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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20231207BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20231207BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20231207BHJP
   F16J 15/3256 20160101ALI20231207BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C33/80
F16J15/447
F16J15/3256
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019212115
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021085411
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大森 健太郎
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/013439(WO,A1)
【文献】特開2010-091036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56
F16C 33/30-33/82
F16J 15/16-15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部材と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間に装着され第1部材と第2部材とが組み合わさって構成される密封装置であって、
前記第1部材は、前記内側部材に嵌合される内径側円筒部と、前記内径側円筒部の一端部から外径側に延びる円板部と、前記円板部の一端部から軸方向の内側に延びる外径側円筒部とを有し、
前記第2部材は、前記外側部材に嵌合される芯金と、前記芯金に固着され前記第1部材の円板部に弾接するリップ部を有した弾性体製のシールリップ部とを有し、
前記外径側円筒部には、前記リップ部の前記円板部に対する弾接部分より軸方向の内側に排水部が設けられており、
前記第1部材の前記外径側円筒部は、前記外側部材に内嵌される前記芯金の芯金円筒部との間にラビリンス部が形成されるように配置され、
前記外径側円筒部と前記リップ部との間には、空間部が設けられ、
前記排水部は、前記ラビリンス部と前記空間部とを連通するように形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
外側部材と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間に装着され第1部材と第2部材とが組み合わさって構成される密封装置であって、
前記第1部材は、前記内側部材に嵌合される内径側円筒部と、前記内径側円筒部の一端部から外径側に延びる円板部と、前記円板部の一端部から軸方向の内側に延びる外径側円筒部とを有し、
前記第2部材は、前記外側部材に嵌合される芯金と、前記芯金に固着され前記第1部材の円板部に弾接するリップ部を有した弾性体製のシールリップ部とを有し、
前記外径側円筒部には、前記リップ部の前記円板部に対する弾接部分より軸方向の内側に排水部が設けられており、
前記第2部材の前記芯金は、前記外側部材の内周面に嵌合される芯金円筒部と、該芯金円筒部の一端部から内径側に延びる芯金円板部とを有し、前記シールリップ部は、前記一端部の外面を覆う基部を有しており、
前記第1部材の前記外径側円筒部は、前記基部との間にラビリンス部が形成されるように配置され、
前記外径側円筒部と前記リップ部との間には、空間部が設けられ、
前記排水部は、前記空間部と外部空間とを連通するように形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記内側部材は、フランジ部を有し、
前記内径側円筒部は、前記フランジ部の基部に嵌合されていることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項において、
前記排水部が、間隔を空けて周方向に複数設けられていることを特徴とする密封装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項において、
前記排水部は、前記外径側円筒部を貫通する孔または切り欠き形状であることを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側部材と、外側部材に対して同軸回転する内側部材との間に装着され第1部材と第2部材とが組み合わさって構成される密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような密封装置としては、例えば下記特許文献1に開示されているようなスリンガの断面形状を二重円筒形(倒U字形)とし、シール性の向上を図ったものが挙げられる。しかし泥水等は僅かな隙間からでも浸入してしまうため、シール性が高く且つ浸入してしまった泥水等が排出されやすいものが求められる。
