(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】カッターホルダ取付構造並びにカッターホルダ
(51)【国際特許分類】
B28D 5/00 20060101AFI20231207BHJP
C03B 33/027 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
C03B33/027
(21)【出願番号】P 2019224978
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】大澤 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】阪口 良太
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-007363(JP,A)
【文献】特開2019-064084(JP,A)
【文献】特開2012-056779(JP,A)
【文献】特開2002-274875(JP,A)
【文献】特開平10-100140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
C03B 33/027
C03B 33/10
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端にカッターホイールを有するカッターホルダの旋回軸がベアリングを介して下向きに開口した円筒状
のカバー体の内部に取り付けられ、前記カバー体がスクライブヘッドの取付穴に取り付けられたカッターホルダ取付構造であって、
前記カバー体の外周面に当該カバー体と前記スクライブヘッドの取付穴とのはめ合い公差を埋める弾性体が設けられて
おり、
前記カバー体にエアー抜き孔が設けられているカッターホルダ取付構造。
【請求項2】
前記弾性体は環状であり、カバー体外周面の上下に振り分けて複数設けられている請求項1に記載のカッターホルダ取付構造。
【請求項3】
前記カバー体の下部と、前記ベアリングの下方位置で前記旋回軸に連なる部分の周壁との間に粉塵の侵入を防止するラビリンス構造が形成されている請求項1
又は請求項
2に記載のカッターホルダ取付構造。
【請求項4】
前記ベアリングの内輪が前記旋回軸に取付けられ、前記ベアリングの外輪が前記カバー体に取り付けられ、前記旋回軸の上部に磁石が配置され、当該磁石に吸引されることにより前記旋回軸を前記内輪とともに持ち上げる磁性体が配置されている請求項1~請求項
3のいずれかに記載のカッターホルダ取付構造。
【請求項5】
下端にカッターホイールを有するカッターホルダの旋回軸がベアリングを介して下向きに開口した円筒状
のカバー体の内部に取り付けられたカッターホルダであって、
前記カバー体の外周面に、当該カバー体を取り付けるスクライブヘッドの取付穴とカバー体とのはめ合い公差を埋める弾性体が設けられ、
前記カバー体の下部と、前記ベアリングの下方位置で前記旋回軸に連なる部分との間に粉塵の侵入を防止するラビリンス構造が形成されて
おり、
前記カバー体にエアー抜き孔が設けられているカッターホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の脆性材料基板の表面に分断用のスクライブライン(切り溝)を加工する際に使用されるカッターホイール(スクライビングホイールともいう)を保持するカッターホルダを、スクライブ装置のスクライブヘッドに取付けるためのカッターホルダ取付構造並びにカッターホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板等の脆性材料基板を分断する加工では、カッターホイールを基板表面に押しつけて互いに直交するX―Y方向の複数条のスクライブラインを形成し、その後、スクライブラインに沿って裏面側から外力を印加して基板を撓ませることにより、単位基板ごとに分断する方法が一般的に知られており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
カッターホイールは、カッターホルダ取付構造体を介してスクライブ装置のスクライブヘッドの取付穴に取付けて使用される。
図5は従来のカッターホルダ取付構造体を示すものである。
【0004】
カッターホルダ取付構造体1’はカッターホルダ2と、このカッターホルダ2を保持するホルダジョイント3とを備えている。カッターホルダ2は略円柱状の胴部4を有し、この胴部4の下端部分に当該胴部の軸心に対して直交するホイール軸5を介してカッターホイ-ル6が回転自在に取り付けられている。
【0005】
また、胴部4の上部には、ホルダジョイント3に取り付ける際の位置決め用の取付部7が設けられている。取付部7は、胴部4を切り欠いて形成された平面部7aと傾斜面7bとを備えている。平面部7aは胴部4の軸心に対して平行である。また、胴部4は鉄などの磁性材で構成されている。
