IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図1
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図2
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図3
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図4
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図5
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図6
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図7
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図8
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図9
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図10
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図11
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図12
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図13
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図14
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図15
  • 特許-電線カバー及びコネクタ構造 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電線カバー及びコネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/58 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H01R13/58
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020104410
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021197311
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
(72)【発明者】
【氏名】魏 綾那
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-76809(JP,A)
【文献】特開2010-34018(JP,A)
【文献】特開2007-141725(JP,A)
【文献】特開2004-127813(JP,A)
【文献】特開平6-243926(JP,A)
【文献】実開昭62-118363(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/58
H01R 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタに嵌合されるコネクタの嵌合方向後側に取り付けられる電線カバーであって、
前記コネクタは、前記嵌合方向に直交する第1の直交方向に互いに離間して配されている複数の端子と、各前記端子に接続されて前記嵌合方向後側から引き出されている複数の電線とを有し、
当該電線カバーは、
前記複数の電線が挿入される挿入口と、前記挿入口から挿入された前記複数の電線が前記嵌合方向と交差する方向に導出される導出口とを有するハウジングと、
前記ハウジングの内部で各前記電線の立体的な曲げを補助する補助部材と、
を備え、
前記ハウジングの内部で各前記電線が前記補助部材に補助されて立体的に曲げられて前記導出口から導出されており、
前記ハウジングは、
前記複数の電線に対して前記嵌合方向及び前記第1の直交方向の両方に直交する第2の直交方向の一方の側に配される第1のカバーと、
前記複数の電線を挟んで前記第1のカバーと対向する第2のカバーと、
を有し、
前記補助部材は前記第2のカバーと前記電線との間に配される板状の部材であり、
前記挿入口から挿入されて前記嵌合方向後側に延びる各前記電線が前記補助部材を通過した位置で前記補助部材に補助されて前記第2のカバー側に曲がっており、前記第2のカバー側に曲がった各前記電線が前記補助部材に補助されて前記導出口側に曲がっている、電線カバー。
【請求項2】
前記補助部材の前記嵌合方向後側の縁部は、前記第1の直交方向のいずれか一方の側から他方の側に向かって前記嵌合方向後側に傾斜している、請求項1に記載の電線カバー。
【請求項3】
前記補助部材の前記縁部に1つ又は複数の凹部が形成されており、
