(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】表示器の取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 9/06 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B60R9/06
(21)【出願番号】P 2021054399
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】真銅 雄史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-112404(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1457627(KR,B1)
【文献】実公昭50-012101(JP,Y1)
【文献】実開昭48-063602(JP,U)
【文献】登録実用新案第3073490(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/06
G09F 9/00 - 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器を車両の後面上部に配置して車両側に取付けるための表示器の取付構造であって、
前記表示器の車幅方向両側の外側面から車幅方向外側へ突出して上下方向と交叉する板状であり、前記表示器に固定的に設けられる左右のフランジ部と、
前記車両側の天井に対して固定されて車幅方向に延び、表示器挿入空間の上方を区画するブラケット上板部と、前記ブラケット上板部の車幅方向両側から下方へ延び、前記表示器挿入空間の左右を区画する左右のブラケット側板部と、前記左右のブラケット側板部から延びて前記表示器挿入空間の下方を区画するブラケット下板部とを有し、前記表示器挿入空間に前記表示器が車両前方から挿入可能であり、且つ前記表示器挿入空間に前記表示器が挿入された状態で、前記左右のフランジ部が前記ブラケット下板部に上方から重なって支持されるブラケットと、
前記ブラケット下板部に重なった前記左右のフランジ部を前記ブラケット下板部に上下方向から締結固定する締結部材と、を備え
、
前記ブラケット下板部は、前記表示器の前後幅よりも短い前後幅を有し、前記表示器挿
入空間の後側に配置される
ことを特徴とする表示器の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示器を車両の後面上部に配置して車両側に取付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後面上部に行先等の情報を表示する表示器を備えたバスが公知である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両後端まで車室が存在する車両では、車室内に表示器を配置し、車両前方からボルトを締結して表示器を車両側に取付けることにより、表示器の点検や修理の際の表示器の脱着作業を車室内から行なうことができる。
【0005】
一方、車両後端まで車室が存在せず、隔壁によって車室から仕切られた半室外空間が車両後端部に存在する車両では、半室外空間に表示器を配置する。また、表示器の前方の半室外空間を有効に活用するため、表示器と隔壁との間(表示器の前方)に他の部品等を配置する場合がある。この場合、車室内に配置する場合と同様に車両前方からボルトを締結して表示器を車両側に取付けると、点検や修理のため表示器を脱着する際には、隔壁を取外した後、表示器の前方の他の部品も取外す必要があり煩雑である。また、他の部品の取外しが不可能又は困難な場合には、表示器の脱着が困難となる。
【0006】
そこで本開示は、車両後方からの作業によって表示器を容易に脱着することが可能な表示器の取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様は、表示器を車両の後面上部に配置して車両側に取付けるための表示器の取付構造であって、左右のフランジ部と、ブラケットと、締結部材とを備える。
【0008】
