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特許7398074安全ガード装置及びこれを有するプレス機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】安全ガード装置及びこれを有するプレス機械
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B30B15/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020206377
(22)【出願日】2020-12-12
(65)【公開番号】P2022093210
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520491849
【氏名又は名称】株式会社ミヤタ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100144358
【弁理士】
【氏名又は名称】藤掛 宗則
(72)【発明者】
【氏名】宮田 年勝
(72)【発明者】
【氏名】宮田 正人
(72)【発明者】
【氏名】宮田 直樹
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0158283(US,A1)
【文献】特開2006-037469(JP,A)
【文献】特許第4314310(JP,B2)
【文献】特開2008-151184(JP,A)
【文献】特開2007-000872(JP,A)
【文献】実公平01-028960(JP,Y2)
【文献】特開平09-033865(JP,A)
【文献】特開平09-303685(JP,A)
【文献】特開平01-040793(JP,A)
【文献】特開2007-237191(JP,A)
【文献】特開2018-126744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機械の安全ガード装置であって、
上枠および左右の縦枠を有する枠体と、
前記枠体の中空部のうち前記上枠から略半分の領域を覆う第一のカバー体と、
少なくとも前記第一のカバー体が被覆する領域以外の前記中空部の領域を覆うサイズに形成され、前記上枠を基準に当該中空部を上昇移動又は下降移動する第二のカバー体と、
前記左右の縦枠それぞれに配設され、前記第二のカバー体を上昇移動又は下降移動させる一対の滑動手段と、
前記中空部内を移動する前記第二のカバー体が上死点位置又は下死点位置に到達する前のタイミングで当該第二のカバー体の移動速度を減速するように前記滑動手段の動作を制御する制御手段と、
前記枠体に配設され、当該枠体の中空部に物体が侵入又は離脱したか否かを検知する第一の検知手段を有し、
前記制御手段は、前記第一の検知手段が前記物体の侵入を検知した後にその離脱を検知した場合に当該第二のカバー体が下降移動を開始するように制御することを特徴とする、
安全ガード装置。
【請求項2】
前記滑動手段は流体駆動式のロッドレスシリンダであり、
前記制御手段は前記滑動手段より排出される流体量を調整して前記第二のカバー体の移動速度を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の安全ガード装置。
【請求項3】
前記第二のカバー体には孔部が形成され、当該孔部にニードルを挿入して当該前記第二のカバー体の移動を規制するインターロック機構を有し、
前記制御手段は、前記加工機械への給電が遮断されており、且つ、前記第二のカバー体が上死点位置に存在する場合、当該第二のカバー体の移動が規制されるように前記インターロック機構の動作を制御することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の安全ガード装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第一の検知手段が前記物体の侵入を検知した後に所定の時間が経過してもその離脱を検知しなかった場合には前記安全ガード装置の動作を停止させることを特徴とする、
請求項に記載の安全ガード装置。
【請求項5】
前記第二のカバー体が上死点位置に存在することを検知する第二の検知手段を有し、
前記制御手段は、前記第二のカバー体が上死点位置に存在することを前記第二の検知手段が検知し、且つ、前記第一の検知手段が前記物体の侵入を検知した後にその離脱を検知した場合に当該第二のカバー体が下降移動を開始するように制御することを特徴とする、
