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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】太陽電池の検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/10 20140101AFI20231207BHJP
   H01L 31/0463 20140101ALI20231207BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20231207BHJP
【FI】
H02S50/10
H01L31/04 532A
G01R31/26 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019237300
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106467
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌見
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205880059(CN,U)
【文献】特開2011-119695(JP,A)
【文献】特開2010-199506(JP,A)
【文献】特開2012-134373(JP,A)
【文献】特開2010-236889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
H02S 50/00-50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割溝の第1側部に隣接する第1セル裏電極層に接触する第1種端子対の間の導通状態、および、前記分割溝の第2側部に隣接する第2セル裏電極層に接触する第2種端子対の間の導通状態と、前記第1種端子対の一方の端子と前記第2種端子対の一方の端子とを含む第3種端子対の間の絶縁状態とを測定する測定部を備える
太陽電池の検査装置。
【請求項2】
前記測定部により測定される導通状態および絶縁状態を参照して、前記分割溝の欠陥について判定する解析部をさらに備える
請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項3】
前記解析部は前記第1種端子対の間および前記第2種端子対の間が導通していることが確認され、前記第3種端子対の間が絶縁されていないことが確認される場合、前記分割溝に欠陥が存在すると判定する
請求項2に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項4】
前記解析部は前記第1種端子対の間および前記第2種端子対の間が導通していることが確認され、前記第3種端子対の間が絶縁されていることが確認される場合、前記分割溝に欠陥が存在しないと判定する
請求項2または3に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項5】
前記解析部は前記第1種端子対の間および前記第2種端子対の間の少なくとも一方が導通していないことが確認される場合、前記分割溝の欠陥に関する判定を保留する
請求項2~4のいずれか一項に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項6】
前記分割溝に残存する裏電極層の一部である残存部が除去されるように前記第3種端子対の間に電流を流す除去部をさらに備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項7】
前記第1種端子対、前記第2種端子対、および、前記第3種端子対をさらに備え、
前記第1種端子対は前記第1セル裏電極層の各端部に接触するように構成され、
前記第2種端子対は前記第2セル裏電極層の各端部に接触するように構成され、
前記第3種端子対は前記第1種端子対の一方の端子、および、前記第2種端子対の一方の端子を含み、
前記分割溝の長手方向に関する前記第3種端子対の各端子間の距離は前記分割溝の長手方向に関する前記第1種端子対の各端子間の距離または前記第2種端子対の各端子間の距離に等しい
請求項1~6のいずれか一項に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項8】
裏電極層を複数のセル裏電極層に分割する分割溝の欠陥を検出する検査方法であって、
前記分割溝の第1側部に隣接する第1セル裏電極層に接触する第1種端子対の間の導通状態、および、前記分割溝の第2側部に隣接する第2セル裏電極層に接触する第2種端子対の導通状態を測定する導通判定処理工程と、
前記第1種端子対の一方の端子と前記第2種端子対の一方の端子とを含む第3種端子対の間の絶縁状態を測定する第1の絶縁判定処理工程とを含む
太陽電池の検査方法。
【請求項9】
前記第1の絶縁判定処理工程の実行後に前記第3種端子対の間に電流を流す通電処理工程をさらに含む
請求項8に記載の太陽電池の検査方法。
【請求項10】
前記通電処理工程の実行後に前記第3種端子対の間の絶縁状態を測定する第2の絶縁判定処理工程をさらに含む
請求項9に記載の太陽電池の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池の検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の検査装置としては、例えばラインスキャンカメラにより被検査物を撮影する装置が知られている。特許文献1には従来の検査装置の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5885477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池の裏電極層は複数の分割溝により複数のセル裏電極層に区分される。分割溝を介して隣接する1組のセル裏電極層は分割溝により絶縁される。裏電極層は分割溝に関する欠陥を含む場合がある。例えば、分割溝を形成する工程において裏電極層の一部が除去されずに分割溝に残る。分割溝を介して隣接する1組のセル裏電極層が、分割溝に残る裏電極層の一部により接続され、1組のセル裏電極層の絶縁抵抗が低下する。特許文献1の検査装置では、このような欠陥の検出を想定していない。
【0005】
本発明の目的は裏電極層の分割溝に関する欠陥の適切な検出に寄与する太陽電池の検査装置および検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に関する太陽電池の検査装置は分割溝の第1側部に隣接する第1セル裏電極層に接触する第1種端子対の間の導通状態、および、前記分割溝の第2側部に隣接する第2セル裏電極層に接触する第2種端子対の間の導通状態と、前記第1種端子対の一方の端子と前記第2種端子対の一方の端子とを含む第3種端子対の間の絶縁状態とを測定する測定部を備える。
