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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20231207BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B41J29/38 204
B41J2/175 301
B41J29/38 205
B41J29/38 501
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020134186
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030290
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木元 太一朗
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-017828(JP,A)
【文献】特開2010-232836(JP,A)
【文献】特開平09-058092(JP,A)
【文献】特開2010-076355(JP,A)
【文献】特開2017-227990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーの着色剤及び黒の着色剤を用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、コントローラと、メモリと、入力インタフェースと、
を備え、
前記コントローラは、
前記カラーの着色剤の残量が所定量未満になった場合に、前記画像形成部による前記カラーの着色剤を用いた画像の形成を許可する許可モードから、前記画像形成部による前記カラーの着色剤を用いた画像の形成を制限する制限モードへ、と移行する移行処理と、
外部装置又は前記入力インタフェースから取得した時刻情報に基づく基準時刻情報を逐次前記メモリに記憶する基準時刻記憶処理と、
前記基準時刻記憶処理により前記メモリに記憶されている前記基準時刻情報を用いて、当該基準時刻情報より前又は後の所望の経過時間を計時する計時処理と、
前記メモリに記憶された前記基準時刻情報を用いて前記計時処理により計時される、前記制限モードに移行してからの第1経過時間が、予め決められた第1期間に到達した場合に、前記制限モードを終了する終了処理と、
を実行する画像形成装置であって、
前記コントローラは、
前記第1経過時間が前記第1期間に到達するより前の第1タイミングで前記画像形成装置への電力供給が停止され、その後の第2タイミングで前記画像形成装置への電力供給が開始された場合、前記第1期間よりも短い第2期間を設定し、前記第2タイミングから前記第2期間の間は前記制限モードの継続を行い、
前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に、前記外部装置又は前記入力インタフェースからの新たな時刻情報に基づく新たな基準時刻情報が取得されたこと、を含む所定の継続要件が満たされた場合には、当該第2期間の経過後も前記制限モードを継続し、前記継続要件が満たされない場合には、前記第2タイミングから前記第2期間の経過前に前記制限モードを終了する継続可否判定を行うモード制御処理
を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記継続要件は、
少なくとも、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に取得した前記新たな基準時刻情報が、前記メモリに記憶されている前記基準時刻情報よりも後の時刻であること、を含み、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、前記新たな基準時刻情報が前記メモリに記憶されている前記基準時刻情報以前の時刻であった場合には、前記継続要件が満たされずに、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の画像形成装置において、
前記継続要件は、
少なくとも、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に取得した前記新たな基準時刻情報を用いて前記計時処理により計時される前記第1経過時間が、前記第1期間以内であること、を含み、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、前記新たな時刻情報を用いて計時される前記第1経過時間が前記第1期間を超えていた場合には、前記継続要件が満たされずに、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、
前記コントローラは、さらに、
前記基準時刻記憶処理により基準時刻情報が記憶されたことに応じて前記計時処理により計時される、前記第1経過時間を前記メモリに逐次記憶する、経過時間記憶処理を実行し、
前記継続要件は、
少なくとも、前記第1タイミングより前に前記経過時間記憶処理により前記メモリに記憶されていた前記第1経過時間と、前記第1タイミングより前に前記基準時刻記憶処理で前記メモリに記憶されていた前記基準時刻情報、及び、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に取得した前記新たな基準時刻情報、を用いて前記計時処理により計時された、それら2つの基準時刻情報の間の第2経過時間と、の合計が前記第1期間以下であること、を含み、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、前記第1経過時間と前記第2経過時間との合計が、前記第1期間を超えている場合には、前記継続要件が満たされずに、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記継続要件は、
少なくとも、前記第1タイミングよりも前に、外部の計時サーバ、若しくは、前記外部装置で動作する制御プログラムから、前記基準時刻情報に対応する日時情報を取得していること、を含み、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、第1タイミングよりも前に前記日時情報が取得されていない場合には、前記継続要件が満たされずに、前記第1経過時間が前記第1期間に到達したら前記第2期間を設定することなく前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記継続要件は、少なくとも、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記入力インタフェースを介して取得された前記新たな基準時刻情報に対応する日時情報が予め定めた適合条件を満たすことを含み、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記入力インタフェースを介して取得した前記新たな日時情報が前記適合条件を満たさない場合に、前記継続要件が満たされずに、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記外部装置又は前記入力インタフェースを含む複数の取得元それぞれから、複数の前記基準時刻情報に対応する日時情報が取得可能に構成されており、
前記継続要件は、少なくとも、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に最も早く取得される前記基準時刻情報を用いて計時される前記第1経過時間が前記第1期間以内であること、を含み、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に最も早く取得される前記基準時刻情報を用いて計時される前記第1経過時間が前記第1期間を超えている場合に、前記継続要件が満たされずに、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記外部装置又は前記入力インタフェースを含む複数の取得元それぞれから、複数の前記基準時刻情報に対応する日時情報が取得可能に構成されており、
前記複数の基準時刻情報のそれぞれは、
対応する前記取得元に応じた優先度が関連付けられており、
前記優先度は、前記取得元が、前記画像形成装置に備えられた操作部を介したユーザ操作である場合、ネットワークを介したユーザ操作である場合、前記外部装置で動作する制御プログラムである場合、外部の計時サーバである場合、の順で順次高くなるように設定されており、
前記コントローラは、
前記計時処理において、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に、より優先度の高い前記新たな基準時刻情報が取得される都度、当該優先度の高い新たな基準時刻情報を用いて前記第1経過時間を計時し、
前記継続要件は、少なくとも、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に、より優先度の高い前記新たな基準時刻情報を用いて計時される前記第1経過時間が前記第1期間以内であること、を含み、
前記コントローラは、さらに、
前記モード制御処理において、前記優先度のより高い新たな時刻情報を用いて計時された前記第1経過時間が前記第1期間を超えていた場合に、前記継続要件が満たされずに、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記継続要件は、
少なくとも、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記画像形成装置への電力供給が停止された回数が、所定の上限値以下であること、を含み、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、前記画像形成装置への電力供給が停止された回数が前記上限値を超えた場合には、前記継続要件が満たされずに、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記制限モードを終了する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記コントローラは、
前記モード制御処理において、前記第1タイミング後、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に前記新たな基準時刻情報が取得されたことを契機に当該第2期間の経過後も前記制限モードを継続する、前記継続可否判定を行った後、再度、前記画像形成装置への電力供給が停止された場合には、
その後の前記計時処理では、
前記継続可否判定時に使用され、取得後に前記基準時刻記憶処理で前記メモリに記憶されていた前記新たな基準時刻情報を用いて、前記制限モードに移行してからの前記第1経過時間を計時する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の画像形成装置において、
電話回線を介しFAX画像データの送受信を行うFAX通信部をさらに有し、
前記コントローラは、さらに、
前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前においては、前記画像形成部に対し、前記FAX通信部が受信した前記FAX画像データの画像の形成を禁止する禁止処理
