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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】入浴支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20231207BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61H33/00 310N
A47K3/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020040877
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021141966
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】519153165
【氏名又は名称】スターデジタル通信株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144277
【弁理士】
【氏名又は名称】乙部 孝
(72)【発明者】
【氏名】下島 生午
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-194668(JP,A)
【文献】実開昭58-016125(JP,U)
【文献】特開平06-165810(JP,A)
【文献】特開2001-276165(JP,A)
【文献】特開2001-299865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0262966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の入浴を支援する入浴支援装置であって、
浴槽中で前記要介護者を浮力で支えるエアーマットと、
前記エアーマットの送排気を行うエアーポンプと、
前記エアーマットに一端を接続される第1エアーチューブと、
前記第1エアーチューブの他端と前記エアーポンプの間に配置されたそれぞれ3個の接続口を有する3つの電磁バルブと、
前記電磁バルブを制御する制御器と、を備え、
前記制御器により3つの電磁バルブが、それぞれその第3接続口と第1接続口又は第2接続口との開通・閉塞の何れかを選択し、
前記第1エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの第1接続口へ接続されるとともに第3接続口の先の経路が二つに分かれ、
前記経路の一方が第2の前記電磁バルブの第1接続口又は第2接続口へ接続されるとともに第3接続口が前記エアーポンプの排気口へ接続され、
前記経路の他方が第3の前記電磁バルブの第1接続口又は第2接続口へ接続されるとともに第3接続口が前記エアーポンプの吸気口へ接続されることを特徴とする入浴支援装置。
【請求項2】
前記制御器が無線交信部を備え、無線を介した制御が行われることを特徴とする請求項1に記載の入浴支援装置。
【請求項3】
前記エアーマットがその上面に前記要介護者を載せる滑り止め安定板を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の入浴支援装置。
【請求項4】
前記滑り止め安定板又は前記エアーマットの複数個所へベルトバンドが取り付けられ、該ベルトバンドが浴槽又は浴室の壁へ固定されて、前記滑り止め安定板又は前記エアーマットが略水平に維持されることを特徴とする請求項3に記載の入浴支援装置。
【請求項5】
浴室の壁又は浴槽に前記要介護者の安全を確保するための安全バッグが設けられ、該安全バッグが空気によるクッション性を得る場合には該安全バッグへ第2エアーチューブの一端が接続され該第2エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの前記第2接続口へ接続されることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の入浴支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に支障があり一人では入浴できない状態の要介護者を、介護者が大きな負担なくお風呂に入浴させることができる入浴支援装置である。
【背景技術】
【0002】
