(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ラミネート電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/178 20210101AFI20231207BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20231207BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20231207BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20231207BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20231207BHJP
H01M 50/16 20210101ALI20231207BHJP
H01M 50/164 20210101ALI20231207BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01M50/178
H01M50/55 301
H01M50/105
H01M50/184 C
H01M50/159
H01M50/16
H01M50/164
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2020017429
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 正剛
(72)【発明者】
【氏名】田原 智史
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-265974(JP,A)
【文献】特開2004-111303(JP,A)
【文献】特開2016-171035(JP,A)
【文献】特開2007-115678(JP,A)
【文献】特開2009-152211(JP,A)
【文献】特表2018-525784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、前記電極体を挟んで対向した一対の外装フィルムからなる外装体と、幅方向の一方の端部が前記電極体に接続され、他方の端部が前記外装体の外部に露出する板状の電極端子とを備えたラミネート電池であって、
前記電極端子は、前記幅方向における前記電極体の両端部の各々に1つずつ接続され、前記外装体の外部に露出するように前記幅方向の外側に向かって突出する一対の電極端子であり、
前記外装体の外周縁部には、前記外装フィルム同士が溶着されたフィルム溶着部と、前記電極端子に前記外装フィルムが溶着された端子溶着部とからなる溶着部が形成され、
前記幅方向の両端部の各々における前記フィルム溶着部は、1つの前記電極端子を挟むように、前記幅方向と直交する方向である奥行方向に沿って延びる一対のフィルム溶着部を有しており、
前記溶着部において前記一対の外装フィルムの間に配置された前記電極端子の表面が熱溶着フィルムによって被覆され、当該熱溶着フィルムは、前記奥行方向の外側に向かって前記電極端子の
両側面
の各々から突出する
一対の突出部を有しており、
前記奥行方向における前記
一対の突出部の
各々の長さL
Pは、前記端子溶着部の厚みT
Eの50%以上であり、かつ、前記奥行方向における前記一対のフィルム溶着部の長さL
Fの各々の15%以上
90%以下である、ラミネート電池。
【請求項2】
前記突出部の厚みT
Pは、前記端子溶着部の厚みT
Eの20%以上50%以下である、請求項1に記載のラミネート電池。
【請求項3】
前記突出部の長さL
Pは、前記フィルム溶着部の長さL
Fの35%以上65%以下である、請求項1または2に記載のラミネート電池。
【請求項4】
前記外装フィルムは、前記電極体と対向する樹脂層と、前記樹脂層の外側に形成された金属層とを少なくとも備えた多層構造のラミネートフィルムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のラミネート電池。
【請求項5】
前記熱溶着フィルムの幅方向の一方の端部が前記外装体の外部に露出している、請求項4に記載のラミネート電池。
【請求項6】
電極体と、前記電極体を挟んで対向した一対の外装フィルムで構成された外装体と、
幅方向の一方の端部が前記電極体に接続され、他方の端部が前記外装体の外部に露出する板状の電極端子とを備えたラミネート電池を製造する方法であって、
前記電極端子が接続された前記電極体が前記一対の外装フィルムの間に配置され、かつ、前記電極端子の端部が前記一対の外装フィルムの外部に露出した積層体を形成する積層工程と、
前記一対の外装フィルムの間に前記電極端子が介在した前記積層体の端部を一対の加圧板の間に配置する配置工程と、
前記一対の加圧板を所定の温度まで加熱する加熱工程と、
加熱された前記一対の加圧板で前記積層体の端部を挟み込んで加圧・加熱することによって、前記外装フィルム同士が溶着されたフィルム溶着部と、前記電極端子に前記外装フィルムが溶着された端子溶着部とからなる溶着部を形成する溶着工程と
を備えており、
前記電極端子は、前記幅方向における前記電極体の両端部の各々に1つずつ接続され、前記外装体の外部に露出するように前記幅方向の外側に向かって突出する一対の電極端子であり、