前記補助部材を通過した位置で前記補助部材に補助されて前記第2のカバー側に曲がった各前記電線が前記凹部を通過している、請求項2に記載の電線カバー。
【請求項4】
前記凹部は前記電線毎に形成されている、請求項3に記載の電線カバー。
【請求項5】
前記凹部は前記第2の直交方向から見て三角形状である、請求項3又は請求項4に記載の電線カバー。
【請求項6】
前記補助部材はヒンジによって前記ハウジングに連結されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電線カバー。
【請求項7】
前記補助部材に対して前記嵌合方向後側に配されており、前記補助部材と協働して前記ハウジング内での前記電線の動きを規制する規制部を有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電線カバー。
【請求項8】
相手側コネクタと嵌合されるコネクタであって、嵌合方向に直交する第1の直交方向に互いに離間して配されている複数の端子と、各前記端子に接続されて前記嵌合方向後側から引き出されている複数の電線とを有するコネクタと、
前記コネクタの前記嵌合方向後側に取り付けられる請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電線カバーと、
を備えるコネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、電線カバー及びコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタの嵌合方向後側に取り付けられ、コネクタから嵌合方向後側に引き出された複数の電線を嵌合方向に交差する方向に曲げて引き出す電線カバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に記載の横出しコネクタ用のカバー(電線カバーに相当)は、同文献の図6に示されているように、防水横出しコネクタの嵌合方向後側にカバーが取り付けられており、複数の電線がカバーの内部で湾曲して電線引出口から横出しされている。
【0003】
上述した特許文献1に記載のカバーは本体カバーと蓋カバーとからなり、本体カバーの内面に電線のストレート部を確保するガイドリブが突出している。当該カバーではガイドリブに沿わせて電線を配線し、ストレート部を確保した後に電線を横曲げすることにより、防水ゴム栓が変形してコネクタ内に浸水が生じることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-234659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電線カバーから引き出されている電線が強く引っ張られると電線がコネクタの端子から抜ける虞がある。上述した特許文献1に記載のカバーではこれについて十分に検討されていなかった。
本明細書では、コネクタから引き出された複数の電線を嵌合方向に交差する方向に引き出す電線カバーにおいて、電線に対して端子の抜け方向の力が生じても電線が端子から抜け難くすることをコンパクトな構成で実現する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電線カバーは、相手側コネクタに嵌合されるコネクタの嵌合方向後側に取り付けられる電線カバーであって、前記コネクタは、前記嵌合方向に直交する第1の直交方向に互いに離間して配されている複数の端子と、各前記端子に接続されて前記嵌合方向後側から引き出されている複数の電線とを有し、当該電線カバーは、前記複数の電線が挿入される挿入口と、前記挿入口から挿入された前記複数の電線が前記嵌合方向と交差する方向に導出される導出口とを有するハウジングと、前記ハウジングの内部で各前記電線の立体的な曲げを補助する補助部材と、を備え、前記ハウジングの内部で各前記電線が前記補助部材に補助されて立体的に曲げられて前記導出口から導出されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電線カバーによれば、コネクタから引き出された複数の電線を嵌合方向に交差する方向に引き出す電線カバーにおいて、電線に対して端子の抜け方向の力が生じても電線が端子から抜け難くすることをコンパクトな構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係るコネクタ構造の斜視図である。
図2図2は、コネクタ構造の斜視図である。
図3図3は、コネクタの斜視図である。
図4図4は、コネクタの斜視図である。
図5図5は、コネクタの断面図である。
図6図6は、電線カバーの分解斜視図である。
図7図7は、コネクタ構造の分解斜視図である。
図8図8は、コネクタ構造の分解斜視図である。
図9図9は、コネクタ構造を分解した上面図である。
図10図10は、実施形態2に係るコネクタ構造の斜視図である。
図11図11は、コネクタ構造の断面図である。
図12図12は、実施形態3に係る電線カバーの分解斜視図である。
図13図13は、他の実施形態に係る電線カバーを分解した上面図である。