【0007】
上記検査装置では、測定部により測定される導通状態および絶縁状態を分割溝に関する欠陥の検出に利用できる。これは分割溝に関する欠陥の適切な検出に寄与する。
【0008】
前記太陽電池の検査装置の一例では、前記測定部により測定される導通状態および絶縁状態を参照して、前記分割溝の欠陥について判定する解析部をさらに備える。
【0009】
上記検査装置によれば、分割溝の欠陥について適切に判定できる。
【0010】
前記太陽電池の検査装置の一例では、前記解析部は前記第1種端子対の間および前記第2種端子対の間が導通していることが確認され、前記第3種端子対の間が絶縁されていないことが確認される場合、前記分割溝に欠陥が存在すると判定する。
【0011】
上記検査装置によれば、分割溝に欠陥が存在することを適切に検出できる。
【0012】
前記太陽電池の検査装置の一例では、前記解析部は前記第1種端子対の間および前記第2種端子対の間が導通していることが確認され、前記第3種端子対の間が絶縁されていることが確認される場合、前記分割溝に欠陥が存在しないと判定する。
【0013】
上記検査装置によれば、分割溝に欠陥が存在しないことを適切に検出できる。
【0014】
前記太陽電池の検査装置の一例では、前記解析部は前記第1種端子対の間および前記第2種端子対の間の少なくとも一方が導通していないことが確認される場合、前記分割溝の欠陥に関する判定を保留する。
【0015】
上記検査装置によれば、分割溝の欠陥に関する判定の誤りを抑制できる。
【0016】
前記太陽電池の検査装置の一例では、前記第3種端子対の間に電流を流す除去部をさらに備える。
【0017】
上記検査装置によれば、分割溝に残存する異物が電流の流れにともない除去される場合がある。
【0018】
前記太陽電池の検査装置の一例では、前記第1種端子対、前記第2種端子対、および、前記第3種端子対をさらに備え、前記第1種端子対は前記第1セル裏電極層の各端部に接触するように構成され、前記第2種端子対は前記第2セル裏電極層の各端部に接触するように構成され、前記第3種端子対は前記第1種端子対の一方の端子、および、前記第2種端子対の一方の端子を含み、前記分割溝の長手方向に関する前記第3種端子対の各端子間の距離は前記分割溝の長手方向に関する前記第1種端子対の各端子間の距離または前記第2種端子対の各端子間の距離に等しい。
【0019】
分割溝に欠陥が含まれる場合、分割溝の長手方向に関する欠陥の位置は分割溝の形成時の加工条件等に応じて異なる。上記検査装置では、各セル裏電極層のおおよそ全体の電気抵抗が第3種端子対を用いた絶縁抵抗の測定に反映される。各セル裏電極層の電気抵抗が絶縁抵抗の測定に及ぼす影響の度合が、分割溝における欠陥の位置に応じてばらつくことが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に関する太陽電池の検査装置および検査方法は裏電極層の分割溝に関する欠陥の適切な検出に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】太陽電池の断面図。
図2】太陽電池の製造工程に関する図(1)。
図3】太陽電池の製造工程に関する図(2)。
図4】太陽電池の製造工程に関する図(3)。
図5】太陽電池の製造工程に関する図(4)。
図6】太陽電池の製造工程に関する図(5)。
図7】太陽電池の製造工程に関する図(6)。
図8】太陽電池の製造工程に関する図(7)。
図9】太陽電池の製造工程に関する図(8)。
図10】溝欠陥の一例を示す図。
図11】検査装置のブロック図。
図12】裏電極対の平面図。
図13】検査装置の外観図。
図14】待機状態の一例を示す図。
図15】検査方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は太陽電池10の断面を示す。光吸収層の材料による分類では、太陽電池10は例えば化合物系太陽電池である。厚さによる分類では、太陽電池10は例えば薄膜太陽電池である。太陽電池10の説明には直交座標系が用いられる。X軸およびY軸により規定される平面を「基準面」と称する。太陽電池10の平面は基準面に平行である。Z軸は太陽電池10の平面に直交する。X軸に平行な方向を「横方向」と称する。横方向の一方を「第1横方向」と称する。横方向の他方を「第2横方向」と称する。Y軸に平行な方向を「縦方向」と称する。縦方向の一方を「第1縦方向」と称する。縦方向の他方を「第2縦方向」と称する。Z軸に平行な方向を「厚さ方向」と称する。厚さ方向の一方を「第1厚さ方向」と称する。厚さ方向の他方を「第2厚さ方向」と称する。
【0023】
太陽電池10は例えば板である。太陽電池10の平面視では、太陽電池10の形状は例えば四角形である。平面視における太陽電池10の外郭には2組の対辺が含まれる。一方の対辺は横方向に平行である。他方の対辺は縦方向に平行である。太陽電池10は第1主面10Aおよび第2主面10Bを含む。第1主面10Aは第1厚さ方向を向く。第2主面10Bは第2厚さ方向を向く。各主面10A、10Bは基準面に平行である。
【0024】
太陽電池10は複数の層を含む。一例では、太陽電池10は基板20、裏電極層30、中間層40、および、窓層50を含む。基板20は第1主面20Aおよび第2主面20Bを含む。第1主面20Aは第1厚さ方向を向く。第2主面20Bは第2厚さ方向を向く。第2主面20Bは太陽電池10の第2主面10Bを構成する。裏電極層30は基板20の第1主面20Aに積層される。裏電極層30は第1主面30Aおよび第2主面30Bを含む。第1主面30Aは第1厚さ方向を向く。第2主面30Bは第2厚さ方向を向く。第2主面30Bは基板20の第1主面20Aに対向する。
【0025】
中間層40は裏電極層30の第1主面30Aに積層される。中間層40は第1主面40Aおよび第2主面40Bを含む。第1主面40Aは第1厚さ方向を向く。第2主面40Bは第2厚さ方向を向く。第2主面40Bは裏電極層30の第1主面30Aに対向する。中間層40の構成について例示する。第1例では、中間層40は光吸収層41により構成される。光吸収層41は裏電極層30の第1主面30Aに積層される。光吸収層41は第1主面41Aおよび第2主面41Bを含む。第1主面41Aは第1厚さ方向を向く。第2主面41Bは第2厚さ方向を向く。第1主面41Aは中間層40の第1主面40Aを構成する。第2主面41Bは裏電極層30の第1主面30Aに対向する。第2例では、中間層40は光吸収層41およびバッファ層42により構成される。バッファ層42は光吸収層41の第1主面41Aに積層される。バッファ層42は第1主面42Aおよび第2主面42Bを含む。第1主面42Aは第1厚さ方向を向く。第2主面42Bは第2厚さ方向を向く。第1主面42Aは中間層40の第1主面40Aを構成する。第2主面42Bは光吸収層41の第1主面41Aに対向する。第3例では、中間層40は第2例の中間層40にさらに別の層が積層された構成を備える。
