(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】リュックサック
(51)【国際特許分類】
A45F 3/04 20060101AFI20231207BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20231207BHJP
D04B 21/12 20060101ALI20231207BHJP
D04B 21/14 20060101ALI20231207BHJP
D01F 8/14 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
A45F3/04 300
D04B21/16
D04B21/12
D04B21/14 Z
D01F8/14 B
(21)【出願番号】P 2019065275
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室谷 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】田代 こゆ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179808(JP,A)
【文献】特開平11-269747(JP,A)
【文献】実開平02-142487(JP,U)
【文献】特開2004-190191(JP,A)
【文献】特開2007-000412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F3/00-5/14
D04B1/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リュックサックであって、肩ベルトおよび/または使用者の背中に当たる部分を構成する素材を含み、
前記素材は、表地と裏地とが連結糸で連結されたダブルラッセル編地にて構成され、
前記表地は、メッシュの形状が六角形または四角形であるメッシュ構造の編地にて構成され、
前記裏地は、メッシュ構造ではない目の詰まった編地にて構成され、
前記表地と裏地との内のいずれか一方の編地を形成する糸条が、高融点ポリマーと低融点ポリマーとを有した複合型熱融着繊維であって、低融点ポリマーの溶融再固化によって、繊維形態を保った高融点ポリマーが固着された状態の繊維にて形成されており、
前記表地と裏地との内の他方の編地を形成する糸条が、前記複合型熱融着繊維の低融点ポリマーの溶融時の熱による影響を受けずに柔軟な繊維形態を維持する繊維によって形成されており、
前記表地と裏地との内の他方の編地が、前記リュックサックの使用者の身体側に配されていることを特徴とするリュックサック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリュックサックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なリュックサックはバッグと一対の肩ベルトとを有し、一方の肩ベルトを右肩に掛けるとともに他方の肩ベルトを左肩に掛けることでバッグを背負うことができるように構成されている(特許文献1)。特許文献1に記載されたリュックサックの肩ベルトは、弾性を有する芯材と、この芯材を被覆する表生地とで構成されている。また、一般的なリュックサックにおいては、バッグは布地にて構成され、このバッグにおける使用者の背中に当たる部分すなわち背当てにクッション材が配置されたものも見受けられる。このクッション材は、肩ベルトの芯材と同様に適当な布地によって被覆されているのが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/088056号(段落0024)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の肩ベルトやバッグは、上記のように弾性を有する芯材やクッション材を有しており、これらの部材は衣類を介して使用者の身体に接するものであるものの、通気性に乏しいという問題点がある。このため、使用者にとっては、肩や背中に汗がこもりやすいという課題がある。また上記した芯材やクッション材は、使用者の人体にうまく適合したものでない限り、使用者に良好なクッション感を作用させることが困難であるという課題もある。また、弾性を有する芯材やクッション材を単に用いただけのものでは、柔軟性は得ることができるものの、剛性や緩衝性がなく、より重たい荷物を背負った場合に身体にフィットし過ぎて背負い心地が悪いという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、このような課題を解決して、リュックサックの肩ベルトや背当てに好適に使用することができる通気性とクッション性を有し、さらには緩衝性と剛性とを兼備した素材を含むリュックサックを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明のリュックサックは、