医学の発展や最近の高齢化社会到来と共に、寝たきりの状態になって自力で体を動かすことができない状態の寝たきり老人や、身体の不自由な要介護者が増加の一途にある。しかしながら要介護者を受け入れることができる施設数もその数が限られており、益々施設数も不足する傾向にあることから、自宅で介護を行う人たちもこれから増加すると予測される。自宅での介護作業の中で要介護者の入浴について日本においてはシャワーだけの入浴とは異なり浴槽にゆっくりと浸かりたいとの希望が多いのが現状である。それを踏まえて要介護者を介護者の負担なく入浴を支援する器具などが開発・販売されているが、市販品の多くはとても大掛かりな装置となり、且つ販売価格がかなりの高価なことから、一般の家庭でのこれらの装置の購入は殆ど困難な状況である。その為一般家庭での介護に於いては、家族等の介護人2人掛かりで要介護者を抱えて浴槽に入浴させるなどの現状がある。しかしながら特に浴槽から要介護者の身体を上げる時などは、かなり大きな引き上げる力を必要とするので、介護者が腰を痛めるなど介護人や家族にとっては大きな負担となっている。既に特許公開されている入浴支援装置は圧縮空気を挿入及び排気をすることにより、要介護者の身体を浴槽内に沈めたり、浴槽内から持ち上げたりできるが、その仕組みが複雑であり、送風口と排気口が別々で2本のエアーチューブが存在していることと、エアーマットに空気を注入したり排気したりの制御システムが無いため依然として普及に至っていない現状が存在している。
【0003】
先行技術文献1には、入浴台車を使って要介護者を浴槽のエアーマットへ移動させる入浴システムが開示されているが、エアーマットの送排気については説明が無い。
【0004】
先行技術文献2には、エアーマットを用いた床づれ防止マットが開示されているがエアーマットの送排気には沢山のエアーチューブが使われていて構造が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-299865号公報
【文献】実開61-57924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のエアーマットと送気及び排気を行うエアーポンプとをつなぐエアーチューブは送気と排気に別のエアーチューブを使っている。2本のエアーチューブはかさばるので要介護者を入浴させる環境下では好ましくない状態である。従ってこのエアーチューブを1本にする課題を解決する必要がある。そしてこの問題の解決には空気の流れを制御する技術が必然的に必要になるため、エアーマットに空気を注入する動作と、エアーマットに空気を密封する動作と、エアーマットから空気を排出する動作を簡便にコントロールできる仕組みの実現が望まれる。
【0007】
また、浴室内で要介護者の入浴を支援している介護者は、常に要介護者に対して注意を払い、手を差し伸べていなくてはいけない環境から、介護者は要介護者から離れてエアーマットに空気を出し入れする為のエアーポンプが配置されている主装置には近づくことができないため、エアーポンプの稼動のオン・オフが難しい課題の解決が必要である。介護者は要介護者の身体を洗うなどの動作を行うため、首掛けペンダント型の遠隔リモコンは動作の妨げになったりするので、お湯が掛かっても故障せず要介護者支援に邪魔にならない防水機能が必要なリモコン装置を実現する課題が存在する。また一般的な赤外線リモコンは方向性があることと、遮蔽物があると機能しないという問題を解決する必要がある。
【0008】
さらに要介護者を浴槽に乗せる時や、入浴の最中には要介護者は動けないため、身体の頭部が重たい理由から、要介護者の身体は不安定となり倒れる可能性がある。常に介護者は要介護者の身体を支えているが、万が一倒れた場合を想定して、要介護者が浴室の壁に頭部をぶつけて怪我をしない対策や、入浴時に身体が沈んで溺れることを防止する対策を取る課題が残る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために装置自体を簡略化し、エアーマットの送排気を行うために使用されるエアーチューブを1本化するために、空気バルブを使用した空気の流れの制御を行うシステムを開発した。空気バルブは電気による制御をするために電磁バルブを用いた。更に浴室から本体装置が置いてある脱衣室に行かずとも、簡単に本装置の空気の出し入れを制御できる方法を開発した。また要介護者を浴槽内に移動させる時や入浴時に、介護が倒れて頭を打つことが無いような仕組みと、入浴時に沈んで溺れたりしないような仕組みを開発した。
【0010】
