(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】回転砥石の研削面修正方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20231207BHJP
B24B 53/14 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B24B53/00 A
B24B53/14
(21)【出願番号】P 2019234357
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一人
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-052009(JP,A)
【文献】特開2003-117820(JP,A)
【文献】特開2010-284776(JP,A)
【文献】特公平04-013099(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
B24B 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面を研削面とした回転砥石の研削面を修正する回転砥石の研削面修正方法において、
平行な一軸線を中心に同方向に回転されるとともに、前記軸線と直交する修正作用面を有する隣接状態の複数の回転修正体を用い、
前記回転砥石を前記複数の回転修正体の径方向に、かつ前記回転砥石の軸方向に移動させることにより、前記修正作用面によって前記研削面をツルーイングする方法と、前記回転砥石を前記複数の回転修正体の回転中心を通る直線に沿って複数の回転修正体を跨いで回転修正体の径方向に移動させることにより、回転砥石の前記研削面をドレッシング
する方法と、を含む回転砥石の研削面修正方法。
【請求項2】
回転砥石の研削面の周速度と回転修正体の回転速度とを等しくする請求項
1に記載の回転砥石の研削面修正方法。
【請求項3】
回転砥石の研削面の周速度と回転修正体の修正作用面の内径位置の周速度とを等しくする請求項
2に記載の回転砥石の研削面修正方法。
【請求項4】
回転砥石を一対の回転修正体の平行な線上を移動させることによりツルーイングする請求項
1に記載の回転砥石の研削面修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツルーイングを行うための研削面修正装置によってドレッシングを行うことができる回転砥石の研削面修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転砥石の近傍に、ツルーイング装置とドレッシング装置がそれぞれ装備された研削装置が開示されている。つまり、この研削装置においては、回転砥石に対するツルーイングとドレッシングとが異なる装置によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の研削装置においては、ツルーイングとドレッシングとをそれぞれツルーイング装置及びドレッシング装置によって個々に行うようになっているため、ツルーイングとドレッシングとの2つの作業を連続して行う場合、両作業間のタイムラグのためにトータルの時間がかかる問題がある。また、ツルーイング装置及びドレッシング装置を個別に設ける必要があるため、研削装置の大型化と構造の複雑化を招くものである。
【0005】
本発明の目的は、ツルーングを可能にした装置によって回転砥石のドレッシングを行い得る回転砥石の研削面修正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明においては、外周面を研削面とした回転砥石の研削面を修正する回転砥石の研削面修正方法において、平行な一軸線を中心に同方向に回転されるとともに、前記軸線と直交する修正作用面を有する隣接状態の複数の回転修正体を用い、前記回転砥石を前記複数の回転修正体の回転中心を通る直線に沿って複数の回転修正体を跨いで回転修正体の径方向に移動させることにより、回転砥石の前記研削面をドレッシングすることを特徴とする。
【0007】
以上の方法によれば、ツルーイング可能にした回転修正体により、ドレッシングが行われるため、ツルーイング専用及びドレッシング専用の装置を設ける必要がなく、研削装置の大型化及び構造の複雑化を避けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単一の装置によってツルーイングとドレッシングとを行い得るという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、研削盤11のベッド12の上面にはテーブル13がX軸方向に移動可能に支持されており、このテーブル13の上面にワーク100が支持される。ベッド12上にはコラム14がZ軸方向に移動可能に支持されており、このコラム14上には、Z軸方向に延びる軸線を中心に回転される回転砥石15がY軸方向(上下方向)に移動可能に支持されている。
【0011】
修正装置21は以下のように構成されている。
図1,
図2及び
図4に示すように、修正装置21のケーシング22にはY軸と平行な軸24により回転可能に支持された一対のカップ状の砥石よりなる回転修正体23が近接配置されている。両回転修正体23の上面は同一平面内に位置しており、その上面が修正作用面231になっている。
【0012】
図3に示すように、ケーシング22にはモータ25が内装されている。そのモータ25の出力軸26上のスプロケット27と前記両軸24上のスプロケット28との間にはチェーン29が介装されていて、モータ25の駆動により、スプロケット27やチェーン29などを介して両回転修正体23が同時に同方向へ同速度で回転される。従って、
図4から明らかなように、両回転修正体23の近接部においては、上方から見て、その両回転修正体23の回転方向が逆になる。
【0013】
修正装置21は、その底面にマグネット(図示しない)を有し、そのマグネットの磁気力によって修正装置21はテーブル13の上面に固着される。修正装置21の固着位置は任意であって、例えば、ワーク100の設置位置の後部が選ばれる。
【0014】