左右のフランジ部は、表示器の車幅方向両側の外側面から車幅方向外側へ突出して上下方向と交叉する板状であり、表示器に固定的に設けられる。ブラケットは、ブラケット上板部と左右のブラケット側板部とブラケット下板部とを有する。ブラケット上板部は、車両側の天井に対して固定されて車幅方向に延び、表示器挿入空間の上方を区画する。左右のブラケット側板部は、ブラケット上板部の車幅方向両側から下方へ延び、表示器挿入空間の左右を区画する。ブラケット下板部は、左右のブラケット側板部から延びて表示器挿入空間の下方を区画する。表示器挿入空間には表示器が車両前方から挿入可能であり、且つ表示器挿入空間に表示器が挿入された状態で、左右のフランジ部はブラケット下板部に上方から重なって支持される。締結部材は、ブラケット下板部に重なった左右のフランジ部をブラケット下板部に上下方向から締結固定する。
【0009】
上記構成では、表示器の点検や修理の際には、締結部材によるブラケット下板部とフランジ部との締結を下方から解除し、フランジ部がブラケット下板部と重ならない位置まで表示器を車両前方へスライドさせることによって、表示器を下方に移動させて取り外すことができる。従って、隔壁によって車室から仕切られた車両後端部の半室外空間に表示器を配置した場合であっても、表示器の脱着作業を車両後方の車外から容易に行うことができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様の表示器の取付構造であって、ブラケット下板部は、表示器の前後幅よりも短い前後幅を有し、表示器挿入空間の後側に配置される。
【0011】
上記構成では、ブラケット下板部は、表示器の前後幅よりも短い前後幅を有し、表示器挿入空間の後側に配置されるので、表示器を取外す際の車両前方への表示器のスライド量(移動距離)を少なく抑えることができ、表示器が移動できる空間が制限されている場合であっても、表示器の脱着を行なうことができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、車両後方からの作業によって表示器を容易に脱着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の後面を斜め後方から視た斜視図である。
【
図4】後枠体にブラケットを取付けた状態を示す側面図である。
【
図5】車両側へのブラケットの取付けを説明するための側面図である。
【
図6】車両側へ取付けられたブラケット及び後枠体を示す側面図である。
【
図7】表示器へのサブブラケットの取付けを説明するための側面図である。
【
図8】車両側への表示器の組付けを説明するための側面図である。
【
図9】車両側へ表示器を組付ける途中のブラケット及びサブブラケットの側断面図である。
【
図10】車両側に表示器が組付けられた状態でのブラケット及びサブブラケットを車両前方から視た前面図である。
【
図11】車両側に組付けられた表示器への前カバー体の取付けを説明するための側面図である。
【
図12】車両側に取付けられた表示器組付体の側面図である。
【
図13】車両側からの前カバー体の取外しを説明するための側面図である。
【
図14】車両側からの表示器の取外しを説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。また、図中の矢印FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。
【0015】
本実施形態に係る車両1は、EVバス(電気バス)であり、
図1及び
図2に示すように、車両後端部には、隔壁2によって車室3から仕切られた半室外空間(モータルーム)4が設けられている。車両1の後面上部には、リヤウインドウ5が設けられ、リヤウインドウ5の前方の半車室外空間4には、表示器組付体10(表示器11)が配置される。表示器組付体10は、半車室外空間4の天井を形成するリヤインナルーフパネル6に固定され、表示器11の後面には、行先等の情報がリヤウインドウ5を介して外部(車両1の後方)から視認可能に表示される。半車室外空間4には、表示器組付体10及びモータ(図示外)の他、バッテリ7やエアタンク8などが取付けられる。バッテリ7は表示器組付体10の下方に配置され、エアタンク8は表示器組付体10の前方に配置される。リヤウインドウ5の下方には、半車室外空間4を車両後方から閉止する後面パネル9が着脱可能に取付けられる。
【0016】
図3に示すように、表示器組付体10は、後枠体12、ブラケット13、表示器11、左右のサブブラケット14及び前カバー体15とから構成される。なお、以下では、表示器11へ向かう方向を組付体内側とし、表示器11から離れる方向を組付体外側として説明する。
【0017】
ブラケット13は、リヤインナルーフパネル6(