請求項に記載の安全ガード装置。
【請求項6】
加工機械の安全ガード装置であって、
上枠および左右の縦枠を有する枠体と、
前記枠体の中空部のうち前記上枠から略半分の領域を覆う第一のカバー体と、
少なくとも前記第一のカバー体が被覆する領域以外の前記中空部の領域を覆うサイズに形成され、前記上枠を基準に当該中空部を上昇移動又は下降移動する第二のカバー体と、
前記左右の縦枠それぞれに配設され、前記第二のカバー体を上昇移動又は下降移動させる一対の滑動手段と、
前記中空部内を移動する前記第二のカバー体が上死点位置又は下死点位置に到達する前のタイミングで当該第二のカバー体の移動速度を減速するように前記滑動手段の動作を制御する制御手段と、
前記第二のカバー体が下死点位置に存在することを検知する第三の検知手段を有し、
前記制御手段は、前記第三の検知手段が前記第二のカバー体が下死点位置に存在することを検知したことを契機に、前記加工機械に向けて加工動作を許可する情報を発信し、当該加工機械から加工動作が完了したことを示す情報の受信を契機に、当該第二のカバー体が上昇移動を開始するように制御することを特徴とする、
安全ガード装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記加工機械に電気的に接続されたフットスイッチを介して行われる当該加工機械の稼働可否を示す情報を受け付け、受け付けた情報に応じて前記第二のカバー体の上昇移動又は下降移動の可否を制御することを特徴とする、
請求項1乃至いずれか一項に記載の安全ガード装置。
【請求項8】
前記加工機械はプレス機械であることを特徴とする、
請求項1乃至いずれか一項に記載の安全ガード装置。
【請求項9】
請求項1乃至いずれか一項に記載の安全ガード装置を有することを特徴とする、
プレス機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械など被加工物を加工する機械における作業に際して、作業者の安全を確保するための安全ガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を加工するプレス機械等の作業において、作業現場での機械の操作を行う作業者の安全確保のために様々な安全装置が取り付けられている。現在一般化されている機種は大まかに両手操作式、光線式、手引き式、手払い式、ガード式に分類することができる。
【0003】
例えば、ガード式の安全装置ではプレス機械への被加工物の挿入面をガード板で遮蔽することにより、スライドの作業中には作業者の身体が危険区域に入らないようにするものである。また、作業中のトラブルによるワークや部品の飛散等から作業者の身体を保護することができる等、前述した安全装置の中でも高い安全性を備えたものである。
【0004】
また、ガード式の安全装置には上昇式、下降式、横開き式等がある。これらの方式の特徴は、上昇式と下降式の場合は直接1本のエアシリンダで1枚のガード板を動作させている。また、横開き式のものは2本のエアシリンダで左右それぞれのガード板を動作させるものである。
【0005】
このような上昇式又は下降式の安全装置では、下降範囲が広いプレス機械やストロークが長いプレス機械に取り付けようとすると、ガード板も大きくなり上昇又は下降させるストロークが長くなってしまう。そのため、開閉時間もかかり作業効率が落ちてしまう場合がある。一方、ガードの開閉速度を速くすると大きなガード板が作業者の目前を高速で動くことになり恐怖感があり、万一ガード板に手先等が挟まれると怪我をする危険性もある。
【0006】
このような問題に対して、例えば特許文献1に開示されたプレス機械のガード式安全装置では、エアシリンダのストロークを増幅させ2分割にしたガード板を動作させることで、より広い防護面積でもガードの素早い開閉を行うことが可能となりガード使用時の作業効率の低下が少なくなる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-343298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたプレス機械のガード式安全装置は、2分割にしたガード板のうち下ガード板が下降し、且つ、上ガード板が上昇することでガード(被加工物の挿入面)が開くというものでありその機構が複雑であるため耐久性や製造コストの面でさらなる課題が残る。