前記幅方向の両端部の各々における前記フィルム溶着部は、1つの前記電極端子を挟むように、前記幅方向と直交する方向である奥行方向に沿って延びる一対のフィルム溶着部を有しており、
前記一対の外装フィルムの間に配置された前記電極端子の表面が熱溶着フィルムによって被覆され、当該熱溶着フィルムは、前記奥行方向に向かって前記電極端子の
両側面
の各々から突出する
一対の突出部を有しており、
前記奥行方向における前記
一対の突出部の
各々の長さL
Pは、前記端子溶着部の厚みT
Eの50%以上であり、かつ、前記奥行方向における前記一対のフィルム溶着部の長さL
Fの各々の15%以上
90%以下である、ラミネート電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート電池およびその製造方法に関する。詳しくは、ラミネートフィルム製の外装体の内部に電極体が収容されたラミネート電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池などの二次電池は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、リチウムイオン二次電池は、軽量で高いエネルギー密度が得られるため、車両搭載用の高出力電源として好ましく用いられている。この種の二次電池の一形態として、ラミネートフィルム製の外装体の内部に電極体が収容された電池(以下「ラミネート電池」ともいう)が挙げられる。かかるラミネート電池を構築する際には、一対の樹脂製の外装フィルムの間に電極体を挟み込んだ状態で当該外装フィルムの外周縁部を加圧・加熱して溶着する。これによって、外周縁部に溶着部を有する袋状の外装体が形成され、当該外装体の内部に電極体が収容される。
【0003】
上記ラミネート電池は、外装体の内部の電極体と外部機器(他の電池やモータ等)とを電気的に接続するために板状の電極端子を備えている。この電極端子の一方の端部は外装体の内部の電極体と接続され、他方の端部は外装体の外部に露出する。このため、外装体の外周縁部の溶着部には、一対の外装フィルムの間に電極端子が挟み込まれ、当該電極端子に外装フィルムが溶着した領域が生じる。以下では、一対の外装フィルム同士が溶着している溶着部を「フィルム溶着部」といい、電極端子に一対の外装フィルムが溶着している溶着部を「端子溶着部」という。
【0004】
上記ラミネート電池の端子溶着部では、金属材料(電極端子)と樹脂材料(外装フィルム)という異なる材料の間で溶着が行われるため、電極端子と外装フィルムとの界面に溶着不良が生じる可能性がある。これに対して、金属材料と樹脂材料の両方に好適な溶着性を有する熱溶着フィルムを電極端子と外装フィルムとの間に介在させる技術が従来から提案されている。かかる技術の一例が特許文献1、2に開示されている。例えば、特許文献1では、帯状の熱溶着フィルムを環状に繋いだものを押し潰した扁平な環状の熱溶着フィルムにタブ(電極端子)を挿通させている。このような熱溶着フィルムを電極端子に取り付けた場合、電極端子の両側面から熱溶着フィルムが所定の長さで突出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-243526号公報
【文献】特開2017-139121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ラミネート電池の端子溶着部は、電極端子の厚みの分、フィルム溶着部よりも厚くなる。このため、溶着部に形成された端子溶着部とフィルム溶着部との境界には段差が形成される。大量生産を行う製造現場では、この段差の近傍において電極端子と外装フィルムとの間に隙間が生じた電池が製造されることがある。溶着部に隙間が生じた電池は、外装体内部への水分の侵入による性能劣化や、減圧不足による体積膨張などが生じやすいため、出荷前に破棄又は修正を行う必要があり、生産性低下の原因となる。このため、近年では、溶着部の形成に使用する溶着装置の押圧面に弾性部材を取り付け、上記段差に追従するように押圧面を変形させることが検討されている。しかし、このような溶着装置の改善のみでは限界があり、依然として、溶着部の段差近傍に隙間が生じた電池が製造されることがあった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、外装体の溶着部の段差の近傍において電極端子と外装フィルムとの間に隙間が生じることを好適に防止できるラミネート電池および当該ラミネート電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、上記溶着部の段差の近傍において隙間が生じる原因を検討した結果、以下の新規な知見を見出した。
【0009】
本発明者が見出した知見を説明する前提として、一般的なラミネート電池の溶着部の形成手順を具体的に説明する。
図10~
図13は、従来のラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。ラミネート電池の製造では、最初に、電極体(図示省略)と外装フィルムとを積層させた積層体100Aを作製する。このとき、積層体100Aの端部(外周縁部の一辺)では、
図10に示すように、熱溶着フィルム140を介して、一対の外装フィルム122、124の間に電極端子130が配置される。次に、押圧面に弾性部材P2を有する一対の加圧板Pの間に、上記積層体100Aの端部を配置して当該一対の加圧板Pを近接させる。なお、図中の符号P1は、加圧板Pの基体部である。そして、
図11~