図6参照)に固定されて車幅方向に延びるブラケット上板部18と、ブラケット上板部18の左右の両端縁から下方へ曲折し相対向して延びる左右のブラケット側板部19と、左右のブラケット側板部19の下端縁から組付体内側へ(左のブラケット側板部19からは右方向へ、右のブラケット側板部19から左方向へ)曲折して延びる左右のブラケット下板部20とを有する。ブラケット上板部18は表示器挿入空間21の上方を区画し、左右のブラケット側板部19は表示器挿入空間21の左右を区画し、左右のブラケット下板部20は、表示器挿入空間21の下方を区画する。
【0018】
後枠体12は、車両後方に矩形状の開口窓16を有する矩形枠形状の部材である。後枠体12の左右の後枠側板部17は、ブラケット13の左右のブラケット側板部19にそれぞれ組付体外側から重なり、ボルト30(
図4参照)によって左右のブラケット側板部19に締結固定される。後枠体12とブラケット13との前後方向の相対位置を調節可能とするため、後枠側板部17には、前後方向が長い長孔形状のボルト挿通孔(ボルト30が挿通する孔)40が形成されている。
【0019】
左右のブラケット下板部20は、表示器11の前後幅D1よりも短い前後幅D2を有し、表示器挿入空間21の後側に配置される(
図9参照)。このように左右に分かれたブラケット下板部20を設けているので、左右に分かれずに車幅方向に連続した1つのブラケット下板部を設ける場合に比べてブラケット13を軽量化することができる。なお、左右に分かれたブラケット下板部20に代えて、車幅方向に連続した1つのブラケット下板部を設けてもよい。
【0020】
表示器11の車幅方向両側には、左右の表示器側面部22の前端縁から組付体外側へそれぞれ延びる左右のサブブラケット取付面部23が設けられている。なお、表示器11が情報を表示する形式は限定されず、例えばLEDや液晶のほか、表示幕などであってもよい。
【0021】
サブブラケット14は、サブブラケット後板部24と、板状のフランジ部25と、サブブラケット補強板部26とを有する。サブブラケット後板部24は、表示器11のサブブラケット取付面部23に車両前方から重なり、サブブラケット取付面部23にボルト33(
図7参照)によって締結固定される。フランジ部25は、サブブラケット後板部24の下端縁から車両前方へ曲折して延びる。サブブラケット補強板部26は、サブブラケット後板部24の前面とフランジ部25の上面とを連結してサブブラケット14を補強する。
【0022】
表示器11のサブブラケット取付面部23にサブブラケット前板部24が固定された状態(サブブラケット組付状態)で、左右のフランジ部25は、表示器11の車幅方向両側の外側面から左右に突出して上下方向と略直交する。左右のフランジ部25の前後幅は、左右のブラケット下板部20の前後幅D2(
図9参照)と略同じであってもよく、相違していてもよい。なお、本実施形態では、表示器11とは別体のサブブラケット14にフランジ部25を設け、サブブラケット14を表示器11に固定しているが、フランジ部25を表示器11に設けてもよい。
【0023】
表示器11は、サブブラケット取付状態でブラケット13の表示器挿入空間21に車両前方から挿入され、左右のフランジ部25は、左右のブラケット下板部20に上方から重なって支持される。ブラケット下板部20に重なったフランジ部25は、ボルト31及びナット32(
図9及び
図10参照)によってブラケット下板部20に締結固定される。ボルト31及びナット32は、フランジ部25をブラケット下板部20に上下方向から締結固定する締結部材を構成する。ナット32は、フランジ部25の上面に固着されており、ボルト31を下方から締付けることによって、フランジ部25がブラケット下板部20に締結固定される。
【0024】
左右のブラケット下板部20が突出していないブラケット13の表示器挿入空間21の前側は、サブブラケット組付状態の左右のフランジ部25の外端間の車幅方向の距離L(
図10参照)以上の開口幅で下方に開口する。すなわち、サブブラケット組付状態の表示器11は、表示器挿入空間21の前側に対し、下方からの挿入及び下方への抜出しが許容される。
【0025】
前カバー体15は、車幅方向に沿って起立する前カバー前板部27と、前カバー前板部27の車幅方向外側の端縁から車両後方へ曲折して延びる左右の前カバー側板部28と、前カバー前板部27の下端から車両後方へ曲折して延びる前カバー下板部29とを有する。前カバー下板部29は、左右の前カバー側板部28の下端縁の間を下方から覆う。左右の前カバー側板部28は、ブラケット13の左右のブラケット側板部19にそれぞれ組付体外側から重なり、ボルト34(
図12参照)によって左右のブラケット側板部19に締結固定される。
【0026】
表示器11を車両1に取付ける場合、