【0006】
ホルダジョイント3は、上部に上下方向に延びる旋回軸8を備え、この旋回軸8がスクライブ装置のスクライブヘッド9に上下一対の玉ベアリング10、11を介して回動可能に取付けられている。上下の玉ベアリング10、11のそれぞれの内輪10a、11aの上下間にはカラー12が介在されていて上下の間隔が緊密に埋められている。また、旋回軸8の上端が上部玉ベアリングの内輪11aとネジや嵌合等の手段により係合されており、これにより旋回軸8がベアリングから下方に抜け出るのを阻止している。また、玉ベアリングの外輪10b、11bはスクライブヘッド9の取付穴22に嵌合等の手段により結合されている。
【0007】
さらに、ホルダジョイント3は、カッターホルダ2を受け入れる断面略円形の開口部14が下方に向かって開口して形成されており、その内奥部(上端)にカッターホルダ2を吸着保持するための磁石15が取り付けられている。また、開口部14の内部には、開口部14の軸心とは離れた箇所で該軸心と直交する方向に延びる位置決め用の平行ピン16が設けられている。これにより、カッターホルダ2が開口部14に挿入されたときに、平行ピン16がカッターホルダ2の傾斜面7bに接触してカッターホイール6の方向が一定となるとともに、カッターホイール6の接地点が旋回軸8の軸心に対してカッターホイール走行方向後方にL1だけずれるように位置決めされる。このずれは、カッターホイール走行時に常に進行方向に戻ろうとする所謂「キャスター効果」を発揮してカッターホイールの直進性を助長するためのものである。
【0008】
しかし、上記のカッターホルダでは、X方向またはY方向のスクライブラインを加工する際に、スクライブ開始当初において
図6に示すように規定のスクライブ予定ラインSに対して斜めにずれて走る「斜め切り」のスクライブラインS1が発生することがあった。この「斜め切り」の発生原因は下記の点に起因する。
通常、内輪と外輪との間に球やコロ等の滑動子を挟み込んだベアリングでは、滑動子と内輪及び外輪との間には隙間(公差)が存在する。そのため、無負荷時(非スクライブ時)にはカッターホルダ3は前記隙間だけ自重で下がり、逆に負荷時(スクライブ時)は、カッターホイールの基板への押し付けによる反力で前記隙間だけ持ち上げられることになる。このような内部隙間による旋回軸8の上下方向の動きに伴い、旋回軸が僅かに回転し、スクライブ初期においてカッターホイールにブレ(首振り現象)が生じて斜めにずれて走行するものと考えられる。このようにスクライブ初期において斜めにずれると、その後の走行でキャスター効果により直進走行が復帰しても、
図6に示すように規定のスクライブ予定ラインからずれて斜めに走るスクライブラインS1が形成されることになり、スクライブ精度が劣化することになる。
【0009】
そこで本出願人はこの問題点を解決するために、特許文献2並びに特許文献3に示すようなカッターホルダ取付構造を先に提案した。これら文献では、旋回軸の上方に当該旋回軸をベアリング内輪と共に常時上方に吸引して持ち上げる磁石を配置して、ベアリングの内部間隙による旋回軸のガタツキを抑制するように構成されている。この磁石の吸引によって旋回軸のガタツキをなくすることにより、スクライブ開始初期における「斜め切り」の発生を効果的に抑制することが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5210356号公報
【文献】特開2018-140597号公報
【文献】特開2019-64084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
また、従来のカッターホルダ取付構造体を用いたスクライブ装置では、スクライブラインを高速で形成する際に、僅かではあるが、スクライブラインS2が
図7に示すように波線状に形成されることがあった。発明者等の検証では、波打ちの振幅幅Wはカッターホイールの走行速度によって数十~数百μmの幅で発生し、スクライブ速度が速くなるほど発生頻度が高くなる傾向がある。このような現象が発生すると、当然ながら分断ラインの精度が悪くなり、最高品質の製品を得ることができない。
【0012】
このような現象が発生する原因として、カッターホルダ取付構造体とこれをはめ込むスクライブヘッドとの固定方法が影響していると考えられる。多数のスクライブヘッドを備える大型のスクライブ装置においては、カッターホルダ取付構造体のスクライブヘッドへの取付けを容易にするため、カッターホルダ取付構造体を固定した状態においても、スクライブヘッドの取付穴との間にはめ合い公差(はめ合いのための最小必要限度の隙間)が存在するものがある。このはめ合い公差によって、高速でのスクライブ時にカッターホルダ取付構造体が僅かにブレたり、装置に起因する振動が増幅されることにより、波打ち現象が生じやすいと考えられる。旋回軸の周囲を覆うカバー付きタイプ(特許文献2の