図13に示すように、電極端子130の形状に応じて弾性部材P2を弾性変形させながら積層体100Aの端部を加圧・加熱する。これによって、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2とから構成された溶着部Wが形成される。このとき、外装フィルム122、124の変形が溶着部Wの段差Dの形状に追従できないと、段差Dの近傍における外装フィルム122、124と電極端子130との間に隙間Sが形成される。
【0010】
本発明者は、上述の従来技術において溶着部Wの段差Dの近傍に隙間Sが形成される理由を次のように考えた。
図10に示すように、溶着部の形成を開始すると、最初に、加圧板P(弾性部材P2)が、外装フィルム122、124と熱溶着フィルム140を介して電極端子130に接触する。このとき、外装フィルム122、124が電極端子130の両端部と加圧板Pとの間に挟持され、第1の固定点F1が形成される。次に、
図11に示すように、弾性部材P2を弾性変形させながら一対の加圧板Pを近接させると、外装フィルム122、124の両端部が加圧板Pに挟持され、第2の固定点F2が形成される。この状態で加圧板Pをさらに近接させると、
図11および
図12中の矢印Aに示すように、第1の固定点F1と第2の固定点F2において固定された外装フィルム122、124に強い張力が掛かる。このように、強い張力が掛かった外装フィルム122、124は、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2との境界の段差Dに沿うような変形ができなくなる可能性がある。このような場合に、段差Dの近傍における電極端子130と外装フィルム122、124との間に隙間Sが形成される。
【0011】
本発明者は、上述の知見に基づいて、溶着部Wの形成中に外装フィルム122、124に掛かる張力を緩和できれば、段差Dに沿うように外装フィルム122、124を変形させ、隙間Sの形成を防止できると考えた。そして、張力を緩和させる手段として、熱溶着フィルム140の突出部142の長さL
Pに着目した。具体的には、
図12に示すように、上記第1の固定点F1と第2の固定点F2の形成後、さらに加圧板Pを近接させると、外装フィルム122、124を介して突出部142の先端142aが加圧板Pと接触する接触点Cが生じる。本発明者は、
図11に示される第2の固定点F2の形成と同じ程度のタイミングで、突出部142の先端142aと加圧板Pとを接触させることができれば、この接触点Cが第3の固定点となり、溶着部Wの形成中に外装フィルム122、124に掛かる張力を分散できると考えた。そして、本発明者は、かかる仮定の下で、熱溶着フィルム140の突出部142の長さL
Pを検討した結果、当該突出部142の長さL
Pが端子溶着部W2の厚みT
Eの50%以上になった場合、第2の固定点F2と同程度のタイミングで第3の固定点が形成され、段差Dの近傍における隙間Sの形成が防止されることを発見した。
【0012】
ここに開示されるラミネート電池は、上述の知見に基づいてなされたものである。このラミネート電池は、電極体と、電極体を挟んで対向した一対の外装フィルムからなる外装体と、幅方向の一端が電極体に接続され、他端が外装体の外部に露出する板状の電極端子とを備えている。そして、外装体の外周縁部には、外装フィルム同士が溶着されたフィルム溶着部と、電極端子に外装フィルムが溶着された端子溶着部とからなる溶着部が形成されている。そして、溶着部において一対の外装フィルムの間に配置された電極端子の表面が熱溶着フィルムによって被覆されており、当該熱溶着フィルムは、電極端子の側面から奥行方向の外側に向かって突出する突出部を有している。ここに開示されるラミネート電池の熱溶着フィルムの突出部の長さLPは、端子溶着部の厚みTEの50%以上であり、かつ、フィルム溶着部の長さLFの100%未満である。
【0013】
ここに開示されるラミネート電池では、電極端子の側面から突出する突出部が熱溶着フィルムに形成されており、当該突出部の長さLPが端子溶着部の厚みTEの50%以上である。これによって、溶着部形成中の外装フィルムには、上述の第1の固定点と第2の固定点の他に、突出部の先端と加圧板との間に当該外装フィルムが挟持された第3の固定点が生じる。このように、溶着部形成中の外装フィルムに3つの固定点を形成することによって、外装フィルムに掛かる張力を分散・緩和できるため、フィルム溶着部と端子溶着部との境界の段差の近傍に隙間が形成されることを防止できる。
なお、ここに開示されるラミネート電池において、熱溶着フィルムの突出部の長さLPを長くしすぎると、当該突出部が外装フィルムの外側に露出し、第3の固定点が形成されなくなる。このため、ここに開示されるラミネート電池における熱溶着フィルムの突出部の長さLPの上限は、フィルム溶着部の長さLFの100%未満に設定される。
【0014】
ここに開示されるラミネート電池の好適な一態様では、突出部の厚みTPは、端子溶着部の厚みTEの20%以上50%以下である。これによって、第2の固定点と第3の固定点の各々が形成されるタイミングをより近づけることができるため、溶着部の形成中に外装フィルムに掛かる張力をより好適に分散・緩和できる。
【0015】
ここに開示されるラミネート電池の好適な一態様では、突出部の長さLPは、フィルム溶着部の長さLFの35%以上65%以下である。これによって、第2の固定点と第3の固定点の各々が形成されるタイミングをより近づけることができるため、溶着部の形成中に外装フィルムに掛かる張力をより好適に分散・緩和できる。