次に、本実施形態の砥石修正方法を説明する。
図5はツルーイング状態を示すものである。回転砥石15の外周面である研削面151のツルーイングに際しては、回転修正体23の軸方向の上方から見て、回転砥石15の軸が回転修正体23の径方向を指向するように配置される。この状態で、回転砥石15の研削面151の下端が回転修正体23の修正作用面231に対して回転修正体23の矢印で示す半径方向(矢印β方向)に沿って往復動される。すなわち、このツルーイングにおいては、モータ25の駆動により、回転修正体23がチェーン29などを介して同時に同方向へ同回転速度(10~6000rpm程度)で回転されるとともに、回転砥石15が回転される。このとき、回転砥石15の研削面151の下端の回転方向Pが、回転修正体23の修正作用面231の回転方向Qと同方向にされる。また、回転砥石15の研削面151の周速度が回転修正体23の修正作用面231の内径位置232の周速度と同速度とされる。
【0015】
そして、回転砥石15の研削面151を一方の回転修正体23の修正作用面231に当てて、回転砥石15をその回転砥石15の軸方向に平行に、かつ回転修正体23の矢印βで示す半径方向に往復動作させる。このときの往復移動速度は、研削面151の周速度よりかなり遅い速度である。このようにすれば、回転修正体23の修正作用面231の内径位置232の部分を除いて研削面151と修正作用面231との間に僅かな速度差が生じる。このため、速度差が生じた部分において研削面151引き剥がされるようにして研削されて、その研削面151がツルーイングされる。
【0016】
一方の回転修正体23の修正作用面231において所定時間のツルーイングが行われた後は、他方の回転修正体23の修正作用面231において、前記と同様に、回転砥石15をその回転砥石15の軸方向に平行に、かつ回転修正体23の矢印で示す半径方向(矢印β方向)に往復動作させる。このようにして、ツルーイングが行われる。このため、回転砥石15の研削面151の形状が整えられる。
【0017】
図6は回転砥石15のドレッシング状態を示すものである。回転砥石15の研削面151のドレッシングに際しては、回転砥石15と両回転修正体23の修正作用面231との位置関係を、
図5に示すように、回転修正体23の回転中心αを通る直線Lと回転砥石15の幅方向中心線とを上下方向の一平面内に位置するように一致させる。この位置関係において、回転砥石15の研削面151の周速度(10~6000rpm程度)を回転修正体23の修正作用面231の内径位置232の周速度と一致させる。そして、この状態で、回転砥石15を前記両回転中心αを通る直線Lに沿って矢印γ方向に往復動作させる。この場合、回転砥石15の往復動速度は、前記周速度よりきわめて遅い速度である。なお、ドレッシングにおいては、回転砥石15と回転修正体23との間に多少の速度差(1:1.1~3程度)が生じてもよい。
【0018】
このようにすれば、回転修正体23の修正作用面231により、回転砥石15の研削面151の砥粒結合材154が、
図7に矢印Sで示すように研削面151の幅方向の両側から斜めに研削される。このため、砥粒152の回転方向前部側(
図7の左側)及び両側の砥粒結合材154が削り取られる。このようにして、砥粒152の回転方向後ろ側に続く結合材154の残留部153が存在した状態で、研削面151の砥粒152が突出されるように研削面151の目立てが行われる。このようにして、回転砥石15のドレッシングが行われる。
【0019】
本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)一対の回転修正体23により、回転砥石15のツルーイングとドレッシングとを行うことができる。このため、従来の研削装置とは異なり、ツルーイング専用の装置及びドレッシング専用の装置が不要になる。従って、研削装置の構成が簡単になるとともに、小型化が可能になる。
【0020】
(2)一対の回転修正体23の修正作用面231における広い面積においてドレッシングが実行されるため、先鋭状のドレッサによってピンポイント的にドレッシングを行う場合と比較して、ドレッシングを短時間で効率よく行うことが可能になる。
【0021】
(3)ツルーイングとドレッシングとを連続して行う場合、ツルーイング装置とドレッシング装置とが離隔して単独で装備されている研削盤と比較して、同じ位置において両作業を行うことができるため、両作業間のタイムラグを小さくできて、連続作業を能率よく行うことができる。
【0022】
(4)両回転修正体23において回転砥石15を往復させることにより、ドレッシングが行われるため、両回転修正体23が回転砥石15により均等に研削される。このため、両回転修正体23の修正作用面231の高さを一致させることができる。従って、このドレッシングに続いて、高精度なツルーイングを行うことが可能になる。
【0023】
(5)ツルーイングにおいては、研削面151が回転修正体23との速度差によって引き剥がされるようにして研削されて、整形されるが、研削面151の面形状の粗さは必ずしも良いものとは言えないことがある。しかしながら、本実施形態においては、ツルーイングに続くドレッシングにおいて研削面151の両側から研削作用が加えられるため、研削面151の粗さが解消されて、ワーク100に対する高精度研削に寄与できる。
【0024】
(変更例)
前記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0025】
・ツルーイング後やドレッシング後の回転砥石15の研削面151をカメラで撮影して画像を取得し、その画像とあらかじめ設定された基準画像と比較して、研削面151の状況を自動的に評価すること。そして、研削面151のツルーイングやドレッシングが所定にレベルに達したときに、ツルーイング及びドレッシングが終了されるようにすること。
【0026】
・ワーク100の加工において、切削負荷や回転砥石15の研削面151の状態を検出して、ツルーイングの開始タイミングやドレッシングの開始タイミングを判別すること。
【符号の説明】
【0027】
11…研削盤
15…回転砥石
21…修正装置
23…回転修正体
24…軸
151…研削面
231…修正作用面
232…内径位置