【0026】
窓層50は中間層40の第1主面40Aに積層される。窓層50は第1主面50Aおよび第2主面50Bを含む。第1主面50Aは第1厚さ方向を向く。第2主面50Bは第2厚さ方向を向く。第2主面50Bは中間層40の第1主面40Aに対向する。
【0027】
硬さに関する分類では、基板20は例えばリジッド基板、フレキシブル基板、または、リジッドフレキシブル基板である。電気的性質に関する分類では、基板20は例えば絶縁体または半導体である。透明度に関する分類では、基板20は例えば透明基板である。一例では、基板20はガラス基板である。ガラス基板の種類は例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノボロシリケートガラス、および、無アルカリガラスから選択される。
【0028】
裏電極層30は例えば金属電極層である。裏電極層30の材料は例えば、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、および、クロム(Cr)から選択される。光吸収層41は例えばp型半導体である。光吸収層41は例えば化合物半導体である。化合物半導体の種類は例えば、CIS化合物、CIGS化合物、CZTS化合物、CdTe化合物、および、CdS化合物から選択される。CIS化合物の主成分は銅(Cu)、インジウム(In)、および、セレン(Se)である。CIGS化合物の主成分は銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、および、セレン(Se)である。CZTS化合物の主成分は銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、硫黄(S)、および、セレン(Se)である。CdTe化合物の主成分はカドミウム(Cd)およびテルル(Te)である。CdS化合物の主成分はカドミウム(Cd)および硫黄(S)である。
【0029】
バッファ層42は例えば高抵抗層である。バッファ層42は例えばn型半導体である。バッファ層42の材料は例えば、硫化カドミウム(CdS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、および、硫化インジウム(InS)から選択される。
【0030】
窓層50は例えばn型半導体である。窓層50は例えば透明導電膜である。透明導電膜の種類は例えば、酸化錫系薄膜、酸化亜鉛系薄膜、および、酸化インジウム系薄膜から選択される。
【0031】
太陽電池10は複数の分割溝Pおよび複数のセル60を含む。複数の分割溝Pは裏電極層30、中間層40、および、窓層50を複数のセル60に区分する。複数のセル60は横方向に並ぶ。一例では、セル60は縦方向に長い。セル60の長手方向は縦方向に平行である。複数の分割溝Pには3種類の分割溝Pが含まれる。分割溝Pの種類は第1分割溝P1、第2分割溝P2、および、第3分割溝P3である。太陽電池10は複数の第1分割溝P1、複数の第2分割溝P2、および、複数の第3分割溝P3を含む。一例では、各分割溝P1~P3は縦方向に長い。各分割溝P1~P3は縦方向に平行である。
【0032】
第1分割溝P1は裏電極層30に形成される。裏電極層30には複数の第1分割溝P1が形成される。複数の第1分割溝P1は横方向に並ぶ。第2分割溝P2は中間層40に形成される。中間層40には複数の第2分割溝P2が形成される。複数の第2分割溝P2は横方向に並ぶ。第3分割溝P3は中間層40および窓層50に形成される。中間層40および窓層50には複数の第3分割溝P3が形成される。複数の第3分割溝P3は横方向に並ぶ。中間層40は第1分割溝P1を埋める第1凸部40Pを含む。窓層50は第2分割溝P2を埋める第2凸部50Pを含む。
【0033】
横方向に隣接するセル60は第1分割溝P1および第3分割溝P3により区分される。各セル60は電気的に直列に接続される。セル60は横方向に並ぶ1組の第3分割溝P3の間に設けられる窓層50および中間層40と、横方向に並ぶ1組の第1分割溝P1の間に設けられる裏電極層30とを含む。1つのセル60を構成する裏電極層30、中間層40、および、窓層50をそれぞれ「セル裏電極層61」、「セル中間層62」、および、「セル窓層63」と称する。
【0034】
裏電極層30は複数の第1分割溝P1により複数のセル裏電極層61に分割される。第1分割溝P1を介して横方向に隣接する1組のセル裏電極層61を「裏電極対E」と称する。裏電極対に含まれる一方のセル裏電極層61と他方の裏電極層61とは第1分割溝P1により絶縁される。
【0035】
セル裏電極層61は第1横方向に隣接する別のセル60のセル窓層63に接続される。中間層40および窓層50は複数の第3分割溝P3により複数のセル中間層62およびセル窓層63に分割される。セル窓層63は第2横方向に隣接する別のセル60のセル裏電極層61に接続される。セル中間層62は第2分割溝P2により第1層構成部62Aおよび第2層構成部62Bに分割される。第1層構成部62Aはセル裏電極層61に積層される。第2層構成部62Bは第2横方向に隣接する別のセル60のセル裏電極層61に積層される。
【0036】
セル中間層62は第1分割溝P1を埋める第1凸部40Pを含む。第1凸部40Pは裏電極対Eに含まれる一方のセル裏電極層61と他方の裏電極層61とを絶縁する。セル窓層63は第2分割溝P2を埋める第2凸部50Pを含む。第2凸部50Pは第2横方向に隣接する別のセル60のセル裏電極層61に接続される。
【0037】
各分割溝P1~P3は例えばスクライブ加工により形成される。第1分割溝P1は例えばレーザスクライブにより形成される。第2分割溝P2および第3分割溝P3は例えばメカニカルスクライブにより形成される。
【0038】
太陽電池10は例えば次のように製造される。図2に示される第1工程では、基板20が洗浄される。図3に示される第2工程では、基板20に裏電極層30が形成される。裏電極層30の形成方法は例えば蒸着である。図4に示される第3工程では、裏電極層30がパターニングされ、裏電極層30に複数の第1分割溝P1が形成される。第1分割溝P1の形成方法は例えばレーザスクライブである。図5に示される第4工程では、裏電極層30に光吸収層41が形成される。一例では、第4工程には次の各工程が含まれる。裏電極層30に金属薄膜であるプリカーサが形成される。プリカーサの形成方法は例えば蒸着である。特定のガス雰囲気中においてプリカーサにアニール処理が施される。アニール処理によりプリカーサが化合物に変化する。一例では、アニール処理によりプリカーサがセレン化または硫化される。図6に示される第5工程では、光吸収層41にバッファ層42が形成される。バッファ層42の形成方法は例えば蒸着である。図7に示される第6工程では、中間層40がパターニングされ、中間層40に複数の第2分割溝P2が形成される。第2分割溝P2の形成方法は例えばメカニカルスクライブである。図8に示される第7工程では、中間層40に窓層50が形成される。窓層50の形成方法は例えば蒸着である。図9に示される第8工程では、中間層40および窓層50がパターニングされ、中間層40および窓層50に複数の第3分割溝P3が形成される。第3分割溝P3の形成方法は例えばメカニカルスクライブである。