そこで、下記特許文献1では二重円筒形(倒U字形)のスリンガを採用してシール性を高めつつ、スリンガの環状板部に複数の排出穴を設けている。また下記特許文献2には、スリンガの円輪部にテーパ面を有する貫通孔が設けられた密封装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-196585号公報
【文献】特開2015-206441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記引用文献1及び上記引用文献2で開示されているもののように、スリンガに弾接してシールするシールリップ部の近傍に排出穴や貫通孔を設けた場合、シールリップ部の先端への泥水等の噛み込むおそれがあり、この場合、密封装置の長寿命化を図ることが難しい。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、密封装置内への泥水等の浸入を抑えるとともに、浸入した泥水等の排出性を高め、シール性能が長く維持される新規な密封装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る密封装置は、外側部材と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間に装着され第1部材と第2部材とが組み合わさって構成される密封装置であって、前記第1部材は、前記内側部材に嵌合される内径側円筒部と、前記内径側円筒部の一端部から外径側に延びる円板部と、前記円板部の一端部から軸方向の内側に延びる外径側円筒部とを有し、前記第2部材は、前記外側部材に嵌合される芯金と、前記芯金に固着され前記第1部材の円板部に弾接するリップ部を有した弾性体製のシールリップ部とを有し、前記外径側円筒部には、前記リップ部の前記円板部に対する弾接部分より軸方向の内側に排水部が設けられており、前記第1部材の前記外径側円筒部は、前記外側部材に内嵌される前記芯金の芯金円筒部との間にラビリンス部が形成されるように配置され、前記外径側円筒部と前記リップ部との間には、空間部が設けられ、前記排水部は、前記ラビリンス部と前記空間部とを連通するように形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る他の密封装置は、外側部材と、該外側部材に対して同軸回転する内側部材との間に装着され第1部材と第2部材とが組み合わさって構成される密封装置であって、前記第1部材は、前記内側部材に嵌合される内径側円筒部と、前記内径側円筒部の一端部から外径側に延びる円板部と、前記円板部の一端部から軸方向の内側に延びる外径側円筒部とを有し、前記第2部材は、前記外側部材に嵌合される芯金と、前記芯金に固着され前記第1部材の円板部に弾接するリップ部を有した弾性体製のシールリップ部とを有し、前記外径側円筒部には、前記リップ部の前記円板部に対する弾接部分より軸方向の内側に排水部が設けられており、前記第2部材の前記芯金は、前記外側部材の内周面に嵌合される芯金円筒部と、該芯金円筒部の一端部から内径側に延びる芯金円板部とを有し、前記シールリップ部は、前記一端部の外面を覆う基部を有しており、前記第1部材の前記外径側円筒部は、前記基部との間にラビリンス部が形成されるように配置され、前記外径側円筒部と前記リップ部との間には、空間部が設けられ、前記排水部は、前記空間部と外部空間とを連通するように形成されていることを特徴とする。
以上によれば、外径側円筒部に排水部が設けられているので、第1部材内に泥水等が浸入しても、排水部から排出させることができる。また排水部から泥水等が浸入しても、リップ部の円板部に対する弾接部分に泥水等が直接落ちることを防止し、リップ部の先端部への泥水等の噛み込みを防止できる。すなわち、以上によれば、シール性及び排出性の向上を両立することができ、密封装置の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る密封装置によれば、密封装置内への泥水等の浸入を抑えるとともに、浸入した泥水等の排出性を高め、シール性能が長く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る密封装置が適用される軸受装置の一例を模式的に示す概略的縦断面図である。
図2】(a)は図1のX部の拡大図であって、本発明に係る密封装置(インナーシール)の第1実施形態を模式的に示す図である。(b)は同実施形態に係る密封装置の部分断面斜視図である。
図3図2に示す密封装置の第1部材を模式的に示す概略的斜視図である。
図4】(a)は第1実施形態に係る密封装置の変形例を模式的に示す図であって、図1のX部の拡大図に相当する。(b)は当該変形例に係る密封装置の部分断面斜視図である。