を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の画像形成装置において、
表示部をさらに備え、
前記コントローラは、さらに、
前記モード制御処理の前記継続可否判定の判定結果に基づき前記制限モードの継続が確定した場合に、当該制限モードの残り継続時間を1回だけ前記表示部に表示させる、残り時間表示処理
を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の画像形成装置において、
表示部をさらに備え、
前記コントローラは、さらに、
前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前においては、前記入力インタフェースを介した基準時刻に対応する日時情報の操作入力を促す所定表示を前記表示部に表示させる、時刻入力表示処理
を実行することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーの着色剤を用いた画像の形成を制限する機能を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、カラーのインクがなくなった場合に、モノクロ印刷のみを可能とするモードに切り替える印刷装置が知られている。この従来技術では、前述のモード切り替え後、例えば5日間等の所定期間だけ、当該モノクロ印刷のみを可能とするモードが継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-76355公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置において、例えば、ユーザによる誤操作、停電等のアクシデント、などにより画像形成装置への電力供給が停止される場合がある。この場合、現在時刻が初期化されてしまうと、いわゆる時刻見失い状態となる。特許文献1に記載の技術では、前述のモード切り替え後に、このような時刻見失い状態が生じた場合に関しては、特に考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、カラーの着色剤による画像形成を制限する制限モードへの移行後に時刻見失い状態が生じた場合でも、適宜に制限モードを継続可能としてユーザの使い勝手を向上できる、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、カラーの着色剤及び黒の着色剤を用いて被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、コントローラと、メモリと、入力インタフェースと、を備え、前記コントローラは、前記カラーの着色剤の残量が所定量未満になった場合に、前記画像形成部による前記カラーの着色剤を用いた画像の形成を許可する許可モードから、前記画像形成部による前記カラーの着色剤を用いた画像の形成を制限する制限モードへ、と移行する移行処理と、外部装置又は前記入力インタフェースから取得した時刻情報に基づく基準時刻情報を逐次前記メモリに記憶する基準時刻記憶処理と、前記基準時刻記憶処理により前記メモリに記憶されている前記基準時刻情報を用いて、当該基準時刻情報より前又は後の所望の経過時間を計時する計時処理と、前記メモリに記憶された前記基準時刻情報を用いて前記計時処理により計時される、前記制限モードに移行してからの第1経過時間が、予め決められた第1期間に到達した場合に、前記制限モードを終了する終了処理と、を実行する画像形成装置であって、前記コントローラは、前記第1経過時間が前記第1期間に到達するより前の第1タイミングで前記画像形成装置への電力供給が停止され、その後の第2タイミングで前記画像形成装置への電力供給が開始された場合、前記第1期間よりも短い第2期間を設定し、前記第2タイミングから前記第2期間の間は前記制限モードの継続を行い、前記第2タイミングから前記第2期間が経過するよりも前に、前記外部装置又は前記入力インタフェースからの新たな時刻情報に基づく新たな基準時刻情報が取得されたこと、を含む所定の継続要件が満たされた場合には、当該第2期間の経過後も前記制限モードを継続し、前記継続要件が満たされない場合には、前記第2タイミングから前記第2期間の経過前に前記制限モードを終了する継続可否判定を行うモード制御処理を実行することを特徴とする。
【0007】
本願発明の画像形成装置においては、画像形成部が、カラーの着色剤及び黒の着色剤を用いて画像の形成を行うことができる。その際、画像形成に伴う消費によりカラーの着色剤の残量が少なくなったら、当該カラーの着色剤を用いた画像の形成を制限する機能が備えられている。すなわち、コントローラが移行処理を実行することにより、カラーの着色剤の残量が所定量未満になった場合には許可モードから制限モードへの移行が行われ、カラーの着色剤を用いた画像の形成が制限される。
【0008】
一方このとき、コントローラでは、基準時刻記憶処理と、計時処理と、終了処理と、が行われる。すなわち、外部装置又は入力インタフェースから取得した時刻情報に対応した基準時刻情報がメモリに逐次記憶されるとともに、メモリに記憶されている基準時刻情報を用いて、その基準時刻情報より前又は後の所望の経過時間が計時される。そして、上記計時処理により計時された、上記制限モードに移行してからの第1経過時間が、予め決められた第1期間に到達した場合には、当該制限モードが終了する。これにより、前述のようなカラーの着色剤の残量不足により移行した制限モードは、原則、移行後第1期間が経過したときに終了する。
【0009】
ここで、ユーザによる操作、停電等のアクシデント、などにより、上記のように制限モードに移行してから、前記画像形成装置への電力供給が停止される場合がある。この場合、基準時刻情報の取得ができないことから、基準時刻記憶処理で最新の基準時刻情報をメモリに逐次記憶していくことができず、いわゆる時刻見失い状態となる。
【0010】
そこで本願発明においては、コントローラにより、モード制御処理が実行される。これにより、上記第1期間が経過するより前の第1タイミングで前記画像形成装置への電力供給が停止されその後の第2タイミングで前記画像形成装置への電力供給が開始されたら、第1期間よりも短い第2期間が設定されるとともに、上記第2タイミングからその第2期間の間、暫定的に制限モードが継続される。そしてさらに継続可否判定が行われることで、所定の継続要件が満たされない場合には第2期間の経過前に制限モードを終了する一方、継続要件が満たされた場合は第2期間の経過後もさらに制限モードが継続される。継続要件には、例えば、第2タイミングから第2期間が経過するよりも前に、外部装置又は入力インタフェースからの新たな時刻情報に基づく新たな基準時刻情報が取得されたこと、等が含まれる。
【0011】
本願発明によれば、上記のようにして、時刻見失いが発生した場合も第2期間中は制限モードが継続され、さらに継続要件が満たされた場合には第2期間の後も制限モードが継続されるので、黒の着色剤を用いた画像の形成を長く行うことができる。この結果、ユーザの使い勝手を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カラーの着色剤による画像形成を制限する制限モードへの移行後に時刻見失い状態が生じた場合でも、適宜に制限モードを継続可能としてユーザの使い勝手を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による複合機の概略構成図である。
図2】複合機の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図3】CPUの印刷処理部により実行される制御手順を表すフローチャートである。
図4】CPUのモード設定部により実行される制御手順を表すフローチャートである。
図5】CPUの日時情報設定部により実行される制御手順を表すフローチャートである。
図6】CPUの時刻差分処理部により実行される制御手順を表すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態による制御手法が実現されるときの時間の流れを説明する説明図である。
図8】日時情報の取得元に応じて優先度を付す変形例における、CPUの日時情報設定部により実行される制御手順を表すフローチャートである。
図9】CPUのモード設定部により実行される制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を、インクジェット方式で印刷を行う複合機に適用した場合の例である。
【0015】
<複合機の全体構成>
複合機1の全体構成を図1に示す。図1において、複合機1は、キャリッジ2と、インクジェットヘッド3と、プラテン4と、搬送ローラ5,6と、等を備えている。なお、複合機1が画像形成装置の一例である。
【0016】
キャリッジ2は、図示しないベルト等を介し、後述の図2に示すキャリッジモータ56に接続されており、キャリッジモータ56が駆動することで主走査方向に移動する。
【0017】
インクジェットヘッド3は、4本のチューブ31と接続されている。4本のチューブ31は、複合機1の右前端部において主走査方向に並んだ4つのインクカートリッジ32とそれぞれ接続されている。4つのインクカートリッジ32は、ブラックインクカートリッジ32Kと、イエローインクカートリッジ32Yと、シアンインクカートリッジ32Cと、マゼンタインクカートリッジ32Mと、により構成されている。各インクカートリッジ32K,32Y,32C,32Mにそれぞれ貯留されたブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクはチューブ31を介してインクジェットヘッド3に供給される。なお、インクが着色剤の一例である。また、各インクカートリッジ32K,32Y,32C,32M内のインクの残量は、適宜の箇所に設けられた後述の図2に示すインク残量センサ63により検出可能となっている。
【0018】
またインクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されており、キャリッジ2がインクジェットヘッド3を主走査方向に移動させながらインクジェットヘッド3がノズル10からインクを吐出することで、画像の形成すなわち印刷が行われる。すなわち、キャリッジ2及びインクジェットヘッド3が画像形成部の一例である。
【0019】
プラテン4は、インクジェットヘッド3の下方に位置し、主走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。記録用紙Pが被記録媒体の一例である。搬送ローラ5,6は、それぞれ、搬送方向におけるプラテン4の上流側及び下流側に位置している。搬送ローラ5,6は、図示しないギヤ等を介し後述の図2に示す搬送モータ57に接続され、搬送モータ57の駆動により回転して記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0020】