図4並びに特許文献3の
図3、
図4のタイプ)のカッターホルダ取付構造体を用いても、このようなブレや振動が大きくなるとその抑制が困難になると考えられる。
【0013】
また、上記のカバー付きタイプのカッターホルダ取付構造体においても、特に基板下側からのスクライブ時に切粉などの微細な粉塵がベアリングの内、外輪の隙間を抜けてカバー体の内部に侵入して蓄積され、旋回軸の円滑な動作を阻害する可能性もあった。
【0014】
そこで本発明は、上記の課題に鑑み、高速スクライブ時にも直線で精度のよいスクライブラインを形成することができるカッターホルダ取付構造並びにカッターホルダを提供することを主たる目的とする。
【0015】
さらに本発明の他の目的は、スクライブ時に粉塵がカバー体内部に侵入することを確実に防止することのできる高度な防塵機能を備えたカッターホルダ取付構造並びにカッターホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち本発明にかかるカッターホルダ取付構造は、下端にカッターホイールを有するカッターホルダの旋回軸がベアリングを介して下向きに開口した円筒状のカバー体の内部に取り付けられ、前記カバー体がスクライブヘッドの取付穴に取り付けられたカッターホルダ取付構造であって、前記カバー体の外周面に当該カバー体と前記スクライブヘッドの取付穴とのはめ合い公差を埋める弾性体が設けられている構成とした。
【0017】
ここで、前記弾性体は環状であり、カバー体外周面の上下箇所に振り分けて複数設けられている構成とするのがよい。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成により、はめ合い公差による隙間がなくなるので、スクライブ時にカッターホルダ取付構造体のはめ合い公差に起因するブレ現象を阻止することができ、高速走行におけるブレや振動の影響を抑制して規定のスクライブ予定ラインに沿って正確に直線のスクライブラインを加工することができる、といった効果がある。
【0019】
本発明においては、さらに前記カバー体にエアー抜き孔を設けた構成とした。
これにより、カバー体をスクライブヘッドの取付穴に嵌入するときに弾性体によって圧縮された取付穴内のエアーをエアー抜き孔からカバー体内に逃がすことができてカバー体の嵌入操作を容易におこなうことができる。
【0020】
本発明において、前記カバー体の下部と、前記ベアリングの下方位置で前記旋回軸に連なる部分の周壁との間に粉塵の侵入を防止するラビリンス構造が形成されている構成とするのがよい。
これにより、スクライブ時に切粉などの微細な粉塵がカバー体内部に侵入することを防止し、長期にわたって旋回軸の円滑な動作を維持することができる。
【0021】
本発明において、前記ベアリングの内輪が前記旋回軸に取付けられ、前記ベアリングの外輪が前記カバー体に取り付けられ、前記旋回軸の上部に磁石が配置され、当該磁石に吸引されることにより前記旋回軸を前記内輪とともに持ち上げる磁性体が配置されている構成とするのがよい。
これにより、上記したはめ合い公差の隙間の解消とともにベアリング内、外輪間の隙間もなくなって、より精密な直線のスクライブラインを加工することが可能となる。
【0022】
また、別の観点からなされた本発明のカッターホルダは、下端にカッターホイールを有するカッターホルダの旋回軸がベアリングを介して下向きに開口した円筒状カバー体の内部に取り付けられたカッターホルダであって、前記カバー体の外周面に、当該カバー体を取り付けるスクライブヘッドの取付穴とカバー体とのはめ合い公差を埋める弾性体が設けられ、前記カバー体の下部と、前記ベアリングの下方位置で前記旋回軸に連なる部分との間に粉塵の侵入を防止するラビリンス構造が形成されている構成とした。
これにより、カッターホルダの外装をシンプルに形成できると共に、スクライブヘッドの取付穴に嵌め込んだ際にはめ合い公差による隙間がなくなってスクライブ時のカッターホイールのブレ現象を阻止することができる。加えて、ラビリンス構造によって切粉などの微細な粉塵がカバー体内部に侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明にかかるカッターホルダ取付構造体の斜視図。
【
図2】カッターホルダ取付構造体をスクライブヘッドの取付穴に取り付ける前を示す断面図。
【
図3】カッターホルダ取付構造体をスクライブヘッドの取付穴に取り付けた状態を示す断面図。
【
図4】本発明の第2の実施例を示す
図3同様の断面図。
【
図5】従来のカッターホルダ取付構造を示す断面図。
【
図6】従来のカッターホルダ取付構造により取付けたカッターホイールで基板にスクライブしたときの軌跡を示す平面図。
【
