノズル収納部とを側方からみた断面図である。図7(c)は、ノズル蓋の内面側を表す背面図である。
図8(a)、図8(b)は、ノズル収納部に残留する除菌水の残水発生部と残水発生部に照射される除菌光との一例を表す説明図である。図8(a)は、局部洗浄ノズルとノズル収納部とを正面からみた正面図である。図8(a)では、ノズル蓋を省略して表している。図8(b)は、局部洗浄ノズルとノズル収納部とを側方からみた断面図である。図8(b)では、説明の便宜上、吐水部478aの先端側を省略している。
【0038】
図3図5に表したように、ケーシング400は、ノズル473を後退させた状態において、ノズル473の全体を収納可能なノズル収納部480を有する。すなわち、ノズル収納部480は、ケーシング400の内部のうち、ノズル473が収納される部分である。
【0039】
ノズル収納部480は、ケーシング400の底面を構成するケースプレート400aのうち、ノズル473の下方に位置する底部481と、ノズル収納部480の前端に設けられた開口482を開閉可能なノズル蓋483と、を有する。なお、ノズル蓋483は、設けていなくてもよい。ノズル収納部480は、上方がケースカバー400bにより覆われている。ノズル収納部480には、ノズル473を進退可能に支持するノズル支持部484が設けられている。
【0040】
ノズル収納部480は、ノズル洗浄部478の吐水部478aから吐出される除菌水と、後述の照光部600から照射される除菌光と、により除菌される。除菌水は、ノズル収納部480の内部に供給される(流れる)ことにより、ノズル収納部480の内部を洗浄および除菌する。図7中に示す格子状のハッチングのように、除菌水範囲S1は、ノズル473の外周表面(胴体)に加えて、ノズル収納部480の底部481やノズル蓋483の内面483aなどの広い範囲となっている。
【0041】
底部481は、便器800のボウル801内に向けて傾斜している。これにより、除菌水は、底部481の前端481aから便器800のボウル801内に流れ落ちる。この場合、除菌水は、例えばノズル収納部480の材質、形状、および除菌水の表面張力などにより、ノズル収納部480の内部に残留する場合がある。
【0042】
例えば、底部481の前端481a側は、表面張力により除菌水が便器800の内部に落下せずに残留しやすい。ノズル収納部480に残留した除菌水は、時間経過とともに濃度減衰が進行する。従って、除菌水が残留した残水発生部では、菌やカビが発生しやすい環境となる。この場合、残水発生部は、例えば除菌水が流れる範囲(流路)を特定して、所定期間にわたって放置したときの菌やカビの発生具合を確認することにより特定することができる。本実施形態では、ノズル収納部480の底部481の前端481a側を除菌水が残留しやすい残水発生部S2としている。図8では、底部481の前端481a側の全体を残水発生部S2としているが、底部481の前端481a側の一部を残水発生部S2としてもよい。この残水発生部S2には、後述の照光部600から除菌光が照射される。
【0043】
ノズル支持部484は、ノズル473の下方においてノズル473を支持する。ノズル支持部484は、後方から前方に向かう方向において、下方に傾斜している。ノズル473は、ノズル支持部484に対して摺動しながら、進出および後退する。ノズル収納部480には、例えばノズル473を収納する筒状の部材が設けられてもよい。
【0044】
ノズル洗浄部478は、ノズル支持部484の前端に取り付けられている。図3図4に表したように、ノズル洗浄部478は、除菌水や水を吐水する吐水穴が形成された吐水部478aと、その支持体478bと、を含む。ノズル収納部480の前端には、開口482が設けられている。開口482は、ケーシング400の前面の下側に設けられている。ノズル洗浄部478は、開口482の後方に位置する。ノズル洗浄部478は、例えばノズル473が進退する際に、吐水部478aから除菌水や水を噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を洗浄する。
【0045】
ノズル蓋483は、ノズル473の前方に設けられている。ノズル蓋483は、ケーシング400のケースカバー400bに軸支され、ケースカバー400bの前面のうち、ノズル収納部480の前端に設けられた開口482に対して開閉可能に設けられる。ノズル蓋483は、図4に表すように、ノズル473が進出した状態では開口482を開く開状態であり、図3に表すように、ノズル473の全体がノズル収納部480に収納された状態では開口482を閉じる閉状態である。例えば、ノズル蓋483が閉状態のとき、開口482は、ノズル蓋483により塞がれている。
【0046】