図14図14は、他の実施形態に係る電線カバーを分解した上面図である。
図15図15は、他の実施形態に係る電線カバーを分解した上面図である。
図16図16は、他の実施形態に係る電線カバーを分解した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の電線カバーは、相手側コネクタに嵌合されるコネクタの嵌合方向後側に取り付けられる電線カバーであって、前記コネクタは、前記嵌合方向に直交する第1の直交方向に互いに離間して配されている複数の端子と、各前記端子に接続されて前記嵌合方向後側から引き出されている複数の電線とを有し、当該電線カバーは、前記複数の電線が挿入される挿入口と、前記挿入口から挿入された前記複数の電線が前記嵌合方向と交差する方向に導出される導出口とを有するハウジングと、前記ハウジングの内部で各前記電線の立体的な曲げを補助する補助部材と、を備え、前記ハウジングの内部で各前記電線が前記補助部材に補助されて立体的に曲げられて前記導出口から導出されている。
【0011】
前述した特許文献1に記載のカバーではカバーの内部で各電線の曲がり方が異なっている。特許文献1に記載のカバーでは、電線が引っ張られたとき、曲がりの外側となる電線ほど大きな力が作用するため、曲がりの外側となる電線が端子から抜け易い。
本開示の構成によると、電線カバーの内部で各電線がそれぞれ補助部材によって曲がりを補助されているので、各電線の曲がりを均一にできる。このため、電線が引っ張られたときに各電線に作用する力が均一化され、曲がりの外側となる電線に大きな力が作用することを抑制できる。
【0012】
ところで、各電線の曲がりを均一にしつつ嵌合方向に交差する方向に電線を引き出すためには、電線カバーの内部で各電線をそれぞれ補助部材によって補助して1回だけ平面的に曲げることも可能である。しかしながら、その場合は電線と補助部材との間に摩擦が生じる箇所が1箇所だけとなる。これに対し、本発明に係る電線カバーでは各電線を補助部材によって補助して立体的に曲げている。電線を立体的に曲げると電線が2回以上曲げられるので、1回だけ曲げる場合に比べて電線と補助部材との間に摩擦が生じる箇所が増える。このため、電線をコネクタの端子から引き抜く力を低減できる。また、電線を立体的に曲げると、電線と補助部材との間に摩擦が生じる箇所を増やしつつ電線を嵌合方向に交差する方向に引き出すことを、平面的に2回以上曲げる場合に比べてコンパクトな構成で実現できる。
【0013】
よって本開示の構成によると、コネクタから引き出された複数の電線を嵌合方向に交差する方向に引き出す電線カバーにおいて、電線に対して端子の抜け方向の力が生じても電線が端子から抜け難くすることをコンパクトな構成で実現できる。
【0014】
(2)前記ハウジングは、前記複数の電線に対して前記嵌合方向及び前記第1の直交方向の両方に直交する第2の直交方向の一方の側に配される第1のカバーと、前記複数の電線を挟んで前記第1のカバーと対向する第2のカバーと、を有し、前記補助部材は前記第2のカバーと前記電線との間に配される板状の部材であり、前記挿入口から挿入されて前記嵌合方向後側に延びる各前記電線が前記補助部材を通過した位置で前記補助部材に補助されて前記第2のカバー側に曲がっており、前記第2のカバー側に曲がった各前記電線が前記補助部材に補助されて前記導出口側に曲がっていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によると、電線が第2のカバー側に曲がる箇所で電線と補助部材との間に摩擦が生じ、第2のカバー側に曲がった各電線が導出口側に曲がる箇所で電線と補助部材との間に摩擦が生じる。すなわち、上記の電線カバーによると、電線が立体的に曲がっていることによって電線と補助部材との間に2か所で摩擦が生じる。このため、電線を1回だけ平面的に曲げる場合に比べて端子から電線を引き抜く力を低減できる。
【0016】
(3)前記補助部材の前記嵌合方向後側の縁部は、前記第1の直交方向のいずれか一方の側から他方の側に向かって前記嵌合方向後側に傾斜していることが好ましい。
【0017】
上記の構成によると、補助部材の嵌合方向後側の縁部が傾斜しているので、電線を立体的に曲げつつ嵌合方向に対して直角に引き出すことあるいはそれに近い角度で引き出すことができる。
【0018】
(4)前記補助部材の前記縁部に1つ又は複数の凹部が形成されており、前記補助部材を通過した位置で前記補助部材に補助されて前記第2のカバー側に曲がった各前記電線が前記凹部を通過していることが好ましい。
【0019】
上記の構成によると、凹部によって電線の位置が規制されるので、ハウジング内での電線の動きを抑制できる。
【0020】
(5)前記凹部は前記電線毎に形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によると、電線毎に凹部が形成されているので、例えば2つの電線毎あるいは3つの電線毎などのように複数の電線毎に1つの凹部を設ける場合に比べ、ハウジング内での電線の動きをより確実に抑制できる。
【0022】
(6)前記凹部は前記第2の直交方向から見て三角形状であることが好ましい。
【0023】