図5図4に示す密封装置の第1部材を模式的に示す概略的斜視図である。
図6】(a)は図1のY部の拡大図であって、本発明に係る密封装置(アウターシール)の第2実施形態を模式的に示す図である。(b)は同実施形態に係る密封装置の部分断面斜視図である。
図7】(a)は第2実施形態に係る密封装置の変形例を模式的に示す図であって、図1のY部の拡大図に相当する。(b)は当該変形例に係る密封装置の部分断面斜視図である。
図8】(a)は第2実施形態に係る密封装置のさらなる変形例を模式的に示す図であって、図1のY部の拡大図に相当する。(b)は当該変形例に係る密封装置の部分断面斜視図である。
図9図8に示す密封装置の第1部材を模式的に示す概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図には、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
本実施形態に係る密封装置10,11は、外側部材2と、外側部材2に対して同軸回転する内側部材5との間に装着され第1部材50と第2部材60とが組み合わさって構成される密封装置である。第1部材50は、内側部材5に嵌合される内径側円筒部501と、内径側円筒部501の一端部501aから外径側に延びる円板部502と、円板部502の一端部502aから軸方向の内側に延びる外径側円筒部503とを有する。第2部材60は、外側部材2に嵌合される芯金61と、芯金61に固着され第1部材50の円板部502に弾接するリップ部621を有した弾性体製のシールリップ部62とを有している。外径側円筒部503には、リップ部621の円板部502に対する弾接部分より軸方向の内側に排水部51が設けられている。
以下、詳述する。
【0010】
<第1実施形態>
まずは図1図3を参照しながら、第1実施形態に係る密封装置10について説明する。
図1は、自動車の車輪(不図示)を軸回転可能に支持する軸受装置1を示す。この軸受装置1は、大略的に、外側部材としての外輪2と、ハブ輪3と、ハブ輪3の車体側に嵌合一体とされる内輪部材4と、外輪2とハブ輪3及び内輪部材4との間に介装される2列の転動体(ボール)6…とを含んで構成される。この例では、ハブ輪3及び内輪部材4が内側部材としての内輪5を構成する。外輪2は、自動車の車体(不図示)に固定される。また、ハブ輪3にはドライブシャフト7が同軸的にスプライン嵌合され、ドライブシャフト7は等速ジョイント8を介して不図示の駆動源(駆動伝達部)に連結される。ドライブシャフト7はナット9によって、ハブ輪3と一体化され、ハブ輪3のドライブシャフト7からの抜脱が防止されている。内輪5(ハブ輪3及び内輪部材4)は、外輪2に対して、軸L回りに回転可能とされ、外輪2と、内輪5とにより、相対的に回転する2部材が構成され、該2部材間に環状の軸受空間Sが形成される。軸受空間S内には、2列の転動体6…が、リテーナ6aに保持された状態で、外輪2の軌道輪2a、ハブ輪3及び内輪部材4の軌道輪3a,4aを転動可能に介装されている。ハブ輪3は、フランジ部を備え、具体的には、フランジ部の基部となる円筒形状のハブ輪本体30と、ハブ輪本体30より立上基部31を介して径方向外側に延出するよう形成されたハブフランジ32を有している。そして、ハブフランジ32にボルト33及び不図示のナットによって車輪が取付固定される。以下において、軸L方向に沿って車輪に向く側(図1において左側を向く側)を車輪側、車体に向く側(同右側を向く側)を車体側と言う。
【0011】
軸受装置1の軸L方向に沿った両端部、具体的には外輪2と内輪部材4との間には密封装置10(インナーシール)が、外輪2とハブ輪3との間には密封装置11(アウターシール)が装着され、軸受空間Sの軸L方向に沿った両端部が密封される。これによって、軸受空間S内への泥水等の浸入や軸受空間S内に充填される潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が防止される。
【0012】
本実施形態に係る密封装置は、図2(a)及び図2(b)に示すように車体側に装着される密封装置10である。密封装置10は、内輪5を構成する内輪部材4に外嵌される2重円筒形の第1部材50と、外輪2に内嵌される第2部材60とが組み合わさって構成される。
【0013】
第1部材50は、SPCC等の鋼板をプレス加工して形成され、断面倒U字形状をなす2重円筒形とされる。第1部材50は、内輪部材4の外径面4bに外嵌される内径側円筒部501と、内径側円筒部501の軸受空間Sとは反対側の一端部501aから外径側に延びる円板部502と、円板部502の一端部502aから軸L方向に沿って第2部材60側に延びる外径側円筒部503と備えている。第2部材60のリップ部621は、円板部502の軸受空間S側の面502bに弾接する。また、ラジアルリップ622,623は、内径側円筒部501の外径面501bに弾接する。図2(a)及び図2(b)において、リップ部621及びラジアルリップ622,623の2点鎖線部は、弾性変形前の原形状を示す。
【0014】
