(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】熱線センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 5/12 20060101AFI20231207BHJP
G01N 25/18 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01P5/12 C
G01N25/18 J
(21)【出願番号】P 2020008756
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】魚矢 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】坂元 康朗
(72)【発明者】
【氏名】上原 元秀
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岩野 耕治
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-165731(JP,A)
【文献】特開2013-15376(JP,A)
【文献】特開2015-21946(JP,A)
【文献】特開昭56-79258(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113280996(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/00- 5/26
G01F 1/68- 1/699
G01N25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れの場に配置され、前記流体の流速を含む複数の物理量を計測するための熱線センサであって、
第1基板、及び前記第1基板の一面上に形成された第1導電部と接続された第1熱線、を含む第1プリント基板と、
前記第1基板と対向して配置される第2基板、及び前記第2基板の一面上に形成された第2導電部と接続された第2熱線、を含む第2プリント基板と、
前記第2基板とは反対側にて前記第1基板と対向して配置される第3基板、及び前記第3基板の一面上に形成された第3導電部と接続された第3熱線、を含む第3プリント基板と、
前記第1基板とは反対側にて前記第2基板と対向して配置される第4基板、及び前記第4基板の一面上に形成された第4導電部と接続された第4熱線、を含む第4プリント基板と、を備え、
前記第1熱線及び前記第2熱線は、前記流体の流速を計測するように構成され、
前記第3熱線及び前記第4熱線は、前記流体の流速以外の他の物理量を計測するように構成され、
前記第1熱線及び前記第2熱線は、前記第1基板の前記一面に対して直交する方向に沿って視認した場合に、互いに交差するように配置される熱線センサ。
【請求項2】
前記第3熱線及び前記第4熱線は、前記第1基板の前記一面に対して直交する方向に沿って視認した場合に、前記第1熱線及び前記第2熱線の交差する位置よりも前記流体の流れ方向の下流側に配置される請求項1に記載の熱線センサ。
【請求項3】
前記第3熱線及び前記第4熱線は、前記第1基板と前記第2基板との間の中心に位置する仮想平面に対して対称となる位置に配置される請求項1又は2に記載の熱線センサ。
【請求項4】
前記第1基板の前記一面と、前記第2基板の前記一面とが互いに対向するように配置される請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱線センサ。
【請求項5】
前記第1基板、前記第2基板、前記第3基板、および前記第4基板の各々は、
前記各々の基板上を延在する基準線に沿って形成される凹部を有する二股状に形成された腕部と、
前記基準線に対して一方側に寄せられるように形成された胴部と、を含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱線センサ。
【請求項6】
前記第1基板の前記一面と前記第2基板の前記一面とが互いに対向するように配置され、
前記第1基板の他面と前記第3基板の他面とが互いに対向するように配置され、
前記第2基板の他面と前記第4基板の他面とが互いに対向するように配置される請求項5に記載の熱線センサ。
【請求項7】