請求項1に記載の発明は、要介護者の入浴を支援する入浴支援装置であって、浴槽中で前記要介護者を浮力で支えるエアーマットと、前記エアーマットの送排気を行うエアーポンプと、前記エアーマットに一端を接続される第1エアーチューブと、前記第1エアーチューブの他端と前記エアーポンプの間に配置されたそれぞれ3個の接続口を有する3つの電磁バルブと、前記電磁バルブを制御する制御器と、を備え、前記制御器により3つの電磁バルブが、それぞれその第3接続口と第1接続口又は第2接続口との開通・閉塞の何れかを選択し、前記第1エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの第1接続口へ接続されるとともに第3接続口の先の経路が二つに分かれ、前記第1エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの第1接続口へ接続されるとともに第3接続口の先の経路が二つに分かれ、前記経路の一方が第2の前記電磁バルブの第1接続口又は第2接続口へ接続されるとともに第3接続口が前記エアーポンプの排気口へ接続され、前記経路の他方が第3の前記電磁バルブの第1接続口又は第2接続口へ接続されるとともに第3接続口が前記エアーポンプの吸気口へ接続されることを特徴とする入浴支援装置である。
【0011】
要介護者の入浴を支援する入浴支援装置であって、浴槽中で前記要介護者を浮力で支えるエアーマットと、前記エアーマットの送排気を行うエアーポンプと、前記エアーマットに一端を接続される第1エアーチューブと、前記第1エアーチューブの他端と前記エアーポンプの間に配置されたそれぞれ3個の接続口を有する3つの電磁バルブと、前記電磁バルブを制御する制御器と、を備え、前記制御器により3つの電磁バルブが、それぞれその第3接続口と第1接続口又は第2接続口との開通・閉塞の何れかを選択し、前記第1エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの第1接続口へ接続されるとともに第3接続口の先の経路が二つに分かれ、前記第1エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの第1接続口へ接続されるとともに第3接続口の先の経路が二つに分かれ、前記経路の一方が第2の前記電磁バルブの第1接続口又は第2接続口へ接続されるとともに第3接続口が前記エアーポンプの排気口へ接続され、前記経路の他方が第3の前記電磁バルブの第1接続口又は第2接続口へ接続されるとともに第3接続口が前記エアーポンプの吸気口へ接続されるので、構成が単純化され製作や取り扱いが簡便となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記制御器が無線交信部を備え、無線を介した制御が行われることを特徴とする請求項1に記載の入浴支援装置である。
【0013】
制御器が無線交信部を備え、無線を介した制御が行われるので、介護者が動きながら、任意の場所から入浴支援装置の制御を行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記エアーマットがその上面に前記要介護者を載せる滑り止め安定板を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の入浴支援装置である。
【0015】
エアーマットがその上面に前記要介護者を載せる滑り止め安定板を有するので、要介護者をエアーマットの上で安定して支持することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記滑り止め安定板又は前記エアーマットの複数個所へ安全ベルトが取り付けられ、該安全ベルトが浴槽又は浴室の壁へ固定されて、前記滑り止め安定板又は前記エアーマットが略水平に維持されることを特徴とする請求項3に記載の入浴支援装置である。
【0017】
前記滑り止め安定板又は前記エアーマットの複数個所へベルトバンドが取り付けられ、該ベルトバンドが前記浴槽又は前記浴室へ固定されて、前記滑り止め安定板又は前記エアーマットが略水平に維持されるので、要介護者の安全の確保を図れる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、浴室の壁又は浴槽に前記要介護者の安全を確保するための安全バッグが設けられ、該安全バッグが空気によるクッション性を得る場合には該安全バッグへ第2エアーチューブの一端が接続され該第2エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの前記第2接続口へ接続されることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の入浴支援装置である。