第2部材60は、外輪2に内嵌される芯金61と、芯金61に固着されたゴム製のシールリップ部62とを備える。具体的には、芯金61は、断面形状が略L字形状とされ、外輪2の車体側の内周面2bに内嵌される芯金円筒部611と、芯金円筒部611の軸受空間S側の端部611aから内径側に延びる内向鍔部612とを備える。シールリップ部62は、ゴム材からなり、芯金61に加硫成型により固着一体とされる基部620と、基部620から延出された1個のリップ部621及び2個のラジアルリップ622,623とを備える。基部620は、芯金61における内向鍔部612の軸受空間S側の面612aの一部から内周縁部612bを回り込み、内向鍔部612の軸受空間Sとは反対側の面612cの全面を覆うように芯金61に固着一体とされている。さらに、基部620は、芯金円筒部611の内径面611bの全面を覆い、軸受空間Sとは反対側の端部611cを回り込んで芯金円筒部611の外径面611dに至るように芯金61に固着一体とされている。基部620の芯金円筒部611の外径面611dに至る部分は、外径側に隆起する環状突部624とされ、この環状突部624は、芯金61が外輪2に内嵌された際、外輪2の内周面2bと芯金円筒部611の外径面611dとの間に圧縮状態で介在するように形成されている。環状突部624の、外輪2と芯金円筒部611との間での圧縮状態の介在によって、外輪2及び芯金円筒部611の嵌合部への泥水等の浸入が防止される。これによって、外輪2及び芯金円筒部611の嵌合部の発錆を防止すると共に、この嵌合部からの軸受空間S内への泥水等の浸入が防止される。環状突部624の2点鎖線部は圧縮前の原形状を示している。
【0015】
第1部材50の外径側円筒部503には、リップ部621の円板部502に対する弾接部分621bより軸L方向の内側(軸受空間S側)に排水部51が設けられている。この排水部51は、密封装置10内に浸入した泥水等を排水するために機能するように設けられる。図2(b)、図3に示すように排水部51は、外径側円筒部503の1か所に切り欠き形状に設けられているが、これに限定されず、間隔を空けて周方向に複数設けてもよい。排水部51の寸法も、特に限定されないが、排水部51が大きすぎると排水性は向上するが、シール性が低下する。排水部51が小さすぎるとシール性は向上するが、排水性が低下する。よって、例えば排水部51の寸法D1は、0.1mm~10mm、寸法D2は、0.1mm~10mmとしてもよい。図2(a)の例では、寸法D1が寸法D3の倍程度とされている。
【0016】
排水部51は、軸受装置1の回転により泥水等を排出されやすい下方位置へ移動した際にその開口から速やかに排水できるように設けられているが、開口部であるため、排水部51が泥水等の浸入口になってしまう場合がある。そこで排水部51は、上述のとおり、リップ部621の円板部502に対する弾接部分621bより軸L方向の内側(軸受空間S側)に設けられる。円板部502の軸受空間S側の面502bから排水部51までの寸法D3は(図2(a)参照)、特に限定されないが、0.5mm以上とする。これによれば、排水部51から泥水等が浸入しても、リップ部621の円板部502に対する弾接部分621bに泥水等が直接落ちることを防止し、リップ部621の弾接部分621bへの泥水等の噛み込みを防止できる。
【0017】
排水部51が設けられた外径側円筒部503は、外輪2に内嵌される芯金61の芯金円筒部611との間に第1ラビリンス部R1が形成されるように配置される。第1部材50の外径側円筒部503の端部503aは、芯金61の内向鍔部612に固着された基部620との間に第2ラビリンス部R2が形成されるように配置される。これら第1ラビリンス部R1及び第2ラビリンス部R2は隙間であり、第1部材50と第2部材60とが互いに接触しないように外輪2と内輪部材4との間に組付けられる。外径側円筒部503とリップ部621との間には、空間部20が設けられ、排水部51は、第1ラビリンス部R1と空間部20とを連通するように形成されている。空間部20は、外径側円筒部503、円板部502、リップ部621及び基部620で囲まれたポケット形状とされる。
【0018】
以上の構成によれば、軸受装置1の稼働中、軸L方向に沿った第1ラビリンス部R1及び径方向に沿った第2ラビリンス部R2と、内輪5の軸回転に伴う遠心作用とが相俟って、外部から密封装置10内への塵埃を含む泥水等の浸入が抑制される。しかし、第1ラビリンス部R1及び第2ラビリンス部R2は隙間であるから、泥水等の浸入を完全に防止し得るものではなく、若干の泥水等は密封装置10内へ浸入してしまう。そして、密封装置10内へ浸入した泥水等は、空間部20に至り、少量であっても空間部20に浸入した泥水等は、徐々に空間部20内に蓄積されるが、この空間部20はポケット形状をなすので、内輪5の軸回転に伴いポンピング作用が働き、浸入した泥水等を排水部51側に押し戻そうとする。そして内輪部材4の回転により排水部51が泥水等を排出されやすい位置にくると、速やかに排水部51を通じて泥水等を排出することができる。よってシール性及び排出性の向上を両立することができ、密封装置10の長寿命化を図ることができる。
【0019】
<変形例>