【0016】
ここに開示されるラミネート電池の好適な一態様では、外装フィルムは、電極体と対向する樹脂層と、樹脂層の外側に形成された金属層とを少なくとも備えた多層構造のラミネートフィルムである。これによって、外装フィルムの強度を向上させ、より高品質なラミネート電池を構築できる。
【0017】
また、上記金属層を備えた多層構造の外装フィルムを使用する態様では、熱溶着フィルムの幅方向の一端が外装体の外部に露出していることが好ましい。これによって、外装フィルムの金属層と電極端子とが導通することを防止できる。
【0018】
また、ここに開示される技術の他の側面として、ラミネート電池の製造方法が提供される。かかる製造方法は、電極体と、電極体を挟んで対向した一対の外装フィルムで構成された外装体と、一方の端部が電極体に接続され、他方の端部が外装体の外部に露出する板状の電極端子とを備えたラミネート電池を製造する方法である。かかる製造方法は、電極端子が接続された電極体が一対の外装フィルムの間に配置され、かつ、電極端子の端部が一対の外装フィルムの外部に露出した積層体を形成する積層工程と、一対の外装フィルムの間に電極端子が介在した積層体の端部を一対の加圧板の間に配置する配置工程と、一対の加圧板を所定の温度まで加熱する加熱工程と、加熱された一対の加圧板で一対の外装フィルムの外周縁部を挟み込んで加圧・加熱することによって、外装フィルム同士が溶着されたフィルム溶着部と、電極端子に外装フィルムが溶着された端子溶着部とからなる溶着部を形成する溶着工程とを備えている。そして、ここに開示される製造方法では、一対の外装フィルムの間に配置された電極端子の表面が熱溶着フィルムによって被覆され、当該熱溶着フィルムは、電極端子の側面から奥行方向に向かって突出する突出部を有しており、突出部の長さLPは、端子溶着部の厚みTEの50%以上であり、かつ、フィルム溶着部の長さLFの100%未満である。
【0019】
上記した通り、ここに開示される製造方法では、端子溶着部の厚みTEの50%以上であり、かつ、フィルム溶着部の長さLFの100%未満である長さLPを有した突出部が熱溶着フィルムに形成されている。これによって、溶着工程における外装フィルムに、第1~第3の3つの固定点を形成し、当該外装フィルムに掛かる張力を分散・緩和することができる。このため、ここに開示される製造方法によると、フィルム溶着部と端子溶着部との境界の段差の近傍において外装フィルムと電極端子との間に隙間が形成されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るラミネート電池を模式的に示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るラミネート電池に使用される電極端子を模式的に示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るラミネート電池の製造方法を説明する斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図10】従来のラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図11】従来のラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図12】従来のラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図13】従来のラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ここに開示される技術の一実施形態について図面を参照しながら説明する。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、電極体の詳細な構造や材料、溶着装置の詳細な構造等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
【0022】
なお、本明細書にて示す各図において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。そして、各図における符号Xは「幅方向」を示し、符号Yは「奥行方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。これらの方向は、説明の便宜上定めた方向であり、ここに開示される技術(例えば、製造・使用時のラミネート電池の向き)を限定することを意図したものではない。
【0023】
1.ラミネート電池
図1は、本実施形態に係るラミネート電池を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1中のII-II矢視断面図である。
図3は、本実施形態に係るラミネート電池に使用される電極端子を模式的に示す平面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るラミネート電池1は、電極体10と、一対の外装フィルム22、24からなる外装体20と、端部34が外装体20の外部に露出した電極端子30とを備えている。また、このラミネート電池1では、外装体20の外周縁部に溶着部Wが形成されており、当該溶着部Wに配置された電極端子30の表面は熱溶着フィルム40に被覆されている。以下、各々の構成について具体的に説明する。