【0019】
浴室の壁又は浴槽に前記要介護者の安全を確保するための安全バッグが設けられ、該安全バッグが空気によるクッション性を得る場合には該安全バッグへ第2エアーチューブの一端が接続され該第2エアーチューブの他端が第1の前記電磁バルブの前記第2接続口へ接続されるので、安全バッグの送排気が簡便に行える。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、要介護者の入浴が簡便に行える環境が広く用意される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(A)本発明にかかる要介護者向けの入浴支援装置の基本構成の説明図及び(B)付加構成の説明図である。
図2】制御系の説明図である。
図3】安全バッグ及びエアーマットを膨らませる工程の説明図である。
図4】エアーマット及び安全バッグを排気する工程の説明図である。
図5】電磁バルブの動作の説明図である。
図6】入浴準備工程のフローチャートである。
図7】入浴、出浴の工程のフローチャートである。
図8】片付け工程のフローチャートである。
図9】入浴準備から入浴後に片付けるまでの浴室の様子の説明図である。
図10】安全バッグ及び浴室の様子の説明図である。
図11】ベルトバンドの説明図である。
図12】リモコンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記の課題を解決し、家庭などで要介護者の入浴を支援する入浴支援装置を実現するため、空気用磁気開閉バルブを使用して空気の流れを制御する「方向性空気流電磁制御バルブ方式」を開発した。図1はシステム全体の構成図である。エアーポンプと制御回路が入った本体装置10に内蔵されるエアーポンプ14と空気を入れると膨らむエアーマット1は第1エアーチューブ2で接続されており、空気の出し入れの操作はリモコン4で行う。安全バッグ5もエアーポンプ14へ第2エアーチューブ3で接続されており、第1電磁バルブで切り替えることによりエアーポンプ1台にて共用稼動可能となっている。エアーマット1は空気を入れることにより浴槽中で浮力が生じ要介護者を支える。本体装置10の中に電磁バルブ11,12,13と電磁バルブの制御器が収められている。エアーマット1の上面には要介護者を支える滑り止め安定板8を載せることが好適である。なおエアーマットの上面に剛性を持たせて滑り止め安定板としてもよい。
【0023】
リモコン4について説明する。浴室内で要介護者のお世話をしている介護者は、要介護者の身体を支えていたり身体を洗ったりしているため手が空かない環境下なので、図1図12などに示すように介護者の極近くの手の届く場所(介護者の腕・浴室壁・安全バッグ等)にリモコンを面ファスナーで取り付けることができるようにした。リモコンのスイッチを1回押すと、脱衣場にある本体装置10が反応してエアーポンプの稼動や電磁バルブの制御ができる。リモコン4と本体装置10の通信手段である無線交信部18は、極微弱電波方式を採用している。一般的なリモコンに採用される赤外線方式では浴室と本体のある脱衣場とはドア等の障害物があることと、赤外線方式は光に直進性があるため好ましくないためである。リモコンを用意した効果として、介護者には次に示すような負担が無くなった。ア:両手が使用できるようになった。イ:本体装置まで移動しスイッチを押す必要が無くなった。ウ:リモコンにお湯が掛かることが少なくなった。エ:リモコンがブラブラしないので、要介護者の身体を洗う行為などの時、リモコンが邪魔にならなくなった。リモコンはワンプッシュ式で防水型とした。
【0024】
図10を用いて要介護者の安全を確保するための安全バッグ5について説明する。要介護者を浴槽に乗せる時や入浴の最中には要介護者は動けないため、身体の頭部が重たい理由から、要介護者の身体は不安定となり倒れる可能性がある。万が一バランスを失い倒れた場合でも、要介護者が体や頭部を強打し怪我をしないために、身体保護のために安全バッグ5を装着する工夫をした。この安全バッグ5は図1のイラストで示すかまぼこ型の形状をしている。クッション性を得るために軟質スポンジでもよいが今回はエアーマットと同じく空気を入れると膨らむ方式を採用した。要介護者の後ろ奥側で浴室壁の角を中心に両方向に図10に示すように取り付け部材7例えば吸盤にて取り付ける。
【0025】