ノズル蓋483は、内面483aと、外面483bと、を有する。内面483aは、閉状態においてノズル収納部480の内部(ノズル473側)に位置する面である。外面483bは、内面483aとは反対側(便器800の内部側)に位置する面である。換言すれば、内面483aは、閉状態において後方側に位置する面であり、外面483bは、閉状態において前方側に位置する面である。
【0047】
ノズル473は、使用されていない状態では、図3図5に表すように、内筒473bが外筒473aの内部に位置した状態でノズル収納部480に収納されている。ノズル473によって局部洗浄が行われる場合、ノズル収納部480に対してノズル473が前下方に摺動する。ノズル473が前下方に摺動すると、ノズル473がノズル洗浄部478に接触して、ノズル洗浄部478の吐水部478aおよびノズル蓋483が上方に押し上げられる。例えば、ノズル473が所定の位置に到達するまでの間に、吐水部478aからの吐水によってノズル473が洗浄される。
【0048】
図4に表すように、ノズル473が所定の位置に到達すると、内筒473bが外筒473aから突出する。そして、内筒473bのビデ洗浄吐水口474aまたはおしり洗浄吐水口474bから使用者の局部に向けて水が吐出され、洗浄が行われる。局部洗浄が完了すると、ノズル473は、ノズル収納部480に向けて後上方に摺動する。例えば、ノズル473がノズル収納部480に収納されるまでの間に、吐水部478aから吐出される除菌水によって、ノズル473が洗浄および除菌される。この場合、吐水部478aから吐出される除菌水は、ノズル収納部480の底部481やノズル蓋483の内面483aに接触して、便器800の内部(ボウル801内)に流れ落ちる。従って、除菌水は、ノズル収納部480の内部も除菌する。
【0049】
照光部600は、ノズル収納部480の内部に向けて除菌作用を有する除菌光を照射する。図3に表したように、照光部600は、例えばケーシング400の内部に位置して、底部481上に設けられている。図5図6に表したように、この例では、照光部600は、ノズル支持部484の下方で左右方向の一側(左側)に配設され、左右方向の他側(右側)に向けて除菌光を照射している。なお、照光部600は、右側に配設されて左側に除菌光を照射してもよい。
【0050】
ここで、第1に、照光部600は、ノズル473を後退させた状態で少なくとも一部がノズル473の前面473cよりも前方に配設されている。すなわち、図5に表すように、照光部600は、ノズル473が前面473cが上端473dから下端473e向かって後方に傾斜しているので、その一部が前面473cの下端473eを通り上下方向に延びる仮想線A-Aよりも前方に配設されている。
【0051】
第2に、照光部600は、ノズル473を後退させた状態で少なくとも一部がノズル473の前面473cの中心Oよりも下方に配設されている。すなわち、図5に表すように、照光部600は、その一部が前面473cの中心Oを通り前後方向に延びる仮想線B-Bよりも下方に配設されている。
【0052】
第3に、照光部600は、ノズル473を後退させた状態で少なくとも一部がノズル473の前面473cの下端473eよりも上方に配設されている。すなわち、図5に表すように、照光部600は、その一部が前面473cの下端473eを通り前後方向に延びる仮想線C-Cよりも上方に配設されている。
【0053】
この第1~第3のいずれかを満たすことにより、照光部600を残水発生部S2の近くに配設させることができる。従って、照光部600は、残水発生部(例えば、残水発生部S2)への照射強度を高めることができ、残水発生部S2での菌やカビの発生を抑制できる。本実施形態では、前記第1~第3の全ての条件を満たした位置に、照光部600が配設されている。
【0054】
図8に表すように、照光部600は、ノズル収納部480の内部を流れる除菌水が残留する残水発生部S2に向けて除菌光を照射する。除菌光の照射により、残水発生部S2に付着した菌の少なくとも一部が死滅または不活性化して除菌される。この場合、照光部600は、例えば除菌光の指向方向を残水発生部S2に向ける。この指向方向は、除菌光の強度が最大となる方向とすることができる。このように、照光部600は、図8中の二点鎖線で示す照射範囲S3を有する除菌光の最大強度となる光軸L1を残水発生部S2に向けることにより、効果的に残水発生部の除菌を行うことができる。
【0055】
強度が最も大きい光軸L1は、例えば除菌光の照射幅の中心(指向角の中心軸)である。なお、照光部600の前方にレンズなどを設けた場合には、強度が最も大きい光軸が複数本となる場合がある。このような場合には、複数本の光軸のうちの少なくとも1つの光軸が残水発生部S2に向いていればよい。
【0056】