【0025】
(1)電極体
本実施形態に係るラミネート電池1では、扁平な矩形の外形を有する電極体10が用いられている。なお、電極体10の詳細な構造は特に限定されず、従来公知の構造を特に制限なく使用できる。例えば、電極体10は、セパレータを介して長尺な電極シートを捲回した捲回電極体であってもよい。また、電極体10は、セパレータを介して矩形の電極シートを複数枚積層させた積層型電極体であってもよい。なお、電極体を構成する各部材(例えば、電極シートやセパレータ等)の構造および材料についても、特に限定されず、この種の二次電池に使用され得るものを特に制限なく使用できる。
【0026】
(2)外装体
外装体20は、電極体10を挟んで対向した一対の外装フィルム22、24(
図2参照)の外周縁部を溶着させることによって形成された袋状の電池ケースである。かかる外装フィルム22、24は、絶縁性の樹脂層を含むラミネートフィルムである。この外装フィルム22、24の樹脂層は、電極体10と対向するように配置される。なお、樹脂層は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどによって構成されている。また、図示は省略するが、外装フィルム22、24は、上記電極体10と対向する樹脂層の他に、樹脂層の外側に形成された金属層を備えた多層構造のラミネートフィルムであると好ましい。このように、金属層を含む多層構造のラミネートフィルムを使用することによって、高い強度を有する外装体20を形成できる。なお、金属層の材料としては、アルミニウム、ステンレス、銅などが挙げられる。また、外装体20の耐擦過性を向上させるという観点から、上記多層構造のラミネートフィルムの中でも、金属層の外側に樹脂層がさらに積層された3層以上のラミネートフィルムが特に好ましい。
【0027】
この外装フィルム22、24の厚みt1は、30μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、90μm以上がさらに好ましく、120μm以上が特に好ましい。これによって、外装フィルム22、24の強度を十分に確保できる。また、外装フィルム22、24の厚みt1の上限は、特に限定されず、500μm以下であってもよく、350μm以下であってもよい。但し、後述の熱溶着フィルム40への熱伝導性を考慮すると、外装フィルム22、24の厚みt1の上限は、270μm以下が好ましく、240μm以下がより好ましく、210μm以下がさらに好ましく、180μm以下が特に好ましい。
【0028】
(3)電極端子
電極端子30は、電極体10と外部機器とを電気的に接続する導電部材である。この電極端子30は、アルミニウム、銅、ニッケル等の導電性材料によって構成される。
図3に示すように、電極端子30は、幅方向Xにおいて所定の寸法を有する板状の部材である。そして、
図1に示すように、電極端子30の幅方向Xの一方(中央側)の端部32は、電極体10に接続されている。また、他方(外側)の端部34は、外装体20の外部に露出している。なお、詳細な説明は省略するが、電極体10の正極側に接続された電極端子30は正極端子となり、負極側に接続された電極端子30は負極端子となる。
【0029】
また、
図2に示す電極端子30の厚みt2は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、200μm以上がさらに好ましく、300μm以上が特に好ましい。これによって、電極端子30の電気抵抗を十分に低下させることができる。また、電極端子30の厚みt2の上限は、特に限定されず、1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよい。但し、電極端子30の厚みt2の上限は、800μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましく、600μm以下がさらに好ましく、500μm以下が特に好ましい。これによって、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2との境界における段差Dを低くし、電極端子30と外装フィルム22、24との溶着を容易にできる。
【0030】
(4)溶着部
上述した通り、本実施形態に係るラミネート電池1では、外装体20の外周縁部に溶着部Wが形成されている。この溶着部Wは、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2とから構成される。
【0031】
フィルム溶着部W1は、外装フィルム22、24同士が溶着された部分である。
図1に示すように、フィルム溶着部W1は、外装体20の両側縁に沿って延びると共に、幅方向Xの両端部の一部(典型的には、当該両端部の奥行方向Yの両外側)に形成されている。そして、
図2に示すように、幅方向Xの両端部に形成されたフィルム溶着部W1は、一対の外装フィルム22、24同士が直接溶着した第1フィルム溶着部W1aと、熱溶着フィルム40の突出部42を介して外装フィルム22、24同士が溶着した第2フィルム溶着部W1bとから構成される。なお、第1フィルム溶着部W1aの厚みT
Faは、一対の外装フィルム22、24の合計厚み(t1×2)と略同等である。また、第2フィルム溶着部W1bの厚みT
Fbは、一対の外装フィルム22、24の合計厚み(t1×2)と、熱溶着フィルム40の突出部42の厚み(T
P)との合計((t1×2)+T