また、上昇式又は下降式の安全装置において広い挿入面を得るためにガードの開閉速度を速くするとガード板が上死点あるいは下死点に到達したときにガード板が「跳ねる」(バウンディング)現象か生じて作業者の安全性を損なう恐れがある、という問題が残る。またさらに、作業者の安全面はもとより安心感を持って作業できることも求められる。これは、自動制御では「勝手に動く」との不安感を作業者が抱いてしまうことから生じるものであり、作業者の「意思」が介在していることが「安心」な装置になり得る。また、プレス機械等の加工機械に後付けする上でも軽量・コンパクトな仕様のものが求められている。
【0009】
本発明は、ガード板の素早い開閉動作を行っても作業者の安全性を損なうことなく、且つ作業者が安心感を持って使用することができる安全ガード装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は加工機械の安全ガード装置であって、上枠および左右の縦枠を有する枠体と、前記枠体の中空部のうち前記上枠から略半分の領域を覆う第一のカバー体と、少なくとも前記第一のカバー体が被覆する領域以外の前記中空部の領域を覆うサイズに形成され、当該中空部内を上昇移動又は下降移動する第二のカバー体と、前記左右の縦枠それぞれに配設され、前記第二のカバー体を上昇移動又は下降移動させる一対の滑動手段と、前記中空部内を移動する前記第二のカバー体が上死点位置又は下死点位置に到達する前のタイミングで当該第二のカバー体の移動速度を減速するように前記滑動手段の動作を制御する制御手段と、前記枠体に配設され、当該枠体の中空部に物体が侵入又は離脱したか否かを検知する第一の検知手段を有し、前記制御手段は、前記第一の検知手段が前記物体の侵入を検知した後にその離脱を検知した場合に当該第二のカバー体が下降移動を開始するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガード板の素早い開閉動作を行っても作業者の安全性を損なうことなく、且つ作業者が安心感を持って使用することができる安全ガード装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)、(b)は、本実施形態に係る安全ガード装置をプレス機械に据え付けた状態の一例を示す図。
図2】安全ガード装置の構成の一例を説明するための正面図。
図3】安全ガード装置の内部構成の一例を説明するための図。
図4図3とは異なる、安全ガード装置の内部構成の一例を説明するための図。
図5】カバー体の構成の一例を示す右側面図。
図6】上死点位置に存在するカバー体がインターロックされている状態を示す図。
図7】カバー体の上昇移動又は下降移動を制御する際の制御部による主要な制御手順の一例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る安全ガード装置の実施形態を説明する。なお、以下の説明においては1枚のガード板(以下、カバー体と称す)が上昇又は下降して被加工物の挿入面の開閉動作を行う場合を例に挙げて説明をする。また、本発明に係る安全ガード装置をプレス機械に用いた場合を例に挙げて説明をする。
なお、本発明に係る安全ガード装置はプレス機械に用いるだけではなく、例えば加工の前後において作業者が加工前の被加工物の挿入(載置)と加工後の被加工物の取り出しを繰り返し行う加工機械になどにも適用することができる。
【0014】
[実施形態例]
図1は、本実施形態に係る安全ガード装置をプレス機械に据え付けた状態の一例を示す図である。図1(a)は正面図であり、図1(b)は側面図である。
図1(a)、(b)に示すように、安全ガード装置Sは、プレス機械Mがプレス動作(図中に示す上下方向矢印)による加工が施される所定の位置と作業者との間に据え付けられる。なお、安全ガード装置Sとプレス機械Mは電気的な信号の授受が可能に接続されている。例えば、安全ガード装置Sはプレス機械Mに向けて当該プレス機械Mの動作の開始を許可する信号、あるいは動作の停止を指示する信号を出力する。また、安全ガード装置Sはプレス機械Mから当該プレス機械Mの稼働状況を示す信号の受信やプレス機械Mへの給電が遮断(主電源がOFF状態)された状態であることを検知可能に構成される。
【0015】
また、図1(b)に示す横方向矢印は、カバー体(後述するカバー体30)が上昇している状態で作業者による加工前の被加工物の挿入(下側矢印)と加工後の被加工物の取り出し(上側矢印)の動きを示している。