肩ベルトおよび/または使用者の背中に当たる部分を構成する素材を含み、
前記素材は、表地と裏地とが連結糸で連結されたダブルラッセル編地にて構成され、
前記表地は、メッシュの形状が六角形または四角形であるメッシュ構造の編地にて構成され、
前記裏地は、メッシュ構造ではない目の詰まった編地にて構成され、
前記表地と裏地との内のいずれか一方の編地を形成する糸条が、高融点ポリマーと低融点ポリマーとを有した複合型熱融着繊維であって、低融点ポリマーの溶融再固化によって、繊維形態を保った高融点ポリマーが固着された状態の繊維にて形成されており、
前記表地と裏地との内の他方の編地を形成する糸条が、前記複合型熱融着繊維の低融点ポリマーの溶融時の熱による影響を受けずに柔軟な繊維形態を維持する繊維によって形成されており、
前記表地と裏地との内の他方の編地が、前記リュックサックの使用者の身体側に配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のリュックサックによれば、リュックサックに含まれる素材が、表地と裏地とが連結糸で連結されたダブルラッセル編地にて構成され、前記表地は、メッシュの形状が六角形または四角形であるメッシュ構造の編地にて構成されているため、優れた通気性を有し、このためこの素材を用いたリュックサックを着用したときに、使用者の肩や背中の部分に汗がこもることがないうえに、表地と裏地とが連結糸で連結された三次元織編物にて素材が構成されているために、使用者の肩や背中に対する適切なクッション性を発揮することができる。前記裏地は、メッシュ構造ではない目の詰まった編地にて構成されているため、前記素材に強度や形態保持性を付与することができる。また、表地と裏地との内のいずれか一方の編地を形成する糸条が、高融点ポリマーと低融点ポリマーとを有した複合型熱融着繊維であって、低融点ポリマーの溶融再固化によって、繊維形態を保った高融点ポリマーが固着された状態の繊維によって形成されていることで、リュックサックの肩ベルトや背当てにとって好ましい適度の剛性も兼備することができるため、重たい荷物を入れた場合であっても、その負荷に対してへたり難く厚みを維持し、通気性や緩衝性に優れることから、背負い心地の良好なリュックサックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1のリュックサックに用いられるリュックサック用素材を示す図である。
【
図3】
図2のリュックサック用素材の要部の拡大図である。
【
図4】
図3に示された部分を模式化したうえで、連結糸を省略して表した図である。
【
図6】同素材に用いられる複合型熱融着繊維の断面構造を示す図である。
【
図7】同複合型熱融着繊維にて構成された糸条を熱セットしたときの状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】
本発明の実施の形態のリュックサックに含まれる素材の要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されるリュックサックにおいて、11はバッグ、12、12は一対の肩ベルトである。バッグ11は樹脂シートにて袋状に形成され、肩ベルト12は樹脂材によって厚手の帯状に形成されている。バッグ11には、使用者が着用したときに使用者の背中に接する背当て13が形成されている。
【0010】
肩ベルト12と背当て13とには、
素材14が用いられている。この素材14は、
図2~
図5に示すように、表地15と裏地16とを有するとともに、これら表地15と裏地16とを連結する多数の連結糸17を有することで、所要の弾力性を発揮することが可能な、ダブルラッセル編地にて構成されている。表地15は、メッシュ状体すなわちメッシュ構造の編物布帛である。裏地16は、図示のように表地と同様のメッシュ構造の編物布帛であることが好適である。
しかし、本発明の実施の形態においては、後述のように、裏地16は、メッシュ構造であることに代えて、地組織すなわちメッシュ構造ではない一般的な目の詰まった編地にて
構成される。連結糸17は、表地15の構成糸条と、裏地16の構成糸条とを繋ぐものである。
【0011】
本開示における図示の表地15と裏地16とのメッシュ構造について説明する。このメッシュ構造は、多角形状のメッシュ構造であり、図示の例ではメッシュの形状が六角形である。このほかにも四角形のメッシュ構造も容易に実現することができ、その場合のメッシュの形状は、図示を省略するが菱形となる。
【0012】