上記構成により、複合機1は、搬送ローラ5,6により記録用紙Pを所定距離ずつ搬送する毎に、キャリッジ2を主走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド3の複数のノズル10からインクを吐出させることによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0021】
<電気的構成>
次に、上記複合機1の電気的構成を図2に示す。複合機1の動作は、制御装置50によって制御されている。
【0022】
制御装置50は、CPU51と、ROM52と、RAM53と、EEPROM54と、特定用途向け集積回路であるASIC(application specific integrated circuit)55と、インタフェース90と、等を備える。CPU51がコントローラの一例であり、RAM53及びEEPROM54がメモリの一例である。制御装置50は、これらの構成を備えることにより、キャリッジモータ56、アクチュエータ14、搬送モータ57、入力インタフェース(I/F)58、LCD59、FAX部62、スキャナ部64、時計66等の制御を行う。
【0023】
CPU51は、日時情報設定部51Aと、モード設定部51Bと、時刻差分処理部51Cと、印刷処理部51Dと、を機能的に備えている。各機能の詳細については後述する。
【0024】
インタフェース90は、他の装置と通信するための有線LANインタフェース又は無線インタフェースであり、ネットワークNTに接続されている。複合機1は、インタフェース90及びネットワークNTを介し、SNTPサーバ200に通信可能に接続される。なおSNTPサーバ200は公知の計時サーバであり、外部の計時サーバの一例である。
【0025】
LCD59は、複合機1に係わる各種情報を表示する。なお、LCD59は、表示部の一例である。入力I/F58は、例えばキーボード、マウス等を含み、ユーザ操作を入力するためのインタフェースである。なお、入力I/F58は、LCD59の表示画面に重畳されたタッチセンサでも良い。
【0026】
また制御装置50には、電源回路60が接続されており、この電源回路60が、ACアダプタ61を介し、配線用差込接続器65に接続されている。配線用差込接続器65が図示しない適宜の給電線に接続されることで、当該給電線から複合機1へ所定電圧が供給される。供給された所定電圧は、ACアダプタ61を介し適宜に降圧され、その降圧された電圧に基づき、電源回路60が制御装置50を含む複合機1内の各部に電力供給を行う。
【0027】
インク残量センサ63は、各インクカートリッジ32K,32Y,32C,32M内のインクの残量を検出し、検出結果をCPU51へ入力する。FAX部62は、電話回線を介し、外部通信機器との間でFAXの送信動作及び受信動作を行う。スキャナ部64は、原稿の画像を読み取り、対応するスキャンデータを生成する。FAX部62がFAX通信部の一例である。
時計66は、RTC(リアルタイムクロック:Real time Clock)等の回路であり、時刻の計時を行う内部時計としての機能と、時間の計時を行うタイマーとしての機能を有している。この時計66は、電源回路60から駆動電力が供給されることで駆動する。また、この時計66により計時される現在時刻は、インタフェース90を介して、ネットワークNT上にあるSNTP(Simple Network Time Protocol)サーバ200や、操作端末から取得した時刻情報に基づいて補正される。
【0028】
なお、図2では、CPU51を1つだけ図示しているが、制御装置50がCPU51を複数備え、それら複数のCPU51が分担して処理を行ってもよい。また、図2では、ASIC55を1つだけ図示しているが、制御装置50がASIC55を複数備え、それら複数のASIC55が分担して処理を行ってもよい。
【0029】
<黒のみモード>
上述したように、本実施形態の複合機1においては、インクカートリッジ32が、インクカートリッジ32Y,32C,32Mに貯留されているイエロー、シアン、マゼンタのカラーインクと、インクカートリッジ32Kに貯留されているブラックインクを用いて、画像の形成を行うことができる。その際、画像形成に伴う消費によりカラーインクの残量が少なくなったら、当該カラーインクを用いた画像の形成を制限する機能が備えられている。すなわち、インク残量センサ63により検出されたカラーインクの残量が所定量未満になった場合には、CPU51の制御により、それまでの「通常モード」から「黒のみモード」への移行が行われ、カラーインクを用いた画像の形成が制限される。この例では、カラーインクを用いた画像形成が行われず、ブラックインクを用いた画像形成のみが行われる。なお、通常モードが許可モードの一例であり、黒のみモードが制限モードの一例である。
【0030】
ここで、黒のみモードへ移行した後の処理には、所定の時間制限が存在する。そのために、本実施形態の複合機1では、外部から、具体的には前述のSNTPサーバ200から出力される現在時刻、すなわちサーバ現在時刻が取得され、時計66の時刻と同期される。なお、サーバ現在時刻と同期された時計66の時刻が基準時刻情報の一例である。取得されたサーバ現在時刻は、複合機1のEEPROM54に逐次記憶される。また、時計66の時刻は、カウントアップされるたびに逐次RAM53に記憶される。複合機1では、RAM53に記憶された時計66の時刻を用いて、上述のように通常モードから黒のみモードへ移行してからの経過時間が計測され、予め決められた期間、例えば60日に到達した場合に、当該黒のみモードが終了する。これにより、前述のようなカラーインクの残量不足により移行した黒のみモードは、原則、移行後60日が経過したときに終了し、通常モードに戻ることになる。
【0031】
<時刻見失いの発生>
ここで、上記のように黒のみモードに移行してから、例えば、複合機1に設けた図示しない電源スイッチをユーザがOFF操作したり、停電等のアクシデントがあったり、等により、電源回路60による複合機1への電力供給が停止する場合がある。この場合、RAM53に記憶された時計66の時刻が消去されることから、いわゆる時刻見失い状態となる場合がある。なお、例えば時計66にバックアップ用の電池がある場合、配線用差込接続器65が給電線に接続されていれば時刻見失い状態とならず、接続されない場合も所定期間は電池から電力供給が継続されるが、所定期間を経過すると電力供給が停止し時刻見失い状態となる。
【0032】
<実施形態の特徴>
本実施形態の複合機1の特徴は、上記のような、黒のみモードに移行後の時刻見失い時における処理にある。以下、その詳細を、図3図6により順を追って説明する。
<印刷処理>
まず、CPU51の印刷処理部51Dが実行する制御手順を図3により説明する。なお、この印刷処理部51Dによる制御は、例えば後述するモード設定部51Bによる制御、日時情報設定部51Aによる制御、時刻差分処理部51Cによる制御、と同時並行して行われる。図3において、まずS50で、対象とする印刷データが取得される。この印刷データは、例えばスマートフォン、パソコン、タブレットコンピュータ等の操作端末で生成され、ネットワークNTを介し取得されたデータである。あるいは、スキャナ部64によるスキャンデータ、外部通信機器からFAX部62で受信したFAXデータ、等であってもよい。
【0033】
その後、S400で、この時点での複合機1のステータスが通常モードであるか否かが判定される。詳細は後述するが、本実施形態では、複合機1のステータスには、「通常モード」と、「黒のみモード」と、「黒のみモード猶予期間中」と、「黒のみモード終了」と、の4つが存在する。通常モードであればYes判定され、S450でキャリッジ2及びインクジェットヘッド3による画像形成処理すなわち印刷処理が行われた後、このフローを終了する。
【0034】
一方、複合機1のステータスが黒のみモードであった場合はNo判定され、S500へ移行する。S500では、S50で取得された印刷データがカラーインクを使って印刷すべきカラーデータであるか否かが判定される。カラーデータであればYes判定され、黒のみモードではカラーデータに係わる印刷は行わないことから、このままこのフローを終了する。モノクロデータであればNo判定され、S550へ移行する。
【0035】
S550では、複合機1のステータスが「黒のみモード」であるか否かが判定される。複合機1のステータスが「黒のみモード」であればYes判定され、S600でキャリッジ2及びインクジェットヘッド3による画像形成処理すなわち印刷処理が行われた後、このフローを終了する。一方S550で複合機1のステータスが「黒のみモード猶予期間中」「黒のみモード終了」のいずれかである場合はNo判定され、S650へ移行する。
【0036】
S650では、複合機1のステータスが「黒のみモード猶予期間中」であるか否かが判定される。「黒のみモード終了」である場合はNo判定され、このままこのフローを終了する。「黒のみモード猶予期間中」であればYes判定され、S700へ移行する。
【0037】
S700では、S50で取得された印刷データが、前述の外部通信機器からFAX部62で受信したFAXデータであるか否か、が判定される。印刷データが、前述の操作端末から取得されたデータ、スキャナ部64によるスキャンデータ、等のファックスデータ以外のデータであった場合、No判定となり、S600でキャリッジ2及びインクジェットヘッド3による画像形成処理すなわち印刷処理が行われた後、このフローを終了する。印刷データがFAXデータであった場合、Yes判定となり、印刷処理を行うことなくこのフローを終了する。
【0038】
<モード設定>
次に、CPU51のモード設定部51Bにより実行される制御手順を図4のフローチャートにより説明する。なお、このモード設定部51Bによる制御は、例えば図3の印刷処理の後や、後述する日時情報設定部51Aによる制御と同時並行して行われる。
【0039】
<黒のみモードへのモード切替等>
図4において、まずS301において、複合機1のステータスがまず通常モードとされる。
【0040】
その後、S303で、インク残量センサ63により検出されたカラーインクの残量が所定量未満であり、かつ、複合機1のステータスが「黒のみモード終了」以外すなわち「通常モード」「黒のみモード」「黒のみモード猶予期間中」のどれかであるか、が判定される。カラーインクの残量がまだ十分残り所定量以上であるか、若しくは、複合機1のステータスが「黒のみモード終了」である場合はNo判定され、このフローを終了する。
【0041】
カラーインクの残量が所定量未満であり、かつ、複合機1のステータスが「通常モード」「黒のみモード」「黒のみモード猶予期間中」のいずれかである場合はYes判定され、S305へ移行する。
【0042】
S305では、複合機1のステータスが「黒のみモード猶予期間中」であるか否かが判定される。「黒のみモード猶予期間中」であればYes判定され、後述のS341へ移行する。「通常モード」「黒のみモード」であればNo判定され、S307へ移行する。
【0043】
S307では、複合機1のステータスが黒のみモードに変更される。なおこの時点で既に「黒のみモード」であった場合は、そのままのモードが維持される。このS307でモード設定部51Bが実行する処理が移行処理の一例である。
【0044】
S309では、ステータスが初めて「黒のみモード」となったか否かが判定される。この時点で複合機1において「黒のみモード」となった履歴が初めてではない、つまり2回目以降であった場合はNo判定され、後述のS313へ移行する。この直前のS307で初めてステータスが「黒のみモード」にされていた場合はYes判定され、S311へ移行する。