図4図5は同実施形態の変形例の密封装置10Aを示す。この変形例は、第1実施形態に係る図2及び図3に示す密封装置10の例とは、磁気エンコーダ40を備えている点、排水部51が切欠き形状でなく、外径側円筒部503を貫通する孔が複数設けられている点が異なる。またシールリップ部62の構成も異なる。その他の構成は上述の例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明は割愛する。
【0020】
密封装置10Aの円板部502の車体側面502cには、回転検出用の磁気エンコーダ40が固着一体に設けられている。磁気エンコーダ40は、円板部502の車体側面502c及び外径側円筒部503の第1ラビリンス部R1側の面に加硫成型により一体とされ、磁性粉を含むゴム材等からなり、多数のN極及びS極を周方向に交互且つ等間隔で着磁されている。車体(不図示)には、磁気エンコーダ40の着磁面40aに対峙するよう磁気センサ12が設置され、この磁気センサ12と磁気エンコーダ40とにより、内輪5(車輪)の回転検出機構が構成される。
【0021】
密封装置10Aのシールリップ部62は、アキシャルリップを2個備えており、具体的には、基部620から延出されたリップ部621と、リップ部621と同様に基部620から延出され円板部502の軸受空間S側の面502bに摺接するサイドリップ625を備えている。またラジアルリップ623が1個である点でも図2の密封装置10と異なる。
【0022】
この変形例では、排水部51が貫通した孔である点で密封装置10とは相違する。排水部51は、磁気エンコーダ40の一部と外径側円筒部503とを貫いて形成され、排水部51は、リップ部621の円板部502に対する弾接部分621bより軸L方向の内側(軸受空間S側)に設けられる。円板部502の軸受空間S側の面502bから排水部51までの寸法D3は(図4(a)参照)、特に限定されないが、0.5mm以上とする。図4(a)の例では、寸法D1が寸法D3の3分の1程度とされている。
【0023】
排水部51は、外径側円筒部503の周方向に間隔を空けて複数設けてもよく、この変形例では、外径側円筒部503において、180°異なる位置となる2か所に略矩形状の排水部51が設けられている。排水部51の形状は特に図例に限定されず、円形状や楕円形状、菱形状等としてもよい。またその寸法も特に限定されないが、例えば寸法D1は、0.1mm~10mm、寸法D2は、0.1mm~10mmとしてもよい。このように排水部51が複数設けられれば、排水効果を向上させることができる。
【0024】
この例においても、図1に示す軸受装置1に組込まれて、内輪5が軸L回りに回転すると、前記と同様に、第1ラビリンス部R1及び第2ラビリンス部R2によって、空間部20への泥水等の浸入は抑制され、排水部51によって、たとえ泥水等が浸入してしまったとしても、速やかに排出できるという上述の密封装置10と同様の効果を奏し得る。またこの変形例に示す密封装置10Aの場合、泥水等の蓄積に伴い、泥水等に含まれる塵埃が、リップ部621における円板部502の軸受空間S側の面502bに対する弾接部分621bに噛み込み、内輪5の軸回転に伴う弾性摺接によって、リップ部621の先端部621aが摩耗することがある。しかし、密封装置10Aはアキシャルリップが2個設けられ、リップ部621より内径側に位置するもう1つのサイドリップ625が円板部502の軸受空間S側の面502bに弾接するから、リップ部621の先端部621aが摩耗して泥水等がリップ部621の円板部502に対する弾接部を通過しても、サイドリップ625によってそれ以上の浸入が阻止される。これによって、密封装置10Aのシール機能を永く維持できる。
【0025】
<第2実施形態>
次に図6を参照しながら、第2実施形態に係る密封装置11について説明する。上述の例と共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明は割愛する。
図6(a)及び図6(b)に示す密封装置11は、車輪側に装着される密封装置である。密封装置11は、ハブ輪本体30に外嵌される2重円筒形の第1部材50と、外輪2に内嵌される第2部材60とが組み合わさって構成される。ハブ輪本体30は、内輪5を構成するハブ輪3の一部であり、ハブ輪本体30はフランジ部の基部を構成する。
【0026】
第1部材50は、ハブ輪本体30の外周面30aに外嵌される内径側円筒部511と、内径側円筒部511の軸受空間Sとは反対側の端部511aから外径側に延びる円板部512と、円板部512の一端部512aから軸L方向に沿って第2部材60側に延びる外径側円筒部513と備えている。第2部材60のリップ部626及びサイドリップ627は、円板部512の軸受空間S側の面512bに弾接する。また、ラジアルリップ628は、内径側円筒部511の外径面511bに弾接する。図6(a)及び図6(b)において、リップ部626、サイドリップ627,ラジアルリップ628の2点鎖線部は、弾性変形前の原形状を示す。
【0027】