なお、本実施形態においては、安全ガード装置Sを据え付けるプレス機械Mは当該プレス機械Mの稼働可否(プレス動作の動作可否)を指示する、いわゆるフットスイッチFを備えているものとして説明を進める。このフットスイッチFはプレス機械Mが有する場合の他に、後付けの形で当該フットスイッチFを電気的にプレス機械Mと接続するようにしても良い。また、安全ガード装置Sは、フットスイッチFを介して行われるプレス機械Mの稼働可否を示す情報を受け付け可能に構成される。なお、安全ガード装置Sを有するプレス機械Mとして構成することもできる。
【0016】
図2は、本実施形態に係る安全ガード装置の構成の一例を説明するための正面図である。なお、図2に示す安全ガード装置Sは、プレス機械など被加工物を加工する機械における作業に際して、機械が動作しているときに手などを入れないように、あるいは加工動作時の被加工物の飛散などから作業者の安全を確保するための装置である。
図3は、安全ガード装置の内部構成の一例を説明するための図である。また、図4は、図3とは異なる安全ガード装置の内部構成の一例を説明するための図である。なお、図3は後述するカバー体20を取り外している状態である。
図3から図4を用いて本実施形態に係る安全ガード装置Sの構成の一例を説明する。
【0017】
図2に示す安全ガード装置Sは、左右の縦枠10および上枠11(図3参照)を有する枠体12、カバー体20(第一のカバー体)、カバー体30(第二のカバー体)、制御部50を含んで構成される。なお、制御部50は、安全ガード装置Sが有する各機構部の動作を統括的に制御する。制御部50は、また、プレス機械Mに向けて当該プレス機械Mの動作の開始を許可する信号、あるいは動作の停止を指示する信号を出力する。また、制御部50はプレス機械Mから当該プレス機械Mの稼働状況を示す信号を受信する。
【0018】
安全ガード装置Sは、図3に示すようにカバー体30を上昇移動又は下降移動させる滑動部40、軸部41、軸受け41aを有する。また、安全ガード装置Sは、図3に示すようにセンサ50a、センサ50b、インターロック機構51(ニードル51a)、近接センサ61を有する。
なお、滑動部40、軸部41、軸受け41aを含む構成は滑動手段として機能し、具体的な構成例は流体(例えばエア(気体))駆動式のロッドレスシリンダである。また、滑動部40はカバー体30に接続された台座33に配設されており、滑動部40が軸部41に沿って上昇又は下降することでカバー体30が上昇移動又は下降移動する。
また、台座33には、図3に示すように板状のバネなどからなる羽部34a、34bが配設される。
【0019】
カバー体20は、枠体12の中空部のうち上枠11から略半分の中空部の領域を覆うものであり、図2に示すように、透光性を有する素材(強化ガラス板、アクリル板)からなる窓部21、枠体12にカバー体20を装着するための係合部L、略コの字形状に形成された持ち手22を有する。なお、係合部Lは枠体12側に突起部を設け、この突起部に係合する孔部をカバー体20に設けて構成される。
【0020】
カバー体30は、枠体12の中空部のうち少なくともカバー体20が被覆する領域以外の中空部の領域を覆うサイズに形成され、カバー体30は上枠11を基準に当該中空部を上昇移動又は下降移動する。カバー体30は、透光性を有する素材(強化ガラス板、アクリル板)からなる窓部31を有する。
【0021】
なお、本実施形態に係る安全ガード装置Sのカバー体30は、所定のフレームに窓部31を配設した例であり、カバー体30から窓部31が着脱自在になるように当該カバー体30に窓部31(フレーム)を装着するための係合部L、フレームに略コの字形状に形成された持ち手32を配設した構成である(図2図3参照)。なお、係合部Lはカバー体30側に突起部を設け、この突起部に係合する孔部を窓部31のフレーム側に設けて構成される。
【0022】
また、安全ガード装置Sは、図4に示すように枠体12の中空部に物体(作業者の手)が侵入又は離脱したか否かを検知するエリアセンサ60(第一の検知手段)を有する。エリアセンサ60は例えば光軸(60a)が遮られることで侵入又は離脱の検知が可能な投受光型のセンサや光電センサを用いることができる。
なお、エリアセンサ60は安全ガード装置S固有のものとして配設する場合の他、プレス機械Mに予め備えられているエリアセンサを利用するように構成しても良い。