【0045】
S311では、この時点で前述の時計66により計時されている「現在の本体時刻」が、「黒のみモード開始時刻」としてRAM53に記憶される。その後、S313へ移行する。
【0046】
S313では、この時点で時計66により計時されている「現在の本体時刻」と、前述の「黒のみモード開始時刻」との差が、予め定めた期間、例えば60日以上であるか否か、が判定される。なおこの60日が第1期間の一例である。「現在の本体時刻」と「黒のみモード開始時刻」との差が60日以上になっていればYes判定され、後述のS329へ移行する。
【0047】
一方、S313において「現在の本体時刻」と「黒のみモード開始時刻」との差が60日未満であればNo判定され、S315へ移行する。S315では、1回目の時刻見失い状態が生じているか否かが判定される。すなわち、前述したように、ユーザによる複合機1の図示しない電源スイッチがOFF操作されたり、停電等のアクシデントが生じた、等により、電源回路60から複合機1内各部への電力供給が停止する場合がある。この場合、前述の日時情報設定部51Aでの処理において現在の本体時刻がRAM53から消去されてしまう時刻見失い状態となる。S315では、この時刻見失い状態が、黒のみモードでの稼働期間において初めて生じたか否かが判定される。時刻見失い状態が生じていないか、上記稼働期間において2回目以降の時刻見失い状態が生じている場合はNo判定となり、このフローを終了する。上記稼働期間において初めて時刻見失い状態が生じた場合はYes判定となり、S317へ移行する。
【0048】
S317では、1回目の時刻見失い状態に応じて後述の猶予期間を設定しその猶予期間突入するにあたり、当該猶予期間への突入回数のカウント値が1回プラスされる。その後、S319で、S317で1回プラスされた後の上記カウント値が5回を超えたか否かが判定される。カウント値が6回以上になっていればNo判定され、後述のS329に移行する。カウント値が5回以下であればYes判定され、S321へ移行する。なお、カウント値の上記5回が電力供給が停止された回数の所定の上限値の一例であり、カウント値が5回以内であることが、猶予期間の経過後も黒のみモードを継続する継続要件の一例であり、このS317でモード設定部51Bが実行する処理もまた、モード制御処理の一例である。
【0049】
S321では、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が取得されEEPROM54に記憶されているか否か、が判定される。日時情報(時刻見失い前に取得したもの)は詳しくは後述するが、時刻見失い前にサーバ等から取得したサーバ現在時刻を示す。日時情報が取得されていなければS321がNo判定となり、S329に移行する。
【0050】
前述のS313がYes判定されるか、S319がYes判定されるか、S321がNo判定されて移行したS329では、黒のみモードが終了され、複合機1のステータスが「黒のみモード終了」に変更される。このS329でモード設定部51Bが実行する処理が終了処理の一例である。
【0051】
その後、S330で、黒のみモード各種設定値初期化処理が行われる。具体的には、前述の黒のみモード開始時刻と、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)と、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)と、時刻見失いによる猶予期間突入回数と、黒のみモード中の時計66による時刻差分と、がすべて所定の初期値へと初期化される。その後、このフローを終了する。
【0052】
一方、S321で日時情報が取得されていればYes判定となり、S323へ移行する。なお、時刻見失い状態までに日時情報が取得されていることが、猶予期間の経過後も黒のみモードを継続する継続要件の一例であり、このS321でモード設定部51Bが実行する処理もまた、モード制御処理の一例である。
【0053】
S323では、複合機1のステータスが「黒のみモード猶予期間中」に変更される。その後、S325において、この時点で時計66により計時されている「現在の本体時刻」が、「黒のみモード開始時刻」として新たにRAM53に記憶される。すなわち、例えばS311でRAM53に記憶されていた時刻があったとしても、この時点での上記「現在の本体時刻」により上書き更新される。
【0054】
その後、S327で、LCD59において、ユーザに対し、入力IF58を介しこの時点での現在時刻を入力する操作を促す、時刻入力催促画面が表示される。このときの時刻入力催促画面が所定表示の一例であり、入力される現在時刻が基準時刻の一例であり、このS327でモード設定部51Bが実行する処理が時刻入力表示処理の一例である。その後、このフローを終了する。
【0055】
<猶予期間中の処理>
一方、前述のS305で複合機1のステータスが「黒のみモード猶予期間中」でYes判定されて移行したS341では、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されEEPROM54に記憶されているか否か、が判定される。日時情報(時刻見失い後に取得したもの)は、詳しくは後述するが、時刻見失い後にサーバ等から取得したサーバ現在時刻を示す。日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されていなければNo判定となりS379に移行し、S327と同様、LCD59に時刻入力催促画面が表示された後、このフローを終了する。
【0056】
S341で日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されていればYes判定され、S343へ移行する。S343では、この時点で時計66により計時されている「現在の本体時刻」、言い換えれば前述のS325で設定された猶予期間への突入時からの経過時間と、前述の「黒のみモード開始時刻」との差が、前述の第1期間よりも短く予め定めた期間、例えば3時間未満であるか否か、が判定される。なおこの3時間が第2期間の一例である。「現在の本体時刻」と「黒のみモード開始時刻」との差が3時間以上になっていればNo判定され、前述のS329に移行して黒のみモードが終了する。「現在の本体時刻」と「黒のみモード開始時刻」との差が3時間未満であればYes判定され、S345へ移行する。なお、このS343でモード設定部51Bが実行する処理もまた、モード制御処理の一例である。
【0057】
S345では、前述の日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が、前述の日時情報(時刻見失い後に取得したもの)よりも大きい、すなわち、時間的に後の数値になっているか否かが判定される。日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が日時情報(時刻見失い後に取得したもの)よりも後の数値になっていればYes判定され、前述のS329に移行して黒のみモードが終了する。日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が日時情報(時刻見失い後に取得したもの)と同じか前の数値になっていればNo判定され、S350へ移行する。なお、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が日時情報(時刻見失い後に取得したもの)と同じか前の数値であることが、猶予期間の経過後も黒のみモードを継続する継続要件の一例であり、このS345でモード設定部51Bが実行する処理もまた、モード制御処理の一例である。
【0058】
その後、S350で、黒のみモード経過時間計算処理が行われ、黒のみモードの経過時間が、黒のみモード中の時計66による時刻差分+日時情報(時刻見失い後に取得したもの)-日時情報(時刻見失い前に取得したもの)、により算出される。なお、黒のみモード中の時計66による時刻差分は、S307で黒のみモードが開始された後に、この時点までに前述の時計66によりカウントアップされた値であり、第1経過時間の一例である。また日時情報(時刻見失い後に取得したもの)-日時情報(時刻見失い前に取得したもの)は、第2経過時間の一例である。
【0059】
そして、S360へ移行し、S350で算出された黒のみモードの経過時間が前述の60日未満であるか否かが判定される。60日以上であればNo判定され、前述のS329に移行して黒のみモードが終了する。60日未満であればYes判定され、S362へ移行する。なお、黒のみモードの経過時間、詳細には、上述の黒のみモード中の時計66による時刻差分+日時情報(時刻見失い後に取得したもの)-日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が、60日未満であることが、猶予期間の経過後も黒のみモードを継続する継続要件の一例であり、このS360でモード設定部51Bが実行する処理もまた、モード制御処理の一例である。また、以上説明した各手順のうち、S231,S233,S235,S237,S319,S321,S345,S360で実行する判定が、継続可否判定の一例である。
【0060】
S362では、上述の60日から、S350で算出された黒のみモードの経過時間を差し引いた、黒のみモードの残り時間が算出され、その残り時間がLCD59に1回だけ表示される。このS362でモード設定部51Bが実行する処理が残り時間表示処理の一例である。
【0061】
そして、S364で、複合機1のステータスがこれまでの「黒のみモード猶予期間中」から「黒のみモード」とされる。
【0062】
その後、S370で、黒のみモード各種設定値補正処理が行われ、これ以降に再度時刻見失い状態が生じたときに備え、各設定値に対し予め補正が施される。具体的には、この時点での「現在の本体時刻」からS350で算出した黒のみモード経過時間を差し引いたものが、新たな黒のみモード開始時刻とされ、S350で算出した黒のみモード経過時間が、新たな黒のみモード中の時計66による時刻差分とされる。また、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)は所定の初期値に初期化される一方、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が、新たな日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。さらに、時刻見失いによる猶予期間突入回数が所定の初期値へと初期化される。その後、このフローを終了する。
【0063】
<日時情報設定処理>
次に、CPU51の日時情報設定部51Aにより実行される制御手順を図5により説明する。前述したように、本実施形態の複合機1では、黒のみモードへの移行、黒のみモードの終了、及び、後述する猶予期間への突入、等が、前述のように取得されるサーバ現在時刻及びその後の経過時間等に基づいて行われる。日時情報設定部51Aは、上記サーバ現在時刻を日時情報として取得する。そして、その取得された日時情報を起点として、複合機1の制御装置50に備えられた時計66によるカウントアップが開始され、そのカウントアップによる時刻差分と日時情報との合計値が、複合機1の「現在の本体時刻」として随時RAM53に記憶される。