第2部材60の芯金61は、断面形状が略L字形状とされ、外輪2の車輪側の内周面2cに内嵌される芯金円筒部601と、芯金円筒部601のハブフランジ32側の端部601aから内径側に傾斜して折り曲げ形成される傾斜部603と、傾斜部603のハブフランジ32側の端部603aから内径側に延出して形成された内向鍔部602とを備える。シールリップ部62は、芯金61に加硫成型により固着一体とされる基部620と、基部620から延出された2個のアキシャルリップであるリップ部626、サイドリップ627及び1個のラジアルリップ628とを備える。基部620は、は芯金61における内向鍔部602の軸受空間S側の面602aの一部から内周縁部602bを回り込み、内向鍔部602の軸受空間Sとは反対側(すなわちハブフランジ32側)の面602cの全面を覆うように芯金61に固着一体とされている。さらに、基部620は、傾斜部603のハブフランジ32側の面603bも覆うように形成されており、この傾斜部603を覆う部位は、他の部位より厚肉に形成されている。そしてこの傾斜部603を覆う部位は、外輪2の車輪側の内周面2cに向けて隆起する環状突部629を備えている。この環状突部629は、芯金61が外輪2に内嵌された際、内周面2cと傾斜部603との間に圧縮状態で介在するように形成されている。環状突部629の外輪2と傾斜部603との間での圧縮状態の介在によって、外輪2及び芯金円筒部601の嵌合部への泥水等の浸入が防止される。これによって、外輪2及び芯金円筒部601の嵌合部の発錆を防止すると共に、この嵌合部からの軸受空間S内への泥水等の浸入が防止される。環状突部629の2点鎖線部は圧縮前の原形状を示している。
【0028】
第1部材50の外径側円筒部513には、リップ部626の円板部512に対する弾接部分626bより軸L方向の内側(軸受空間S側)に排水部51が設けられている。排水部51は、外径側円筒部513の1か所に切り欠き形状に設けられているが、これに限定されず、図4図5に示すように、間隔を空けて周方向に複数設けてもよい。排水部51の形状や寸法は、特に限定されないが、例えば寸法D1は、0.1mm~10mm、排水部51の開口寸法(不図示)は、0.1mm~10mmとしてもよい。図6(a)の例では、寸法D1が寸法D3の3分の1程度とされている。
【0029】
排水部51は、上述のとおり、リップ部626の円板部512に対する弾接部分626bより軸L方向の内側(軸受空間S側)に設けられる。円板部512の軸受空間S側の面512bから排水部51までの寸法D3は(図6(a)参照)、特に限定されないが、0.5mm以上とする。これによれば、第1実施形態の例と同様に排水部51から泥水等が浸入しても、リップ部626の円板部512に対する弾接部分626bに泥水等が直接落ちることを防止し、リップ部626の弾接部分626bへの泥水等の噛み込みを防止できる。
【0030】
図6(a)に示すように第1部材50の外径側円筒部513の端部513aは、芯金61に固着された基部620との間にラビリンス部R3が形成されるように配置される。ラビリンス部R3は隙間であり、第1部材50と第2部材60とが互いに接触しないように外輪2とハブ輪3との間に組付けられる。具体的には、端部513aは外輪2のハブフランジ32側の端面2eの位置に組み付けられ、基部620は、端面2e位置から突出しないように組み付けられている。外径側円筒部513とリップ部626との間には、空間部20が設けられ、排水部51は、空間部20と外部空間とを連通するように形成されている。空間部20は、外径側円筒部513、円板部512、リップ部626及び基部620で囲まれたポケット形状とされる。
【0031】
以上の構成によれば、軸受装置1の稼働中、ラビリンス部R3と、内輪5の軸回転に伴う遠心作用とが相俟って、外部空間から密封装置11内への塵埃を含む泥水等の浸入が抑制される。しかし、ラビリンス部R3は隙間であるから、泥水等の浸入を完全に防止し得るものではなく、若干の泥水等は密封装置11内へ浸入してしまう。そして、密封装置11内へ浸入した泥水等は、空間部20に至り、少量であっても空間部20に浸入した泥水等は、徐々に空間部20内に蓄積される。しかし、この空間部20はポケット形状をなすので、内輪5の軸回転に伴いポンピング作用が働き、浸入した泥水等を排水部51側に押し戻そうとする。そして内輪5の回転により排水部51が泥水等を排出されやすい位置にくると、速やかに排水部51を通じて泥水等を排出することができる。
また密封装置11は、泥水等の蓄積に伴い、泥水等に含まれる塵埃が、リップ部626における円板部512の軸受空間S側の面512bに対する弾接部分626bに噛み込み、内輪5の軸回転に伴う弾性摺接によって、リップ部626の先端部626aが摩耗することがある。しかし、図4(a)等に示す変形例の密封装置10Aと同様に、このリップ部626より内径側に位置するもう1つのサイドリップ627が円板部512の軸受空間S側の面512bに弾接するから、リップ部626の先端部626aが摩耗して泥水等がリップ部626の円板部512に対する弾接部を通過しても、サイドリップ627によってそれ以上の浸入が阻止される。よってシール性及び排出性の向上を両立することができ、密封装置11の長寿命化を図ることができる。