【0023】
また、安全ガード装置Sが有するセンサ50aは、上昇移動するカバー体30が上死点位置近傍に到達したこと、上死点位置に存在することを検知する第二の検知手段として機能する。センサ50aは、例えば接触センサであり、羽部34aがセンサ50aに接触したことにより上昇移動するカバー体30が上死点近傍に到達したことを検知する。
また、羽部34aを介してセンサ50aに伝達される圧力が所定の圧力に達した場合、あるいは圧力の増加が停止した場合などを基準にカバー体30が上死点位置に存在することを検知する。
【0024】
また、安全ガード装置Sが有するセンサ50bは、下降移動するカバー体30が下死点位置近傍に到達したこと、下死点位置に存在することを検知する第三の検知手段として機能する。センサ50bは、例えば接触センサであり、羽部34bがセンサ50abに接触したことにより下降移動するカバー体30が下死点近傍に到達したことを検知する。
また、羽部34bを介してセンサ50bに伝達される圧力が所定の圧力に達した場合、あるいは圧力の増加が停止した場合などを基準にカバー体30が下死点位置に存在することを検知する。
なお、上昇移動するカバー体30が上死点位置近傍に到達したこと、また、下降移動するカバー体30が下死点位置近傍に到達したことの検知は、滑動部40が所定の距離まで近づいたことを検知する近接センサ61により実施しても良い。この場合、センサ50a、センサ50bはカバー体30が上死点位置又は下死点位置に存在することを検知するように構成しても良い。
【0025】
制御部50は、枠体12の中空部内を移動するカバー体30が上死点位置又は下死点位置に到達する前のタイミング(上死点位置の近傍又は下死点位置の近傍)で当該カバー体30の移動速度が減速するように滑動部40の動作を制御する。具体的には、滑動部40を含む構成がエア駆動式のロッドレスシリンダである場合、制御部50はロッドレスシリンダに流入するエア量を調整したり、排気されるエア量を調整したりすることでカバー体30の移動速度を制御することができる。
また、減速を開始するタイミングは、例えば上死点位置又は下死点位置から例えば、10[mm]手前の位置から減速を開始させたりするなど、ロッドレスシリンダ等の制御性能に応じて設定することができる。
【0026】
これにより、カバー体30が上死点位置あるいは下死点位置に到達したときに当該カバー体30が「跳ねる」(バウンディング)現象の発生を防ぐことができる。また、カバー体30の左右に配設された一対のロッドレスシリンダにより上昇移動や下降移動が実現されているために安定した減速制御が可能になる。そのため、カバー体30を上死点位置の近傍又は下死点位置の近傍までは速い速度で上昇移動や下降移動させることが可能になり、当該カバー体30の開閉速度を速くしつつバウンディング現象の発生を防ぐことができる。
【0027】
また、制御部50は、プレス機械Mの動作停止が所定の時間を経過し、且つ、カバー体30が上死点位置に存在する場合、当該カバー体30の移動が規制されるようにインターロック機構50の動作を制御する。以下、プレス機械Mの動作停止が所定の時間を経過した状態の一例としてプレス機械Mへの給電が遮断(主電源がOFF状態)され、且つ、カバー体30が上死点位置に存在する場合の当該カバー体30の移動の規制について説明する。
【0028】
図5は、カバー体30の構成の一例を示す右側面図である。また、図6は、上死点位置に存在するカバー体30がインターロックされている状態を示す図である。
前述した図3及び図5図6に示すようにカバー体30には、インターロック機構50のニードル50aが侵入可能なサイズで形成された孔部30aが設けられている。
【0029】
制御部50は、プレス機械Mへの給電が遮断(主電源がOFF状態)されており、且つ、カバー体30が上死点位置に存在する場合、図6に示すように、孔部30aにニードル50aが挿入されている状態となるようにインターロック機構50の動作を制御する。
これにより、プレス機械M、安全ガード装置Sの電源投入時やロッドレスシリンダに流体(エア)の流入・排出を規制するエア弁の解放時などにおけるカバー体30の意図せぬ移動動作の発生や空圧低下によるカバー体30の下がり現象の発生を防ぐことが可能になる。
【0030】
また、制御部50は、エリアセンサ60が物体(作業者の手)の侵入を検知した後にその離脱を検知した場合、当該カバー体30が下降移動を開始するように制御する。