【0064】
詳細には、図5において、まずS201で、日時情報設定部51Aでは、例えば、SNTPサーバ200で計時され出力されたサーバ現在時刻が日時情報として取得される。あるいは、日時情報として、ネットワークNTを介し接続された前述の操作端末において動作するプリンタドライバ又はステータスモニタ等の適宜のプログラムから得られる日時情報が取得されてもよい。又は、所定URLによりアクセスされるEWS(Embedded Web Server)にてユーザが手動設定した日時情報、前述の操作端末でユーザが手動設定した日時情報、複合機1の入力I/F58を介しユーザが手動設定した日時情報、等であってもよい。なお、上述のSNTPサーバ200、操作端末が外部装置の一例であり、適宜のプログラムが制御プログラムの一例である。
【0065】
取得された日時情報は、EEPROM54に記憶されるとともに、この日時情報と前述の時計66による時刻差分とが合計されることでその合計値が取得され、取得された合計値が、複合機1の現在の本体時刻として随時RAM53に記憶される。このときの現在の本体時刻が基準時刻情報の一例であり、このときに日時情報設定部51Aで実行される処理が基準時刻記憶処理の一例である。またこの結果、これ以降、RAM53に記憶された上記現在の本体時刻を用いて、その現在の本体時刻より前、又は、その現在の本体時刻より後の経過時間が日時情報設定部51Aによって計時される。日時情報設定部51Aにより実行されるこの処理が計時処理の一例である。またこのとき計時された上記経過時間は、日時情報設定部51Aによって随時RAM53に記憶される。日時情報設定部51Aにより実行されるこの処理が経過時間記憶処理の一例である。
【0066】
その後、S217で、この時点での複合機1のステータスが「黒のみモード」であるか否かが判定される。「黒のみモード」以外の「通常モード」、「黒のみモード猶予期間中」、「黒のみモード終了」のいずれかである場合はS217がNo判定され、後述のS129へ移行する。「黒のみモード」であった場合はYes判定され、S221へ移行する。
【0067】
S221では、前述した、時刻見失い状態となる前における日時情報が取得されEEPROM54に記憶されているか否か、すなわち日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が取得済かどうか、が判定される。日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が既に取得されていればYes判定されてこのフローを終了する。日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が未取得であればNo判定され、S223へ移行する。
【0068】
S223では、S201で取得されこの時点でEEPROM54に記憶されている日時情報が、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)とされるとともに、この時点での現在の本体時刻から黒のみモード開始時刻を差し引いた値が、黒のみモード中における、前述の時計66による時刻差分とされる。その後、このフローを終了する。
【0069】
一方、S217がNo判定されて移行したS219では、この時点での複合機1のステータスが「黒のみモード猶予期間中」であるか否かが判定される。ステータスが「黒のみモード終了」「通常モード」のいずれかである場合はNo判定され、このフローを終了する。ステータスが「黒のみモード猶予期間中」であった場合はYes判定され、S225へ移行する。
【0070】
図4を用いて前述したように、ステータス「黒のみモード猶予期間中」は、前述の時刻見失い状態が生じた後、黒のみモードの終了が猶予され、暫定的に黒のみモードが延長されている期間であることを表している。これに対応して、S225では、時刻見失い状態となった後における日時情報が取得されEEPROM54に記憶されているか否か、すなわち日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得済かどうか、が判定される。日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が既に取得されていればYes判定されてこのフローを終了する。日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が未取得であればNo判定され、S227へ移行する。
【0071】
S227では、前述のように、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されていないことに対応し、複合機1の入力I/F58を介し、ユーザにより手動にて日時情報が設定されたか否か、が判定される。手動の日時情報設定があればYes判定され、後述のS231へ移行する。手動の日時情報設定がなかった場合はNo判定され、S229へ移行する。
【0072】
S229では、前述のように日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が未取得であり、かつ、ユーザによる手動での日時情報の設定もなかったことに対応し、S201で取得されこの時点でEEPROM54に記憶されている日時情報が、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。その後、このフローを終了する。
【0073】
一方、S227でNo判定されて移行したS231では、ユーザによる手動での日時情報の設定があったことに対応し、その手動での設定において、時刻設定と日付設定とが分かれた態様で設定されていたか否か、が判定される。時刻設定と日付設定とが分かれておらず一括での設定態様となっていた場合はNo判定され、ユーザによるそのような態様の設定は信頼性が低いとみなされて前述のS229へ移行し、この時点でEEPROM54に記憶されている日時情報が、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。時刻設定と日付設定とが分かれての設定態様となっていた場合はYes判定され、S233へ移行する。
【0074】
S233では、前述のユーザによる日時情報の手動設定において、入力I/F58を介し、設定時点での時刻設定が変更されたか否か、が判定される。時刻設定が変更されていればYes判定され、ユーザによる時刻設定の変更は信頼性が低いとみなされ、このフローを終了する。時刻設定が変更されていなければNo判定され、S235へ移行する。
【0075】
S235では、前述のユーザによる日時情報の手動設定において、入力I/F58を介し、設定時点での日付設定が変更されたか否か、が判定される。日付設定が変更されていなければNo判定され、時刻設定も日付設定も変更されていない内容は信頼性が低いとみなされ、このフローを終了する。日付設定が変更されていなければYes判定され、S237へ移行する。
【0076】
S237では、前述のユーザの手動設定による日時情報の日付と、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)の日付とが、同じであるか否かが判定される。これら2つの日付が同じであった場合はYes判定され、S239へ移行して、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。この技術的意義については、後述する。その後、このフローを終了する。
【0077】
一方、ユーザの手動設定による日時情報の日付と、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)の日付とが異なっていた場合はS237がNo判定され、S241へ移行して、ユーザの手動設定による日時情報のうち時刻部分をカットしたものが、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。この技術的意義については、後述する。その後、このフローを終了する。
【0078】
なお、以上のうち、S231における時刻設定と日付設定とが分かれた態様で設定されていること、S233における時刻設定が変更されていないこと、S235における日付設定が変更されていること、があらかじめ定めた適合条件の一例である。そしてこれら適合条件を満たすことが、猶予期間の経過後も黒のみモードを継続する継続要件の一例であり、それらS231,S233,S235及びS237,S239,S241で日時情報設定部51Aが実行する処理がモード制御処理の一例である。
【0079】
<時刻差分処理>
以上説明したモード設定部51Bによる制御及び日時情報設定部51Aによる制御において、ステータスが黒のみモードにされているときに、例えばユーザが入力I/F58を介し手動にて日時情報を変更する場合がある。この場合、その変更後の日時情報と変更前の日時情報の差分に基づき、複合機1内の時刻設定を変更する必要がある。時刻差分処理部51Cにより行われる、このときの時刻差分処理の制御手順を図6により説明する。なお、この時刻差分処理部51Cによる制御は、例えば前述したモード設定部51Bによる制御、日時情報設定部51Aによる制御、と同時並行して行われる。
【0080】
図6において、まずS810で、変更前時刻情報と変更後時刻情報との両方が存在するか、言い換えれば、ユーザの手動による日時情報の変更が行われたか否か、が判定される。手動による日時情報変更が行われなければNo判定され、このフローを終了する。手動による日時情報変更が行われた場合はYes判定され、S820へ移行する。
【0081】
S820では、変更後の時刻情報が、変更前の時刻情報よりも大きい、すなわち時間的に後の数値になっているか否かが判定される。
【0082】
変更後の時刻情報が変更前の時刻情報よりも大きく時間的に後の数値になっている場合はS820がYes判定され、S830へ移行する。S830では、変更により時刻が繰り下げられていることから、変更後時刻情報から変更前時刻情報を差し引いた値が時刻差分とされ、その時刻差分と、前述の黒のみモード開始時刻との和が、新たな黒のみモード開始時刻とされる。その後、このフローを終了する。
【0083】
変更後の時刻情報が変更前の時刻情報よりも小さく時間的に前の数値になっている場合はS820がNo判定され、S840へ移行する。S840では、変更により時刻が繰り上げられていることから、変更前時刻情報から変更後時刻情報を差し引いた値が時刻差分とされ、その時刻差分を、前述の黒のみモード開始時刻から差し引いた値が、新たな黒のみモード開始時刻とされる。その後、このフローを終了する。
【0084】
以上の処理により、ユーザが入力I/F58を介し手動にて日時情報を変更したことに対応して、黒のみモードによる制御で用いられる各設定値とのずれ分を補正することができる。
【0085】
<実施形態の動作及び作用効果>
本実施形態の複合機1では、図3図6を用いて上述した制御が行われることにより、下記のような動作を行い、それによって後述の作用効果を得る。以下、その詳細を、図7を用いつつ順を追って説明する。
【0086】