上記の構成によると、第2の直交方向から見て、三角形を構成している2辺のうちの一方の辺を支点にして電線を曲げ、当該一方の辺を支点にして曲げられた電線が凹部を通過した後、他方の辺を支点にして電線を曲げることにより、電線を嵌合方向に対して直角に引き出すことあるいはそれに近い角度で引き出すことがより容易になる
(7)前記補助部材はヒンジによって前記ハウジングに連結されていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によると、補助部材がヒンジによってハウジングに連結されているので、補助部材とハウジングとが連結されていない場合に比べ、電線カバーを取り付ける作業の作業効率が向上する。
【0025】
(8)前記補助部材に対して前記嵌合方向後側に配されており、前記補助部材と協働して前記ハウジング内での前記電線の動きを規制する規制部を有することが好ましい。
【0026】
上記の構成によると、補助部材と規制部とが協働して電線の動きを規制することにより、ハウジング内での電線の動きをより確実に抑制できる。
【0027】
(9)本開示のコネクタ構造は、相手側コネクタと嵌合されるコネクタであって、嵌合方向に直交する第1の直交方向に互いに離間して配されている複数の端子と、各前記端子に接続されて前記嵌合方向後側から引き出されている複数の電線とを有するコネクタと、前記コネクタの前記嵌合方向後側に取り付けられる請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電線カバーと、を備える。
【0028】
上記の構成によると、コネクタから引き出された複数の電線を嵌合方向に交差する方向に引き出す電線カバーを備えるコネクタ構造において、電線に対して端子の抜け方向の力が生じても電線が端子から抜け難くすることをコンパクトな構成で実現できる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態を説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図9を参照しながら説明する。以降の説明において前後方向、左右方向、上下方向とは、図1における前後方向、左右方向、上下方向を基準とする。前後方向は嵌合方向の一例である。左右方向は嵌合方向に直交する第1の直交方向の一例である。上下方向は嵌合方向及び第1の直交方向の両方に直交する第2の直交方向の一例である。複数の同一部材については、一部の部材に符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0031】
(1)コネクタ構造
図1及び図2に示すように、実施形態1に係るコネクタ構造1は、図示しない相手側コネクタに嵌合されるコネクタ2と、コネクタ2の後側に取り付けられる電線カバー3とを有している。
【0032】
図3及び図4に示すように、コネクタ2は、絶縁性の合成樹脂製であって、上下に扁平な略直方体形状をなしている。コネクタ2には前後方向に延びる複数のキャビティ10が形成されている。複数のキャビティ10は左右方向に間隔を空けて並んでいる。キャビティ10は前方及び後方に開口している。
【0033】
コネクタ2の上面には、弾性変形可能なロックアーム11が、コネクタ2の前端部から後方に延びて形成されている。ロックアーム11の上面には相手側コネクタの係合穴に係合されるロック部12が上方に突出して形成されている。ロックアーム11の後端部には、左右方向に延びた板状をなす把持部15が設けられている。作業者が把持部15に指を掛けることにより、ロックアーム11を弾性変形させることができる。
コネクタ2の上面には上方に突出する保護リブ14が形成されている。保護リブ14のコネクタ2からの突出高さ寸法は、ロックアーム11のコネクタ2の上面からの突出高さ寸法よりも大きく設定されている。
【0034】
コネクタ2の後端部には、上下方向及び左右方向に突出するエンドリブ16が設けられている。コネクタ2の上面においては、エンドリブ16はコネクタ2の左右両端部に設けられている。コネクタ2の左右両側面においては、エンドリブ16は上下方向の全域に設けられている。コネクタ2の下面においては、エンドリブ16は左右方向の全域に設けられている。
【0035】
図5に示すように、各キャビティ10の内部には金属製の雌端子17(端子の一例)が収容されている。雌端子17は前後方向に延びる角筒状をなしている。雌端子17の後端部には電線4が接続されている。電線4は芯線の外周面を絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆で包囲してなる。電線4の端末部分は絶縁被覆が皮剥ぎされて、芯線が露出している。実施形態1に係る芯線は、1本の金属線からなる、いわゆる単芯線である。芯線は、複数の金属細線を撚り合わせてなる撚線であってもよい。電線4は芯線が圧着、溶接、半田付けなどによって雌端子17に接続されており、雌端子17から後側に延びている。
図5では示されていないが、キャビティ10の内部において雌端子17の後側には雌端子17が後側に抜けることを防止する抜け止め部が設けられている。このため、雌端子17は電線4が後側に引っ張られても図5に示す位置より後側には移動しない。