【0039】
第3工程(図4参照)により形成される太陽電池10の仕掛品を「仕掛品10X」と称する。仕掛品10Xおよび太陽電池10において厚さ方向に関する第1分割溝P1に対応する部分を「特定部Q」と称する。横方向に関する特定部Qの幅は第1分割溝P1の幅に等しい。
【0040】
裏電極層30は分割溝Pに関する欠陥(以下「溝欠陥」という)を含む場合がある。図10は溝欠陥の一例を示す。第1分割溝P1を形成する工程において裏電極層30の特定部Qの一部が除去されずに第1分割溝P1に残る場合がある。第1分割溝P1に残る特定部Qの一部を「残存部R」と称する。裏電極対Eに含まれる一方のセル裏電極層61と他方のセル裏電極層61とが残存部Rにより接続される場合がある。裏電極対Eが残存部Rにより接続される部分では、裏電極対Eの絶縁抵抗が低下する。残存部Rは第1分割溝P1を形成するためのスクライブ加工の工程における種々の加工条件の影響により生じる。残存部Rの形成範囲および形状等は加工条件に応じて異なる。
【0041】
図11は裏電極対Eを示す。裏電極対Eは一対のセル裏電極層61を含む。セル裏電極層61および第1分割溝P1は縦方向に長い。第1分割溝P1は第1側部P11および第2側部P12を含む。各側部P11、P12は第1分割溝P1の長手方向に長い。第1側部P11と第2側部P12との間には第1分割溝P1の空間が形成される。裏電極対Eに含まれる一方のセル裏電極層61を「第1セル裏電極層E1」と称する。裏電極対Eに含まれる他方のセル裏電極層61を「第2セル裏電極層E2」と称する。第1セル裏電極層E1は横方向に関して第1分割溝P1の第1側部P11に隣接する。第2セル裏電極層E2は横方向に関して第1分割溝P1の第2側部P12に隣接する。
【0042】
縦方向に関するセル裏電極層61の中心を「電極中心SC」と称する。縦方向に関するセル裏電極層61の一方の端部を「第1端部S1」と称する。縦方向に関するセル裏電極層61の他方の端部を「第2端部S2」と称する。縦方向に関する第1端部S1と電極中心SCとの間の部分を「第1中間部S3」と称する。縦方向に関する第2端部S2と電極中心SCとの間の部分を「第2中間部S4」と称する。縦方向に関するセル裏電極層61の一方の縁を「第1縁S5」と称する。縦方向に関するセル裏電極層61の他方の縁を「第2縁S6」と称する。第1端部S1は第1縁S5を含む一定の範囲である。第2端部S2は第2縁S6を含む一定の範囲である。
【0043】
図12は検査装置100に関するブロック図を示す。検査装置100は被検査物Wの溝欠陥の測定に関連する機能、および、残存部Rの除去に関連する機能の少なくとも1つを含む。溝欠陥の測定に関連する機能では、被検査物Wの電気的特性を測定し、その結果を参照して被検査物Wの溝欠陥を検出する。残存部Rの除去に関連する機能では、残存部Rを蒸発させることに寄与する電流を裏電極対Eに供給する。検査装置100は複数の端子Tおよび複数の機能ブロックF10を含む。複数の端子Tには例えば、第1種端子対TA、第2種端子対TB、および、第3種端子対TCが含まれる。複数の機能ブロックF10には例えば、測定部F11、AD変換部F12、解析部F13、データ変換部F14、および、除去部F15が含まれる。
【0044】
測定部F11は第1種端子対TAの間の導通状態、および、第2種端子対TBの間の導通状態と、第3種端子対TCの間の絶縁状態とを測定する。一例では、測定部F11は第1測定部F11Aおよび第2測定部F11Bを含む。第1測定部F11Aは第1種端子対TAの間の導通状態、および、第2種端子対TBの間の導通状態を測定する。第2測定部F11Bは第3種端子対TCの間の絶縁状態を測定する。第1種端子対TAの間を流れる電流、または、第1端子対TAの間の抵抗は第1種端子対TAの間の導通状態を反映する。第1端子対TAの間の導通状態の測定では、例えば第1種端子対TAの間の電流または抵抗が測定される。第2種端子対TBの間を流れる電流、または、第2端子対TBの間の抵抗は第2種端子対TBの間の導通状態を反映する。第2端子対TBの間の導通状態の測定では、例えば第2種端子対TBの間の電流または抵抗が測定される。第3端子対TCの間の抵抗、または、第3種端子対TCの間を流れる電流は第3種端子対TCの間の絶縁状態を反映する。第3端子対TCの間の絶縁状態の測定では、例えば第3種端子対TCの間の抵抗または電流が測定される。
【0045】
AD変換部F12は測定部F11の出力信号をデジタル信号に変換する。解析部F13はAD変換部F12の出力信号を参照し、検査対象部位の溝欠陥について判定する。データ変換部F14は解析部F13の演算結果を特定形式のデータに変換する。除去部F15は第3種端子対TCの間に電流を流す。
【0046】
第1種端子対TAは一対の端子Tを含む。第1種端子対TAの一方の端子Tを「端子TA1」と表示する場合がある。第1種端子対TAの他方の端子Tを「端子TA2」と表示する場合がある。第1種端子対TAは第1セル裏電極層E1に接触する。第2種端子対TBは一対の端子Tを含む。第2種端子対TBの一方の端子Tを「端子TB1」と表示する場合がある。第2種端子対TBの他方の端子Tを「端子TB2」と表示する場合がある。第2種端子対TBは第2セル裏電極層E2に接触する。
【0047】
第3種端子対TCは第1種端子対TAの一方の端子T、および、第2種端子対TBの一方の端子Tを含む。第1例では、第3種端子対TCは第1種端子対TAの端子TA1、および、第2種端子対TBの端子TB1を含む。第2例では、第3種端子対TCは第1種端子対TAの端子TA1、および、第2種端子対TBの端子TB2を含む。第3例では、第3種端子対TCは第1種端子対TAの端子TA2、および、第2種端子対TBの端子TB1を含む。第4例では、第3種端子対TCは第1種端子対TAの端子TA2、および、第2種端子対TBの端子TB2を含む。
【0048】
セル裏電極層61は第1種端子対TAの一方の端子Tまたは第2種端子対TBの一方の端子Tが接触する第1被接触部、および、第1種端子対TAの他方の端子Tまたは第2種端子対TBの一方の端子Tが接触する第2被接触部を含む。第1被接触部および第2被接触部は例えば、セル裏電極層61の第1端部S1、第2端部S2、第1中間部S3、および、第2中間部S4から選択される。