上述したように、本実施形態のCPU51のモード設定部51Bでは、カラーインクの残量が所定量未満になったら、カラーインクを用いた印刷を許可する通常モードから、カラーインクを用いた印刷を制限する黒のみモードへと移行する処理が行われる(S329)。また、操作端末等の外部装置又は入力I/F58から取得した日時情報に基づく現在の本体時刻が逐次RAM53に記憶され(S201)、その記憶されている現在の本体時刻を用いて、当該現在の本体時刻より前又は後の所望の経過時間が計時される(S201)。そして、RAM53に記憶された現在の本体時刻を用いて計時される、黒のみモードに移行してからの経過時間が、予め決められた期間、上記の例では60日に到達した場合に、黒のみモードが終了する。
【0087】
その際、時刻見失いに関しては、以下の制御が行われる。例えば、図7に示す黒のみモードに移行したタイミングToから上記60日が経過するより前の第1タイミングTAで、電力供給が停止して時刻見失いが発生し、その後の第2タイミングTBで電力供給が再開された場合を考える。この場合、本実施形態では、上記60日よりも短い、最大3時間の猶予期間aが設定される(S323,S343)。また、第2タイミングTBからその猶予期間aが明けるTCまでの間、すなわち第2タイミングTBから猶予期間明けタイミングTCまでは、暫定的に黒のみモードが継続される(S343)。
【0088】
そして、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTC以前に、新たな現在の本体時刻T2が取得されたこと、等の継続要件が満たされた場合には、当該猶予期間aの経過後、すなわちTC後も黒のみモードが継続される。一方、TC以前に新たな現在の本体時刻T2が取得されない等で上記継続要件が満たされない場合には、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTC以前に黒のみモードが終了する(S329)。
【0089】
本実施形態によれば、上記のようにして、時刻見失いが発生した場合も猶予期間中であるTB~TCの間は黒のみモードが継続され、さらに上記継続要件が満たされた場合にはTCの後も黒のみモードが継続されるので、黒インクを用いた印刷を長く行うことができる。この結果、ユーザの使い勝手を向上することができる。
【0090】
また、本実施形態では特に、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTB以降TC以前に取得された、新たな現在の本体時刻T2が、時刻見失い前に取得されRAM53に記憶されている現在の本体時刻T1以前の時刻であった場合には、猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTC以前に黒のみモードを終了する(S345,S329)。これには以下のような意義がある。
【0091】
すなわち、時刻見失い後の猶予期間aの間に取得した新たな現在の本体時刻T2が、時刻見失い前に取得されRAM53に記憶された現在の本体時刻T1よりも前の時刻である場合、上記新たな現在の本体時刻T2よりも過去の情報であり、黒のみモードに係わる制御に新たに採用する意味がない。そこで本実施形態においては、猶予期間aが明けた以降も黒のみモードを継続する上記継続要件に、少なくとも、新たな現在の本体時刻T2が、時刻見失い前に取得された現在の本体時刻T1よりも前の時刻であること、を含む。これにより、前述の制御における例外として、時刻見失い後の猶予期間aの間に取得した新たな現在の本体時刻T2が、時刻見失い前に取得されRAM53に記憶された現在の本体時刻T1よりも前の時刻である場合に、猶予期間aが経過するよりも前に黒のみモードを終了することができる。
【0092】
また、本実施形態では特に、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTB以降TC以前に取得された新たな現在の本体時刻T2を用いて日時情報設定部51Aにより計時される、黒のみモード開始タイミングToからの、トータルの黒のみモードの経過時間b(=T2-To)が60日を超えていた場合には、猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTC以前に黒のみモードを終了する(S360,S329)。これには以下のような意義がある。
【0093】
すなわち、時刻見失い後の猶予期間aの間に取得した新たな現在の本体時刻T2を用いて、黒のみモード移行後の経過時間bを計算した結果が上記60日に達していた場合、この60日は元々の黒のみモードの終了期限としていた期間であり、黒のみモードの継続時間としては既に十分である。そこで、本実施形態においては、猶予期間aが明けた以降も黒のみモードを継続する上記継続要件に、少なくとも、猶予期間aの間に取得した新たな現在の本体時刻T2を用いて計時される黒のみモード移行後の経過時間bが、60日以内であること、を含む。これにより、前述の制御における例外として、時刻見失い後の猶予期間aの間に取得した新たな現在の本体時刻T2が、黒のみモードの開始タイミングToの後から60日を超えた時刻を表している場合には、上記猶予期間aが経過するよりも前に黒のみモードを終了することができる。
【0094】
また、本実施形態では特に、S201において、日時情報設定部51Aにより現在の本体時刻Tが記憶されたことに応じて計時される、黒のみモード開始タイミングToからの経過時間(T-To)がRAM53に逐次記憶される。そして、第1タイミングTAより前のあるタイミングでRAM53に記憶されていた現在の本体時刻T1、及び、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTB~TCの間に取得した新たな現在の本体時刻T2、を用いて計時された、それら2つの現在の本体時刻の間の経過時間、すなわち電力供給停止期間を含む黒のみモード経過時間c(=T2-T1)と、第1タイミングTAより前の上記タイミングでRAM53に記憶されていた上記経過時間、すなわち時刻見失い前の黒のみモード経過時間d(=T1-To)と、の合計c+dが60日を超えている場合には、猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTC以前に黒のみモードを終了する(S350,S360,S329)。
【0095】
本実施形態においては、黒のみモードの開始タイミングToからの経過時間bが前述の60日を超えているかを識別するための計算において、より詳細な算出が行われる。
すなわち、黒のみモードの開始タイミングToからの経過時間bを計算する際に、時刻見失い前にRAM53に記憶されていた経過時間d(=T1-To)と、それ以降の経過時間cとに分けて計算される。このときの経過時間cは、時刻見失い前にRAM53に記憶されていた、あるタイミングでの現在の本体時刻T1と、時刻見失い後の猶予期間aに取得した新たな現在の本体時刻T2と、の間の時間T2-T1である。そして、猶予期間aが明けた以降も黒のみモードを継続する上記継続要件に、少なくとも、第1タイミングTAより前に取得されRAM53に記憶されていた上記経過時間dとそれ以降の経過時間cとの合計c+dが、60日以下であること、が含まれる。
このように、時刻見失い前に係わる各種算出において、正確性を期すために、時刻見失い前にRAM53に記憶された現在の本体時刻T1及び経過時間dを用いることで、黒のみモード移行後のトータルの経過時間bを正確に算出することができる。
【0096】
また、本実施形態では特に、第1タイミングTAよりも前に、SNTPサーバ200、若しくは、前述の操作端末において動作するプリンタドライバ又はステータスモニタ等の適宜のプログラムから、現在の本体時刻T1に対応する日時情報を取得していない場合には、前述の黒のみモード移行後の経過時間(T-To)が60日に到達したら、猶予期間aを設定することなく黒のみモードを終了する(S321,S329)。これには以下のような意義がある。
【0097】
すなわち、上述の手法によって黒のみモードの開始タイミングToからの経過時間(T-To)の正確な算出を行うためには、時刻見失い前に現在の本体時刻T1が取得されRAM53に記憶されていることが大前提となる。そこで本実施形態においては、猶予期間aが明けた以降も黒のみモードを継続する上記継続要件に、少なくとも、第1タイミングTAよりも前に、SNTPサーバ200、若しくは、前述の操作端末において動作するプリンタドライバ又はステータスモニタ等の適宜のプログラムから、上述の現在の本体時刻T1に対応する日時情報を取得していること、が含まれる。これにより、上記日時情報が取得されていない場合には、前述の手法を適用不可であるとみなし、前述の経過時間T-Toが60日に到達した段階で猶予期間aを設定せずに直ちに黒のみモードを終了することができる。
【0098】
また、本実施形態では特に、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、言い換えればTB~TCの間に入力I/F58を介して取得された日時情報に基づく新たな現在の本体時刻T2が、予め定めた適合条件を満たさなかった場合には、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTCよりも前に黒のみモードを終了する(S329)。これには以下のような意義がある。
【0099】
すなわち、時刻見失い後に日時情報が入力I/F58を介して取得された場合、それを用いて各種算出を行うためには、その日時情報に対応した現在の本体時刻Tが適正なものである必要がある。そこで本実施形態においては、継続要件に、少なくとも、上記入力I/F58を介して取得された新たな現在の本体時刻T2が、予め定めた適合条件を満たすこと、が含まれる。この適合条件は、上述のように、当該新たな現在の本体時刻T2が、時刻見失い前に取得されRAM53に記憶された現在の本体時刻T1よりも未来の時刻であること(S345)、当該記憶された現在の本体時刻T1からの変更内容が事前に定めた態様となっていること、等である。事前に定めた態様とは、時刻設定と日付設定とが分かれていること(S231)、時刻設定が変更されていないこと(S233)、日付設定が変更されていること(S235)、等である。このように、上記入力I/F58を介し取得された新たな現在の本体時刻T2を、条件付きで採用し使用することにより、各種算出を確実に精度よく行うことができる。
【0100】
また、本実施形態では特に、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTBからTCの間に、複合機1への電力供給が停止された回数が所定の上限値、この例では5回を超えたら、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前に黒のみモードを終了する(S319,S329)。これには以下のような意義がある。
【0101】
複合機1への電力供給停止に由来して時刻見失いが生じた場合でも、前述のようにその後の新たな日時情報に対応した現在の本体時刻T2の取得に基づき黒のみモードの続行を図ることができるが、その後に再度複合機1への電力供給が停止された等により、時刻見失いが複数回繰り返される場合があり得る。しかしながら、その繰り返す回数を際限なく救済すると、制御上の安定性が失われる等によりかえってユーザの不利益となる可能性がある。