本開示において、表地15と裏地16とのメッシュ構造は、多角形の一辺が2~60コースの編目により構成されたものである。一辺を構成する編目の個数をこの範囲とするのは、主としてメッシュの立体形状の安定性の観点による。
【0013】
メッシュ組織にて構成された表地15の構成糸条と裏地16の構成糸条とは、上述のように連結糸17によって繋がれている。図示のように、連結糸17はダブルラッセル編地の厚み方向に配列され、表地15の構成糸条と裏地16の構成糸条との間に編み構造によって多数本の連結糸17が配置されている。その繊度は、素材14の形態安定性の観点から、100デシテックス以上であることが好ましい。
【0014】
素材14すなわちダブルラッセル編地を構成する糸条は、このダブルラッセル編地がリュックサックのバッグ11および肩ベルト12としての好適な弾性を有することができる適宜の材料にて構成することができる。そのような材料としては、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルや、ポリアミドや、その他の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0015】
素材14における表地15と裏地16との内のいずれか一方の編地を形成する糸条は、複合型熱融着繊維によって構成される。そのような複合型熱融着繊維としては、鞘部に低融点熱可塑性ポリマーが配され、芯部に、鞘部の低融点熱可塑性ポリマーよりも融点の高い高融点熱可塑性ポリマーが配された芯鞘型熱融着性繊維が挙げられる。ポリマーが融点を有しない場合は、融点に代えて軟化点での高低の対比となる。そのほかにも、低融点熱可塑性ポリマーと高融点熱可塑性ポリマーとが半々に配されたサイドバイサイド型熱融着性繊維などが挙げられる。
【0016】
図6は、芯鞘型の断面構造を有する複合型熱融着繊維の断面構造を示す。ここで、18は芯部、19は鞘部である。芯部18を構成する高融点ポリマーと、鞘部19を構成する低融点ポリマーとしては、たとえば、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体(ナイロン)、ポリオレフィン系重合体、ポリブチラール系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン重合体などなどが挙げられる。素材14の柔軟性を重視する場合には、両ポリマーがいずれもポリアミド系重合体であることが好ましく、強度や所要の剛性に優れるという点では両ポリマーがいずれもポリエステル系重合体であることが好ましい。
【0017】
低融点熱可塑性ポリマーと高融点熱可塑性ポリマーとの具体的な好ましい組み合わせは、両者の相溶性や後述する熱接着時の性能を考慮すると、低融点ポリエステルと高融点ポリエステル、低融点ポリプロピレンと高融点ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレン、低融点ナイロンと高融点ナイロン、などが挙げられる。
【0018】
リュックサック用の素材14としての観点から、複合型熱融着性繊維における高融点熱可塑性ポリマーと低融点熱可塑性ポリマーとの質量比率、すなわち芯部18と鞘部19との質量比率は、たとえば、高融点熱可塑性ポリマー/低融点熱可塑性ポリマーの質量比率で、2/8~8/2がよく、2/1~3/1がより好ましい。
【0019】
素材14は、肩ベルト12や背当て13としてより適した性能を発揮することができるように、熱セット処理されたものにて構成される。熱セット処理することによって、
図7に示すように、鞘部19の低融点熱可塑性ポリマーを融解あるいは軟化させたうえで再固化させることで、図示のように複数の繊維の芯部18同士を熱接着によって互いに固定一体化することができる。それによって、複合型熱融着性繊維により構成される編地自体が、繊維布帛が有するしなやかさを失って、剛性を有し、形態安定性を有したものとなり、メッシュの目が適切な大きさに開いた状態で固定することができ、その結果、肩ベルト12や背当て13の三次元的な形態を安定化させたうえで、所要の通気性を確保することでできるとともに、素材14に、肩ベルト12や背当て13に適した程良い弾力性や、バッグ11の内部の収用物に対する緩衝性や、使用者の身体に対するフィット性や、剛性を付与することができる。
【0020】
熱セット処理の際には、上記のように熱融着成分としての鞘部19の低融点熱可塑性ポリマーは融解あるいは軟化されて、場合によっては図示のように繊維形態を失ったうえで再固化されるが、そのときに熱セットの処理温度を、鞘部19の低融点熱可塑性ポリマーの融点または軟化点以上の温度かつ芯部18の高融点熱可塑性ポリマーの融点または軟化点未満の温度とすることにより、芯部18の高融点熱可塑性ポリマーは繊維形態を保った状態に維持される。その結果、本発明のリュックサック用素材14は、繊維状の成分を含んだシート状体となるため、このような繊維状の成分を含まない単なる樹脂シートにて構成された素材に比べて強度的に優れたものとすることができる。