【0049】
縦方向に関する第1被接触部と第2被接触部との距離を「測定距離」と称する。測定距離の内容について例示する。第1例では、測定距離は第1所定距離以上である。第1所定距離は例えば縦方向に関する第1端部S1と第2端部S2との距離に相当する。第2例では、測定距離は第2所定距離以上である。第2所定距離は縦方向に関する第1端部S1または第2端部S2と電極中心SCとの距離に相当する。測定距離が長くなるほど、第1分割溝P1における溝欠陥の位置が第3種端子対TCの間の抵抗に関する測定に及ぼす影響が小さくなる。これは抵抗の測定精度の向上に寄与する。
【0050】
第1種端子対TAと第1セル裏電極層E1との関係について例示する。第1例では、端子TA1は第1端部S1に接触する。端子TA2は第2端部S2に接触する。第2例では、端子TA1は第1端部S1に接触する。端子TA2は第2中間部S4に接触する。第3例では、端子TA1は第1端部S1に接触する。端子TA2は電極中心SCに接触する。第4例では、端子TA1は第1端部S1に接触する。端子TA2は第1中間部S3に接触する。第5例では、端子TA1は第1端部S1に接触する。端子TA2は第1端部S1における端子TA1が接触する部分とは異なる部分に接触する。
【0051】
第2種端子対TBと第2セル裏電極層E2との関係について例示する。第1例では、端子TB1は第1端部S1に接触する。端子TB2は第2端部S2に接触する。第2例では、端子TB1は第1端部S1に接触する。端子TB2は第2中間部S4に接触する。第3例では、端子TB1は第1端部S1に接触する。端子TB2は電極中心SCに接触する。第4例では、端子TB1は第1端部S1に接触する。端子TB2は第1中間部S3に接触する。第5例では、端子TB1は第1端部S1に接触する。端子TB2は第1端部S1における端子TB1が接触する部分とは異なる部分に接触する。
【0052】
図13は検査装置100のハードウェアの構成の一例を示す。検査装置100の説明には直交座標系が用いられる。X軸およびY軸により規定される平面を「基準面」と称する。検査装置100の平面は基準面に平行である。Z軸は検査装置100の平面に直交する。X軸に平行な方向を「幅方向」と称する。Y軸に平行な方向を「奥行方向」と称する。Z軸に平行な方向を「高さ方向」と称する。一例では、太陽電池10の横方向は検査装置100の幅方向に平行である。太陽電池10の縦方向は検査装置100の奥行方向に平行である。太陽電池10の厚さ方向は検査装置100の高さ方向に平行である。
【0053】
被検査物Wは例えば仕掛品10Xである(図4図10参照)。被検査物Wは第1主面WAおよび第2主面WBを含む。被検査物Wの第1主面WAは裏電極層30の第1主面30Aである。被検査物Wの第2主面WBは基板20の第2主面20Bである。被検査物Wのサイズは任意に選択できる。一例では、横方向に関する被検査物Wの長さは600mm~700mmの範囲に含まれる。縦方向に関する被検査物Wの長さは1500mm~1600mmの範囲に含まれる。
【0054】
検査装置100はプローブユニット200、計測器300、電源ユニット400、コントロールユニット500、および、端末装置600を備える。各端子対TA、TB、TCはプローブユニット200に含まれる。測定部F11は例えばプローブユニット200、計測器300、および、コントロールユニット500により構成される。AD変換部F12は計測器300またはコントロールユニット500に含まれる。解析部F13およびデータ変換部F14はコントロールユニット500に含まれる。データ変換部F14により変換される特定形式のデータは例えば端末装置600において利用される形式のデータである。除去部F15は例えばプローブユニット200、電源ユニット400、および、コントロールユニット500により構成される。
【0055】
一例では、検査装置100は移送部110およびテーブル120をさらに備える。移送部110はプローブユニット200とテーブル120とを相対的に移動させる。テーブル120は被検査物Wを支持する。移送部110による移動対象に関する構成について例示する。第1例では、移送部110はテーブル120に対してプローブユニット200を移動させる。第2例では、移送部110はプローブユニット200に対してテーブル120を移動させる。第3例では、移送部110はプローブユニット200およびテーブル120の両方を移動させる。移送部110はプローブユニット200を移動させる第1のアクチュエータ、および、テーブル120を移動させる第2のアクチュエータの少なくとも1つを含む。第1のアクチュエータは電源から供給される電気エネルギーをプローブユニット200の運動に変換する。第2のアクチュエータは電源から供給される電気エネルギーをテーブル120の運動に変換する。
【0056】
移送部110の相対移動に関する構成について例示する。第1例では、移送部110はプローブユニット200とテーブル120とを検査装置100の高さ方向に相対移動させる第1移送構造を含む。第2例では、移送部110はプローブユニット200とテーブル120とを幅方向に相対移動させる第2移送構造を含む。第3例では、移送部110はプローブユニット200とテーブル120とを奥行方向に相対移動させる第3移送構造を含む。第4例では、移送部110は第1~第3例の少なくとも2つの移送構造を含む。図示される例では、移送部110はテーブル120に対してプローブユニット200を高さ方向に相対移動させる第1移送構造を含む。
【0057】
プローブユニット200は複数の端子Tを含む。端子Tは例えば2端子法に対応する端子、または、4端子法に対応する端子である。複数の端子Tは複数の第1種端子対TA、複数の第2種端子対TB、および、複数の第3種端子対TCを含む。一例では、プローブユニット200は第1プローブユニット210および第2プローブユニット220を含む。移送部110はテーブル120に対して各プローブユニット210、220を高さ方向に相対移動させる。
【0058】
第1プローブユニット210は第1ユニット本体211および複数の端子Tを含む。第1プローブユニット210に含まれる複数の端子Tはプローブユニット200に含まれる全数の端子Tの一部である。第1ユニット本体211は移送部110に取り付けられる。第1ユニット本体211はケース211Aおよびリレー回路211Bを含む。ケース211Aには長手方向および短手方向が規定される。ケース211Aの長手方向は検査装置100の幅方向に平行である。ケース211Aの短手方向は検査装置100の奥行方向に平行である。リレー回路211Bはケース211A内に設けられる。複数の端子Tはケース211Aの外部に設けられる。複数の端子Tはケース211Aに支持される。複数の端子Tはケース211Aの長手方向に並ぶ。複数の端子Tはリレー回路211Bに電気的に接続される。