照光部600は、例えば発光素子620(発光体)を有する。発光素子620は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。発光素子620は、LEDに限ることなく、例えばLD(Laser Diode)やOLED(Organic Light Emitting Diode)などでもよい。発光素子620は、例えば冷陰極管や熱陰極管であってもよい。発光素子620により放射される除菌光の波長は、例えば、250nm~480nmである。
【0057】
発光素子620は、基板を介して制御部405に接続されており、制御部405の制御に基づいて点灯および消灯する。制御部405は、発光素子620の点灯および消灯を制御することで、照光部600の作動を制御する。また、制御部405は、発光素子620に印加する電圧を調整することで、発光素子620の放射強度を制御してもよい。
【0058】
本実施形態による衛生洗浄装置100は、上述の如き構成を有するもので、次に除菌水と除菌光とによるノズル473およびノズル収納部480の除菌について説明する。
【0059】
例えば、便座200に着座した使用者が操作部500(リモコン)を操作すると、ノズル473が所定の位置に到達する。その後、ビデ洗浄吐水口474aまたはおしり洗浄吐水口474bから使用者の局部に向けて水が吐出されることにより局部洗浄が行われる。局部洗浄が完了すると、ノズル473は、ノズル収納部480に向けて後上方に摺動する。
【0060】
そして、ノズル473がノズル収納部480に収納されるまでの間に、吐水部478aから吐出される除菌水がノズル473に供給されることにより、ノズル473の外周面が洗浄および除菌される。また、ノズル473が後退した後には、ノズル473のビデ洗浄吐水口474aやおしり洗浄吐水口474bから除菌水および水が吐出されることにより、ビデ洗浄吐水口474aやおしり洗浄吐水口474bを洗浄、除菌する(セルフクリーニング)。この場合、除菌水は、ノズル収納部480の内部を流れて、開口482から便器800の内部(ボウル801内)に流れ落ちる。従って、除菌水は、ノズル473に加えて、ノズル収納部480の内面、底部481、およびノズル蓋483の内面483aも除菌する。すなわち、図7中の除菌水範囲S1に表すように、除菌水は、ノズル473およびノズル収納部480の内部の広い範囲を除菌することができる。
【0061】
ノズル収納部480の内部に供給される除菌水は、そのほとんどが開口482から便器800のボウル801内に流れ落ちる。しかし、図8中の残水発生部S2に表すように、例えば除菌水の表面張力などにより、ノズル収納部480の底部481の前端481a側では除菌水が残留しやすい。残水発生部S2では、時間経過とともに濃度減衰が進行する。そうすると、残水発生部S2では、菌やカビが発生しやすい環境となってしまう。
【0062】
そこで、本実施形態では、照光部600は、残水発生部S2に向けて除菌光を照射する。照光部600は、所定の照射範囲S3をもった除菌光を残水発生部S2に照射する。照光部600は、好ましくは強度が最も大きい光軸L1(最大指向方向)を残水発生部S2に向けて照射する。強度が最も大きい光軸L1は、例えば除菌光の照射幅の中心(指向角の中心軸)である。これにより、照光部600は、残水発生部S2に強度の高い除菌光を照射することができるので、残水発生部S2で菌やカビが発生するのを抑制できる。なお、照光部600は、最大指向方向を残水発生部S2に向けていなくてもよく、除菌光の一部が残水発生部S2を照射していればよい。
【0063】
このように、除菌水は、ノズル収納部480の内部の広い範囲を除菌することができる。一方、除菌光は、除菌水の残水発生部S2に照射される。すなわち、除菌光は、除菌水により除菌される範囲よりも狭い範囲を除菌する。換言すると、除菌光は、除菌水の残水が原因で発生する可能性のある菌やカビの繁殖を抑制する。従って、照光部600や反射材などを多数設けなくても、除菌水と除菌光とを用いて効率よくノズル473とノズル収納部480との清潔状態を保つことができるとともに、部品点数を可及的に少なくすることができるので、ケーシング400が大型化するのを抑制できる。
【0064】
また、照光部600は、ノズル収納部480の開口482の側方に位置して、開口482を横切るように除菌光を照射している。従って、照光部600は、左右方向に延在する残水に効率よく除菌光を照射することができる。
【0065】
図9(a)、図9(b)は、第1変形例によるノズル収納部のノズル蓋に残留する除菌水の残水発生部と残水発生部に照射される除菌光との一例を表す説明図である。図9(a)は、ノズルとノズル収納部とを側方からみた断面図である。図9(b)は、ノズル蓋の内面側を表す背面図である。
【0066】