【0032】
<変形例1>
図7は同実施形態の変形例の密封装置11Aを示す。ここで説明する変形例1は、第2実施形態に係る図6に示す密封装置11の例とは、第1部材50が外輪2の車輪側の外周面2dよりさらに外径側に且つ外周面2dとの間にラビリンス部R4が形成されるように配置されている点が異なる。第2部材60の形状も異なる。その他の構成は上述の例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明は割愛する。
【0033】
密封装置11Aの第1部材50は、内径側円筒部511と、円板部512と、外径側円筒部513と備え、外径側円筒部513が外輪2の外周面2dよりもさらに外径側に位置するように形成されている。よって、おのずと円板部512は、外輪2の外周面2dよりも外径側まで延出して形成されるので、図6(a)に示す円板部512よりも面積が大きい。また外径側円筒部513の端部513aは、外輪2のハブフランジ32側の端面2eに被さる位置まで延出して形成されている。第2部材60のリップ部626及びサイドリップ627は、円板部512の軸受空間S側の面512bに弾接し、ラジアルリップ628は、内径側円筒部511の外径面511bに弾接する。
【0034】
第2部材60の芯金61は、外輪2の車輪側の内周面2cに内嵌される芯金円筒部601と、芯金円筒部601の軸受空間S側の端部601bから内径側に延びる折り曲げ形成された傾斜部603と、傾斜部603のハブフランジ32側の端部603aから内径側に延出して形成された内向鍔部602と、芯金円筒部601のハブフランジ32側の端部601aから外径側に延びる外向鍔部604を備える。外向鍔部604は外輪2の端面2eに沿って嵌合される。シールリップ部62は、芯金61に加硫成型により固着一体とされる基部620と、基部620から延出された2個のアキシャルリップであるリップ部626、サイドリップ627及び1個のラジアルリップ628とを備える。基部620は、芯金61における内向鍔部602の軸受空間S側の面602aの一部から内周縁部602bを回り込み、内向鍔部602の軸受空間Sとは反対側の面602cの全面を覆い、傾斜部603と芯金円筒部601との間に介在するように設けられるとともに、外向鍔部604のハブフランジ32側の面604bの全体も覆うように芯金61に固着一体とされている。さらに基部620は、外向鍔部604の外輪2の端面2e側の面604aに回り込み、その部分は、端面2e側に隆起する環状突部629を備えている。この環状突部629は、芯金61が外輪2に内嵌された際、外向鍔部604と端面2eとの間に圧縮状態で介在するように形成されている。環状突部629によって、外輪2と芯金61との嵌合部への泥水等の浸入が防止され、発錆を防止すると共に、この嵌合部からの軸受空間S内への泥水等の浸入が防止される。
【0035】
この変形例においても、排水部51は、リップ部626の円板部512に対する弾接部分626bより軸L方向の内側(軸受空間S側)に設けられ、排水部51は、外径側円筒部513の1か所に切り欠き形状に設けられている。図7(a)の例では、寸法D1が寸法D3の半分程度とされ、開口部分が端面2eの位置よりハブフランジ32側の位置にならないように設けられている。これにより、排水部51から浸入した泥水等がリップ部626の先端部626aにアタックすることを緩和することができる。
なお、排水部51が、間隔を空けて周方向に複数設けてもよい点は上述と同様である。
【0036】
図7(a)に示すように第1部材50の外径側円筒部513は、外輪2の外周面2d及び基部620の端部620aとの間に、ラビリンス部R4が形成されるように配置される。ラビリンス部R4は隙間であり、第1部材50とシールリップ部62以外の第2部材60とが互いに接触しないように外輪2とハブ輪3との間に組付けられる。具体的には、端部513aは外輪2の外周面2dと接触しないように組み付けられ、基部620は、外周面2dから突出しないように組み付けられている。外径側円筒部513とリップ部626との間には、空間部20が設けられ、排水部51は、空間部20と外部空間とを連通するように形成されている。空間部20は、外径側円筒部513、円板部512、リップ部626及び基部620で囲まれたポケット形状とされる。
【0037】
以上の構成によっても、軸受装置1の稼働中、ラビリンス部R4と、内輪5の軸回転に伴う遠心作用とが相俟って、外部空間から密封装置11A内への塵埃を含む泥水等の浸入が抑制される。そして内輪5の回転により排水部51が泥水等を排出されやすい位置にくると、速やかに排水部51を通じて泥水等を排出することができる等の効果は図6(a)と同様であるが、特に変形例に示す密封装置11Aは、ラビリンス部R4と空間部20を経てリップ部626に至るまでの距離を図6(a)に示す密封装置11よりも長くとることができ、より一層泥水等の浸入抑制効果が期待できる。
【0038】
<変形例2>