この安全バッグ5は要介護者の後側面に膨らんだ面を上下に有しており、図10のイージ図のように取り付ける。この安全バッグを装着することにより、図10に示すとおり浴槽でエアーマットに乗った時、後ろ側に倒れた場合であっても要介護者の頭部を中心に身体を保護することができる。また膨らみが上下にあることから、図9(D)に示すように入浴状態の時でも沈んで溺れることを防止することができる。更にこの安全バッグは逆さにする反対側にも同様に使用できることから、浴槽の配置が左右異なっていても使用できる特徴を持つ。
【0026】
図2は装置本体内制御関係のブロック図である。内部には制御用のマイクロコンピュータ15があり、エアーポンプ14と空気の流れを変える電磁バルブ11,12,13を制御している。制御用のマイクロコンピュータ15のソフトウエアにより空気の流れを変える電磁バルブ11,12,13を制御している。電磁バルブ11,12,13はそれぞれ3つの接続口を有しており、外部からの通電により第1接続口又は第2接続口と第3接続口との経路の開通・閉塞の制御を行うことで第3接続口と第1接続口又は第2接続口の間の経路が開通・閉塞されるようになる。
【0027】
図3(A)は本体10の電源を入れた時の初期状態である。空気送出用エアーポンプと排気用エアーポンプは別々のエアーポンプではなく、エアーポンプ14の吸入口と送出口を利用して、1台のエアーポンプ14にて双方の役目を担うことができる、エアーマット1と安全バッグ5への空気の送排気ができる。本体10内にはエアーポンプと空気流の方向切替用電磁バルブ11,12,13が接続されており、其々の電磁バルブが開閉することにより空気の流れを制御する仕組みとなっている。この制御機能により1台のエアーポンプで送気と排気が可能となり、エアーマット1や安全バッグ5とを接続するためのエアーチューブはそれぞれ1本で足りることが可能に成る。第1エアーチューブはその一端がエアーマット1へ接続され他端が第1の電磁バルブ11の第1接続口へ接続される。第2エアーチューブ3の一端は安全バッグ5へ接続され、他端が第1の電磁バルブ11の第2接続口へ接続される。電磁バルブ11により送排気の対象をエアーマット1又は安全バッグ5の何れかを選択して送排気を行う。第1の電磁バルブ11の接続口3は2つの経路へ分かれ一方は第2の電磁バルブ12、他方は第3の電磁バルブ13へ接続される。
【0028】
図3(B)は安全バッグに送風し、安全バッグを膨らませている時の電磁バルブの開閉の状態を示している。本体にある「膨らむ」スイッチを押すと、電磁ソレノイドにより電磁バルブ12と13はONの状態となり、第1の電磁バルブ11はOFFで第1接続口が閉じられているので、空気は第3の電磁バルブ13の第1接続口からエアーポンプの吸気口へ吸い込まれてエアーポンプの排気口から送気され第2の電磁バルブ12を通り第1の電磁バルブ11の第2接続口から第2エアーチューブ3を通して安全バッグ5に送出される。図の中で、パイプが白地になっているときは空気経路が開いており、色地になっているときは空気経路が閉じている。空気が規定時間注入され安全バッグ5が膨らむと、タイマー回路が働き自動でエアーポンプ14が停止する。エアーポンプ14が停止すると同時に図3(C)に示すように安全バッグの空気の経路がONになった電磁バルブ11により閉じられ、空気は安全バッグ5に密封される。尚、破裂防止の安全対策として安全バッグは一度膨らむと再度膨らむスイッチを押しても、排気を実施した後でないと起動しない仕組みとなっている。
【0029】
図3(D)はエアーマット1に送風し、エアーマット1を膨らましている時の電磁バルブの開閉の状態を示している。リモコンDの上がる「△」スイッチを押すと、無線によりそのON情報は本体10の無線交信部を経て制御回路に伝わり、電磁バルブ11と12と13はONの状態となり、空気は電磁バルブ13からエアーポンプの吸気口へ吸い込まれてエアーポンプの送気口から第1の電磁バルブ11の第1接続口と第1エアーチューブ2を通してエアーマット1に送出される。エアーマット1が膨らみ空気が規定時間注入されると、タイマー回路が働き自動でエアーポンプ14が停止する。エアーポンプが停止すると同時に図4(A)に示すように電磁バルブ12がOFFとなり、空気はエアーマット1に密封される。尚、破裂防止の安全対策としてエアーマット1は一度膨らむと再度上がる「△」スイッチを押しても、排気を実施した後でないと起動しない仕組みとなっている。
【0030】