そこで本実施形態においては、猶予期間aが明けた以降も黒のみモードを継続する上記継続要件に、少なくとも、時刻見失い後の猶予期間aの間に複合機1への電力供給が停止された回数が所定の上限値つまり5回以下であること、を含む。これにより、前述の制御における例外として、複合機1への電力供給が停止された回数が5回を超えた場合に、猶予期間aが経過するよりも前に黒のみモードを終了させて、上記の弊害を防止することができる。
【0102】
なお、上述のように、第2タイミングTBから猶予期間aの経過後も黒のみモードを継続するか否かの継続可否判定が行われた後、複合機1への電力供給が再度停止される場合がある。そのような場合に、前述のように黒のみモードの開始タイミングToからの経過時間bを、時刻見失い前の経過時間d(=T1-To)とそれ以降の経過時間cとに分けて計算する際、T1の代わりに、上記継続可否判定時に使用され取得後にRAM53に記憶されていた新たな現在の本体時刻T2を用いるようにしてもよい。すなわちこの場合、時刻見失い前の経過時間dはT2-Toによって算出される。これには以下のような意義がある。
【0103】
複合機1への電力供給停止に由来して時刻見失いが生じた場合でも、前述のようにその後の新たな現在の本体時刻T2の取得に基づき黒のみモードの続行を図ることができる。また前述の上限値すなわち5回以下であれば、時刻見失いが複数回繰り返されても、同様に救済される制御が行われる。その際、本実施形態においては、上記継続可否判定で黒のみモードが継続される判定となった後、再度、複合機1への電力供給が停止された場合には、その後は、既に上記継続可否判定時に使用された新たな現在の本体時刻T2、すなわち既に新たな現在の本体時刻T2としてRAM53に記憶されていたものを用いて、上記経過時間b(=d+c)が計時される。これにより、上記繰り返しの2回目以降は、黒のみモードに移行してからの経過時間bを、より簡便かつ正確に算出することができる。
【0104】
また、本実施形態では特に、CPU51の印刷処理部51Dは、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTB~TCの間においては、FAX部62が受信したFAX画像データの印刷を禁止する(S700)。すなわち、前述のように第2タイミングTBでの複合機1への電力供給開始の後の猶予期間aの間、黒のみモードが継続されているときは、継続可否判定において黒のみモードの継続が確定されるより前の段階であるため、黒インクによる印刷を必ずしも保証ができるわけではない。したがって、本実施形態では、印刷処理部51Dが上記S700で、上記猶予期間aの間はFAX部62がFAX画像データを受信したとしてもその画像形成を禁止し、猶予期間aの経過後に上記継続可否判定で黒のみモードの継続が確定した場合に、当該禁止を解くようにする。これにより、不確定な状態で誤って低品質な画像形成が行われるのを防止することができる。
【0105】
また、本実施形態では特に、モード設定部51Bにより、上記継続可否判定の判定結果に基づき黒のみモードの継続が確定した場合に、当該黒のみモードの残り継続時間が1回だけ表示部に表示される(S362)。これには以下のような意義がある。
【0106】
前述の継続可否判定で黒のみモードの継続が確定した場合、黒のみモードが継続される旨と、その残り継続時間を表示しユーザに報知することが望ましい。しかしながら、上記継続の確定後、常時表示することとした場合、ユーザには、当該残り継続時間が終わるまで、カラーインクに係わる各インクカートリッジ32Y,32C,32Mを交換しないでおこうとする心理がはたらく可能性がある。そこで、本実施形態においては、上記の表示を一度だけ行うことで、必要最低限の報知は行いつつ、前述の弊害を回避することができる。
【0107】
また、本実施形態では特に、CPU51のモード設定部51Bは、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するよりも前、すなわちTB~TCの間において、入力I/F58を介した現在時刻の操作入力を促す時刻入力操作画面をLCD59に表示させる(S327)。すなわち、前述のように、第2タイミングTBから猶予期間aが経過した後も黒のみモードを継続するためには、少なくとも、猶予期間aが経過してしまう前に、新たな現在の本体時刻Tが取得される必要がある。そこで本実施形態においては、この猶予期間aの間、LCD59において時刻入力操作画面を表示する。これにより、ユーザに対し、入力I/F58を介した現在時刻の操作入力を促すことができる。
【0108】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0109】
(1)日時情報の取得元に応じて優先度を付す場合
図5を用いて上述したように、S201で取得される日時情報の取得元は複数存在する。すなわち、SNTPサーバ200、操作端末において動作するプリンタドライバ又はステータスモニタ等の適宜のプログラム、EWS(Embedded Web Server)での手動設定、操作端末又は入力I/F58を介しての手動設定等である。本変形例では、日時情報の取得元がそれらのうちいずれであるか、に応じて優先度が付与される。
【0110】
<日時情報設定>
本変形例の複合機1においてCPU51の日時情報設定部51Aが実行する日時情報設定処理を、上記図5に対応する図8のフローチャートを用いて説明する。図8に示すように、このフローでは、前述のS202とS217との間に、S203,S205,S207,S209,S211,S213,S215が新たに設けられる。また前述のS221,S223,S225,S229,S239,S241に代えて、S221A,S223A,S225A,S229A,S239A,S241Aがそれぞれ設けられる。
【0111】
すなわち、図8において、図5と同様のS201で日時情報が取得された後、新たに設けたS203へ移行する。
【0112】
S203では、S201で取得された日時情報の取得元が、SNTPサーバ200であったか否かが判定される。SNTPサーバ200からの取得であればYes判定されて新たに設けたS209へ移行し、取得された日時情報の優先度が1とされた後、図5と同様のS217へ移行する。SNTPサーバ200からの取得でなければNo判定されて新たに設けたS205へ移行する。
【0113】
S205では、S201で取得された日時情報の取得元が、前述の操作端末において動作するプリンタドライバ又はステータスモニタ等の適宜のプログラムであるか否かが判定される。それら適宜のプログラムからの取得であればYes判定されて新たに設けたS211へ移行し、取得された日時情報の優先度が2とされた後、図5と同様のS217へ移行する。上記適宜のプログラムからの取得でなければNo判定されて新たに設けたS207へ移行する。
【0114】
S207では、S201で取得された日時情報の取得元が、前述のEWSでのユーザによる手動設定であるか否かが判定される。EWSからの取得であればYes判定されて新たに設けたS213へ移行し、取得された日時情報の優先度が3とされた後、図5と同様のS217へ移行する。EWSからの取得でなければNo判定されて新たに設けたS215へ移行する。
【0115】
S215では、取得された日時情報の優先度が4とされた後、図5と同様のS217へ移行する。
【0116】
S209,S211,S213,S215から移行したS217では前述と同様の判定が行われ、複合機1のステータスが「黒のみモード」であればYes判定されてS221Aへ移行する。S221Aでは、この時点での日時情報(時刻見失い前に取得したもの)に対して付与されている優先度の値すなわち日時情報ランク(時刻見失い前に取得したもの)が、S209,S211,S213,S215で付与された優先度の値よりも小さいか、言い換えれば日時情報ランク(時刻見失い前に取得したもの)の優先度が高いかどうか、が判定される。日時情報ランク(時刻見失い前に取得したもの)の値がS209,S211,S213,S215で付与された優先度の値以上であれば優先度は高くないことからNo判定され、このフローを終了する。日時情報ランク(時刻見失い前に取得したもの)の値がS209,S211,S213,S215で付与された優先度の値未満であれば優先度が高いことからYes判定され、S223Aへ移行する。
【0117】
S223Aでは、図5のS223と同様、S201で取得された日時情報が、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)とされるとともに、この時点での現在の本体時刻から黒のみモード開始時刻を差し引いた値が、黒のみモード中における前述の時計66による時刻差分とされる。さらに、S209,S211,S213,S215で付与された優先度が、日時情報ランク(時刻見失い前に取得したもの)とされる。その後、このフローを終了する。
【0118】
一方、S217で複合機1のステータスが「黒のみモード」以外であればNo判定されてS219Aへ移行し、さらにステータスが「黒のみモード猶予期間中」であればYes判定されてS225Aへ移行する。S225Aでは、この時点での日時情報(時刻見失い後に取得したもの)に対して付与されている優先度の値すなわち日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)が、S209,S211,S213,S215で付与された優先度の値よりも小さいか、言い換えれば日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)の優先度が高いかどうか、が判定される。日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)の値がS209,S211,S213,S215で付与された優先度の値以上であれば優先度は高くないことからNo判定され、このフローを終了する。日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)の値がS209,S211,S213,S215で付与された優先度の値未満であれば優先度が高いことからYes判定され、前述と同様のS227へ移行する。
【0119】
S227での判定において、ユーザにより手動にて日時情報が設定されておりYes判定されば場合は、S229Aへ移行する。
S229Aでは、図5のS229と同様、S201で取得された日時情報が、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。さらに、S209,S211,S213,S215で付与された優先度が、日時情報ランク(時刻見失い後前に取得したもの)とされる。その後、このフローを終了する。
【0120】
一方、S227がNo判定された後、S231がYes判定され、S233がNo判定され、S235がYes判定され、S237がYes判定された場合は、S239Aへ移行する。S239Aでは、図5のS239と同様、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。さらに、S209,S211,S213,S215で付与された優先度が、日時情報ランク(時刻見失い後前に取得したもの)とされる。その後、このフローを終了する。
【0121】