P)と略同等である。
【0032】
一方、端子溶着部W2では、電極端子30に外装フィルム22、24が溶着されている。具体的には、端子溶着部W2では、熱溶着フィルム40の端子被覆部44を介して電極端子30の表面に外装フィルム22、24が溶着されている。なお、この端子溶着部W2は、外装体20の幅方向Xの両端部にのみ形成される(
図1参照)。そして、
図2に示すように、幅方向Xの両端部に形成された溶着部Wでは、奥行方向Yの中央部に端子溶着部W2が形成され、当該端子溶着部W2の両外側に第2フィルム溶着部W1bが形成され、第2フィルム溶着部W1bのさらに外側に第1フィルム溶着部W1aが形成される。また、端子溶着部W2の厚みT
Eは、一対の外装フィルム22、24の合計厚み(t1×2)と、電極端子30の厚み(t2)と、熱溶着フィルム40の端子被覆部44の合計厚み(t3×2)との合計((t1×2)+t2+(t3×2))と略同等である。
【0033】
(5)熱溶着フィルム
熱溶着フィルム40は、溶着部Wにおいて一対の外装フィルム22、24の間に配置された電極端子30の表面を被覆する樹脂部材である。かかる熱溶着フィルム40を介在させることによって、金属製の電極端子30と外装フィルム22、24の樹脂層とを好適に溶着できる。なお、熱溶着フィルム40の材料は、外装フィルム22、24と同程度の温度で溶融し、かつ、樹脂材料と金属材料の両方に対して好適な溶着性を発揮する樹脂材料を適宜選択でき、ここに開示される技術を限定するものではない。一例として、熱溶着フィルム40には、変性ポリプロピレンや、ポレオレフィン層を含む多層構造のフィルムなどを使用できる。
【0034】
以下、熱溶着フィルム40のうち、電極端子30の表面を被覆する部分を端子被覆部44と称する。この端子被覆部44の厚みt3は、40μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましく、100μm以上が特に好ましい。これによって、電極端子30と外装フィルム22、24とを溶着する際の中間層としての機能を好適に発揮できる。また、端子被覆部44の厚みt3の上限は、特に限定されない。但し、端子被覆部44が厚すぎると、溶着部W形成中の端子被覆部44の溶融が不十分になり、溶着不良の原因となる可能性がある。かかる観点から、端子被覆部44の厚みt3の上限は、350μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましく、200μm以下が特に好ましい。
【0035】
なお、
図1に示す幅方法Xにおける熱溶着フィルム40の長さl2は、幅方向Xにおける溶着部Wの長さl1よりも長くなるように設定されていると好ましい。これによって、溶着部Wの形成中に各部材の位置ずれが生じたとしても、熱溶着フィルム40を介して電極端子30と外装フィルム22、24とを溶着できる。具体的には、幅方向Xにおける溶着部Wの長さl1が4mm~6mmである場合、幅方向Xにおける熱溶着フィルム40の長さl2は、7mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、9mm以上がさらに好ましく、10mm以上が特に好ましい。さらに、本実施形態に係るラミネート電池1では、幅方向Xにおける熱溶着フィルム40の一方の端部46が外装体20の外部に露出している。これによって、外装体20の金属層と電極端子30との導通による短絡の発生を防止できる。
【0036】
そして、
図2に示すように、熱溶着フィルム40は、電極端子30の側面30aから奥行方向Yの外側に向かって突出する突出部42を有している。本実施形態に係るラミネート電池1は、この熱溶着フィルム40の突出部42の長さL
Pが端子溶着部W2の厚さT
Eの50%以上であり、かつ、フィルム溶着部W1の長さL
Fの100%未満であることによって特徴付けられる。このような長さの突出部42を形成することによって、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2との境界の段差Dの近傍において、電極端子30と外装フィルム22、24との間に隙間(
図13中の符号S参照)が生じることを防止できる。以下、かかる効果が得られる理由について、本実施形態に係るラミネート電池の製造方法を参照しながら説明する。
【0037】
2.ラミネート電池の製造方法
図4は、本実施形態に係るラミネート電池の製造方法を模式的に示す斜視図である。また、
図5~
図9は、本実施形態に係るラミネート電池の製造方法を説明する断面図である。
【0038】
(1)溶着装置
先ず、本実施形態に係る製造方法で使用される溶着装置について説明する。
図4に示すように、この溶着装置は、一対の加圧板Pを備えている。具体的には、各々の加圧板Pは、奥行方向Yに延びる矩形の板状部材である。そして、下側の加圧板Pの上面と、上側の加圧板Pの底面とが対向するように配置されており、その間にラミネート電池の前駆体である積層体1Aの外周縁部の一辺が配置される。
【0039】