図4(B)はエアーマット1から空気を排気し、エアーマットを縮ませている時の電磁バルブの開閉の状態を示している。リモコンDの下がる「▽」スイッチを押すと、無線によりそのON情報は本体10の無線交信部を経て制御回路に伝わり電磁バルブ12と電磁バルブ13はOFFの状態となり、電磁バルブ11はエアーマット側の経路が開いているので、エアーマットの空気はエアーポンプにより電磁バルブ11から吸い込まれて電磁バルブ13を通り電磁バルブ12から排気される。エアーマット1が縮み空気が規定時間排出されると、タイマー回路が働き自動でエアーポンプ14が停止する。
【0031】
図4(C)は安全バッグ5から空気を排気して安全バッグ5を縮ませている時の電磁バルブの開閉の状態を示している。本体の「縮む」スイッチを押すと、電磁バルブ11と電磁バルブ12と電磁バルブ13はOFFの状態となり、安全バッグ5の空気はエアーポンプ14により電磁バルブ11から吸い込まれて電磁バルブ13を通り電磁バルブ12から排気される。安全バッグが縮み空気が規定時間排出されると、タイマー回路が働き自動でエアーポンプ14が停止する。
【0032】
図5は、入浴準備から入浴、出浴、片づけまでの工程における電磁バルブの動作の説明図である。図6図8のフローチャートと併せて工程の説明をする。
【0033】
図6のフローチャートを用いて入浴の準備から入浴するまでの段取りを説明する。なお、電磁バルブを空気バルブとも、要介護者を入浴者ともいう。なお、フローチャートでの電磁バルブのCLOSEはOFFと表現される。先ず、入浴準備を行う。S1:入浴準備を開始する。S2:浴槽にお湯を張る。S3:安全バッグを浴室の壁へ取り付ける。S4:本体装置の送気スイッチを押す。S5:電磁バルブ11をOFFにして空気の経路を安全バッグへ切り替える。電磁バルブ12、電磁バルブ13はONとなり外気がエアーポンプを通して安全バッグへ送気される準備をする。S6,S7:エアーポンプが起動して安全バッグが膨らむ。S8:所定の時間経過後に、S9:エアーポンプを止める。S5~S9の工程での電磁バルブの動きが図5のP1に相当する。
【0034】
S10:浴槽にエアーマットを置く。S11:リモコンで上昇スイッチを押す。S12:電磁バルブ11がエアーマットへの送気に切り替わる。S13,S14エアーポンプが起動してエアーマットが膨らむ。S15:所定の時間経過後、S16エアーポンプが停止する。S12~S16が、図5のP3に相当する。
【0035】
図7の入浴での工程を説明する。S2,S3:入浴者(要介護者)を浴室へ運びエアーマットへ乗せる。S4:リモコンの下降スイッチを押す。S5:空気バルブ(電磁バルブ)がエアーマットの排気モードに切り替わる。S6,S7エアーポンプで排気が終わるタイミングで、S8:エアーポンプが停止して電磁バルブが待機モードとなる。S4~S8が図5のP5に相当する。S9:エアーマットの空気が抜けて浮力が無くなり要介護者が浴槽に沈んで入浴する。S10:入浴が終わる。
【0036】
図7で、出浴の工程を説明する。S2:リモコンの上昇スイッチを押す。S3:空気バルブ(電磁バルブ)が送気モードとなる。S4,S5:エアーポンプが起動してエアーマットに送気し、エアーマットが膨らんで浴槽の縁まで上昇する。S6:所定の時間経過後に、S7:エアーポンプが止まり、S8:入浴者を浴室から出す。S2~S8が図5のP7に相当する。
【0037】
図8は片づけの工程を示す。エアーマットの空気を抜くためにS2:リモコンの下降スイッチを押す。S3,S4,S5空気バルブ(電磁バルブ)が排気モードとなりエアーマットの空気が抜けて、S6:エアーポンプが停止して電磁バルブが待機モードになる。S7:浴槽の湯を抜く。S8:浴槽からエアーマットを出す。S9:安全バッグを排気するために、本体の縮むスイッチを押す。S10:電磁バルブ11がOFFとなり空気経路が安全バッグへ切り替わる。電磁バルブ12、電磁バルブ13がOFF(CLOSE)となり電磁バルブ13、エアーポンプ14、電磁バルブ12を経て空気が排気される。S12:所定の時間経過後に、S13:電磁バルブが全てOFF(CLOSE)となる。S14:安全バッグを片付け、S15:本体装置10の電源を切る。S9~S13が、図5のP11に相当する。
【0038】