前記第1基板、前記第2基板、前記第3基板、および前記第4基板の各々は、互いに接着剤で接合されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れ場に配置された金属細線を通電加熱し、その熱伝達の変化(抵抗値の変化)によって流体の流速その他の物理量を計測する熱線センサが、乱流研究などのツールとして用いられている。特許文献1には、気体の流れ場に2本の熱線を互いに平行に配置し、気体の濃度及び速度を同時測定可能な熱線センサ(以下「二本熱線センサ」とも言う。)が開示されている。非特許文献1には、上記二本熱線センサについての記載に加えて、2本の熱線を交差するようにX形に配置することで、気体の2方向の流速成分を同時計測可能にしたX型熱線センサが開示されている。非特許文献1には、さらに、上記二本熱線センサを上記X型熱線センサを構成する2本の熱線の間に配置した4本の熱線を備えることで機能を拡大した熱線センサ(以下「四本熱線センサ」とも言う。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】日本機械学会論文集(B編)77巻775号(2011-3) 著者;酒井康彦、長田孝二、久保貴、市野修平、堀内健二「熱線を用いたCO2軸対称噴流拡散場の二成分瞬間速度・瞬間濃度の同時計測」(論文No.10-0419)P.85-94
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び非特許文献1に開示されたいくつかの熱線センサの各々は、いずれも微小なミクロン単位の寸法を有する熱線を針状のプロングの先端に取り付ける必要があるため、これらの熱線センサの製作には精密な作業を必要とする。また、上述の四本熱線センサは、X型熱線センサを構成する2本の熱線の間に二本熱線センサを構成する2本の熱線を配置し、かつ外側の2本の熱線に対して内側の2本の熱線を直交する方向に配置するため、コンパクト化できない。そのため、外側の2本の熱線の間隔が広くなるため、外側の2本の熱線の計測位置が曖昧になり、位置分解能が低下するという問題がある。
【0006】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、製作が容易でかつコンパクト化が可能な熱線センサを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る熱線センサは、流体の流れの場に配置され、前記流体の流速を含む複数の物理量を計測するための熱線センサであって、第1基板、及び前記第1基板の一面上に形成された第1導電部と接続された第1熱線、を含む第1プリント基板と、前記第1基板と対向して配置される第2基板、及び前記第2基板の一面上に形成された第2導電部と接続された第2熱線、を含む第2プリント基板と、前記第2基板とは反対側にて前記第1基板と対向して配置される第3基板、及び前記第3基板の一面上に形成された第3導電部と接続された第3熱線、を含む第3プリント基板と、前記第1基板とは反対側にて前記第2基板と対向して配置される第4基板、及び前記第4基板の一面上に形成された第4導電部と接続された第4熱線、を含む第4プリント基板と、を備え、前記第1熱線及び前記第2熱線は、前記流体の流速を計測するように構成され、前記第3熱線及び前記第4熱線は、前記流体の流速以外の他の物理量を計測するように構成され、前記第1熱線及び前記第2熱線は、前記第1基板の前記一面に対して直交する方向に沿って視認した場合に、互いに交差するように配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る熱線センサによれば、製造が容易でコンパクト化が可能であり、かつ適正な流速値を計測可能であって、位置分解能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る熱線センサの斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る熱線センサの正面図である。
【
図4】一実施形態に係る熱線センサの側面図である。
【
図5】一実施形態に係る熱線センサの一部拡大側面図である。
【
図6】一実施形態に係るプリント基板の正面図である。
【
図7】一実施形態に係る別なプリント基板の正面図である。
【
図8】一実施形態に係る熱線部の正面視模式図である。
【
図9】一実施形態に係る熱線部の正面視模式図である。
【
図10】一実施形態に係る熱線部の側面視模式図である。
【