図7】さらに別の従来のカッターホルダ取付構造により取付けたカッターホイールで基板にスクライブしたときの軌跡を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、本発明の第1の実施形態にかかるカッターホルダの取付構造について
図1~
図3に基づき詳細に説明する。本発明に係るカッターホルダの取付構造では、その一部において上記
図5で示した従来のカッターホルダ取付構造と同じ機能をもつ構成要素を含んでいる。従って、同じ機能を有する部分については同じ符号を付して説明する。
【0025】
本発明の第1の実施形態に係るカッターホルダ取付構造体1はカッターホルダ2と、このカッターホルダ2を保持するホルダジョイント3とを備えている。カッターホルダ2は略円柱状の胴部4を有し、この胴部4の下端部分に当該胴部4の軸心に対して直交するホイール軸5を介してカッターホイ-ル6が回転自在に取り付けられている。なお、本発明において下側とは加工対象である脆性材料基板が位置する方向を意味する。
【0026】
また、胴部4の上部には、ホルダジョイント3に取り付ける際の位置決め用の取付部7が設けられている。取付部7は、胴部4を切り欠いて形成された平面部7aと傾斜面7bとを備えている。平面部7aは胴部4の軸心に対して平行である。また、胴部4は鉄などの磁性材で構成されている。
【0027】
ホルダジョイント3は、上部に上下方向に延びる旋回軸8を備え、この旋回軸8が上下のベアリング10、11を介して下向きに開口した円筒状カバー体21の内部に回動可能に取り付けられ、前記カバー体21がスクライブ装置のスクライブヘッド9の取付穴22に嵌合して取り付けられている。上下のベアリング10、11のそれぞれの内輪10a、11aの間にはカラー12が介在されていて上下のベアリングの間隔が緊密に埋められている。また、旋回軸8の上端面に磁石13が取り付けられている。また、下部のベアリング10の外輪10bはカバー体21に、内輪10aは旋回軸8に嵌合等の手段によりそれぞれ結合されている。
【0028】
さらに、ホルダジョイント3は、カッターホルダ2を受け入れる断面略円形の開口部14が下方に向かって開口して形成されており、その内奥部(上端)にカッターホルダ2を吸着保持するための磁石15が取り付けられている。
また、開口部14の内部には、開口部14の軸心とは離れた箇所で該軸心と直交する方向に延びる位置決め用の平行ピン16が設けられている。これにより、カッターホルダ2が開口部14に挿入されたときに、平行ピン16がカッターホルダ2の傾斜面7bに接触してカッターホイール6の方向が一定となるとともに、カッターホイール6の接地点が旋回軸8の軸心に対してカッターホイール走行方向後方にL1だけずれるように位置決めされる。
【0029】
さらに、旋回軸8の磁石13の上方でカバー体21の天板21aの下面に、前記磁石13に吸引して旋回軸8を上方に持ち上げるための磁性体である鋼球18が取り付けられている。この鋼球18と磁石13との吸引作用により、旋回軸8はこの旋回軸に取付けたベアリングの内輪10a、11aと共にベアリングの内部隙間だけ持ち上げられた姿勢を常時保持し、無負荷時(非スクライブ時)にベアリングの内部隙間の間で自重により下方に動くことはない。従って、内部隙間によるガタツキが無くなってスクライブ初期におけるカッターホイール6の首振り現象を防止することができる。なお、磁石13の吸着力は、旋回軸8を吸引して上方に持ち上げるものであるが、上述した「キャスター効果」による旋回軸8の旋回は許容される範囲のものが用いられる。
【0030】
さらに、本発明では、前記カバー体21の外周面に、当該カバーとスクライブヘッドの取付穴22とのはめ合い公差を埋める環状の弾性体であるOリング23が設けられている。Oリング23は、カバー体外周面の上下に振り分けて2個設けられている。また、カバー体21の天板21aに上下に貫通するエアー抜き孔21bが設けられている。
【0031】
また、前記カバー体21の下部と、旋回軸8に連なるホルダジョイント3の周壁との間に、ベアリングへの粉塵の侵入を防止するラビリンス構造が形成されている。このラビリンス構造24はリング状の凹凸段部からなる間隙で形成されており、これにより旋回軸8の回転性を妨げずに高度な防塵効果を発揮することができる。さらに、ラビリンス構造24の凹凸段部のうち、ベアリング手前の凹部の底に分岐した溝が設けられており、行き止まりとなった空間24aへ通じている。ラビリンス構造24に侵入した粉塵を当該空間24aに蓄積することで、ベアリングへの粉塵の侵入をより確実に抑制することができる。
【0032】
さらに、スクライブヘッドの取付穴22の下部内面で相対する位置に一対のボールプランジャ25、25が設けられており、カバー体21の下部外周面でカバー体の嵌入規定位置にこのボールプランジャ25が弾力的に係合するリング状の係合溝21cが設けられている。
【0033】