【0036】
図1に示すように、電線カバー3はコネクタ2から後側に引き出された複数の電線4の向きを右側(嵌合方向と交差する方向の一例)に90度曲げるためのものである。電線カバー3は、図1に示す第1のカバー21及び第2のカバー22、並びに、図6に示す補助部材24を備えている。
図1に示すように、第1のカバー21と第2のカバー22とは電線カバー3のハウジング23を構成している。
図6に示すように、第1のカバー21は底壁部30、底壁部30の外周縁部から立ち上がっている4つの側壁部31(31A、31B、31C、31D)を有している。底壁部30は上面視で底辺51、左辺52、右辺(図示せず)、上辺53の4つの辺を有する四角形状であり、右辺が左辺52より長くなっている。このため上辺53は底辺51の左端から右端に向かって底辺51から離間するように傾斜している。具体的には、上辺53は底辺51に対して45度の角度で傾斜している。45度は一例である。上辺53の角度は適宜に決定できる。以降の説明では上辺53のことを斜辺53という。
【0037】
底壁部30の斜辺53に沿って立ち上がっている側壁部31C(規制部の一例)は、後述する補助部材24と協働してハウジング23内での電線4の前後方向の動きを規制する。図2に示すように、側壁部31Cの外面には第2のカバー22に形成されているロックアーム60が係止される係止突起32が形成されている。
図6に示すように、底壁部30の底辺51に沿って立ち上がっている側壁部31Aの中央部分は矩形状に切り欠かれている。矩形状に切り欠かれている部分の左右方向の幅は左右方向に並ぶ複数の電線4の左右方向の幅より広くなっており、複数の電線4をハウジング23の内部に挿入するための挿入口36を構成している。
【0038】
底壁部30の右辺に沿って立ち上がっている側壁部31Dは前後方向の中央部分が矩形状に切り欠かれている。切り欠かれている部分の前後方向の幅は、90度に曲げられて右側に延びる複数の電線4の前後方向の幅より広くなっており、挿入口36から挿入された複数の電線4が右側に導出される導出口37を構成している。
底壁部30の左辺52に沿って立ち上がっている側壁部31Bには、後述する補助部材24に設けられている被係止部66が係止される係止穴35が形成されている。
【0039】
第1のカバー21の前側には、コネクタ2のエンドリブ16が上側から差し込まれる溝を有する第1のガイド部38が一体に設けられている。具体的には、第1のガイド部38は側壁部31Dの外面から前側に張り出す右壁部38A、側壁部31Bの外面から前側に張り出す左壁部38B、及び、底壁部30の下面から前側に張り出す下壁部38Cを有している。
右壁部38Aの左側を向く面には上下方向に延びる縦溝39が形成されている。左壁部38Bの右側を向く面には上下方向に延びる縦溝39が形成されている。下壁部38Cの上側を向く面には左右方向に延びる横溝40が形成されている。これらの溝39及び40の前後方向の幅はエンドリブ16の前後方向の幅と略一致している。
【0040】
図1に示すように、第2のカバー22は複数の電線4の上側に配されており、複数の電線4を挟んで第1のカバー21と対向している。上面視で第2のカバー22の外周形状は第1のカバー21の外周形状と略一致している。
図6に示すように、第2のカバー22は概ね平板状である。第2のカバー22はヒンジ25によって第1のカバー21に回動可能に連結されている。第2のカバー22の前側には、コネクタ2のエンドリブ16の上端部が差し込まれる溝42を有する第2のガイド部43が一体に設けられている。具体的には、第2のガイド部43は、第2のカバー22の右側の端面から前側に張り出す右側ガイド部43Aと、第2のカバー22の左側の端面から前側に張り出す左側ガイド部43Bとを有している。右側ガイド部43Aの左側を向く面には上下方向に延びる縦溝42が形成されている。左側ガイド部43Bの右側を向く面には上下方向に延びる縦溝42が形成されている。これらの溝42の前後方向の幅はエンドリブ16の前後方向の幅と略一致している。これらの縦溝42の下側にはエンドリブ16が上側に抜けることを防止するための壁44が形成されている。
【0041】
図2及び図6に示すように、第2のカバー22の後側には、側壁部31Cの外面に形成されている係止突起32に係止される弾性変形可能なロックアーム60が形成されている。
【0042】
図6を参照して、補助部材24について説明する。補助部材24はハウジング23の内部で各電線4の立体的な曲げを補助するものである。補助部材24は第2のカバー22と電線4との間に配される板状の部材であり、ヒンジ26によって第1のカバー21の側壁部31Dに回動可能に連結されている。補助部材24の外周形状は、上側から見てハウジング23の内部空間の形状と略一致しているが、前後方向の幅がハウジング23の内部空間の前後方向の幅より狭くなっている。
【0043】
補助部材24が回動されてハウジング23の内部に収容された状態では、補助部材24の嵌合方向後側の縁部は、左右方向の左側(第1の直交方向のいずれか一方の側の一例)から右側(他方の側の一例)に向かって嵌合方向後側に傾斜した状態となる。