なお、上述した実施形態では、残水発生部S2をノズル収納部480の底部481の前端側として、この残水発生部S2に除菌光を照射した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、照光部600は、他の残水発生部に除菌光を照射してもよい。例えば、ノズル収納部480の内部に設けられるノズル洗浄部478に除菌光を照射してもよい。残水発生部は、ノズル収納部480およびノズル収納部480の内部の部品の材質、形状、および除菌水の流量などにより、実験、シミュレーションを行って決定することができる。
【0067】
また、例えば図9(a)、図9(b)に表す第1変形例のように、ノズル蓋483の内面483aの下端側を残水発生部S4(図9中の格子状のハッチング)としてもよい。図9では、ノズル蓋483の内面483aの下端側の全体を残水発生部S4としているが、ノズル蓋483の内面483aの下端側の一部を残水発生部としてもよい。
【0068】
そして、照光部600は、残水発生部S4に向けて二点鎖線で示す照射範囲S5を有する除菌光を照射することにより、残水発生部S4での菌やカビの発生を抑制できる。この場合、照光部600は、除菌光の最大指向方向を残水発生部S4に向けるのが好ましい。
【0069】
また、照光部600は、例えば除菌光の照射範囲内に複数の残水発生部(例えば、残水発生部S2と残水発生部S4)をいれてもよい。このような場合には、例えば実験、シミュレーションなどにより、菌やカビの繁殖が大きい残水発生部に除菌光の最大指向方向を向けて、他の残水発生部を除菌光の照射範囲内にいれることにより、ノズル収納部480の内部の菌やカビの発生を効果的に抑制できる。
【0070】
図10(a)、図10(b)は、第2変形例による照光部をノズルの上方に設けた場合を表す説明図である。図10(a)は、ノズルとノズル収納部とを側方からみた断面図である。図10(b)は、ノズルとノズル収納部とを上方からみた平面図である。
【0071】
上述した実施形態では、照光部600をノズル収納部480の左側方に配設した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図10(a)、図10(b)に表すように、ノズル473の上方に照光部650を配設してもよい。例えば、照光部650は、ケースカバー400bに設けることができる。照光部650は、ノズル473を後退させた状態で、少なくとも一部がノズル473の前面473cよりも前方に配設されているのが好ましい。また、照光部650は、ノズル473を後退させた状態で、少なくとも一部がノズル473の前面473cの下端473eよりも上方に配設されているのが好ましい。これにより、残水発生部に向けて除菌光を効率よく照射させることができる。
【0072】
図11(a)、図11(b)は、第3変形例による照光部とは左右方向の反対側に除菌光を反射させる反射材を設けた説明図である。図11(a)は、ノズルとノズル収納部とを上方からみた平面図である。図11(b)は、ノズルとノズル収納部とを前方からみた正面図である。図11(b)では、ノズル蓋を省略している。図11(c)は、ノズル蓋の内面側を表す背面図である。
【0073】
上述した実施形態では、照光部600から残水発生部S2に向けて直接除菌光を照射した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11(a)~図11(c)に表す第3変形例のように、ノズル収納部480は、照光部600とは左右方向反対側に位置する右側(他側)に除菌光を反射させる反射材700を有してもよい。これにより、図11中に二点鎖線で示すように、照光部600による除菌光の照射範囲S6を広くすることができるとともに、残水発生部への除菌光の強度を増加させることができる。
【0074】
反射材700は、例えば反射率を高めるために金属材料で形成される。また、反射材700の表面(照光部600に対向する面)は、鏡面加工されていることが望ましい。また、反射材700は、反射率の高い樹脂材料で形成されてもよい。このような樹脂材料として、例えばフッ素系の化合物またはポリエステル系の化合物が用いられる。反射材700の全てが上述したような反射率の高い材料で構成されていてもよいし、反射材700の一部のみが反射率の高い材料で構成されていてもよい。このような材料で形成される反射材700は、反射率が10%以上のものが好ましく、より好ましくは反射率が50%のものが好ましい。さらに好ましくは、反射率が80%以上の反射材700を用いることで、ノズル収納部480の内部の菌やカビの発生を効果的に抑制できる。
【0075】