図5に示すように、加圧板Pは、押圧面に弾性部材P2を備えている。具体的には、加圧板Pは、金属製の基体部P1と、当該基体部P1の押圧面に取り付けられた弾性部材P2とを備えている。基体部P1には、所定の熱伝導性と強度を有した金属材料が使用されていると好ましい。当該金属材料の一例として、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケルもしくはこれらの合金などが挙げられる、一方、弾性部材P2は、所定の耐熱性と弾性を有した材料によって構成されていると好ましい。この弾性部材P2は、例えば、ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等などの樹脂材料によって構成される。これらの中でも、ゴムは、好適な弾性を有するため好適であり、ゴムの中でも耐熱性に優れたシリコンゴムが特に好適である。また、弾性部材P2は、一定の弾性を有する無機材料(シリコンなど)で構成されていてもよい。このような無機材料は、熱伝導性に優れているため、溶着対象をより効率よく加熱できる。
【0040】
また、溶着装置は、上述の加圧板Pの他に、加熱手段や移動手段を備えている。加熱手段は、加圧板を加熱する機構である。かかる加熱手段としては、従来公知のヒーターを特に制限なく使用できる。また、移動手段は、加圧板Pを近接および離間させる機構である。かかる移動手段が加圧板Pを近接させることによって、加圧板Pの間に積層体1Aの端部を挟み込んで加圧することができる。なお、加熱手段や移動手段の具体的な構造は、積層体1Aの端部に均一かつ十分な熱と圧力を加えることができれば特に限定されず、従来公知の構造を特に制限なく採用することができる。
【0041】
(2)外装フィルムの溶着
本実施形態に係る製造方法では、上述の溶着装置を用いて外装体20の外周縁部を溶着して溶着部Wを形成する。かかる製造方法は、積層工程と、配置工程と、加熱工程と、溶着工程を備えている。以下、各工程について説明する。
なお、
図1に示すように、本実施形態に係るラミネート電池1では、外装体20の外周縁部に溶着部Wが形成される。しかし、外装体20の両側縁に沿って形成される溶着部Wには、端子溶着部W2が形成されないため、「フィルム溶着部W1と端子溶着部W2との境界の段差Dの近傍における隙間の発生」という問題が生じない。このため、以下では、当該外装体20の両側縁に沿った溶着部Wの形成に関する説明を省略する。なお、外装体20の両側縁に沿った溶着部Wは、従来公知の方法で形成でき、ここに開示される技術を限定するものではない。
【0042】
(a)積層工程
本工程では、上述したラミネート電池1の構成部材を積層させて、ラミネート電池1の前駆物質である積層体1Aを形成する。具体的には、先ず、幅方向Xの両端部に電極端子30が接続された電極体10を準備し、当該電極体10を一対の外装フィルム22、24の間に配置する。これによって、一対の外装フィルム22、24の間に電極体が配置された積層体1Aが形成される。そして、一対の外装フィルム22、24の外部に電極端子30の端部34が露出するように各部材の位置を調節する。これによって、積層体1Aの端部では、外装フィルム24、熱溶着フィルム40、電極端子30、熱溶着フィルム40、外装フィルム22がこの順番で積層される。
【0043】
(b)配置工程
図5に示すように、本工程では、上述した積層体1Aの端部を一対の加圧板Pの間に配置する。このとき、奥行方向Yにおいて、積層体1Aの中央部と加圧板Pの中央部とが揃うように、各々の部材の位置を調節することが好ましい。これによって、後述の溶着工程において積層体1Aの端部に掛かる圧力をより均一にできる。
【0044】
(c)加熱工程
次に、本工程では、溶着装置の加熱手段を稼働し、加圧板Pを所定の温度まで加熱する。このときの加圧板Pの温度は、外装フィルム22、24と熱溶着フィルム40の溶着温度や加圧板Pの熱伝導性などを考慮して設定されていると好ましい。一例として、加圧板Pの温度は、弾性部材P2を介して外装フィルム22、24を150℃~250℃の範囲に加熱できるように設定されていると好ましい。
【0045】
(d)溶着工程
本工程では、加熱された一対の加圧板Pで積層体1Aの端部を挟み込んで加圧・加熱することによって、外装フィルム22、24同士が溶着されたフィルム溶着部W1と、電極端子30に外装フィルム22、24が溶着された端子溶着部W2とからなる溶着部Wを形成する(
図6~
図9参照)。具体的には、溶着装置の移動手段を稼働させて上下一対の加圧板Pを近接させ、一対の加圧板Pの間に積層体1Aの端部を挟み込んで加圧・加熱する。これによって、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2とから構成された溶着部Wが形成される。
【0046】
このとき、本実施形態では、熱溶着フィルム40の突出部42の長さLPが、端子溶着部の厚さTEの50%以上であり、かつ、フィルム溶着部W1の長さLFの100%未満になるように設定されている。これによって、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2との境界の段差Dの近傍において、電極端子30と外装フィルム22、24との間に隙間が生じることを防止できる。以下、かかる効果が発揮される理由について具体的に説明する。
【0047】
図6に示すように、溶着工程において一対の加圧板Pが近接すると、外装フィルム22、24と熱溶着フィルム40(端子被覆部44)を介して、電極端子30が加圧板Pと接触する。このとき、電極端子30の両端部と加圧板Pとの間に外装フィルム22、24が挟持され、第1の固定点F1が形成される。次に、
図7に示すように、一対の加圧板Pをさらに近接させると、電極端子30の外形に沿うように加圧板Pの弾性部材P2が弾性変形する。このとき、外装フィルム22、24の両端部が加圧板Pの間に挟持され、第2の固定点F2が形成される。そして、本実施形態では、端子溶着部の厚さT