図8図9は同実施形態の変形例の密封装置11Bを示す。ここで説明する変形例2は、第2実施形態に係る図6に示す密封装置11の例とは、第2部材60の構成は同様であるが、第1部材50の構成が異なる。特に第1部材50が外輪2の車輪側の外周面2dよりさらに外径側に且つ段差状の外周面2dとの間にラビリンス部R5,R6が形成されるように配置されている点で異なる。その他の構成は上述の例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明は割愛する。
【0039】
密封装置11Bの第1部材50は、内径側円筒部511と、円板部512と、外径側円筒部513と備え、外径側円筒部513が外輪2の外周面2dよりもさらに外径側に位置するように形成されている。そして外径側円筒部513は、ハブフランジ32の円板部512の嵌合部位32aから外輪2に形成された段差状を構成する壁部2fに向かって延出して形成されている。よって、おのずと外径側円筒部513は、図6(a)及び図7(a)に示す外径側円筒部513よりも面積が大きい。また外径側円筒部513は、外輪2の外周面2dに被さるように配されており、その端部513aは壁部2fと対向するように配され、端部513aと壁部2fとの隙間がラビリンス部R5となる。
【0040】
この変形例においても、排水部51は、リップ部626の円板部512に対する弾接部分626bより軸L方向の内側(軸受空間S側)に設けられる。排水部51は、図8図9に示すように外径側円筒部513を貫く孔とされ、円形状に設けられている。排水部51の大きさ(寸法D1)は、外径側円筒部513の3分の1程度の大きさとされ、開口部分が端面2eの位置よりもハブフランジ32側の位置にならないように設けられている。排水部51は、図9に示すように間隔を空けて周方向に複数設けられている。
【0041】
図8(a)に示すように第1部材50の外径側円筒部513は、ラビリンス部R5に加え、外輪2の外周面2dとの間に、軸L方向に長いラビリンス部R6が形成されるように配置され、第1部材50とシールリップ部62以外の第2部材60とが互いに接触しないように外輪2とハブ輪3との間に組付けられる。外径側円筒部513とリップ部626との間には、空間部20が設けられ、排水部51は、空間部20と外部空間とを連通するように形成されている。空間部20は、外径側円筒部513、円板部512、リップ部626及び基部620で囲まれたポケット形状とされる。
【0042】
以上の構成によっても、軸受装置1の稼働中、ラビリンス部R5,R6と、内輪5の軸回転に伴う遠心作用とが相俟って、外部空間から密封装置11B内への塵埃を含む泥水等の浸入が抑制される。そして内輪5の回転により排水部51が泥水等を排出されやすい位置にくると、速やかに排水部51を通じて泥水等を排出することができる等の効果は図6(a)等と同様であるが、特に変形例に示す密封装置11Bは、ラビリンス部R5だけでなく、ラビリンス部R6、空間部20を経てリップ部626に至るまでの距離を図6(a)、図7(a)に示す密封装置11,11Aよりも長くとることができ、より一層泥水等の浸入抑制効果が期待できる。
【0043】
以上の実施形態に係る密封装置10,10A,11,11A,11Bの構成は図例に限定されるものではない。また第1部材50、第2部材60、磁気エンコーダ40、シールリップ部62等の構成や形状、個数等は、上記各実施形態に限定されることはない。例えば図8(a)に示す第2部材60を図7(a)に示す第2部材60としてもよい。また前記実施形態では、本発明に係る密封装置が、自動車用の軸受装置に適用される例について述べたが、これに限らず、外側部材に対して内側部材が軸回転可能に支持される当該2部材間に装着される密封装置であれば、他の産業分野の軸受装置にも好ましく適用される。また、自動車用の軸受装置であっても、図1に示す軸受装置に限らず他の形態の軸受装置であっても良い。また、芯金61及びこれに固着されるシールリップ部62の形状も図例のものに限定されず、芯金61と外輪2との嵌合形態、第1部材50と内輪5との嵌合形態等も図例に限定されるものではない。さらに、リップ部626等の形状等も要求される仕様等に応じて適宜変更が可能である。そして、ラビリンス構造についても図例に限定されず、例えば図2等に示すインナーシールにおいても、図7(a)や図8(a)に示す第1部材50のように外径側円筒部503を外輪2の外周面よりさらに外径側に且つ外周面との間にラビリンス部が形成されるように配置し、排水部51は、ラビリンス部と外部空間とを連通するように形成される構造としてもよい。
【符号の説明】
【0044】
2 外輪(外側部材)
5 内輪(内側部材)
10,10A 密封装置(インナーシール)
11,11A,11B 密封装置(アウターシール)
50 第1部材
501,511 内径側円筒部
502,512 円板部
503,513 外径側円筒部
40 環状エンコーダ
503a,513a 端部
60 第2部材
61 芯金
62 シールリップ部
R1 第1ラビリンス部
R2 第2ラビリンス部
R3~R6 ラビリンス部
L 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9