図9に要介護者が入浴して出浴する過程を示す。図9(A)は浴槽に湯が張られ、エアーマットは沈んでいる状態を示す。図9(B)はエアーマット1に空気が送られ浮力により水面まで上昇し、エアーマットの表面には要介護者を支える滑り止め安定板8が置かれる。安全バッグ5が取り付け部材7で浴室の壁に固定される。取り付け部材7は吸盤や面ファスナーなどを用いることが好適である。浴室の壁に面ファスナーなどで一時固定されるリモコン4の上がる「△」スイッチを押すと、無線によりそのON情報は本体装置10の無線交信部を経て制御回路に伝わり、図3(D)に示すように電磁バルブ11、12、13は開(ON)の状態となり、空気はエアーポンプにより電磁バルブ13から吸い込まれて電磁バルブ11からエアーマットに送出される。エアーマット1が膨らみ空気が規定時間注入されると、タイマー回路が働き自動でエアーポンプ1が停止する。エアーポンプが停止すると同時に電磁バルブ11が閉じられ、空気はエアーマットに密封される。尚、破裂防止の安全対策としてエアーマットは一度膨らむと再度上がる「△」スイッチを押しても、排気を実施した後でないと起動しない仕組みとなっている。
【0039】
図9(C)は浮いた状態のエアーマットの上に要介護者を移動させた状態を示す。要介護者が浴室の壁面へ衝突して怪我をしないように安全バッグ5が役立つ。図9(D)はエアーマット1の空気を排気して浴槽の中へ沈めた状態をしめす。排気の指示はリモコン4で行う。リモコンDの下がる「▽」スイッチを押すと、無線によりその情報は本体装置10の無線交信部を経て制御回路に伝わり電磁バルブ12と電磁バルブ13は閉の状態となり、電磁バルブ11は開いているので、空気はエアーポンプによりエアーマット1から電磁バルブ11及び電磁バルブ13を通じてエアーポンプ1へ吸い込まれて電磁バルブ12から外部へ排気される。エアーマット1が縮み空気が規定時間排出されると、タイマー回路が働き自動でエアーポンプ14が停止する。エアーマット1が沈んだ状態で要介護者は安全バッグ5へ頭を預けて入浴することができる。
【0040】
図9(E)~(H)は出浴の状態を示す。図9(E)はエアーマット1へ送気して要介護者を浴槽の縁まで持ち上げた状態を示す。図9(F)で要介護者は車いすなどへ移動する。入浴が終わると、本体装置10の「縮む」スイッチを押すと電磁バルブ11、電磁バルブ12及び電磁バルブ13は閉(OFF)の状態となり、空気はエアーポンプ14により経路が開通うされた電磁バルブ11、電磁バルブ13を通じてエアーポンプ14に吸い込まれる。吸い込まれた空気はエアーポンプ14の送気口を通り電磁バルブ12から外部へ排気される。エアーマット1が縮み空気が規定時間排出されると、タイマー回路が働き自動でエアーポンプ14が停止する。図9(G)は入浴者が浴室から出た状態を示す。図9(H)は浴室からエアーマット1、安全バッグ5及び滑り止め安定板8を外し脱衣所へ移動させた様子を示す。
【0041】
図10に示す前記滑り止め安定板8又は前記エアーマット1の複数個所へ取り付けたベルトバンド19の説明をする。図11は要介護者がエアーマットに乗る時に発生するエアーマットの動きのベクトル図である。要介護者をエアーマットに乗る時に要介護者のお尻の位置は、エアーマット中心点より後ろ手前となる。よってエアーマットは足側と奥側にずれる動きをするため、この動きを防止するための対策を取った。その対策方法として、ベルトバンド19にてエアーマット1と浴槽6の手前とを結ぶことにより、合成ベクトルの動きを抑制するようにした。要介護者をエアーマットに乗る時に要介護者のお尻の位置は、エアーマット中心点より後ろ手前となる。よってエアーマットは足側と奥側にずれる動きをするため、この動きを防止するためベルトバンド19にてエアーマット1と浴槽の手前とを結ぶことにより、エアーマット1の動きを抑制して略水平を維持するようにした。このベルトバンド19は吸盤9によって浴槽に取り付けるため取り外しが容易である。浴槽に沈む時、又は浴槽から上がる時、更にこの結びを簡単に解除できるようにするために、ワンタッチバックル20をベルトバンド19の途中に取り付けることが好適である。
【0042】
本発明により要介護者の入浴が容易になり要介護者の生活の質の向上が図れる。
【符号の説明】
【0043】
1 エアーマット
2 第1エアーチューブ
3 第2エアーチューブ
4 リモコン
5 安全バッグ
6 浴槽
7 取付け部材
8 滑り止め安定板(支援マット)
9 吸盤
10 本体装置
11 第1電磁バルブ
12 第2電磁バルブ
13 第3電磁バルブ
14 エアーポンプ
15 制御用マイコン
16 エアーマット上昇・下降制御スイッチ
17 送気、吸気切り替えスイッチ
18 無線交信部
19 ベルトバンド
20 ワンタッチバックル
図1
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図12