図11】一実施形態に係る熱線センサの製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されているか、又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
<熱線センサの構成>
図1は、一実施形態に係る熱線センサ10を示す斜視図であり、
図2は同じく正面図であり、
図3は同じく
図2中のA―A線に沿う断面図であり、
図4は同じく側面図である。熱線センサ10は、主流が矢印a方向に流れる流体Fの流れの場に配置され、流体Fの流速を含む複数の物理量を計測可能に構成されている。熱線センサ10は、第1プリント基板12、第2プリント基板14、第3プリント基板16及び第4プリント基板18で構成され、これらのプリント基板は、互いに対向して配置される。
図1及び
図2に示すように、流体Fの主流の流れ方向aに対し、熱線センサ10は流体Fの流速を含む複数の物理量を計測可能に配置される。
【0012】
第1プリント基板12は、第1基板20と、第1基板20の一方の面に形成された第1導電部22と、第1導電部22に接続された第1熱線24とで構成されている。第2プリント基板14は、第1基板20と対向して配置される第2基板26と、第2基板26の一方の面に形成された第2導電部28と、第2導電部28に接続された第2熱線30とで構成されている。第3プリント基板16は、第2基板26とは反対側で第1基板20と対向して配置される第3基板32と、第3基板32の一方の面に形成された第3導電部34と、第3導電部34に接続された第3熱線36とで構成されている。第4プリント基板18は、第1基板20とは反対側で第2基板26と対向して配置される第4基板38と、第4基板38の一方の面に形成された第4導電部40と、第4導電部40と接続された第4熱線42とで構成されている。
【0013】
第1~第4熱線24、30、36及び42は、ミクロン単位の長さを有する金属細線で構成される。従って、熱線が取り付けられる基板の板厚もミクロン単位とすることができ、これによって、熱線センサ10をコンパクト化できる。これら熱線に導電部を介して通電することで熱線が加熱される。熱線は流体Fの冷却作用によって温度変化し、温度変化によって熱線の電気抵抗が変わる性質を利用し、予め把握済みの電気抵抗と測定対象となる物理量との関係性を参照して、流体Fの流速その他の物理量(後述する濃度や湿度など)を計測できる。
【0014】
このような構成によれば、4つの第1~第4基板20、26、32及び38の各々に第1~第4導電部22、28、34及び40を形成するため、第1~第4熱線24、30、36及び42に通電するための導電部の形成が容易になる。また、上記4つの基板を対向配置して4つの熱線を所定の位置に組み合わせる場合に、MEMS技術を活用することで、ミクロン単位の精密な作業を比較的容易に行うことができると共に、微小肉厚の基板を対向配置して構成するため、コンパクト化が可能になる。また、第1プリント基板12と第2プリント基板14とを対向して配置するため、第1熱線24及び第2熱線30を隣接して配置でき、これによって、流体Fの流れ場における第1熱線24及び第2熱線30の計測位置が曖昧とならず、位置分解能を高めることができる。さらに、第1プリント基板12及び第2プリント基板14を挟んでこれらの外側に第3プリント基板16及び第4プリント基板18を対向して配置するので、計測場において流体Fの流れの対称性を確保でき、これによって、外乱の少ない適正な流速値を計測できる。
【0015】
比較例として、本発明者等は、第3プリント基板16又は第4プリント基板18の一方を除去した熱線センサ10で計測を試行したが、適正な計測値を得ることができなかった。この原因は、プリント基板の配置が非対称となったため、流体Fの流れに非対称性が発生したことにあると推定された。これに対し、上記実施形態では、上述したように、第1プリント基板12及び第2プリント基板14を挟んでこれらの外側に第3プリント基板16及び第4プリント基板18を対向したので、上記不具合いを解消できた。
【0016】
一実施形態では、
図3及び
図4に示すように、第1基板20、第2基板26、第3基板32及び第4基板38は、互いに接着剤44で接合されている。これによって、複数の基板を接着剤44を用いて容易に積層でき、熱線センサ10を容易に製造できる。また、接着剤44として絶縁性の接着剤を用いれば、各基板に形成された導電部間の絶縁状態を保持できる。