そして、照光部600は、除菌光を反射材700に反射させて残水発生部S2に照射してもよい。これにより、残水発生部S2に二重で除菌光を照射させることができるので、除菌効果を向上させることができる。すなわち、残水発生部S2のうち照光部600から離れた位置は、除菌光の強度が弱い虞がある。しかし、図11の(b)の光軸L2に表すように、反射材700により照光部600から離れた位置に二重で除菌光を照射させることができるので、菌やカビの発生を抑制できる。また、反射光の角度を調整することで、照光部600が直接照射できないような残水発生部に除菌光を照射できる。従って、ノズル収納部480の内部を効果的に除菌して、菌やカビの発生を抑制できる。
【0076】
図12(a)、図12(b)は、第4変形例による局部洗浄ノズルを示す断面図である。図12(a)は、ノズルとノズル収納部とを側方からみた断面図である。図12(b)は、ノズルとノズル収納部とを上方からみた平面図である。
上述した実施形態では、ノズル473が二段で伸縮する二段ノズルの場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12に表す第4変形例のように、1本のノズルが便器800の内部に進出、後退するノズル485でもよい。この場合、ノズル485がケーシング400内に後退させた状態で、ノズル485の先端側には、筒状のノズル洗浄部486が設けられる。ノズル洗浄部486は、ノズル485の外周面に向けて除菌水および水を吐出する吐水部が形成されている。
【0077】
以上説明した実施形態に基づく衛生洗浄装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0078】
第1の態様は、便器の内部に進出した状態で使用者の局部に向けて水を吐出する局部洗浄ノズルと、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で前記局部洗浄ノズルの全体を収納可能なノズル収納部を有するケーシングと、前記局部洗浄ノズルおよび前記ノズル収納部に供給される除菌水を生成する除菌水生成部と、前記ノズル収納部の内部に向けて除菌作用を有する除菌光を照射する照光部と、を備え、前記照光部は、前記ノズル収納部の内部に供給される前記除菌水が残留する残水発生部に向けて除菌光を照射する。
【0079】
第1の態様によれば、除菌水により、局部洗浄ノズルとノズル収納部とを洗浄、除菌できる。すなわち、除菌水により、局部洗浄ノズルとノズル収納部との広範囲を除菌できる。また、照光部は、ノズル収納部の内部に残留した残水発生部に向けて除菌光を照射して除菌する。すなわち、照光部は、菌やカビが発生しやすい残水発生部に向けて除菌光を照射する。従って、光源や反射材などを多数設けなくても、除菌水と除菌光とを用いて効率よく局部洗浄ノズルとノズル収納部との清潔状態を保つことができるとともに、ケーシングが大型化するのを抑制できる。
【0080】
第2の態様は、第1の態様において、前記除菌水生成部は、前記局部洗浄ノズルの吐水口に向けて前記除菌水を供給する。
【0081】
第2の態様によれば、除菌水は、局部洗浄ノズルのビデ洗浄吐水口やおしり洗浄吐水口を除菌してノズル収納部に流れる。一方、照光部は、局部洗浄ノズルからノズル収納部に流れた除菌水の残水発生部に除菌光を照射する。従って、除菌水と除菌光とにより局部洗浄ノズルとノズル収納部とを効果的に除菌できる。
【0082】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記局部洗浄ノズルに向けて前記除菌水を吐出する吐水部を備え、前記除菌水生成部は、前記吐水部に向けて前記除菌水を供給する。
【0083】
第3の態様によれば、除菌水は、局部洗浄ノズルの外周面(胴体)を除菌してノズル収納部に流れる。一方、照光部は、局部洗浄ノズルからノズル収納部に流れた除菌水の残水発生部に除菌光を照射する。従って、除菌水と除菌光とにより局部洗浄ノズルとノズル収納部とを効果的に除菌できる。
【0084】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記残水発生部は、前記ノズル収納部の底部の前端側を含んでいる。
【0085】
第4の態様によれば、除菌水の残水が発生しやすいノズル収納部の底部の前端側に除菌光を照射して、ノズル収納部内の菌やカビの発生を抑制できる。
【0086】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記ノズル収納部は、前端に設けられた開口を開閉可能なノズル蓋を有し、前記残水発生部は、前記ノズル蓋の内面の下端側を含んでいる。
【0087】
第5の態様によれば、除菌水の残水が発生しやすいノズル蓋の内面の下端側に除菌光を照射して、ノズル収納部内の菌やカビの発生を抑制できる。