【0059】
第1プローブユニット210の端子Tの数について例示する。第1例では、第1プローブユニット210の端子Tの数は被検査物Wに設けられるセル裏電極層61の数に等しい。第2例では、第1プローブユニット210の端子Tの数は被検査物Wに設けられるセル裏電極層61の数よりも多い。第3例では、第1プローブユニット210の端子Tの数は被検査物Wに設けられるセル裏電極層61の数よりも少ない。
【0060】
第2プローブユニット220は第2ユニット本体221および複数の端子Tを含む。第2プローブユニット220に含まれる複数の端子Tはプローブユニット200に含まれる全数の端子Tの一部である。第2ユニット本体221は移送部110に取り付けられる。第2ユニット本体221はケース221Aおよびリレー回路221Bを含む。ケース221Aには長手方向および短手方向が規定される。ケース221Aの長手方向は検査装置100の幅方向に平行である。ケース221Aの短手方向は検査装置100の奥行方向に平行である。リレー回路221Bはケース221A内に設けられる。複数の端子Tはケース221Aの外部に設けられる。複数の端子Tはケース221Aに支持される。複数の端子Tはケース221Aの長手方向に並ぶ。複数の端子Tはリレー回路221Bに電気的に接続される。
【0061】
第2プローブユニット220の端子Tの数について例示する。第1例では、第2プローブユニット220の端子Tの数は被検査物Wに設けられるセル裏電極層61の数に等しい。第2例では、第2プローブユニット220の端子Tの数は被検査物Wに設けられるセル裏電極層61の数よりも多い。第3例では、第2プローブユニット220の端子Tの数は被検査物Wに設けられるセル裏電極層61の数よりも少ない。
【0062】
一例では、第1プローブユニット210および第2プローブユニット220は同数の端子Tを含む。プローブユニット200が被検査物Wの電気的特性を測定できるように被検査物Wにセットされた状態(以下「待機状態」という)では、各端子Tが被検査物Wに接触する。図14は待機状態の一例を示す。待機状態では、各プローブユニット210、220の端子Tは縦方向に並ぶ縦端子対TLを構成する。縦端子対TLは第1プローブユニット210の1つの端子Tおよび第2プローブユニット220の1つの端子Tを含む。個々の縦端子対TLは第1種端子対TAまたは第2種端子対TBに対応する。プローブユニット200は第1プローブユニット210または第2プローブユニット220に設けられる全数の端子Tと同数の縦端子対TLを含む。
【0063】
横方向に隣接する1組の縦端子対TLについて、一方の縦端子対TLは第1種端子対TAに対応し、他方の縦端子対TLは第2種端子対TBに対応する。一例では、各端子対TA~TCと裏電極対Eとは次の関係を含む。第1種端子対TAの端子TA1は第1セル裏電極層E1の第1端部S1に接触する。第1種端子対TAの端子TA2は第1セル裏電極層E1の第2端部S2に接触する。第2種端子対TBの端子TB1は第2セル裏電極層E2の第1端部S1に接触する。第2種端子対TBの端子TB2は第2セル裏電極層E2の第2端部S2に接触する。第3種端子対TCは第1種端子対TAの端子TA1および第2種端子対TBの端子TB2を含む、または、第1種端子対TAの端子TA2および第2種端子対TBの端子TB1を含む。
【0064】
第1分割溝P1の長手方向に関する第1種端子対TAの端子TA1と端子TA2との距離と、第2種端子対TBの端子TB1と端子TB2との距離とは等しい。第1分割溝P1の長手方向に関する第3種端子対TCの距離は第1分割溝P1の長手方向に関する第1種端子対TAの端子TA1と端子TA2との距離、または、第2種端子対TBの端子TB1と端子TB2との距離に等しい。
【0065】
計測器300はプローブユニット200と電気的に接続される。計測器300の構成について例示する。第1例では、計測器300はマルチメータを含む。第2例では、計測器300は個別に構成される電流計および抵抗測定器を含む。計測器300は縦端子対TLの間の導通状態、および、第3種端子対TCの間の絶縁状態を測定する。導通状態の測定では、例えば縦端子対TLの間に定電圧が印加され、縦端子対TLの間を流れる電流が測定される。縦端子対TLの間の電圧および電流から縦端子対TLの間の抵抗が測定される。絶縁状態の測定では、例えば第3種端子対TCの間に定電圧が印加され、第3種端子対TCの間を流れる電流が測定される。第3種端子対TCの間の電圧および電流から第3種端子対TCの間の抵抗が測定される。計測器300は縦端子対TLの間の導通状態に関する情報を含む導通測定情報、および、第3種端子対TCの間の絶縁状態に関する情報を含む絶縁測定情報を出力する。
【0066】
電源ユニット400はプローブユニット200に電気的に接続される。電源ユニット400はプローブユニット200に直流電流を供給する。電源ユニット400は例えば残存部Rの蒸発に寄与する大きさの直流電流を出力する。
【0067】
コントロールユニット500はプローブユニット200、計測器300、および、電源ユニット400と電気的に接続される。コントロールユニット500はマイクロコントローラ510を含む。マイクロコントローラ510は解析部F13を含む。マイクロコントローラ510はプローブユニット200のリレー回路211B、221Bの設定を切り替える制御信号をプローブユニット200に出力する。
【0068】
コントロールユニット500によるリレー回路211B、221Bの設定により選択される計測器300および電源ユニット400と各端子Tとの接続関係には、例えば次の第1~第3接続状態が含まれる。第1接続状態では、複数の縦端子対TLのいずれか1つが計測器300に接続される。計測器300は接続される縦端子対TLの間の導通状態を測定する。第2接続状態では、複数の第3種端子対TCのいずれか1つが計測器300に接続される。計測器300は接続される第3種端子対TCの間の絶縁状態を測定する。第3接続状態では、複数の第3種端子対TCのいずれか1つが電源ユニット400に接続される。電源ユニット400に接続される第3種端子対TCの間に電源ユニット400の直流電圧がかかる。電源ユニット400に接続される第3種端子対TCに対応する裏電極対Eに溝欠陥が存在する場合、第3種端子対TCの間に直流電流が流れる。
【0069】
コントロールユニット500は計測器300から導通測定情報および絶縁測定情報を受信する。マイクロコントローラ510の解析部F13は導通測定情報および絶縁測定情報を参照して、被検査物Wの溝欠陥について判定する。溝欠陥に関する判定処理には例えば導通判定処理、絶縁判定処理、および、欠陥判定処理が含まれる。
【0070】