これにより、作業者が加工前の被加工物をプレス機械Mに挿入(載置)してその後、手が安全な位置まで戻ったこと、つまり枠体12の中空部(被加工物の挿入面)から離脱したことを契機にカバー体30を下降移動して被加工物の挿入面が閉じられる。
そのため、作業者が負荷を軽減できるとともに「挿入面の閉忘れ」を防ぎ安全性の向上を図ることができる。なお、作業者が加工後の被加工物の取り出すと同時に加工前の被加工物をプレス機械Mに挿入(載置)するような作業の場合も同様である。
【0031】
また、制御部50は、エリアセンサ60が物体(作業者の手)の侵入を検知した後に所定の時間(例えば、15秒)が経過してもその離脱を検知しなかった場合には安全ガード装置Sの動作を無効(非常停止)にする。これにより、カバー体30がその後下降移動することがなくなり、後述するようにプレス機械Mのプレス動作が許可されることがないため加工作業における作業者の安全性のさらなる向上を図ることができる。
【0032】
また、制御部50は、カバー体30が上死点位置に存在することをセンサ50aが検知し、且つ、エリアセンサ60が物体(作業者の手)の侵入を検知した後にその離脱を検知した場合、当該カバー体30が下降移動を開始するように制御する。
これにより、被加工物の挿入面が適切に開かれた状態で作業者が加工前の被加工物をプレス機械Mに挿入(載置)してその後、手が安全な位置まで戻ったこと、つまり枠体12の中空部(被加工物の挿入面)から離脱したことを契機にカバー体30を下降移動して被加工物の挿入面が閉じられる。つまり、被加工物の挿入面が適切に開かれないのであればカバー体30の動作不良が発生している可能性がある。カバー体30の動作不良が発生しているか否かの確認も併せて行うことができる。
そのため、作業者が負荷を軽減できるとともにカバー体30が動作不良のまま作業が継続されないようにすることができる。これにより作業者の安全性のより向上させることができる。なお、作業者が加工後の被加工物の取り出すと同時に加工前の被加工物をプレス機械に挿入(載置)するような作業の場合も同様である。
【0033】
また、制御部50は、センサ50bによりカバー体30が下死点位置に存在することを検知したことを契機に、プレス機械Mに向けてプレス動作を許可する情報を発信し、当該プレス機械Mからプレス動作が完了したことを示す情報の受信を契機に、当該カバー体30が上昇移動を開始するように制御する。プレス動作が完了したことを示す情報は、例えばプレス機側のカムからの下死点信号などである。
これにより、作業者が負荷を軽減できるとともに「挿入面の閉忘れ」を防ぎ安全性の向上を図ることができる。なお、作業者が加工後の被加工物の取り出すと同時に加工前の被加工物をプレス機械Mに挿入(載置)するような作業の場合も同様である。
【0034】
また、制御部50は、フットスイッチFを介して行われる当該プレス機械Mの稼働可否を示す情報を受け付け、受け付けた情報に応じてカバー体30の下降移動の可否を制御する。具体的には、例えばフットスイッチFがONの状態(プレス機械Mの稼働が許可された状態)であれば、制御部50は、カバー体30の下降移動を許可する。また、フットスイッチFがOFFの状態(プレス機械Mの稼働が停止された状態)であれば、制御部50は、カバー体30の下降移動を停止する。これにより、加工作業における作業者の安全性のさらなる向上を図ることができる。
【0035】
[制御手順]
次に、本実施形態の安全ガード装置Sによる処理手順について説明する。図7は、カバー体30の上昇移動又は下降移動を制御する際の制御部50による主要な制御手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0036】
制御部50は、安全ガード装置S(プレス機械M)のオペレータによる開始指示の入力受付を契機に制御を開始する。なお、制御開始時点ではカバー体30は上死点位置に存在するものとして説明を進める。また、インターロックは解除状態であるとする。
【0037】
制御部50は、エリアセンサ60がタイムアウトしたか否かを検知する(S100)。具体的には、例えばエリアセンサ60が物体(作業者の手)の侵入を検知した後に所定の時間(例えば、15秒)が経過してもその離脱を検知しなかった場合にはダイムアウトと判別する。タイムアウトと判別した場合(S100:Yes)、制御部50は安全ゲート装置S、プレス機械Mの動作を停止させる(非常停止)。また、そうでない場合(S100:No)、ステップS101の処理へ進む。この場合には、作業者が加工前の被加工物をプレス機械Mに挿入(載置)してその後、手が安全な位置まで戻ったことになる。