【0088】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記照光部は、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で少なくとも一部が前記局部洗浄ノズルの前面よりも前方に配設されている。
【0089】
第6の態様によれば、局部洗浄ノズルが照光部から照射される除菌光の障害となり影となる面積を低減することができる。また、残水発生部が第2、第3の態様である場合には、残水発生部の近くに照光部が配設されるので、残水発生部に照射される除菌光の強度を高めることができ、残水発生部の菌やカビの発生を抑制できる。
【0090】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記照光部は、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で少なくとも一部が前記局部洗浄ノズルの前面の中心よりも下方に配設されている。
【0091】
第7の態様によれば、局部洗浄ノズルが照光部から照射される除菌光の障害となり影となる面積を低減することができる。また、残水発生部が第2、第3の態様である場合には、残水発生部の近くに照光部が配設されるので、残水発生部に照射される除菌光の強度を高めることができ、残水発生部の菌やカビの発生を抑制できる。
【0092】
第8の態様は、第7の態様において、前記照光部は、前記局部洗浄ノズルを後退させた状態で少なくとも一部が前記局部洗浄ノズルの前面の下端よりも上方に配設されている。
【0093】
第8の態様によれば、照光部から照射される除菌光の照射範囲を大きくすることができるので、残水発生部を照射範囲内に効果的に入れることができる。また、照光部がケーシングの下方に突出しないので、ケーシングが大型化するのを抑制できる。
【0094】
第9の態様は、第1~第8のいずれか1つの態様において、前記照光部は、前記ノズル収納部の左右方向の一側に配設され、左右方向の他側に向けて除菌光を照射する。
【0095】
第9の態様によれば、照光部は、ノズル収納部の左右方向に延在する残水発生部に除菌光を効率よく照射させることができる。
【0096】
第10の態様は、第9の態様において、前記ノズル収納部は、前記他側に除菌光を反射させる反射材を有し、前記照光部は、除菌光を前記反射材に反射させて残水発生部に照射する。
【0097】
第10の態様によれば、残水発生部に二重で除菌光を照射させることができるので、除菌効果を向上させることができる。また、反射光の角度を調整することで、照光部が直接照射できないような残水発生部に除菌光を照射できる。従って、ノズル収納部の内部を効果的に除菌して、菌やカビの発生を抑制できる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、衛生洗浄装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0099】
10 給水源、 20 導水部、 20a 管路、 21 おしり洗浄流路、 22 やわらか洗浄流路、 23 ビデ洗浄流路、 24 表面洗浄流路、 25 噴霧用流路、 100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 310 透過窓、 400 ケーシング、 400a ケースプレート、 400b ケースカバー、 401 電源回路、 403 人体検知センサ、 404 着座検知センサ、 405 制御部、 407 排気口、 408 排出口、 409 凹設部、 431 電磁弁、 432 調圧弁、 433 逆止弁、 440 熱交換器ユニット、 442 流量センサ、 450 電解槽ユニット(除菌水生成部)、 452 バキュームブレーカ、 454 圧力変調部、 471 流量調整部、 472 流路切替部、 473 ノズル(局部洗浄ノズル)、 473a 外筒、 473b 内筒、 473c 前面、 473d 上端、 473e 下端、 474a ビデ洗浄吐水口、 474b おしり洗浄吐水口、 476 ノズルモータ、 478 ノズル洗浄部、 478a 吐水部、 478b 支持体、 479 噴霧ノズル、 480 ノズル収納部、 481 底部、 481a 前端、 482 開口、 483 ノズル蓋、 483a 内面、 483b 外面、 484 ノズル支持部、 485 ノズル、 486 ノズル洗浄部、 500 操作部、 600 照光部、 620 発光素子、 650 照光部、 700 反射材、 800 便器、 801 ボウル、 L1、L2 光軸、 S1 除菌水範囲、 S2、S4 残水発生部、 S3、S5、S6 照射範囲
図1
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図12