【0017】
一実施形態では、
図5に示すように、第1基板20、第2基板26、第3基板32及び第4基板38はシリコンウエハなどの絶縁性材料で構成され、各基板の一方の面に第1導電部22、第2導電部28、第3導電部34及び第4導電部40が形成される。各基板が薄板状に形成され、各基板に形成される導電部が薄膜状に形成されることで、各プリント基板をコンパクト化でき、これによって、熱線センサ10をコンパクト化できる。
【0018】
図6は一実施形態に係る第1プリント基板12又は第2プリント基板14を示し、
図7は一実施形態に係る第3プリント基板16又は第4プリント基板18を示す。第1基板20、第2基板26、第3基板32及び第4基板38は、夫々各基板の面に沿って延在する基準線rに沿って形成される凹部dを有する二股状に形成された腕部46と、基準線rに対して一方側に寄せられるように形成された胴部48と、を含む。このように、二股状に形成された腕部46に熱線を架設することで、熱線の精密な取付けが容易になる。また、胴部48が基準線rに対して一方側に寄せられるため、胴部48に形成された導電部が基板の中心部から離れた位置に配置される。これによって、導電部に導電線を接続して通電する場合、導電部に導電線を接続する作業が容易になる。
【0019】
一実施形態では、
図6及び
図7に示すように、基準線rは二股状に形成された腕部46の夫々の内側縁47の間の中心に配置される。
【0020】
一実施形態では、
図6及び
図7に示すように、腕部46は2つに分離した二股部46aと二股部46aを連結する連結部46bとを含む。一実施形態では、胴部48は連結部46bに連なり基準線rから左右に斜向する斜向部48aと、基準線rから左右に寄せられた片寄り部48bとを含む。片寄り部48bに導電線(不図示)が接続される。各基板は連結部46b及び斜向部48aに介在する接着剤44によって接合される。
図6に示すように、第1基板20及び第2基板26は、2つに分離した二股部46aの高さが異なる。これによって、二股部46aに架設される第1熱線24及び第2熱線30を互いに交差する方向に配置できる。
図7に示すように、第3基板32及び第4基板38は、2つに分離した二股部46aの高さが同一である。これによって、二股部46aに架設される第3熱線36及び第4熱線42を互いに平行な方向(基準線rに対して直交する方向)に配置できる。
【0021】
(熱線の構成)
図8~
図10は、幾つかの実施形態に係る第1熱線24、第2熱線30、第3熱線36及び第4熱線42の配置を示す図である。
図8及び
図9は、第1基板20の一方又は他方の面に対して直交する方向に沿って視認した図であり、
図10は、第1基板20の一方又は他方の面に沿う方向から視認した図である。第1熱線24及び第2熱線30は、流体Fの流速を計測するように構成され、
図8及び
図9に示すように、第1基板20の一方又は他方の面に対して直交する方向に沿って視認した場合に、互いに交差するように配置される。即ち、第1熱線24及び第2熱線30は、
図10に示すように、夫々第1基板20の一方又は他方の面に平行な面(後述する仮想平面Pvと平行な面)上に配置される。これによって、流体Fの主流の流れ方向aの速度成分U及び速度成分Uに直交しかつ第1基板20の一方又は他方の面に沿う方向の速度成分Vを計測可能になる。
【0022】
一方、第3熱線36及び第4熱線42は流体Fの流速以外の他の物理量、例えば、流れ場の温度、濃度又は湿度等を計測するように構成され、
図8~
図10に示すように、第1基板20の一方又は他方の面と平行な面上に配置される。これによって、流体Fの流速以外の他の物理量、例えば、流体Fの流れ場の温度、濃度又は湿度等を計測可能になる。
【0023】
一実施形態では、
図8及び
図9に示すように、二股状に形成された腕部46は基準線rに対して左右対称に配置される。また、一実施形態では、第3熱線36及び第4熱線42は、速度成分Vと平行な方向(基準線rに対して直交する方向)に配置される。
【0024】
一実施形態では、
図8及び
図9に示すように、第1熱線24及び第2熱線30は、第1基板20の一面に対して直交する方向に沿って視認したとき、第1熱線24及び第2熱線30の中点Mで交差するように配置される。また、中点Mを通る基準線rに対して対称に配置され、かつ基準線rに対する傾斜角Φ
1及びΦ
2が等しくなるように配置される。これによって、適正な流速値を計測できる。例えば、一例として、傾斜角Φ