補助部材24の嵌合方向後側の縁部には複数の凹部65が形成されている。凹部65の数は電線4の数と同じである。各凹部65は上面視で直角三角形状に形成されている。直角三角形状の凹部65が複数連なって形成されていることにより、補助部材24の嵌合方向後側の縁部は階段状に形成されている。
【0044】
補助部材24の右端部には上側に向かって突出する弾性変形可能な被係止部66が一体に設けられている。被係止部66は上側に向かって延びる腕部と腕部の先端部から右側に張り出す係止爪とを有している。補助部材24が閉じられると係止爪が第1のカバー21の側壁部31Bに形成されている係止穴35に係止されることによって補助部材24が第1のカバー21にロックされる。
【0045】
(2)電線カバーの取り付け
図7に示すように、コネクタ2への電線カバー3の取り付けでは、先ず、コネクタ2のエンドリブ16が電線カバー3の第1のガイド部38の溝39及び40に差し込まれることによって電線カバー3がコネクタ2に取り付けられる。電線カバー3がコネクタ2に取り付けられると、コネクタ2の後側から引き出されている電線4は第1のカバー21の上面に沿って後側に延び、第1のカバー21の側壁部31Cを乗り越えて更に後側に延びた状態となる。
【0046】
次に、図8に示すように、各電線4がそれぞれ側壁部31Cの内面(斜面)に突き当たる位置で上に90度曲げられ、その状態で補助部材24が閉じられる。これにより、挿入口36から挿入されて嵌合方向後側に延びる各電線4が、補助部材24を通過した位置で補助部材24に補助されて上側(第2のカバー22側)に曲がった状態となる。そして、上側に曲がった電線4が凹部65を通過して上側に延びる状態となる。
【0047】
次に、図9に示すように、凹部65を通過した各電線4が補助部材24に補助されて右側(導出口37側の一例)に90度曲げられ、導出口37から外に引き出される。
次に、図1及び図2及びに示すように、各電線4が導出口37から引き出されている状態で第2のカバー22が閉じられる。第2のカバー22が閉じられると、第2のカバー22のロックアーム60が係止突起32に係止されることによって第1のカバー21と第2のカバー22とがロックされる。
【0048】
(3)実施形態の効果
実施形態1の電線カバー3によると、電線カバー3の内部で各電線4がそれぞれ補助部材24によって曲がりを補助されているので、各電線4の曲がりを均一にできる。このため、電線4が引っ張られたときに各電線4に作用する力が均一化され、曲がりの外側となる電線4に大きな力が作用することを抑制できる。
更に、電線カバー3は各電線4を補助部材24によって補助して立体的に曲げている。電線4を立体的に曲げると電線4が2回以上曲げられるので、1回だけ曲げる場合に比べて電線4と補助部材24との間に摩擦が生じる箇所が増える。このため、電線4をコネクタ2の雌端子17から引き抜く力を低減できる。また、電線4を立体的に曲げると、電線4と補助部材24との間に摩擦が生じる箇所を増やしつつ電線4を嵌合方向に交差する方向に引き出すことを、平面的に2回以上曲げる場合に比べてコンパクトな構成で実現できる。
よって実施形態1の構成によると、コネクタ2から引き出された複数の電線4を嵌合方向に交差する方向に引き出す電線カバー3において、電線4に対して雌端子17の抜け方向の力が生じても電線4が雌端子17から抜け難くすることをコンパクトな構成で実現できる。
【0049】
電線カバー3によると、電線4が第2のカバー22側に曲がる箇所(電線4が上側に曲がる個所)で電線4と補助部材24との間に摩擦が生じ、第2のカバー22側に曲がった各電線4が導出口37側に曲がる箇所(電線4が右側に曲がる個所)で電線4と補助部材24との間に摩擦が生じる。すなわち、電線カバー3によると、電線4が立体的に曲がっていることによって電線4と補助部材24との間に2か所で摩擦が生じる。このため、電線4を1回だけ平面的に曲げる場合に比べて雌端子17から電線4を引き抜く力を低減できる。
【0050】
電線カバー3によると、補助部材24の嵌合方向後側の縁部が傾斜しているので、電線4を立体的に曲げつつ嵌合方向に対して直角に引き出すことあるいはそれに近い角度で引き出すことができる。
【0051】
電線カバー3によると、凹部65によって電線4の位置が規制されるので、ハウジング23内での電線4の動きを抑制できる。
【0052】
電線カバー3によると、電線4毎に凹部65が形成されているので、例えば2つの電線4毎あるいは3つの電線4毎などのように複数の電線4毎に1つの凹部を設ける場合に比べ、ハウジング23内での電線4の動きをより確実に抑制できる。
【0053】
電線カバー3によると、上下方向(第2の直交方向)から見て、凹部65が直角三角形状であるので、直角三角形の直角を構成している2辺のうちの一方の辺を支点にして電線4を曲げ、当該一方の辺を支点にして曲げられた電線4が凹部を通過した後、他方の辺を支点にして電線4を曲げることにより、電線4を嵌合方向に対して直角に引き出すことあるいはそれに近い角度で引き出すことがより容易になる。