図4に示すように、後枠体12の左右の後枠側板部17をブラケット13の左右のブラケット側板部19にそれぞれ組付体外側から重ね、ボルト30によって左右のブラケット側板部19に締結固定して、後枠体12にブラケット13を取付ける(
図4参照)。このとき、ボルト30による締付けが不完全な仮留め状態とする。
【0027】
次に、後枠体12が仮留めされたブラケット13をリヤインナルーフパネル6に締結固定する。このとき、ブラケット13をリヤインナルーフパネル6に固定し、ボルト挿通孔40の長孔形状を利用してブラケット13に対する後枠体12の両前位置を調節した後、後枠体12をブラケット13に完全に固定する(
図5及び
図6参照)。
【0028】
次に、サブブラケット14のサブブラケット後板部24を、表示器11のサブブラケット取付面部23に車両前方から重ね、ボルト33によって締結固定して、表示器11にサブブラケット14を取付ける(
図7参照、サブブラケット組付状態)。
【0029】
次に、サブブラケット組付状態の表示器11を、車両1に固定されたブラケット13の表示器挿入空間21に車両前方から挿入し、左右のフランジ部25を左右のブラケット下板部20に載せて(
図9参照)、表示器11を車両後方の所定位置までスライド移動させ、ブラケット下板部20及びフランジ部25のボルト挿通孔41(
図1参照)にボルト31を下方から挿入し、ナット32に螺合し締付けて、フランジ部25をブラケット下板部20に締結固定する(
図8及び
図10参照)。これにより、表示器11がサブブラケット14を介してブラケット13に取付けられる。
【0030】
最後に、前カバー体15の左右の前カバー側板部28をブラケット13の左右のブラケット側板部19にそれぞれ組付体外側から重ね、ボルト34によって締結固定して、前カバー体15をブラケット13に取付ける(
図11及び
図12参照)。
【0031】
表示器11の点検や修理等の際には、車両後面から後面パネル9を取外し、車両1の後方外側からの作業によって、前カバー体15の前カバー側板部28とブラケット13の左右のブラケット側板部19との締結を解除し、前カバー体15をブラケット13から取外す(
図13参照)。前カバー体15を取外した後、ボルト31を締結解除方向へ回転させて、ブラケット13の左右のブラケット下板部20と左右のサブブラケット14のフランジ部25との締結を下方から解除し、フランジ部25がブラケット下板部20に重ならない位置までサブブラケット組付状態の表示器11を車両前方へスライド移動させ、サブブラケット組付状態の表示器11を下降させて半室外空間4から取出す(
図14参照)。
【0032】
本実施形態によれば、表示器11の点検や修理の際には、ブラケット下板部20とフランジ部25との締結を下方から解除し、フランジ部25がブラケット下板部20と重ならない位置まで表示器11を車両前方へスライドさせることによって、表示器11を下方に移動させて取り外すことができる。従って、隔壁2によって車室3から仕切られた車両後端部の半室外空間4に表示器11を配置した場合であっても、表示器11の脱着作業を車両後方の車外から容易に行うことができる。
【0033】
また、ブラケット下板部20は、表示器11の前後幅D1よりも短い前後幅D2を有し、表示器挿入空間21の後側に配置されるので、表示器11を取外す際の車両前方への表示器11のスライド量(移動距離)を少なく抑えることができ、表示器11が移動できる空間が制限されている場合であっても、表示器11の脱着を行なうことができる。
【0034】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、車両の後面上部に表示器を備えた車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1:車両
2:隔壁
3:車室
4:半室外空間
5:リヤウインドウ
6:リヤインナルーフパネル
7:バッテリ
8:エアタンク
9:後面パネル
10:表示器組付体
11:表示器
12:後枠体
13:ブラケット
14:左右のサブブラケット
15:前カバー体
16:開口窓
17:後枠側板部
18:ブラケット上板部
19:左右のブラケット側板部
20:ブラケット下板部
21:表示器挿入空間
22:左右の表示器側面部
23:左右のサブブラケット取付面部
24:サブブラケット後板部
25:左右のフランジ部
26:サブブラケット補強板部
27:前カバー前板部
28:左右の前カバー側板部
29:前カバー下板部
30,33,34:ボルト
31:ボルト(締結部材)
32:ナット(締結部材)
40:ボルト挿通孔
D1:表示器の前後幅
D2:ブラケット下板部の前後幅