導通判定処理の内容について例示する。縦端子対TLの間の導通状態が導通測定情報に基づいて判定される。これは、導通測定情報に基づく第1種端子対TAの間の導通状態の判定、および、第2種端子対TBの間の導通状態の判定を含む。一例では、全数の縦端子対TLについて導通状態が判定される。縦端子対TLの間の電流が第1基準電流以上である場合、または、縦端子対TLの間の抵抗が第1基準抵抗未満である場合、縦端子対TLの間が導通していると判定される。縦端子対TLの間の電流が第1基準電流未満である場合、または、縦端子対TLの間の抵抗が第1基準抵抗以上である場合、縦端子対TLの間が導通していないと判定される。縦端子対TLの間の導通状態に関する判定結果を含む情報を「導通判定情報」と称する。
【0071】
マイクロコントローラ510の記憶部は縦端子対TLの識別情報と導通判定情報とを関連付けて記憶する。個々の縦端子対TLには固有の識別情報が設定される。導通状態が判定された場合、判定対象の縦端子対TLに対応する導通判定情報が更新される。
【0072】
絶縁判定処理の内容について例示する。第3種端子対TCの間の絶縁状態が絶縁測定情報に基づいて判定される。一例では、全数の第3種端子対TCについて絶縁状態が判定される。第3種端子対TCの間の抵抗が第2基準抵抗以上である場合、または、第3種端子対TCの間の電流が第2基準電流未満である場合、第3種端子対TCの間が絶縁されていると判定される。第3種端子対TCの間の抵抗が第2基準抵抗未満である場合、または、第3種端子対TCの間の電流が第2基準電流以上である場合、第3種端子対TCの間が絶縁されていないと判定される。第3種端子対TCの間の絶縁状態に関する判定結果を含む情報を「絶縁判定情報」と称する。
【0073】
マイクロコントローラ510の記憶部は第3種端子対TCの識別情報と絶縁判定情報とを関連付けて記憶する。個々の第3種端子対TCには固有の識別情報が設定される。絶縁状態が判定された場合、判定対象の第3種端子対TCに対応する絶縁判定情報が更新される。
【0074】
欠陥判定処理の内容について例示する。第1分割溝P1の溝欠陥に関する状態が導通判定情報および絶縁判定情報に基づいて判定される。一例では、全数の第1分割溝P1について溝欠陥に関する状態が判定される。欠陥判定処理では、判定対象の第3種端子対TCの絶縁判定情報と、その第3種端子対TCに対応する第1種端子対TAの導通判定情報および第2種端子対TBの導通判定情報とが参照される。第1種端子対TAの間が導通し、第2種端子対TBの間が導通し、第3種端子対TCの間が絶縁されていない場合、判定対象の第3種端子対TCに対応する第1分割溝P1に溝欠陥が存在すると判定される。第1種端子対TAの間が導通し、第2種端子対TBの間が導通し、第3種端子対TCの間が絶縁されている場合、判定対象の第3種端子対TCに対応する第1分割溝P1に溝欠陥が存在しないと判定される。第1種端子対TAの間および第2種端子対TBの間の少なくとも一方が導通していない場合、判定対象の第3種端子対TCに対応する第1分割溝P1の溝欠陥に関する判定が保留される。溝欠陥に関する判定結果を含む情報を「欠陥判定情報」と称する。
【0075】
マイクロコントローラ510の記憶部は第1分割溝P1の識別情報と欠陥判定情報とを関連付けて記憶する。個々の第1分割溝P1には固有の識別情報が設定される。溝欠陥に関する状態が判定された場合、判定対象の第1分割溝P1の欠陥判定情報が更新される。溝欠陥に関する判定が保留された場合も判定対象の第1分割溝P1の欠陥判定情報が更新される。この場合の欠陥判定情報には、溝欠陥に関する判定が保留されたことを示す情報が含まれる。
【0076】
溝欠陥に関する判定処理の内容について整理する。
解析部F13は導通測定情報から第1種端子対TAの間および第2種端子対TBの間が導通していることが確認され、絶縁測定情報から第3種端子対TCの間が絶縁されていないことが確認される場合、第1分割溝P1に溝欠陥が存在すると判定する。
【0077】
解析部F13は導通測定情報から第1種端子対TAの間および第2種端子対TBの間が導通していることが確認され、絶縁測定情報から第3種端子対TCの間が絶縁されていることが確認される場合、第1分割溝P1に溝欠陥が存在しないと判定する。
【0078】
解析部F13は導通測定情報から第1種端子対TAの間および第2種端子対TBの間の少なくとも一方が導通していないことが確認される場合、第1分割溝P1の溝欠陥に関する判定を保留する。
【0079】
端末装置600はコントロールユニット500と有線通信または無線通信できるように通信機器を介してコントロールユニット500に接続される。コントロールユニット500は導通測定情報、絶縁測定情報、導通判定情報、絶縁判定情報、および、欠陥判定情報の少なくとも1つを含む検査情報を端末装置600に出力する。端末装置600は例えば検査情報に基づく情報をディスプレイに表示する。
【0080】
図15は被検査物Wに関する検査方法の一例を示す。
第1工程では、プローブユニット200が待機状態にセットされる。一例では、第1工程は次のように実行される。移送部110は各プローブユニット210、220の端子Tが被検査物Wに接触するようにプローブユニット200を被検査物Wに対して相対移動させる。第1プローブユニット210の各端子Tは各セル裏電極層61の第1端部S1に接触する。第2プローブユニット220の各端子Tは各セル裏電極層61の第2端部S2に接触する。第1工程が完了した状態では、全数のセル裏電極層61の各々について、第1端部S1に1本の端子Tが接触し、第2端部S2に1本の端子Tが接触する。
【0081】
第2工程では、コントロールユニット500は導通判定処理を実行する。一例では、第2工程は次のように実行される。コントロールユニット500は測定対象の縦端子対TLの間に測定用電流が流れるようにプローブユニット200のリレー回路211B、221Bの状態を第1接続状態に設定する。測定対象の縦端子対TLに含まれる第1プローブユニット210の端子Tおよび第2プローブユニット220の端子Tがそれぞれセル裏電極層61と導通している場合、測定対象の縦端子対TLの間に確認用電流が流れる。コントロールユニット500は測定対象の縦端子対TLを順番に切り替える。計測器300は導通測定情報をコントロールユニット500に出力する。コントロールユニット500は導通測定情報に基づいて縦端子対TLの間の導通状態を判定する。第2工程が完了した状態では、全数の縦端子対TLについて導通判定情報が得られる。
【0082】