1及びΦ
2を45°とする。
【0025】
一実施形態では、
図8及び
図9に示すように、第3熱線36及び第4熱線42は、第1基板20の一面に対して直交する方向に沿って視認した場合に、第1熱線24及び第2熱線30の交差する位置(中点M)よりも流体Fの流れ方向の下流側に配置される。これによって、第1熱線24及び第2熱線30の流れの計測場において、第3熱線36及び第4熱線42の存在による流れの乱れを抑制できる。従って、第1熱線24及び第2熱線30によって外乱が少ない適正な流速値を計測できる。
【0026】
図8に示す実施形態では、第1基板20の一面に対して直交する方向に沿って視認したとき、第3熱線36及び第4熱線42は中点Mを通るように配置される。
図9に示す実施形態では、第3熱線36及び第4熱線42は第1熱線24又は第2熱線30の最下流側端を通るように配置される。なお、
図8に示す実施形態によれば、4個の熱線の計測場を極めて近接できるので、計測位置が曖昧にならず速度計測の位置分解能を向上できる。
【0027】
一実施形態では、
図5に示すように、第3熱線36及び第4熱線42は、第1基板20と第2基板26との間の中心に位置する仮想平面Pvに対して対称となる位置に配置される。このように、第3熱線36及び第4熱線42が仮想平面Pvに対して対称となる位置に配置されるため、第1熱線24及び第2熱線30の流れの計測場において、仮想平面Pvを中心とした流れの対称性を確保できるため、適正な流速値を計測できる。
【0028】
一実施形態では、
図5に示すように、第1基板20のうち第1導電部22が形成された面と、第2基板26のうち第2導電部28が形成された面とが互いに対向するように配置される。これによって、第1熱線24と第2熱線30とが近接した位置に配置されるため、計測位置が曖昧にならず速度計測の位置分解能を向上できる。
【0029】
一実施形態では、
図5に示すように、第1基板20のうち第1導電部22が形成された面と、第2基板26のうち第2導電部28が形成された面とが互いに対向するように配置される。また、第1基板20の第1導電部22が形成されない面と、第3基板32の第3導電部34が形成されない面とが互いに対向するように配置される。さらに、第2基板26の第2導電部28が形成されない面と、第4基板38の第4導電部40が形成されない面とが互いに対向するように配置される。
【0030】
このような構成によれば、上述したように、第1熱線24と第2熱線30とが近接した位置に配置されるため、速度計測の位置分解能を向上できる。また、互いに対向配置される第1基板20と第2基板26との間、第1基板20と第3基板32との間、及び第2基板26と第4基板38との間で導電部を各基板の中心部から左右に離れた位置に配置できる。これによって、各基板に形成された導電部に導電線を接続するのが容易になる。
【0031】
図1に示す実施形態では、第1基板20と第2基板26とは同一の大きさ及び形状を有し、同一の構成を有する。これによって、第1基板20及び第2基板26の製造を簡素化できる。また、第1基板20のうち第1導電部22が形成された面と、第2基板26のうち第2導電部28が形成された面とが互いに対向するように配置されたとき、第1基板20及び第2基板26の片寄り部48bは基準線rから互いに逆方向に片寄って配置される。従って、導電部への導電線の接続が容易になる。
また、
図1に示す実施形態では、第3基板32と第4基板38とは同一の大きさ及び形状を有し、同一の構成を有する。これによって、第3基板32及び第4基板38の製造を簡素化できる。
【0032】
図6に示す第1基板20又は第2基板26と、
図7に示す第3基板32又は第4基板38とは、導電部が形成された面側から視認したとき、片寄り部48bが基準線rに対して互いに逆方向に片寄るように構成されているが、第1~第4基板の片寄り部48bを基準線rに対して同一方向へ片寄るように構成してもよい。これによって、第1~第4基板を
図1に示すように配置したとき、各基板の片寄り部48bが基準線rに対して交互に逆方向に片寄るので、導電部への導電線の接続がさらに容易になる。
【0033】
(熱線センサの製造方法)
一実施形態に係る熱線センサ10の製造方法は、