【0021】
図8および
図9は、本発明のリュックサックに含まれる
素材14の例を示す。この素材14では、前述のように、裏地16は、メッシュ構造であることに代えて、地組織すなわちメッシュ構造ではない一般的な目の詰まった編地にて構成されている。このような構成であると、例えば、表地15を使用者の身体側に配置することで優れた通気性を確保することができるうえに、裏地16を一般的な目の詰まった編地にて構成することで、肩ベルト12に所要の強度や形態保持性を付与することができるとともに、背当て13もバッグ11と一体化されることで、使用者の背中の部分におけるバッグ11の強度や形態保持性を向上させることができる。また、一般的な目の詰まった編地であることで、バッグ11への取付け性が良好である。反対に、メッシュ状の表地15を使用者の身体側とは反対側に配置させ、裏地16を使用者の身体側に配置した場合でも、優れた通気性確保と形態保持性、緩衝性を
奏する。
【0022】
以上において説明した素材14を用いて、
図1に示されるリュックサックの肩ベルト12と、バッグ11の背当て13とが形成される。肩ベルト12は、
使用者の身体側にメッシュ構造の表地15または裏地16を露出させることで、通気性をより発揮させることができる。
使用者の身体側以外の部分は、着用性や装飾性を向上させるために、布帛などのシート材20でカバーすることが好適である。背当て13も、同様に
使用者の身体側にメッシュ構造の表地15または裏地16を露出させることで、通気性をより発揮させることができる。図示は省略するが、この背当て13についても、布帛などのシート材でたとえば縁取りを施すことなどにより、装飾性などを向上させることができる。
【0023】
場合によっては、上記とは逆に、着用者の身体側とは反対側に、メッシュ構造の表地15または裏地16を露出させることもできる。
【0024】
このような素材14を用いて構成した肩ベルト12や背当て13は、上記のように良好な通気性を有することで、着用時に汗がこもったりすることが無いという利点がある。のみならず、ダブルラッセル編地にて構成されているために、適度なクッション性を有し、このために着用時における使用者への負荷を軽減することができる。さらに、熱セット処理が施されたものであることで、適度な剛性や形態安定性を発揮することができて、過度に柔軟であることで着用時に身体にフィットし過ぎるということがないうえに、圧縮時には点でなく面の全体で負荷を受け止めて圧縮することになり、このため圧縮時にもある程度以上の厚みを維持することができて、それにもとづくクッション性を確保することもでき、通気性を維持し、緩衝性に優れる。したがって、リュックサックの肩ベルト12や背当て13としてより適したものとなる。
【実施例】
【0025】
以下の参考例・比較例において、各物性の評価や性能試験は、次のようにして行った。
【0026】
(a)3点曲げ応力
試料を長さ70mm、幅50mmにカットし、JISK-7171に従い、試料のウェール方向に圧子が沿うように試料の中央部の3点曲げ試験を行った。試験速度は2mm/分、支点間距離は32mmとした。試料に荷重がかかり始めた点を始点とし圧子が7mm変位した時の応力を測定した。5回測定しその平均値を算出して3点曲げ応力とした。
【0027】
(b)圧縮応力
試料を長さ70mm、幅50mmにカットし、平らな金属板の上に設置した。JISK-7171に従い、試料のウェール方向に圧子が沿うように試料の中央部を圧子で圧縮し、圧子が2mm変位した時の応力を測定した。5回測定しその平均値を算出して圧縮応力とした。
【0028】
(c)リュックサック用緩衝材としての性能試験
容量22L、タテ48cm×ヨコ25cm×奥行き22cmのリュックサックの背当て材として、タテ30cm×ヨコ20cmにカットした試料を1枚使用した。また、同リュックサックの左右の肩ベルトとして、タテ40cm×ヨコ5cmにカットした同試料を左右に1枚ずつ使用した。リュックサックの内部に10kgの錘を入れて、実際に人がリュックサックを背負った時の背当ておよび肩ベルトとしての剛性、フィット性、通気性、緩衝性について官能評価を行った。
【0029】
参考例1
6枚筬を具備したダブルラッセル編機を用いて、L1~L6筬に下記原糸を供給し、
図10に示す組織にて編成した。
図10に示す組織を4テンポ表示すると、以下の通りである。
【0030】
L1:2111/1222/1011/1211/1011/1211/1011/
1222/2122/2322/2122/2322/2122/2322