Eの50%以上という十分な長さL
Pを有した突出部42が熱溶着フィルム40に形成されている。このため、上記第2の固定点F2の形成と同程度のタイミングで、突出部42の先端42aと加圧板Pとの間に外装フィルム22、24が挟持され、第1の固定点F1と第2の固定点F2との間に第3の固定点F3が形成される。
【0048】
そして、
図8に示すように、一対の加圧板Pをさらに近接させると、外装フィルム22、24が奥行方向Yの外側に引っ張られる。しかし、本実施形態では、第1の固定点F1と第2の固定点F2との間に第3の固定点F3が生じているため、図中の矢印A1、A2に示すように、外装フィルム22、24に掛かる張力が分散・緩和される。これによって、従来技術(
図11および
図12参照)のように外装フィルム22、24が強い張力で斜めに引っ張られることを防止できる。このため、
図9に示すように、本実施形態では、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2との境界の段差Dに追従するように外装フィルム22、24を変形させながら溶着部Wを形成でき、当該段差Dの近傍において外装フィルム22、24と電極端子30との間に隙間が形成されることを防止できる。従って、本実施形態によると、外装体20内部への水分侵入による性能低下や、減圧不足による体積膨張などが好適に防止された高品質のラミネート電池を高い生産性で製造できる。
【0049】
さらに、本実施形態では、フィルム溶着部W1に、外装フィルム22、24同士が直接溶着した第1フィルム溶着部W1aと、熱溶着フィルム40の突出部42を介して外装フィルム22、24同士が溶着した第2フィルム溶着部W1bとが形成されている。これによって、奥行方向Yの両外側(第1フィルム溶着部W1a)から中央部(端子溶着部W2)に向かって段階的に厚みが増加するような溶着部Wが形成される。このため、フィルム溶着部W1と端子溶着部W2との境界の段差Dが小さくなり、当該段差Dに沿うように外装フィルム22、24を変形させることが容易になる。かかる点も、段差Dの近傍における隙間の防止に貢献している。
【0050】
3.各部材の寸法
なお、ここに開示されるラミネート電池1では、上述した溶着工程において、第2の固定点F2と第3の固定点F3が形成されるタイミングがより近似するように、各部材の寸法を設定すると好ましい。例えば、上述の通り、熱溶着フィルム40の突出部42の長さL
Pが端子溶着部W2の厚みT
Eの50%以上であれば、段差Dの近傍における隙間の発生を防止できることが確認されている。但し、
図2に示す突出部42の長さL
Pは、端子溶着部W2の厚みT
Eの75%以上であると好ましく、100%以上であるとより好ましく、125%以上であるとさらに好ましく、150%以上であると特に好ましい。これによって、第2の固定点F2と第3の固定点F3が形成されるタイミングを更に近似させ、段差Dの近傍における隙間の発生をより好適に防止することができる。
【0051】
また、熱溶着フィルム40の突出部42が長くなりすぎると、突出部42の先端42aが外装フィルム22、24の外側に露出し、第3の固定点F3が形成されなくなる。このため、上記熱溶着フィルム40の突出部42の長さLPは、フィルム溶着部W1の長さLFの100%未満であることが求められる。なお、第2の固定点F2と第3の固定点F3が形成されるタイミングをより近似させるという点を考慮すると、突出部42の先端42aがフィルム溶着部W1の中央部の近傍に配置されるように、フィルム溶着部W1の長さLFを調節すると好ましい。かかる観点から、フィルム溶着部W1の長さLFに対する突出部42の長さLPの上限は、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、75%以下がさらに好ましく、65%以下が特に好ましい。一方、上記フィルム溶着部W1の長さLFに対する突出部42の長さLPの下限は、15%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、35%以上がさらに好ましい。
【0052】
また、溶着工程において第3の固定点F3が形成されるタイミングは、端子溶着部W2の厚みT
Eに対する突出部42の厚みT
Pの割合が大きくなるにつれて早くなり、小さくなるにつれて遅くなる傾向がある。この点を考慮すると、
図2に示す突出部42の厚みT
Pは、端子溶着部W2の厚みT
Eの5%以上であると好ましく、10%以上であるとより好ましく、15%以上であるとさらに好ましく、20%以上であると特に好ましい。一方、突出部42の厚みT
Pは、端子溶着部W2の厚みT
Eの80%以下であると好ましく、70%以下であるとより好ましく、60%以下であるとさらに好ましく、50%以下であると特に好ましい。
【0053】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 ラミネート電池
1A 積層体
10 電極体
20 外装体
22、24 外装フィルム
30 電極端子
30a 電極端子の側面
32、34 電極端子の端部
40 熱溶着フィルム
42 突出部
42a 突出部の先端
44 端子被覆部
46 熱溶着フィルムの端部
F1 第1の固定点
F2 第2の固定点
F3 第3の固定点
W1 フィルム溶着部
W1a 第1フィルム溶着部
W1b 第2フィルム溶着部
W2 端子溶着部