【0038】
制御部50は、フットスイッチFがON状態であるか否かを判別する(S101)。ON状態でないと判別した場合(S101:No)、ステップS100の処理へ戻る。また、そうでない場合(S101:Yes)、安全カバー(カバー体30)の下降移動を開始する(S102)。
【0039】
制御部50は、エリアセンサ60が物体(例えば作業者の手の侵入)を検知したか否かを判別する(S103)。エリアセンサ60が物体を検知したと判別した場合(S103:Yes)、制御部50は、安全カバー(カバー体30)の上昇移動を開始する(S108)。また、そうでない場合(S103:No)、制御部50は、減速を開始するか否かを判別する(S110)。具体的には、センサ50aあるいは近接センサ61の検知結果に応じて制御部50が判別する。減速を開始すると判別した場合(S110:Yes)、制御部50は、カバー体30の移動速度を減速させる(S111)。
制御部50は、カバー体30が下死点位置に到達したか否かを判別する(S104)。
このように制御部50は、センサ50b(近接センサ61)の検知結果に基づいて、カバー体30が下死点位置に到達する前のタイミング(下死点位置の近傍)で当該カバー体30の移動速度が減速するように滑動部40の動作を制御する。
【0040】
制御部50は、カバー体30が下死点位置に到達したと判別した場合(S104:Yes)、フットスイッチFがON状態であるか否かを判別する(S105)。
制御部50は、フットスイッチFがOFF状態であると判別した場合(S105:No)、ステップS101の処理に戻る。また、そうでない場合(S105:Yes)、制御部50は、プレス機械Mのプレス動作を開始させる信号を当該プレス機械Mに向けて発信する(S106)。これによりプレス機械Mのプレス動作が開始される。
【0041】
制御部50は、プレス機械Mのプレス動作が完了したか否かを判別する(S107)。具体的には、プレス機械Mからプレス動作が完了したことを示す情報の受信することにより判別する。
制御部50は、プレス機械Mのプレス動作が完了したと判別した場合(S107:Yes)、安全カバー(カバー体30)の上昇移動を開始する(S108)。制御部50は、減速を開始するか否かを判別する(S112)。具体的には、センサ50bあるいは近接センサ61の検知結果に応じて制御部50が判別する。減速を開始すると判別した場合(S112:Yes)、制御部50は、カバー体30の移動速度を減速させる(S113)。
このように制御部50は、センサ50a(近接センサ61)の検知結果に基づいて、カバー体30が上死点位置に到達する前のタイミング(上死点位置の近傍)で当該カバー体30の移動速度が減速するように滑動部40の動作を制御する。
【0042】
制御部50は、カバー体30が上死点位置に到達したか否かを判別する(S109)。
制御部50は、カバー体30が上死点位置に到達したと判別した場合(S109:Yes)、ステップS100の処理に戻る。
【0043】
このように本実施形態に係る安全ガード装置S(安全ガード装置Sを有するプレス機械M)は、カバー体30の素早い開閉動作を行っても作業者の安全性を損なうことのない構成になっている。また、フットスイッチを介した作業者の「意思」の介在により当該作業者が安心感を持って使用することができる。また、枠体12に中に滑動部40等を配設しているためプレス機械等の加工機械に後付けする上でも軽量・コンパクトな仕様とすることができる。
【0044】
上記説明は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が、これらの例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10・・・縦枠、11・・・上枠、12・・・枠体、20、30・・・カバー体、50・・・制御部、40・・・滑動部、41・・・軸部、41a・・・軸受け、50a、b・・・センサ、51・・・インターロック機構、60・・・ラインセンサ、61・・・近接センサ、F・・・フットスイッチ、M・・・プレス機械(加工機械)、S・・・安全ガード装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7