L2:1222/2122/2322/2122/2322/2122/2322/2111/1211/1011/1211/1011/1211/1011
L3:2110/1210/1210/1210/1210/1210/1210/
1223/1223/2123/2123/2123/2123/2123
L4:1223/2123/2123/2123/2123/2123/2123/
2110/1210/1210/1210/1210/1210/1210
L5:1112/1110/1112/1110/1112/1101/1112/
2221/2223/2221/2223/2221/2223/2221
L6:2221/2223/2221/2223/2221/2223/2221/
1112/1110/1112/1110/1112/1110/1112
【0031】
ここで、
L1:ユニチカ社製 商品名「メルセット CM27」280dtex48フィラメント(芯鞘複合型熱融着繊維からなるマルチフィラメント糸 芯:ポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘:共重合ポリエステル、芯鞘比(質量比)は芯:鞘=2.7:1)を3本
L2:ユニチカ社製 商品名「メルセット CM27」280dtex48フィラメント糸を3本(L1と同じもの)
L3:ユニチカ社製PETモノフィラメント糸(品番 PV21) 280dtexを2本
L4:ユニチカ社製PETモノフィラメント糸(品番 PV21)280dtexを2本(L3と同じもの)
L5:ユニチカ社製 商品名「メルセット CM27」280dtex48フィラメントを3本(L1と同じもの)
L6:ユニチカ社製 商品名「メルセット CM27」280dtex48フィラメントを3本(L5と同じもの)とした。
【0032】
編成した網地は、表地および裏地ともに略六角形状の網目を有し、表地および裏地がPETモノフィラメント糸によって連結されたものであった。全巾1270mm、厚み5.9mm、コース密度26.2本/インチ、ウェール密度14.0本/インチ、目付け1000g/m2であった。この網地をピンテンターを用いて180℃で2分間熱処理し、全巾985mm、厚み5.5mm、コース密度25.4本/インチ、ウェール密度9.1本/インチ、目付け622g/m2の網地構造の素材を得た。
【0033】
参考例2
参考例1と比べて、6枚筬のうちのL1筬およびL2筬に下記原糸用いた点を変化させた。そして、それ以外は参考例1と同様にして網地構造の素材を得た。
L1:ユニチカ社製 PETマルチフィラメント糸(品番 E814)280dtex48フィラメントを3本
L2:ユニチカ社製 PETマルチフィラメント糸(品番 E814)280dtex48フィラメントを3本(L1と同じもの)
【0034】
参考例2の網地構造の素材は、片面が熱融着性複合繊維のみから構成され熱融着により硬化して形態安定性を向上させるものであり、他面は熱による影響を受けずに柔軟な繊維形態を維持するものであるため、剛性・形態安定性と柔軟性とを併せ持ち、参考例1と比較して、より身体へのフィット感を有するものであった。リュックサックに適用する際に、熱融着性複合繊維のみから構成される面を身体側ではない方に位置させることにより、身体へのフィット感がより良好となった。
【0035】
比較例1
参考例2と比べて、6枚筬のうちのL5筬およびL6筬に下記原糸用いた点を変化させた。そして、それ以外は実施例1と同様にして網地構造の素材を得た。
L5:ユニチカ社製PETマルチフィラメント糸(品番 E814)280dtex48フィラメントを3本(L1と同じもの)
L6:ユニチカ社製PETマルチフィラメント糸(品番 E814)280dtex48フィラメントを3本(L5と同じもの)
【0036】
参考例1、参考例2および比較例1の素材についての測定・評価結果を表1に示す。
【0037】
【0038】
参考例1および参考例2の網地構造の素材は、3点曲げおよび圧縮のいずれの応力も高い値であり、圧縮されにくく、圧力に対して立体構造を良好に維持し、形態安定性に優れ、通気性を維持し得るものであった。なお、参考例2において、3点曲げ応力および圧縮応力を測定する際に、熱融着性複合繊維のみから構成される編地側ではない面側を上面として測定した。また、リュックサックの肩ベルトおよび背当て部分に、参考例1および参考例2の網地構造の素材を適用したリュックサックを作成し、10kgの錘を入れて背負った場合であっても、背負い心地が良好であった。一方、比較例1の網地構造の素材は、参考例1や参考例2と比較して応力が小さく、圧力に対して立体構造を維持しにくいものであった。すなわち比較例1は、表地も裏地も両方とも熱の影響を受けていない繊維を用いたことから、剛性を有しない網地構造の素材であった。