また、本実施例では、旋回軸8の回動を選択的に規制することができる回動規制棒26がカバー体21から旋回軸8を貫通する挿通孔21d、8aに取り付けられている。旋回軸8に形成した挿通穴8aは磁石13の吸引による旋回軸8の上下動を許容する大きさで形成されている。カッターホイール6を常時一定方向に向けてスクライブを行いう場合に回動規制棒26を取り付ける。なお、旋回軸の回動を許容する場合はこの回動規制棒26を省略する。
【0034】
上記の構成において、カバー体21の外周面とスクライブヘッド9の取付穴22の内周面とのはめ合い公差を埋めるOリング23が、上下2カ所に振り分けて設けられているので、はめ合い公差による隙間をカバー体21の上下でバランスよく埋めることができる。これにより、スクライブ時にカッターホルダ取付構造体1の上記はめ合い公差に起因するブレ現象を阻止することができて、直線で精度のよい スクライブラインを形成することが可能となった。
【0035】
また、カバー体21の天板21aに上下に貫通するエアー抜き孔21bが設けられているので、カバー体21をスクライブヘッド9の取付穴22に嵌入するときにOリング23によって圧縮された取付穴22内のエアーをエアー抜き孔21bからカバー体内に逃がすことができ、これにより、カバー体21の嵌入操作を容易におこなうことができる。
【0036】
また、スクライブヘッド9の取付穴22の下部内面で相対する位置に一対のボールプランジャ25、25が設けられ、カバー体21の下部外周面でカバー体の嵌入規定位置にこのボールプランジャ25が弾力的に係合するリング状の係合溝21cが設けられているので、カバー体21を規定位置まで嵌入したときに球バネ25が係合溝21cに弾力的に係合し、カッターホルダ取付構造体1が取付穴22から抜け出ることを抑制することができる。
【0037】
図4は本発明の第2の実施形態を示すものである。上記第1の実施形態においては、カッターホルダ取付構造体としてカッターホルダを保持するのにホルダジョイントを用いたが、この実施形態ではホルダジョイントを省略して、カッターホルダと旋回軸を一体に形成している。その他の構成要素は先の第1実施例と同じである。したがって、第1実施例と同一の構成要素は同じ符号を付けて図示した。
【0038】
カッターホルダ102は略円柱状の胴部104を有し、この胴部104の下端部分に当該胴部104の軸心に対して直交するホイール軸105を介してカッターホイール106が回転自在に取り付けられている。カッターホルダ102はその上部に上下方向に延びる旋回軸108を備えている。
また、カバー体21の下部と、ベアリング10の下方位置で旋回軸108に連なる胴部104の周壁との間に、上記実施例と同様に粉塵の侵入を防止するラビリンス構造124が形成されている。
【0039】
この実施例においても、はめ合い公差を埋めるOリング23によって、カッターホルダ取付構造体のスクライブ時におけるブレ現象を阻止する効果や、エアー抜き孔21bによるカバー体21嵌入時の圧縮エアー逃がし効果など、先の第1実施例と同様の効果を発揮することができる。
【0040】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものでない。例えば、旋回軸8を旋回可能に支持するためのベアリングとして、上記実施例では球を内蔵したものを用いたが、円錐体や円柱体のコロを内蔵したベアリングであってもよい。また、ベアリングの数も増減して実施することが可能である。さらに、上記実施例では弾性体を2つとしたが、所定の幅を有する1つの弾性体としてもよく、3個以上としてもよい。弾性体の形状についても、上記実施例では環状としたが、カバー体の外周に帯状または点状に複数の弾性体を設けてもよい。この場合、カバー体の外周円周上に等間隔に複数の弾性体を設けることが好ましい。また、エアー抜き孔はカバー体の側面に開口してもよく、カバー体の側面に形成する溝としてもよい。さらにまた、磁石体13が吸引する磁性体として鋼球18を用いたが、磁石体13に吸引されることができるよう磁性を有する素材で形成されたものであれば、円柱、角柱等その他の形状の部材を旋回軸の上部に設けてもよい。その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ガラス等の脆性材料基板の表面に分断用のスクライブラインを加工するカッターホイールを保持するためのカッターホルダ取付構造並びにカッターホルダに適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 カッターホルダ取付構造体
2 カッターホルダ
3 ホルダジョイント
6 カッターホイール
8 旋回軸
9 スクライブヘッド
10、11 ベアリング
10a、11a ベアリングの内輪
10b、11b ベアリングの外輪
21 カバー体
21a 天板
21b エアー抜き孔
21c 係合溝
22 取付穴
23 Oリング(弾性体)
24 ラビリンス構造
25 ボールプランジャ