【0054】
電線カバー3によると、補助部材24がヒンジ26によってハウジング23に連結されているので、補助部材24とハウジング23とが連結されていない場合に比べ、電線カバー3を取り付ける作業の作業効率が向上する。
【0055】
電線カバー3によると、補助部材24と側壁部31C(規制部)とが協働して電線4の前後方向の動きを規制することにより、ハウジング23内での電線4の動きをより確実に抑制できる。
【0056】
実施形態1のコネクタ2によると、コネクタ2から引き出された複数の電線4を嵌合方向に交差する方向に引き出す電線カバー3を備えるコネクタ構造1において、電線4が引っ張られた場合に電線4がコネクタ2の雌端子17から抜ける可能性を低減することをコンパクトな構成で実現できる。
【0057】
<実施形態2>
図10に示すように、実施形態2に係るコネクタ構造201は、コネクタ202と電線カバー203とを備えている。コネクタ202は複数のキャビティ10が上下2段に分かれて設けられている。上段のキャビティ10は互いに左右方向に離間して一列に配されている。下段のキャビティ10も互いに左右方向に離間して一列に配されている。
【0058】
図11を参照して、電線カバー203の内部について説明する。実施形態2ではコネクタ202の後側から電線4が上下2段に引き出されているが、電線カバー203の内部ではそれらの電線4は上下に仕切られておらず、上段の電線4も下段の電線4も第1のカバー221と補助部材224との間を通って後側に延びている。
実施形態2に係るコネクタ構造201はその他の点において実施形態1と実質的に同一である。
【0059】
<実施形態3>
図12に示すように、実施形態3に係る電線カバー303は第1のカバー21と第2のカバー22とが補助部材24を介して連結されている。具体的には、第1のカバー21はヒンジ301を介して補助部材24に連結されている。第2のカバー22はヒンジ302を介して補助部材24に連結されている。実施形態3はその他の点において実施形態1と実質的に同一である。
【0060】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0061】
(1)上記実施形態1の補助部材24は1つの電線4ごとに1つの凹部65が設けられている。これに対し、図13に示す補助部材424のように、複数(図13では2つ)の電線4ごとに1つの凹部465を設け、複数の電線4が同じ凹部465を通過してもよい。
【0062】
(2)上記実施形態1の補助部材24は凹部65を備えている。これに対し、図14に示す補助部材524のように、凹部565を1つだけ備えていてもよい。あるいは、補助部材24は凹部を備えていなくてもよい。
【0063】
(3)上記実施形態1の補助部材24の凹部は直角三角形状である。これに対し、図15に示す凹部665ように半円状に形成されてもよい。
【0064】
(4)上記実施形態1の電線カバー3は斜辺53を有している。これに対し、図16に示す電線カバー703のように斜辺53を有していなくてもよい。この場合、補助部材724も電線カバー703の形状に合わせて斜辺を有していない形状となる。
【0065】
(5)上記実施形態1では補助部材24が電線カバーと一体に形成されているが、補助部材24はコネクタ2と一体に形成されてコネクタ2から嵌合方向後側に延びていてもよい。そして、後側に延びた補助部材24が電線カバー3のハウジング23に挿入されて電線4の立体的な曲げを補助してもよい。
【0066】
(6)上記実施形態1では上下方向(第2の直交方向)から見て凹部65が直角三角形状である場合を例に説明したが、凹部65は直角三角形以外の三角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1: コネクタ構造
2: コネクタ
3: 電線カバー
4: 電線
10: キャビティ
11: ロックアーム
12: ロック部
14: 保護リブ
15: 把持部
16: エンドリブ
17: 雌端子(端子の一例)
21: 第1のカバー
22: 第2のカバー
23: ハウジング
24: 補助部材
25: ヒンジ
26: ヒンジ
30: 底壁部
31: 側壁部
31A: 側壁部
31B: 側壁部
31C: 側壁部(規制部の一例)
31D: 側壁部
32: 係止突起
35: 係止穴
36: 挿入口
37: 導出口
38: ガイド部
38A: 右壁部
38B: 左壁部
38C: 下壁部
39: 縦溝
40: 横溝
42: 縦溝
43: ガイド部
43A: 右側ガイド部
43B: 左側ガイド部
44: 壁
51: 底辺
52: 左辺
53: 上辺
60: ロックアーム
65: 凹部
66: 被係止部
201: コネクタ構造
202: コネクタ
203: 電線カバー
221: 第1のカバー
224: 補助部材
301: ヒンジ
302: ヒンジ
303: 電線カバー
424: 補助部材
465: 凹部
524: 補助部材
565: 凹部
665: 凹部
703: 電線カバー
724: 補助部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16