また、S237がNo判定された場合は、S241Aへ移行する。S241Aでは、図5のS241と同様、ユーザの手動設定による日時情報のうち時刻部分をカットしたものが、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされる。さらに、S209,S211,S213,S215で付与された優先度が、日時情報ランク(時刻見失い後前に取得したもの)とされる。その後、このフローを終了する。
【0122】
<ステータス設定>
本変形例の複合機1においてCPU51のモード設定部51Bが実行する日時情報設定処理を、上記図4に対応する図9のフローチャートを用いて説明する。なお、本変形例においても、上記実施形態と同様、このモード設定部51Bによる制御は、上記日時情報設定部51Aによる制御と同時並行して行われる。また特に図示しないが、印刷処理部51D及び時刻差分処理部51Cによる制御も同様である。図9に示すように、このフローでは、前述のS341,S370,S330に代えてS341A,S370A,S330Aが設けられるとともに、S341Aと前述のS379との間に、S373,S375,S377が新たに設けられる。
【0123】
すなわち、図9において、図4と同様のS301,S303を経てS305において複合機1のステータスが「黒のみモード猶予期間中」でYes判定されたら、新たに設けたS341Aへ移行する。S341Aでは、この時点での日時情報(時刻見失い後に取得したもの)に対して付与されている優先度の値すなわち日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)が優先度1であるか、言い換えれば日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)の優先度が最高設定であるかどうか、が判定される。
【0124】
日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)が優先度1であればS341AがYes判定されて図4と同様のS343へ移行し、以降、図4と同様の処理が行われる。日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)が優先度2又は3又は4であればS341AがNo判定され、新たに設けたS373へ移行する。
【0125】
S373では、この時点で時計66により計時されている「現在の本体時刻」と、前述の「黒のみモード開始時刻」との差が、予め定めた期間、例えば3時間未満であるか否か、が判定される。3時間未満であればYes判定され、新たに設けたS377へ移行する。
【0126】
S377では、図4のS341と同様、日時情報(時計見失い後に取得したもの)が取得されEEPROM54に記憶されているか否か、が判定される。S377で日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されていればYes判定され、このフローを終了する。日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されていなければNo判定となり、図4と同様のS379でLCD59に時刻入力催促画面が表示された後、このフローを終了する。
【0127】
一方、S373で、「現在の本体時刻」と「黒のみモード開始時刻」との差が3時間以上であればNo判定され、新たに設けたS375へ移行する。S375では、S377と同様、日時情報(時計見失い後に取得したもの)が取得されEEPROM54に記憶されているか否か、が判定される。日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されていればS375がYes判定され、図4と同様のS345へ移行し、以降は図4と同様のS350~S364を経て、S370Aへ移行する。
【0128】
S370Aでは、上述と同様の黒のみモード各種設定値補正処理が行われる。すなわち、図4のS370と同様、この時点での「現在の本体時刻」から黒のみモード経過時間を差し引いたものが新たな黒のみモード開始時刻とされ、S350で算出した黒のみモード経過時間が新たな黒のみモード中の時計66による時刻差分とされ、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)は初期化され、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)が新たな日時情報(時刻見失い後に取得したもの)とされ、時刻見失いによる猶予期間突入回数が初期化される。そしてこれに加え、本変形例では、この時点での日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)は初期化され、日時情報ランク(時刻見失い前に取得したもの)が新たな日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)とされる。その後、このフローを終了する。
【0129】
また、S375において日時情報(時刻見失い後に取得したもの)が取得されていなければNo判定され、図4と同様のS329へ移行して黒のみモードを終了し、S330Aへ移行する。
【0130】
S330Aでは、上述と同様の黒のみモード各種設定値初期化処理が行われる。すなわち、図4のS330と同様、前述の黒のみモード開始時刻と、日時情報(時刻見失い前に取得したもの)と、日時情報(時刻見失い後に取得したもの)と、時刻見失いによる猶予期間突入回数と、黒のみモード中の時計66による時刻差分と、がすべて初期化される。そしてこれに加え、本変形例では、日時情報ランク(時刻見失い後に取得したもの)及び日時情報ランク(時刻見失い前に取得したもの)も併せて初期化される。その後、このフローを終了する。
【0131】
<変形例の動作及び作用効果>
本変形例の複合機1では、図8及び図9を用いて上述した制御が行われることにより、上記実施形態と同様の効果を得る。さらに、下記のような動作を行うことで、後述の固有の作用効果を得る。以下、その詳細を説明する。
【0132】
上述したように、本変形例のCPU51のモード設定部51Bでは、S201で取得される日時情報の取得元が、SNTPサーバ200、操作端末において動作するプリンタドライバ又はステータスモニタ等の適宜のプログラム、EWS(Embedded Web Server)での手動設定、操作端末又は入力I/F58を介しての手動設定等、複数存在する。すなわち、本実施形態においては、前述の猶予期間aの間に新たに取得される新たな本体時刻T2は、複数の取得元から取得可能な日時情報に基づいている。そして、前述の黒のみモード後の経過時間T2-Toの算出の際には、それら複数の取得元それぞれからの日時情報に基づく新たな本体時刻T2のうち、最も早く取得された最先のものに基づくものが採用される。その最先での取得に対応した新たな本体時刻T2を用いて黒のみモード移行後の経過時間T2-Toを計算した結果が上記60日に達していた場合、黒のみモードの継続時間としては既に十分である。
【0133】
そこで、本実施形態においては、猶予期間aが明けた以降も黒のみモードを継続する上記継続要件に、少なくとも、猶予期間aが経過するよりも前すなわちTB~TCの間に最先の取得に基づく新たな現在の本体時刻T2を用いて計時される黒のみモード移行後の経過時間T2-Toが、60日以内であること、を含む。これにより、前述の制御における例外として、時刻見失い後の猶予期間aの間に最先での取得に対応した上記新たな現在の本体時刻T2が、黒のみモードの開始後から60日を超えた時刻を表している場合には、上記猶予期間aが経過するよりも前に黒のみモードを終了することができる(S341A,S373,S377,S360,S329)。
【0134】
また、本変形例では特に、上述の複数の取得元から取得される日時情報のそれぞれは、対応する取得元に応じた優先度が関連付けられている。例えばその優先度は、複合機1の入力I/F58を介したユーザ操作の場合が優先度4、ネットワークを介したEWSでのユーザ設定である場合が優先度3、プリンタドライバ又はステータスモニタ等の適宜のプログラムの場合が優先度2、SNTPサーバの場合が優先度1、のように順次高くなるように設定されている(S215,S213,S211,S209)。そして、前述の黒のみモード移行後の経過時間T2-Toの算出の際には、それら複数の取得元それぞれからの取得結果に基づく新たな現在の本体時刻T2のうち、最も優先度が高い日時情報に対応したものが採用される。
【0135】
このとき、上記猶予期間aの間、より優先度の高い新たな日時情報が取得される都度その日時情報を用いて黒のみモード移行後の経過時間T2-Toが改めて算出される。そして、上記高い優先度での取得に基づいて経過時間T2-Toを計算した結果が上記60日に達していた場合、黒のみモードの継続時間としては既に十分である。
【0136】
そこで、本変形例においては、猶予期間aが明けた以降も黒のみモードを継続する上記継続要件に、少なくとも、猶予期間aの間に、より高い優先度で取得した日時情報に基づく新たな現在の本体時刻T2を用いて計時される黒のみモード移行後の経過時間T2-Toが、60日以内であることを含む。これにより、前述の制御における例外として、時刻見失い後の猶予期間aの間に、より高い優先度で取得された取得結果に基づく上記新たな現在の本体時刻T2が、黒のみモードの開始後から60日を超えた時刻を表している場合には、上記猶予期間aが経過するよりも前に黒のみモードを終了することができる(S341A,S373,S377,S360,S329)。
【0137】
(2)その他
なお、以上においては、第2タイミングTBから猶予期間aが経過するより前の、TB~TCの間にSNTPサーバ200又は前述の操作端末又は入力I/F58からの取得結果に応じた新たな現在の本体時刻Tが取得され、各種の計算に使用されたが、これに限られない。すなわち、黒のみモードへの移行前にSNTPサーバ200又は前述の操作端末から取得し適宜に記憶しておいた現在の本体時刻を用いて、上記各種の計算を行ってもよい。
【0138】
また、以上は、本発明を、インクジェット方式で印刷を行う複合機1に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、複合機1がレーザ方式で印刷を行う場合にも本発明は適用できる。この場合は、トナーが着色剤の一例であり、上記同様の効果を得る。
【0139】
なお、以上において、図3図4図5図6図8図9に示すフローチャートは、本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0140】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0141】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0142】
1 複合機(画像形成装置の一例)
2 キャリッジ(画像形成部の一例)
3 インクジェットヘッド(画像形成部の一例)
51 CPU(コントローラの一例)
54 EEPROM(メモリの一例)
59 LCD(表示部の一例)
62 FAX部(FAX通信部の一例)
200 SNTPサーバ(計時サーバ)
P 記録用紙(被記録媒体の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9