図11に示すように、まず、第1基板20、第2基板26、第3基板32及び第4基板38を準備する(準備ステップS10)。その後、これら基板の各々の一面上に夫々第1導電部22、第2導電部28、第3導電部34及び第4導電部40を形成する(導電部形成ステップS12)。次に、導電部が形成された第1~第4基板20、26、32及び38の各々を切削し、薄板状の基板に薄膜状の導電部を形成する(基板切削ステップS14)。さらに、切削された第1~第4基板20、26、32及び38を例えば接着剤などを用いて積層する(基板積層ステップS16)。
【0034】
このような構成によれば、4つの基板の各々に導電部を形成するため、熱線に通電するための導電部の形成が容易になる。また、上記4つの基板を対向配置して4つの熱線を所定の位置に組み合わせる場合に、MEMS技術を活用することで、ミクロン単位の精密な作業を比較的容易に行うことができると共に、微小肉厚の基板を対向配置して構成するため、コンパクト化が可能になる。また、積層された4つの基板に夫々熱線を取り付けるため、各熱線を近接配置でき、これによって、計測位置が曖昧にならず速度計測の位置分解能を向上できる。さらに、流体の流れ場に4つの基板を積層して配置するので、計測場で流れの対称性を確保でき、これによって、外乱が少ない適正な計測値を得ることができる。
【0035】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0036】
(1)一の態様に係る熱線センサ(10)は、流体(F)の流れの場に配置され、前記流体の流速を含む複数の物理量を計測するための熱線センサであって、第1基板(20)、及び前記第1基板の一面上に形成された第1導電部(22)と接続された第1熱線(24)、を含む第1プリント基板(12)と、前記第1基板と対向して配置される第2基板(26)、及び前記第2基板の一面上に形成された第2導電部(28)と接続された第2熱線(30)、を含む第2プリント基板(14)と、前記第2基板とは反対側にて前記第1基板と対向して配置される第3基板(32)、及び前記第3基板の一面上に形成された第3導電部(34)と接続された第3熱線(36)、を含む第3プリント基板(16)と、前記第1基板とは反対側にて前記第2基板と対向して配置される第4基板(38)、及び前記第4基板の一面上に形成された第4導電部(40)と接続された第4熱線(42)、を含む第4プリント基板(18)と、を備え、前記第1熱線及び前記第2熱線は、前記流体の流速を計測するように構成され、前記第3熱線及び前記第4熱線は、前記流体の流速以外の他の物理量を計測するように構成され、前記第1熱線及び前記第2熱線は、前記第1基板の前記一面に対して直交する方向に沿って視認した場合に、互いに交差するように配置される。
【0037】
このような構成によれば、4つの基板の各々に導電部を形成するため、熱線に通電するための導電部の形成が容易になる。また、4つの基板を対向配置して熱線センサを製造するため、精密な作業を必要とせず、かつコンパクト化が可能になる。また、第1プリント基板と第2プリント基板とを対向して配置するため、第1熱線及び第2熱線を隣接して配置でき、これによって、流れ場における第1熱線及び第2熱線の計測位置が曖昧とならず、位置分解能を高めることができる。さらに、第1プリント基板及び第2プリント基板を挟んでこれらの外側に第3プリント基板及び第4プリント基板を対向して配置するので、計測場において流体の流れの対称性を確保でき、これによって、外乱の少ない適正な流速値を計測できる。
【0038】
(2)別な態様に係る熱線センサは、(1)に記載の熱線センサであって、前記第3熱線及び前記第4熱線は、前記第1基板の前記一面に対して直交する方向に沿って視認した場合に、前記第1熱線及び前記第2熱線の交差する位置よりも前記流体の流れ方向(a)の下流側に配置される。
【0039】
このような構成によれば、第3熱線及び第4熱線が第1熱線及び第2熱線の交差する位置よりも流体の流れ方向の下流側に配置されるため、第1熱線及び第2熱線の計測場において、第3熱線及び第4熱線の存在による流れの乱れが抑制される。従って、第1熱線及び第2熱線によって外乱の少ない適正な流速値を計測できる。
【0040】
(3)さらに別な態様に係る熱線センサは、(1)又は(2)に記載の熱線センサであって、前記第3熱線及び前記第4熱線は、前記第1基板と前記第2基板との間の中心に位置する仮想平面(Pv)に対して対称となる位置に配置される。
【0041】
このような構成によれば、第3熱線及び第4熱線は上記仮想平面に対して対称となる位置に配置されるため、第1熱線及び第2熱線の計測場において、上記仮想平面を中心とした流れの対称性を確保できるため、適正な流速値を計測できる。