導通していない縦端子対TL(以下「非導通の縦端子対TL」という)が存在する場合、導通判定処理により非導通の縦端子対TLが検出される。非導通の縦端子対TLでは、少なくとも一方の端子Tがセル裏電極層61に電気的に接続されていない。端子Tがセル裏電極層61に電気的に接続されない原因には、例えば次の第1~第3原因の少なくとも1つが含まれる。第1原因では、縦端子対TLの少なくとも一方の端子Tがセル裏電極層61から離れた位置にあり、その端子Tがセル裏電極層61に接触していない。第2原因では、縦端子対TLの少なくとも一方の端子Tの表面に異物が存在し、その端子Tがセル裏電極層61に接触していない。端子Tの表面に存在する異物には例えば、端子Tの表面に形成された酸化膜、および、端子Tに付着した汚れ等が含まれる。第3原因では、第1種端子対TAの少なくとも一方の端子Tが焼損している。
【0083】
第3工程では、コントロールユニット500は絶縁判定処理を実行する。一例では、第3工程は次のように実行される。コントロールユニット500は測定対象の第3種端子対TCの間に測定用電流が流れるようにプローブユニット200のリレー回路211B、221Bの状態を第2接続状態に設定する。測定対象の第3種端子対TCの間が絶縁されている場合、第3種端子対TCの間には測定用電流が流れない。コントロールユニット500は測定対象の第3種端子対TCを順番に切り替える。計測器300は絶縁測定情報をコントロールユニット500に出力する。コントロールユニット500は絶縁測定情報に基づいて第3種端子対TCの間の絶縁状態を判定する。第3工程が完了した状態では、全数の第3種端子対TCについて絶縁判定情報が得られる。
【0084】
第4工程では、コントロールユニット500は欠陥判定処理を実行する。一例では、第4工程は次のように実行される。コントロールユニット500は導通判定情報および絶縁判定情報に基づいて判定対象の第1分割溝P1の溝欠陥について判定する。第4工程が完了した状態では、全数の第1分割溝P1について欠陥判定情報が得られる。
【0085】
第5工程では、コントロールユニット500は通電処理を実行する。一例では、第5工程は次のように実行される。コントロールユニット500は通電対象の第3種端子対TCの間に除去用電流が流れるようにプローブユニット200のリレー回路211B、221Bの状態を第3接続状態に設定する。除去用電流は残存部Rの除去に適した高電流である。除去用電流は測定用電流よりも高い。通電対象の第3種端子対TCに対応する第1分割溝P1に残存部Rが存在する場合、第3種端子対TCの間に除去用電流が流れる。除去用電流が流れることにともない残存部Rが蒸発する場合がある。横方向に隣接するセル裏電極層61を接続する残存部Rが蒸発する場合、隣接するセル裏電極層61が第1分割溝P1により絶縁される。コントロールユニット500は通電対象の第3種端子対TCを順番に切り替える。
【0086】
溝欠陥を含む裏電極対Eを「欠陥電極対」と称する。溝欠陥を含まない裏電極対Eを「正常電極対」と称する。欠陥電極対の絶縁抵抗は正常電極対の絶縁抵抗よりも低い。通電処理により欠陥電極対の残存部Rが除去された場合、その電極対の絶縁抵抗が高くなる。一例では、欠陥電極対から正常電極対に遷移した裏電極対Eの絶縁抵抗と、当初から存在する正常電極対の絶縁抵抗とは実質的に等しい。
【0087】
第6工程では、コントロールユニット500は絶縁判定処理を再度実行する。一例では、第6工程は次のように実行される。コントロールユニット500は測定対象の第3種端子対TCの間に測定用電流が流れるようにプローブユニット200のリレー回路211B、221Bの状態を第2接続状態に設定する。コントロールユニット500は測定対象の第3種端子対TCを順番に切り替える。計測器300は絶縁測定情報をコントロールユニット500に出力する。コントロールユニット500は絶縁測定情報に基づいて第3種端子対TCの間の絶縁状態を判定する。第6工程が完了した状態では、全数の第3種端子対TCについて絶縁判定情報が得られる。
【0088】
第7工程では、コントロールユニット500は欠陥判定処理を再度実行する。一例では、第7工程は次のように実行される。コントロールユニット500は導通判定情報および絶縁判定情報に基づいて判定対象の第1分割溝P1の溝欠陥について判定する。第7工程が完了した状態では、全数の第1分割溝P1について欠陥判定情報が得られる。
【0089】
被検査物Wの検査方法は図15の検査方法とは異なる内容を取り得る。第1例の検査方法は第5~第7工程を含まない。第2例の検査方法は第6および第7工程を含まない。第3例の検査方法は第5工程とは別に、第2工程の実行後に通電処理を実行する。第4例の検査方法は第5工程とは別に、第3工程の実行後に通電処理を実行する。第5例の検査方法は第5工程とは別に、第6工程の実行後に通電処理を実行する。第6例の検査方法は第5工程とは別に、第7工程の実行後に通電処理を実行する。第7例の検査方法は第3~第6例の内容の少なくとも2つを含む。第8例の検査方法では、第3~第7例のいずれかの検査方法において第5工程を省略する。
【0090】
第9例の検査方法は第8工程および第9工程をさらに含む。第8工程は第2工程と第3工程との間に実行される。第2工程の導通判定処理では、非導通の縦端子対TLが検出される。非導通の縦端子対TLが存在する場合、絶縁判定処理において、隣接するセル裏電極層61が第1分割溝P1により絶縁されていることを正確に検出できない場合がある。非導通の縦端子対TLが存在する場合、通電処理において、残存部Rが除去されない場合がある。導通判定情報は絶縁判定処理および通電処理が適切に実行されるか否かを確認する情報として利用できる。
【0091】
第8工程では、コントロールユニット500は導通判定情報を参照し、非導通の縦端子対TLの数が所定数以上か否かを判定する。所定数は1以上の整数である。非導通の縦端子対TLの数が所定数未満の場合、第3工程が実行される。非導通の縦端子対TLの数が所定数以上の場合、第9工程が実行される。第9工程では、コントロールユニット500は所定の表示装置に案内情報を出力させる。案内情報は例えば、非導通の縦端子対TLが含まれることを示す情報、プローブユニット200の再セットを案内する情報、および、プローブユニット200の状態に関する検査の実行を案内する情報の少なくとも1つを含む。表示装置には例えば端末装置600が含まれる。
【0092】
なお、上記実施形態の説明は本発明に関する太陽電池の検査装置および検査装置が取り得る形態を制限することを意図していない。本発明に関する太陽電池の検査装置および検査装置は実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。
【符号の説明】
【0093】
10 :太陽電池
100:検査装置
F11:測定部
F13:解析部
F15:除去部
TA :第1種端子対
TB :第2種端子対
TC :第3種端子対
P :分割溝
P11:第1側部
P12:第2側部
E1 :第1セル裏電極層
E2 :第2セル裏電極層
S1 :第1端部
S2 :第2端部
図1
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