【0042】
(4)さらに別な態様に係る熱線センサは、(1)乃至(3)の何れかに記載の熱線センサであって、前記第1基板の前記一面と、前記第2基板の前記一面とが互いに対向するように配置される。
【0043】
このような構成によれば、夫々導電部及び熱線が設けられた第1基板の一面と第2基板の一面とが互いに対向するように配置されるので、第1熱線と第2熱線とをさらに近接した位置に配置できる。従って、速度計測の位置分解能を向上できる。
【0044】
(5)さらに別な態様に係る熱線センサは、(1)乃至(4)の何れかに記載の熱線センサであって、前記第1基板、前記第2基板、前記第3基板、および前記第4基板の各々は、前記各々の基板上を延在する基準線(r)に沿って形成される凹部(d)を有する二股状に形成された腕部(46)と、前記基準線に対して一方側に寄せられるように形成された胴部(48)と、を含む。
【0045】
このような構成によれば、二股状に形成された腕部間に熱線を架設することで、熱線の取付けが容易になる。また、胴部が上記基準線に対して一方側に寄せられるため、胴部に形成された導電部が基板の中心部から離れた位置に配置される。これによって、導電部に導電線を接続する作業が容易になる。
【0046】
(6)さらに別な態様に係る熱線センサは、(5)に記載の熱線センサであって、前記第1基板の前記一面と前記第2基板の前記一面とが互いに対向するように配置され、前記第1基板の他面と前記第3基板の他面とが互いに対向するように配置され、前記第2基板の他面と前記第4基板の他面とが互いに対向するように配置される。
【0047】
このような構成によれば、第1基板の第1熱線が形成された面と第2基板の第2熱線が形成された面とが対向して配置されるため、第1熱線と第2熱線とが互いに近接した位置に配置され、これによって、速度計測の位置分解能を向上できる。また、互いに対向配置される第1基板と第2基板との間、第1基板と第3基板との間、及び第2基板と第4基板との間で導電部を各基板の中心部から左右に離れた位置に配置できる。これによって、各基板に形成された導電部に導電線を接続するのが容易になる。
【0048】
(7)さらに別な態様に係る熱線センサは、(1)乃至(6)の何れかに記載の熱線センサであって、前記第1基板、前記第2基板、前記第3基板、および前記第4基板の各々は、互いに接着剤で接合されている。
【0049】
このような構成によれば、複数の基板を接着剤(44)を用いて容易に積層できる。また、接着剤として絶縁性の接着剤を用いることで、各基板に形成された導電部間の絶縁状態を保持できる。
【0050】
(8)一態様に係る熱線センサの製造方法は、流体の流れの場に配置され、前記流体の流速を含む複数の物理量を計測するための熱線センサの製造方法であって、第1基板、第2基板、第3基板、および第4基板を準備するステップ(S10)と、前記第1基板、前記第2基板、前記第3基板、および前記第4基板の各々の一面上に導電部を形成するステップ(S12)と、前記導電部が形成された前記第1基板、前記第2基板、前記第3基板、および前記第4基板の各々を切削するステップ(S14)と、切削された前記第1基板、前記第2基板、前記第3基板、および前記第4基板を積層するステップ(S16)と、を備える。
【0051】
このような構成によれば、4つの基板の各々に導電部を形成するため、熱線に通電するための導電部の形成が容易になる。また、上記4つの基板を対向配置して4つの熱線を所定の位置に組み合わせる場合に、MEMS技術を活用することで、ミクロン単位の精密な作業を比較的容易に行うことができると共に、微小肉厚の基板を対向配置して構成するため、コンパクト化が可能になる。4つの基板を積層して熱線センサを製造するため、精密な作業を必要としない。さらに、熱線センサは積層された4つの基板で構成されるのでコンパクト化が可能になる。
【符号の説明】
【0052】
10 熱線センサ
12 第1プリント基板
14 第2プリント基板
16 第3プリント基板
18 第4プリント基板
20 第1基板
22 第1導電部
24 第1熱線
26 第2基板
28 第2導電部
30 第2熱線
32 第3基板
34 第3導電部
36 第3熱線
38 第4基板
40 第4導電部
42 第4熱線
44 接着剤
46 腕部
48 胴部
F 流体
M 中点
Pv 仮想平面
U、V 速度成分
a 流れ方向
d 凹部
r 基準線
Φ1、Φ2 傾斜角